JP2001029065A - アルキルベンゾチオフェンおよびアルキルジベンゾチオフェンを分解する微生物脱硫法 - Google Patents
アルキルベンゾチオフェンおよびアルキルジベンゾチオフェンを分解する微生物脱硫法Info
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Abstract
する微生物に、ジベンゾチオフェン類の分解に関与する
遺伝子を導入し、ベンゾチオフェン類とジベンゾチオフ
ェン類の両者を分解できる微生物を作出する方法、及び
その微生物を利用してベンゾチオフェン類及びジベンゾ
チオフェン類を分解する方法。 【効果】 効率的に炭化水素燃料中の硫黄含量を低減さ
せることができる。
Description
類およびジベンゾチオフェン類を分解する微生物の作出
方法及びその方法によって作出された微生物、並びにそ
の微生物によってベンゾチオフェン類及びジベンゾチオ
フェン類を分解する方法に関するものである。
にわたる硫黄化合物が存在しており、環境規制に対応し
て石油中の硫黄含量を低減させる、脱硫操作が必要とな
る。脱硫方法としてはアルカリ洗浄や溶剤脱硫などの方
法も知られているが、現在では水素化脱硫が主流となっ
ている。水素化脱硫は、石油留分中の硫黄化合物を触媒
の存在下で水素と反応させ、硫化水素として除去して製
品の低硫黄化をはかる方法である。触媒としては、アル
ミナを担体としたコバルト、モリブデン、ニッケル、タ
ングステン、などの金属触媒が使用される。金属触媒は
一般にその基質特異性が低く、多様な種類の硫黄化合物
を脱硫し、化石燃料全体の硫黄含量を低下させる目的に
は適しているが、特定のグループの硫黄化合物に対して
はその脱硫効果が不十分となることがあると考えられ
る。たとえば、脱硫後の軽油中にはなおもアルキルベン
ゾチオフェン、アルキルジベンゾチオフェンなどの種々
の複素環式有機硫黄化合物が残存している。
環式有機硫黄化合物を分解する方法についても多数検討
されている。現在まで知られている複素環式有機硫黄化
合物分解菌の多くは、ジベンゾチオフェンあるいはアル
キルジベンゾチオフェンを分解するものであり、例え
ば、シュウドモナス(Pseudomonas) CB1(Isbister, J.
D. and Kobylinski,E.A.(Microbial desulfurization o
f coal, in Coal ScienceandTechnology,Ser.9, p.627
(1985))、ロドコッカスロドクロウス(Rhodococcus rhod
ochrous)IGTS8 (ATCC53968) (Kilbane,J.J. Resources,
Conservation and Recycling, 3, 69-70 (1990))、コ
リネバクテリウム(Corynebacterium)sp. SY-1 (Ohmori,
T., Monna,L.,Saiki, Y. andKodama,T. Appl.Environ.
Microbiol.,58,911-915, 1992)、ブレビバクテリウム
(Brevibacterium) sp. DO (van Afferden, M.,Schacht,
S., Klein, J.andTruper,H.G.,Arch. Microbiol.,153,
324-328,1990)や、アルスロバクター(Arthrobacter) K
3b(Dahlberg, M.D.(1992) Third International Sympos
ium on the Biological Processing of Coal, May4-7,C
learwaterBeach,FL,pp.1-10.Electric Power Research
Institute, PaloAlto,CA.)などが知られている。
物として相当量含まれる化合物にベンゾチオフェン類が
あるが、最近、ベンゾチオフェン類を分解する微生物に
ついても報告がされつつある。たとえば、ベンゾチオフ
ェンを唯一の硫黄源とした培地を用いて土壌より分離し
たゴルドナ(Gordona) 213Eは培養液中にベンゾチオフェ
ン 5-オキシド、ベンゾチオフェン 5,5-ジオキシド、2-
(2'-ヒドロキシフェニル)エタン-1-ア-ルなどを中間体
として蓄積することが報告されている(Gilbert.S.C., M
orton.J., Buchanan S., Oldfield C., and McRoberts
A.,Microbiology.144 2545-2553 (1998))。また、鈴木
らは、ジベンゾチオフェン分解微生物ロドコッカス エ
リスロポリスKA2-5-1株が一部のアルキルベンゾチオフ
ェンを分解するという報告をしている(特開平11-9293
号公報)。
ンの両者を分解する単一の微生物については、土壌より
分離したペニバチルス属(Paenibacillus)A 11-1および
A 11-2株(特開平10-36859号公報)、アルスロバクター
属(Arthrobacter)ECRD-1株(M.K.Lee, J.D. Senius,
and M.J. Grossman, Appl.Environ. Microbiol., 61,43
62-4366, 1995)について報告がある。
ェンおよびベンゾチオフェンの両者を分解する微生物の
作出は理論的には可能であると考えられるが、本発明者
らの知る限りこれに成功した例はない。これは以下の理
由による。一般に微生物は異種遺伝子を排除するために
制限-修飾系を有している(例えば、遺伝子操作の原理
p12、培風館)。すなわち、導入しようとする遺伝子
を挿入したベクターを大量に調製するために培養の簡単
な大腸菌にクローン化したものを使用すると、宿主が形
質転換された遺伝子を異種遺伝子と認識してヌクレアー
ゼによって分解してしまう(この現象が「制限」と言わ
れる)。特にRhodococcus属のようなコリネフォーム型
細菌を宿主として用いた場合、大腸菌でクローン化した
遺伝子が制限をうけやすいということが報告されている
(Yebra M. J., Novella I.S., Barbes C., Aparichio
J.F., Martin C. G.,Hardisson C., Sanches J.,Journa
lof General Microbiology,137,1279-1284(1991)、Deno
me S.A., Olson E.S. andYoung K. D., Applied and E
nvironmental Microbiology, 59,2837-2843(1993)、Has
himoto Y., Nishiyama M., Yu F., Watanabe I., Horin
ouchi S., BeppuT.,Jounal of General Microbiology,
138,1003-1010(1992), Singer M.E., Finnerty W.R., J
ounal of Bacteriology, 170,638-645(1988))。このよ
うな現象を回避するためにメチラーゼによりDNAを修飾
した後、形質転換して成功した報告(Denome S.A., Ols
on E.S. and Young K. D., Applied andEnvironmental
Microbiology,59,2837-2843(1993)もあるが、解明され
ている制限系はごく一部であり、すべての遺伝子につい
てこの方法が適用できるとは限らない。大腸菌内でのク
ローン化を行わずに形質転換を行う方法も考えられる
が、より簡便な方法としては、クローン化した遺伝子が
制限をうけないような宿主を用いることが望ましい。
子工学的手法を用いて、ベンゾチオフェン類とジベンゾ
チオフェン類の両者を分解できる微生物を作出し、効率
的に炭化水素燃料中の硫黄含量を低減させる手段を提供
することにある。
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ベンゾチオフェン
類を分解する能力を有するロドコッカス(Rhodococcus)
属T09株に、ジベンゾチオフェン類分解遺伝子を導入し
たところ、得られる形質転換株がジベンゾチオフェン類
及びベンゾチオフェン類の両者を分解する能力を有する
ことを見出し、本発明を完成した。
解する能力を有する微生物に、ジベンゾチオフェン類の
分解に関与する遺伝子を導入することを特徴とするベン
ゾチオフェン類とジベンゾチオフェン類の両者を分解で
きる微生物の作出方法である。
されたベンゾチオフェン類とジベンゾチオフェン類の両
者を分解できる微生物である。更に、本発明は、上記の
微生物を利用したベンゾチオフェン類及びジベンゾチオ
フェン類の分解方法である。
解する能力を有する微生物に、ジベンゾチオフェン類の
分解に関与する遺伝子を導入することを特徴とするもの
である。
フェン類を分解する能力を有する微生物であれば特に限
定されない。例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属T09
株が好適に用いられる。この菌株は、工業技術院生命工
学工業技術研究所に受託番号FERM P-17268として寄託さ
れている。また、他に宿主として使用できるベンゾチオ
フェン類を分解する能力を有する微生物としては、ゴル
ドナ(Gordona)属213E株を例示することができる。この
菌株は、NCIMBに受託番号40816として寄託されている。
また、以上のような菌株のほか、これらの菌株の変異株
も使用することができる。
ゾチオフェン(BT)、2-メチルベンゾチオフェン(2-MB
T)、3-メチルベンゾチオフェン(3-MBT)、5-メチルベ
ンゾチオフェン(5-MBT)、2-エチルベンゾチオフェン
(2-EBT)などを例示することができる。
は、ジベンゾチオフェン類から相当するヒドロキシビフ
ェニル体を生成する一連の酵素遺伝子であれば特に限定
されない。例えば、ロドコッカス エリスロポリスKA2-
5-1株由来の分解遺伝子、ロドコッカス属IGTS8株由来の
分解遺伝子(C.S.Piddinton,B.R.Kovacevich and J.Ramb
osek, Appl.Environ.Microbiol. 61,468-475(1995))、
スフィンゴモナス(Sphingomonas)属AD109株由来の分解
遺伝子(WO 98/45446)、ペニバチルス(Paenibacillus)属
A11-1およびA11-2株由来の分解遺伝子(特願平10-31054
5号公報)などを使用することができる。これらの菌株
の寄託番号等は下記の通りである。
れらの菌株の変異株由来の遺伝子も使用することができ
る。なお、ジベンゾチオフェン類としては、ジベンゾチ
オフェン(DBT)、1-メチルジベンゾチオフェン(1-MDB
T)、2-メチルジベンゾチオフェン(2-MDBT)、3-メチ
ルジベンゾチオフェン(3-MDBT)、3-エチルジベンゾチ
オフェン(3-EDBT)、3-プロピルジベンゾチオフェン
(3-PDBT)、3-イソプロピルジベンゾチオフェン(3-iP
DBT)、2,8-ジメチルジベンゾチオフェン(2,8-DMDB
T)、3,6-ジメチルジベンゾチオフェン(3,6-DMDBT)、
4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT)、3,4,6
-トリメチルジベンゾチオフェン(3,4,6-TMDBT)などを
例示することができる。
クターとしては、宿主内において機能する複製配列、ジ
ベンゾチオフェン類分解遺伝子の上流に位置し、該遺伝
子を発現させるためのプロモーター、形質転換体の選択
に必要なマーカー遺伝子などを含むものを用いるのが好
ましい。例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属T09株を
宿主とした場合には、複製必須領域としてロドコッカス
ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)IFO3338由来の
内在性プラスミドpRC4(Y.Hashimoto, M.Nishiyama, F.
Yu, I.Watanabe, S.Horinouchi and T.Beppu, J.Gen.Mi
crobiol.138,1003-1010(1992))を利用し、選択マーカ
ーおよび大腸菌複製領域としてpHSG298(S.Takeshita,
M.Sato, M.Toba, W.Masahashi and T.Hashimoto-Gotoh,
Gene 61,63-74(1987))を利用して作製した融合プラス
ミドシャトルベクターpRHK1にロドコッカスエリスロポ
リス KA2-5-1株(PERM P-16277)のアルキルジベンゾチオ
フェン分解遺伝子を挿入したpRKPPまたはpRKPPRを用い
ることができる。
ば、電気パルス法、コンピテントセル法、接合伝達法、
プロトプラスト法などが用いられる。例えば、ロドコッ
カス(Rhodococcus)属T09株を宿主としてpRKPPまたはpRK
PPRを導入する場合には電気パルス法が用いられる。形
質転換体は、導入する遺伝子内に構成されるマーカー遺
伝子の性質を利用して選択される。例えば、 pRKPPまた
はpRKPPRにより形質転換したロドコッカス(Rhodococcu
s)属T09株はカナマイシン硫酸を約100mg/L含む寒天LB培
地で選択することが可能である。
は、微生物の通常の培養法にしたがって行われる。培養
の形態は固体培養でも液体培養でもよいが、液体培養が
好ましい。培地の栄養源としては通常用いられているも
のが広く用いられる。炭素源としては利用可能な炭素化
合物であればよく、例えば、グルコース、スクロース、
ラクトース、コハク酸、クエン酸、酢酸などが使用され
る。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよ
く、例えば、ペプトン、ポリペプトン、肉エキス、大豆
粉、カゼイン加水分解物などの有機栄養物質が使用され
る。脱硫反応に影響を与える可能性のある硫黄化合物を
含まない培地で培養するのが望ましい場合には、塩化ア
ンモニウムのような無機窒素化合物も使用することがで
きる。そのほか、リン酸塩、炭酸塩、マグネシウム、カ
ルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、マンガン、亜
鉛、モリブデン、タングステン、銅、ビタミン類などが
必要に応じて用いられる。培養は、微生物が生育可能で
ある温度、pHで行われ、使用する微生物の最適培養条件
で行うのが好ましい。一般的には、培地のpHを適当なp
H、例えばpH6〜8とし、また、適当な温度、例えば約3
0℃にて、振盪又は通気条件下で好気的に行われる。
の分解方法は、上記の微生物を利用して行うことを特徴
とするもので、具体的には、以下の二通りの方法を例示
することができる。
または/およびジベンゾチオフェン類を含む培地中で培
養する方法である。この方法は、上記のような培地にベ
ンゾチオフェン類または/およびジベンゾチオフェン類
を添加し、上記微生物を上記のような条件で培養するこ
とにより行うことができる。その場合、基質であるベン
ゾチオフェン類またはジベンゾチオフェン類の培地中の
濃度は、好ましくは5〜1,000ppmであり、より好ましく
は 25〜100ppmである。他の一つの方法は、上記微生物
の休止菌体とベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェ
ン類を接触させる方法である。この方法は、例えば以下
のようにして行われる。
種菌を適当量、例えば1〜2容量%接種する。培地とし
ては、上記の培地を用いることができる。種菌として
は、対数増殖期初期から定常期までのいずれかの状態の
菌を用いればよく、好ましくは対数増殖期後期のものを
用いる。種菌の量は必要に応じて増減することができ
る。その後、pH6〜9、約30℃にて1〜2日間往復又は
回転振盪培養する。また、培地としてはA培地(Izumi
Y.,Ohshiro T.,Ogino H.,Hine Y.,Shimao M., Applied
and Environmental Microbiology, 223-226 (1994))を
用いるのが好適である。次いで、菌体を分離集菌し、洗
浄することにより休止菌体が得られる。集菌は、培養菌
体が対数増殖期初期から定常期までのいずれの状態にあ
る時に行ってもよいが、対数増殖期中期から後期の状態
にある時に行うのが好ましい。また、集菌は、遠心分離
の他、濾過、沈降分離等のいかなる方法で行ってもよ
い。菌体の洗浄には、生理食塩水、リン酸緩衝液、トリ
ス緩衝液等のいかなる緩衝液を使用してもよく、また、
水を用いて菌体を洗浄することもできる。
緩衝液に懸濁して調製した菌懸濁液に基質であるベンゾ
チオフェン類または/およびジベンゾチオフェン類を添
加して反応させることにより行う。緩衝液としては種々
の緩衝液を使用できる。緩衝液のpHは特に限定されない
が、pH6〜7が好適である。また、緩衝液の代わりに、
水や培地等を使用することもできる。菌体懸濁液の濃度
は、OD660 が1〜100の間が好適であり、必要に応じ
て増減できる。基質の濃度は、1〜10,000ppm が好適で
あるが、必要に応じて増減できる。反応は30℃で行うの
が好適であるが、そのほかの適当な温度でもよく、また
反応時間は1〜2時間が好適であるが、必要に応じて増
減できる。また、基質を添加する前に反応温度と同じ温
度に反応液を予備加熱してもよい。
カン等の有機溶媒を添加した油水2相系で行うこともで
きる。この場合、使用可能な有機溶媒としては、n-テト
ラデカンの他、C8〜C20のn-パラフィンやケロシン、
軽油、重油などが挙げられる。また、必要に応じて反応
液上方の気相を酸素で置換封入してもよい。
(GC)、ガスクロマトグラフィー/質量スペクトル分析
(GC/MS)などを使用して行うことができる。また、必
要に応じて他の分析方法を併せて利用してもよい。
るが、本発明の範囲はこれらの実施例の範囲に限定され
るものではない。 〔実施例1〕 ジベンゾチオフェン類分解遺伝子を含む
組み換えプラスミドの作製 ロドコッカス ロドクロウス IFO3338株より抽出精製し
たプラスミドpRC4をClaI消化し平滑化したものと、宝酒
造(株)より入手したベクターpHSG298をStuIで消化し脱
リン酸化処理したものとをライゲーションし、ロドコッ
カス-大腸菌シャトルベクターpRHK1を構築した(図1)。
(PERM P-16277)からプラークハイブリダイゼーション法
により分解遺伝子dszABCを含む約11kbのDNA断片をクロ
ーン化した。これをPvuIで消化して生成した約4.5kbのD
NA断片を平滑化し、pBluescriptIIKS(+) SmaIサイトに
組み込み、プラスミドpBKPPおよびpBKPPRを構築した。p
BKPPおよびpBKPPRをEcoRIおよびXbaIで消化し、シャト
ルベクターpRHK1のEcoRI-XbaI消化物とライゲーション
し、分解遺伝子を含むプラスミドpRKPPおよびpRKPPRを
構築した(図2)。
へのジベンゾチオフェン類分解遺伝子の導入 500ml容三角フラスコに入った滅菌済みのLB培地100mlに
ロドコッカス属T09株を植菌し、30℃で24時間培養し
た。得られた培養液を4℃、10,000rpm、10分遠心分離
し、沈殿を滅菌水にて2回洗浄し、測定波長660nmでの濁
度が40になるように10%グリセロール水溶液に懸濁し
た。
溶液1μlを添加し、Biorad社ジーンパルサーIIを用いて
25μF、400Ω、1.5kV/cmの条件で処理した。処理液にSO
C培地0.42mlを添加し、30℃、3時間培養を行った。得ら
れた培養液をカナマイシン硫酸塩100mg/lおよび寒天末1
5 g/lを含むLB培地(LBAK培地)に塗末し、30℃、48時
間培養した。LBAK培地においてコロニーを形成した菌を
再度新鮮なLBAK培地に画線することによって菌体を純化
し、pRKPP/T09株およびpRKPPR/T09株とした。
aroseらの方法(Appl.Environ.Microbiol.63:2915-2919
(1997))に従ってプラスミドDNAを菌体より抽出、精製
し、制限酵素の切断パターンから、それぞれ、 pRKPPま
たはpRKPPRにより形質転換されていることを確認した。
09株の培養 DBT25ppm(N,N-ジメチルホルムアミド溶液)を含むA培
地(Izumi Yら、Appliedand Environmental Microbiolog
y, 223-226 (1994))2mlに、1白菌耳量のpRKPP/T09株を
植菌し、30℃で120時間培養した。A培地中には培地成分
として硫黄源が全く含まれていないことから、上記培地
において該菌株の増殖が認められる場合は、DBTを唯一
の硫黄源として増殖していることが示唆される。得られ
た培養液の660nmにおける吸光度(OD660)を測定したとこ
ろ、2.9であった。同様の操作を行い、DBTの代わりに、
BTまたは種々のアルキルジベンゾチオフェンもしくはア
ルキルベンゾチオフェンを添加して培養を行った場合の
OD660を測定した結果を表1に示す。なお、BTは東京化成
社製、3-MBTおよび5-MBTはLancaster Synthesis社製の
ものを用いた。その他のアルキルベンゾチオフェンはJ.
T.Anderson, Journal of Chromatography, 83 354 (19
86)の方法に従って合成し、アルキルジベンゾチオフェ
ンは S. Saftic, P.M. Fedorak, J. T. Anderson, Env
ironmentalScience and Technology, 27, 2577 (1993)
の方法に従って合成した。いずれのベンゾチオフェン類
及びジベンゾチオフェン類を添加した培地においてもpR
KPP/T09株の生育が認められ、これら化合物の分解が確
認された。
解生成物の確認 上記の操作によって得られた培養液のうち、pRKPP/T09
株をDBTを含むA培地にて培養した培養液2mlに6規定塩酸
水溶液100μlおよび等量の酢酸エチルを添加、撹拌抽出
後、酢酸エチル層を、GCにより分析した。GC分析は、島
津製作所社製GC-14AにJ&Wサイエンティフィック社製カ
ラムDB-17(0.25mm×0.25μm×30m)を装着し、水素炎イ
オン化検出器(FID)にて分析した。DBTを含まないA培
地にて培養した培養液を同様に処理して得られたガスク
ロマトグラムに認められない生成物ピークの保持時間お
よびGC/MSは市販の2-ヒドロキシビフェニル標品(東京
化成社製)と一致した。 pRKPP/T09株の代わりにpRKPPR
/T09株を使用した場合においても同様にDBTから2-ヒド
ロキシビフェニルを生成していることが確認された。比
較例としてT09株を同様に培養したが、T09株は生育せ
ず、抽出物中にも2-ヒドロキシビフェニルは確認されな
かった。
ゾチオフェンを含むA培地にて培養した培養液を上記と
同様の操作でGC分析およびGC/MS分析を行ったところ、
生成物ピークは、既報(J. Konishi, Y. Ishii, T. Ona
ka, K. Okumura, M. Suzuki,Applied and Environmenta
l Microbiology, 63 3164 (1997))のモノヒドロキシジ
メチルビフェニル体の質量スペクトルと一致した。
ェン類及びベンゾチオフェン類の分解 DBT25ppm(N,N-ジメチルホルムアミド溶液)を含むA培
地100mlに、1白菌耳量のpRKPP/T09 株を植菌し、30℃で
120時間培養した。得られた培養液を4℃、10,000rpm,5m
inの条件で遠心分離し、沈殿をpH7.5の1/15M リン酸緩
衝液にて2回洗浄し、同緩衝液に懸濁して反応用菌体と
した。この反応用菌体の測定波長660nmでの濁度は20で
あった。
容のリム付き試験管にグルコース水溶液およびDBT(N,N
-ジメチルホルムアミド溶液)を終濃度それぞれ、10g/
l、100ppmになるように加え、30℃にて往復振とうする
ことにより行った。残存DBT量および分解生成物である2
-ヒドロキシビフェニル(2-HBP)の測定は、一定時間反
応後の反応液に6N塩酸水溶液0.1mlおよび等量の酢酸エ
チルを添加、撹拌抽出後、酢酸エチル層を、GCにより定
量した。反応6時間後のDBT分解率は、76%であった。ま
た、2-HBPの生成量は42ppmであった。
添加する代わりに4,6-ジメチルジベンゾチオフェン100p
pm、またはBT25ppmを添加した場合の分解率を測定した
結果および、反応用菌体としてpRKPP/T09の代わりにpRK
PPR/T09を使用した場合の結果を表2に示す。表からベン
ゾチオフェン類分解菌TO9株の形質転換株であるpRKPP/T
O9株もpREPPR/T09株もジベンゾチオフェン類を分解出来
ることが確認された。
ゾチオフェン類の分解 軽油のような疎水性溶媒中でのジベンゾチオフェン類の
分解が可能かどうか調べるため、反応用菌体と疎水性溶
媒に溶解したジベンゾチオフェン類の反応を行った。反
応用菌体は上記と同様の操作を用いて調製し、疎水性溶
媒としてn-テトラデカン(東京化成社)を用いた。分解
反応は、グルコース10g/lを含む反応用菌体1mlに100ppm
DBTあるいは4,6-DMDBTを含むn-テトラデカン溶液1mlを
添加し、30℃にて4〜6時間往復振とうすることにより行
った。反応後のDBTまたは4,6-DMDBTの分解率を表3に示
す。表からBT分解菌TO9株の形質転換株であるpRKPP/TO9
株もpRKPPR/TO9株もジベンゾチオフェン類を分解できる
ことが確認された。
代わりにpRKPP/T21 株およびpRKPPR/T21を用いて行い、
OD660を測定した結果を表4に示す。表からベンゾチオ
フェン類分解菌T21株の形質転換株であるpRKPP/T21 株
およびpRKPPR/T21株のジベンゾチオフェン類の分解性が
確認された。
およびベンゾチオフェン類を微生物を利用することによ
り穏和な条件で効果的に分解することができる。また、
ジベンゾチオフェン類およびベンゾチオフェン類は化石
燃料中に存在する硫黄化合物であるので、本発明はこれ
らの化石燃料の脱硫法としても利用することができる。
築方法を示す図である。
えプラスミドの構築方法を示す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 ベンゾチオフェン類を分解する能力を有
する微生物に、ジベンゾチオフェン類の分解に関与する
遺伝子を導入することを特徴とするベンゾチオフェン類
とジベンゾチオフェン類の両者を分解できる微生物の作
出方法。 - 【請求項2】 ベンゾチオフェン類を分解する能力を有
する微生物が、ロドコッカス属T09株、またはその変異
株であることを特徴とする請求項1記載の微生物の作出
方法。 - 【請求項3】 ジベンゾチオフェン類の分解に関与する
遺伝子が、ロドコッカス エリスロポリスKA2-5-1株、
ロドコッカス属IGTS8株、スフィンゴモナス属AD109株、
ペニバチルス属A11-1株、ペニバチルス属A11-2株、また
はそれらの変異株由来の遺伝子であることを特徴とする
請求項1または2記載の微生物の作出方法。 - 【請求項4】 ベンゾチオフェン類がベンゾチオフェ
ン、2-メチルベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフ
ェン、5-メチルベンゾチオフェン、2-エチルベンゾチオ
フェンであり、ジベンゾチオフェン類がジベンゾチオフ
ェン、1-メチルジベンゾチオフェン、2-メチルジベンゾ
チオフェン、3-メチルジベンゾチオフェン、3-エチルジ
ベンゾチオフェン、3-プロピルジベンゾチオフェン、3-
イソプロピルジベンゾチオフェン、2,8-ジメチルジベン
ゾチオフェン、3,6-ジメチルジベンゾチオフェン、4,6-
ジメチルジベンゾチオフェン、3,4,6-トリメチルジベン
ゾチオフェンであることを特徴とする請求項1乃至3の
いずれか一項に記載の微生物の作出方法。 - 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載さ
れた方法によって作出されたベンゾチオフェン類とジベ
ンゾチオフェン類の両者を分解できる微生物。 - 【請求項6】 微生物が、ロドコッカス属pRKPP/T09
株、またはロドコッカス属pRKPPR/T09株であることを特
徴とする請求項5記載の微生物。 - 【請求項7】 請求項5または6記載の微生物をベンゾ
チオフェン類または/およびジベンゾチオフェン類を含
む培地中で培養することを特徴とするベンゾチオフェン
類及びジベンゾチオフェン類の分解方法。 - 【請求項8】 請求項5または6記載の微生物の休止菌
体とベンゾチオフェン類または/およびジベンゾチオフ
ェン類を接触させることを特徴とするベンゾチオフェン
類及びジベンゾチオフェン類の分解方法。
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