JP4701637B2 - 扁平形電気化学素子 - Google Patents

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Description

本発明は、扁平形電気化学素子に用いるケースとガスケットの形状を最適化し、扁平形電気化学素子の生産性ならびに電気的特性の改善に関するものである。
一般的に、扁平形電気化学素子は小型、軽量であることが大きなメリットとなり、様々な用途に使用されている。例えば、PCや携帯電話などの電子機器にメモリーバックアップ用として使用されているリチウム一次電池や二次電池、電気二重層キャパシターなどがある。これらは、電極および電解液を、セパレーターを中央に介してハウジング部品の中にかしめ封口され、扁平形電気化学素子を構成している。
例として、扁平形リチウム一次電池の構造を、図7に示す。ステンレス鋼からなる負極端子を兼ねる封口板2の外周には、ステンレス鋼からなる正極端子を兼ねるケース1と封口板2を絶縁するポリプロピレン製ガスケット3が嵌合されている。ケース1内には、ケース1に接触する正極4、封口板2に接触する負極5、および両電極間に介在し、電解液を保持するポリプロピレン製セパレータ6が収容されており、ケース1の開口部をポリプロピレン製のガスケット3を介してかしめることにより密封する構造としている。
この扁平形電気化学素子は、部品点数が少なく、生産性が良い。一般的にケース、封口板、ガスケットは、ガスケットを挟んで直径方向の封口板とケースの隙間である部品嵌合寸法を小さくするほど発電要素である活物質や電解液を充填出来る体積が大きくなり、また、気密性が向上することから電池内部から電解液が漏れる(いわゆる漏液)現象を抑制することができる。例えば、特許文献1や特許文献2には、扁平形アルカリ電池において、ケース内径やガスケットの外径の最適な関係を示し、電池内部から電解液が漏れる(いわゆる漏液)現象の抑制、すなわち耐漏液性を改善する製造方法が開示されている。このように嵌合寸法を出来るだけ小さくし、同時に内容積を大きくすることは、電池内部の発電要素を多く充填できる手法であり、かつ耐漏液性を向上させるなどのメリットがある。
特開昭62−8442号公報 特開平9−92299号公報
しかしながら、扁平形電気化学素子は構成が簡単なことから、構成するハウジング部品の寸法形状が耐漏液性だけではなく、その電気特性や生産性へも大きく影響を及ぼす。特に耐漏液性の観点からガスケットとケースの隙間である部品嵌合寸法を小さくし、部品同士を密着させて電解液が漏れる経路を無くす手法が一般的に行われる。しかし、嵌合寸法が小さい場合、ハウジング部品形状の組合せによっては、ハウジング部品そのものは部品規格内の寸法設計であっても、電池あるいはキャパシターなどの製品に組み立てる際のかしめ封口において内部の余分な空気が抜けきれず、結果として組み立てた製品が膨れた形状になることで製品の寸法規格を外れるという生産上の不良が発生することがある。また、活物質から外部への電気接続をリード部品で機械的に接続する円筒形電池などとは異なり、扁平形電気化学素子では内部の電極体をケースあるいは封口板に圧接して外部への電気接続しているので、このような原因で製品が膨れると、内部の電極体とケースあるいは封口板との接触圧力が低下して接触抵抗が上昇し、電気特性が低下するという課題が発生する。
本発明は、ケースとガスケットの部品形状を最適化することで、扁平形電気化学素子の
生産性および電気的特性を向上させることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の偏平型電気化学素子は、底面平坦部と側面立ち上がり部と側面部とを備えて有底円筒状に形成されたケースと、有底円筒状に形成された封口板とを、外壁部と外壁立ち上がり部と底面部とを備えて環状に形成された絶縁性のガスケットを挟んでかしめ、これらの内部空間に発電要素を密閉してなり、前記ガスケットの外壁立ち上がり部はC面取りされて形成され、前記ケースの内周径D1と前記ガスケットの外周径D2とが、(D1−D2)/2≦0.1mmの関係にあり、前記ケースの側面立ち上がり部の内側曲率半径R1と前記ガスケットの外壁立ち上がり部の底面部に対して垂直方向の面取り寸法C1および半径方向の面取り寸法C2とが、R1≦C1≦2×R1およびR1≦C2≦2×R1の関係にあることを特徴とする。
ここで、ケースの内周径D1は、その断面内側において底面平坦部と側面部とを延長した直線の交点がなす円周の直径を表し、また、ガスケットの外周径D2は、その断面外側において外壁部と底面部とを延長した直線の交点がなす円周の直径を表す。
ケースの内周径D1と前記ガスケットの外周径D2とを、(D1−D2)/2≦0.1mmにするとともに、ケースの側面立ち上がり部の内側曲率半径R1と、これに対向するガスケットの外壁立ち上がり部の底面部に対して垂直方向の面取り寸法C1および半径方向の面取り寸法C2とが、R1≦C1≦2×R1およびR1≦C2≦2×R1とすることで、ガスケットとケースを組み合わせる際にガスケットの底面部からの外壁立ち上がり部がケースの底面平坦部からの側面立ち上がり部に引っかかることがなくなるとともに、ガスケットとケースを組み合わせる際にガスケット底面部とケース底面平坦部にはさまれた余分な空気が側面立ち上がり部と外壁立ち上がり部の間から抜けることで、ガスケット底面部とケース底面平坦部とが面と面で密着する。これにより、封口板とガスケットとケースによって囲まれた空間は最小になり、また、ケースと封口板とをガスケットを挟んでかしめて内部に発電要素を密封した後の製品の膨らみがなく、内部の発電要素とケースあるいは封口板との良好な接触圧力を保持できるので電気特性の低下が抑えられる。特に、電気化学素子の直径が広く、かつ厚みが薄い場合や、ケースの板材厚みが薄いものについて効果が大きい。
ケースとガスケットの部品形状の最適化することにより、扁平形電気化学素子の製品組立における製品膨れによる寸法規格不良を削減できるとともに電気的特性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施例にかかる偏平形電池の断面図である。有底円筒状のケース1と有底円筒状の封口板2とが環状のガスケット3を挟んでかしめられている。これらの内部空間に正極4、負極5、及び電解液を保持したセパレータ6が密封され、正極4とケース1、負極5と封口板2とがそれぞれ適度の接触圧力で圧接することで、外部への電気接続がなされる。
図2はケース1の断面図を示し、また図3はガスケット3の断面図を示す。ケース1は絞り加工により、底面平坦部1aが内側曲率半径R1で側面立ち上がり部1bをなして側面部1cが形成される。図2において、底面平坦部1aの内側の面と側面部1cの内側の面のそれぞれを延長し、その延長線の交点1dがなす円周の直径をケース1の内周径D1
とする。一方、絶縁性樹脂材料のガスケット3は、底面部3aとC面取りされた外壁立ち上がり部3bをなして外壁部3cを形成するとともに内側にも内壁部3dが形成されている。図3において、外壁立ち上がり部3bは、底面部3aの半径方向には寸法C2で、底面部に対して垂直方向には寸法C1で面取りされている。また、底面部3aと外壁部3cとがケースと接する面をそれぞれ延長し、その延長線の交点3eがなす円周の直径をガスケット3の外周径D2とする。ここで、D1とD2は、(D1−D2)/2≦0.1mmとなるように設定され、R1とC1は、R1≦C1≦2×R1となるように、またR1とC2は、R1≦C2≦2×R1となるように設定される。
図4は、本発明の一実施例の偏平形電池におけるケース1とガスケット3および封口板2のかしめ封口前の断面図である。D1とD2は、(D1−D2)/2≦0.1mmとなるように設定され、R1とC1は、R1≦C1≦2×R1となるように、またR1とC2は、R1≦C2≦2×R1となるように設定されているので、上方から封口板2を押えると、ガスケット3の底面部3aあるいは正極4とケース1の底面平坦部1aに挟まれた空気はケース1の側面立ち上がり部1bとガスケット3の外壁立ち上がり部3bの間から抜け、ガスケット3の底面部3aあるいは正極4とケース1の底面平坦部1aとが密着する。
この状態で、ケース1をかしめると、図1に示した偏平形電池が完成する。この電池はガスケット3の底面部3aあるいは正極4とケース1の底面平坦部1aに挟まれた部分に余分な空気がないので、正極4とケース1、負極5と封口板2とが適度の接触圧力を保つとともに、組立後に膨れることはない。したがって、その電気特性が低下したり、組立後に製品寸法が規格外れになることがない。なお、ケース1をかしめることによって、ケース1とガスケット3は変形してケース1の側面立ち上がり部1bの内側曲率半径およびガスケット3の外壁立ち上がり部3bの外側曲率半径は変化するものの、ケース1の側面立ち上がり部1bとガスケット3の外壁立ち上がり部3bとの間にはわずかに隙間が形成される。
図5は、比較例となる偏平形電池におけるケース1とガスケット3および封口板2のかしめ封口前の断面図である。D1とD2は、(D1−D2)/2≦0.1mmとなるように設定されているが、ガスケットはC面取りされた外壁立ち上がり部がない。この場合には、ガスケット3の外壁部と底面部の境界であるエッジ部分がケース1の側面立ち上がり部1bにあたるので、ガスケット3の底面部3aあるいは正極4がケース1の底面平坦部1aに密着しない。
この状態で、ケース1をかしめると、ガスケット3の底面部3aあるいは正極4とケース1の底面平坦部1aに挟まれた部分に余分な空気をためこんだままで密封される。したがって、規定どおりにかしめたとしても、ためこんだままの余分な空気のために内部圧力が高くなり製品が膨らんで図6に示したような偏平形電池となり、組立後の製品寸法が規格外れとなってしまう。また、正極4とケース1、負極5と封口板2との適度な接触圧力が得られず、電気特性の低下をきたしてしまう。
また、R1とC1は、R1≦C1≦2×R1となるように、またR1とC2は、R1≦C2≦2×R1となるように設定されているが、D1とD2は、(D1−D2)/2>0.1mmとなるように設定されている場合には、ガスケットとケースの隙間である嵌合寸法がより大きくなるので、ガスケットの底面部あるいは正極とケースの底面平坦部に挟まれた部分に余分な空気をためこんだままで密封されるという課題に対しては好ましいが、反面、ケースとガスケットの密着性が低下して耐漏液性が低下する恐れがある。
次に、より具体的な実施例として、二酸化マンガンを正極に、リチウムを負極に用いた
扁平形二酸化マンガンリチウム電池の例を示す。扁平形二酸化マンガンリチウム電池CR2012(直径20.0mm、厚さ1.2mm、電気容量55mAh)において、D1およびD2が、(D1−D2)/2=0.10mmになり、R1およびC1、C2を種々組み合わせた厚み0.20mmのステンレス鋼鈑製のケースおよびポリプロピレン製のガスケットを用いて、電池A1、B1、C1、D1、E1、F1を各100個組み立てた。このとき、CR2012における電池の厚み規格上限の1.20mmを越えた製品寸法規格不良発生率と、交流法1kHzにおける電池の内部抵抗平均値と、−10℃と60℃の温度環境下に1時間ずつ交互に晒す熱衝撃試験10日後の漏液発生率を(表1)に示す。
Figure 0004701637
これから明らかなように、本発明の実施例にかかる電池A1、B1、C1と比較して、比較例にかかる電池D1、E1、F1は製品寸法不良率、内部抵抗値、漏液発生率ともに悪化している。これは、ケースとガスケットの組み合わせがR1とC1は、R1≦C1≦2×R1となるように、またR1とC2は、R1≦C2≦2×R1となる範囲の組み合わせからはずれると、電池組み立て時にうまく内部の空気が抜けず、そのために電池内部に必要以上の空気を溜めこみ、組み立て後に電池が膨れ形状となったため製品規格寸法を越える厚みのものが増えたと考えられる。また、膨れ形状となったため、電池内で正極とケース、負極と封口板との接触圧力が低下し、接触抵抗値が大きくなって電池そのものの内部抵抗値が大きくなったものと考えられる。同時に、膨れ形状になること、もしくはガスケットがケース底面に確実に接触しない状態で封口されることそのものによって、ケースとガスケットの接触圧力が低下もしくは分散し、封口部の安定性が低下して漏液しやすくなったと考えられる。
次に、別の実施例として、同様に二酸化マンガンを正極に、リチウムを負極に用いた扁平形二酸化マンガンリチウム電池の例を示す。扁平形二酸化マンガンリチウム電池CR2012(直径20.0mm、厚さ1.2mm、電気容量55mAh)において、R1とC1は、R1≦C1≦2×R1となるように、またR1とC2は、R1≦C2≦2×R1となるように設定し、(D1−D2)/2=0.05、0.08、0.10、0.12mmになるように種々組み合わせ、厚み0.20mmのステンレス鋼鈑製のケースおよびポリプロピレン製のガスケットを用いて、電池A2、B2、C2、D2を各100個組み立てた。このとき、CR2012における電池の厚み規格上限の1.20mmを越えた製品寸法規格不良発生率と、交流法1kHzにおける電池の内部抵抗平均値と、−10℃と60℃の温度環境下に1時間ずつ交互に晒す熱衝撃試験10日後の漏液発生率を(表2)に示す。
Figure 0004701637
これから明らかなように、本発明の実施例にかかる電池A2、B2、C2と比較して、比較例にかかる電池D2は、寸法規格不良発生率と内部抵抗値は良好だが、耐漏液性が低下している。これは、ケースとガスケット間の嵌合が緩くなることで、ケースの側面部とガスケットの外壁部での密着性が低下し、漏液しやすくなったと考えられる。
以上説明したように、ケースとガスケットの形状を適切に設定することで電池膨れによる製品寸法不良の削減や電気的特性の向上が図られる。
なお、発明の実施例は二酸化マンガンリチウム電池について説明したが、正極には、フッ化黒鉛やバナジウム酸化物、ニオブ酸化物、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、炭素などを用いても適応可能であり、また、負極には、Li/Al合金やチタン酸リチウムなども用いることもできる。さらに、電解液を非水系電解液に代え、水溶液系電解液やポリマー電解液を用いることもできる。また、電池に代え、電気二重層キャパシターなどにも適用が可能である。
偏平形電気化学素子において、本発明のようにケースおよびガスケットの形状を適切に設定することは、電気化学素子の膨れによる寸法規格不良の削減や電気的特性の向上に有用である。
本発明の一実施例にかかる扁平形電池の断面図 ケースの断面図 ガスケットの断面図 本発明の一実施例における扁平形電池の封口前断面図 比較例における扁平形電池の封口前断面図 比較例における扁平形電池の断面図 従来の扁平形電池の断面図
符号の説明
1 ケース
1a 底面平坦部
1b 側面立ち上がり部
1c 側面部
2 封口板
3 ガスケット
3a 底面部
3b 外壁立ち上がり部
3c 外壁部
4 正極
5 負極
6 セパレータ

Claims (1)

  1. 底面平坦部と側面立ち上がり部と側面部とを備えて有底円筒状に形成されたケースと、有底円筒状に形成された封口板とを、外壁部と外壁立ち上がり部と底面部とを備えて環状に形成された絶縁性のガスケットを挟んでかしめ、これらの内部空間に発電要素を密閉してなる扁平形電気化学素子であって、
    前記ガスケットの外壁立ち上がり部はC面取りされて形成され、前記ケースの内周径D1と前記ガスケットの外周径D2とが、(D1−D2)/2≦0.1mmの関係にあり、前記ケースの側面立ち上がり部の内側曲率半径R1と前記ガスケットの外壁立ち上がり部の底面部に対して垂直方向の面取り寸法C1および半径方向の面取り寸法C2とが、R1≦C1≦2×R1およびR1≦C2≦2×R1の関係にあることを特徴とする扁平形電気化学素子。


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