JP4287245B2 - サンドイッチ射出成形方法 - Google Patents
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Description
この成形技術には、成形品が同一材料となる場合、後加工において加飾を行なう技術も含まれる。すなわち、材料によっては、耐薬品性が劣る,耐候性が劣る,外観が悪い,塗装性等の二次加工性が劣る,表面光沢が低い,表面光沢が高い,表面に傷が付きやすい等の問題があり、アロイ,ブレンド,コンポジットなどの様々な改質が図られている。しかし、一つの特性を改良すると、これとは別の特性が犠牲になる等の課題が常に付きまとい、そのバランスを取るのに多大な労力を要していた。
ところが、従来のサンドイッチ射出成形技術では、一般的に、表皮層の樹脂が容積の70%以上を占め、内部層の樹脂が30%以下となる。このため、内部層の樹脂として十分な機械的強度を有する樹脂を使用しても、実際に成形された製品は、内部層の割合が低すぎるので、製品として十分な機械的強度を備えておらず実用化できなかった。また、実用化できたとしても、極めて限定された用途においてのみ利用できるものであった。
上記事情にかんがみ、近年、サンドイッチ射出成形体の表皮層を薄くする技術について、研究開発が行なわれている。
すなわち、一般の射出成形体とほぼ同様な成形方法で、薄い表皮層のみを好適な特性を有する樹脂組成で成形することが可能な射出成形技術が望まれており、本発明者等は、広範囲の用途に使用可能なレベルまで表皮層を薄く成形した、サンドイッチ射出成形体の開発に成功したものである。
このようにすると、表皮層を形成する組成物を、第一シリンダから表皮層の厚さを形成するのに必要な量だけ射出しておくことにより、表皮層の厚さを精度よく制御することができる。
このようにすると、成形体の形状が凹凸や角部を有していても、表皮層が良好に形成され、内部層が露出するといった不具合を防止することができる。
図1は、本発明にかかるサンドイッチ射出成形方法で成形したサンドイッチ射出成形体の概略図であり、(a)は平面図を、(b)はA−A断面における拡大図を示している。
同図において、サンドイッチ射出成形体1は、サンドイッチ射出成形された棒状の試験片としてあり、異なる組成物(組成)である表皮層2と内部層3とからなっており、表皮層2の厚さを約300μm以下とした構成としてある。
なお、サンドイッチ射出成形体1は、上記形状に限定されるものではなく、様々な形状とすることができる。
また、表皮層2の厚さの下限は、特に規定されないが、通常、表皮層2の代わりに内部層3が露出し始める厚さに対して、所定の安全率を乗じた厚さが設定される。なお、用途によっては、あまりに表皮層が薄いと、その耐久性がなくなったり、外部からの衝撃で簡単に、内部層が露出して外観が悪化するおそれがあるので、このような場合には、表皮層の厚さを30μm以上とするのが好ましい。
使用される熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリアクリルスチレン樹脂,ABS樹脂等に代表される汎用プラスチックスや、ポリフェニレンエーテル樹脂,ポリアセタール樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアルキレンテレフタレート樹脂,ポリアミド樹脂等に代表されるエンジニアリングプラスチックスや、ポリエーテルエーテルケトン,ポリエーテルイミド,ポリサルフォン,ポリエーテルサルフォン,ポリフェニレンサルファイドなどのスーパーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものや、スチレン系熱可塑性エラストマー,オレフィン系熱可塑性エラストマー,ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
このようにすると、表皮層2と内部層3が良好に接合され、表皮層2が剥離するといった不具合を防止することができる。
このようにすると、射出成形時において、表皮層と内部層に該当する樹脂が混和しないので、表皮層と内部層が混ざり合うといった不具合を防止することができる。
このようにすると、合成樹脂原料として一般的に使用されるポリエチレンやポリプロピレン等を使用することができ、広範囲の用途に対応することができる。
たとえば、表皮層2に表面硬度の高いホモPPを使用し、内部層3に高衝撃ブロックPPを使用することにより、表面に傷が付きにくく、かつ、衝撃強度に優れたPP製品となる。
また、表皮層2に耐候剤入りPPを使用し、内部層3に一般的なPPを使用することにより、少量の耐候剤で耐候性を維持できるPP製品となる。
さらに、表皮層2にホモPPを使用し、内部層3にGFPPを使用することにより、ガラス繊維(GF)の浮きのない外観も良好で、強度の高いGFPP製品となる。
また、表皮層2にカーボンナノチューブ入りPPを使用し、内部層3に一般的なPPを使用することにより、高価なカーボンナノチューブの量を全体で大幅に削減しながら、優れた導電性を発揮するPP製品となる。
本実施形態のサンドイッチ射出成形方法は、表皮層と内部層が異なる組成物(組成)からなるサンドイッチ射出成形方法であって、まず、表皮層を形成する組成物を、第一シリンダから表皮層の厚さを形成するのに必要な量だけ金型内に射出する。
ここで、サンドイッチ射出成形方法とは、金型内に表皮層を成形する第一組成物と内部層を成形する第二組成物を射出して、表皮層及び内部層からなる層構造を成形する方法をいう。
また、サンドイッチ射出成形方法における第一組成物と第二組成物の射出方法としては、第一組成物と第二組成物の逐次射出,同時射出及び逐次射出と同時射出の組み合わせ射出の三つの射出パターンがあるが、本実施形態では、第一組成物をまず金型内に射出する。
また、本実施形態では、第一組成物は、金型内のゲート部付近に射出されるが、金型に第一組成物を一時的に溜めておく貯留室(図示せず)を設けて、この貯留室に第一組成物を射出してもよい。
なお、本実施形態では、第一シリンダにて第一組成物を射出し、第二シリンダにて第二組成物を射出しているが、このように複数のシリンダを使用する方法に限定されるものではなく、たとえば、可動マンドレルやホットランナー内の切り替えバルブ等を用いることにより一本のシリンダで第一組成物及び第二組成物を射出することも可能である。
また、複数のシリンダを使用する場合、合流ノズルを用いて合流させる代わりに、金型内のゲート部等で合流させることも可能である。
ここで、好ましくは、第一組成物を射出した後、約0.2sec〜約1.0sec後に、第二シリンダから第二組成物を射出するとよい。このような射出タイミングを設定することにより、金型内に射出された第一組成物は、金型と接触した微小部分が冷え始めるものの、その他の大部分は、冷却されずにほぼ均一に射出された状態を維持できるので、より薄くかつ厚さが均一な表皮層を成形することができる。
第二組成物を射出する射出速度を、約900mm/sec以上、好ましくは、約1000mm/sec以上とする理由は、後述する実施例に示すように、高速射出することにより、表皮層を従来技術では実現できなかったレベルまで薄く成形することができたからである。なお、射出機のスクリュウ径は、20mm以上、好ましくは20mm以上160mm以下である。
さらに、好ましくは、金型温度を約20℃以上かつ約90℃以下に設定するとよく、このようにすると、射出された第一組成物及び第二組成物が冷却されやすくなり、生産サイクルを短くでき生産性を向上させることができる。
なお、第一組成物及び第二組成物としては、サンドイッチ射出成形体の実施形態において説明した熱可塑性樹脂を使用することができる。
次に、本発明にかかるサンドイッチ射出成形方法を用いた実施例について説明する。
射出成形機として、高速射出が可能なシリンダ内径約30mmの二色成形機を用いた。また、金型として、約180mm×20mm×3mmの短冊状金型を用い、金型温度は約30℃とした。
第一シリンダには、表皮層を形成する樹脂として、硬度の高い高結晶のホモPP(MI=30)を供給し、また、第二シリンダには、内部層(コア層)を形成する樹脂として、黒に着色した高衝撃のブロックPP(MI=3)を供給した。
なお、シリンダ温度は、いずれも約200℃とした。
断面を切り出し表皮層(樹脂B)の厚さを測定した結果、約120μmと非常に薄い厚さであった。また、成形品の鉛筆硬度はHBであった。ロックウェル硬度(Rスケール)は約106であった。また、切り出し試験片のアイゾット衝撃強度(ノッチ付き)は、約63KJ/m2であった。
なお、参考例として、樹脂Aのみを成形した成形品の鉛筆硬度はHB,ロックウェル硬度は約107であり、アイゾット衝撃強度は、約1.5KJ/m2であった。
また、樹脂Bのみを成形した成形品の鉛筆硬度は3B,ロックウェル硬度は約61であり、アイゾット衝撃強度は、約69KJ/m2であった。
上記実施例1において、第二シリンダより第二樹脂を射出速度約100mm/secで射出成形した。なお、その他の条件は、実施例1と同様とした。
得られた成形品は、ゲート部付近は第一樹脂が表面に存在したが、中央部より先は表面も内部も第二樹脂になっており、目的とする成形体を得ることができなかった。しかも、ゲート部付近の表皮層の厚さは、約500μm程度であった。
実施例1において、第一シリンダよりキャビティ容積の約70%の第一樹脂を、射出速度約100mm/secで射出した。続いて、約0.5秒後に第二シリンダより第二樹脂を射出速度約100mm/secで射出成形し、キャビティ内を樹脂で充満させた。冷却固化後、これを取り出し、評価を実施した。なお、その他の条件は、実施例1と同様とした。
断面を切り出し表皮層(第一樹脂)の厚さを測定した結果、約1000μmであった。また、成形品の鉛筆硬度はHBであった。ロックウェル硬度(Rスケール)は約106であった。また、切り出し試験片のアイゾット衝撃強度(ノッチ付き)は、約2.3KJ/m2であった。
実施例1において、第一シリンダより樹脂を射出した後、約4秒後に第二シリンダより樹脂の射出を開始した。なお、その他の条件は、実施例1と同様とした。
得られた成形品は、ゲート部付近は第一樹脂が表面に存在したが、中央部より先は表面も内部も第二樹脂になっており、目的とする成形体を得ることができなかった。しかも、ゲート部付近の表皮層の厚さは、約1200μm程度であった。
また、比較例1,2,3より、射出速度,第一樹脂の量及び第二樹脂の射出タイミングが重要であり、これらの条件を好適に設定する必要があることが確認できた。
射出成形機として、高速射出が可能なシリンダ内径約30mmの二色成形機を用いた。また、金型として、約180mm×20mm×3mmの短冊状金型を用い、金型温度は約60℃とした。
第一シリンダには、表皮層を形成する樹脂として、硬度の高い高結晶のホモPPを供給し、また、第二シリンダには、内部層(コア層)を形成する樹脂として、黒に着色したGFPP(GF量30%)(MI=8)を供給した。
なお、シリンダ温度は、いずれも約220℃とした。
断面を切り出し表皮層(第一樹脂)の厚さを測定した結果、約90μmと非常に薄い厚さであった。また、得られた成形品の表面は、GFによる外観荒れの全くない良好な製品外観を示した。また、切り出し試験片の曲げ強度は、約161MPaであった。
なお、参考例として、第一樹脂のみを成形した成形品は、外観荒れの全くない良好な製品外観を示した。ただし、切り出し試験片の曲げ強度は、約62MPaであった。
また、第二樹脂のみを成形した成形品は、GFによる表面荒れ,光沢むらのある外観であった。また、切り出し試験片の曲げ強度は、約168MPaであった。
実施例2において、第一シリンダよりキャビティ容積の約60%の第一樹脂を、射出速度約100mm/secで射出した。続いて、約0.5秒後に第二シリンダより第二樹脂を射出速度約300mm/secで射出成形し、キャビティ内を樹脂で充満させた。冷却固化後、これを取り出し、評価を実施した。なお、その他の条件は、実施例2と同様とした。
断面を切り出し表面層の厚さを測定した結果、約900μmであった。得られた成形品の表面は、GFによる外観荒れの全くない良好な製品外観を示した。ただし、切り出し試験片の曲げ強度は、約89MPaと低い値であった。
一方、比較例4では、成形品の表面が良好な製品外観を示したものの、内部層が薄く成形されたために、曲げ強度を使用可能なレベルに維持することができなかった。
実施例1において、表皮層を形成する第一樹脂を、カーボン繊維を約10Wt%充填した強化PP(MI=30)、内部層を形成する第二樹脂をPP(MI=10)に変更し、また、第二シリンダの射出速度を約1200mm/secとした。なお、その他の条件は、実施例1と同様とした。
得られた表皮層の厚さは、約110μmと薄いものであった。また、得られた成形品の表面固有抵抗を測定した結果、約5.3×103と良好な導電性を示した。
なお、参考例として、カーボン繊維を約5Wt%充填した強化PPのみで、同様な試験片を作成し、その表面固有抵抗を測定した。その結果は、約6.7×1013であった。
すなわち、実施例3における成形品は、成形品全体に占めるカーボン繊維の量は、約0.9wt%であり、参考例と比較すると、カーボン繊維が大幅に少ないにもかかわらず、導電性を大幅に向上させることができた。
実施例1において、表皮層を形成する第一樹脂を、PAアロイ(PA6/マレイン化PP/PP=75/5/20)に代え、また、内部層を形成する第二樹脂をPPバンパーのリサイクル材を用いた。
第一シリンダの温度を約250℃に、第二シリンダの温度を約200℃に設定した。また、金型温度は約70℃に設定した。第一シリンダより、表皮層を形成する樹脂を射出した後、約0.7秒後に第二のシリンダよりバンパーリサイクル材を射出速度約1200mm/secで射出した。なお、その他の条件は、実施例1と同様とした。
なお、参考例として、内部層に用いたPPバンパー材のみを成形した成形品は、表面硬度が約58と著しく低いものであった。
実施例1において、内部層を形成する第二樹脂に、化学発泡剤を加えて射出成形した。
なお、その他の条件は、実施例1と同様とした。
得られた表皮層の厚さは、約110μmと薄いものであった。また、内部層には発泡した空孔が存在し、発泡機能を損なうことなく成形することができた。
なお、参考として、第二樹脂のみで成形した成形品は、表面にシルバーが発生し劣悪であった。
なお、サンドイッチ射出成形体は、第一組成物からなる表皮層と、第二組成物からなる内部層からなる構成に限定されるものではなく、たとえば、第三組成物からなる中間層を有する多層構造体とすることも可能である。
2 表皮層
3 内部層
Claims (2)
- 表皮層と内部層が異なる組成物からなるサンドイッチ射出成形方法であって、
金型温度を20℃〜90℃に設定した金型に、前記表皮層を形成する組成物を、第一シリンダから前記表皮層の厚さを形成するのに必要な量だけ射出し、その0.2sec〜1.0sec後に、前記内部層を形成する組成物を、第二シリンダから900mm/sec以上の速度で射出して、200μm以下の薄い前記表皮層を形成することを特徴とするサンドイッチ射出成形方法。 - 射出成形時の温度における前記内部層を形成する組成物の粘度を、前記表皮層を形成する組成物の粘度より大きくしたことを特徴とする請求項1記載のサンドイッチ射出成形方法。
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