JP4284815B2 - 高強度缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種容器用として用いられる缶用鋼板に係り、特に、製缶加工前に施される印刷工程、乾燥工程などで焼入れ時効および歪時効硬化して、十分に高い強度を示し、鋼板の薄肉化を優位に進められる新規な鋼板およびその製造方法に関する。 本発明が対象とするものは、0.3 mm以下、主として0.2 mm以下の極薄鋼板と呼ばれる範疇の缶用鋼板である。これら鋼板は、錫めっき、ニッケル−錫めっき、クロムめっき(いわゆるティンフリーめっき)あるいは、さらに有機被覆等を施され、極めて広範囲な用途に適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
飲料缶、食缶をはじめとして、ペール缶、18リットル缶など、各種内容物を収納する缶容器は、その部品構造から、底面を含む缶胴と上蓋からなる2ピース缶と、缶胴および上蓋、底蓋からなる3ピース缶とに大別される。
近年の製缶コストの低減要求の強まりに鑑み、製缶素材の低コスト化が迫られ、素材費用の低減のため、絞り成形を行う2ピース缶はもとより、単純な円筒成形が主体の3ピース缶であっても、使用する鋼板の薄肉化が進められている。
【0003】
しかし、鋼板を薄肉化しても、缶体としての強度は従来どおり維持する必要があり、このため、成形・時効後の缶体強度に優れ、薄肉化に有効に寄与できる硬質で極薄の缶用鋼板が望まれていた。
硬質で極薄の缶用鋼板の製造方法で、現在、主流となっているのは、焼鈍後に2次冷延を施す、いわゆるDR(Double cold Reduced )法である。DR法は、冷延−焼鈍した後にさらに30%近い冷間圧延を加え、加工硬化により鋼板を硬質化するとともに板厚の減少を図るものである。
【0004】
しかしながら、DR法には、冷延−焼鈍した後の極薄鋼板をさらに高圧下で冷間圧延するため、強力な圧延機が必要であり、また、焼鈍後のインライン処理ができない場合には、工程が増加するという設備上のデメリットがある。さらに、DR法で製造された鋼板では、慢性的に発生する表面疵、表面汚れなどを完全になくすことが極めて困難である。
【0005】
このようなことから、DR法で、健全な表面性状を有する硬質で極薄の缶用鋼板を安定して、しかも低コストで製造するには問題があった。
また、DR法以外の他の高強度化の方法としては、例えば自動車用の鋼板で広範囲に行われているように合金元素を多量に添加して鋼を固溶強化する方法が考えられる。しかし、缶用鋼板の場合には特殊な耐食性が要求されているため、添加できる合金元素量は制限される。実際に、ASTM規格、JIS 規格では、添加元素が制限されており、十分な固溶強化を達成することができない。
【0006】
その他、変態組織強化を使う方法、Nb、TiおよびVなどの炭窒化物形成元素による析出強化を使う方法など、いずれも缶用鋼板製造プロセスにおいては適用が困難であった。
一方、缶用鋼板で利用できる固溶強化元素である、C、Nを有効に使用した高強度缶用鋼板の製造方法が特開平5−345926号公報に提案されている。特開平5−345926号公報に記載された技術では、C:0.01wt%以下、N:0.04wt%以下で、かつC+Nを0.008 wt%以上、Al:0.005 wt%以下を含む鋼片を熱間圧延、冷間圧延を施し、再結晶温度以上の温度で連続焼鈍を行い、その後圧下率5%以上の調質圧延を施すことによりT−4以上の硬質材が得られるとしている。
【0007】
また、特開平8−311609号公報には、炭素:0.01〜0.08wt%、N:0.01wt%以下、酸可溶Al:0.20wt%以下を含み、固溶C量が5 〜25ppm である、圧延方向の降伏強度が30〜44kgf/mm2 のDI缶用鋼板が提案されている。
また、特開平10−72640 号公報には、C:0.0010〜0.04wt%、N:0.0020〜0.0150wt%、Al:0.005 〜0.060wt %を含み、上記したN量の25%以上で、かつ0.001 〜0.01wt%の固溶Nを含有する時効硬化性が大きく、材質安定性に優れる缶用鋼板が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−345926号公報、特開平8−311609号公報、特開平10−72640 号公報に記載された技術では、T−5相当の硬質材までが限度であり、それ以上の硬質材を得るためには、焼鈍後に高圧下率の2次圧延を施すDR法の適用が必要となる。しかし、DR法では、健全な表面性状を有する硬質で極薄の缶用鋼板を安定して、しかも低コストで製造するには問題があった。
【0009】
一方、3ピース缶、あるいは2ピース缶でもDRD缶のように製缶前に塗装焼付けが行われる場合には、塗装焼付け工程での時効により強度上昇が期待できる。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、DR8相当あるいはそれ以上の硬さを有し、しかも焼付硬化性に優れコスト競争力も高い高強度極薄冷延鋼板およびその製造方法を提案することを目的とする。本発明の鋼板は、板厚:0.3 mm以下で、塗装焼付処理後の降伏強さが550 MPa 以上と高く、かつ、缶用鋼板に特有な塗装焼付けでの硬化量(焼付硬化量)が50MPa 以上と焼付硬化性に優れた高強度極薄冷延鋼板である。本発明では、いわゆるDR法を適用することなく、焼鈍後に10%以下の調質圧延を適用するだけで、DR8相当あるいはそれ以上の硬さを有する高強度極薄冷延鋼板とするものである。なお、本発明でいう焼付硬化量(BH量)は、鋼板に2%の引張歪を付与した後、塗装・焼付処理相当の210 ℃×20min の熱処理を施した後、引張試験を行う際の、塗装・焼付処理相当の熱処理前後の降伏応力の差を意味するものとする。また、塗装・焼付処理後の降伏応力は、冷延鋼板に2%の引張歪を付与し、塗装・焼付処理相当の210 ℃×20min の熱処理を施した後の降伏応力をいうものとする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するため、鋼成分・製造条件に関し、鋭意研究を行った。
その結果、DR法を適用することなく、DR8相当あるいはそれ以上の硬質化と大きな焼付硬化量を得るためには、
▲1▼鋼組成・熱間圧延条件および熱間圧延後の冷却条件を調整して、冷間圧延用母板中の固溶N量を全N量の80%以上とすること、
▲2▼従来のように完全に再結晶が終了する高温でではなく、いわゆる部分再結晶状態で連続焼鈍を行うこと、
▲3▼連続焼鈍後に低温域まで急速冷却を行うこと、
▲4▼鋼組成を高延性である低炭素鋼組成、あるいは極低炭素鋼組成とすること、が重要であるという知見を得た。
【0011】
▲1▼〜▲4▼を確保することにより、AIN として析出することによる固溶N量の減少を防止し、さらに固溶Cの炭化物としての析出を防止することができ、製品板での強化に十分な量の固溶C、Nを確保することができる。また、一部分は析出するものの、十分に低い温度での析出であり、大きな強度上昇がもたらされる。固溶C、固溶Nを有効に活用し、いわゆる歪み時効あるいは焼入れ時効を活用することにより、鋼板の強度を著しく増加させることができる。このため、連続焼鈍後に強度増加のために従来の2次圧延のような強圧下(圧下率30%程度)を施す必要がなくなり、鋼板表面の硬さ調整、粗度調整、形状矯正のために軽圧下(圧下率:10%以下)を施すだけでよいという知見を得た。
【0014】
また、第1の本発明は、質量%で、C:0.02%以下、Si:0.10%以下、Mn:1.5 %以下、P:0.20%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.0050〜0.0250%を含み、かつ(固溶C+固溶N)を0.0050%以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、再結晶率60%以上90%未満の組織を有し、焼付硬化量:50MPa 以上、塗装・焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有することを特徴とする板厚:0.3 mm以下の高強度缶用極薄冷延鋼板であり、また、本発明では、前記組成に加えてさらに、質量%で、次第1群〜第2群
第1群:Nb:0.001 〜0.040 %、Ti:0.001 〜0.040 %、B:0.0002〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上、ただし、Nbは次(1)式、Tiは次(2)式を満足するものとする。
【0015】
(12/93) ×( Nb/C)≦0.8 ……(1)
(12/48) ×( Ti */C)≦0.8 ……(2)
なお、Ti *=Ti−(48/32 )S −(48/14 )N
第2群:Cu:0.01〜0.2 %、Ni:0.01〜0.2 %、Cr:0.01〜0.2 %、Mo:0.01〜0.2 %のうちから選ばれた1種または2種以上
のうちから選ばれた1群または2群を含有することが好ましい。
【0016】
また、第の本発明は、上記した第の本発明である極薄冷延鋼板の表面、少なくとも片面に、めっき層を形成したことを特徴とする高強度缶用極薄めっき鋼板である
【0018】
また、第の本発明は、質量%で、C:0.02%以下、Si:0.10%以下、Mn:1.5 %以下、P:0.20%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.0050〜0.0250%を含み、あるいはさらに、次第1群〜第2群
第1群:Nb:0.001 〜0.040 %、Ti:0.001 〜0.040 %、B:0.0002〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上、ただし、Nbは次(1)式、Tiは次(2)式を満足するものとする。
【0019】
(12/93) ×( Nb/C)≦0.8 ……(1)
(12/48) ×( Ti */C)≦0.8 ……(2)
なお、Ti *=Ti−(48/32 )S −(48/14 )N
第2群:Cu:0.01〜0.2 %、Ni:0.01〜0.2 %、Cr:0.01〜0.2 %、Mo:0.01〜0.2 %のうちから選ばれた1種または2種以上
のうちから選ばれた1群または2群を含有し、残部Feおよび不可避的不純物である組成を有する圧延素材を用い、前記N量の90%以上が固溶状態となる温度にて圧延を開始し、仕上げ圧延温度を(Ar3変態点−30℃)以上とする熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後、 0.5s以内に強制冷却を開始し600 ℃以下の巻取温度で巻取り、さらに巻取り後水冷し、好ましくは30min 以内に水冷を開始し20℃/h以上の冷却速度で冷却し、前記N量の80%以上の固溶Nを含む熱延板とし、ついで、該熱延板に冷間圧延を施したのち、連続焼鈍工程で、500 ℃以上でかつ再結晶率が90%未満となる温度範囲で均熱後、150 ℃/s以上の冷却速度で250 ℃以下の温度域までの急冷処理を施し、ついで40℃まで均熱終了後5min 以内に冷却することを特徴とする焼付硬化量:50MPa 以上、塗装・焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有する板厚:0.3 mm以下の高強度缶用極薄冷延鋼板の製造方法であり、また本発明では、前記冷却後、さらに圧下率:10%以下の冷間圧延を施すことが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の冷延鋼板は、焼付硬化量:50MPa 以上、塗装・焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有する板厚:0.3 mm以下の高強度缶用極薄冷延鋼板である。本発明の冷延鋼板は、塗装・焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有し鋼板の薄肉化を優位に進めることができる。また、本発明の冷延鋼板は、固溶C+固溶Nの作用を有効に利用することにより、プレス成形前の塗装焼付工程時に、塗装焼付硬化量(BH量)50MPa 以上という顕著な時効硬化現象があり、さらに、多量の固溶C、固溶Nを含有し、製缶後の缶体、とくに缶胴部に耐デント性(凹みに対する抵抗性)を付与することができ、缶体強度の飛躍的な増加をもたらす。
【0021】
まず、本発明の冷延鋼板の組成限定理由について説明する。以下、質量%は単に%と記す。
C:0.02%以下
Cは、固溶強化により鋼の強度を増加させる有効な元素であるが、一方では、炭化物を形成し、鋼板の延性、ひいては加工性を低下させる。このため、本発明では、C含有量を低減することにより、鋼中の炭化物量を低減し、鋼板の延性、ひいては、加工性を安定して高い値に確保する。また、固溶Cが析出する場所となる鋼中に存在する炭化物の量が低減することにより、結果的に固溶Cが多く残存するようになり、鋼板の高強度化が可能となる。このような望ましい効果は、C含有量を0.02%以下とすることにより認められる。このため、Cは0.02%以下に限定した。なお、固溶Cによる高強度化をさらに促進させるためには、C含有量を0.010 %以下の極低炭素域とすることが望ましい。一方、目標とする高い焼付硬化性(BH性)を得るためには、C含有量は0.002 %以上とするのが好ましい。
【0022】
Si:0.10%以下
Siは、固溶強化により鋼の強度を増加させる元素であるが、多量の添加は表面処理性の劣化、耐食性の劣化等の問題を生じるため、Siは0.10%以下に限定した。なお、とくに優れた耐食性が要求される場合は、Siは0.02%以下とするのが好ましい。
【0023】
Mn:1.5 %以下
Mnは、Sによる熱間割れを防止する有効な元素であり、本発明では、含有するS量に応じて適宜添加する。また、Mnは、結晶粒を微細化する効果を有している。このような効果は0.1 %以上の含有により顕著に認められ、Mnは0.1 %以上含有するのが好ましい。一方、Mnを多量に含有すると、鋼板の高強度化は達成できるものの、耐食性が劣化する傾向となり、さらに、フランジ加工性の劣化傾向が顕著となる。このため、Mnは1.5 %以下に限定した。なお、より良好な成形性が要求される用途では、Mnは0.50%以下とするのが好ましい。
【0024】
P:0.20%以下
Pは、鋼を著しく硬質化させるが、フランジ加工性やネック加工性を劣化させるとともに、耐食性を著しく劣化させる。このため、本発明では、Pは0.20%以下に限定した。フランジ加工性、ネック加工性、耐食性がとくに重要視される用途の場合には、Pは0.01%以下とするのが望ましい。
【0025】
S:0.01%以下
Sは、鋼中では介在物(硫化物)として存在し、鋼板の延性を減少させ、さらに耐食性を劣化させる元素であり、本発明ではできるだけ低減するのが望ましいが、0.01%までは許容できる。このため、本発明ではSは0.01%以下に限定した。なお、特に良好な加工性が要求される用途の場合には、Sは0.005 %以下とするのが好ましい。
【0026】
Al:0.01%以下
Alは、固溶Nと結合し、AlN を形成し、固溶N量を低減する効果を有する。また、Al含有量の増加は再結晶温度の上昇をもたらし、焼鈍温度を高温とする必要がある。高温焼鈍では、AlN 形成のため、固溶N量が低減し、時効硬化量が低減し、したがって鋼板強度の低下をもたらす。このような現象が顕著となるのは、Al含有量が0.01%を超える場合である。このようなことから、Alは0.01%以下に限定した。なお、鋼の溶製工程における安定操業の観点からは、Alは0.001 %以上とするのが望ましい。また、材質のさらなる安定化という観点からは、Alは0.005 %以下とするのがより望ましい。
【0027】
N:0.0050〜0.0250%
Nは、時効硬化性を増加させる元素であり、本発明においては、積極的に含有させる。時効硬化性の顕著な増加は0.0050%以上の含有で認められる。一方、0.0250%を超えて含有すると、圧延素材(スラブ)に割れ欠陥を発生する危険性が顕著に増大する。したがって、Nは0.0050〜0.0250%に限定した。なお、材質の安定性からはNは0.0070%以上とするのが好ましい。
【0028】
冷延鋼板用母板中の固溶N:全N量の80%以上
本発明の特徴である冷延鋼板の大きな時効硬化性を確保するためには、冷延鋼板用母板(熱延板)中の固溶N量を全N量の80%以上とする必要がある。本発明の冷延鋼板は、好ましくは、熱延板を酸洗したのち、冷間圧延し、ついで短時間の連続焼鈍を行い、製造されるが、この連続焼鈍工程ではAIN は析出傾向にある。熱延板(冷延鋼板用母板)の固溶N量が、全N量の80%未満では、所望の冷延鋼板の時効硬化性が達成できない。なお、本発明では、通常実施されるブロムエステルによる溶解処理後の抽出分析によりAlN となっているN量を求め(以下、N as AlN )、全N量からN as AlN を引いた値を固溶N量とする。
【0029】
冷延鋼板中の(固溶C+固溶N):0.0050%以上
製品板(冷延鋼板)の時効硬化性を高め、製品板の強度を増加させるために、本発明では、冷延鋼板中の(固溶C+固溶N)量を0.0050%以上とする。
上記した基本組成に加えて、必要に応じ選択元素を含有できる。
選択元素としては、次の第1群〜第2群のうちから選ばれた1群または2群を必要に応じ選択できる。
【0030】
第1群:Nb:0.001 〜0.040 %、Ti:0.001 〜0.040 %、B:0.0002〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上、
Nb、Ti、Bはいずれも、強度を増加させる元素であり、必要に応じ1種または2種以上を選択できる。
Nbは、微細な炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、成形後の鋼の強度を増加させるうえで有効な元素である。このような効果はNb0.001 %以上の含有で認められる。しかし、0.040 %を超えて含有すると、鋼の再結晶温度が顕著に上昇し、冷間圧延後の焼鈍工程に支障をきたすうえ、固溶状態のNが高温焼鈍で析出して鋼の高強度化機能を失う。このため、Nbは0.040 %以下とするのが好ましい。なお、焼鈍条件の観点からはNbは0.007 %以下とするのが望ましい。Nbを含有する場合は、さらに、次(1)式
(12/93) ×(Nb/C)≦0.8 ……(1)
を満足するものとする。(1)式を満足しない場合には、固溶C量が顕著に低下するという不都合がある。
【0031】
Tiは、Nbと同様に微細な炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、成形後の鋼の強度を増加させるうえで有効な元素である。このような効果は、0.001 %以上の含有で認められ、0.003 %以上の含有で顕著となる。したがってTiは0.001 %以上、より好ましくは0.003 %以上を含有させるのが好ましい。一方、Tiを0.040 %を超えて含有すると、固溶C、Nの減少による時効硬化量の低下が顕著となる。このため、Tiは0.040 %以下とするのが好ましい。なお、材質の安定化という観点からは、Tiは0.003 〜0.007 %の範囲とするのがより好ましい。なお、Tiを含有する場合には、次(2)式
(12/48) ×(Ti */C)≦0.8 ……(2)
なお、Ti *=Ti−(48/32 )S −(48/14 )N
を満足するものとする。(2)式を満足しない場合には、固溶C量、固溶N量が顕著に低下するという不都合がある。
【0032】
Bは、窒化物を作る傾向があるにもかかわらず、本発明の条件下においては時効硬化性を安定させ、鋼の強度を安定して確保するのに有効な元素である。このような効果は0.0002%以上の含有で顕著に認められ、0.0002%以上含有するのが好ましい。一方、0.0020%を超えて含有しても、効果が飽和するか、あるいは、逆に時効硬化性が低下する傾向を示す。このため、Bは0.0020%以下とするのが好ましい。なお、機械的性質の安定化・均一化という観点から、Bは0.0003〜0.0008%とするのがより好ましい。
【0033】
第2群:Cu:0.01〜0.2 %、Ni:0.01〜0.2 %、Cr:0.01〜0.2 %、Mo:0.01〜0.2 %のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Moは、いずれも時効硬化性を害することなく、最終的な強度を増加させる効果を有し、必要に応じ選択して含有できる。このような効果は、Cu、Ni、Cr、Moいずれもそれぞれ0.01%以上の含有で認められる。一方、Cu、Ni、Cr、Moはいずれも、それぞれ0.2 %を超えて含有すると、顕著に冷延鋼板用母板(熱延板)が硬質化し、冷間圧延工程での不具合を発生する危険性が増大する。このため、Cu:0.01〜0.2 %、Ni:0.01〜0.2 %、Cr:0.01〜0.2 %、Mo:0.01〜0.2 %に限定するのが好ましい。なお、Cu、Ni、Cr、Moの効果は複合添加しても相殺されることはない。したがって、Cu、Ni、Cr、Moは単独または複合添加することが可能である。なお、Cu、Ni、Cr、Moの合計量で0.2 %以下とすることがさらに望ましい。
【0034】
残部がFeおよび不可避的不純物
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、例えばSn:0.01%以下が許容できる。
本発明の冷延鋼板は、上記した組成と、さらに再結晶率が60%以上90%未満である組織を有する。なお、本発明でいう再結晶率とは、光学顕微鏡観察により、面積法で求めた値をいうものとする。再結晶率が60%未満では、加工性、とくに伸び特性が不足し、一方、90%を超えると強度、硬さが低下する。このため、本発明では、再結晶率が60%以上90%未満に限定した。
【0035】
つぎに、本発明鋼板の製造方法について説明する。
上記した組成の溶鋼を転炉等を用いた通常公知の溶製方法により、溶製し、ついで、連続鋳造法等の通常公知の鋳造方法で圧延素材(スラブ)とする。
ついで、これら圧延素材を用い、熱間圧延により熱延板とする。
本発明では、圧延開始時に圧延素材が、全N量の90%以上が固溶状態となる温度以上となっていることが肝要となる。
【0036】
圧延開始時温度:全N量の90%以上が固溶状態となる温度以上
全N量の90%以上を固溶状態とするには、成分にも依存するが、おおむね1150℃以上に加熱するか、あるいはAlN の析出が遅れる直送圧延プロセスの場合には、圧延素材を連続鋳造後変態点以下に冷却することなく、圧延可能温度に保持した加熱炉に挿入し加熱するのが好ましい。いずれにしろ、本発明では、熱間圧延の開始時に、圧延素材において全N量の90%以上が固溶状態となっていればよい。このため、熱延開始温度は1100℃以上とするのが好ましい。熱間圧延開始時に、全N量の90%以上が固溶状態にないと、製品板で固溶Nによる時効硬化が十分に発揮されない。
【0037】
仕上げ圧延温度:(Ar3 変態点−30℃)以上
本発明では、AlN の析出を有効に抑制するため、熱間圧延における仕上げ圧延温度を、(Ar3 変態点−30℃)以上とするのが好ましい。仕上げ圧延温度が(Ar3 変態点−30℃)未満では、AlN の析出が顕著となり、固溶Nが低減する。なお、より好ましくは(Ar3 変態点−10℃)以上である。
【0038】
強制冷却:熱間圧延終了後、 0.5s以内に開始
強制冷却は、冷却能力の観点から水冷とするのが好ましい。強制冷却は熱間圧延終了後、 0.5s以内に開始するのが好ましい。強制冷却の開始が圧延終了から 0.5sを超えると、AlN の析出を抑制できない。
巻取り温度:600 ℃以下
巻取り温度は、AlによるNの固定を抑制するため、600 ℃以下とするのが好ましい。巻取り温度が600 ℃を超えると、AlN 析出量が顕著に増加し、固溶Nが減少する結果、目標とする時効硬化性を得ることができない。なお、高い時効硬化性を安定して得るためには、巻取り温度は570 ℃以下とするのがさらに好ましい。また、巻取り温度を600 ℃以下、より好ましくは 570℃以下とすることにより、巻取り後の冷却中に生ずる炭化物をより微細かつ均一に分散させることが可能となり、これにより鋼板製品の状態における固溶C量を増加させることができる。
【0039】
巻取り後:水冷
本発明では、巻取り後コイル状態で、30min 以内に水冷を開始し、平均冷却速度で20℃/h 以上の冷却速度で冷却するのが好ましい。なお、ここで冷却速度は鋼帯の長手方向の中央部でかつ板幅中央部の平均冷却速度をいう。これにより、AlN の析出を防止することができるうえ、巻取り後の冷却過程で析出する炭化物をより微細に、さらにより均一に分散させることができる。巻取り後の水冷開始が30min を超えると、水冷効果が不十分となる。また、冷却速度が20℃/h 未満では、特に炭化物の分布の改善効果が十分でない。巻取り後の水冷はコイル状態で行うが、これを再度巻戻して冷却しても何ら問題はない。
【0040】
上記した熱間圧延、および圧延後冷却により、全N量の80%以上が固溶状態となる熱延板とすることができる。
このような熱延板を冷延鋼板用母板として、酸洗、冷間圧延を施し、冷延板とする。酸洗は常法に従い、塩酸、硫酸等の酸で表面スケールを除去すればよい。冷間圧下率も常法に従うが、板厚が薄いほど高めとなる。
【0041】
ついで、冷延板は、連続焼鈍を施される。
連続焼鈍の均熱温度:500 ℃以上でかつ再結晶率が90%未満となる温度範囲
連続焼鈍工程では、500 ℃以上でかつ再結晶率が90%未満となる温度範囲で均熱する。均熱温度が500 ℃未満では、再結晶の進行が遅く連続焼鈍では再結晶率が60%未満となり、冷間圧延で導入された加工歪が残留しているため延性が極めて低く、プレス加工に適さない。一方、再結晶率が90%未満となる温度を超えると、延性は十分に増加するものの、強度が顕著に低下し好ましくない。このため、本発明では、500 ℃以上でかつ再結晶率が90%未満となる温度範囲で均熱するのが好ましい。これにより、通常の用途では十分な加工性が確保され、目標とする高強度も得ることができる。なお、90%の再結晶率となる温度は、光学顕微鏡による組織観察によって決定するのが好ましいが、冷間圧延まま状態の硬度を0%、完全焼鈍状態の硬度を100 %として、90%の硬度減少が達成される温度未満としてもよい。また、X線回析の手法でも決定できる。これは、回折線のピークの幅が残存している歪量、すなわち再結晶率と対応することに基づく手法である。
【0042】
また、この温度範囲内であれば、とくに一定の温度に保持する必要はない。操業の安定性から10s以上の均熱相当時間があれば十分である。なお、加工性の観点からは、再結晶率を60%以上とする。
連続焼鈍均熱後の急冷処理:150 ℃/s以上の冷却速度で250 ℃以下の温度域まで
連続焼鈍均熱後の冷却条件は、本発明において最も重要な要件の一つである。この冷却の目的は、焼鈍後に極めて微細な炭化物が微細に分散した組織にすることと、それによって時効硬化性を確保するために十分な量の固溶C、固溶Nを確保することである。このため、均熱温度から150 ℃/s以上の冷却速度で急冷するのが好ましい。この冷却速度より低い冷却速度では、固溶Nと固溶Cのうち、、とくに固溶Cの減少が顕著となる。なおさらに安定して目標特性を得るためには200 ℃/s以上の冷却速度とするのが望ましい。
【0043】
また、この急冷処理は、250 ℃以下の温度域まで継続するのが好ましい。250 ℃より高い温度で急冷処理を停止すると炭化物の析出形態が粗くなり、それに付随して固溶C量も激減する。なお、より好ましくは、200 ℃以下の温度域まで急冷処理を行うのが望ましい。このような急冷処理を安定して行うには、従来のガスジェット冷却の能力を増強すること、冷却ガスとして水素を適用すること、高速通板処理の可能な連続焼鈍を利用することおよびこれらの技術の組合せなどが必要となる。
【0044】
さらに、均熱の終了(冷却の開始)から積算して5min 以内に40℃以下まで冷却するのが好ましい。40℃以下まで冷却するのに、これ以上の時間を要すると、いわゆる過時効現象に類似の現象が生じ、固溶C量が低下して鋼板の時効硬化能が低下する。
連続焼鈍、急冷処理ののち、さらに、圧下率:10%以下の2次圧延を施してもよい。本発明における2次圧延は、強度増加を主目的とするものではなく、表面粗さの調整、形状調整等が主目的であり、好ましくは1.0 %以上の圧下率とするのが好ましい。圧下率が10%を超えると、延性が低下することとともに、変形抵抗の増加に伴い圧延作業が困難となる。圧下率が10%以下と軽圧下であるため、設備的な負荷の低減という観点では工業的に有用である。
【0045】
上記した工程を経て冷延鋼板とする。本発明の冷延鋼板は、製缶加工前(プレス加工前)の塗装・焼付処理により硬質材となっており、板厚が0.3 mm以下の極薄鋼板に適用された場合にその優位性がより有効に発揮される。
上記した工程により製造される冷延鋼板は、(固溶C+固溶N)量が0.0050%以上を有し、焼付硬化量:50MPa 以上、塗装・焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有する高強度缶用極薄冷延鋼板となる。本発明の鋼板は、固溶Cと固溶Nの両者作用を組み合わせて、従来にない大きな時効硬化性を得ている。そのため本発明の冷延鋼板は、塗装・焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有し鋼板の薄肉化を優位に進めることができる。また、本発明の冷延鋼板は、固溶C+固溶Nの作用を有効に利用することにより、めっき後のリフロー処理後にも強度が増加し、また、プレス成形後の塗装焼付工程時にも、焼付硬化量(BH量)50MPa 以上という顕著な時効硬化現象が起こり、缶体強度の飛躍的な増加をもたらすことができる。
【0046】
本発明では、極薄冷延鋼板の表面に(少なくとも片面)めっき層を形成し、極薄めっき鋼板とすることができる。表面に形成されるめっき層は缶用鋼板に適用されるいずれのものも適用可能である。めっき層としては、錫めっき、クロムめっき、ニッケルめっき、ニッケル・クロムめっきが例示できる。また、これらのめっき処理後に塗装、有機樹脂フィルム等を貼ることもなんら問題ない。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す成分の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。ついで、これらスラブを、表2に示す条件で熱間圧延を施し板厚:1.8 mmの熱延板とした。なお、これら鋼板の製造に際しては、コイル水冷を行う場合、巻き取り後30min 以内に水冷を開始した。その後、これら熱延板に酸洗による脱スケール処理を施し、さらに冷間圧延を施し、ついで表2に示す条件で連続焼鈍および2次圧延を行い、最終仕上げ板厚:0.15mmの極薄冷延鋼板とした。なお、2次圧延で圧下率を30%と高めた冷延鋼板(鋼板No.12 )を従来例(DR鋼板)とした。
【0048】
このようにして得られた極薄冷延鋼板について、固溶C、固溶N量の測定、再結晶率の測定(組織調査)、引張試験、硬さ試験、および焼付硬化試験を実施した。
(i)固溶C、固溶N量の分析
化学分析により冷延鋼板中のN量を分析し、また、ブロムエステルによる溶解処理後の抽出分析によりAlN として存在するN量を求めた。冷延鋼板中の固溶N量は、{(冷延鋼板中のN量)−(AlN として存在するN量)}の値を用いた。
【0049】
また、固溶C量は、内耗により測定した。捩り振子型内部摩擦測定装置によりC、Nのピークを分離し、Cピークを採用した。Nについては、化学分析の結果と整合することを確認した。
(ii)組織調査
冷延鋼板の幅方向中央部から、試験片を採取し、圧延方向と平行な断面で、表層部を除く板厚方向断面について、光学顕微鏡による観察により、再結晶粒の面積を測定し、これにより再結晶粒面積の全面積に占める割合を算出し、再結晶率とした。
(iii )引張試験
これら冷延鋼板の幅方向の中央部から圧延方向に、JIS 13号-B引張試験片を採取し、歪速度クロスヘッド速度:10mm/s で引張試験を実施し、降伏点YS、引張強さTS、伸びElを測定した。なお、引張試験は製品化後1日以内に実施した。引張試験片をJIS 13号-B試験片としたのは、標点外で破断する現象を極力低減するためである。
(iv)焼付硬化性試験
これら冷延鋼板の幅方向の中央部から圧延方向に、JIS 13号-B引張試験片を採取し、2%の引張予歪を付加したのち一旦除荷し、210 ℃×20min の塗装焼付処理相当の熱処理を施し、その後、引張試験を行い変形応力(降伏応力)を求めた。塗装焼付処理相当の熱処理前後の降伏応力の差、((塗装焼付処理相当熱処理後の降伏応力)−(塗装焼付処理相当熱処理前の2%変形応力))を求め、焼付硬化量(BH量)とした。
(v )硬さ試験
これら冷延鋼板およびこれら冷延鋼板に塗装焼付処理相当の熱処理を施したのちの鋼板について、JIS Z 2245の規定に準拠してHR30T硬さを測定した。
【0050】
これらの結果を表3に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0004284815
【0052】
【表2】
Figure 0004284815
【0053】
【表3】
Figure 0004284815
【0054】
本発明例は、2次圧延の圧下率を高くすることなく(大きな圧下率のDR法を適用することなく)塗装焼付処理後の降伏強さが550MPa以上、かつ焼付硬化量が50MPa 以上で、DR8相当の硬さを有する高強度極薄冷延鋼板となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、塗装焼付硬化量が少ない。
さらに、これら鋼板を用いて、2ピースのDRD 缶(缶径70mm)を製造し、缶体、とくに缶胴の凹みに対する抵抗(耐デント性)を評価した。胴の凹みに対する抵抗の評価は、蓋を捲き締めたと等価な形状とした缶体を圧子で静的に押込み変形して、永久歪を生ずる荷重を測定し評価する試験である。
【0055】
その結果、本発明例は、同一の調質度のDR鋼板(従来例)に比べデントを生ずる荷重が約20%高い値を示し、本鋼板の歪み時効による缶体強度増加の効果が確認された。
(実施例2)
表1に示す鋼Aについて、表4に示す製造条件で板厚:0.14mmの極薄冷延鋼板とした。なお、これら鋼板の製造に際しては、コイル水冷を行う場合、巻き取り後30min 以内に水冷を開始した。これら冷延鋼板について、固溶C、固溶N量の測定、再結晶率の測定(組織調査)、引張試験、硬さ試験、および焼付硬化試験を実施した。試験方法は実施例1と同様とした。なお、これら鋼板表面には、焼鈍前にNiめっきを施し連続焼鈍により表面にNiの拡散層を形成した。なお、2次圧延で圧下率を30%と高めた冷延鋼板(鋼板No.2-11 )を従来例(DR鋼板)とした。
【0056】
これらの結果を表5に示す。
【0057】
【表4】
Figure 0004284815
【0058】
【表5】
Figure 0004284815
【0059】
本発明の冷延鋼板(本発明例)は、2次圧延の圧下率を高くすることなく(DR法を適用することなく)塗装焼付処理後の降伏強さが550MPa以上、かつ焼付硬化量が50MPa 以上で、DR8相当の硬さを有する、従来にない優れた特性を有する高強度極薄冷延鋼板となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、塗装焼付硬化量が少なく、塗装焼付処理後の降伏強さも550MPa未満と、低強度である。
【0060】
ついで、これら冷延鋼板に、電気錫めっきラインにて錫めっき処理(めっき目付量25g/m2)を施し、ついでインラインにて、リフロー処理を行い、島状の錫相を有する錫めっき鋼板とした。これら錫めっき鋼板について冷延鋼板と同様に特性を調査したが、めっき前の冷延鋼板の特性とほとんど変化はなかった。
また、これら高強度極薄めっき鋼板を用いて、3ピース缶に成形して、軸方向圧縮強度および缶胴部の凹みに対する抵抗(耐デント性)を評価した。缶胴部の耐デント性は、実施例1と同様な方法で評価した。その結果、本発明例は同一の調質度のDR鋼板(従来例)を用いて錫めっきを行った従来例と比べて耐デント性がほぼ25%程度改善された。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、従来、焼鈍後に高圧下率の2次圧延を実施して初めて得られていた高硬質材を、焼鈍のままあるいは圧下率10%以下の低い圧下率の2次圧延を施すだけで得られ、産業上格段の効果を奏する。本発明の鋼板は成形後の塗装焼付処理により、降伏応力が大きく上昇し、それに伴い缶体強度が大きく上昇するため、鋼板の薄肉化に大きく寄与できる。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.02%以下、 Si:0.10%以下、
    Mn:1.5 %以下、 P:0.20%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.01%以下、
    N:0.0050〜0.0250%を含み、かつ(固溶C+固溶N)を0.0050%以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、再結晶率60%以上90%未満の組織を有し、焼付硬化量:50MPa 以上、塗装・焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有することを特徴とする板厚:0.3 mm以下の高強度缶用極薄冷延鋼板。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記第1群〜第2群のうちから選ばれた1群または2群を含有することを特徴とする請求項に記載の高強度缶用極薄冷延鋼板。

    第1群:Nb:0.001 〜0.040 %、Ti:0.001 〜0.040 %、B:0.0002〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上、ただし、Nbは次(1)式、Tiは次(2)式を満足するものとする。
    (12/93) ×( Nb/C)≦0.8 ……(1)
    (12/48) ×( Ti */C)≦0.8 ……(2)
    なお、Ti *=Ti−(48/32 )S −(48/14 )N
    第2群:Cu:0.01〜0.2 %、Ni:0.01〜0.2 %、Cr:0.01〜0.2 %、Mo:0.01〜0.2 %のうちから選ばれた1種または2種以上
  3. 請求項またはに記載の極薄冷延鋼板の表面に、めっき層を形成したことを特徴とする高強度缶用極薄めっき鋼板。
  4. 質量%で、
    C:0.02%以下、 Si:0.10%以下、
    Mn:1.5 %以下、 P:0.20%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.01%以下、
    N:0.0050〜0.0250%
    を含む組成を有する圧延素材を用い、前記N量の90%以上が固溶状態となる温度にて圧延を開始し、仕上げ圧延温度を(Ar3変態点−30℃)以上とする熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後、 0.5s以内に強制冷却を開始し600 ℃以下の巻取温度で巻取り、さらに巻取り後水冷をし、熱延板とし、ついで、該熱延板に冷間圧延を施したのち、連続焼鈍工程で、500 ℃以上でかつ再結晶率が90%未満となる温度範囲で均熱後、150 ℃/s以上の冷却速度で250 ℃以下の温度域までの急冷処理を施し、ついで40℃まで均熱終了後5min 分以内に冷却することを特徴とする、焼付硬化量:50MPa 以上、塗装焼付処理後の降伏応力:550 MPa 以上を有する板厚:0.3 mm以下の高強度缶用極薄冷延鋼板の製造方法。
  5. 前記冷却後、さらに圧下率:10%以下の冷間圧延を施すことを特徴とする請求項に記載の高強度缶用極薄冷延鋼板の製造方法。
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