JP4288402B2 - 二次電池用電解液、二次電池および二次電池の使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウムイオン二次電池の電解液、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウムイオン二次電池は、小型化・軽量化および高容量化を目指した研究開発が活発に行われ、その結果、携帯型電子機器やノート型パソコン等の用途に広く利用されている。また、今後は携帯用機器等のみならず、自動車などの用途への適応も期待されている。
【0003】
これらの用途においては、従来から電池の小型化、軽量化が要請されているが、その一方で、更なるサイクル特性の改善、特に高温環境下におけるサイクル特性の劣化を抑えることが重要な技術的課題となっている。
【0004】
リチウムイオン二次電池用電解液の有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどが使用されている。上記のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネートは誘電率が高いという特徴を有する一方で、粘度が高いため、単独で使用することは困難である。このため、低粘度の有機溶媒であるジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネートと、上記の環状カーボネートとを混合した混合溶媒が、電解液の溶媒として用いられている。
【0005】
しかしながら、充放電の際、電解液が置かれる環境は、負極表面においては還元作用が非常に強い環境に、正極表面においては酸化作用が非常に強い環境になるため、これらの電極表面における溶媒の還元反応または酸化反応は避けられず、電極を構成する活物質と溶媒とが副反応を起こして分解し、電池容量が劣化するという課題を有していた。この現象は、特に高温下において顕著であった。
【0006】
従来、このような電極活物質と溶媒との反応を防ぐために、予め電極活物質と溶媒との副反応を積極的に進行させ、電極活物質表面に副反応物からなるSEI(Solid Electrolyte Interface:固体電解質界面)を形成するエージングと呼ばれる方法が提案されていた。しかしながら、この方法では初期の電池容量の低下は免れず、また充放電サイクルを繰り返すことによって、このSEI膜上に新たなSEI膜が生成される。そのため電池の内部抵抗が高くなり、放電効率が低下するという課題を有していた。また正極、負極表面を、予め不活性な材料で被覆することによって、電解液と電極の反応を抑制する方法も提案されているが、電極作製過程が複雑になるという課題を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
こうした事情に鑑み、本発明は、電池の容量劣化を抑制し、二次電池のサイクル寿命を向上させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明によれば、有機溶媒と、電解質(ジフルオロ酢酸リチウムを除く)とを含む二次電池用電解液であって、ジフルオロ酢酸リチウムをさらに含むことを特徴とする二次電池用電解液が提供される。
【0009】
正極に高電位の材料を用いたリチウムイオン二次電池では、サイクルに伴い容量が低下する現象が認められる。本発明者らの解析では、これらの容量低下は、正極側において、電解液を構成する溶媒の分解生成物などが生成し、分解生成物が負極側に堆積するためであると考えられた。
【0010】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、ハロゲン化酢酸リチウムを溶解させた電解液を使用することにより、サイクルに伴う容量低下が抑制されることが判明した。ハロゲン化酢酸リチウムのなかでもジフルオロ酢酸リチウムを使用したとき、特にサイクル特性に優れた電池が得られることが分かった。
【0011】
この理由として、電解液中にハロゲン化酢酸リチウムを含有させておくことにより、初回の充電時に、ハロゲン化酢酸リチウムが負極表面に析出し、安定な被膜を形成する。この被膜により、正極活物質と溶媒との反応によって生じる分解生成物が負極表面に堆積することを防ぐことができ、従来の課題であった負極容量の劣化を軽減することが可能となる。すなわちサイクル特性を向上させることができる。
【0012】
上記ハロゲン化酢酸リチウムの被膜は、高温環境下においても安定である。そのため、当該被膜の耐久性は高いことから、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0013】
ここで、従来、電解液にトリフルオロ酢酸リチウムを含有させる技術が知られていた。特開2000−82494号公報、特開2000−260467号公報、特開2000−348764号公報、特開平11−273733号公報、特開平11−273734号公報においては、トリフルオロ酢酸リチウムを電解質として溶解させた電解液を使用する二次電池が示されている。ただし、上記公報記載の技術において、トリフルオロ酢酸リチウムは、電解液にリチウム伝導性を付与するための電解質の一例として挙げられているにすぎず、具体的開示はされていない。また、上記公報記載の技術では、トリフルオロ酢酸リチウムの有する固有の性質に着目して、トリフルオロ酢酸リチウムが選択されている訳ではない。
【0014】
これに対し本発明では、ジフルオロ酢酸リチウムを電解質としてではなく、負極表面に被膜を形成せしめる目的で添加する。ジフルオロ酢酸リチウム分子が、強力なC−F間結合を有する点に着目し、ジフルオロ酢酸リチウムを電解液に添加するものである。
【0015】
すなわち、電解液に溶解しているジフルオロ酢酸リチウムは、初回充電時、負極に析出して安定な被膜を形成する。この被膜はLi伝導性を有するため、負極の容量を低下させることはなく、また、当該被膜を構成するジフルオロ酢酸リチウムは強力なC−F結合を有することから、当該被膜はサイクルを経ても安定的に存続する。
【0016】
ここで、トリフルオロ酢酸リチウムを添加剤として電解液に溶解させる場合、ジフルオロ酢酸リチウムの場合と同様に、初回充電時に負極表面に被膜が生じる。しかしながら、トリフルオロ酢酸リチウムは、電解液に使用される溶媒、たとえばカーボネート系の溶媒に対する溶解度が高い。そのため、初回充電時に負極表面に析出したトリフルオロ酢酸リチウムは、充放電を繰り返すことにより、再度電解液に溶解してしまうため、サイクルを経るにつれて、当該被膜による負極表面の保護効果が低下することとなる。
【0017】
また、モノフルオロ酢酸リチウムを添加剤として電解液に溶解させる場合、電解液に使用されるカーボネート系などの溶媒に対するモノフルオロ酢酸リチウムの溶解度は低いことから、負極表面を保護するのに十分な量を電解液に溶解させることは困難である。
【0018】
なお、特開2001−307770号公報には、電解液にジフルオロ酢酸を添加する技術が開示されているが、この構成では、十分なリチウム伝導性を有する皮膜を負極表面に形成することは困難である。また、リチウム塩以外の化合物(ジフルオロ酢酸)を電解液に添加することになるため、電解質自体のリチウム伝導性も低下する。このため、電池の内部抵抗が上昇することによる出力低下が生じることとなる。これに対し、本発明の電解液は、リチウム塩であるジフルオロ酢酸リチウムを使用するため、特開2001−307770号公報記載の技術において生じる問題点は発現しない。
【0019】
また本発明によれば、上記の二次電池用電解液において、上記二次電池用電解液中のジフルオロ酢酸リチウムの濃度が2〜10wt%であることを特徴とする二次電池用電解液が提供される。
【0020】
電解液に溶解させるジフルオロ酢酸リチウムの濃度を上記の範囲とすることにより、負極に形成される被膜の厚さを必要十分なものとすることが可能となる。したがって、負極のリチウム導電性を確保しつつ、長期にわたり負極の容量劣化を軽減することが可能となる。
【0021】
また本発明によれば、上記の二次電池用電解液において、上記有機溶媒がカーボネート系溶媒であることを特徴とする二次電池用電解液が提供される。
【0022】
電解液に用いる有機溶媒としてカーボネート系溶媒を採用することにより、負極表面を保護するのに十分な量のジフルオロ酢酸リチウムを電解液に溶解させることができ、かつ負極表面に形成される被膜を長期間にわたり保つことが可能となる。
【0023】
本発明におけるカーボネート系溶媒とは、カーボネート結合を有する有機溶媒のことをいう。
【0024】
また本発明によれば、上記の二次電池用電解液を備えた二次電池が提供される。
【0025】
上記の電解液を用いることにより、高出力かつ長寿命の二次電池が実現する。
【0026】
また本発明によれば、有機溶媒と、電解質(ジフルオロ酢酸リチウムを除く)とを含む二次電池用電解液を備えた二次電池の使用方法であって、上記二次電池用電解液にジフルオロ酢酸リチウムを添加するステップを含むことを特徴とする二次電池の使用方法が提供される。
【0027】
この使用方法により、二次電池のサイクル特性を向上させることが可能となる、また、長期にわたり二次電池の出力を高く保つことが可能となる。
【0028】
また本発明によれば、有機溶媒と、電解質(ジフルオロ酢酸リチウムを除く)とを含む二次電池用電解液を備えた二次電池の使用方法であって、上記二次電池用電解液にジフルオロ酢酸リチウムを添加し、上記二次電池用電解液中のジフルオロ酢酸リチウムの濃度を2〜10wt%とするステップを含むことを特徴とする二次電池の使用方法が提供される。
【0029】
ジフルオロ酢酸リチウムの濃度を所定の範囲とすることにより、上記サイクル特性を向上させる効果、および長期にわたり高出力を保つ効果をより一層得ることが可能となる。
【0030】
また本発明によれば、上記の二次電池の使用方法において、上記二次電池用電解液が、カーボネート系溶媒を含むことを特徴とする二次電池の使用方法が提供される。
【0031】
この使用方法により、負極表面を効果的に保護することが可能となるため、二次電池のサイクル特性を向上せしめることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の二次電池用電解液は、ジフルオロ酢酸リチウムを添加剤として含むことを特徴としている。本発明の電解液を備えた二次電池においては、初回充電時、負極表面にジフルオロ酢酸リチウムが析出して安定な被膜を形成する。この被膜は、構成成分がジフルオロ酢酸リチウムであるため、リチウム伝導性を備えている。また、この被膜は、電解液の溶媒の分解物が負極表面に堆積することを防止する機能を有することから、二次電池のサイクル特性を向上させる。
【0033】
本発明の二次電池用電解液は、有機系溶媒およびリチウム塩によって調整された電解液に対し、ジフルオロ酢酸リチウムを0.1〜20wt%、好ましくは2〜10wt%の濃度となるように添加する。このような濃度で添加することにより、負極表面上に必要十分な厚さの被膜を形成せしめることができ、サイクル特性に優れた二次電池を実現することができる。
【0034】
ジフルオロ酢酸リチウムを電解液に添加し、この物質による被膜を負極表面に形成させる利点について以下説明する。フッ素は、臭素や塩素に比べ電気陰性度が高い。このため、炭素原子とフッ素原子との結合力は、炭素原子と臭素原子との結合力などと比較して強固である。したがって、ジフルオロ酢酸リチウムからなる被膜は、高温下においても安定性が高く、壊れにくいのである。
【0035】
ここで、炭素原子とフッ素原子との結合を有する化合物としては、他の化合物、たとえば、トリフルオロ酢酸リチウムやモノフルオロ酢酸リチウムも存在する。しかしながら、電解液に加える添加剤としてはジフルオロ酢酸リチウムが、トリフルオロ酢酸リチウムやモノフルオロ酢酸リチウムよりも好ましい。その理由は次のとおりである。
【0036】
トリフルオロ酢酸リチウムは、カーボネート系溶媒に対して溶解しやすい性質を有する。そのため、初回充電時に負極表面に形成された被膜は、サイクルを経るとともに厚さが減少し、ついには消滅してしまう。したがって、サイクルを経るとともに、負極表面の保護効果が低下することとなる。
【0037】
また、モノフルオロ酢酸リチウムは、カーボネート系溶媒に対する溶解度が低い。したがって、負極表面を保護するのに十分な量を電解液に溶解させることが困難である。
【0038】
上記有機系溶媒としては、通常用いられているものを用いることができ、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1、2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1、3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1、3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒を一種または二種以上を混合して使用できる。
【0039】
これらの有機溶媒にはリチウム塩を溶解させる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9CO3、LiC(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiB10Cl10、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、イミド類などが挙げられる。また、電解液に代えてポリマー電解質を用いてもよい。電解質濃度は、たとえば0.5mol/Lから1.5mol/Lとする。濃度が高すぎると密度と粘度が増加する。濃度が低すぎると電気電導率が低下することがある。
【0040】
本発明の二次電池は、リチウム含有金属複合酸化物を正極活物質とした正極と、リチウムを吸蔵放出可能な負極活物質を持つ負極とを含み、電気的接続を起こさないように上記正極と負極の間に挟まれるセパレータとを含む。上記正極および負極は、リチウムイオン伝導性の電解液に浸された状態であり、これらが電池ケースの中に密閉された状態となっている。正極および負極に電圧を印加することにより、正極活物質からリチウムイオンが放出され、負極活物質にリチウムイオンが吸蔵され、充電状態となる。また、正極と負極との電気的接触を電池外部で起こすことにより、充電時と逆に、負極活物質からリチウムイオンが放出され、正極活物質にリチウムイオンが吸蔵されることにより、放電が生じる。
【0041】
正極については、リチウムイオンを充電時に放出、放電時に吸蔵することができれば、その電池材料構成で特に限定されるものでなく、公知の材料構成のものを用いることができる。特に正極活物質、導電材、および接着剤を混合して得られた合剤が集電体に塗布されてなるものが好ましい。
【0042】
正極活物質は、特に限定されるものではなく、公知の活物質を用いることができる。例えば、LiXCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyMn1-yO2、LixCoyMn1-yO2 、LixNiyM1-yO2 、LixNiyM2-yO2 、LixMn2O4、LixMnyM2-yO4、LixFePO4、LixCoPO4(M=Ti、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種)(ここでx=0〜1.2、y=0〜1)を用いることができる。ここで、上記xの値は、充電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0043】
負極については、リチウムイオンを充電時に吸蔵、放電時に放出することができればよく、その電池材料で特に限定されるものでなく、公知の材料構成のものを用いることができる。リチウムイオンを電気化学的に吸蔵および放出することが可能な物質の具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、コークス等の炭素材料、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−鉛合金、リチウム−錫合金等のリチウム合金、SnO2、SnO、TiO2、Nb2O3等、電位が正極活物質に比べて卑な金属酸化物が挙げられる。特に負極活物質、導電材、および接着剤を混合して得られた合剤が集電体に塗布されてなるものが好ましい。
【0044】
本発明に係る二次電池は、乾燥空気または不活性ガス雰囲気において、負極および正極を、セパレータを介して積層、あるいは積層したものを捲回した後に、電池缶に収容したり、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可とう性フィルム等によって封口することによって電池を製造することができる。
【0045】
図1に電池の実施例としてコインタイプのセルの形態を示す。本発明は電池形状には制限がなく、セパレータを挟んで対向した正極、負極を巻回型、積層型などの形態を取ることが可能であり、セルにも、コイン型、ラミネートパック、角型セル、円筒型セルなど各種の形態を採用することができる。
【0046】
【実施例】
(実施例1)
本実施例においては、図1に示されるようなコインタイプのセルの形態を示す。
【0047】
(電解液の作製)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を40:60(Vol.%)で混合し、この混合溶媒にLiPF6を1mol/Lとなるように溶解させた。得られた溶液に対し、さらに2wt%となるようにジフルオロ酢酸リチウムを添加し、電解液を作製した。
【0048】
(正極の作製)
正極活物質としてLiMn2O4を用いた。
【0049】
Li、Mnの供給源としてそれぞれLi2CO3、MnO2を目的の金属組成比になるように秤量し、粉砕混合した。次に、原料混合後の粉末を750℃で8時間焼成した。こうして得られた全ての結晶構造は、ほぼ単相のスピネル構造を有していることを確認した。
【0050】
作製した正極活物質と導電性付与剤である炭素を混合し、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドンに溶かしたものに分散させ、スラリー状とした。正極活物質、導電性付与剤、結着剤の重量比は88/6/6とした。Al集電体上にスラリーを塗布した。その後、真空中で12時間乾燥させて、電極材料とした。電極材料は直径12mmの円に切り出した。その後、3t/cm2で加圧成形して、正極集電体3および正極活物質層1を得た。
【0051】
(負極の作製)
負極活物質としては、非晶質炭素(呉羽化学社製のカーボトロン(登録商標)P)を用いた。非晶質炭素と導電性付与剤である炭素とを混合し、N−メチルピロリドンにポリフッカビニリデン(PVDF)を溶かしたものに分散させスラリー状とした。非晶質炭素、導電性付与剤、結着剤の重量比は91/1/8とした。Cu集電体上にスラリーを塗布した。その後、真空中で12時間乾燥させて、電極材料とした。電極材料は直径13mmの円に切り出した。その後、1t/cm2で加圧成形して、負極集電体4および負極活物質層2とした。
【0052】
セパレータ5にはポリプロピレンのフィルムを使用した。正極と負極がセパレータを挟んで電気的接触がない状態に対向配置させ、これを図1のように正極外装缶6と負極外装缶7とで覆い、上記の電解液により満たし、絶縁パッキング8を用いて密閉した。
【0053】
(実施例2)
本実施例においては、電解液について、ジフルオロ酢酸リチウムの添加を5wt%とした。これ以外は実施例1の電池と同様の構成とし、同様の作製方法により電池を作製した。
【0054】
(比較例1)
本比較例においては、電解液について、ジフルオロ酢酸リチウムではなく、トリフルオロ酢酸リチウムの添加を行なった。電解液中のトリフルオロ酢酸リチウムの濃度は5wt%とした。これ以外は実施例1の電池と同様の構成とし、同様の作製方法により電池を作製した。
【0055】
(比較例2)
本比較例においては、ジフルオロ酢酸リチウムなどの添加剤を添加しない電解液を用いた。これ以外は実施例1の電池と同様の構成とし、同様の作製方法により電池を作製した。
【0056】
実施例1、2および比較例1、2において作製した電池について、500サイクル後の容量維持率を評価した。その評価の際、1Cの充電レートで4.2Vまで充電を行い、1Cのレートで2.5Vまで放電を行った。なお、試験温度は45℃とした。結果は表1に示したとおりである。
【0057】
【表1】
【0058】
添加剤が電解液に加えられていない比較例2の電池と比較して、実施例1および2の電池は、容量維持率が10%以上優れることが示された。これにより、添加剤としてジフルオロ酢酸リチウムによる負極表面の保護効果が長期にわたり持続することが判明した。
【0059】
また、実施例2と比較例1とを比較することにより、添加剤としてジフルオロ酢酸リチウムの性能が優れることが分かる。これにより、トリフルオロ酢酸リチウムよりジフルオロ酢酸リチウムを添加剤として採用する方が、サイクルを経ても負極表面の保護効果が安定的に持続することが示された。
【0060】
(実施例3)
本実施例における電解液は、実施例1と同様の手法により調整した。添加剤はジフルオロ酢酸リチウムを用い、電解液中の濃度を10wt%になるように添加した。
【0061】
正極活物質としてLiCoO2を使用した。Li、Coの供給源としてそれぞれLi2CO3、CoOを目的の金属組成比になるように秤量し、粉砕混合した。次に、原料混合後の粉末を750℃で8時間焼成した。こうして得られた全ての結晶構造は、ほぼ単相のスピネル構造を有していることを確認した。こうして得られたLiCoO2を、実施例1と同様の手法により正極を作製した。
【0062】
上記以外の電池の構成は実施例1に準じ、電池を作製した。
【0063】
(比較例3)
本比較例においては、電解液に対してトリフルオロ酢酸リチウムの添加を行なった。電解液中のトリフルオロ酢酸リチウムの濃度は10wt%とした。これ以外は実施例3の電池と同様の構成とし、同様の作製方法により電池を作製した。
【0064】
(比較例4)
本比較例においては、電解液に対してモノフルオロ酢酸リチウムの添加を行なった。モノフルオロ酢酸リチウムの溶解度は低いことから、電解液中のモノフルオロ酢酸リチウムの濃度は2wt%とした。これ以外は実施例3の電池と同様の構成とし、同様の作製方法により電池を作製した。
【0065】
(比較例5)
本比較例においては、ジフルオロ酢酸リチウムなどの添加剤を添加しない電解液を用いた。これ以外は実施例3の電池と同様の構成とし、同様の手法により電池を作製した。
【0066】
実施例3および比較例3〜5において作製した電池について、500サイクル後の容量維持率を評価した。その評価の際、1Cの充電レートで4.2Vまで充電を行い、1Cのレートで2.5Vまで放電を行った。なお、試験温度は45℃とした。結果は表2に示したとおりである。
【0067】
【表2】
【0068】
添加剤が電解液に加えられていない比較例5の電池と比較して、実施例3の電池は、容量維持率が10%以上優れることが示された。これにより、正極活物質としてLiCoO2を用いた場合においても、ジフルオロ酢酸リチウムによる負極表面の保護効果が長期にわたり持続することが判明した。
【0069】
また、実施例3と比較例3、4とを比較することにより、添加剤としての性能について、ジフルオロ酢酸リチウムがトリフルオロ酢酸リチウムやモノフルオロ酢酸リチウムよりも優れることが分かる。これにより、トリフルオロ酢酸リチウムよりジフルオロ酢酸リチウムを添加剤として採用する方が、サイクルを経ても負極表面の保護効果が安定的に持続することが示された。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電解液中に添加されたジフルオロ酢酸リチウムが負極表面に安定な被膜を形成し、負極表面を保護することから、二次電池のサイクル寿命を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二次電池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 セパレータ
6 正極外装缶
7 負極外装缶
8 絶縁パッキング
Claims (7)
- 有機溶媒と、電解質(ジフルオロ酢酸リチウムを除く)とを含む二次電池用電解液であって、ジフルオロ酢酸リチウムをさらに含むことを特徴とする二次電池用電解液。
- 請求項1に記載の二次電池用電解液において、前記二次電池用電解液中のジフルオロ酢酸リチウムの濃度が2〜10wt%であることを特徴とする二次電池用電解液。
- 請求項1または2に記載の二次電池用電解液において、前記有機溶媒がカーボネート系溶媒であることを特徴とする二次電池用電解液。
- 請求項1乃至3いずれかに記載の二次電池用電解液を備えた二次電池。
- 有機溶媒と、電解質(ジフルオロ酢酸リチウムを除く)とを含む二次電池用電解液を備えた二次電池の使用方法であって、前記二次電池用電解液にジフルオロ酢酸リチウムを添加するステップを含むことを特徴とする二次電池の使用方法。
- 有機溶媒と、電解質(ジフルオロ酢酸リチウムを除く)とを含む二次電池用電解液を備えた二次電池の使用方法であって、前記二次電池用電解液にジフルオロ酢酸リチウムを添加し、前記二次電池用電解液中のジフルオロ酢酸リチウムの濃度を2〜10wt%とするステップを含むことを特徴とする二次電池の使用方法。
- 請求項5または6に記載の二次電池の使用方法において、前記二次電池用電解液が、カーボネート系溶媒を含むことを特徴とする二次電池の使用方法。
Priority Applications (1)
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