JP5668361B2 - 高張力冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高張力冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主として電機、建材、自動車等の分野で使用する部品用として好適な、安価な高張力冷延鋼板およびその製造方法に係り、とくに、成形性の向上に関する。なお、ここでいう「鋼板」には、鋼板、鋼帯を含むものとする。
電機分野や建材分野では、近年、販売競争の激化に伴い、コスト低減のために、安価な素材が強く要求されてきた。またさらに、運送費の低減のために、素材および製品の軽量化も要求されている。また、自動車分野では、コスト低減に加えて、地球環境の保全という観点から、自動車の燃費向上が強く要求され、最近では、自動車車体の軽量化が進められている。このような要求に対する有効な対策としては、鋼板の肉厚を薄肉化し軽量化を図るために、高強度化した高張力鋼板を使用すること、およびコスト低減のために安価な高張力鋼板を使用することが、まず挙げられる。
鋼板を高強度化する手段としては、加工硬化、固溶強化、析出強化、組織強化等の強化方法が知られている。しかし、固溶強化、析出強化による方法では、多量の合金元素を含有させる必要があり、また組織強化による方法では焼入性を向上させる合金元素を多量含有させ、さらに急冷等の熱処理を施す必要があり、鋼板製造コストの高騰を伴う。したがって、コスト低減要求の強い電機分野や建材分野向け鋼板では、加工硬化による鋼板の高強度化が有利と考えられる。しかし、加工硬化による高強度化は、他の強化方法に比べて、延性の低下を伴うという問題がある。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、連続焼鈍工程を省略し、冷間圧延ままで用いることができ、コストを削減できる「缶用鋼板の製造方法」が提案されている。特許文献1に記載された技術は、主として、3ピース缶用素材を目的として、C:0.0015%以下、Si:0.020%以下、Mn:0.10%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、N:0.0030%以下、Al:0.150%以下を含み、さらに、Cr:0.020〜0.500%、Nb:0.0020〜0.0200%、Ti:0.0050〜0.0200%、B:0.0002〜0.0020%の1種または2種以上を含む連続鋳造スラブを1050℃以下に再加熱した後に熱延し、仕上げ圧延機入側温度を950℃以下とし、そこでの合計圧下率を40%以上、かつ、最終圧下率を25%以上とし、最終の熱延母板厚みを1.2mm以下として、500〜750℃の温度で巻取りをおこない、通常の酸洗の後、圧下率50〜98%の冷間圧延を行う缶用鋼板の製造方法である。
特開平08−176674号公報
しかし、特許文献1に記載された技術で製造された冷延鋼板は、スラブ組成を高純度化し、さらに熱延後の板厚を1.2mm以下と薄くする必要があるため、製造コストが高騰するという問題がある。
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、安価でかつ成形性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明の高張力冷延鋼板の板厚は、過度の薄肉化による冷間圧延工程におけるコスト上昇を抑制するとともに、冷間圧延による加工硬化を有効活用するという観点から、好ましくは板厚:0.4mm以上2.0mm以下とする。
なお、ここでいう「高張力冷延鋼板」は、圧延方向の引張強さTSが700MPa以上である冷延鋼板をいうものとする。また、「成形性に優れた」とは、JIS Z 2201の規定に準拠して、平行部長さのみを短くしたJIS13号B試験片(GL:25mm)を用い、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行って得られた全伸びElが5%以上で、かつ局部伸びElが5%以上である場合をいうものとする。
電機分野や建材分野向けの材料としては、従来、主として、引張強さTS:270MPa級の軟質鋼板が素材として用いられてきた。そして、代表的な加工としては、90°程度の折り曲げ加工、ねじ穴用としての軽度の穴拡げ加工、剛性の確保や部品の取り付けのための軽度の張出し加工など、がある。この程度の加工であれば、加工方法を適正化することにより、素材として特別に加工性に優れた鋼板を用いることなく、所望形状の部材に加工できる場合が多い。例えば、従来から、軟質冷延鋼板用熱延板を冷間圧延し、さらに溶融亜鉛めっき処理を施し、引張強さTS:600〜700MPa程度の溶融亜鉛めっき鋼板として、該溶融亜鉛めっき鋼板に、ロールフォーミング等の加工技術を駆使して、所望形状の部品を得ている場合もある。
このような状況から、本発明者らは、少なくとも現状使用されている鋼板の延性(局部伸び:5%以上、全伸び:5%以上)と同等の延性を維持しながら、鋼板の更なる高強度化を安価に図ることができれば、電機分野や建材分野あるいは自動車分野向けの材料として、高強度化に伴う成形性の低下を避け、従来より高強度でかつ従来と同等あるいは同等以上の延性を有し、成形性に優れた高張力鋼板として、部品の軽量化に寄与でき、コスト低減に寄与することができると考えた。
電機分野や建材分野あるいは自動車分野向けでは、飲料缶用途や食缶用途と異なり、連続溶融亜鉛めっきラインを利用したり、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、鋼板(基板)表面に亜鉛めっきを施すことが一般的である。このような溶融亜鉛めっき処理により、鋼板は必然的に亜鉛の融点近傍に加熱される、すなわち、鋼板は400℃近傍の温度で熱処理されることになる。
そこで、本発明者らは、上記した課題を達成するために、従来、とくに積極的に利用されなかった、400℃近傍の温度での熱処理を積極的に利用することを思い付いた。そして、鋼板組成や、製造条件を種々変更して鋼板を製造し、多くの材質評価を実施した。その結果、C:0.01〜0.06質量%を含み、Al:0.05質量%以下、N:0.0060質量%以上を、N/Alが0.2以上の条件で含む、N含有量を高くした鋼スラブを、所定条件の熱延工程と、所定条件の冷延工程とを施して冷延板とし、さらに400℃近傍の温度での熱処理を施すことにより、固溶N量が0.0040質量%以上と高くなり、加工硬化したフェライトがさらに強化されて、圧延方向の引張強さTSが700MPa以上で、かつ全伸びElが5%以上、局部伸びElが5%以上の、安価でかつ成形性に優れた高張力冷延鋼板とすることができることを見出した。
まず、本発明者らが行った、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
質量%で、0.045%C−0.01%Si−0.2%Mn−0.01%P−0.01%S−0.03%Al系を基本成分とし、Nを0.003%(低N材)と、0.011%(高N材)の2水準に変化した組成の2種のシートバーを作製した。そして、これらシートバーを、1250℃に加熱・均熱したのち、仕上圧延終了温度(仕上圧延出側温度)が900℃となるように、3パスの熱間圧延を行い板厚3.0mmの熱延板とした。なお、仕上圧延終了後に、コイル巻取り処理の保温に相当する熱処理(600℃×1h)を施した。ついで、熱延板に、圧下率:60%の冷間圧延を施して、板厚:1.2mmの冷延板とした。ついで、これら冷延板を、加熱温度:250〜450℃の温度に加熱し60s間保持したのち、ガスを吹付けて冷却した。
得られた冷延鋼板から試験片を採取し、引張試験を実施して引張特性(引張強さTS、全伸びEl、局部伸びEl)を測定した。なお、引張試験は、圧延方向が引張方向となるように、平行部長さのみを短くしたJIS13号B試験片(GL:25mm)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して行った。
得られた結果を、図1、図2に示す。
図1は、TS, ElT, Elと熱処理温度との関係を示す。図2は、強度−延性バランスを示す。
図1から、低N材にくらべ、高N材の強度が高く、Nの多量含有により、TSが顕著に増加することがわかる。また、低N材と高N材とで、伸びElT, Elはほとんど変わらず、N含有の有無によらず、ほぼ同等の延性を確保できることがわかる。250〜450℃の温度に加熱・保持する熱処理を施すことにより、伸びElT, Elが顕著に増加する。なお、この熱処理によるTSの低下はわずかである。
図2から、同一強度レベルで比較して、低N材の伸びにくらべ、高N材の伸び、とくに局部伸びElが著しく優れる。すなわち、低N材に比べ、高N材の強度−延性バランスが優れていることがわかる。熱処理温度を適正化すれば、伸び、とくに局部伸びが増加し、優れた強度−延性バランスを有する鋼板となる。
このようなことから、Nを多量に含有させ、N/Alを適正範囲とした冷延鋼板に、溶融亜鉛めっき処理に相当する400℃近傍の熱処理を施すことにより、引張強さTS:700MPa以上の高強度で、かつ冷延まま材に比べ、高延性(全伸びElが5%以上、局部伸びElが5%以上)であり、Nを多量含有しない通常の熱処理を施した低炭素鋼板に比べ強度−延性バランスに優れる冷延鋼板を得ることができることを知見した。
このような顕著な強度上昇の原因の詳細については、現時点では、不明であるが、本発明者らは、A1含有量とN含有量を適正範囲に調整することで、固溶強化能が高いNを有効に活用できるようになったため、と考えている。また、同一強度の低N材に比べ、高N材の局部延性が優れる理由は、局部的に硬質部が存在する加工硬化や、母相よりも硬い析出物、第二相等を利用した高強度化でなく、均一なミクロ組織で強化が可能なNによる固溶強化により高強度化を図ったためと考えている。加工硬化や、母相よりも硬い析出物、第二相等は、局部伸び(延性)を低下させる要因となる。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討して完成されたものであり、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、さらに固溶Nを0.0040%以上含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織とを有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びElが5%以上、局部伸びElが5%以上であることを特徴とする高張力冷延鋼板。
(2)質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、さらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、かつN、Nb、Al、Bを、N含有量と、Nb含有量、Al含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上となるように含有し、さらに固溶Nを0.0040%以上含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織とを有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びElが5%以上、局部伸びElが5%以上であることを特徴とする高張力冷延鋼板。
(3)(1)または(2)において、鋼板表面にめっき層として、溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を有してなる高張力冷延鋼板。
(4)鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板を加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする高張力冷延鋼板の製造方法において、前記鋼素材を、質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、前記熱延工程を、前記鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al/N)}℃以下で巻取り熱延板とする工程とし、前記冷延工程を、前記熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とし、前記熱処理工程を、前記冷延板を300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する工程として、固溶Nを0.0040%以上含み、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織を有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びEl が5%以上、局部伸びEl が5%以上である機械的特性を有する冷延鋼板とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
(5)鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする高張力冷延鋼板の製造方法において、前記鋼素材を、質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、さらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、かつN、Nb、Al、Bを、N含有量と、Nb含有量、Al含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、前記熱延工程を、前記鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃以下で巻取り熱延板とする工程とし、前記冷延工程を、前記熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とし、前記熱処理工程を、前記冷延板を300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する工程として、固溶Nを0.0040%以上含み、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織を有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びEl が5%以上、局部伸びEl が5%以上である機械的特性を有する冷延鋼板とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記熱処理工程に代えて、前記冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、冷却する溶融亜鉛めっき処理工程とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
(7)(4)または(5)において、前記熱処理工程に代えて、前記冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、さらに該溶融亜鉛めっきを合金化する合金化処理を施し、冷却する合金化溶融亜鉛めっき処理工程とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
本発明は、高価な合金元素を多量含有することなく、圧延方向の引張強さTSが700MPa以上で、全伸びElが5%以上、かつ局部伸びElが5%以上を有する、成形性に優れた高張力冷延鋼板を、容易にかつ安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。本発明によれば、電機用、建材用あるいは自動車用等として十分な特性を有する部品を安価に製造できるという効果もある。
引張特性と熱処理温度との関係を示すグラフである。 強度−延性バランスの関係を示すグラフである。
まず、本発明冷延鋼板の組成限定理由について説明する。以下、とくに断わらないかぎり質量%は、単に%で記す。
C:0.01〜0.06%
Cは、鋼板の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために、O.01%以上の含有を必要とする。一方、0.06%を超えて含有すると、延性が低下する。このため、Cは0.O1〜0.06%の範囲に限定した。なお、極めて高い局部延性を確保するという観点から、0.01〜O.05%とすることが好ましい。
Si:O.4%以下
Siは、鋼の延性を顕著に低下させることなく、鋼板を高強度化させることができる有用な強化元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.4%を超える含有は、表面性状、化成処理性等の表面美麗性に悪影響を与え、これらの悪影響を抑制するために、長時間の鋼板表面の酸洗処理等を必要とし、大幅なコスト増加を招く。このため、SiはO.4%以下の範囲に限定した。なお、より優れた表面美麗性が求められる用途では0.3%以下とすることが好ましい。
Mn:O.1〜1.0%
Mnは、焼入れ性を向上させ、鋼板強度の増加に大きく寄与する元素である。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止する有効な元素であり、含有するS量に応じて含有させることが好ましい。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有すると、延性が顕著に劣化する。このため、MnはO.1〜1.O%の範囲に限定した。なお、より良好な成形性が要求される用途では、O.6%以下とすることが望ましい。
P:0.08%以下
Pは、鋼中に不可避的不純物として含有されるが、鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要量含有させることができる。しかし、0.08%を超えて含有すると、溶接性や加工後の低温靭性が低下する。このため、PはO.08%以下に限定した。なお、より優れた溶接性や低温靭性が要求される場合には、Pは0.05%以下とするのが好ましい。
S:0.05%以下
Sは、鋼板中では介在物として存在し、鋼板の延性、成形性、とくに伸びフランジ成形性の劣化をもたらす元素であるため、できるだけ低減することが好ましい。しかし、過度の低減は精錬コストの高騰を招く。O.05%以下に低減すると、伸びフランジ成形性への悪影響が無視できることから、本発明ではSは0.05%以下に限定した。なお、より優れた伸びフランジ成形性、あるいは溶接性を要求される場合には、SはO.03%以下とすることが好ましい。
Al :0.05%以下
Alは、鋼の脱酸剤として作用し、鋼の清浄度を向上させる有用な元素である。また、Alは、結晶粒を微細化する作用も有し、鋼の組織微細化のために含有することが望ましい元素である。このような効果を得るためには、Alは0.001%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、表面性状の悪化、固溶Nの顕著な低下に繋がり、良好な強度−延性バランスを得ることが困難となる。このため、Alは0.05%以下に限定した。なお、材質の安定性という観点から、0.001〜O.04%とすることが好ましい。また、Al含有量の低減は、結晶粒の粗大化につながる懸念があるが、本発明では他の合金元素を最適量に制限することと、焼鈍条件を最適な範囲とすることにより結晶粒の粗大化を防止する。
N:O.O060〜O.0200%
Nは、固溶して鋼の強度を増加させるとともに、本発明では優れた成形性の確保に寄与する元素であり、このような効果は、おおむね0.0060%以上の含有で安定して得られる。一方、0.0200%を超える多量の含有は、連続鋳造時のスラブ割れなどの発生が顕著となるとともに、鋼板の内部欠陥発生率が高くなる。このため、NはO.O060〜O.0200%の範囲に限定した。なお、好ましくは、製造工程全体を考慮した材質の安定性・歩留まりの向上という観点から、0.0060〜0.0170%である。また、Nは、鋼の変態点を降下させる効果も有し、薄物で変態点を大きく割り込んだ圧延をしたくないという状況では、Nの含有は有効となる。なお、Nは、本発明範囲内の含有であれば、溶接性等にはまったく悪影響はない。
固溶状態のN:0.0040%以上
固溶状態のNは、フェライト相の強化に寄与する。冷延鋼板として所望の高強度を確保するためには、固溶状態のNを0.O040%以上確保する必要がある。ここで、固溶状態のNは、鋼中の全N量から、析出N量(電解抽出による溶解法でもとめる)を差し引いた値とする。析出N量は、定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法を適用して求めた値を用いる。析出Nの分析法について種々の方法を検討したが、定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法を適用する方法が最も良く材質の変化と対応していたことに基づく。なお、電解液としては、アセチルアセトン系電解液を用いることが好ましい。定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法にて抽出した残渣を化学分析して、残渣中のN量を求め、これを析出N量とした。なお、さらに安定して高い強度を得る必要がある場合は、固溶Nを0.0060%以上とすることが有効である。
上記した成分に加えてさらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有してもよい。
Nb:0.001〜0.030%
Nbは、炭化物、窒化物を形成し、再結晶や、粒成長を抑制する効果を有する元素であり、必要に応じて含有できる。本発明では、Nbは、熱処理工程における熱処理温度の上昇に伴う強度の低下量を小さくし、熱処理時の強度安定性に寄与する。このような効果を得るためには、Nbは概ね0.001%以上含有することが好ましい。一方、0.030%を超える多量の含有は、延性の低下、固溶N量の顕著な低下に繋がり、良好な強度−延性バランスを確保することが困難となる。このため、含有する場合には、Nbは0.001〜0.030%の範囲に限定することが好ましい。
B:0.0015%以下
Bは、結晶粒界に偏析し、再結晶や、粒成長を抑制する効果を有する元素であり、必要に応じて含有できる。本発明では、Bは、Nbと同様に、熱処理工程における熱処理温度の上昇に伴う強度の低下量を小さくし、熱処理時の強度安定性に寄与する。このような効果を得るためには、Bは0.0001%以上含有することが好ましいが、0.0015%を超えて含有すると、延性の低下、固溶N量の顕著な低下に繋がり、良好な強度−延性バランスを確保することが困難となる。このため、含有する場合には、Bは0.0015%以下に限定することが好ましい。
N/Al:0.2以上、N/(Al+0.3Nb+2.5B):0.2以上
Al、Nb、Bは、強力にNを固定する作用を有する元素であり、所望の固溶N量を確保する観点から、本発明では、N含有量とAl含有量の比、N/Alを0.2以上に限定し、Alに加えてさらにNb、Bを含有する場合には、N含有量とAl含有量、Nb含有量、B含有量の比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)を0.2以上に限定した。これにより、O.O040%以上の固溶N量を安定して確保でき、所望の優れた成形性を確保できる。なお、好ましくは、N/Al、N/(Al+0.3Nb+2.5B)はともに0.3以上である。なお、NbまたはBを含有しない場合は、当該元素の含有量は零として計算するものとする。
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えばSb、Sn、Zn、Co等が挙げられ、Sb:O.01%以下、Sn:0.1%以下、Zn:0.01%以下、Co:O.1%以下が許容できる。
つぎに、本発明冷延鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明冷延鋼板は、フェライト相を主相とする組織を有する。ここでいう「主相」とは、組織全体に対する体積率で92%以上、好ましくは95%以上である場合をいう。主相以外の第二相は、セメンタイトやパーライト等である。第二相は、体積率で8%以下とする。第二相が8%を超えて多くなると、延性、とくに局部延性の低下が著しくなり、高度な加工性が要求される部品向けとしては問題となる。さらに良好な延性が必要とされる用途では、5%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは3%以下である。なお、本発明では、主相であるフェライト相は、冷間圧延により加工硬化したフェライト相であり、例えば、X線回折による(211)面の回折ピークの半価幅が0.20°以上0.40°以下となる相である。
つぎに、本発明冷延鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明では、鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板を加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする。
使用する鋼素材は、上記した鋼板の組成と同様に、質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.4%以下、Mn:0.1〜1.0%、P:0.08%以下、S:0.05%以下、Al:0.05%以下、N:0.0060〜0.0200%を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、あるいはさらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように、あるいはさらにNb、Bを含有する場合には、NとAl、Nb、Bを、N含有量とAl含有量、Nb含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上、となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とする。
鋼素材の製造方法は、とくに限定する必要はないが、上記した組成の溶鋼を転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法などの常用の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。鋼素材の鋳造方法は、成分のマクロな偏析を防止すべく連続鋳造法とすることが望ましいが、造塊法、薄スラブ鋳造法によってもなんら問題はない。
得られた鋼素材はついで、熱延工程を施される。熱間圧延のための加熱は、いったん室温まで冷却し、その後再加熱する方法に加えて、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に装入する、あるいはわずかの保熱を行った後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
熱延工程では、鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al/N)}℃以下、さらにNbを含有する場合には、{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃以下、で巻取り熱延板とする。
加熱温度:1000℃以上
熱間圧延のための加熱温度は、1000℃以上とすることが好ましい。加熱温度が1000℃未満では、冷延鋼板での所望の固溶Nや熱延後の仕上圧延出側温度の下限(800℃)を確保することが困難となると共に、熱間圧延時の圧延荷重の増加が著しくなり、圧延が困難となる場合がある。なお、加熱温度の上限はとくに限定する必要はないが、1280℃を超えて高温になると、酸化に伴うロスが増大し、歩留りが低下する。このようなことから、熱間圧延のための加熱温度は概ね1280℃以下とすることが好ましい。
仕上圧延出側温度:800℃以上
熱間圧延の仕上圧延出側温度は、800℃以上とすることが好ましい。これにより、熱延板の組織を均一微細な組織とすることができる。仕上圧延出側温度が800℃未満では、得られる熱延板の組織が不均一になり、その後の冷延工程、焼鈍工程を施しても、組織の不均一性は消滅しない。このため、プレス成形時に種々の不具合を発生する危険性が増大する。また、仕上圧延出側温度が800℃未満の場合に、加工組織の残留を回避すべく、高い巻取り温度を採用すると、粗大粒が発生し、同様の不具合を生じる。このようなことから、仕上圧延出側温度は800℃以上に限定することが好ましい。なお、更なる機械的特性の向上のためには、仕上圧延出側温度は、820℃以上とすることがより好ましい。なお、仕上圧延出側温度の上限はとくに限定する必要はないが、過度に高い仕上圧延出側温度で圧延した場合には、スケール疵などが発生しやすくなるため、仕上圧延出側温度の上限は概ね1O00℃程度以下とすることが好ましい。
巻取り温度:{700−10×(Al/N)}℃以下、または{700−10×(Al+0.3Nb)/ N)}℃以下
仕上圧延終了後、ついで、熱延板はコイル状に巻き取られる。巻取り温度が高温となるとAlNが生成しやすくなる。また、Al/Nが大きい場合でもAlNが析出しやすくなり、所定の固溶N量を確保することが困難となる。このため、本発明では巻取り温度を{700−10×(Al/N)}℃以下、Nbを含む場合には、{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃以下とすることが好ましい。なお、該巻取り温度とAl/Nとの関係式、あるいはさらにNbを含有する場合の、巻取り温度と(Al+0.3Nb)/Nとの関係式は、所定の固溶N量を得るために発明者らが種々検討して得た実験式である。巻取り温度が{700−10×(Al/N)}℃、あるいはさらにNbを含有する場合に{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃を超えると、AlNやNbN等の、Al、Nb、Nとの化合物が生成しやすくなり、所望の固溶N量を確保できない。なお、巻取り温度の下限はとくに限定されないが、200℃以上とすることがより好ましい。200℃を下回ると鋼板形状の乱れが顕著となり、実際の使用にあたり不具合を生ずる危険性が増大する。また、材質の均一性も低下する傾向となる。さらに高い材質均一性が要求される場合は巻取り温度の下限は300℃以上とすることが望ましい。
熱延板は、ついで冷延工程を施される。
冷延工程は、熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とする。
酸洗は、常用の方法に準じて行うことが好ましいが、スケールが極めて薄い状態であれば、酸洗を行うことなく直接、冷延工程を行ってもよい。
冷間圧延圧下率:50〜95%
本発明では冷間圧延による加工硬化を活用して高強度化を図るため、冷間圧延の圧下率は50%以上とする。50%未満では、所望の高強度を確保できない。一方、圧下率が95%を超えると、冷間圧延時間が長くなり、冷延工程コストの大幅なアップが避けられない。このため、冷間圧延の圧下率は50〜95%に限定することが好ましい。さらに安定して高強度を得るには、圧下率は55%以上とすることが望ましい。
冷延板はついで、熱処理工程を施される。
熱処理工程は、冷延板を熱処理温度:300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する熱処理を施す工程とする。
熱処理温度:300〜650℃
冷延板に施す熱処理は、300℃〜650℃の範囲の温度で行うことが好ましい。熱処理温度が300℃未満では、延性の増加が少なく、とくに低い局部延性しか得られない。一方、650℃を超える温度では、冷間圧延により加工硬化したフェライト相の回復が進みすぎ、所望の引張強さTSを確保できなくなる。このため、熱処理温度は300〜650℃の範囲の温度に限定することが好ましい。なお、上記した温度範囲での保持時間は0〜600sとすることが好ましい。保持時間が600sを超えると、熱処理時間が長くなりすぎ、鋼板製造コストの高騰を招く。なお、更なる延性、とくに局部伸びの向上のためには、保持時間は10s以上とすることが好ましい。なお、ここで保持時間0sは、所定温度に到達した直後に冷却を開始することを意味する。
なお、上記した熱処理工程に加えて、さらに溶融亜鉛めっき処理、あるいは合金化溶融亜鉛めっき処理を施すめっき処理工程を施して、鋼板の表面にめっき層を形成してもよい。
なお、上記した熱処理工程に代えて、溶融亜鉛めっきラインを利用して、熱処理と溶融亜鉛めっき処理とを連続して行う溶融亜鉛めっき処理工程を施してもよい。溶融亜鉛めっき処理工程は、冷延工程を施された冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱し、好ましくは0〜600s間保持したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっき処理を施して、冷却する工程としてもよい。
熱処理温度は、450℃以上とすることが好ましい。というのは、溶融亜鉛めっき処理に使用する溶融亜鉛めっき浴の温度がおおよそ460℃であるため、溶融亜鉛めっき処理に悪影響を及ぼさない温度として450℃を選択した。一方、熱処理温度が650℃を超えると、加工硬化したフェライトの回復が進み、引張強さが著しく低下する。このため、溶融亜鉛めっき処理工程における熱処理温度は、450〜650℃の範囲の温度に限定することが好ましい。また、熱処理温度の範囲での保持時間は0〜600sとすることが好ましい。保持時間が600sを超えると、焼鈍時間が長くなり、生産性が低下し、熱処理コストの高騰を招く。なお、好ましくは保持時間は、局部延性の向上の観点から10s以上である。
なお、熱処理−溶融亜鉛めっき処理に引続いて、さらに溶融亜鉛めっき層を550℃以下の温度に加熱しめっき相を合金化する合金化処理を連続して行い、冷却する合金化溶融亜鉛めっき処理工程としてもよい。また、連続処理に代えて、鋼板を、バッチ処理で溶融亜鉛めっき浴に浸漬してめっき処理を施す、いわゆる“どぶ付けめっき"としても、本発明の効果が得られる。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で鋼素材(スラブ:肉厚260mm)とした。これら鋼素材を、表2に示す条件の熱延工程で、板厚4.0mmの熱延鋼帯(熱延板)とした。ついで、これら熱延板に、酸洗処理を施したのち、表2に示す条件の冷延工程で板厚1.2mmの冷延板とした。得られた冷延板に、連続焼鈍ライン、または、連続溶融亜鉛めっきラインを用いて、表2に示す条件で熱処理工程、溶融亜鉛めっき処理工程、あるいは、合金化溶融亜鉛めっき処理工程を施した。なお、溶融亜鉛めっき処理は、熱処理に引続いて、鋼板をめっき浴の温度:460℃の溶融亜鉛めっき浴に連続的に浸漬する処理とした。また、合金化溶融亜鉛めっき処理は、溶融亜鉛めっき処理後にさらに溶融亜鉛めっき層に合金化処理温度:500℃とする合金化を施す処理とした。
なお、熱処理工程、溶融亜鉛めっき処理工程、合金化溶融亜鉛めっき処理工程後に、形状矯正のために、伸び率:0.1%の調質圧延を施した。
得られた鋼板(冷延鋼板、またはめっき鋼板)から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、めっき性試験、さらに固溶N量測定を実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られた冷延鋼板およびめっき鋼板から、圧延方向に平行な断面(L断面)が観察面となるように組織観察用試験片を採取し、研磨しナイタール腐食して、光学顕微鏡(倍率:400倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)を用いて、組織を構成する各相の同定を行うとともに、該各相の組織分率(面積率)を、画像解析装置を用いて、測定した。なお、フェライト相については、X線回折法で(211)面のピークを求め、その半価幅を求めた。なお、使用X線はCo−Kα線(波長1.79Å)とした。
(2)引張試験
得られた冷延鋼板およびめっき鋼板から、試験方向が圧延方向となるように、J1S13号B試験片(GL:25mm)を採取し、J1S Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、全伸び(El)、局部伸び(El))を求めた。ここで、J1S13号B試験片(GL:25mm)とは、J1S13号B試験片の標点距離(50mm)を1/2の25mmとしたJ1S13号B試験片と同様の形状で長さのみを短くした試験片である。
(3)めっき性試験
得られためっき鋼板について、鋼板表面を目視で、不めっき欠陥の存在の有無を観察し、めっき性を評価した。不めっきがない場合を良好(○)、不めっきが1箇所でも観察された場合を不良(×)としてめっき性を評価した。
(4)固溶状態のN量測定
得られた冷延鋼板およびめっき鋼板から試験片(電解抽出用)を採取し、定電位電解法を用いた電解抽出による溶解法を適用し抽出した残渣を化学分析して、残渣中のN量を求め、析出N量とした。鋼中の全N量から得られた析出N量を差し引き、固溶状態のN量とした。なお、使用した電解液は、アセチルアセトン系電解液とした。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005668361
Figure 0005668361
Figure 0005668361
本発明例は、いずれも、高価な合金元素を多量含有することなく、引張強さ700MPa以上の高強度と、全伸びEl5%以上で、かつ局部伸びEl5%以上の延性を有し、成形性に優れるとともに、強度−延性バランスに優れた冷延鋼板またはめっき鋼板となっている。なお、本発明例について、密着曲げ加工を行い、曲げ部を目視で観察したが、いずれも割れの発生は認められなかった。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、強度が不足するか、あるいは強度−延性バランスが劣化している。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
    Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
    S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
    N:0.0060〜0.0200%
    を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、さらに固溶Nを0.0040%以上含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織とを有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びElが5%以上、局部伸びElが5%以上であることを特徴とする高張力冷延鋼板。
  2. 質量%で、
    C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
    Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
    S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
    N:0.0060〜0.0200%
    を含み、さらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、かつN、Nb、Al、Bを、N含有量と、Nb含有量、Al含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上となるように含有し、さらに固溶Nを0.0040%以上含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織とを有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びElが5%以上、局部伸びElが5%以上であることを特徴とする高張力冷延鋼板。
  3. 鋼板表面にめっき層として、溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を有してなる請求項1または2に記載の高張力冷延鋼板。
  4. 鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする高張力冷延鋼板の製造方法において、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
    Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
    S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
    N:0.0060〜0.0200%
    を含み、かつNとAlを、N含有量とAl含有量との比、N/Alが0.2以上となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
    前記熱延工程を、前記鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al/N)}℃以下で巻取り熱延板とする工程とし、
    前記冷延工程を、前記熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とし、
    前記熱処理工程を、前記冷延板を300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する工程として、
    固溶Nを0.0040%以上含み、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織を有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びEl が5%以上、局部伸びEl が5%以上である機械的特性を有する冷延鋼板とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
  5. 鋼素材に、該鋼素材を加熱し熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に加熱し熱処理を施す熱処理工程と、を順次施し、高張力冷延鋼板とする高張力冷延鋼板の製造方法において、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C:0.01〜0.06%、 Si:0.4%以下、
    Mn:0.1〜1.0%、 P:0.08%以下、
    S:0.05%以下、 Al:0.05%以下、
    N:0.0060〜0.0200%
    を含み、さらに、Nb:0.001〜0.030%、B:0.0015%以下のうちから選ばれた1種または2種を含み、かつN、Nb、Al、Bを、N含有量と、Nb含有量、Al含有量、B含有量との比、N/(Al+0.3Nb+2.5B)が0.2以上となるように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
    前記熱延工程を、前記鋼素材を加熱温度:1000℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとし、ついで該シートバーに仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取り温度:{700−10×(Al+0.3Nb)/N)}℃以下で巻取り熱延板とする工程とし、
    前記冷延工程を、前記熱延板に酸洗と、圧下率:50〜95%の冷間圧延とを施して冷延板とする工程とし、
    前記熱処理工程を、前記冷延板を300〜650℃の範囲の温度に加熱したのち冷却する工程として、
    固溶Nを0.0040%以上含み、体積率で92%以上のフェライト相を主相とする組織を有し、圧延方向の引張強さTS:700MPa以上で、かつ全伸びEl が5%以上、局部伸びEl が5%以上である機械的特性を有する冷延鋼板とすることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。
  6. 前記熱処理工程に代えて、前記冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、冷却する溶融亜鉛めっき処理工程とすることを特徴とする請求項4または5に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
  7. 前記熱処理工程に代えて、前記冷延板を450〜650℃の範囲の温度に加熱したのち、500℃以下の温度まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施し、さらに該溶融亜鉛めっきを合金化する合金化処理を施し、冷却する合金化溶融亜鉛めっき処理工程とすることを特徴とする請求項4または5に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
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