JP4289104B2 - 医療用具およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、ポリブタジエンチューブを接続するためのコネクター、ポート等の硬質管状部材等の医療用具材料はポリブタジエンより硬度の大きいポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン等の熱可塑性プラスチックが多く用いられており、難接着性材料であるポリブタジエンチューブを完全に接続するための方策が現時点では見出されていない。
また、前記熱可塑性ポリエステルはガラス転移点以上の熱処理温度で結晶化する性質を持つため、熱処理時間の長い程カシメ材としての剛性が大きくなる特徴があることも見出した。
さらに、前記熱可塑性ポリエステルは軟質ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニル樹脂とシクロヘキサノン、シクロヘキサン等の溶剤で接着できる利点があり、前記熱可塑性ポリエステル円筒中空管を溶剤接着により容易に固定できる長所がある。
第3管状部材である円筒中空管の内径は、小径管状突出部に外挿入された第2管状部材の外径に等しいかあるいはこれよりも大きくすべきである。
本発明の硬質材料からなる第1管状部材とは、その下部に小径管状突出部が設けられている部材である。例えば、点滴筒、血液バッグのポート、輸液バッグのポート、輸液セットのコネクター、透析回路のコネクターなどが包含される。これらの硬質材料からなる第1管状部材には、必要により小径管状突出部の外側に、環状隙間を介して大径管状突出部を有していてもよい。
本発明の硬質材料からなる第1管状部材としては、ポリプロピレン製点滴筒、融点90℃以上の熱可塑性プラスチック製の輸液バッグチューブ接続部材、あるいは、融点90℃以上である熱可塑性プラスチック製の輸液回路または輸血回路チューブ接続部材が挙げられる。融点90℃以上の熱可塑性プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタンなどが例示される。
本発明の軟質材料からなる第2管状部材としては、ポリブタジエンチューブ、スチレン系エラストマーチューブ、ポリ塩化ビニルチューブ、ポリウレタンチューブなどが例示される。
本発明の第3の管状部材は、第1管状部材と第2管状部材とを接合する(カシメる)部材であって、後述するように、ガラス転移点約30〜約60℃を有する熱可塑性ポリエステルである。
点滴注射などに使用される医療用具は、基本的には、一端に輸液剤容器に刺通する導入針2を有する点滴筒1(第1管状部材)を備え、点滴筒1の他端にテーパー状の小径管状突出部6の末端まで外挿入された軟質ポリブタジエン製メインチューブ4(第2管状部材)を接合し、このメインチューブ4の他端は静脈針10を装着するフリーロックコネクター9を接合する。さらに、前記点滴筒1の下流側のメインチューブ4に取り付けられ、該チューブ内部を流れる輸液の流量を調節するクランプ8とからなる(図1)。
本発明では、点滴筒1とメインチューブ4、あるいはフリーコックコネクター9とメインチューブ4が円筒中空管であるカシメ部材7によって接合されている。
点滴筒1の下部には大径管状突出部3と小径管状突出部6が一体に設けられている。小径管状突出部6の内部を輸液が流れる。大径管状突出部3の長さは、小径管状突出部6の長さより短く、両者の間には環状隙間5が設けられている。その環状隙間5に軟質ポリブタジエン製チューブ4が挿入され、第3管状部材の円筒中空管7を加熱することにより、軟質ポリブタジエンチューブ4が接合されている(図2)。
一般に、精密に輸液の点滴を行うには、点滴速度、輸液量を管理調整出来る輸液ポンプ11が点滴筒1とフリーロックコネクター9の間の軟質ポリブタジエンチューブ4に設けられる。
点滴筒の材料としては、一般的にはポリプロピレン、ポリプロピレンとポリプロピレンエラストマーのブレンドなどがある。
点滴筒は、外径が約14〜17mmであり、内径が約13〜16mm、長さが約50〜70mmである。脚部を構成する大径管状突出部は、外径が約6〜8mmであり、内径が約4〜6mm、長さが約5〜7mmであり、小径管状突出部は、外径が約2〜4mmであり、内径が約1〜3mmであり、長さが約15〜20mmである。大径管状突出部3と小径管状突出部6との間の環状隙間5は、隙間幅が約1〜2mm、長さが約5〜7mmである。これらの寸法は、一例であって、本発明を制限するものではない。
フリーロックコネクター9の小径管状突出部12に軟質ポリブタジエンチューブ4を外挿入して接合する。前記小径管状突出部は外径が約2〜5mmであり、内径が約1〜4mmであり、長さが10〜20mmである。
該チューブは、外径が約2〜5mmであり、内径が約1〜4mmであり、長さが約100〜200cmを有する。
(1)酸成分およびアルコール成分からなるポリマー分子鎖中に第3成分を共重合した熱可塑性ポリエステル。
酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とすることが好ましい。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのアルキレングリコールが挙げられ、エチレングリコールを主たるジオール成分とすることが好ましい。第3成分は、上記芳香族ジカルボン酸成分およびアルキレングリコール成分からなるポリエステルの融点を下げることなく、ガラス転移点を約30〜約60℃、好ましくは約40〜約50℃に維持することができる成分であり、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの長鎖二塩基酸、ポリエチレン・ポリテトラメチレンブロックコポリエーテルなどの長鎖グリコールなどが挙げられる。
テレフタル酸、エチレングリコール、ポリオールからなるポリエステルにおいて、共重合するダイマー酸が酸成分100重量%に対して15重量%のとき、ガラス転移点が約47℃であり、ダイマー酸が20重量%のとき、ガラス転移点が約40℃となり、ガラス転移点はポリエステルにおける第3成分の重量%に従って下降する。
本発明では、ポリエステルの一例として、酸成分中に全ジカルボン酸成分に対して、ダイマー酸を5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%含有するものがある。また、ジオール成分中に全ジオール成分に対して、下記式で示される平均分子量1000〜1800のポリオール化合物を5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%含有するものもある。
HO−(C2H4O)n−(C4H8O)m−H
(式中、nおよびmは5〜20の整数である。)
このようなポリエステルの一例として、第3成分としてダイマー酸を共重合し、ガラス転移点を下げたポリエステルは既に公知である(特開平03−252419号公報)。
(2)また、ポリエステルに親和性のある第3成分を混融させて、ガラス転移点を下げた組成物。
第3成分として、ジオクチルフタレート(DOP)の低分子化合物を混融させるものがある(特開昭51−93770号公報)。
酸成分:テレフタル酸、
アルコール成分:エチレングリコールなどのアルキレングリコール、
第3成分:ダイマー酸またはポリオキシアルキレングリコール
分子量:約25000〜30000
融点:200〜242℃
ガラス転移点:32〜50℃
前記第3管状部材の位置決めは、小径管状突出部に外挿入した第2管状軟質部材表面に第3管状部材と第2管状軟質部材の両者を接着できる酢酸エチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の溶剤を少量塗布する。あるいは円筒中空管の内径を第1管状部材の小径管状突出部に外挿入された第2管状部材の外径と同一にすれば良い。特に、本発明は第3管状部材と軟質ポリブタジエンチューブ等の第2管状軟質部材の両者を前記溶剤等の手段を利用して強固に接着でき容易に円筒中空管が第2管状部材より剥離しない長所を持つ。
第3管状部材である円筒中空管の内径は、小径管状突出部に外挿入された第2管状部材の外径に等しいかあるいは大きくすべきである。また、円筒中空管の肉厚は、0.3mm〜1.5mm、特に、0.7mm〜1.5mmが耐圧性の面で好ましい。
加熱条件は、エチレンオキサイドガス滅菌条件より約50〜65℃、好ましくは約50〜62℃、約24〜60時間、好ましくは約30〜40時間である。円筒中空管である第3管状部材のガラス転移点より高い温度(例えば、60℃)で、2時間以上熱処理すれば、円筒中空管の円周方向に配向した分子鎖セグメントが緩和され、かつ、円筒中空管の内径が熱処理前に比較して、約5〜10%小さくなり、これをカシメ材として利用できる。
なお、本発明の熱可塑性ポリエステルに汎用のスチレン−ブタジエン−スチレン成形材料、結晶性または非晶性汎用熱可塑性ポリエステルをブレンド成形し、溶剤接着性の向上、柔軟性や剛性の付与、熱収縮率の調整等をしてもよい。
以下に、実施例を用いて本発明を説明する。
なお、ガラス転移点はパーキンエルマー社製DSC(示差走査熱量計)を用いて昇温速度10℃/分にて測定した。
熱可塑性ポリエステルの組成は、ポリエステル樹脂をトリフルオロ酢酸とクロロホルムの1:1(重量比)混合溶液に溶解し、テトラメチルシランを標本と混合して、バリアン社製FT−NMR(型式300MG)による分析値を示す。
熱可塑性ポリエステルの主組成:
テレフタル酸/ダイマー酸/エチレングリコール/ポリオール
酸成分中のダイマー酸量:25(重量%)
ジオール成分中のポリオ−ル量:10(重量%)
熱可塑性ポリエステル主組成
テレフタル酸/ダイマー酸/エチレングリコール/ポリオール
酸成分中のダイマー酸量:13(重量%)
ジオール成分中のポリオール量:10(重量%)
評価方法:軟質ポリブタジエンチューブ4の末端(点滴筒1下部外挿入部と反対側)部を金属製の耐圧クリップで封鎖し、点滴筒上部の導入針2に耐圧チューブを外挿入し、導入針2の孔より点滴筒1、軟質ポリブタジエンチューブ4に0.15Mpaの加圧空気を負荷し、点滴筒1と軟質ポリブタジエンチューブ4の外挿入部より加圧空気の漏れが発生する迄の加圧空気負荷時間を測定した。
なお、加圧空気負荷時間は、約23〜25℃の水中に測定サンプルが完全に浸るまで入れ加圧空気の漏れを気泡発生有無で観察した。0.15Mpaの加圧空気負荷で30分以上空気漏れの無いサンプルを合格とした。
この評価結果を表2に示す。
また、比較例2のガラス転移点72℃の熱可塑性ポリエステル製円筒中空管使用品は、円筒中空管の内径が収縮せず、カシメ効果がなかった(比較例1と差がなかった)。
実施例1のガラス転移点32℃、実施例3のガラス転移点41℃の熱可塑性ポリエステルの円筒中空管使用品は、比較例1よりもはるかに大きい効果を示した。特に、ガラス転移点32℃、または41℃の熱可塑性ポリエステルの外径6.1mm、内径4.1mm、肉厚1.0mm、長さ8mmの円筒中空管使用品(試料1)において、シクロヘキサノンで円筒中空管と軟質ポリブタジエンチューブを接着したものは、試験数5本中、5本ともに合格(30分以上空気漏れ)し、顕著な効果を示した。
さらに、外径5.1mm、内径4.1mm、肉厚0.5mm、長さ8mmの肉厚減少品(試料2)は、比較例1の円筒中空管未使用品より、0.15Mpaの空気負荷で軟質ポリブタジエンチューブより空気が漏れるまでの時間は約8倍向上した。
なお、シクロヘキサノンを使用して軟質ポリブタジエンチューブと円筒中空管を接着したものは、シクロヘキサノン未使用品より空気が漏れるまでの時間が大きくなることにより、接着力による内径収縮方向、すなわち軟質ポリブタジエンチューブの円周方向に均一に収縮力が働くものと推定される。
(a)の評価用円筒中空管は、ガラス転移点の異なる熱可塑性ポリエステルで成形した。成形した円筒中空管の寸法を(b)に示す。(c)は寸法既知のストレートエジェクタピンに、(b)の円筒中空管を外挿入し、約55℃×20時間加熱処理し、外挿入した円筒中空管の密着性の評価結果である。
評価 ○:円筒中空管の内径が収縮し、ストレートエジェクタピンに強く密着している。
△:円筒中空管の内径がストレートエジェクタピンに接触しているが密着力は弱い。
×:円筒中空管の内径がストレートエジェクタピンに未接触であり、密着性無し。
2 導入針
3 大径管状突出部
4 軟質メインチューブ
5 環状隙間
6 小径管状突出部
7 円筒中空管(カシメ部品)
8 クランプ
9 フリーロックコネクター
10 静脈針
11 輸液ポンプ
12 小径管状突出部
Claims (11)
- 硬質材料であるポリプロピレンからなる第1管状部材の端部に設けられた小径管状突出部に、軟質ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニル、または軟質スチレン系エラストマーからなる第2管状部材を外挿入し、かつ、溶剤を塗布した該第2管状部材外部にガラス転移点約30〜約60℃を有する熱可塑性ポリエステルからなる第3管状部材を設けて、前記小径管状突出部と第2管状部材を接合した医療用具。
- 前記第1管状部材が点滴筒である、請求項1記載の医療用具。
- 前記熱可塑性ポリエステルは、酸成分が芳香族カルボン酸およびダイマー酸であり、グリコール成分がアルキレングリコールである、請求項1または2記載の医療用具。
- 前記第2管状部材が軟質ポリブタジエンチューブである、請求項1〜3の何れかに記載の医療用具。
- 軟質ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニル、または軟質スチレン系エラストマーからなる第2管状部材の外表面に溶剤を塗布し、該溶剤塗布部位にガラス転移点約30〜約60℃を有する熱可塑性ポリエステルからなる第3管状部材を外挿入すると共に、硬質材料であるポリプロピレンからなる第1管状部材の端部に設けられた小径管状突出部に、前記第3管状部材を外挿入した前記第2管状部材を外挿入し、前記第3管状部材を加熱して、前記小径管状突出部と第2管状部材を接合することを特徴とする医療用具の製造方法。
- 前記第1管状部材が点滴筒である、請求項5記載の医療用具の製造方法。
- 前記熱可塑性ポリエステルは、酸成分が芳香族カルボン酸およびダイマー酸であり、グリコール成分がアルキレングリコールである、請求項5または6記載の医療用具の製造方法。
- 前記第2管状部材が軟質ブタジエンチューブである、請求項5〜7の何れかに記載の医療用具の製造方法。
- 第3管状部材のガラス転移点を越え、第1管状部材の融点および第2管状部材の融点のいずれか低い方よりも低い温度で加熱して、第1管状部材と第2管状部材を接合することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の医療用具の製造方法。
- 第1管状部材の融点が90℃以上であり、第2管状部材の融点が約70〜80℃のであり、かつ、第3管状部材が融点200℃以上であって、約50〜60℃に加熱して、第1管状部材と第2管状部材を接合することを特徴とする請求項9記載の医療用具の製造方法。
- 前記溶剤がシクロヘキサノン又はシクロヘキサンである請求項5〜10の何れかに記載の医療用具の製造方法。
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