JP4294396B2 - セリウム系研摩材のリサイクル方法 - Google Patents

セリウム系研摩材のリサイクル方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セリウム系研摩材のリサイクル方法に関する。詳しくは、研摩に供された使用後の研摩材スラリーについて、所定の処理を行なうことによりそのまま研摩材スラリーの状態で、又は、研摩材粉末として再利用可能な状態とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セリウム系研摩材(以下、単に研摩材とも称する)は、各種のガラス材料の研摩に供されている。従来は、光学レンズの研摩に多用されているが、近年では、ハードディスク等の磁気記録媒体用ガラス、液晶ディスプレイ(LCD)のガラス基板、フォトマスク用ガラスといった電気・電子機器で用いられるガラス材料研摩用の研摩材として広く用いられている。
【0003】
このセリウム系研摩材を上記した各種ガラス材料の研摩に適用する場合、通常は、研摩材粉末を分散媒(主に水)に分散させて研摩材スラリーとしている。そして、研摩材スラリーを被研摩材と研摩パッドとの間に流動させて研摩作業を行っている。
【0004】
ところで、セリウム系研摩材の研摩力は無制限に持続するものではなく、使用に伴い研摩パッドに目詰まりを生じさせて研摩力は低下し、そのままの使用は研磨作業の効率を低下させることとなる。従って、研摩工程では、使用済み研摩材スラリーを回収除去しつつ、フレッシュな研摩材スラリーの供給を断続的に行い、研摩効率の維持を図っている。そして、研摩力の低下した使用済みの研摩材スラリーは、廃液として産業廃棄物と同等の扱いで処理されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、資源の有効利用の観点から、使用済み研摩材スラリーを廃棄物として処理することは好ましいことではない。特に、セリウム系研摩材の主成分である酸化セリウムは、我国では自給が困難な材料であり、外国(主に中国)からの供給に依存している材料である。
【0006】
そこで、使用済み研摩材スラリーの有効利用のための技術の検討がいくつか行われている。例えば、特許文献1においては、使用済み研摩材スラリーから酸化セリウムを分離処理する方法が提示されている。また、特許文献2では、同様に、使用済み研摩材スラリーから研摩材原料となるレアアースを回収する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−28662号公報
【特許文献2】
特開平10−280060号公報
【0008】
しかしながら、上記従来の手法も完全なものとはいえない。即ち、前者の方法で回収されるのは酸化セリウムであり、これをそのまま研摩材として利用することはできず、研摩材に再加工するための処理が必要となり、そのコストを考慮すると再生研摩材のコスト高に繋がる。また、後者の方法で回収されるレアアースは、前者の方法で回収される酸化セリウムよりは研摩材の形態に近いものの、研摩力の点からそれ自体を研摩材として使用することはできずに、やはり、再加工が必要となる。以上から、従来から知られる使用済み研摩材の処理方法では、回収物について研摩材として使用可能な状態とするための処理を要するためそのコストを考慮すると実用性に乏しいものがあった。
【0009】
本発明は、以上のような背景の下になされたものであり、研摩力が低下したセリウム系研摩材スラリーについて、フッ化処理等の大幅な成分調整工程や高温での再焙焼のような大幅な再加工が不要で、簡易な再生処理により研摩材としての性能を再生させ、リサイクルすることができる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、研摩材スラリーの使用に伴う研摩力低下の機構につき考察、検討した。その結果、まず以下の2点に着目した。第1点は、使用によりスラリーの研摩力が低下するとしてもスラリー中の研摩材粒子そのものの粒径変化は殆ど生じていない点である。これは、研摩材スラリーの研摩力低下の要因が研摩材粒子の劣化が寄与する可能性は低いことを示す。そして、同時に使用済み研摩材スラリー中には研摩力低下の主要因が他に存在し、それを除去することで、リサイクルが可能となることが推察される。
【0011】
本発明者等の第2の着目点として、使用済み研摩材スラリーを長時間静置すると、研摩材粒子が沈殿するが、この研摩材粒子層の上部にはこれより軽く細かな粒子が浮遊することである。本発明者等がこの浮遊粒子についてより詳細な検討をおこなったところ、この浮遊粒子は被研摩材(ガラス)からなる微粒子が主成分であることがわかった。
【0012】
以上の2点から、本発明者等は、研摩材スラリーの研摩力低下の要因としては、研摩の進行に伴い発生する被研摩材の微粒子にあると考えた。この被研摩材微粒子の研摩力低下のメカニズムとしては、粒径が細かく軽い被研摩材微粒子が研摩パッドに蓄積し易く、これが研摩パッドの目詰まりの原因となって研摩力を低下させるというものである。
【0013】
そこで、本発明者等は上記考察の結果、本願発明として、セリウム系研摩材を含有する使用済み研摩材スラリーをリサイクルする方法であって、前記使用済み研摩材スラリーから被研摩材よりなる微粒子を除去する工程を含むセリウム系研摩材のリサイクル方法に想到した。
【0014】
ここで、本発明者等の検討によると、上記した研摩材粒子より低密度の浮遊粒子中には、被研摩材粒子に加え成分の異なる他の微粒子が混入している。この他の微粒子は針状の粒子であり、詳細な検討からランタンを主成分とする水酸化物である。本発明者等によれば、この(水酸化)ランタン含有粒子は、もともとは研摩材粒子に含まれるランタン成分に由来し、研摩工程中に研摩材粒子が受ける圧力、摩擦力により研摩材粒子から放出され、これが溶媒と反応して水酸化物に変化したものと考える。
【0015】
本発明におけるリサイクル方法においては、被研摩材粒子に加え、このランタンを主成分とする微粒子(以下、簡単にランタン微粒子と称する。)の除去を行なうことがより好ましい。ランタン微粒子も研摩材粒子よりも低密度であり、研摩パッドの目詰まり、研摩力の低下に繋がるからである。
【0016】
そして、以上のように被研摩材粒子及びランタン微粒子を除去した使用済み研摩材スラリーは、研摩力が回復し、そのままの状態で再度研摩工程に供することができるようになる。これにより、従来必要であった研摩材への再加工等の手間を大幅に省略することができる。
【0017】
被研摩材微粒及びランタン微粒子の除去の手法としては、篩、フィルターによるろ過も可能ではあるが、研摩材粒子、被研摩材粒子、ランタン粒子いずれも粒径が細かいためにフィルターの目詰まりが生じる可能性がある。そこで、被研摩材微粒等の除去方法としては、その密度差を利用する方法である、沈降分離法や遠心分離法によるものが好ましい。具体的方法としては、沈降分離法としては回分式又は連続式のシックナーを用いるものが好ましい。また、遠心分離法としては、微粒子を除去する場合はサイクロンによる遠心分離が好ましい。回分式のシックナーでは非常に長い静置時間必要であり、連続式のシックナーでは非常に広い装置面積が必要となるからである。サイクロンによる遠心分離の場合、設定する分級点(その粒子径の粒子を分級したときに、小粒径側に分布する確率が50%となるような粒子径)を研摩材粒子の平均粒径(D50)以下の値で、かつ、0.1〜2μm(好ましくは0.2〜1.5μm)の範囲に設定することで効率的な分離が可能である。0.1μm未満では被研摩材微粒子及びランタン微粒子の除去が不十分となりやすく、また、2μmを超えると研摩材粒子が被研摩材微粒子及びランタン微粒子の側(小粒径側)に分布する割合が多くなり回収率が低下する。尚、ここでの「研摩材粒子の平均粒径」とは、研摩前の研摩材のものでも、研摩後の研摩材スラリー中の研摩材のものでもいずれでも良い。尚、本発明に係るリサイクル方法は、研摩材粒子の平均粒径(D50)が0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上の使用済み研摩材スラリーのリサイクルに好適である。平均粒径があまりに小さい研摩材スラリーについては、被研摩材微粒子及びランタン微粒子の分離除去が困難となる。
【0018】
更に、本発明に係るリサイクル方法においては、使用済み研摩材スラリーから異物粒子を除去するのがより好ましい。異物粒子とは、研摩材スラリーによる研摩工程において、被研摩材が破砕して生じる比較的粗大な粒子や研摩設備(配管、研摩台等)の摩耗等によりスラリー中に混入する粒子を示す。これら異物粒子は研摩力低下の要因となるものではないが、リサイクル後の研摩材スラリーをそのまま使用する場合、研摩傷の原因となる可能性がある。この異物粒子の除去方法としては、回分式又は連続式のシックナーを用いる沈降分離法やサイクロンによる遠心分離方を適宜に用いることができる。異物粒子をこれらの方法で除去する場合、被研摩材微粒子及びランタン微粒子の場合とは異なり、回分式シックナーの静置時間は短く、また、連続式シックナー必要面積は小さくすることができる。異物粒子の除去工程と被研摩材微粒子及びランタン微粒子の除去工程とは、いずれを先に行ってもよい。但し、3液分離型の湿式サイクロンを適用することにより、被研摩材粒子及びランタン微粒子の除去と同時に異物粒子の除去ができ、効率面から特に好ましい。このとき、小粒径側には被研摩材粒子及びランタン粒子が、大粒径側には異物粒子が捕捉され、中粒径側の研摩材粒子を回収することで、同時に各粒子の分離をすることができる。この3液分離型の湿式サイクロンを用いる場合、分級点を大粒径側、小粒径側の2点設定する必要がある。大粒径側の分級点(その粒子径の粒子を分級したときに、大粒径側に分布する確率が50%となるような粒子径)を研摩材粒子の平均粒径(D50)を超える値で、かつ、3〜20μm(好ましくは5〜10μm)の範囲に設定することで効率的な分離が可能である。3μm未満では研摩材微粒子が異物粒子側に分布する割合が多くなり回収率が低下し、10μmを超えると異物微粒子の除去が不十分となる。一方、小粒径側の分級点は、上記範囲(研摩材粒子の平均粒径(D50)以下の値で、かつ、0.1〜2μm(好ましくは0.2〜1.5μm)の範囲)に設定するのが好ましい。尚、本発明に係るリサイクル方法は、研摩材粒子の平均粒径(D50)が3μm以下、特に好ましくは2μm以下の使用済み研摩材スラリーのリサイクルに好適である。平均粒径があまりに大きい研摩材スラリーについては、異物粒子の分離除去が困難となると共に、研摩傷が多く発生する研摩材となる。
【0019】
ところで、既に述べたように、本発明により回収される研摩材スラリーは、回収後そのままの状態で研摩工程に再利用できるが、場合によっては研摩力の回復が不十分な場合がある。これは、リサイクル前の研摩材の履歴によるものであると考えられるが、ランタン含有量が比較的高い研摩材をリサイクルする場合、本発明により回収した研摩材スラリー中にはランタン微粒子が残存する場合があり、これが研摩力の回復を阻害するおそれがある。
【0020】
そこで、本発明者等はこのように回収後のスラリー中にランタン微粒子が残存するおそれがある場合においては、研摩力回復の方法として、回収後の研摩材スラリー中の研摩材粒子を比較的低い温度で焙焼することが好ましいことを見出した。
【0021】
この焙焼工程は、回収後の研摩材に対し、一般的な研摩材の製造工程における焙焼温度以下の温度を与えることにより、残存するランタン水酸化物を酸化物に変化させると共にこれを研摩材粒子に取り込ませるものである。そして、この低温再焙焼工程の条件は、150〜700℃とする。150℃未満では希土類水酸化物の酸化物への変化が生じ難く、研摩材の研摩速度向上を図ることができないからであり、700℃を超えて加熱すると、原料の焼結が生じ粗大粒子が増加し研摩傷の原因となるからである。この加熱温度の特に好ましい範囲は、150〜500℃である。
【0022】
そして、この際の加熱時間については、0.5〜60時間とするのが好ましい。0.5時間未満では酸化物への変化が生じないからであり、60時間を超えて加熱しても効果に変化はみられず、むしろ傷発生のおそれが生じるからである。そして、製造効率も考慮すればこの加熱時間は1〜40時間とするのが特に好ましい。尚、この加熱時間は、加熱温度との関連で調整することとし、加熱温度が比較的高い場合には加熱時間を短くすることが好ましい。
【0023】
回収後のスラリー中の研摩材粒子を焙焼工程に供する際には、スラリーを乾燥させた後に焙焼を行うのが好ましい。本願において乾燥とは、回収スラリー中の研摩材粒子の付着水分を蒸発除去させる工程であって、JIS−K0067に規定されている乾燥減量試験(大気圧下105℃、2時間での乾燥条件下での試験)における乾燥減量が3重量%以下となるまで処理する工程をいう。そして、この乾燥工程については、湿式処理後の原料をろ過、脱水して炉中で静置して加熱する一般的な方法によっても良いが、回収された研摩材スラリーを噴霧し加熱する乾燥方法が好ましい。この噴霧による乾燥(以下、噴霧乾燥ともいう)は、回収スラリーをろ過等せずに乾燥対象とするものであり、スラリーを回転円板式やノズル式の噴霧手段によって乾燥室(チャンバ)内に噴霧し、噴霧されて霧状になった研摩材スラリーを加熱気体に接触させて乾燥させるものである。この噴霧乾燥によれば、スラリー中の研摩材粒子は、瞬時に他の粒子と離れた状態で乾燥され、乾燥時の凝集が抑制され、粗大粒子の生成が防止された研摩材を得ることができる。また、噴霧乾燥によれば、霧状の研摩材スラリーを加熱気体中に放出することにより、極短時間内に乾燥させて研摩材粉末を得ることができ、通常の乾燥工程におけるろ過・脱水を行なうことなく効率的な乾燥を行なうことができる。
【0024】
この噴霧乾燥の具体的方法としては、湿式処理後の原料スラリーを、回転円板式や、二流体ノズル式あるいは圧力ノズル式といったノズル式の噴霧手段により、スプレードライヤ(噴霧乾燥装置)といった乾燥室内に噴霧して乾燥させるものである。尚、この噴霧するときのスラリーは、回収したスラリーをそのまま噴霧しても良いが、固形分(原料粒子)が1重量%〜50重量%(好ましくは10重量%〜40重量%)のスラリーとして噴霧するのが好ましい。
【0025】
また、研摩材スラリーの噴霧手段としては、回転円板式や、二流体ノズル式あるいは圧力ノズル式といったノズル式のものを用いることができるが、回転円板式及び二流体ノズル式が好ましい。研摩材スラリーを噴霧により霧状にしやすく、乾燥凝集が確実に防止されるからである。そして、回転円板式スプレーを用いる場合、一般的には円板の外周縁の周速は、10〜200m/secの範囲とするのが好ましい(50m/sec以上が好ましく、100m/sec以上がより好ましい)。この周速は、速いほど微細な液滴が得られ、乾燥時の粗大な凝集粒子の生成が抑制される。また、二流体ノズル式スプレーを用いる場合、スラリー供給圧力(供給ポンプの吐出圧)は、0.29MPa〜0.98MPaが好適であり、噴霧圧力(気体(通常は空気)の圧力)は、0.29MPa〜0.98MPaが好適である。いずれかの圧力が下限圧力未満になると、噴霧時の分散が不十分で得られる粒子が大きくなりすぎるからである。そして、上限圧力を超えると、噴霧が不均一になり、微粒子と粗粒子ともに多くなるためやはり好ましくない。なお、同様の理由で、圧力ノズル式スプレーを用いる場合、噴霧圧力は、0.98MPa〜29.4MPaが好ましい。
【0026】
そして、ノズル式の噴霧手段を用いる場合、ノズル径は、0.1mm以上2.0mm以下が好ましい。これより大径では、研摩材スラリーを乾燥させるにしては、生成される液滴が大きすぎ、乾燥時に研摩材粒子の凝集が生じやすいからである。生産性、詰まり具合、液滴の大きさなどを総合的に考慮すると、ノズル径は、0.1mm〜1mmがより好ましい。
【0027】
また、噴霧により形成された研摩材スラリーの液滴を乾燥させる雰囲気の温度、つまり、乾燥室(チャンバ)内の温度は、120℃〜300℃とするのが好ましい。300℃を超えると、乾燥凝集により粗大な粒子が生じ易いからである。このようなことからすれば、200℃以下がより好ましく、より確実に粗大な凝集粒子の生成を防止するには雰囲気の最高温度は150℃以下がさらに好ましい。尚、スプレードライヤには、噴霧の向き及び熱風の流れる向きによって、並流型、向流型、並向流型(混合型)等があり、いずれの形式を用いることも可能である。
【0028】
以上の噴霧乾燥により乾燥された回収スラリー中の研摩材粒子は、凝集の少ない良好な状態であり、この研摩材材粒子を焙焼することで研摩材への再生が可能となる。以上のように乾燥工程を経て乾燥された研摩材粒子の焙焼の装置としては、研摩材製造工程の焙焼工程と同様の装置、例えば、静置炉、ロータリーキルン等で行うことができる。
【0029】
尚、本発明における回収された研摩材粒子の焙焼は、噴霧乾燥で使用する装置を用いることで、直接行なうこともできる。つまり、乾燥工程における乾燥温度を焙焼温度(700℃以下)とすることで、乾燥の直後に焙焼とを行なうことができる。この場合、焙焼工程と乾燥工程とを、同じ乾燥装置内(スプレードライヤー等)で行なうこととなり、研摩材の効率的な製造が可能となる。
【0030】
尚、本発明のリサイクル方法が対応可能なセリウム系研摩材は、特に限定されることはないが、酸化セリウム含有量(TREOに対する重量比)が50〜90%、酸化ランタン含有量(TREOに対する重量比)が10〜40%、であるセリウム系研摩材に対して特に有効である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を説明する。本実施形態では、研摩速度が初期の50%にまで低下した使用済み研摩材スラリー(CeO/TREO=60%、La/TREO=30%、D50=1.5μm、スラリー濃度10重量%、固形分重量に対するSiO=0.3重量%)について各種のリサイクル処理を行ない、リサイクルの可否を確認した。
【0032】
第1実施形態:使用済み研摩材スラリーを2液分離型湿式サイクロンにより被研摩材微粒子、ランタン微粒子を分離除去した。具体的には、2液分離型としても3液分離型としても使用可能な、村田工業製スーパークロンTR−30型を2液分離型として使用した。また、分級点は、1.0μmとした。この分離操作により、小粒径側スラリー、大粒径側スラリーの固形分分布率は、それぞれ14.3重量%、85.7重量%となった。そして、小粒径側スラリー、即ち、分離された被研摩材微粒子、ランタン微粒子を含むスラリーは、TREOに対する酸化ランタン含有量が35.5重量%で、固形分重量に対するSiO含有量が1.5重量%であった。一方、大粒径側スラリー、即ち、リサイクルされた研摩材スラリーのについては、TREOに対する酸化ランタン含有量が29.1重量%で、固形分重量に対するSiO含有量が0.1重量%であった。
【0033】
そして、被研摩材微粒子及びランタン微粒子を除去したスラリーについて、水でスラリー濃度が10重量%となるように調整し、これにより研摩をおこなったところ、その研摩速度は初期の85%にまで回復することが確認された。但し、この研摩材スラリーではわずかな研摩傷がみられた。
【0034】
第2実施形態:第1実施形態と同様の使用済み研摩材スラリーについて、第1実施形態で使用した湿式サイクロンを3液分離型として用いて被研摩材微粒子、ランタン微粒子、及び異物粒子を分離除去した。このときの分級点は、大粒径側5μm、小粒径側0.8μmとした。この分離操作により、小粒径側スラリー、中粒径側スラリー、大粒径側スラリーの固形分分布率は、それぞれ4.5重量%、90.5重量%、5.0重量%となった。そして、小粒径側スラリー(被研摩材微粒子、ランタン微粒子を含むスラリー)には、酸化ランタンをTREOに対して44.7重量%、SiOを固形分重量に対して3.9重量%含有していた。また、大粒径側スラリー(異物粒子を含むスラリー)には、TREOに対する酸化ランタンが29.1重量%、固形分重量に対するSiOが0.7重量%含有していた。一方、中粒径側スラリー(リサイクルされた研摩材スラリー)については、TREOに対する酸化ランタン含有量が29.3重量%で、固形分重量に対するSiO含有量が0.1重量%であった。
【0035】
そして、被研摩材微粒子及びランタン微粒子、及び異物粒子を除去したスラリーについて、水でスラリー濃度が10重量%となるように調整し、これにより研摩をおこなったところ、その研摩速度は初期の80%にまで回復することが確認された。そして、この研摩材スラリーの場合には研摩傷は全く観察されなかった。
【0036】
第3実施形態:ここでは第2実施形態で被研摩材微粒子、ランタン微粒子、及び異物粒子を除去したスラリーを噴霧乾燥し、乾燥した研摩材粒子を焙焼して研摩材のリサイクルを行った。噴霧乾燥は、いわゆる並流型のスプレードライヤ(大河原化工機(株)製、L−8型)を用いた。並流型の装置は、回収スラリーを乾燥用のチャンバ(乾燥室)内にスプレーし、これに平行して熱風(乾燥用の空気)を吹きかけることでスラリーを乾燥させるものである。そして、本実施形態では噴霧手段として回転円板式のものを用いた。噴霧条件は、回転円板(アトマイザ)直径50mm、円板回転数20000rpm(周速52m/sec)、噴出量30mL(ミリリットル)/分、熱風のチャンバ入口温度(回転円板位置温度)150℃、出口温度を50℃とした。そして、乾燥した研摩材粒子を焙焼処理した。焙焼処理は、乾燥後の研摩材粉末を静置型電気炉に封入して加熱した。このときの加熱条件は、加熱温度500℃で加熱時間2時間とした。
【0037】
焙焼後得られた粉末に水でスラリー濃度が10重量%となるように調整し、これにより研摩をおこなったところ、その研摩速度は初期の95%にまで回復することが確認された。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、研摩力が低下した使用済みのセリウム系研摩材スラリーについて、容易に研摩材としての性能を再生させてリサイクルすることができる。本発明は、セリウム系研摩材の利用に際するコストダウンのみならず、資源の有効利用の観点において有用な発明である。

Claims (8)

  1. 平均粒径0.2μm以上のセリウム系研摩材を含有する使用済み研摩材スラリーをリサイクルする方法であって、
    前記使用済み研摩材スラリーから被研摩材よりなる微粒子を除去すると同時に、ランタンを主成分とする微粒子を除去する工程と、微粒子除去後の研摩材スラリーを乾燥し、乾燥後の研摩材を焙焼する工程を含み、
    前記被研摩材よりなる微粒子及びランタンを主成分とする微粒子の除去工程は、サイクロンにより、分級点をセリウム系研摩材の平均粒径以下の値で、かつ、0.1〜2μmの範囲に設定して、小粒径側のセリウム系研摩材より軽く細かな微粒子を除去するものであり、
    前記乾燥後の研摩材を焙焼する工程は、乾燥後の研摩材を150〜700℃で加熱するものである、セリウム系研摩材のリサイクル方法。
  2. 更に、異物粒子を除去する工程を含む請求項1に記載のセリウム系研摩材のリサイクル方法。
  3. 3液分離型の湿式サイクロンにより、小粒径側の被研摩材よりなる微粒子及びランタンを主成分とする微粒子を除去するとともに、大粒径側の異物粒子を除去する請求項1又は請求項2に記載のセリウム系研摩材のリサイクル方法。
  4. 微粒子除去後の研摩材スラリーの乾燥は、微粒子除去後の研摩材スラリーを噴霧し加熱することによる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のセリウム系研摩材のリサイクル方法。
  5. 噴霧により形成された研摩材スラリーの液滴を乾燥させる雰囲気の温度が120℃〜300℃である請求項4記載のセリウム系研摩材のリサイクル方法。
  6. 噴霧により形成された研摩材スラリーの液滴を乾燥させる雰囲気の温度を700℃以下とし、研摩材の乾燥直後焙焼を行う請求項4記載のセリウム系研摩材のリサイクル方法。
  7. 使用済み研摩材スラリーに含まれるセリウム系研摩材は、酸化セリウム含有量(TREOに対する重量比)が50〜90%、酸化ランタン含有量(TREOに対する重量比)が10〜40%、である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のセリウム系研摩材のリサイクル方法。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のセリウム系研摩材のリサイクル方法により研摩材を製造する方法。
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