JP4291488B2 - 積層型誘電体共振器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、数百MHz〜数GHzのマイクロ波帯において共振回路を構成する積層型誘電体共振器に関し、特に、バンドパスフィルタやデュプレクサ、発振器等に好適に利用され得る小型で、低損失な積層型誘電体共振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、携帯電話等の無線通信システムの多様化に伴い、積層型誘電体フィルタに対して、小型化、低損失化の要請が強くなってきている。
【0003】
積層型誘電体フィルタの低損失化を実現させるためには、該積層型誘電体フィルタを構成している積層型誘電体共振器の無負荷Qを向上させる必要がある。共振回路の無負荷Qは、主に誘電体基板の誘電体による損失(誘電体損)と共振電極による損失(導体損)とによって決まるが、一般に、マイクロ波帯以下の低周波帯では、誘電体損よりも導体損の方が無負荷Qに対して支配的である。
【0004】
従って、積層型誘電体フィルタの低損失化を実現させて無負荷Qを向上させるためには、
(1)共振電極を形成する導体材料の比抵抗を小さくすること。
(2)共振電極の幅や厚みを大きくすること。
が考えられる。
【0005】
しかしながら、上述の(1)比抵抗を小さくすることは、材料、コスト面で限界が生じるおそれがあり、(2)共振電極の寸法を大きくすることは、該積層型誘電体共振器を有する電子部品が大型化するという問題がある。
【0006】
従来では、例えば図7に示すように、複数の誘電体層S1〜S6を積層して構成された誘電体基板100内に共振電極102A〜102Cを形成する場合において、一主面に共振電極102A〜102Cがそれぞれ形成された複数枚の誘電体層S3〜S5を多数重ねることにより、無負荷Qを向上させる方法が提案されている(例えば特開平4−43703号公報参照)。
【0007】
更に、部品形状を小型化するために、内層アース電極104A及び104Bを共振電極102A〜102Cの開放端に配置することで同一の共振周波数を得る場合でも共振電極102A〜102Cを短縮するようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この構造の共振器でフィルタを形成すると、同一形状の共振電極102A〜102Cを積層状に重ねているため、製造時のずれによって、見かけ上、共振電極102A〜102Cの開放端の面積が広くなり、内層アース電極104A及び104Bと共振電極102A〜102Cの開放端で形成される静電容量が増加してしまい、所望の共振周波数よりも低くなる。
【0009】
このことを図8を参照しながら説明すると、まず、理想的なかたちとして、例えば3枚の共振電極102A〜102Cを各中心位置を一致させて高精度に形成した場合においては、共振電極の開放端と内層アース電極間で形成される静電容量は、第1の共振電極102Aの開放端と第1の内層アース電極104A間に形成される容量C1と、第3の共振電極102Cの開放端と第2の内層アース電極104B間に形成される容量C2となる。
【0010】
ところが、実際の製造においては、共振電極102A〜102Cの積層ずれ等が生じるため、例えば第2の共振電極102Bが第1の共振電極102Aよりも横方向や縦方向にずれて形成される場合がある。このような場合、そのはみ出た部分と第1及び第2の内層アース電極104A及び104Bとで静電容量C3及びC4が形成されてしまい、この静電容量C3及びC4が前記容量C1及びC2に付加されたかたちとなる。
【0011】
その結果、内層アース電極と共振電極の開放端で形成される静電容量が実質的に増加し、設計上、求められる所望の共振周波数よりも低くなる。共振電極の積層ずれ等は、ロット間でばらついたり、各共振器間でばらつくことから、一定の特性を有する共振器を得ることが困難になる。即ち、再現性が悪くなるという問題がある。
【0012】
これを解決するためには、高精度に共振電極を形成する必要があり、コストが高騰するおそれがある。
【0013】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、製造時に積層ずれ等が生じても、特性変動が少なく、再現性の良好な積層型誘電体共振器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板内に複数の共振電極が前記誘電体層を間に挟んで積層方向に重ねられて構成された積層型誘電体共振器において、少なくとも第1共振電極、第2共振電極及び第3共振電極が積層されて構成される共振器本体を間に挟むように少なくとも第1内層アース電極及び第2内層アース電極が形成され、前記第1共振電極〜前記第3共振電極は、少なくとも各開放端部分が、前記第1内層アース電極及び前記第2内層アース電極と重なった形態で積層され、且つ、前記第1内層アース電極に最も近接した位置にある前記第1共振電極と、前記第2内層アース電極に最も近接した位置にある前記第3共振電極とで挟まれた前記第2共振電極の開放端部分が、前記第1共振電極の開放端部分及び前記第3共振電極の開放端部分と重なった形態で積層され、前記第1共振電極と前記第3共振電極は、少なくとも各開放端部分が、前記第2共振電極の開放端部分よりも幅広に形成されていることを特徴とする。
そして、前記第2共振電極は、前記開放端部分の幅と、それ以外の部分の幅が同じであってもよい。
また、前記第2共振電極は、前記開放端部分が、それ以外の部分よりも幅広に、且つ、前記第1共振電極及び前記第3共振電極の各開放端部分よりも幅狭に形成されていてもよい。
また、前記第1共振電極と前記第3共振電極は、前記第1内層アース電極及び前記第2内層アース電極と重なっていない前記各開放端部分と連続する部分が、前記各開放端部分と同じ幅に形成されていてもよい。
【0015】
これにより、製造時に積層ずれ等があっても、積層形態上、外側に位置する共振電極から他の共振電極がはみ出ることがなくなり、該他の共振電極の開放端に基づく寄生容量(浮遊容量)の形成がなくなる。
【0016】
このように、本発明に係る積層型誘電体共振器は、製造時において、複数の共振電極に積層ずれが生じても、特性変動を少なくすることができ、複数の共振電極を積層方向に重ねて共振器を構成することによる効果(高Q値、小型化、高性能)を最大限に発揮させることができる。
【0019】
また、積層型誘電体共振器の製造時に、複数の共振電極に積層ずれ等が生じても、内層アース電極と容量を形成するのは、外側に位置する共振電極だけとなり、所望の共振周波数を容易に得ることができ、再現性が良好となる。
【0020】
また、内層アース電極に最も近接した位置にある複数の共振電極と内層アース電極間に形成される静電容量が大きくなるため、共振電極の更なる短縮化を図ることができ、積層型誘電体共振器の小型化に有利となる。
【0021】
また、前記共振電極の幅広の部分が完全に内層アース電極に含まれる形態となるため、内層アース電極に最も近接した位置にある複数の共振電極に積層ずれ等があっても、内層アース電極間に形成される静電容量値は変化しない。
【0022】
しかも、内層アース電極に最も近接した位置にある複数の共振電極と内層アース電極との間に形成される静電容量は、幅広の部分によって支配されるため、内層アース電極と重なる幅狭の他の部分から他の共振電極がはみ出たとしても、容量の増加は非常に小さいものとなり、特性変動はほとんど生じない。
【0023】
なお、前記複数の内層アース電極に最も近接した位置にある複数の共振電極以外の前記他の共振電極は、該内層アース電極と重なる部分の一部が他の部分よりも幅広に形成されていてもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る積層型誘電体共振器の実施の形態例を図1〜図6を参照しながら説明する。
【0025】
本実施の形態に係る積層型誘電体共振器10は、図1に示すように、複数の誘電体層(S1〜S6)が積層、焼成一体化されて構成され、図2に示すように、側面にアース電極12が形成された誘電体基板14を有する。図1では、第1〜第6の誘電体層S1〜S6を順次積層して誘電体基板14を構成した例を示す。誘電体層S1〜S6の積層枚数はあくまでも一例であり、また、これら第1〜第6の誘電体層S1〜S6はそれぞれ1枚あるいは複数枚の層にて構成される。
【0026】
更に、この実施の形態に係る積層型誘電体共振器10においては、第3〜第5の誘電体層S3〜S5の各一主面にそれぞれ共振電極(第1〜第3の共振電極16A〜16C)が形成され、第2及び第6の誘電体層S2及びS6の各一主面にそれぞれ内層アース電極18A及び18Bが形成されている。各内層アース電極18A及び18Bは、図2に示すように、第1及び第3の共振電極16A〜16Cの各開放端とそれぞれ静電容量C1及びC2が形成される位置に配されている。
【0027】
また、第1〜第3の共振電極16A〜16Cを1/4波長の共振電極とした場合は、図2に示すように、誘電体基板14の側面のうち、第1〜第3の共振電極16A〜16Cの各一端を誘電体基板14の側面に形成されたアース電極12と短絡させた構造が採用される。
【0028】
そして、この実施の形態においては、図1に示すように、3枚の共振電極16A〜16Cのうち、各内層アース電極18A及び18Bに近接する第1及び第3の共振電極16A及び16Cの開放端部分20A及び20Cが幅広に形成されている。図3に示すように、各幅広の部分20A及び20Cは平面的にそれぞれ内層アース電極18A及び18Bに完全に含まれた形態となっている。一方、第2の共振電極16Bは、幅Wが一定の短冊状に形成されており、該幅Wは、第1及び第3の共振電極16A及び16Cにおける幅広部分20A及び20C以外の部分の幅とほぼ同じとされている。
【0029】
即ち、第1及び第2の内層アース電極18A及び18B間には、第1及び第3の共振電極16A及び16Cにおける各幅広の部分20A及び20Cが存在し、更に、これら幅広の部分20A及び20Cの間に、幅Wが一定で、かつ、幅広の部分20A及び20Cよりも狭い幅Wを有する第2の共振電極16Bの開放端部分20Bが介在されたかたちとなっている。
【0030】
更に、第2の共振電極16Bの形成においては、第2の共振電極16Bの開放端22Bが、第1及び第3の共振電極16A及び16Cの開放端22A及び22Cよりも短絡端寄りに位置するように形成されている。
【0031】
そして、理想的なかたちとして、図3に示すように、第1〜第3の共振電極16A〜16Cを各中心位置を一致させて形成した場合を想定し、第2の共振電極16Bの側端から第1の共振電極16A(又は第3の共振電極16C)の側端までの間隔をA、並びに第2の共振電極16Bの開放端22Bから第1の共振電極16A(又は第3の共振電極16C)の開放端22A(又は22C)までの間隔をB、図4に示すように、これら3枚の共振電極16A〜16Cを各中心位置が互いに一致するように積層する際に生じる積層ずれ量をCとしたとき、A>C及びB>Cを満足するようになっている。
【0032】
このように、本実施の形態に係る積層型誘電体共振器10においては、第1及び第2の内層アース電極18A及び18Bに最も近接した位置にある第1及び第3の共振電極16A及び16Cにおける開放端部分20A及び20Cを第2の共振電極16Bの開放端部分20Bよりも幅広に形成するようにしたので、積層型誘電体共振器10の製造時に、第1〜第3の共振電極16A〜16Cに積層ずれ等が生じても、第1及び第2の内層アース電極18A及び18Bと容量C1及びC2を形成するのは、第1及び第3の共振電極16A及び16Cだけとなり、所望の共振周波数を容易に得ることができ、再現性が良好となる。
【0033】
換言すれば、本実施の形態に係る積層型誘電体共振器10においては、その製造時に、第1〜第3の共振電極16A〜16Cに積層ずれ等が生じても、特性変動を少なくすることができ、複数の共振電極16A〜16Cを積層方向に重ねて積層型誘電体共振器10を構成することによる効果(高Q値、小型化、高性能)を最大限に発揮させることができる。
【0034】
特に、この実施の形態では、第1及び第3の共振電極16A及び16Cの各開放端部分20A及び20Cを他の部分よりも幅広に形成しているため、第1の内層アース電極18Aと第1の共振電極16A間の静電容量C1並びに第2の内層アース電極18Bと第3の共振電極16C間の静電容量C2を共に大きくすることができ、その結果、共振電極16A〜16Cの更なる短縮化を図ることができ、積層型誘電体共振器10の小型化に有利となる。
【0035】
また、この実施の形態では、第1及び第3の共振電極16A及び16Cのうち、幅広とされた開放端部分20A及び20Cが完全に第1及び第2の内層アース電極18A及び18Bに含まれる形態となるため、第1及び第3の共振電極16A及び16Cが第1及び第2の内層アース電極18A及び18Bに対して積層ずれ等があっても、第1の内層アース電極18Aとの間に形成される静電容量C1の値並びに第2の内層アース電極18Bとの間に形成される静電容量C2の値は共に変化しない。
【0036】
しかも、これら静電容量C1及びC2は、幅広とされた開放端部分20A及び20Cによって支配されるため、図4に示すように、第1の共振電極16A及び第3の共振電極16Cのうち、第1及び第2の内層アース電極18A及び18Bと重なる幅狭の部分から第2の共振電極16Bがはみ出たとしても(斜線Gで示す)、静電容量C1及びC2の値の増加は非常に小さいものとなり、特性変動はほとんど生じない。
【0037】
上述の例では、第2の共振電極16Bとして幅Wが一定とされた共振電極を形成した例を示したが、その他、図5に示す第1の変形例に係る積層型誘電体共振器10aのように、第2の共振電極16Bの開放端部分20Bを幅広に形成するようにしてもよい。
【0038】
この場合、第2の共振電極16Bにおける開放端部分20Bの側端から第1の共振電極16A(又は第3の共振電極16C)における開放端部分20A(又は20C)の側端までの間隔をD、第2の共振電極16Bの開放端22Bから第1の共振電極16A(又は第3の共振電極16C)の開放端22A(又は22C)までの間隔をE、第2の共振電極16Bにおける開放端部分20Bの短絡端側の端部から第1の共振電極16A(又は第3の共振電極16C)の開放端部分20A(又は20C)の短絡端側の端部までの間隔をFとし、これら3枚の共振電極16A〜16Cを各中心位置が互いに一致するように積層する際に生じる積層ずれ量をCとしたとき、D>C、E>C及びF>Cを満足することが好ましい。
【0039】
また、図6に示す第2の変形例に係る積層型誘電体共振器10bのように、第1及び第3の共振電極16A及び16Cにおける幅広とされた各開放端部分20A及び20Cが第1及び第2の内層アース電極18A及び18Bから一部はみ出すように形成するようにしてもよい。
【0040】
また、上述の例では、誘電体基板14内に3枚の共振電極16A〜16Cを形成するようにしたが、誘電体基板14内に4枚以上の共振電極を形成するようにしてもよい。この場合、第1及び第2の内層アース電極18A及び18Bに近接する2枚の共振電極のみに上述の第1及び第3の共振電極16A及び16Cと同様の構成をもたせ、その他の共振電極に上述の第2の共振電極16Bと同様の構成をもたせることで、上述と同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、この発明に係る積層型誘電体共振器は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る積層型誘電体共振器によれば、製造時に積層ずれ等が生じても、特性変動が少なく、再現性が良好となり、複数の共振電極を積層方向に重ねて共振器を構成することによる効果(高Q値、小型化、高性能)を最大限に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る積層型誘電体共振器を示す分解斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る積層型誘電体共振器を示す縦断面図である。
【図3】本実施の形態に係る積層型誘電体共振器における理想的な積層形態を示す平面図である。
【図4】本実施の形態に係る積層型誘電体共振器において、積層ずれが生じた状態を示す平面図である。
【図5】第1の変形例に係る積層型誘電体共振器を示す平面図である。
【図6】第2の変形例に係る積層型誘電体共振器を示す平面図である。
【図7】従来例に係る積層型誘電体共振器を示す斜視図である。
【図8】従来例に係る積層型誘電体共振器の不具合を説明するための断面図である。
【符号の説明】
10、10a、10b…積層型誘電体共振器
12…アース電極 14…誘電体基板
16A〜16C…共振電極 18A、18B…内層アース電極
20A〜20C…開放端部分 22A〜22C…開放端
Claims (4)
- 複数の誘電体層が積層されて構成された誘電体基板内に複数の共振電極が前記誘電体層を間に挟んで積層方向に重ねられて構成された積層型誘電体共振器において、
少なくとも第1共振電極、第2共振電極及び第3共振電極が積層されて構成される共振器本体を間に挟むように少なくとも第1内層アース電極及び第2内層アース電極が形成され、
前記第1共振電極〜前記第3共振電極は、少なくとも各開放端部分が、前記第1内層アース電極及び前記第2内層アース電極と重なった形態で積層され、且つ、前記第1内層アース電極に最も近接した位置にある前記第1共振電極と、前記第2内層アース電極に最も近接した位置にある前記第3共振電極とで挟まれた前記第2共振電極の開放端部分が、前記第1共振電極の開放端部分及び前記第3共振電極の開放端部分と重なった形態で積層され、
前記第1共振電極と前記第3共振電極は、少なくとも各開放端部分が、前記第2共振電極の開放端部分よりも幅広に形成されていることを特徴とする積層型誘電体共振器。 - 請求項1記載の積層型誘電体共振器において、
前記第2共振電極は、前記開放端部分の幅と、それ以外の部分の幅が同じであることを特徴とする積層型誘電体共振器。 - 請求項1記載の積層型誘電体共振器において、
前記第2共振電極は、前記開放端部分が、それ以外の部分よりも幅広に、且つ、前記第1共振電極及び前記第3共振電極の各開放端部分よりも幅狭に形成されていることを特徴とする積層型誘電体共振器。 - 請求項1記載の積層型誘電体共振器において、
前記第1共振電極と前記第3共振電極は、前記第1内層アース電極及び前記第2内層アース電極と重なっていない前記各開放端部分と連続する部分が、前記各開放端部分と同じ幅に形成されていることを特徴とする積層型誘電体共振器。
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