JP4288758B2 - 電解コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、内部の圧力上昇においても容易に気密洩れを生じることのない電解コンデンサ、特にはその上面視形状が長円形を有する電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電解コンデンサの封口部における気密性を向上させる手法としては、特開昭58−194327号に記載されているように、コンデンサ素子を収納する有底筒状の外装ケースの開口を塞ぐ封口部材の外周部に弾性を有するシール部材を形成し、該シール部材に前記外装ケースの開放端が当接するようにカーリング加工する方法があった。
【0003】
しかし、この手法では外装ケース内部の圧力上昇により、外装ケースに歪み等の変形が生じると、該変形により前記カーリング加工にて当接した外装ケースの開放端が、前記シール部材より脱落して気密不良を生じてしまう場合があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このため、これら変形による前記脱落を防止する手法として、実公昭58−52669号に記載されているように、前記封口部材の外周部に溝部を形成して、該溝部内に前記シール部材を配置した構造のものがあり、このものは、前記カーリング加工の先端部が当接するシール部材と外装ケース側面との間に、前記溝部の壁部が存在するようになることから、前記カーリング加工の先端部が該壁部により係止されるようになり、前記圧力上昇に伴う脱落が防止されるようになるものの、前記シール部材との良好な当接状況が保たれず、十分な気密性を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
特に、これら前記した圧力上昇に伴う外装ケースに歪みは、通常の上面視形状が円形のものに比較して、図4に示すように、上面視形状が長円形のものの長辺中央部位置において生じやすく、これら長円形の電解コンデンサにおいては、該変形に伴う気密性低下が大きな問題となっていた。
【0006】
よって、本発明は上記した問題点に着目してなされたもので、長円形状を有していても、前記圧力上昇に伴う変形に耐え得る十分な気密性を有する電解コンデンサを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記した問題を解決するために、本発明の電解コンデンサは、長円状の上面視形状を有して有底筒状とされた外装ケース内にコンデンサ素子を収納し、弾性部材が形成された溝部を外周部に有する封口部材によって該外装ケースの開口を封口するとともに、前記弾性部材が当接にて変形するように前記外装ケースの開放端をカ−リング加工して前記外装ケ−ス内部を密閉し、且つ前記コンデンサ素子に電気的に接続された電極端子が前記封口部材を貫通して引き出された電解コンデンサにおいて、前記溝部は前記外装ケースとの間に壁部を有する形状であるとともに、該壁部の外面高さ位置が前記弾性部材の上面高さ位置よりも低く形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、前記壁部の高さ位置を弾性部材の高さ位置よりも低くすることにより、前記弾性部材と外装ケ−ス側面との間に空隙が形成され、外装ケース内部の圧力上昇により前記弾性部材が変形するように当接した外装ケース開放端が歪んで移動しても、前記空隙内に弾性部材が変形可能となって該移動に弾性部材が追随できるようになるため、圧力上昇の変形のい伴う気密性の低下を防止できるばかりか、前記空隙内部に変形、侵入した弾性部材がカ−リング加工された外装ケース開放端と係合するようになるため、該弾性部材より外装ケース開放端が脱落することもない。
【0008】
本発明の電解コンデンサは、前記壁部の外面高さ位置が、前記カ−リング加工された外装ケースの開放端の高さ位置とほぼ同等または高いものとされていることが好ましい。
このようにすれば、前記外装ケ−ス側面との間に形成される空隙が外装ケ−スの変形に弾性部材が追随するための適宜なものとなるとともに、該壁部の上面が前記追随により変形した弾性部材を下方より支えるようになるため、前記外装ケースの変形力に対する抵抗力を向上でき、よって外装ケース開放端の脱落をより低減することができるようになる。
【0009】
本発明の電解コンデンサは、前記弾性部材に当接する前記外装ケースの開放端と前記溝部内周との距離Gが、前記弾性部材の幅Wの1/3〜2/3となるように前記カ−リング加工が実施されていることが好ましい。
このようにすれば、前記距離Gが弾性部材の幅Wの2/3以上となると、外装ケース開放端から内周側の前記弾性部材が上方へ突出して気密不良が生じやすく、また、前記距離Gが弾性部材の幅Wの1/3以下となると、弾性部材の前記空隙への橈みの量が該空隙に対して大きくなりすぎ、気密不良が生じやすくなることから、前記距離Gを弾性部材の幅Wの1/3〜2/3の範囲とすることにより、より良好な気密性を得ることができる。
【0010】
本発明の電解コンデンサは、前記弾性部材の高さ方向の厚みHが、前記弾性部材に当接する前記外装ケースの開放端と前記溝部内周との距離Gの1〜3倍とされていることが好ましい。
このようにすれば、前記弾性部材の厚みHが前記溝部内周との距離Gよりも薄いと、前記空隙への弾性部材の変形が良好に為されなくなって気密不良が生じやすくなるとともに、前記弾性部材の厚みHが前記溝部内周との距離Gの3倍よりも厚くなると、該弾性部材の変形に対する抗力が小さく、前記外装ケース開放端との当接による気密性が十分に得られなくなることから、前記弾性部材の厚みHを前記距離Gの1〜3倍の範囲とすることにより、より良好な気密性を得ることができる。
【0011】
本発明の電解コンデンサは、前記溝部底面に、前記弾性部材と嵌合する突起部が形成されていることが好ましい。
このようにすれば、該突起部と弾性部材が嵌合することで、弾性部材が変形しても該弾性部材が前記溝部より脱落することを防止できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(実施例)
図1は本実施例の電解コンデンサを示す外観斜視図であり、図2は本実施例の電解コンデンサを示す一部破断側断面図であり、図3は、本実施例の電解コンデンサにおける封口部材の外周であるA部におけるカ−リング加工の状況を示す拡大断面図である。
【0014】
本実施例の電解コンデンサは、図1および図2にその外観並びに内部構造をを示すように、その上面視形状が長円形とされた長円型の電解コンデンサ1とされており、図1において3は、その内部に長円状に巻回して形成されたコンデンサ素子2を収納可能な有底筒状のアルミ製の外装ケ−スであり、該外装ケ−ス3の開口は封口部材5により塞がれているとともに、該封口部材5には該封口部材5を貫通して外部に露出する電極端子4が形成され、該電極端子4の各極は前記コンデンサ素子2に接続されていて、該電極端子4の中央部位置には、過度の電解コンデンサ1内部の圧力上昇による破裂を防止するための安全弁6が設けられている。
【0015】
これら本実施例において使用されるコンデンサ素子2としては、アルミニウム等の弁金属からなる陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて、所定の長円状に巻回して形成されて電解液が含浸されたものや、電解質として固体の二酸化マンガン層を前記陽極箔と陰極箔との間に形成した、固体電解コンデンサ素子等を用いることができる。
【0016】
これらコンデンサ素子2は、前述のように有底筒状とされた長円形の外装ケ−ス3に収納され、該開口部が前記封口部材5が配置されるとともに、該外装ケ−ス3の開放端がカ−リング加工されて封口部材5が固定されるとともに、該外装ケ−ス3内部が密閉されるようになっている。
【0017】
本実施例では、前記外装ケ−ス3内部の高い気密性を得るために、本実施例では図3(a)および(b)に示すように、前記封口部材5の外周部に、弾性部材であるゴムにて所定のリング状に形成されたゴムリング7を内在する溝部11が形成されていて、該溝部11内の底面には突起部8が形成されていて、該溝部11に内在されるゴムリング7と嵌合するようになっている。
【0018】
このように内在するゴムリング7と嵌合する突起部8を形成することは、これらゴムリング7が変形により前記溝部11から脱落することを防止できるようになることから好ましく、これら突起部8の形状や大きさおよび形成位置等は、使用する弾性部材の硬度や厚さ等より適宜に選択すれば良い。
【0019】
また、本実施例にて用いた前記封口部材5は、電気絶縁性と実装時や稼働時における熱に耐え得る適宜な耐熱性並びに電解コンデンサ内部の圧力上昇に耐えうる機械的強度を有する樹脂製とされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら封口部材5を前記外装ケ−ス3と同様の絶縁処理がなされたアルミ製としたり、その他の硬質な材質、例えばセラミックス等を用いても良い。
【0020】
この封口部材5の外周部に形成される前記溝部11の形状としては、図3(a)に示すように、該溝部11の内周側においては、内在される前記ゴムリング7の脱落を防止することを目的として封口部材5の上面位置がゴムリング7の上面と同等若しくはそれよりも高い位置とすることが好ましく、更に溝部11の外周側の壁部9においては、前記ゴムリング7の上面位置よりも該壁部9の上面が低くして、前記ゴムリング7と外装ケ−ス3の側面との間に空隙10を形成することが好ましい。
【0021】
これら壁部9の上面の高さ位置は、これが低すぎると形成される前記空隙10の大きさが大きくなり、前記ゴムリング7が容易に変形するようになって前記カ−リング加工された外装ケ−ス3の開放端が脱落しやすくなってしまい、これが高すぎると形成される前記空隙10の大きさが小さくなり、該空隙内に変形したゴムリング7が侵入できずにゴムリング7の内周側がS2方向に歪むようになって気密不良を生じやすくなってしまうことから、使用するゴムリング7の硬度や材質により適宜に選択すれば良く、本実施例における該壁部9の上面の高さ位置は、図3(b)に示すように、カ−リング加工によりゴムリング7に食い込んだ外装ケ−ス3の開放端の高さ位置とほぼ同一となるようになっている。
【0022】
このように壁部9の上面の高さ位置をカ−リング加工された外装ケ−ス3の開放端の高さ位置とほぼ同一またはそれよりも若干高くすることは、外装ケ−スの変形により脱落しようとする外装ケ−ス開放端と該壁部9とが変形したゴムリング7を挟むようにして係合することにより、該脱落が防止されるとともに変形したゴムリング7が介在することで気密性も良好に保たれるようになることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記のように該壁部9の高さ位置は使用するゴムリング7の硬度や材質により適宜に選択すれば良い。
【0023】
前記弾性部材として本実施例において用いているゴムリング7の材質は、前記のようにカ−リング加工された外装ケ−ス開放端により変形された状態となることから、その圧縮永久歪が小さいとともに、変形における破断強度が高いゴムとすることが好ましく、このようなゴムとしてはシリコンゴムやブチルゴムが例示され、本実施例ではカ−ボンフィラ−強化のシリコンゴムを使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら弾性部材としてその他の弾性変形可能な部材等を使用しても良い。
【0024】
また、前記ゴムリング7の幅W寸法は、図3(b)に示すように、前記溝部11内周端とカ−リング加工された外装ケ−ス開放端までの距離をGとすると、該Gが幅Wの2/3となる寸法、つまり幅WがG寸法の1.5倍となる寸法よりも短いと、前記壁部9と外装ケ−ス開放端とが近接してゴムリング7がS1方向に良好に変形できずに内周側のゴムリング7がS2方向へ変形して気密不良を生じやすくなり、これが3.0Gよりも長いと、ゴムリング7のS1方向への橈みが大きくなって気密不良を生じやすくなることから、これら幅Wの寸法は前記G寸法の1.5倍〜3倍とすることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
また、前記ゴムリング7の厚みH寸法は、前記溝部11内周端とカ−リング加工された外装ケ−ス開放端までの距離をGとすると、これを1.5Gより薄くすると前記空隙10へのゴムリング7のS1方向への変形が良好に為されなくなって気密不良が生じやすくなり、これを3.0Gより厚くするとゴムリング7の変形に対する抗力が小さくなり、前記外装ケース開放端との当接による気密性が十分に得られなくなることから、これら厚みHの寸法は前記G寸法の1.5倍〜3倍とすることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
以上、本実施例のように前記空隙10を適宜に形成することにより、前記外装ケ−ス開放端をカ−リング加工することにより変形する前記ゴムリング7が、該変形により空隙10内に適宜に侵入できるようになるため、長円形の電解コンデンサであっても良好な気密性を確保できるとともに、内圧の上昇により外装ケ−スが膨らんで図4のように変形力が加わっても、前述のように、該外装ケ−ス開放端と前記壁部9上端とが前記空隙10内に侵入したゴムリング7を介在させた形にて係止されるようになるため、該状況においても気密性が確保されるようになる。
【0027】
以上、本発明を図面に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での変更や追加があっても、本発明に含まれることは言うまでもない。
【0028】
また、前記実施例では前記壁面9の上端形状を平面としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、該上端面に傾斜等を設けることは任意とされる。
【0029】
また、前記実施例では使用するゴムリング7の硬度を均質なものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばゴムリング7の内周側の硬度を高く、外周側の硬度を低くするように、硬度を異なるようにしても良い。
【0030】
また、本実施例では前記のように封口部材5の中心部に安全弁6を設けているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
【発明の効果】
本発明は次の効果を奏する。
【0032】
(a)請求項1の発明によれば、前記壁部の高さ位置を弾性部材の高さ位置よりも低くすることにより、前記弾性部材と外装ケ−ス側面との間に空隙が形成され、外装ケース内部の圧力上昇により前記弾性部材が変形するように当接した外装ケース開放端が歪んで移動しても、前記空隙内に弾性部材が変形可能となって該移動に弾性部材が追随できるようになるため、圧力上昇の変形のい伴う気密性の低下を防止できるばかりか、前記空隙内部に変形、侵入した弾性部材がカ−リング加工された外装ケース開放端と係合するようになるため、該弾性部材より外装ケース開放端が脱落することもない。
【0033】
(b)請求項2の発明によれば、前記外装ケ−ス側面との間に形成される空隙が外装ケ−スの変形に弾性部材が追随するための適宜なものとなるとともに、該壁部の上面が前記追随により変形した弾性部材を下方より支えるようになるため、前記外装ケースの変形力に対する抵抗力を向上でき、よって外装ケース開放端の脱落をより低減することができるようになる。
【0034】
(c)請求項3の発明によれば、前記距離Gが弾性部材の幅Wの2/3以上となると、外装ケース開放端から内周側の前記弾性部材が上方へ突出して気密不良が生じやすく、また、前記距離Gが弾性部材の幅Wの1/3以下となると、弾性部材の前記空隙への橈みの量が該空隙に対して大きくなりすぎ、気密不良が生じやすくなることから、前記距離Gを弾性部材の幅Wの1/3〜2/3の範囲とすることにより、より良好な気密性を得ることができる。
【0035】
(d)請求項4の発明によれば、前記弾性部材の厚みHが前記溝部内周との距離Gよりも薄いと、前記空隙への弾性部材の変形が良好に為されなくなって気密不良が生じやすくなるとともに、前記弾性部材の厚みHが前記溝部内周との距離Gの3倍よりも厚くなると、該弾性部材の変形に対する抗力が小さく、前記外装ケース開放端との当接による気密性が十分に得られなくなることから、前記弾性部材の厚みHを前記距離Gの1〜3倍の範囲とすることにより、より良好な気密性を得ることができる。
【0036】
(f)請求項5の発明によれば、該突起部と弾性部材が嵌合することで、弾性部材が変形しても該弾性部材が前記溝部より脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における電解コンデンサを示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例における電解コンデンサを示す一部破断側面図である。
【図3】(a)本発明の実施例における電解コンデンサのカ−リング加工前のA部拡大詳細図である。(b)本発明の実施例における電解コンデンサのカ−リング加工後のA部拡大詳細図である。
【図4】従来の長円形電解コンデンサの変形の状況を示す上面図である。
【符号の説明】
l 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 外装ケース
4 電極端子
5 封口部材
6 安全弁
7 ゴムリング
8 突起部
9 壁部
10 空隙
11 溝部
Claims (5)
- 長円状の上面視形状を有して有底筒状とされた外装ケース内にコンデンサ素子を収納し、弾性部材が形成された溝部を外周部に有する封口部材によって該外装ケースの開口を封口するとともに、前記弾性部材が当接にて変形するように前記外装ケースの開放端をカ−リング加工して前記外装ケ−ス内部を密閉し、且つ前記コンデンサ素子に電気的に接続された電極端子が前記封口部材を貫通して引き出された電解コンデンサにおいて、前記溝部は前記外装ケースとの間に壁部を有する形状であるとともに、該壁部の外面高さ位置が前記弾性部材の上面高さ位置よりも低く形成されていることを特徴とする電解コンデンサ。
- 前記壁部の外面高さ位置が、前記カ−リング加工された外装ケースの開放端の高さ位置とほぼ同等または高いものとされている請求項1
に記載の電解コンデンサ。 - 前記弾性部材に当接する前記外装ケースの開放端と前記溝部内周との距離Gが、前記弾性部材の幅Wの1/3〜2/3となるように前記カ−リング加工が実施されている請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
- 前記弾性部材の高さ方向の厚みHが、前記弾性部材に当接する前記外装ケースの開放端と前記溝部内周との距離Gの1〜3倍とされている請求項1〜3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
- 前記溝部底面に、前記弾性部材と嵌合する突起部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の電解コンデンサ。
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