JP4296255B2 - アルキルベンゾチオフェンおよびアルキルジベンゾチオフェンを分解する微生物脱硫法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベンゾチオフェン類およびジベンゾチオフェン類を分解する微生物の作出方法及びその方法によって作出された微生物、並びにその微生物によってベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類を分解する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石油のような炭化水素燃料中には多種類にわたる硫黄化合物が存在しており、環境規制に対応して石油中の硫黄含量を低減させる、脱硫操作が必要となる。脱硫方法としてはアルカリ洗浄や溶剤脱硫などの方法も知られているが、現在では水素化脱硫が主流となっている。水素化脱硫は、石油留分中の硫黄化合物を触媒の存在下で水素と反応させ、硫化水素として除去して製品の低硫黄化をはかる方法である。触媒としては、アルミナを担体としたコバルト、モリブデン、ニッケル、タングステン、などの金属触媒が使用される。金属触媒は一般にその基質特異性が低く、多様な種類の硫黄化合物を脱硫し、化石燃料全体の硫黄含量を低下させる目的には適しているが、特定のグループの硫黄化合物に対してはその脱硫効果が不十分となることがあると考えられる。たとえば、脱硫後の軽油中にはなおもアルキルベンゾチオフェン、アルキルジベンゾチオフェンなどの種々の複素環式有機硫黄化合物が残存している。
【0003】
このような背景から、微生物を用いて複素環式有機硫黄化合物を分解する方法についても多数検討されている。現在まで知られている複素環式有機硫黄化合物分解菌の多くは、ジベンゾチオフェンあるいはアルキルジベンゾチオフェンを分解するものであり、例えば、シュウドモナス(Pseudomonas) CB1(Isbister, J.D. and Kobylinski,E.A.(Microbial desulfurization of coal, in Coal Science andTechnology,Ser.9, p.627 (1985))、ロドコッカスロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)IGTS8 (ATCC53968) (Kilbane,J.J. Resources, Conservation and Recycling, 3, 69-70 (1990))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp. SY-1 (Ohmori, T., Monna,L.,Saiki, Y. andKodama,T. Appl.Environ. Microbiol.,58,911-915, 1992)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium) sp. DO (van Afferden, M.,Schacht, S., Klein, J.andTruper,H.G.,Arch. Microbiol.,153, 324-328,1990)や、アルスロバクター(Arthrobacter) K3b(Dahlberg, M.D.(1992) Third International Symposium on the Biological Processing of Coal, May4-7, ClearwaterBeach,FL,pp.1-10.Electric Power Research Institute, PaloAlto, CA.)などが知られている。
【0004】
一方、化石燃料中の複素環式有機硫黄化合物として相当量含まれる化合物にベンゾチオフェン類があるが、最近、ベンゾチオフェン類を分解する微生物についても報告がされつつある。たとえば、ベンゾチオフェンを唯一の硫黄源とした培地を用いて土壌より分離したゴルドナ(Gordona) 213Eは培養液中にベンゾチオフェン 5-オキシド、ベンゾチオフェン 5,5-ジオキシド、2-(2'-ヒドロキシフェニル)エタン-1-ア-ルなどを中間体として蓄積することが報告されている(Gilbert.S.C., Morton.J., Buchanan S., Oldfield C., and McRoberts A.,Microbiology.144 2545-2553 (1998))。また、鈴木らは、ジベンゾチオフェン分解微生物ロドコッカス エリスロポリスKA2-5-1株が一部のアルキルベンゾチオフェンを分解するという報告をしている(特開平11-9293号公報)。
【0005】
ジベンゾチオフェンおよびベンゾチオフェンの両者を分解する単一の微生物については、土壌より分離したペニバチルス属(Paenibacillus)A 11-1およびA 11-2株(特開平10-36859号公報)、アルスロバクター属(Arthrobacter)ECRD-1株(M.K.Lee, J.D. Senius, and M.J. Grossman, Appl.Environ. Microbiol., 61,4362-4366, 1995)について報告がある。
【0006】
遺伝子工学的手法を用いてジベンゾチオフェンおよびベンゾチオフェンの両者を分解する微生物の作出は理論的には可能であると考えられるが、本発明者らの知る限りこれに成功した例はない。これは以下の理由による。一般に微生物は異種遺伝子を排除するために制限-修飾系を有している(例えば、遺伝子操作の原理 p12、培風館)。すなわち、導入しようとする遺伝子を挿入したベクターを大量に調製するために培養の簡単な大腸菌にクローン化したものを使用すると、宿主が形質転換された遺伝子を異種遺伝子と認識してヌクレアーゼによって分解してしまう(この現象が「制限」と言われる)。特にRhodococcus属のようなコリネフォーム型細菌を宿主として用いた場合、大腸菌でクローン化した遺伝子が制限をうけやすいということが報告されている(Yebra M. J., Novella I.S., Barbes C., Aparichio J.F., Martin C. G.,Hardisson C., Sanches J.,Journal of General Microbiology,137,1279-1284(1991)、Denome S.A., Olson E.S. and Young K. D., Applied and Environmental Microbiology, 59,2837-2843(1993)、Hashimoto Y., Nishiyama M., Yu F., Watanabe I., Horinouchi S., Beppu T.,Jounal of General Microbiology, 138,1003-1010(1992), Singer M.E., Finnerty W.R., Jounal of Bacteriology, 170,638-645(1988))。このような現象を回避するためにメチラーゼによりDNAを修飾した後、形質転換して成功した報告(Denome S.A., Olson E.S. and Young K. D., Applied andEnvironmental Microbiology,59,2837-2843(1993)もあるが、解明されている制限系はごく一部であり、すべての遺伝子についてこの方法が適用できるとは限らない。大腸菌内でのクローン化を行わずに形質転換を行う方法も考えられるが、より簡便な方法としては、クローン化した遺伝子が制限をうけないような宿主を用いることが望ましい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、遺伝子工学的手法を用いて、ベンゾチオフェン類とジベンゾチオフェン類の両者を分解できる微生物を作出し、効率的に炭化水素燃料中の硫黄含量を低減させる手段を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ベンゾチオフェン類を分解する能力を有するロドコッカス(Rhodococcus)属T09株に、ジベンゾチオフェン類分解遺伝子を導入したところ、得られる形質転換株がジベンゾチオフェン類及びベンゾチオフェン類の両者を分解する能力を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、ベンゾチオフェン類を分解する能力を有する微生物に、ジベンゾチオフェン類の分解に関与する遺伝子を導入することを特徴とするベンゾチオフェン類とジベンゾチオフェン類の両者を分解できる微生物の作出方法である。
【0010】
また、本発明は、上記の方法によって作出されたベンゾチオフェン類とジベンゾチオフェン類の両者を分解できる微生物である。
更に、本発明は、上記の微生物を利用したベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類の分解方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)微生物の作出方法
本発明の微生物の作出方法は、ベンゾチオフェン類を分解する能力を有する微生物に、ジベンゾチオフェン類の分解に関与する遺伝子を導入することを特徴とするものである。
【0012】
宿主として使用する微生物は、ベンゾチオフェン類を分解する能力を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属T09株が好適に用いられる。この菌株は、工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P-17268として寄託されている。また、他に宿主として使用できるベンゾチオフェン類を分解する能力を有する微生物としては、ゴルドナ(Gordona)属213E株を例示することができる。この菌株は、NCIMBに受託番号40816として寄託されている。また、以上のような菌株のほか、これらの菌株の変異株も使用することができる。
【0013】
なお、ベンゾチオフェン類としては、ベンゾチオフェン(BT)、2-メチルベンゾチオフェン(2-MBT)、3-メチルベンゾチオフェン(3-MBT)、5-メチルベンゾチオフェン(5-MBT)、2-エチルベンゾチオフェン(2-EBT)などを例示することができる。
【0014】
本発明において宿主に導入される遺伝子は、ジベンゾチオフェン類から相当するヒドロキシビフェニル体を生成する一連の酵素遺伝子であれば特に限定されない。例えば、ロドコッカス エリスロポリスKA2-5-1株由来の分解遺伝子、ロドコッカス属IGTS8株由来の分解遺伝子(C.S.Piddinton,B.R.Kovacevich and J.Rambosek, Appl.Environ.Microbiol. 61,468-475(1995))、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属AD109株由来の分解遺伝子(WO 98/45446)、ペニバチルス(Paenibacillus)属A11-1およびA11-2株由来の分解遺伝子(特願平10-310545号公報)などを使用することができる。これらの菌株の寄託番号等は下記の通りである。
【0015】
ロドコッカス エリスロポリスKA2-5-1株
寄託先:生命研、寄託番号:FERM P-16277
ロドコッカス属IGTS8株
寄託先:ATCC、寄託番号:53968
スフィンゴモナス属AD109株
寄託先:ATCC、寄託番号:55954
ペニバチラス属A11-1株
寄託先:生命研、寄託番号:FERM BP-6025
ペニバチラス属A11-2株
寄託先:生命研、寄託番号:FERM BP-6026
【0016】
また、以上の菌株由来の遺伝子のほか、これらの菌株の変異株由来の遺伝子も使用することができる。
なお、ジベンゾチオフェン類としては、ジベンゾチオフェン(DBT)、1-メチルジベンゾチオフェン(1-MDBT)、2-メチルジベンゾチオフェン(2-MDBT)、3-メチルジベンゾチオフェン(3-MDBT)、3-エチルジベンゾチオフェン(3-EDBT)、3-プロピルジベンゾチオフェン(3-PDBT)、3-イソプロピルジベンゾチオフェン(3-iPDBT)、2,8-ジメチルジベンゾチオフェン(2,8-DMDBT)、3,6-ジメチルジベンゾチオフェン(3,6-DMDBT)、4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT)、3,4,6-トリメチルジベンゾチオフェン(3,4,6-TMDBT)などを例示することができる。
【0017】
ジベンゾチオフェン類分解遺伝子を含むベクターとしては、宿主内において機能する複製配列、ジベンゾチオフェン類分解遺伝子の上流に位置し、該遺伝子を発現させるためのプロモーター、形質転換体の選択に必要なマーカー遺伝子などを含むものを用いるのが好ましい。例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属T09株を宿主とした場合には、複製必須領域としてロドコッカスロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)IFO3338由来の内在性プラスミドpRC4(Y.Hashimoto, M.Nishiyama, F.Yu, I.Watanabe, S.Horinouchi and T.Beppu, J.Gen.Microbiol.138,1003-1010(1992))を利用し、選択マーカーおよび大腸菌複製領域としてpHSG298(S.Takeshita, M.Sato, M.Toba, W.Masahashi and T.Hashimoto-Gotoh,Gene 61,63-74(1987))を利用して作製した融合プラスミドシャトルベクターpRHK1にロドコッカスエリスロポリス KA2-5-1株(PERM P-16277)のアルキルジベンゾチオフェン分解遺伝子を挿入したpRKPPまたはpRKPPRを用いることができる。
【0018】
遺伝子の宿主への導入方法としては例えば、電気パルス法、コンピテントセル法、接合伝達法、プロトプラスト法などが用いられる。例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属T09株を宿主としてpRKPPまたはpRKPPRを導入する場合には電気パルス法が用いられる。形質転換体は、導入する遺伝子内に構成されるマーカー遺伝子の性質を利用して選択される。例えば、 pRKPPまたはpRKPPRにより形質転換したロドコッカス(Rhodococcus)属T09株はカナマイシン硫酸を約100mg/L含む寒天LB培地で選択することが可能である。
【0019】
以上のようにして作出された微生物の培養は、微生物の通常の培養法にしたがって行われる。培養の形態は固体培養でも液体培養でもよいが、液体培養が好ましい。培地の栄養源としては通常用いられているものが広く用いられる。炭素源としては利用可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、コハク酸、クエン酸、酢酸などが使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、ポリペプトン、肉エキス、大豆粉、カゼイン加水分解物などの有機栄養物質が使用される。脱硫反応に影響を与える可能性のある硫黄化合物を含まない培地で培養するのが望ましい場合には、塩化アンモニウムのような無機窒素化合物も使用することができる。そのほか、リン酸塩、炭酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、マンガン、亜鉛、モリブデン、タングステン、銅、ビタミン類などが必要に応じて用いられる。培養は、微生物が生育可能である温度、pHで行われ、使用する微生物の最適培養条件で行うのが好ましい。一般的には、培地のpHを適当なpH、例えばpH6〜8とし、また、適当な温度、例えば約30℃にて、振盪又は通気条件下で好気的に行われる。
【0020】
(2)微生物による分解方法
本発明のベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類の分解方法は、上記の微生物を利用して行うことを特徴とするもので、具体的には、以下の二通りの方法を例示することができる。
【0021】
一つは、上記微生物をベンゾチオフェン類または/およびジベンゾチオフェン類を含む培地中で培養する方法である。この方法は、上記のような培地にベンゾチオフェン類または/およびジベンゾチオフェン類を添加し、上記微生物を上記のような条件で培養することにより行うことができる。その場合、基質であるベンゾチオフェン類またはジベンゾチオフェン類の培地中の濃度は、好ましくは5〜1,000ppmであり、より好ましくは 25〜100ppmである。
他の一つの方法は、上記微生物の休止菌体とベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類を接触させる方法である。この方法は、例えば以下のようにして行われる。
【0022】
まず、休止菌体を調製する。新鮮な培地に種菌を適当量、例えば1〜2容量%接種する。培地としては、上記の培地を用いることができる。種菌としては、対数増殖期初期から定常期までのいずれかの状態の菌を用いればよく、好ましくは対数増殖期後期のものを用いる。種菌の量は必要に応じて増減することができる。その後、pH6〜9、約30℃にて1〜2日間往復又は回転振盪培養する。また、培地としてはA培地(Izumi Y.,Ohshiro T.,Ogino H.,Hine Y.,Shimao M., Applied and Environmental Microbiology, 223-226 (1994))を用いるのが好適である。次いで、菌体を分離集菌し、洗浄することにより休止菌体が得られる。集菌は、培養菌体が対数増殖期初期から定常期までのいずれの状態にある時に行ってもよいが、対数増殖期中期から後期の状態にある時に行うのが好ましい。また、集菌は、遠心分離の他、濾過、沈降分離等のいかなる方法で行ってもよい。菌体の洗浄には、生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等のいかなる緩衝液を使用してもよく、また、水を用いて菌体を洗浄することもできる。
【0023】
休止菌体による分解は、休止菌体を適当な緩衝液に懸濁して調製した菌懸濁液に基質であるベンゾチオフェン類または/およびジベンゾチオフェン類を添加して反応させることにより行う。緩衝液としては種々の緩衝液を使用できる。緩衝液のpHは特に限定されないが、pH6〜7が好適である。また、緩衝液の代わりに、水や培地等を使用することもできる。菌体懸濁液の濃度は、OD660 が1〜100の間が好適であり、必要に応じて増減できる。基質の濃度は、1〜10,000ppm が好適であるが、必要に応じて増減できる。反応は30℃で行うのが好適であるが、そのほかの適当な温度でもよく、また反応時間は1〜2時間が好適であるが、必要に応じて増減できる。また、基質を添加する前に反応温度と同じ温度に反応液を予備加熱してもよい。
【0024】
また、休止菌体による反応は、n-テトラデカン等の有機溶媒を添加した油水2相系で行うこともできる。この場合、使用可能な有機溶媒としては、n-テトラデカンの他、C8〜C20のn-パラフィンやケロシン、軽油、重油などが挙げられる。また、必要に応じて反応液上方の気相を酸素で置換封入してもよい。
【0025】
分解率の測定は、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー/質量スペクトル分析(GC/MS)などを使用して行うことができる。また、必要に応じて他の分析方法を併せて利用してもよい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
〔実施例1〕 ジベンゾチオフェン類分解遺伝子を含む組み換えプラスミドの作製
ロドコッカス ロドクロウス IFO3338株より抽出精製したプラスミドpRC4をClaI消化し平滑化したものと、宝酒造(株)より入手したベクターpHSG298をStuIで消化し脱リン酸化処理したものとをライゲーションし、ロドコッカス-大腸菌シャトルベクターpRHK1を構築した(図1)。
【0027】
ロドコッカス エリスロポリスKA2-5-1株(PERM P-16277)からプラークハイブリダイゼーション法により分解遺伝子dszABCを含む約11kbのDNA断片をクローン化した。これをPvuIで消化して生成した約4.5kbのDNA断片を平滑化し、pBluescriptIIKS(+) SmaIサイトに組み込み、プラスミドpBKPPおよびpBKPPRを構築した。pBKPPおよびpBKPPRをEcoRIおよびXbaIで消化し、シャトルベクターpRHK1のEcoRI-XbaI消化物とライゲーションし、分解遺伝子を含むプラスミドpRKPPおよびpRKPPRを構築した(図2)。
【0028】
〔実施例2〕 ベンゾチオフェン類分解菌へのジベンゾチオフェン類分解遺伝子の導入
500ml容三角フラスコに入った滅菌済みのLB培地100mlにロドコッカス属T09株を植菌し、30℃で24時間培養した。得られた培養液を4℃、10,000rpm、10分遠心分離し、沈殿を滅菌水にて2回洗浄し、測定波長660nmでの濁度が40になるように10%グリセロール水溶液に懸濁した。
【0029】
該懸濁液80μlにpRKPPまたはpRKPPR遺伝子溶液1μlを添加し、Biorad社ジーンパルサーIIを用いて25μF、400Ω、1.5kV/cmの条件で処理した。処理液にSOC培地0.42mlを添加し、30℃、3時間培養を行った。得られた培養液をカナマイシン硫酸塩100mg/lおよび寒天末15 g/lを含むLB培地(LBAK培地)に塗末し、30℃、48時間培養した。LBAK培地においてコロニーを形成した菌を再度新鮮なLBAK培地に画線することによって菌体を純化し、pRKPP/T09株およびpRKPPR/T09株とした。
【0030】
pRKPP/T09株およびpRKPPR/T09株はDenis-Laroseらの方法(Appl.Environ.Microbiol.63:2915-2919(1997))に従ってプラスミドDNAを菌体より抽出、精製し、制限酵素の切断パターンから、それぞれ、 pRKPPまたはpRKPPRにより形質転換されていることを確認した。
【0031】
〔実施例3〕 pRKPP/T09株およびpRKPPR/T09株の培養
DBT25ppm(N,N-ジメチルホルムアミド溶液)を含むA培地(Izumi Yら、Applied and Environmental Microbiology, 223-226 (1994))2mlに、1白菌耳量のpRKPP/T09株を植菌し、30℃で120時間培養した。A培地中には培地成分として硫黄源が全く含まれていないことから、上記培地において該菌株の増殖が認められる場合は、DBTを唯一の硫黄源として増殖していることが示唆される。得られた培養液の660nmにおける吸光度(OD660)を測定したところ、2.9であった。同様の操作を行い、DBTの代わりに、BTまたは種々のアルキルジベンゾチオフェンもしくはアルキルベンゾチオフェンを添加して培養を行った場合のOD660を測定した結果を表1に示す。なお、BTは東京化成社製、3-MBTおよび5-MBTはLancaster Synthesis社製のものを用いた。その他のアルキルベンゾチオフェンはJ.T.Anderson, Journal of Chromatography, 83 354 (1986)の方法に従って合成し、アルキルジベンゾチオフェンは S. Saftic, P.M. Fedorak, J. T. Anderson, Environmental Science and Technology, 27, 2577 (1993)の方法に従って合成した。いずれのベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類を添加した培地においてもpRKPP/T09株の生育が認められ、これら化合物の分解が確認された。
【0032】
【表1】
【0033】
〔実施例4〕 ジベンゾチオフェン類の分解生成物の確認
上記の操作によって得られた培養液のうち、pRKPP/T09株をDBTを含むA培地にて培養した培養液2mlに6規定塩酸水溶液100μlおよび等量の酢酸エチルを添加、撹拌抽出後、酢酸エチル層を、GCにより分析した。GC分析は、島津製作所社製GC-14AにJ&Wサイエンティフィック社製カラムDB-17(0.25mm×0.25μm×30m)を装着し、水素炎イオン化検出器(FID)にて分析した。DBTを含まないA培地にて培養した培養液を同様に処理して得られたガスクロマトグラムに認められない生成物ピークの保持時間およびGC/MSは市販の2-ヒドロキシビフェニル標品(東京化成社製)と一致した。 pRKPP/T09株の代わりにpRKPPR/T09株を使用した場合においても同様にDBTから2-ヒドロキシビフェニルを生成していることが確認された。比較例としてT09株を同様に培養したが、T09株は生育せず、抽出物中にも2-ヒドロキシビフェニルは確認されなかった。
【0034】
また、 pRKPP/T09株を4,6-ジメチルジベンゾチオフェンを含むA培地にて培養した培養液を上記と同様の操作でGC分析およびGC/MS分析を行ったところ、生成物ピークは、既報(J. Konishi, Y. Ishii, T. Onaka, K. Okumura, M. Suzuki, Applied and Environmental Microbiology, 63 3164 (1997))のモノヒドロキシジメチルビフェニル体の質量スペクトルと一致した。
【0035】
〔実施例5〕 菌体によるジベンゾチオフェン類及びベンゾチオフェン類の分解 DBT25ppm(N,N-ジメチルホルムアミド溶液)を含むA培地100mlに、1白菌耳量のpRKPP/T09 株を植菌し、30℃で120時間培養した。得られた培養液を4℃、10,000rpm,5minの条件で遠心分離し、沈殿をpH7.5の1/15M リン酸緩衝液にて2回洗浄し、同緩衝液に懸濁して反応用菌体とした。この反応用菌体の測定波長660nmでの濁度は20であった。
【0036】
分解反応は、反応用菌体1mlの入った20ml容のリム付き試験管にグルコース水溶液およびDBT(N,N-ジメチルホルムアミド溶液)を終濃度それぞれ、10g/l、100ppmになるように加え、30℃にて往復振とうすることにより行った。残存DBT量および分解生成物である2-ヒドロキシビフェニル(2-HBP)の測定は、一定時間反応後の反応液に6N塩酸水溶液0.1mlおよび等量の酢酸エチルを添加、撹拌抽出後、酢酸エチル層を、GCにより定量した。反応6時間後のDBT分解率は、76%であった。また、2-HBPの生成量は42ppmであった。
【0037】
上記と同様の操作で、反応用菌体にDBTを添加する代わりに4,6-ジメチルジベンゾチオフェン100ppm、またはBT25ppmを添加した場合の分解率を測定した結果および、反応用菌体としてpRKPP/T09の代わりにpRKPPR/T09を使用した場合の結果を表2に示す。
表からベンゾチオフェン類分解菌TO9株の形質転換株であるpRKPP/TO9株もpREPPR/T09株もジベンゾチオフェン類を分解出来ることが確認された。
【0038】
【表2】
【0039】
〔実施例6〕 菌体による軽油中のジベンゾチオフェン類の分解
軽油のような疎水性溶媒中でのジベンゾチオフェン類の分解が可能かどうか調べるため、反応用菌体と疎水性溶媒に溶解したジベンゾチオフェン類の反応を行った。反応用菌体は上記と同様の操作を用いて調製し、疎水性溶媒としてn-テトラデカン(東京化成社)を用いた。分解反応は、グルコース10g/lを含む反応用菌体1mlに100ppmDBTあるいは4,6-DMDBTを含むn-テトラデカン溶液1mlを添加し、30℃にて4〜6時間往復振とうすることにより行った。反応後のDBTまたは4,6-DMDBTの分解率を表3に示す。表からBT分解菌TO9株の形質転換株であるpRKPP/TO9株もpRKPPR/TO9株もジベンゾチオフェン類を分解できることが確認された。
【0040】
【表3】
【0041】
また、上記と同様の操作をpRKPP/T09 株の代わりにpRKPP/T21 株およびpRKPPR/T21を用いて行い、OD660を測定した結果を表4に示す。
表からベンゾチオフェン類分解菌T21株の形質転換株であるpRKPP/T21 株およびpRKPPR/T21株のジベンゾチオフェン類の分解性が確認された。
【0042】
【表4】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ジベンゾチオフェン類およびベンゾチオフェン類を微生物を利用することにより穏和な条件で効果的に分解することができる。また、ジベンゾチオフェン類およびベンゾチオフェン類は化石燃料中に存在する硫黄化合物であるので、本発明はこれらの化石燃料の脱硫法としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Rhodococcus-E.coliシャトルベクターpRHK1の構築方法を示す図である。
【図2】ジベンゾチオフェン類分解遺伝子を含む組み換えプラスミドの構築方法を示す図である。
Claims (5)
- ベンゾチオフェン類がベンゾチオフェン、2-メチルベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン、5-メチルベンゾチオフェン、及び2-エチルベンゾチオフェンからなる群から選ばれる1以上のベンゾチオフェン類であり、アルキルジベンゾチオフェン類が1-メチルジベンゾチオフェン、2-メチルジベンゾチオフェン、3-メチルジベンゾチオフェン、3-エチルジベンゾチオフェン、3-プロピルジベンゾチオフェン、3-イソプロピルジベンゾチオフェン、2,8-ジメチルジベンゾチオフェン、3,6-ジメチルジベンゾチオフェン、4,6-ジメチルジベンゾチオフェン、及び3,4,6-トリメチルジベンゾチオフェンからなる群から選ばれる1以上のアルキルジベンゾチオフェン類であることを特徴とする請求項1に記載の微生物の作出方法。
- 請求項1又は2に記載された方法によって作出されたベンゾチオフェン類とアルキルジベンゾチオフェン類の両者を分解できる微生物。
- 請求項3記載の微生物をベンゾチオフェン類または/およびアルキルジベンゾチオフェン類を含む培地中で培養することを特徴とするベンゾチオフェン類及びアルキルジベンゾチオフェン類の分解方法。
- 請求項3記載の微生物の休止菌体とベンゾチオフェン類または/およびアルキルジベンゾチオフェン類を接触させることを特徴とするベンゾチオフェン類及びアルキルジベンゾチオフェン類の分解方法。
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