JP4289522B2 - パターン形成体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷をはじめとして各種の用途に使用可能な新規なパターン形成体の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の各種パターンを形成するパターン形成体の製造方法としては、各種のものが製造されている。
【0003】
例えば、印刷を例に挙げて説明すると、印刷方法の一種である平版印刷に使用する平版印刷版は、インクを受容する親油性部位と、印刷インクを受容しない部位とからなるパターンを有する平版を製造し、この平版を用いて親油性部位に印刷すべきインクの画像を形成し、形成した画像を紙等に転写して印刷している。こうした印刷では、このように印刷版原版に、文字、図形等のパターンを形成してパターン形成体である印刷版を製造し、印刷機に装着して使用している。代表的な平版印刷版であるオフセット印刷用の印刷版原版の製造方法には、数多くのものが提案されている。
【0004】
オフセット印刷用の印刷版は、印刷版原版にパターンを描いたマスクを介して露光して現像する方法、あるいは電子写真方式によって直接に露光して印刷版原版上に直接に製版する方法等によって作製することができる。電子写真式のオフセット印刷版原版は、導電性基材上に酸化亜鉛等の光導電性粒子および結着樹脂を主成分とした光導電層を設け、これを感光体として電子写真方式によって露光し、感光体表面に親油性の高い画像を形成させ、続いて不感脂化液で処理し非画像部分を親水化することによってオフセット原版、すなわちパターン形成体を得る方法によって作製されている。親水性部分は水等によって浸漬して疎油性とされ、親油性の画像部分に印刷インクが受容されて紙等に転写される。しかしながら、パターン形成に当たっては不感脂化液での処理等の種々の露光後の処理が必要となる。
【0005】
また、レーザーの照射によって、インクに対して受容性の高い部位と撥インク性の部位からなるパターンを形成することが可能なヒートモード記録材料を用いた平版印刷原版を作製する方法も提案されている。ヒートモード記録材料は、現像等の工程が不要で、単にレーザー光によって画像を形成するのみで印刷版を製造することができるという特徴を有しているが、レーザーの強度の調整、レーザーにより変質した固体状物質など残留物等の処理の問題、耐刷性などに課題があった。
【0006】
また、高精細なパターンを形成する方法として、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法が知られている。
【0007】
フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルターの着色パターンの形成、マイクロレンズの形成、精細な電気回路基板の製造、パターンの露光に使用するクロムマスクの製造等に用いられているが、これらの方法によっては、フォトレジストを用いると共に、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題点があり、またフォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題点もあった。
【0008】
カラーフィルタ等の高精細なパターンを印刷等によって形成することも行われているが、印刷で形成されるパターンには、位置精度等の問題があり、高精度なパターンの形成は困難であった。
【0009】
一方、このような問題点を解決するために、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質を用いてパターンを形成するパターン形成体の製造方法等が本発明者等において検討されてきた。しかしながら、これまでの光触媒の作用によるパターン形成体の製造方法は、露光に際してフォトマスク等のマスクを用いて製造する方法が主たるものであり、このようなマスクを用いて行う方法は、CADデータ等のデジタルデータに基づいたパターンを形成するためには、これらのデータに基づいてフォトマスクを形成し、これを用いて露光する等、直接デジタルデータに基づいてパターンを形成することができないという問題が生じる場合もある。
【0010】
また、このような問題点から、フォトマスクを用いずに光描画照射によりパターンを形成する提案が発明者等によりなされている。しかしながら、今までに提案された光描画照射は、紫外光等の光触媒の触媒反応を開始させるエネルギーによってパターンを形成しようとするものであったため、紫外線レーザ等の高価かつ取り扱いが困難な装置を用いる必要があるという問題点を有するものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、パターン形成体の製造に際して、高精度にパターンを形成することが可能であり、露光後の後処理が不要で、かつCAD等のデジタルデータに基づいて直接パターンを形成することが可能であり、さらにパターン形成に際して用いる装置が比較的安価で取り扱いやすい装置であるパターン形成体の製造法を提供することを主目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は請求項1において、少なくとも光触媒含有層と、この光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の光触媒含有層に対して光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより、前記特性変化層上に光触媒の作用により特性が変化した特性変化部位からなるパターンを形成してパターン形成体を得ることを特徴とするパターン形成体の製造法を提供する。
【0013】
このように、本発明においては、特性変化層の特性を変化させる光触媒が含有された光触媒含有層に対し、光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることによりパターンを形成するものである。すなわち、いままで発明者等によって提案されてきた光描画照射によるパターンの形成は、上記紫外線等の光触媒反応開始エネルギーを用いるものであったため、装置が高価、取り扱いが困難、さらには連続出力ができない等の問題を有する場合があった。しかしながら、本発明においては紫外線等の光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域に対して赤外線等の反応速度増加エネルギーを用いてパターンを形成するようにしたものであるので、パターン形成に際して、赤外線レーザ等の比較的安価で取り扱いが容易である反応速度増加エネルギーを用いることができ、これにより上述した問題点を解決したものである。
【0014】
さらに、本発明は、上述したような方法によりエネルギーをパターン状に光触媒含有層に加え、エネルギーが加えられた部分に相当する特性変化層の特性を変化させてパターンを形成するものであるので、特にエネルギーを加えた後の後処理も必要無く、高精細なパターンを有するパターン形成体を製造することができる。
【0015】
本発明において用いられる光触媒反応開始エネルギーは、光であることが好ましく(請求項2)、中でも紫外光を含む光であることが特に好ましい(請求項3)。これは、後述するように本発明においては二酸化チタンが光触媒として好適に用いられるのであるが、この二酸化チタンのバンドギャップの関係から光触媒反応開始エネルギーとしては紫外光が好ましいからである。
【0016】
さらに、本発明においては、請求項4に記載するように、この光触媒反応開始エネルギーは、特性変化層上のパターンが形成される領域に相当する光触媒含有層上の領域全面に加えられることが好ましい。このように、パターンが形成される領域に相当する光触媒含有層の領域全面に光触媒反応開始エネルギーを加えて光触媒反応を開始させ、光触媒反応が開始された領域中に反応速度増加エネルギーを用いてパターンを描くことにより、この反応速度増加エネルギーが加えられた部分のみ光触媒反応の反応速度が増加する。これにより、特性変化層中の相当する部分の特性が変化して特性変化部位となり、特性変化層上に特性変化部位からなるパターンが形成されるのである。
【0017】
また、本発明においては、請求項5に記載するように、上記反応速度増加エネルギーが、熱エネルギーであることが好ましい。このような熱エネルギーを加える方法については、赤外線レーザ(請求項6)もしくは感熱ヘッド(請求項8)を用いることが好ましい。このように、赤外線レーザや感熱ヘッドを用いる方法は、比較的安価でかつ取り扱いが容易であるからである。
【0018】
熱エネルギーを赤外線レーザを用いて加え、これによりパターンを形成する場合は、請求項7に記載するように、機械式光偏向器によって赤外線レーザを偏向させてパターンを形成することが好ましい。機械式光偏向器は、比較的装置が複雑でなく制御等が容易であるからである。
【0019】
本発明においては、請求項9に記載するように、少なくとも光触媒含有層と特性変化層とを基板上に設けて形成したパターン形成体用基板を用いることが好ましい。これは、強度面、コスト面および機能面等を考慮した場合、特性変化層および光触媒含有層が基板上に薄膜として形成されることが好ましいからである。
【0020】
また、本発明において反応速度増加エネルギーを赤外線レーザにより加える場合は、請求項10に記載するように、少なくとも光触媒含有層と特性変化層とが基板上に設けられ、さらに反応速度増加エネルギーとして熱エネルギーを加えるために赤外線レーザを照射した際に光触媒含有層にこの熱エネルギーが作用するように赤外線レーザ吸収層が配置されたパターン形成体用基板を用いることが好ましい。このような赤外線レーザ吸収層が配置された方が、この赤外線レーザを用いてパターンを形成する際に感度の面で好ましいからである。
【0021】
一方、本発明において反応速度増加エネルギーとしての熱エネルギーを感熱ヘッドにより加える場合は、請求項11に記載するように、少なくとも光触媒含有層と特性変化層とが基板上に設けられ、さらに熱エネルギーを加えるための感熱ヘッドが接する位置に耐熱滑性層が配置されたパターン形成体用基板を用いることが好ましい。このような耐熱滑性層を設けた方が、感熱ヘッドの動きが円滑となり、また基板等に対して耐熱性がそれほど強く求められなくなる関係から基板等の材料選択の幅が広がるからである。
【0022】
本発明においては、基板上に設けられる光触媒含有層と特性変化層とが同一の層に形成された光触媒含有特性変化層であってもよいし(請求項12)、基板上に光触媒含有層が形成され、この光触媒含有層上に特性変化層が形成されてもよい(請求項13)、さらに基板上に特性変化層が形成され、この特性変化層上に光触媒含有層が形成されてもよい。ただし、基板上に特性変化層が形成され、この特性変化層上に光触媒含有層が形成される場合は、反応速度増加エネルギーによりパターンが形成された後、上記光触媒含有層が取り除かれてパターン形成体を得る方法である必要がある(請求項14)。
【0023】
このように、光触媒含有層と特性変化層とが同一の層に形成された光触媒含有特性変化層とした場合は、光触媒と特性が変化する化合物とが同一の層に存在するため、光触媒反応がスムースに行われるという効果を有し、さらに基板上への一回の塗布で光触媒含有層と特性変化層とが形成することが可能であるので、パターン形成体の製造が容易となるという効果を有する。また、基板上に光触媒含有層を設け、その上に特性変化層を設ける構成とした場合は、パターン形成体を製造後、そのパターンに沿って機能性部を形成して機能性素子とした場合、機能性部が直接光触媒と接触しないことから、機能性部に経時的な劣化が生じにくいという利点を有する。さらに、基板上に特性変化層を設け、その上に光触媒含有層を形成した場合は、上述したようにパターン形成後光触媒含有層は除去されるため、パターン形成体自体が光触媒を含まない構成となる。このためパターン形成体の経時的な劣化のおそれが少ないという利点を有する。
【0024】
この基板上に特性変化層を形成し、この特性変化層上に光触媒含有層を形成した場合は、請求項15に記載するように、光触媒含有層上に透明基板が光触媒含有層と一体に形成されており、前記反応速度増加エネルギーによりパターンが形成された後、光触媒含有層が容易に取り去ることができるように特性変化層と光触媒含有層とが接触しているような構成としてもよい。
【0025】
このような構成とすることにより、上記光触媒含有層と透明基板とが一体に形成された部材(以下、光触媒含有層側基板とする。)は、特性変化層にこの光触媒含有層側基板を接触させて上記2種類のエネルギーを加え、特性変化層上に光触媒の作用によりパターンを形成した後、この光触媒含有層側基板を取り外すことにより、再度この光触媒含有層側基板を用いることができる。すなわち、光触媒含有層側基板をこのように構成することにより、原則的には何度でもこの光触媒含有層側基板を用いてパターン形成体を製造することが可能となる。したがって、多数のパターン形成体を一度に製造する場合に利点を有するものである。
【0026】
本発明のパターン形成体の製造法においては、請求項16に記載するように、光触媒含有層に含有される光触媒が、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましい。中でも請求項17に記載するように、二酸化チタン(TiO2)であることが好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0027】
本発明においては、請求項18に記載するように、本発明における特性変化層が、光触媒含有層中の光触媒の作用により表面の濡れ性が変化する濡れ性変化層であることが好ましい。この特性変化層の特性は種々のものがあるが、その中でも重要なものとして濡れ性の変化を挙げることができる。このように特性変化層を濡れ性変化層とすることにより、光触媒の作用により濡れ性の変化したパターンをパターン形成体に形成することが可能となり、この濡れ性の変化した部位にカラーフィルタの画素部形成用の着色インク等の機能性部用組成物を付着させることにより、後述するように種々の機能性素子、例えばカラーフィルターやマイクロレンズ等を形成することができるからである。
【0028】
本発明においては、請求項19に記載するように、上記濡れ性変化層が、光触媒の作用により水の接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることが好ましい。このように、上記二つのエネルギーを加えることにより水の接触角が低下するように濡れ性の変化する濡れ性変化層が形成されれば、エネルギーを加えてパターンを形成することにより容易にこの層の濡れ性を変化させ、水の接触角の小さい親インク性領域のパターンを形成することができ、例えば機能性部用組成物を付着させる部分のみ容易に親インク性領域のパターンとすることが可能となる。したがって、効率的にカラーフィルタやマイクロレンズ等の機能性素子が製造でき、コスト的に有利となるからである。
【0029】
本発明においては、濡れ性変化層上の水との接触角が、濡れ性の変化していない部分において90度以上であり、濡れ性の変化した部分(特性変化部位)において30度以下であることが好ましい(請求項20)。濡れ性の変化していない部分は、撥インク性が要求される部分であることから、水の接触角が90度より小さい場合は、撥インク性が十分でなく、インク等の機能性部用組成物が残存する可能性が生じるため好ましくない。また、エネルギーを加えた部分の水の接触角を30度以下としたのは、30度を越える場合は、この部分でのインク等の機能性部用組成物の広がりが劣る可能性があり、例えば機能性部がカラーフィルタの画素部である場合、色抜けが生じる等の不都合が生じる可能性があるからである。
【0030】
また、請求項21に記載するように、この濡れ性変化層がオルガノポリシロキサンを含有する層であることが好ましい。本発明において、濡れ性変化層に要求される特性としては、エネルギーが加えられていない場合は撥インク性であり、エネルギーが加えられた場合は光触媒含有層中の光触媒の作用により親インク性となるといった特性である。このような特性を濡れ性変化層に付与する材料としては、まず第1にオルガノポリシロキサンが挙げられるからである。
【0031】
このようなオルガノポリシロキサンの中でも、請求項22に記載するように、YnSiX(4-n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンが上記特性を良く満たすものであるからである。
【0032】
また、本発明においては、請求項23に記載するように、濡れ性変化層が、光触媒の作用により分解されにくい基材と、光触媒の作用により分解されやすい分解除去剤とからなり、上記2種類のエネルギーを加えることで分解除去剤が分解除去されることにより、濡れ性変化層上の濡れ性が変化する層であってもよい。
【0033】
例えば、上記基材が親インク性の材料であり、上記分解除去剤が撥インク性の材料である場合、上記2種類のエネルギーが加えられていない領域は、分解除去剤の影響で撥インク性を示し、エネルギーが加えられた領域は上記分解除去剤が分解除去されることにより、基材の影響で親インク性を示すようになる。このようにして濡れ性変化層としての機能を発揮するのである。
【0034】
本発明においては、請求項24に記載するように、上記特性変化層が、光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去される分解除去層であってもよい。このように、特性変化層を光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去される分解除去層とすることにより、エネルギーが加えられた部分は光触媒の作用により分解され除去されることになる。このようにエネルギーが加えられた部分は、特に後処理の必要性もなく完全に分解除去することが可能であるので、容易に凹凸のパターンを形成することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のパターン形成体の製造法について詳細に説明する。本発明のパターン形成体の製造法は、少なくとも光触媒含有層と、この光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の光触媒含有層に対して光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより、前記特性変化層上に光触媒の作用により特性が変化した特性変化部位からなるパターンを形成してパターン形成体を得ることを特徴とするものである。
【0038】
特に、本発明においては、特性変化層の特性を変化させる光触媒が含有された光触媒含有層に対し、光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることによりパターンを形成するところに大きな特徴を有するものである。
【0039】
本発明においては、パターンを形成する領域に対して光触媒反応開始エネルギーを加えることにより、接触する、もしくは同一層である特性変化層に対する光触媒の触媒反応を開始させる。そして、この光触媒開始エネルギーが加えられた領域内に、反応速度増加エネルギーを加える。このように反応速度増加エネルギーを加えることにより、既に光触媒反応開始エネルギーが加えられ、光触媒の触媒作用により反応が開始されている特性変化層内の反応が、急激に促進される。そして所定の時間、反応速度増加エネルギーを加えることにより、特性変化層内の特性の変化を所望の範囲まで変化させ、反応速度増加エネルギーが加えられたパターンを特性変化部位のパターンとすることができる。
【0040】
このように、いままで発明者等によって提案されてきた光描画照射によるパターンの形成が、上記紫外線等の光触媒反応開始エネルギーを用いるものであったため、装置が高価、取り扱いが困難、さらには連続出力ができない等の問題を有する場合があったのであるが、本発明においては上述したように赤外線等の反応速度増加エネルギーを用いてパターンを形成するようにしたものであるので、パターン形成に際して、赤外線レーザ等の比較的安価で取り扱いが容易である反応速度増加エネルギーを用いることができ、これにより上述した問題点を解決したものである。
【0041】
さらに、本発明は、上述したような方法によりエネルギーをパターン状に光触媒含有層に加え、エネルギーが加えられた部分に相当する特性変化層の特性を変化させてパターンを形成するものであるので、特にエネルギーを加えた後の後処理も必要無く、高精細なパターンを有するパターン形成体を製造することができる。
【0042】
(光触媒反応開始エネルギー)
本発明に用いられる光触媒反応開始エネルギーとは、上述したように光触媒が接触するもしくは同一の層内にある特性変化層中の化合物に対して、その特性を変化させるための触媒反応を開始させるエネルギーをいう。
【0043】
ここで加える光触媒反応開始エネルギーの量は、特性変化層中の特性の変化を急激に生じない程度の量である。加えられる光触媒反応開始エネルギーの量が少ない場合は、反応速度増加エネルギーを加えてパターンを形成する際の感度が低下するため好ましくなく、またこの量が多すぎると、光触媒反応開始エネルギーを加えた特性変化層の特性の変化の度合いが大きくなりすぎて、反応速度増加エネルギーを加えた領域との差異が不明確となってしまうため好ましくない。この加えるエネルギーの量に関しては、予めエネルギーを加える量と特性変化層中の特性の変化量とを予備実験等を行うことにより決定される。
【0044】
本発明におけるこの光触媒反応開始エネルギーとしては、光触媒反応を開始させることができるエネルギーであれば特に限定されるものではないが、中でも光であることが好ましい。
【0045】
本発明において用いられる光触媒は、そのバンドギャップによって触媒反応を開始する光の波長が異なる。例えば、硫化カドニウムであれば496nm、また酸化鉄であれば539nmの可視光であり、二酸化チタンであれば388nmの紫外光である。したがって、光であれば可視光であれ紫外光であれ本発明で用いることができる。しかしながら、後述するようにバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易といった理由から光触媒としては二酸化チタンが好適に用いられる関係上、この二酸化チタンの触媒反応を開始させる紫外光を含む光であることが好ましい。具体的には、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲の紫外光が含まれることが好ましい。
【0046】
このような紫外光を含む光の光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の紫外線光源を挙げることができる。
【0047】
なお、二酸化チタンを用いた場合でも、例えばクロム、白金、パラジウム等の金属イオンのドーピング、蛍光物質の添加、感光性色素の添加等によって、可視およびその他の波長に感受性を有するようにすることも可能であり、この場合はその感受性を有する波長を含む光を光触媒反応開始エネルギーとして用いることが好ましい。このような色素としては、シアニン色素、カルボシアニン色素、ジカルボシアニン色素、ヘミシアニン色素等のシアニン色素を挙げることができ、他の有用な色素としては、クリスタルバイオレット、塩基性フクシンなどのトリフェニルメタン色素等のジフェニルメタン色素、ローダミンBの様なキサンテン色素、ビクトリアブルー、ブリリアントグリーン、マラカイトグリーン、メチレンブルー、ピリリウム塩、ベンゾピリリウム塩、トリメチンベンゾピリリウム塩、トリアリルカルボニウム塩等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、この光触媒反応開始エネルギーが加えられる範囲は、特性変化層の一部分であってもよく、例えばこの光触媒反応エネルギーをパターン状に加え、さらに後述する反応速度増加エネルギーもパターン状に加えることにより、特性変化部位のパターンを形成することも可能であるが、工程の簡略化、単純化等の理由から、この光触媒反応開始エネルギーをパターンを形成する領域全面にわたって加えることが好ましく、このように全面にわたって光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域に反応速度増加エネルギーを加えることにより、特性変化層上に特性変化部位のパターンを形成することが好ましい。
【0049】
(反応速度増加エネルギー)
次に、本発明に用いられる反応速度増加エネルギーについて説明する。本発明に用いられる反応速度増加エネルギーとは、上記光触媒反応開始エネルギーによって開始された特性変化層の特性を変化させる反応の反応速度を増加させるためのエネルギーをいう。本発明においては、このような作用を有するエネルギーであればいかなるエネルギーであっても用いることができるが、中でも熱エネルギーを用いることが好ましい。
【0050】
このような熱エネルギーをパターン状に光触媒含有層に加える方法としては、光触媒含有層上に熱によるパターンが形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、赤外線レーザによる方法や感熱ヘッドによる方法等を挙げることができる。このような赤外線レーザとしては、例えば指向性が強く、照射距離が長いという利点を有する赤外線YAGレーザ(1064nm)や、比較的安価であるという利点を有するダイオードレーザ(LED;830nm、1064nm、1100nm)等の他、半導体レーザ、He−Neレーザ、炭酸ガスレーザ等を挙げることができる。
【0051】
本発明においては、上述した光触媒反応開始エネルギーを加えることにより、光触媒を活性化させて特性変化層内の触媒反応による特性変化を開始させ、この特性変化が生じた部分に反応速度増加エネルギーを加えてその部分の触媒反応を促進させることにより、反応速度増加エネルギーが加えられた領域と、加えられなかった領域との反応速度の差により、パターンを形成することができる。
【0052】
(パターン形成体の製造法の概略)
以下、本発明のパターン形成体の製造法について、図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明のパターン形成体の製造法の一例を示すものである。この例においては、まず図1(A)に示すように、基板1上に光触媒含有層と特性変化層とが同一の層として形成された層(光触媒含有特性変化層2)が設けられたパターン形成体用基板3が形成される。
【0053】
次に、このパターン形成体用基板3の光触媒含有特性変化層2に紫外光(光触媒反応開始エネルギー)4が照射されると共に、赤外線レーザ発生装置5から照射された赤外線レーザ(反応速度増加エネルギー)6がレーザ偏向装置7により偏向されつつ光触媒含有特性変化層2上に照射されて、光触媒含有特性変化層上に特性変化部位8のパターンを形成する(図1(B))。最終的にパターンが形成し終わると図1(C)に示すような表面に特性変化部位8のパターンが形成されたパターン形成体9が得られる。
【0054】
以下、各工程毎に詳しく説明する。
【0055】
(パターン形成体用基板の調製)
本発明に用いられるパターン形成体用基板は、少なくとも光触媒含有層と特性変化層とを有するものであればよいのであるが、強度や得られるパターン形成体の機能等の理由から基板上に光触媒含有層と特性変化層が形成されていることが好ましい。この場合、図1に示す例のように、光触媒含有層と特性変化層とが同一の層(光触媒含有特性変化層2)であってもよいし、光触媒含有層と特性変化層とが別に形成されていてもよい。なお、本発明におけるパターン形成体用基板は、少なくとも上記光触媒含有層と上記特性変化層とを有するものであればよく、必要に応じて他の層等が形成されていてもよい。
【0056】
図2は、光触媒含有層と特性変化層とが別に形成された例を示すものである。この例では、図2(A)に示すように基板1上に光触媒含有層10が形成され、この光触媒含有層10上に特性変化層11が設けられてパターン形成体用基板3が形成されている。このようなパターン形成体用基板3の光触媒含有層10に、図1(B)に示す例と同様にして、光触媒反応開始エネルギー(例えば紫外光4)を全面にわたって加え、そしてこの光触媒反応開始エネルギーが加えられた部位に反応速度増加エネルギー(例えば赤外線レーザ6)をパターン状に加えることにより、図2(B)に示すように、特性変化層11に特性変化部位8のパターンが形成されたパターン形成体9が形成される。
【0057】
図3は、光触媒含有層と特性変化層とが別に形成された他の例を示すものである。この例においては、図3(A)に示すように基板1上にまず特性変化層11が形成され、この特性変化層11上に光触媒含有層10が設けられてパターン形成体用基板3が形成されている。このパターン形成体3の光触媒含有層10に対して、図1(B)と同様に、紫外線(光触媒反応開始エネルギー)4を加え、さらに赤外線レーザ発生装置5より発生した赤外線(反応速度増加エネルギー)6をレーザ偏向装置7により偏向させてパターン状に光触媒含有層10上に加える(図3(B))。これにより、接触する特性変化層11に特性変化部位8のパターンを形成する(図3(C))。そして、表面の光触媒含有層10を粘着テープ等により引き剥がすことにより、特性変化層11に特性変化部位8のパターンが形成されたパターン形成体9が得られる(図3(D))。
【0058】
図4は、上記図3に示す特性変化層上に光触媒含有層が形成された例の別の態様を示すものである。この例においては、まず基板1上に特性変化層11が形成された特性変化層側基板12と、透明基板13上に光触媒含有層10が形成された光触媒含有層側基板14とを別体に形成したパターン形成体用基板3を準備する(図4(A))。次にこの特性変化層側基板12の特性変化層11と、光触媒含有層側基板14の光触媒含有層10とが接触するように配置し、これに図1(B)と同様にして2種類のエネルギーを加える(図3(B))。この場合、紫外光(光触媒反応開始エネルギー)4および赤外線レーザ(反応速度開始エネルギー)6とは、透明基板13を透過して光触媒含有層10に照射されることになる。そして特性変化層用基板12と光触媒含有層側基板14とを離すことにより(図4(C))、特性変化層11に特性変化部位8のパターンが形成されたパターン形成体9を得ることができる(図4(D)。
【0059】
本発明におけるパターン形成体用基板は、このように光触媒含有層と特性変化層とが同一の層で形成されても(すなわち、光触媒含有特性変化層であっても)光触媒含有層と特性変化層とが別に形成されていてもよい。
【0060】
光触媒含有層と特性変化層とが同一の層、すなわち光触媒含有特性変化層とした場合(図1の例)は、光触媒と特性が変化する化合物とが同一層に存在するため、光触媒反応がスムースに進むという効果を有し、さらに基板上への一回の塗布で光触媒含有層と特性変化層とが形成することが可能であるので、パターン形成体の製造が容易となるという効果をも有する。また、基板上に光触媒含有層を設け、その上に特性変化層を設ける構成とした場合(図2の例)は、パターン形成体を製造後、そのパターンに沿って機能性部を形成して機能性素子とした場合、機能性部が直接光触媒と接触しないことから、機能性部の経時的な劣化が生じにくいという利点を有する。さらに、基板上に特性変化層を設け、その上に光触媒含有層を形成した場合(図3の例)は、パターン形成後光触媒含有層は除去されるため、パターン形成体自体が光触媒を含まない構成となる。このためパターン形成体の経時的な劣化のおそれが少ないという利点を有する。
【0061】
この場合、図4に示すように、光触媒含有層10と特性変化層11とを予め別体に形成することにより、上記光触媒含有層10と透明基板13とが一体に形成された光触媒含有層側基板14は、特性変化層11にこの光触媒含有層側基板14を接触させて図4(B)に示すように2種類のエネルギーを加え、特性変化層11上に光触媒の作用により特性変化部位8パターンを形成した後、取り外すことにより、再度この光触媒含有層側基板14を用いることができる。すなわち、光触媒含有層側基板をこのように構成することにより、原則的には何度でもこの光触媒含有層側基板を用いてパターン形成体を製造することが可能となる。したがって、多数のパターン形成体を一度に製造する場合に利点を有するものである。
【0062】
この際に用いられる透明基板13としては、図4(B)に示すように紫外光4および赤外線レーザ6照射の際に、光触媒含有層側基板14の光触媒含有層10が形成されていない側から照射可能なように、UV光、赤外線レーザ等の光を透過する材質であることが好ましい。例えば石英ガラス、パイレックスガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等を挙げることができる。
【0063】
なお、本発明におけるパターン形成体用基板とは、いまだ特性変化層に特性変化部位によるパターンが形成されていない状態の基板を示し、このパターン形成体用基板に対して2種類のエネルギーが加えられ、特性変化層上に特性変化部位のパターンが形成されたものをパターン形成体とする。
【0064】
(光触媒含有層)
上記図1から図4に示すように、本発明に用いられるパターン形成体用基板3には少なくとも光触媒含有層10(光触媒含有特性変化層2)が含まれる。
【0065】
この光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が接触する、もしくは同一の層として形成された特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよいし、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の濡れ性は特に親インク性であっても撥インク性であってもよい。なお、図2の例のように、光触媒含有層10上に特性変化層11が形成される場合は、この特性変化層を形成する際の加工性から、親インク性とされていることが好ましい。
【0066】
この光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層上に接触する、もしくは同一の層とされている特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0067】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0069】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0070】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0071】
本発明における光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダーと混合して形成されたものであってもよい。
【0072】
光触媒単独で形成する場合、例えば二酸化チタンの場合は、基板、透明基板もしくは特性変化層上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0073】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばこのようなバインダとしては、後述する濡れ性変化層の説明のところで詳しく説明するオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0074】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を透明基板上もしくは特性変化層上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0075】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0076】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、透明基板上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0077】
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0078】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0079】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0080】
(特性変化層)
図1から図4に示すように、本発明に用いられるパターン形成体用基板3のもう一つの必須の層は、特性変化層11である。本発明における特性変化層とは、光触媒の作用により特性が変化する層であればいかなる層であってもよく、例えば特性変化層中にスピロピラン等のフォトクロミック材料あるいは光触媒の作用により分解される有機色素等を特性変化層に混合し、特性変化層を光触媒の作用により着色する層としてもよい。
【0081】
また、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどのポリマー材料等を用いることにより、上記二つのエネルギーを加えた部分が光触媒の作用により極性基が導入されたり表面の状態が粗い状態となったりすることにより種々の物質との接着性を向上させるようにした層を特性変化層としてもよい。このように特性変化層を接着性が変化する接着性変化層とすることにより、反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより接着性の良好なパターンを形成することが可能となる。このような接着性の良好な部位のパターンを有するパターン形成体は、例えば、このようなパターン形成体に金属成分を蒸着し、金属の薄膜を形成し、次いで接着性の違いを利用して金属薄膜を例えば粘着剤や薬剤等により剥離することにより、金属の薄膜のパターンを形成することが可能となる。この方法によれば、レジストのパターンを形成することなく金属薄膜のパターンを形成することが可能となり、印刷法によるものよりも高精細なパターンを有するプリント基板や電子回路素子等を形成することができる。
【0082】
このように、特性変化層は光触媒の作用により変化する種々の特性を有する層であれば特に限定されないのであるが、本発明においては中でも特性変化層が光触媒の作用により濡れ性が変化して濡れ性によるパターンが形成される濡れ性変化層である場合、および特性変化層が光触媒の作用により分解除去され凹凸によるパターンが形成される分解除去層である場合の二つの場合が、特に得られる機能性素子等の関係からより本発明の有効性を引き出すものであるので好ましい。
【0083】
(濡れ性変化層)
本発明でいう濡れ性変化層とは、上記二つのエネルギーを加えた際に光触媒の作用により表面の濡れ性が変化し、濡れ性の変化した部位によるパターンが形成できる層をいう。この濡れ性変化層は、特に限定されるものではないが、この濡れ性変化層が、エネルギーを加えることにより水の接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることが好ましい。
【0084】
このように、エネルギーを加えることにより水の接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とすることにより、パターン状に反応速度増加エネルギーを加えることにより容易に濡れ性を変化させ、水の接触角の小さい親インク性領域のパターンを形成することができる。したがって、例えばこの濡れ性変化層上の機能性部が形成される部分のみエネルギーを加えることにより容易に親インク性領域とすることが可能となり、この部分に機能性部用組成物を付着させることにより、容易に機能性素子を形成することができる。したがって、効率的に機能性素子が製造でき、コスト的に有利となるからである。
【0085】
ここで、親インク性領域とは、水の接触角が小さい領域であり、機能性部用組成物、例えばカラーフィルタの画素部着色用のインクやマイクロレンズ形成用組成物等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥インク性領域とは、水の接触角が大きい領域であり、上記インクやマイクロレンズ形成用組成物等に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0086】
上記濡れ性変化層は、その水の接触角が、上記二つのエネルギーが加えられていない部分においては90度以上、好ましくは140度以上であることが好ましい。これは、エネルギーが加えられていない部分は、本発明においては撥インク性が要求される部分であることから、水の接触角が90度より小さい場合は、撥インク性が十分でなく、カラーフィルタの画素部着色用のインク等の機能性部用組成物が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0087】
また、上記濡れ性変化層は、上記二つのエネルギーが加えられると水の接触角が低下して30度以下、より好ましくは20度以下となるような層であることが好ましい。エネルギーが加えられた部分の水の接触角を30度以下としたのは、30度を越える場合は、この部分でのインク等の機能性部用組成物の広がりが劣る可能性があり、機能性部の欠け等が生じる可能性があるからである。
【0088】
なお、ここでいう水の接触角は、マイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後に接触角測定器(協和界面科学(株)製CA一Z型)を用いて測定した値をいう。
【0089】
このような濡れ性変化層に用いられる材料としては、上述した濡れ性変化層の特性、すなわち上記二つのエネルギーを加えることにより、接触する光触媒含有層中の光触媒により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0090】
上記の(1)の場合、一般式:
YnSiX(4-n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0091】
具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−へキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;および、それらの部分加水分解物;および、それらの混合物を使用することができる。
【0092】
また、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0093】
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;および
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3。
【0094】
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、濡れ性変化層の濡れ性が変化していない部分の撥インク性が大きく向上し、カラーフィルターの画素部着色用のインク等の機能性部用組成物の付着を妨げる機能を発現する。
【0095】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0096】
【化1】
【0097】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0098】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
【0099】
また、本発明においては、濡れ性変化層が、光触媒の作用により分解されにくい基材と、光触媒の作用により分解されやすい分解除去剤とからなり、上記2種類のエネルギーを加えることで分解除去剤が分解除去されることにより、濡れ性変化層上の濡れ性が変化する層であってもよい。
【0100】
この場合、光触媒の作用により分解されにくい基材が親インク性で、光触媒の作用により分解されやすい分解除去剤分が撥インク性であっても、またその逆であってもよい。
【0101】
上記基材としては、光触媒の作用により分解しにくい材料であれば特に限定されるものではないが、上述したオルガノポリシロキサン等のポリシロキサンが好適に用いられる。また、分解除去剤としては、後述する分解除去層に用いられる材料を用いることが可能である。
【0102】
基材として上述したオルガノポリシロキサンを用い、分解除去剤として撥インク性の化合物を用いた場合、光触媒の作用から上記2種類のエネルギーが加えられた部分は、基材が親インク性に変化し、分解除去剤は分解される。したがって、エネルギーが加えられた部分は親インク性領域となる。一方、エネルギーが加えられなかった部分は、上記分解除去剤が撥インク性を示すと共に、基材自体も撥インク性を示すため、より強い撥インク性領域となる。よって、濡れ性の大幅に異なるパターンを形成することができる。
【0103】
このような濡れ性変化層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基板や光触媒含有層上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することができる。
【0104】
本発明において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0105】
本発明において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、接触する、もしくは同一の層である光触媒含有層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギーを加えた部分の濡れ性を変化させて親インク性とし、他の部分との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、機能性部用組成物、例えばカラーフィルタの画素部着色用のインク等との受容性(親インク性)および反撥性(撥インク性)を高めることによって、品質が良好でかつコスト的にも有利なカラーフィルタ等の機能性素子を得ることができる。
【0106】
(分解除去層)
次に分解除去層について説明する。この分解除去層は、上記2種類のエネルギーが加えられた際に光触媒含有層中の光触媒の作用により、層を形成する物質が酸化等されて劣化・分解し、最終的に除去される層である。
【0107】
このように分解除去層は、エネルギーが加えられた部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分からなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。したがって各種印刷版原版等の凹凸のパターンを必要とする部材は、この方法により容易に形成することができる。
【0108】
なお、この分解除去層は、エネルギーを加えることによる光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0109】
また、この分解除去層を用いた場合は、凹凸を形成するのみならず、分解除去されて露出する露出部材と分解除去層との特性の相違によりパターンを形成することも可能である。このような特性としては、接着性、発色性等種々のものを挙げることができるが、本発明においては中でも濡れ性を挙げることができ、この濡れ性の相違によりパターンを形成することが、最終的に素子を形成した場合の有効性の点で好ましい。
【0110】
すなわち、本発明においては、分解除去層とこの分解除去層が分解除去されて露出する露出部材との水の接触角が異なるように構成されていることが好ましく、特に露出部材の水の接触角より分解除去層上の水の接触角が大きいことが好ましく、特に好ましくは分解除去層の水との接触角が60度以上であることである。
【0111】
これは、本発明において上記二つのエネルギーが加えられていない部分は分解除去層が残存する部分すなわち凸部となることから、この凸部に機能性部用組成物を付着させるよりは分解除去層が除去され露出部材が露出した凹部に機能性部用組成物を付着させることが好ましい。このため、分解除去層は機能性部用組成物が付着しにくいように撥インク性を示す方が好ましく、露出部材の水の接触角より分解除去層上の水の接触角が大きいことが好ましくなるのである。分解除去層上の水の接触角が60度より小さい場合は、撥インク性が十分でなく、例えばカラーフィルタの画素部着色用のインク等の機能性部用組成物が残存する可能性が生じるため好ましくない。
【0112】
このような分解除去層に用いられる材料としては、上述した分解除去層の特性、すなわち上記二つのエネルギーを加えることにより接触する光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去される材料で、かつ好ましくは水との接触角が60度以上となる材料である。
【0113】
このような材料としては、例えば炭化水素系、フッ素系またはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、もしくはパーフルオロアルキルアミンオキシド等を挙げることができる。
【0114】
このような材料は、炭化水素系の非イオン系界面活性剤であれば、NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ(商品名、日本サーファクタント工業社製)、フッ素系あるいはシリコン系の非イオン系界面活性剤であれば、ZONYL FSN、FSO(商品名、デュポン社製)、サーフロンS−141、145(商品名、旭硝子社製)、メガファックF−141、144(商品名、大日本インキ社製)、フタージェント F200、F251(商品名、ネオス社製)、ユニダインDS−401、402(商品名、ダイキン工業社製)、フロラードFC−170、176(商品名、スリーエム社製)として入手することができる。
【0115】
この分解除去層の材料としては他にもカチオン系、アニオン系、両性界面活性剤を用いることが可能であり、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等を挙げることができる。
【0116】
さらに、分解除去層の材料としては、界面活性剤以外にも種々ポリマーもしくはオリゴマーを用いることができる。このようなポリマーもしくはオリゴマーとしては、例えばポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等を挙げることができる。本発明においては、中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の水との接触角の高い撥インク性のポリマーを用いることが好ましい。
【0117】
このような分解除去層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基板、光触媒含有層もしくは露出部材(基板および露出部材、もしくは光触媒含有層および露出部材が共通しても良い。)上に塗布することにより形成することができる。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。
【0118】
本発明において、この分解除去層の厚みは光触媒による分解速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0119】
(光触媒含有特性変化層)
本発明においては、上述したように光触媒含有層と特性変化層とが同一の層として形成されてもよい。このように光触媒含有層と特性変化層とが同一の層として形成された層を、本発明におていは光触媒含有特性変化層とする。したがって、本発明において、光触媒含有特性変化層は、光触媒含有層および特性変化層のいずれにも該当する層として取り扱う。
【0120】
本発明における光触媒含有特性変化層は、例えば特性変化層が濡れ性変化層である場合は、上記濡れ性変化層形成用の塗布液等の組成物に光触媒、例えば二酸化チタンを分散させて基板上に塗布することにより形成することができる。また、同様に特性変化層が分解除去層である場合は、上記分解除去層形成用の塗布液等の組成物に光触媒を分散させて形成することができる。
【0121】
このように、光触媒含有層と特性変化層とが同一の層として光触媒含有特性変化層として形成された場合は、上述した2種類のエネルギーが、この光触媒含有特性変化層に加えられ、このエネルギーを加えたことにより生じる特性の変化、すなわち特性変化部位の形成も、光触媒含有特性変化層においてなされる。例えば、特性の変化が濡れ性の変化の場合は、光触媒含有特性変化層の表面の濡れ性が変化するのであり、特性の変化が分解除去による凹凸の形成であるのであれば、この光触媒含有特性変化層において凹凸が形成されるのである。
【0122】
(基板)
本発明のパターン形成体の製造法において、特性変化層および光触媒含有層、もしくは光触媒含有特性変化層は強度との関係や最終的な機能性素子との関係から、図1から図4に示すように基板1上に形成されることが好ましい。このような基板としては、パターン形成体もしくはパターン形成体により形成された機能性素子の用途に応じて、ガラス、アルミニウム、およびその合金等の金属、プラスチック、織物、不織布等を挙げることができる。
【0123】
また、紫外光や赤外線レーザを用いる場合であって、この基板を透過して光触媒含有層に照射する必要がある場合や、さらに後述する赤外線レーザ吸収層がパターン形成体用基板に形成された場合であって、赤外線レーザがこの基板を透過して赤外線レーザ吸収層に到達するような構成である場合は、この基板は赤外線レーザや紫外光を透過し、減衰させない材料で形成されていることが好ましい。
【0124】
また、上述したように特性変化層が分解除去層である場合は、基板と分解除去層との間に露出部材を設けてもよい。この露出部材は、上述したように分解除去層に上述した2種類のエネルギーが加えられることによる光触媒の作用により分解除去された際に露出する部材であり、分解除去層とその特性が異なるもので形成されていることが好ましい。特に、上述したように、上記特性が濡れ性である場合は、水との接触角が30度以下のものであることが好ましい。具体的にはガラスセラミックス等の無機材料や、表面をプラズマやカップリング剤により親水化処理したポリマー材料等を挙げることができる。
【0125】
なお、本発明においては、上記基板もしくは光触媒含有層がこの露出部材としての機能を有する場合は、別に露出部材を設ける必要はない。
【0126】
(赤外線レーザ吸収層)
本発明においては、上述したように光触媒含有層に対して、光触媒反応開始エネルギーおよび反応速度増加エネルギーを加えることにより、特性変化層上に特性変化部位によるパターンを形成するところに特徴を有するのであり、上述したようにこの反応速度増加エネルギーとしては熱エネルギーが好適である。
【0127】
このように、熱エネルギーを光触媒含有層に加える好ましい方法のひとつとして、赤外線レーザを用いる方法がある。このように赤外線レーザを用いて熱エネルギーを光触媒含有層に加え、かつ微細なパターンの書込み(形成)が必要な場合は、この赤外線レーザを効率的に吸収して発熱させる赤外線レーザ吸収層をパターン形成体用基板に形成することが好ましい。これは、赤外線レーザ吸収層を設けることにより、照射された赤外線レーザが効率的に吸収されて発熱するので、微細なパターンを有するパターン形成体を得るためには特に有効だからである。
【0128】
この赤外線レーザ吸収層は、赤外線レーザが光触媒含有層に照射された際に、この光触媒含有層に赤外線レーザによる熱エネルギーが効率よく作用する位置であれば、どのような位置に配置されてもよいが、例えば図5(A)に示すように、紫外光4および赤外線レーザ6とが光触媒含有特性変化層2側から照射される場合は、光触媒含有特性変化層2と基板1の間に赤外線レーザ吸収層15を形成してもよいし、図5(B)に示すように基板1の光触媒含有特性変化層2が形成されていない面に設けてもよい。さらに、図5(C)に示すように、基板1上に光触媒含有層10が形成され、さらにその上に特性変化層11が形成されてる場合は、光触媒含有層10と基板1との間に形成してもよい。この赤外線レーザ吸収層はその機能のため、赤外光レーザや紫外光等を透過しない層である場合が多いので、これらのレーザ等の照射を妨げない位置に配置される必要がある。
【0129】
このような赤外線レーザ吸収層15を形成するための材料としては、赤外線レーザを吸収して効率良く発熱する材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、分散されたカーボンブラック粒子を有するニトロセルロース、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等の樹脂を挙げることができ、樹脂の硬化を開始するための添加剤としては、メラミン−ホルムアルデヒド架橋剤、またはこれに匹敵する溶媒抵抗および付着特性を付与するブロック化されたイソシアネート官能性化合物またはその他の各種イソシアネート官能性化合物の何れかを挙げることができる。
【0130】
上記赤外線レーザ吸収層は、上述した材料および添加剤を所定の溶媒中で撹拌し、得られた溶液をブレードコータ等による塗工によって、基板等の上に塗布・乾燥して形成される。形成される赤外線レーザ吸収層の厚さは、通常0.1〜10μmである。
【0131】
(耐熱滑性層)
一方、上記熱エネルギーを光触媒含有層に加える方法として、感熱ヘッドを用いた場合は、パターン形成体に耐熱滑性層が形成されることが好ましい。この耐熱滑性層は、感熱ヘッドでパターンを書き込む際に、感熱ヘッドの滑性を高めると共に、加えられた熱によるパターン形成体に対する影響を少なくすることができるためである。
【0132】
このような耐熱活性層は、感熱ヘッドが接触する面上に形成されるものであり、例えば図6に示すように、基板1上に光触媒含有層10が形成され、その上に特性変化層11が形成されたパターン形成体においては、基板1の光触媒含有層10が形成されていない側の面に耐熱滑性層16を形成することができる。この場合、光触媒反応開始エネルギーである紫外光4は光触媒含有層側から照射され、反応速度増加エネルギーである熱は、感熱ヘッド17により耐熱滑性層16側から加えられることになる。
【0133】
このような耐熱滑性層を形成する材料としては、シリカ等の無機系材料の微粒子を、エポキシ系、ウレタン系等の紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂に分散させたものを用いることが好ましい。この耐熱滑性層は、上述した材料を所定の溶媒中で撹拌等して得られる溶液をブレードコータ等による塗工によって上述した基板等に塗布、露光等することにより形成される。本発明における耐熱滑性層の厚みは、通常0.1〜10μmの範囲内である。
【0134】
(光触媒反応開始エネルギーおよび反応速度増加エネルギーの加え方)
上述したようなパターン形成体用基板を準備した後、光触媒反応開始エネルギーおよび反応速度増加エネルギーを加える。このエネルギーを加える方法について図7を用いて説明する。
【0135】
まず、光触媒反応開始エネルギー、例えば紫外光であるが、このエネルギーはパターン形成体用基板3の光触媒含有特性変化層2(もしくは光触媒含有層)のパターンが形成される部分全面に通常加えられるものであり、これによりパターンを形成する必要はない。したがって、特に細かく照射方向等を制御する必要が無いことから複雑な偏向装置等は必要なく、例えば水銀ランプ17より照射された紫外光4は、UV反射鏡18等により反射されて光触媒含有特性変化層2(もしくは光触媒含有層)に照射される。
【0136】
この光触媒反応開始エネルギーを加える方向は、図7に示すように光触媒含有特性変化層2(光触媒含有層)が露出している側からに限定されるものではなく、例えば基板1を介して光触媒含有特性変化層2(光触媒含有層)にエネルギーを加えても良い。ただし、基板1等を介してエネルギーを加えた場合は、エネルギーが減衰する場合が多いので、図7に示すように直接加えることが可能な方向からエネルギーを加えることが好ましい。
【0137】
一方、反応速度増加エネルギーは、上記光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域にパターン上に加えることにより、特性変化層上に特性の変化した特性変化部位によるパターンを形成するものであるので、エネルギーを加える位置を正確に制御する必要がある。図7は回転多面鏡を用いて赤外線レーザを偏向してパターンを形成する例を示すものである。赤外線レーザ発生装置5で発生した赤外線レーザは、光変調器19、反射鏡20、コリメータレンズ21を介して、レーザ偏向装置である回転多面鏡22に達する。この回転多面鏡は図示略の制御装置により制御されており、その回転角度を変化させることにより、この回転多面鏡で反射された赤外線レーザ6は、fθレンズ23を経て、光触媒含有特性変化層2(光触媒含有層)上に所望のパターンを形成するように照射される。
【0138】
このように、反応速度増加エネルギーが熱エネルギーであり、これを赤外線レーザを用いて光触媒含有層に加える場合は、機械式光偏向器、電気光学光偏向器、および音響光学光偏向器等の種々の光偏向器を用いることが可能であり、なかでも装置の取り扱いが容易である等の理由から機械式光偏向器が好適に用いられる。この機械式光偏向器としては、例えばガルバノメータ、回転多面鏡、ホログラムスキャナ等を挙げることができる。
【0139】
このように赤外線レーザを用いた場合も、この赤外線レーザを照射する方向は、光触媒含有層に直接照射することができる方向から照射することが好ましいが、基板等が赤外線レーザをあまり減衰させることなく透過可能なものである場合は、これらを介して照射してもよい。
【0140】
また、反応速度増加エネルギーを加える方法としては、感熱ヘッドを用いる方法も挙げられる。この場合は、図6に示すように感熱ヘッド17を例えば耐熱滑性層16に直接接しながら動かすことにより、耐熱滑性層16および基板1を介して光触媒含有層10に熱エネルギーをパターン状に加えることができる。上述したように、本発明においては、この耐熱滑性層の有無や配置は特に限定されるものでなく、感熱ヘッドからの熱が効率よくかつ正確に光触媒含有層に到達するのであれば特に限定されるものではない。
【0141】
本発明においては、上記光触媒反応開始エネルギーと反応速度増加エネルギーとを光触媒含有層に加える順は特に限定されるものでなく、光触媒反応開始エネルギーを加えた後に反応速度増加エネルギーを加えてもよいし、またその逆でもよいが、感度等の点で通常同時に加えられることが好ましい。
【0142】
以上説明したように、パターン形成体用基板の光触媒含有層に対し、光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーを加えた領域に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより、特性変化層上に光触媒の作用により特性が変化した特性変化部位からなるパターンを有するパターン形成体を得ることができる。
【0143】
(パターン形成体)
このようにして得られたパターン形成体は、上述したように特性変化層上に特性変化部位のパターンが形成されたものである。したがって、特性変化層の特性が濡れ性である場合は、濡れ性が変化した部位は、印刷インクの受容性が変化しているので、印刷板として使用することができる。そして、上述した方法により得られた本発明のパターン形成体を印刷版原版とした場合には、精細なパターンをCAD等のデジタルデータから直接パターン形成した印刷版を、湿式現像等の必要がなく、上記二つのエネルギーを加えると同時に得ることができるという効果を有するものである。
【0144】
また、特性変化層が分解除去層であった場合は、上記二つのエネルギーを加えた部分が光触媒の作用により分解除去されることから、パターン形成体は凹凸を有するパターンとなる。したがって、この凹凸を有するパターン形成体は各種印刷版原版等として用いることができる。
【0145】
(機能性素子)
さらに、このパターン形成体の形成されたパターンに対応した部位上に機能性部を配置することにより種々の機能性素子を得ることができる。
【0146】
ここで機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)な各種の機能を意味するものである。
【0147】
このような機能性部のパターン形成体のパターンに対応した部位への配置は、特性変化層の特性によって種々の方法がある。例えば、特性変化層が接着性を変化させる接着性変化層であった場合は、パターン形成体に接着性が変化したパターンが形成されていることから、特性変化層上に全面にわたって金属等の機能性部用組成物を蒸着させ、その後粘着剤等により引き剥がすことにより、接着性が良好な部分にのみ機能性部としての金属のパターンが形成される。これにより容易に回路等を形成することができる。
【0148】
また、特性変化層が分解除去層であった場合は、凹凸が変化したパターンが形成される。したがって、凹部に機能性部用組成物を挿入・付着させることによって、容易にパターンに対応した部位に機能性部を配置することができる。この場合、凹部と凸部との間の濡れ性に相違がある場合、ずなわち凹部が濡れ性の良好な親インク性領域であり、凸部が濡れ性の悪い撥インク性領域であると、さらにこの機能性部用組成物の挿入・付着が容易となる。
【0149】
また、特性変化層が濡れ性変化層である場合は、濡れ性が変化したパターンが形成されていることから、機能性部用組成物をパターン形成体上に塗布することにより、濡れ性の良好な親インク性領域のみ機能性部用組成物が付着することになり、容易にパターン形成体のパターンに対応した部位に機能性部を配置することができる。この場合には、パターン形成体の上記二つのエネルギーが加えられていない部分は、臨界表面張力が50mN/m以下、好ましくは30mN/m以下であることが望ましい。
【0150】
本発明に用いられる機能性部用組成物としては、上述したように機能性素子の機能、機能性素子の形成方法等によって大きく異なるものであり、例えば接着性の相違により金属のパターンを形成するような場合は、この機能性部用組成物は金属となり、また濡れ性が相違するパターン形成体や凹凸が相違するパターン形成体を用いる場合は、紫外線硬化型モノマー等に代表される溶剤で希釈されていない組成物や、溶剤で希釈した液体状の組成物等を用いることができる。溶剤で希釈した液体状組成物の場合は、溶剤が水、エチレングリコール等の高表面張力を示すものであることが好ましい。また、機能性部用組成物としては粘度が低いほど短時間にパターンが形成できることから、特性変化層が濡れ性変化層である場合に特に好ましい。ただし、溶剤で希釈した液体状組成物の場合には、パターン形成時に溶剤の揮発による粘度の上昇、表面張力の変化が起こるため、溶剤が低揮発性であることが望ましい。
【0151】
本発明に用いられる機能性部用組成物としては、パターン形成体に付着等させて配置されることにより機能性部となるものであってもよく、またパターン形成体上に配置された後、薬剤により処理され、もしくは紫外線、熱等により処理された後に機能性部となるものであってもよい。この場合、機能性部用組成物の結着剤として、紫外線、熱、電子線等で効果する成分を含有している場合には、硬化処理を行うことにより素早く機能性部が形成できることから好ましい。
【0152】
このような機能性素子の形成方法を具体的に説明すると、例えば特性変化層が濡れ性変化層である場合、機能性部用組成物はディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット等を含むノズル吐出手段等の手段を用いてパターン形成体上に形成された親インク性領域のパターン上に機能性部を形成する。例えば、図8に示すように、上述した方法によりパターン状に形成された特性変化部位(親インク性領域)8を有するパターン形成体9の光触媒含有特性変化層2に、上述した方法によりブレードコータ24を用いて機能性部用組成物25を塗布する方法、もしくは、図9に示すように同様なパターン形成体9上に機能性部用組成物25を滴下し、スピンコータ26により塗布する方法等を挙げることができる。このようにして機能性部用組成物25を塗布することにより、図10に示すように濡れ性が変化して親インク性領域となった特性変化部位8上にのみ機能性部用組成物が付着する。この機能性部用組成物を硬化させて機能性部27とすることにより、機能性素子を形成することができる。
【0153】
さらに、無電解めっきによる金属膜形成方法に本発明のパターン形成体を用いることにより、機能性部として金属膜のパターンを有する機能性素子を得ることができる。これも特性変化層が濡れ性変化層であった場合に有効な方法であり、濡れ性が変化したパターンを有するパターン形成体の親インク性領域にのみ化学めっきの前処理液によって処理を行い、次いで処理したパターン形成体を化学めっき液に浸漬することにより、所望の金属パターンを特性変化層上に有する機能性素子を得ることができる。この方法によれば、レジストパターンを形成することなく、金属のパターンを形成することができるので、機能性素子として、プリント基板や電子回路素子を製造することができる。
【0154】
また、上述したように全面に機能性部用組成物を配置した後、上記二つのエネルギーを加えた部分と加えなかった部分との特性の差異を利用して不要な部分を取り除くことにより、パターンに沿って機能性部を形成するようにしてもよい。これは特性変化層が接着性変化層であった場合に特に有効な方法であり、例えば、粘着テープを密着した後、この粘着テープを引き剥がすことによる剥離、空気の吹き付け、溶剤による処理等の後処理により不要部分を除去して機能性部のパターンを得ることができる。このような全面に機能性部を配置する方法としては、例えばPVD、CVD等の真空製膜手段を挙げることができる。すなわち、図11(A)に示すようなCVD等の真空を利用した成膜手段28を用いることにより、特性変化部位8のパターンを有する光触媒含有特性変化層2が基板1上に設けられたパターン形成体9上に、機能性部用組成物25を全面にわたって形成する。このように全面に形成された機能性部用組成物25の不要部分を取り除く方法としては、図11(B)に示すように、粘着テープ29の粘着面を密着した後に引き剥がすことにより、二つのエネルギーが加えられなかった部分上の機能性部用組成物25を除去して、機能性部27を形成する方法、あるいは図11(C)に示すように空気噴射ノズル30から空気を噴射することにより、不要部分の機能性部用組成物25を除去して、機能性部27を形成する方法等を挙げることができる。
【0155】
さらに、図12は特性変化層が接着性変化層もしくは濡れ性変化層であった場合に特に有効な機能性素子の形成方法であり、まず図12(A)に示すように特性変化部位8のパターンを有する光触媒含有特性変化層2が基板1上に設けられたパターン形成体9上に、シート31の片面に熱溶融性組成物層32が積層された熱転写体33を、熱溶融性組成物層32が光触媒含有特性変化層2に接触するように密着させる。次いで図12(B)に示すように熱転写体33のシート31側から加熱板34を押し当てて加熱する。そして図12(C)に示すように、冷却後熱転写体33を引き剥がすことにより、光触媒含有特性変化層2上に形成された特性変化部位8のパターンに沿うように機能性部27が形成された機能性素子を得ることができる(図12(D))。
【0156】
このようにして得られる機能性素子として具体的には、カラーフィルター、マイクロレンズ等を挙げることができる。
【0157】
上記カラーフィルターは、液晶表示装置等に用いられるものであり、赤、緑、青等の複数の画素部がガラス基板等上に高精細なパターンで形成されたものである。本発明のパターン形成体をこのカラーフィルタの製造に用いることにより、低コストで高精細なカラーフィルタとすることができる。すなわち、例えば特性変化層を濡れ性変化層とし、この濡れ性変化層にパターン状にエネルギーを加えることにより、濡れ性の変化したパターンが形成されたパターン形成体を得る。次いで、この濡れ性の変化した部位(二つのエネルギーを加えることにより親インク性領域となった部位)に、例えばインクジェット装置等によりインク(機能性部用組成物)を付着・硬化させることにより、容易に画素部(機能性部)を形成することができ、これにより少ない工程数で高精細なカラーフィルタを得ることができる。
【0158】
また、機能性素子がマイクロレンズである場合は、濡れ性変化層上に濡れ性が変化した円形のパターンを有するパターン形成体を製造する。次いで、濡れ性が変化した部位上にレンズ形成用組成物(機能性部用組成物)を滴下すると、濡れ性が変化した親インク性領域のみに広がり、さらに滴下することにより液滴の接触角を変化させることができる。このレンズ形成用組成物を硬化させることにより種々の形状あるいは焦点距離のものを得ることが可能となり、高精細なマイクロレンズを得ることができる。このようなマイクロレンズの製造方法について図13を用いて説明すると、光触媒含有特性変化層(濡れ性変化層)2上に特性変化部位(親インク性領域)8の円形のパターンが形成されたパターン形成体9を調製し、次いで、この円形の特性変化部位(親インク性領域)8のパターンに向けて機能性部用組成物(紫外線硬化性樹脂組成物)を吐出装置35により吐出する(図13(A))。この機能性部用組成物(紫外線硬化性樹脂組成物)25は、特性変化部位8である親インク性領域と特性変化していない領域の撥インク性領域との間の濡れ性の相違により盛り上がる(図13(B))。これに樹脂硬化用紫外線36を用いて硬化させることによりマイクロレンズ37が形成される(図13(C))。
【0159】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を通じてさらに詳述する。
【0160】
[実施例1]
(紫外線照射および加熱による表面エネルギーの変化)
イソプロピルアルコール3g、トリメトキシシラン(東芝シリコーン社製、商品名;TSL8113)0.3g、フルオロアルコキシシラン(トーケムプロダクツ社製、商品名;MF−160E、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N−エチルパーフルオロオクタンスルホンアミドのイソプロピルエーテル50wt%溶液)0.45g、酸化チタン(石原産業社製、酸化チタン塗布溶液、商品名;ST−K01、固形分濃度10wt%)2gを混合した。
【0161】
得られた分散液を20分間、100℃に保ちながら撹拌した。この分散液をスピンコーティング法により厚さ0.3mmのアルミ基材上に塗布した。これを150℃の温度で10分間乾燥させることにより加水分解、重縮合反応を進行させ、光触媒がオルガノシロキサン中に強固に固定化された、厚さ0.5μmの光触媒含有特性変化層を形成した。
【0162】
得られたパターン形成体用基板の光触媒含有特性変化層全面に、超高圧水銀灯(ウシオ電機社製;商品名UXM−3500、ML−40D型ランプハウス)から熱線を取り除いて241nm〜271nmの紫外光のみを、13mW/cm2の強度で30秒間照射しながら、パターン形成体用基板を加熱した。
【0163】
このときのパターン形成体用基板表面(すなわち、光触媒含有特性変化層表面)の水に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学社製;商品名CA−Z型)により測定した結果を表1にまとめる。なお、測定時の光触媒含有特性変化層表面の温度は25℃であった。
【0164】
【表1】
【0165】
表から明らかなように、加熱することにより光触媒反応が促進されている。
【0166】
[実施例2]
(紫外線照射および加熱による表面エネルギーの変化:反応速度)
実施例1と同様の方法にて、厚さ0.3mmのアルミ基材上に光触媒がオルガノシロキサン中に強固に固定化された厚さ0.5μmの光触媒含有特性変化層を形成してパターン形成体用基板とした。得られたパターン形成体用基板全面に、超高圧水銀灯(ウシオ電機社製;商品名UXM−3500、ML−40D型ランプハウス)から熱線を取り除いて241nm〜271nmの紫外光のみを、13mW/cm2の強度で照射しながら、パターン形成体用基板を加熱した。
【0167】
このときのパターン形成体用基板表面(すなわち、光触媒含有特性変化層表面)の水に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学社製;商品名CA−Z型)により測定した。接触角が5度以下となるまでの照射時間を表2に示す。なお、測定時の光触媒含有特性変化層表面の温度は25℃であった。
【0168】
【表2】
【0169】
表2から、加熱により光触媒反応速度が増加することが明らかとなった。
【0170】
[実施例3]
(パターン形体体の製造)
イソプロピルアルコール3g、トリメトキシシラン(東芝シリコーン社製;商品名TSL8113)0.4g、フルオロアルコキシシラン(トーケムプロダクツ社製;商品名MF−160E)0.3g、光触媒無機コーティング剤(石原産業社製、酸化チタン塗布溶液、商品名;ST−K01、固形分濃度10wt%)2gを混合した。
【0171】
この溶液をスピンコーティング法により、石英ガラス透明支持体上に塗布した。これを150℃の温度で10分間乾燥させることにより加水分解、重縮合反応を進行させ、光触媒がオルガノシロキサン中に強固に固定化された、厚さ0.1μmの透明な光触媒含有特性変化層を形成した。水に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学社製;商品名CA−Z型)により測定した結果、142度であった。
【0172】
上記光触媒含有特性変化層を、高圧水銀ランプにて25mW/cm2(365nm)の照度にて40秒間照射し、これを照射したまま照射波長830nmの半導体レーザにてパターン状に照射した。半導体レーザのパターン照射は、マイクロレンズアレイ形成用CADデータに基づき、ガルバノメータを用いて行われた。このとき、半導体レーザ照射表面の表面温度は50℃であった。照射表面の水に対する接触角を上記接触角測定器にて測定したところ、10度以下であった。
【0173】
この方法によるパターン照射の結果、石英ガラス透明支持体上の光触媒含有特性変化層上に、マイクロレンズアレイ成形用CADデータに基づいた濡れ性の異なるパターンが形成された。
【0174】
[実施例4]
(機能性素子の製造)
紫外線モノマー(2官能アクリレートモノマー;日本化薬社製;商品名KAYARADPEG400DA)1000g、硬化開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製;ダロキュア1173)50gを混合し、3分間撹拌した。得られた混合液をインクジェット装置にて、実施例3にて形成したパターン形成体(石英ガラス透明支持体)の光触媒含有特性変化層上の親インク性領域に吐出したところ、親インク性領域のみに濡れ広がり、撥インク性領域には広がることはなかった。濡れ広がった混合液は、レンズ形状となった。
【0175】
上記機能性素子を30mW/cm2の照度で10秒間紫外線で露光したところ、CADデータにて設定された直径30〜50μmの種々の円形底面形状を有する、マイクロレンズアレイが形成された。
【0176】
[比較例]
実施例1に記載したパターン形成体用基板に、紫外光を照射せずに100秒間加熱した。このときのパターン形成体用基板(光触媒含有特性変化層)表面の水に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学社製;商品名CA−Z型)により測定した結果を表3にまとめる。なお、測定時の光触媒含有特性変化層表面の温度は25℃であった。
【0177】
【表3】
【0178】
表3の結果から、加熱したのみでは光触媒反応による表面の濡れ性の変化は生じないことが明らかとなった。
【0179】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0180】
例えば、上記説明においては、機能性素子は全てパターン形成体上に設けられる例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば図14に示すように、まず上記説明と同様の方法により基板1上に光触媒含有特性変化層2を形成し、この光触媒含有特性変化層2の特性変化部位のパターンに沿って機能性部27を形成する(図13(A))。次に、この機能性部27に接するように素子形成用基材38を密着する(図9(B))。そして、この素子形成用基材38に機能性部27を転写して機能性素子とする方法等である。このように、機能性素子は、パターン形成体上に形成されることに限定されるものではない。
【0181】
【発明の効果】
本発明は、少なくとも光触媒含有層と、この光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の光触媒含有層に対して光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより、前記特性変化層上に光触媒の作用により特性が変化した特性変化部位からなるパターンを形成してパターン形成体を得ることを特徴とするパターン形成体の製造法である。
【0182】
このように、本発明においては、光触媒が含有された光触媒含有層に対し、光触媒反応開始エネルギーを加え、次いでこの光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることによりパターンを形成するものである。したがって、パターン形成に際して、赤外線レーザ等の比較的安価で取り扱いが容易である反応速度増加エネルギーを用いることができるといった効果を有する。さらに、本発明は、上述したような方法によりエネルギーをパターン状に光触媒含有層に加え、エネルギーが加えられた部分に相当する特性変化層の特性を変化させてパターンを形成するものであるので、特にエネルギーを加えた後の後処理も必要無く、高精細なパターンを有するパターン形成体を製造することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(C)は、本発明のパターン形成体の製造法の一例を示す概略断面図である。
【図2】(A)はパターン形成体用基板の一例を示す概略断面図であり、(B)はそれを用いて本発明のパターン形成体の製造法により得られたパターン形成体を示す概略断面図である。
【図3】(A)〜(D)は、本発明のパターン形成体の製造法の他の例を示す概略断面図である。
【図4】(A)〜(D)は、本発明のパターン形成体の製造法の他の例を示す概略断面図である。
【図5】(A)〜(C)は、赤外線レーザ吸収層の配置例を示す概略断面図である。
【図6】耐熱滑性層の配置例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の製造法における2種類のエネルギーの照射方法の例を示す説明図である。
【図8】本発明における機能性素子の製造法を説明するための概略断面図である。
【図9】本発明における機能性素子の製造法を説明するための概略断面図である。
【図10】本発明における機能性素子の例を示す概略断面図である。
【図11】(A)から(C)は、本発明の機能性素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図12】(A)から(D)は、本発明の機能性素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図13】(A)から(C)は、本発明によるマイクロレンズの製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図14】(A)から(C)は、本発明に含まれる機能性素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
1…基板、 2…光触媒含有特性変化層、 3…パターン形成体用基板、
4…紫外光(光触媒反応開始エネルギー)、 5…赤外線レーザ発生装置、
6…赤外線レーザ(反応速度増加エネルギー)、 7…レーザ偏向装置、
8…特性変化部位、 9…パターン形成体、 10…光触媒含有層、
11…特性変化層、 12…特性変化層側基板、 13…透明基板、
14…光触媒含有層側基板、 15…赤外線レーザ吸収層、
16…耐熱滑性層、 17…水銀ランプ、 18…UV反射鏡、
19…光変調器、 20…反射鏡、 21…コリメータレンズ、
22…回転多面鏡、 23…fθレンズ、 24…ブレードコータ、
25…機能性部用組成物、 26…スピンコータ、 27…機能性部、
28…成膜手段、 29…粘着テープ、 30…空気噴射ノズル、
31…シート、 32…熱溶融性組成物層、 33…熱転写体、
34…加熱板、 35…吐出装置、 36…樹脂硬化用紫外線、
37…マイクロレンズ、 38…素子形成用基材。
Claims (24)
- 少なくとも光触媒含有層と、この光触媒含有層中の光触媒の作用により特性が変化する特性変化層とを有するパターン形成体用基板の光触媒含有層に対して光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより、前記特性変化層上に光触媒の作用により特性が変化した特性変化部位からなるパターンを形成してパターン形成体を得ることを特徴とするパターン形成体の製造法。
- 前記光触媒反応開始エネルギーが、光であることを特徴とする請求項1記載のパターン形成体の製造法。
- 前記光が、紫外光を含む光であることを特徴とする請求項2記載のパターン形成体の製造法。
- 前記光触媒反応開始エネルギーが、特性変化層上のパターンが形成される領域に相当する光触媒含有層上の領域全面に加えられることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 前記反応速度増加エネルギーが、熱エネルギーであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 前記熱エネルギーが赤外線レーザにより加えられることを特徴とする請求項5記載のパターン形成体の製造法。
- 前記赤外線レーザが、機械式光偏向器によって偏向されてパターン状に加えられることを特徴とする請求項6記載のパターン形成体の製造法。
- 前記熱エネルギーが感熱ヘッドにより加えられることを特徴とする請求項5記載のパターン形成体の製造法。
- 少なくとも前記光触媒含有層と前記特性変化層とを基板上に設けて形成したパターン形成体用基板を用いることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 少なくとも前記光触媒含有層と前記特性変化層とが基板上に設けられ、さらに反応速度増加エネルギーとして熱エネルギーを加えるために赤外線レーザを照射した際に光触媒含有層にこの熱エネルギーが作用するように赤外線レーザ吸収層が配置されたパターン形成体用基板を用いることを特徴とする請求項6および7記載のパターン形成体の製造法。
- 少なくとも前記光触媒含有層と前記特性変化層とが基板上に設けられ、さらに反応速度増加エネルギーとして熱エネルギーを加えるための感熱ヘッドが接する位置に耐熱滑性層が配置されたパターン形成体用基板を用いることを特徴とする請求項8記載のパターン形成体の製造法。
- 前記光触媒含有層と前記特性変化層とが同一の層に形成された光触媒含有特性変化層を基板上に有するパターン形成体用基板を用いることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 基板上に光触媒含有層が形成され、この光触媒含有層上に特性変化層が形成されたパターン形成体用基板を用いることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 基板上に前記特性変化層が形成され、この特性変化層上に前記光触媒含有層が形成されたパターン形成体用基板を用い、前記反応速度増加エネルギーによりパターンが形成された後、前記光触媒含有層が取り除かれてパターン形成体を得ることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 前記光触媒含有層上に透明基板が光触媒含有層と一体に形成されており、前記反応速度増加エネルギーによりパターンが形成された後、光触媒含有層が容易に取り去ることができるように特性変化層と光触媒含有層とが接触していることを特徴とする請求項14記載のパターン形成体の製造法。
- 前記光触媒含有層に含有される光触媒が、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項1から請求項15までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 前記光触媒が二酸化チタン(TiO2)であることを特徴とする請求項16記載のパターン形成体の製造法。
- 前記特性変化層が、前記光触媒含有層中の光触媒の作用により表面の濡れ性が変化する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 前記濡れ性変化層が、光触媒含有層中の光触媒の作用により、前記二つのエネルギーが加えられた際に水の接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項18記載のパターン形成体の製造法。
- 前記濡れ性変化層上の水の接触角が、前記二つのエネルギーが加えられていない部分において90度以上であり、加えられた部分において30度以下であることを特徴とする請求項19記載のパターン形成体の製造法。
- 前記濡れ性変化層が、オルガノポリシロキサンを含有する層であることを特徴とする請求項19または請求項20に記載のパターン形成体の製造法。
- 前記オルガノポリシロキサンが、YnSiX(4-n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項21記載のパターン形成体の製造法。
- 前記濡れ性変化層が、光触媒の作用により分解されにくい基材と、光触媒の作用により分解されやすい分解除去剤とからなり、前記2種類のエネルギーを加えることにより分解除去剤が分解除去されて濡れ性変化層上の濡れ性が変化する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項18から請求項20までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
- 前記特性変化層が、光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去される分解除去層であることを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造法。
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