JP4290630B2 - 還元鋳造方法およびこれに用いる還元剤 - Google Patents
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Description
Mg3N2+Al2O3→2Al+3MgO+N2
MgOは溶湯中に残留するが、微量であるため、鋳造品の特性に影響を与えることはなく、N2ガスはキャビティ外へ排出される。
還元鋳造方法によれば、溶湯の流動性がきわめて高くなり、湯周り性が良好となって、湯じわ等のない高品質の鋳造品を得ることが可能である。
すなわち、溶湯の表面に形成される酸化被膜を還元性物質により還元して鋳造する還元鋳造方法において、前記還元性物質が封入された還元剤を溶湯内に投入し、該還元剤の前記還元性物質を封入する前記溶湯と同一の金属からなる封入体を、溶湯の熱により溶融させて前記還元性物質を拡散させ、該還元性物質を溶湯の熱により活性化して溶湯に作用させて鋳造することを特徴とする。なお、ここで還元剤の封入体を溶湯の熱により溶融させるとは、封入体を溶融させ、あるいは封入体を昇華させ、あるいは燃焼させて散逸させる場合を含む概念として用いている。
なお、還元剤を構成する封入体は、カプセル状あるいはタブレット状として還元性物質を外部に露出させることなく密封するものであり、還元性物質を封入体内に封入することによって、給湯槽に投入するといった操作が容易に可能となるものである。還元剤から溶湯に拡散された還元性物質は溶湯の熱によって加熱されることにより活性化され、溶湯に対し効果的な還元作用を作用させることが可能となる。
また、前記溶湯を加圧しながら前記キャビティに充填して鋳造することにより、好適な還元鋳造が可能となる。
また、記給湯筒内に拡散された還元性物質を、給湯筒と連通するキャビティ内にも拡散させ、キャビティ内においても前記還元性物質を溶湯に作用させて鋳造することを特徴とする。給湯筒内に拡散した還元性物質は溶湯の熱によって加熱され、活性化されることによってキャビティ内に容易に拡散し、キャビティ内においても還元作用が奏される。
また、前記還元剤としては、カプセル状に形成された封入体に、還元性物質が封入されたもの、あるいは前記還元剤が、前記金属を封入体として還元性物質をタブレット状に成形したものが有効に使用できる。また、前記溶湯としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を使用する還元鋳造においては、前記還元性物質としてマグネシウム窒素化合物を封入し、かつ前記封入体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるものが有効に使用できる。
(第1の実施の形態)
図1は本発明に係る還元鋳造方法を用いて鋳造品を製造する還元鋳造装置10の第1の実施の形態を示す。この還元鋳造装置10はLPD(低圧ダイキャスティング)による鋳造装置として構成されたものであり、還元鋳造装置10の鋳造部は、成形型20と、成形型20の下方に配置された給湯槽30とからなる。
成形型20には溶湯が充填されるキャビティ20aが設けられ、給湯槽30には、給湯槽30の上部で開口し、下端部が給湯槽30の底部近傍まで延出する給湯筒(ストークス)32が設けられている。給湯筒32の下部側は、給湯槽30に貯溜されている溶湯34に浸漬している。
給湯槽30は、給湯槽30内の空間部分と外部とを連通する連通管35、および配管36、バルブ37を介して窒素ガスボンベ38に接続される。また、窒素ガスボンベ38は配管40、バルブ42を介して、給湯筒32の開口部から給湯筒32内に窒素ガスを送入する送入管44に接続する。
また、制御部52は、バルブ37およびバルブ42を開閉制御して窒素ガスボンベ38からの窒素ガスの供給を制御し、バルブ48を開閉制御してキャビティ20aからの減圧操作を制御するように設けられている。
まず、図1に示すように、給湯槽30にアルミニウムの溶湯34を貯溜し、給湯筒32の開口部32aと成形型20の注湯口22とを離間させて給湯槽30の上方に成形型20を支持した状態で、給湯筒32にカプセル状に形成された還元剤60を投入する。還元剤60は投入用ハンドあるいは投入用のシュータを利用して給湯筒32内に投入することができる。
還元剤60を給湯筒32に投入した後、カプセル61が溶融するまでの間に窒素ガスによるエアのパージが可能であれば、給湯筒32に還元剤60を投入した後、給湯筒32に窒素ガスを送入して給湯筒32内のエアをパージしてもよい。給湯筒32内をエアパージした後、バルブ42を閉める。
なお、給湯筒32内のエアを窒素ガスを用いてパージするかわりにアルゴンガス等の不活性ガスを使用することも可能である。
成形型20では制御部52によりバルブ48を開放し、真空装置50によりキャビティ20a内を減圧開始する。これによってキャビティ20a内が非酸化性雰囲気になり、キャビティ20aに溶湯34が注入される際に、還元性物質の還元作用が阻害されることを防止する。
キャビティ20aを減圧することによって、給湯筒32内で加熱されて活性化されたマグネシウム窒素化合物がキャビティ20a側にも部分的に拡散するようになる。こうして、給湯筒32からキャビティ20aに溶湯34が充填される際には、給湯筒32内においてマグネシウム窒素化合物が溶湯34の表面に形成される酸化被膜を還元し、キャビティ20a内においてもマグネシウム窒素化合物が溶湯34の表面に形成される酸化被膜を還元して鋳造されることになる。
こうして、給湯筒32にカプセル状の還元剤60を投入することにより、還元性物質を溶湯34に作用させて繰り返し、還元鋳造することが可能になる。
上述した第1の実施の形態における還元鋳造装置10は、成形型20と給湯槽30とを分離可能とし、成形型20と給湯槽30とを離間させた状態で給湯筒32に還元剤60を投入する構成としたものである。これに対して、図4、5に示す、第2の実施の形態としての還元鋳造装置11は、成形型20と給湯槽30を常時、連結状態(クローズ状態)として還元鋳造可能としたものである。なお、第2の実施の形態で使用している還元剤63は、金属あるいは樹脂等を封入体としてタブレット状に成形したものである。
まず、シリンダ70にタブレット状に成形された還元剤63を装填する。還元剤63はシリンダ70の側面に設けた開口部からシリンダ70内に挿入し、シールプランジャ71を開口部よりも前進させた位置で停止させることにより、還元剤63を外部からシールした状態でシリンダ70内に収容することができる。
図5は、給湯筒32内に落下した還元剤63が溶湯34の熱によって部分的に溶融した状態を示す。還元剤63が溶融することによって、還元剤63に封入されていたマグネシウム窒素化合物が給湯筒32内に拡散する。マグネシウム窒素化合物は給湯筒32内で加熱されてガス化し、成形型20のキャビティ20a側にも拡散していく。
このとき、給湯筒32の内部では還元性物質62であるマグネシウム窒素化合物の還元作用によってアルミニウムの溶湯34の表面に形成される酸化被膜が還元されながら成形型20に溶湯34が充填されていく。成形型20ではキャビティ20aに拡散したマグネシウム窒素化合物の作用により溶湯34の表面に形成される酸化被膜が還元されて溶湯34がキャビティ20aに充填される。
本実施形態の還元鋳造方法の場合は、成形型20と給湯槽30の内部領域を外部から遮断して鋳造することができるから、給湯筒32の内部やキャビティ20aをできるだけ外気にさらさずに鋳造でき、還元性物質の還元作用を損なわずに還元鋳造することができるという利点がある。
また、給湯筒32内においてマグネシウム窒素化合物が加熱されて活性化されることにより、還元性物質62の還元作用が有効に溶湯34に作用し、さらに効果的な還元鋳造がなされる。
たとえば、重力鋳造の場合は、給湯槽からキャビティに溶湯を供給する流路の中途にキャビティを充填するに必要な1回分の分量の溶湯を溜める貯溜部を設け、この貯溜部に還元剤を投入して溶湯を供給することにより、この貯溜部内で還元性物質を溶湯に作用させて溶湯表面の酸化被膜を還元しつつキャビティに溶湯を注入させるようにすることができる。
また、カプセル状あるいはタブレット状に形成した還元剤を使用することにより還元性物質を容易に取り扱うことが可能となり、生産コストを低減させることが可能になる。
20 成形型
20a キャビティ
22 注湯口
30 給湯槽
32 給湯筒
34 溶湯
38 窒素ガスボンベ
50 真空装置
52 制御部
60、63 還元剤
61 カプセル
62 還元性物質
70 シリンダ
71 シールプランジャ
Claims (15)
- 溶湯の表面に形成される酸化被膜を還元性物質により還元して鋳造する還元鋳造方法において、
前記還元性物質が封入された還元剤を溶湯内に投入し、
該還元剤の前記還元性物質を封入する前記溶湯と同一の金属からなる封入体を、溶湯の熱により溶融させて前記還元性物質を拡散させ、該還元性物質を溶湯の熱により活性化して溶湯に作用させて鋳造することを特徴とする還元鋳造方法。 - 給湯筒を備えた給湯槽と、給湯筒を介してキャビティに溶湯が充填される成形型を備えた鋳造装置を使用し、
前記還元剤を前記給湯筒内に投入し、給湯筒内で前記還元剤の封入体を溶湯の熱により溶融させて給湯筒内に前記還元性物質を拡散させ、該還元性物質を活性化して溶湯に作用させて鋳造することを特徴とする請求項1記載の還元鋳造方法。 - 前記溶湯を加圧しながら前記キャビティに充填して鋳造する方法であることを特徴とする請求項2記載の還元鋳造方法。
- 前記給湯筒内に拡散された還元性物質を、給湯筒と連通するキャビティ内に拡散させ、キャビティ内においても前記還元性物質を溶湯に作用させて鋳造することを特徴とする請求項2または3記載の還元鋳造方法。
- 前記溶湯としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を使用し、前記還元剤に封入する還元性物質としてマグネシウム窒素化合物を使用して鋳造することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の還元鋳造方法。
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる封入体に、還元性物質としてマグネシウム窒素化合物を封入した還元剤を使用して鋳造することを特徴とする請求項5記載の還元鋳造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項記載の還元鋳造方法において使用される還元剤であって、溶湯の熱によって溶融あるいは昇華する、前記溶湯と同一の金属からなる封入体に、還元性物質が封入されてなることを特徴とする還元剤。
- 前記還元剤が、カプセル状に形成された封入体に、還元性物質が封入されたものであることを特徴とする請求項7記載の還元剤。
- 前記還元剤が、前記金属を封入体としてタブレット状に成形したものであることを特徴とする請求項7記載の還元剤。
- 請求項5記載の還元鋳造方法において使用される還元剤であって、
アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯の熱によって溶融あるいは昇華する材料からなる封入体に、還元性物質としてマグネシウム窒素化合物が封入されてなることを特徴とする還元剤。 - 前記封入体が、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項10記載の還元剤。
- 溶湯の表面に形成される酸化被膜を還元する還元剤において、
前記還元剤は、前記溶湯の熱によって溶融あるいは昇華する、前記溶湯と同一の金属からなる封入体に、還元性物質が封入されてなることを特徴とする還元剤。 - 前記還元剤が、カプセル状に形成された封入体に、還元性物質が封入されたものであることを特徴とする請求項12記載の還元剤。
- 前記還元剤が、前記金属を封入体としてタブレット状に成形したものであることを特徴とする請求項12記載の還元剤。
- 前記溶湯としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を使用し、前記還元性物質としてマグネシウム窒素化合物を封入し、かつ前記封入体が前記アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項12〜14記載の還元剤。
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