JP5668361B2 - 高張力冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
高張力冷延鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5668361B2 JP5668361B2 JP2010183524A JP2010183524A JP5668361B2 JP 5668361 B2 JP5668361 B2 JP 5668361B2 JP 2010183524 A JP2010183524 A JP 2010183524A JP 2010183524 A JP2010183524 A JP 2010183524A JP 5668361 B2 JP5668361 B2 JP 5668361B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cold
- rolled
- less
- sheet
- hot
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Coating With Molten Metal (AREA)
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、安価でかつ成形性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明の高張力冷延鋼板の板厚は、過度の薄肉化による冷間圧延工程におけるコスト上昇を抑制するとともに、冷間圧延による加工硬化を有効活用するという観点から、好ましくは板厚:0.4mm以上2.0mm以下とする。
質量%で、0.045%C−0.01%Si−0.2%Mn−0.01%P−0.01%S−0.03%Al系を基本成分とし、Nを0.003%(低N材)と、0.011%(高N材)の2水準に変化した組成の2種のシートバーを作製した。そして、これらシートバーを、1250℃に加熱・均熱したのち、仕上圧延終了温度(仕上圧延出側温度)が900℃となるように、3パスの熱間圧延を行い板厚3.0mmの熱延板とした。なお、仕上圧延終了後に、コイル巻取り処理の保温に相当する熱処理(600℃×1h)を施した。ついで、熱延板に、圧下率:60%の冷間圧延を施して、板厚:1.2mmの冷延板とした。ついで、これら冷延板を、加熱温度:250〜450℃の温度に加熱し60s間保持したのち、ガスを吹付けて冷却した。
得られた結果を、図1、図2に示す。
図1から、低N材にくらべ、高N材の強度が高く、Nの多量含有により、TSが顕著に増加することがわかる。また、低N材と高N材とで、伸びElT, ElLはほとんど変わらず、N含有の有無によらず、ほぼ同等の延性を確保できることがわかる。250〜450℃の温度に加熱・保持する熱処理を施すことにより、伸びElT, ElLが顕著に増加する。なお、この熱処理によるTSの低下はわずかである。
このようなことから、Nを多量に含有させ、N/Alを適正範囲とした冷延鋼板に、溶融亜鉛めっき処理に相当する400℃近傍の熱処理を施すことにより、引張強さTS:700MPa以上の高強度で、かつ冷延まま材に比べ、高延性(全伸びElTが5%以上、局部伸びElLが5%以上)であり、Nを多量含有しない通常の熱処理を施した低炭素鋼板に比べ強度−延性バランスに優れる冷延鋼板を得ることができることを知見した。
(1)質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、さらに固溶Nを0.0040%以上含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織とを有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びElTが5%以上、局部伸びElLが5%以上であることを特徴とする高張力冷延鋼板。
(4)鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板を加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする高張力冷延鋼板の製造方法において、前記鋼素材を、質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、前記熱延工程を、前記鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al/N)}℃以下で巻取り熱延板とする工程とし、前記冷延工程を、前記熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とし、前記熱処理工程を、前記冷延板を300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する工程として、固溶Nを0.0040%以上含み、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織を有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びEl T が5%以上、局部伸びEl L が5%以上である機械的特性を有する冷延鋼板とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
(7)(4)または(5)において、前記熱処理工程に代えて、前記冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、さらに該溶融亜鉛めっきを合金化する合金化処理を施し、冷却する合金化溶融亜鉛めっき処理工程とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
C:0.01〜0.06%
Cは、鋼板の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために、O.01%以上の含有を必要とする。一方、0.06%を超えて含有すると、延性が低下する。このため、Cは0.O1〜0.06%の範囲に限定した。なお、極めて高い局部延性を確保するという観点から、0.01〜O.05%とすることが好ましい。
Siは、鋼の延性を顕著に低下させることなく、鋼板を高強度化させることができる有用な強化元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.4%を超える含有は、表面性状、化成処理性等の表面美麗性に悪影響を与え、これらの悪影響を抑制するために、長時間の鋼板表面の酸洗処理等を必要とし、大幅なコスト増加を招く。このため、SiはO.4%以下の範囲に限定した。なお、より優れた表面美麗性が求められる用途では0.3%以下とすることが好ましい。
Mnは、焼入れ性を向上させ、鋼板強度の増加に大きく寄与する元素である。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止する有効な元素であり、含有するS量に応じて含有させることが好ましい。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有すると、延性が顕著に劣化する。このため、MnはO.1〜1.O%の範囲に限定した。なお、より良好な成形性が要求される用途では、O.6%以下とすることが望ましい。
Pは、鋼中に不可避的不純物として含有されるが、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量含有させることができる。しかし、0.08%を超えて含有すると、溶接性や加工後の低温靭性が低下する。このため、PはO.08%以下に限定した。なお、より優れた溶接性や低温靭性が要求される場合には、Pは0.05%以下とするのが好ましい。
Sは、鋼板中では介在物として存在し、鋼板の延性、成形性、とくに伸びフランジ成形性の劣化をもたらす元素であるため、できるだけ低減することが好ましい。しかし、過度の低減は精錬コストの高騰を招く。O.05%以下に低減すると、伸びフランジ成形性への悪影響が無視できることから、本発明ではSは0.05%以下に限定した。なお、より優れた伸びフランジ成形性、あるいは溶接性を要求される場合には、SはO.03%以下とすることが好ましい。
Alは、鋼の脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を向上させる有用な元素である。また、Alは、結晶粒を微細化する作用も有し、鋼の組織微細化のために含有することが望ましい元素である。このような効果を得るためには、Alは0.001%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、表面性状の悪化、固溶Nの顕著な低下に繋がり、良好な強度−延性バランスを得ることが困難となる。このため、Alは0.05%以下に限定した。なお、材質の安定性という観点から、0.001〜O.04%とすることが好ましい。また、Al含有量の低減は、結晶粒の粗大化につながる懸念があるが、本発明では他の合金元素を最適量に制限することと、焼鈍条件を最適な範囲とすることにより結晶粒の粗大化を防止する。
Nは、固溶して鋼の強度を増加させるとともに、本発明では優れた成形性の確保に寄与する元素であり、このような効果は、おおむね0.0060%以上の含有で安定して得られる。一方、0.0200%を超える多量の含有は、連続鋳造時のスラブ割れなどの発生が顕著となるとともに、鋼板の内部欠陥発生率が高くなる。このため、NはO.O060〜O.0200%の範囲に限定した。なお、好ましくは、製造工程全体を考慮した材質の安定性・歩留まりの向上という観点から、0.0060〜0.0170%である。また、Nは、鋼の変態点を降下させる効果も有し、薄物で変態点を大きく割り込んだ圧延をしたくないという状況では、Nの含有は有効となる。なお、Nは、本発明範囲内の含有であれば、溶接性等にはまったく悪影響はない。
固溶状態のNは、フェライト相の強化に寄与する。冷延鋼板として所望の高強度を確保するためには、固溶状態のNを0.O040%以上確保する必要がある。ここで、固溶状態のNは、鋼中の全N量から、析出N量(電解抽出による溶解法でもとめる)を差し引いた値とする。析出N量は、定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法を適用して求めた値を用いる。析出Nの分析法について種々の方法を検討したが、定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法を適用する方法が最も良く材質の変化と対応していたことに基づく。なお、電解液としては、アセチルアセトン系電解液を用いることが好ましい。定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法にて抽出した残渣を化学分析して、残渣中のN量を求め、これを析出N量とした。なお、さらに安定して高い強度を得る必要がある場合は、固溶Nを0.0060%以上とすることが有効である。
Nb:0.001〜0.030%
Nbは、炭化物、窒化物を形成し、再結晶や、粒成長を抑制する効果を有する元素であり、必要に応じて含有できる。本発明では、Nbは、熱処理工程における熱処理温度の上昇に伴う強度の低下量を小さくし、熱処理時の強度安定性に寄与する。このような効果を得るためには、Nbは概ね0.001%以上含有することが好ましい。一方、0.030%を超える多量の含有は、延性の低下、固溶N量の顕著な低下に繋がり、良好な強度−延性バランスを確保することが困難となる。このため、含有する場合には、Nbは0.001〜0.030%の範囲に限定することが好ましい。
Bは、結晶粒界に偏析し、再結晶や、粒成長を抑制する効果を有する元素であり、必要に応じて含有できる。本発明では、Bは、Nbと同様に、熱処理工程における熱処理温度の上昇に伴う強度の低下量を小さくし、熱処理時の強度安定性に寄与する。このような効果を得るためには、Bは0.0001%以上含有することが好ましいが、0.0015%を超えて含有すると、延性の低下、固溶N量の顕著な低下に繋がり、良好な強度−延性バランスを確保することが困難となる。このため、含有する場合には、Bは0.0015%以下に限定することが好ましい。
Al、Nb、Bは、強力にNを固定する作用を有する元素であり、所望の固溶N量を確保する観点から、本発明では、N含有量とAl含有量の比、N/Alを0.2以上に限定し、Alに加えてさらにNb、Bを含有する場合には、N含有量とAl含有量、Nb含有量、B含有量の比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)を0.2以上に限定した。これにより、O.O040%以上の固溶N量を安定して確保でき、所望の優れた成形性を確保できる。なお、好ましくは、N/Al、N/(Al+0.3Nb+2.5B)はともに0.3以上である。なお、NbまたはBを含有しない場合は、当該元素の含有量は零として計算するものとする。
つぎに、本発明冷延鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明冷延鋼板は、フェライト相を主相とする組織を有する。ここでいう「主相」とは、組織全体に対する体積率で92%以上、好ましくは95%以上である場合をいう。主相以外の第二相は、セメンタイトやパーライト等である。第二相は、体積率で8%以下とする。第二相が8%を超えて多くなると、延性、とくに局部延性の低下が著しくなり、高度な加工性が要求される部品向けとしては問題となる。さらに良好な延性が必要とされる用途では、5%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは3%以下である。なお、本発明では、主相であるフェライト相は、冷間圧延により加工硬化したフェライト相であり、例えば、X線回折による(211)面の回折ピークの半価幅が0.20°以上0.40°以下となる相である。
本発明では、鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板を加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする。
使用する鋼素材は、上記した鋼板の組成と同様に、質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、あるいはさらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように、あるいはさらにNb、Bを含有する場合には、NとAl、Nb、Bを、N含有量とAl含有量、Nb含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上、となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とする。
得られた鋼素材はついで、熱延工程を施される。熱間圧延のための加熱は、いったん室温まで冷却し、その後再加熱する方法に加えて、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に装入する、あるいはわずかの保熱を行った後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
加熱温度:1000℃以上
熱間圧延のための加熱温度は、1000℃以上とすることが好ましい。加熱温度が1000℃未満では、冷延鋼板での所望の固溶Nや熱延後の仕上圧延出側温度の下限(800℃)を確保することが困難となると共に、熱間圧延時の圧延荷重の増加が著しくなり、圧延が困難となる場合がある。なお、加熱温度の上限はとくに限定する必要はないが、1280℃を超えて高温になると、酸化に伴うロスが増大し、歩留りが低下する。このようなことから、熱間圧延のための加熱温度は概ね1280℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延の仕上圧延出側温度は、800℃以上とすることが好ましい。これにより、熱延板の組織を均一微細な組織とすることができる。仕上圧延出側温度が800℃未満では、得られる熱延板の組織が不均一になり、その後の冷延工程、焼鈍工程を施しても、組織の不均一性は消滅しない。このため、プレス成形時に種々の不具合を発生する危険性が増大する。また、仕上圧延出側温度が800℃未満の場合に、加工組織の残留を回避すべく、高い巻取り温度を採用すると、粗大粒が発生し、同様の不具合を生じる。このようなことから、仕上圧延出側温度は800℃以上に限定することが好ましい。なお、更なる機械的特性の向上のためには、仕上圧延出側温度は、820℃以上とすることがより好ましい。なお、仕上圧延出側温度の上限はとくに限定する必要はないが、過度に高い仕上圧延出側温度で圧延した場合には、スケール疵などが発生しやすくなるため、仕上圧延出側温度の上限は概ね1O00℃程度以下とすることが好ましい。
仕上圧延終了後、ついで、熱延板はコイル状に巻き取られる。巻取り温度が高温となるとAlNが生成しやすくなる。また、Al/Nが大きい場合でもAlNが析出しやすくなり、所定の固溶N量を確保することが困難となる。このため、本発明では巻取り温度を{700−10×(Al/N)}℃以下、Nbを含む場合には、{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃以下とすることが好ましい。なお、該巻取り温度とAl/Nとの関係式、あるいはさらにNbを含有する場合の、巻取り温度と(Al+0.3Nb)/Nとの関係式は、所定の固溶N量を得るために発明者らが種々検討して得た実験式である。巻取り温度が{700−10×(Al/N)}℃、あるいはさらにNbを含有する場合に{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃を超えると、AlNやNbN等の、Al、Nb、Nとの化合物が生成しやすくなり、所望の固溶N量を確保できない。なお、巻取り温度の下限はとくに限定されないが、200℃以上とすることがより好ましい。200℃を下回ると鋼板形状の乱れが顕著となり、実際の使用にあたり不具合を生ずる危険性が増大する。また、材質の均一性も低下する傾向となる。さらに高い材質均一性が要求される場合は巻取り温度の下限は300℃以上とすることが望ましい。
冷延工程は、熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とする。
酸洗は、常用の方法に準じて行うことが好ましいが、スケールが極めて薄い状態であれば、酸洗を行うことなく直接、冷延工程を行ってもよい。
本発明では冷間圧延による加工硬化を活用して高強度化を図るため、冷間圧延の圧下率は50%以上とする。50%未満では、所望の高強度を確保できない。一方、圧下率が95%を超えると、冷間圧延時間が長くなり、冷延工程コストの大幅なアップが避けられない。このため、冷間圧延の圧下率は50〜95%に限定することが好ましい。さらに安定して高強度を得るには、圧下率は55%以上とすることが望ましい。
熱処理工程は、冷延板を熱処理温度:300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する熱処理を施す工程とする。
熱処理温度:300〜650℃
冷延板に施す熱処理は、300℃〜650℃の範囲の温度で行うことが好ましい。熱処理温度が300℃未満では、延性の増加が少なく、とくに低い局部延性しか得られない。一方、650℃を超える温度では、冷間圧延により加工硬化したフェライト相の回復が進みすぎ、所望の引張強さTSを確保できなくなる。このため、熱処理温度は300〜650℃の範囲の温度に限定することが好ましい。なお、上記した温度範囲での保持時間は0〜600sとすることが好ましい。保持時間が600sを超えると、熱処理時間が長くなりすぎ、鋼板製造コストの高騰を招く。なお、更なる延性、とくに局部伸びの向上のためには、保持時間は10s以上とすることが好ましい。なお、ここで保持時間0sは、所定温度に到達した直後に冷却を開始することを意味する。
なお、上記した熱処理工程に代えて、溶融亜鉛めっきラインを利用して、熱処理と溶融亜鉛めっき処理とを連続して行う溶融亜鉛めっき処理工程を施してもよい。溶融亜鉛めっき処理工程は、冷延工程を施された冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱し、好ましくは0〜600s間保持したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっき処理を施して、冷却する工程としてもよい。
得られた鋼板(冷延鋼板、またはめっき鋼板)から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、めっき性試験、さらに固溶N量測定を実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られた冷延鋼板およびめっき鋼板から、圧延方向に平行な断面(L断面)が観察面となるように組織観察用試験片を採取し、研磨しナイタール腐食して、光学顕微鏡(倍率:400倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)を用いて、組織を構成する各相の同定を行うとともに、該各相の組織分率(面積率)を、画像解析装置を用いて、測定した。なお、フェライト相については、X線回折法で(211)面のピークを求め、その半価幅を求めた。なお、使用X線はCo−Kα線(波長1.79Å)とした。
得られた冷延鋼板およびめっき鋼板から、試験方向が圧延方向となるように、J1S13号B試験片(GL:25mm)を採取し、J1S Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、全伸び(ElT)、局部伸び(ElL))を求めた。ここで、J1S13号B試験片(GL:25mm)とは、J1S13号B試験片の標点距離(50mm)を1/2の25mmとしたJ1S13号B試験片と同様の形状で長さのみを短くした試験片である。
得られためっき鋼板について、鋼板表面を目視で、不めっき欠陥の存在の有無を観察し、めっき性を評価した。不めっきがない場合を良好(○)、不めっきが1箇所でも観察された場合を不良(×)としてめっき性を評価した。
(4)固溶状態のN量測定
得られた冷延鋼板およびめっき鋼板から試験片(電解抽出用)を採取し、定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法を適用し抽出した残渣を化学分析して、残渣中のN量を求め、析出N量とした。鋼中の全N量から得られた析出N量を差し引き、固溶状態のN量とした。なお、使用した電解液は、アセチルアセトン系電解液とした。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
N:0.0060〜0.0200%
を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、さらに固溶Nを0.0040%以上含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織とを有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びElTが5%以上、局部伸びElLが5%以上であることを特徴とする高張力冷延鋼板。 - 質量%で、
C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
N:0.0060〜0.0200%
を含み、さらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、かつN、Nb、Al、Bを、N含有量と、Nb含有量、Al含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上となるように含有し、さらに固溶Nを0.0040%以上含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織とを有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びElTが5%以上、局部伸びElLが5%以上であることを特徴とする高張力冷延鋼板。 - 鋼板表面にめっき層として、溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を有してなる請求項1または2に記載の高張力冷延鋼板。
- 鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする高張力冷延鋼板の製造方法において、
前記鋼素材を、質量%で、
C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
N:0.0060〜0.0200%
を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
前記熱延工程を、前記鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al/N)}℃以下で巻取り熱延板とする工程とし、
前記冷延工程を、前記熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とし、
前記熱処理工程を、前記冷延板を300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する工程として、
固溶Nを0.0040%以上含み、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織を有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びEl T が5%以上、局部伸びEl L が5%以上である機械的特性を有する冷延鋼板とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。 - 鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする高張力冷延鋼板の製造方法において、
前記鋼素材を、質量%で、
C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
N:0.0060〜0.0200%
を含み、さらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、かつN、Nb、Al、Bを、N含有量と、Nb含有量、Al含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
前記熱延工程を、前記鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃以下で巻取り熱延板とする工程とし、
前記冷延工程を、前記熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とし、
前記熱処理工程を、前記冷延板を300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する工程として、
固溶Nを0.0040%以上含み、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織を有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びEl T が5%以上、局部伸びEl L が5%以上である機械的特性を有する冷延鋼板とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。 - 前記熱処理工程に代えて、前記冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、冷却する溶融亜鉛めっき処理工程とすることを特徴とする請求項4または5に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
- 前記熱処理工程に代えて、前記冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、さらに該溶融亜鉛めっきを合金化する合金化処理を施し、冷却する合金化溶融亜鉛めっき処理工程とすることを特徴とする請求項4または5に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010183524A JP5668361B2 (ja) | 2009-08-21 | 2010-08-19 | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009191778 | 2009-08-21 | ||
JP2009191778 | 2009-08-21 | ||
JP2010183524A JP5668361B2 (ja) | 2009-08-21 | 2010-08-19 | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011063881A JP2011063881A (ja) | 2011-03-31 |
JP5668361B2 true JP5668361B2 (ja) | 2015-02-12 |
Family
ID=43950408
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010183524A Expired - Fee Related JP5668361B2 (ja) | 2009-08-21 | 2010-08-19 | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5668361B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11866800B2 (en) * | 2020-01-08 | 2024-01-09 | Nippon Steel Corporation | Steel sheet and method of manufacturing the same |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5827930A (ja) * | 1981-08-13 | 1983-02-18 | Kawasaki Steel Corp | ぶりき及びテインフリ−鋼板用原板の製造方法 |
JPS61272323A (ja) * | 1985-05-28 | 1986-12-02 | Kawasaki Steel Corp | 連続焼鈍による表面処理用原板の製造方法 |
JPH07107177B2 (ja) * | 1988-11-10 | 1995-11-15 | 川崎製鉄株式会社 | 表面処理鋼板用原板の製造方法 |
JP4284815B2 (ja) * | 1999-08-04 | 2009-06-24 | Jfeスチール株式会社 | 高強度缶用鋼板およびその製造方法 |
JP4546922B2 (ja) * | 2005-12-28 | 2010-09-22 | 新日本製鐵株式会社 | 3ピース溶接缶用連続焼鈍dr鋼板およびその製造方法 |
-
2010
- 2010-08-19 JP JP2010183524A patent/JP5668361B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2011063881A (ja) | 2011-03-31 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5983895B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法 | |
JP5549307B2 (ja) | 時効性および焼付け硬化性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 | |
CN110177896B (zh) | 钢板及其制造方法 | |
JP5983896B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法 | |
JP5971434B2 (ja) | 伸びフランジ性、伸びフランジ性の面内安定性および曲げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板ならびにその製造方法 | |
JP5151504B2 (ja) | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP4786521B2 (ja) | 加工性、塗装焼付硬化性及び常温非時効性に優れた高強度亜鉛めっき鋼板並びにその製造方法 | |
JP4501699B2 (ja) | 深絞り性と伸びフランジ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP6589903B2 (ja) | 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 | |
JP2013139624A (ja) | 耐時効性と焼付き硬化性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 | |
JP2007002276A (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP3812279B2 (ja) | 加工性および歪時効硬化特性に優れた高降伏比型高張力溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 | |
JP6384623B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP4752522B2 (ja) | 深絞り用高強度複合組織型冷延鋼板の製造方法 | |
JP4735552B2 (ja) | 高強度鋼板および高強度めっき鋼板の製造方法 | |
JP5397263B2 (ja) | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP3870868B2 (ja) | 伸びフランジ性、強度−延性バランスおよび歪時効硬化特性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP2009013488A (ja) | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP2018003114A (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP5660291B2 (ja) | 成形性に優れた高強度冷延薄鋼板およびその製造方法 | |
JP5668361B2 (ja) | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP4380353B2 (ja) | 深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2018003115A (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP4172268B2 (ja) | 伸びフランジ性、強度−延性バランス、および歪時効硬化特性に優れた複合組織型高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 | |
JP2004332104A (ja) | 高張力冷延鋼板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20111114 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20130419 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20130712 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20140225 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20140401 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20140407 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140520 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20141118 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20141201 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5668361 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |