JP3915160B2 - ノンイヤリング性に優れる缶用鋼板の製造方法 - Google Patents

ノンイヤリング性に優れる缶用鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、飲料缶等の缶容器に用いて好適な薄鋼板の製造方法に関し、特にノンイヤリング性(耳発生が少ない)に優れる缶用鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品、飲料缶等の缶容器は大きく分けると、その形態により曲げ加工で成形されるもの(多くは3ピース缶と呼ばれる)と、絞り成形、絞り−再絞り成形あるいは深絞り成形されるもの(以上、2ピース缶と呼ばれる)に分類される。後者の2ピース缶は、生産効率に優れているという点と、継ぎ目部がないことで、蓋をかしめた後の内容物のシール性に優れるといった利点を有している反面、従来から、絞り成形時にイヤリングと呼ばれる形状の不均一を発生しやすいという加工法上の違いによる問題を抱えている。
このイヤリングは、鋼板をカップ状に絞り成形した際に、カップの縁に高さの不均一を生ずる現象であり、鋼板の持つ集合組織との相関が強いことが知られている。縁高さの不均一量が大きいと、容器を製造する際に、一様な縁高さになるように調整するため、切り捨て部分が増大し、歩留りの低下、缶コストの上昇を招くことになる。また、イヤリングは、このようにして切り捨てを行った場合でも、依然として、容器の壁厚みの不均一といった本質的な問題を内包しており、蓋をかしめる時の密封性に対する信頼性の面などからも好ましくない現象であった。
このため、缶用鋼板には、従来から、上記イヤリングが少ないこと(ノンイヤリング性)が強く求められていた。
【0003】
ところで、ノンイヤリング性を高めるために、従来から、鋼成分、熱延条件、冷延条件を調整することにより、鋼板の集合組織を制御する方法が幾つか提案されている。
従来の一般的な技術は、熱延を変態点以上で行い、熱延母板の組織をランダム化して、1次冷延の圧下率、再結晶焼鈍、焼鈍後の2次冷延条件を最適化する方法であった。
しかし、この方法では、多くの要因の中で、特に1次冷延圧下率の影響が支配的であり、このため良好な集合組織を確保するには、必然的に、缶用の極薄鋼板の冷延素材としての熱延母板に対して、通常の冷延鋼板よりも薄い熱延母板とするといった厳しい制約が求められていた。例えば、一般の熱延鋼板の母板厚みが2.6 mm程度であるのに対して 2.0mm以下とする必要があった。当然のことながら、薄い熱延母板を安定して変態点以上で仕上げ圧延することは困難であり、材質の不均一を生む主要因となっていた。
一方では、製品には所定の板厚や硬さが定められているため、他の条件で製造した熱延母板を流用することができず、缶用鋼板製造工程における融通性を阻害していた。
【0004】
他方、近年、缶製造コストの低減の観点から缶用素材の板厚はさらに薄くなる傾向にあり、その際に、板厚の薄肉化に伴う缶強度の低下に対処するために素材の硬質化の要求が強くなってきている。
この要請に応える技術が、例えば特開昭51−131413号公報に開示されている。この技術は、焼鈍後の2次冷延、いわゆるダブルレデュース(以下、DRと略記)により鋼板の硬さを確保し、板厚の低減を図るものである。しかし、この方法は、加工強化のみで鋼板の強度増を図るものであるために、延性の悪化が顕著になることに加え、降伏応力が増加して成形性が劣化する(例えば、成形性を形状凍結性を用いて評価した場合に、降伏応力の増加によって、スプリングバック量が増大し、形状不良になる)という難点を抱えている。さらに、2次冷延の付与によりΔr値は負の大きな値となるため、イヤリング特性が顕著に劣化する。
【0005】
また、別の強化機構として、Nなどの固溶強化作用を用いることによって加工強化による不利を解決する技術がある。例えば、特開昭58−27930 号公報などがそれである。この技術は、固溶Nを強化元素として使用する硬質ぶりき原板の製造法に関するものである。さらに、特公平7−107177号公報に開示の技術は、成分と熱延条件、特にスラブ再加熱温度を制御することにより、強度レベルを制御するものである。
しかし、これらの技術においては、不純物としてのNが添加されることにより、Δr値が負の大きな値を取ることが大きな問題となり、耐イヤリンク性が劣化する。この変化の傾向は2次冷延で強化した場合のΔrの変化と同一であり、前述の加工強化と組み合わされた場合には両者が重畳される結果、Δrが極めて大きな負の値を取るため、使用に際しては大きな問題となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の技術では、ノンイヤリング性に優れ、加工特性が適正な範囲にあり、しかもコイルの長手方向、幅方向において均一な特性を示す缶用鋼板が製造できなかった。
【0007】
そこで、本発明の主たる目的は、従来技術が抱えていた上記問題を解決することにあり、ノンイヤリング性に優れ、しかも、加工特性および耐時効特性が適正な範囲にあり、さらに、コイルの長手方向、幅方向における特性が均一に得られる缶用鋼板の製造技術を提供することにある。
本発明の他の目的は、r値の面内異方性△rが±0.1 以内、伸びが20%以上、時効による伸びの低下量が1%以下、鋼板内の引張強度の標準偏差が1.5 kgf/mm2 以下の範囲にある缶用鋼板の製造技術を提供することにある。
ここに、△r=(r0 +r90−r45)/2(ただし、r0 、r90、r45はそれぞれ圧延方向に0度、90度、45度の方向のr値)である。
本発明のさらに他の目的は、熱延鋼板における仕上圧延温度や巻取温度の変動など、製造条件の変動の影響が小さく安定した特性が得られる、上記缶用鋼板の製造技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために実験、研究を行なった。その結果、鋼の成分組成、熱延仕上げ圧延温度などの条件を各々適正な範囲に規制するとともに、冷延後の連続焼鈍条件、とくに加熱速度、焼鈍温度、冷却速度などの条件を適正な範囲に制御することにより、これらの問題が解決することを知見した。これらの工程条件は、とくに連続焼鈍中におけるフェライト組織からオーステナイトヘの変態、残留する固溶C、N量の制御を通じて、各特性に影響を及ぼすものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は下記のとおりである。
(1)C:0.010〜0.05wt%、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.04wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.005〜0.150wt%およびN:0.0150wt%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を用いて缶用鋼板を製造するに当たり、仕上げ圧延温度800〜1000℃で熱間圧延した後、圧下率80%以上で1次冷間圧延し、次いで、加熱速度を10℃/sec以上、均熱温度を、均熱中のオーステナイト相の体積分率が2%以上となる最低温度〜800℃、かつ均熱時間を60sec以下とする連続焼鈍を行い、450℃までの冷却速度30℃/sec以上で冷却し、さらに、圧下率20%以下で2次冷間圧延することを特徴とするノンイヤリング性に優れる缶用鋼板の製造方法。
【0010】
(2)C:0.010〜0.05wt%、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.04wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.005〜0.150wt%およびN:0.0150wt%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を用いて缶用鋼板を製造するに当たり、仕上げ圧延温度800〜1000℃で熱間圧延した後、圧下率80%以上で1次冷間圧延し、次いで、加熱速度を10℃/sec以上、均熱温度を、均熱中のオーステナイト相の体積分率が2%以上となる最低温度〜800℃、かつ均熱時間を60sec以下とする連続焼鈍を行い、450℃までの冷却速度30℃/sec以上で冷却し、さらに、250〜450℃で30sec以上保持する過時効処理を行い、圧下率20%以下で2次冷間圧延することを特徴とするノンイヤリング性に優れる缶用鋼板の製造方法。
【0012】
(3)C:0.010〜0.05wt%、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.04wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.005〜0.150wt%およびN:0.0150wt%以下を含み、かつCu:0.5wt%以下、Ni:0.5wt%以下、Cr:0.5wt%以下およびMo:0.5wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0wt%以下の範囲で含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を用いる上記(1)または(2)に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
(1)鋼成分について;
C:0.010〜0.05wt%
Cは、製缶後の缶体の強度を確保するうえで必要な元素であるが、延性および耐食性の観点では少ない方が有利である。含有量が0.05wt%を超えると、延性および耐食性が低下し、冷間圧延性も低下するので、0.05wt%以下とする。下限については、0.010wt%未満になると、結晶粒が粗大化し、いわゆるオレンジピール現象に類似した肌荒れ不良を発生する危険性を招くようになる。従って、C量は0.010〜0.05wt%とする。より高度な材質の安定性と優れた延性を必要とする場合には、0.010〜0.03wt%の範囲とするのが望ましい。
【0014】
Si:0.10wt%
Siは、多量に含有すると、表面処理性の劣化、耐食性の劣化等の問題を招くほか、母板の変形抵抗を増加させ、冷間圧延性を顕著に劣化させる。このため、その上限を0.10wt%とする。特に、優れた耐食性が必要な場合には、0.02wt%以下とするのが望ましい。
【0015】
Mn:0.1 〜0.6 wt%
Mnは、Sによる熱延中の赤熱脆性を防止し、結晶粒を微細化する作用を有し、望ましい材質を確保する上で必要な元素である。
この効果を発揮するためには少なくとも0.1 wt%以上の添加が必要である。一方、Mnを多量に添加し過ぎると、鋼板の局部延性が低化するので、上限を0.6 wt%とする。なお、より良好な成形性が必要な用途には、0.4 wt%以下の範囲で添加するのが望ましい。
【0016】
P:0.04wt%以下
Pは、鋼を硬質化させ、絞り成形性やフランジ加工性を悪化させ、耐食性を悪化させる有害な元素である。とくに、P量が0.04wt%を超えると、その影響が顕著に現れるので、0.04wt%以下に制限する。なお、これらの特性が特に重要視される場合には、0.01wt%以下に抑制するのが望ましい。
【0017】
S:0.02wt%以下
Sは、鋼中で介在物として存在し、延性の低下、耐食性の劣化をもたらす有害な元素であるので0.02wt%以下に制限する。加工性を特に必要とする場合には、0.015 wt%以下の範囲に抑制するのが望ましい。
【0018】
Al:0.005 〜0.150 wt%
Alは、製鋼時の脱酸材として必要な元素である。添加量が少ないと、脱酸が不十分となり、介在物が増加し、フランジ加工性、ネック成形性を劣化させる。一方、含有量が多過ぎると、表面性状の悪化を招く。よって、Alの添加量は0.005 〜0.150 wt%とする。なお、材質の安定性という観点からすれば、0.008 〜0.120 wt%の範囲が望ましい。
【0019】
N:0.0150wt%以下
Nは、添加量を増加すれば、固溶状態のNが増加し、鋼板の高強度化が達成できる。その量が0.0150wt%以下の範囲であれば、時効性が実際の使用において問題のないレベルで、強度向上の効果が得られる。なお、好ましい含有範囲は、製造コストおよび得られる効果を考慮して、概ね、0.0010〜0.0120wt%である。
なお、本発明においては、N量を0.0030wt%以下にすることと後述の過時効処理を組み合わせることで、極めて優れた耐時効性を付与できる。
また、本発明の製造条件によれば、N添加量0.0150wt%まではノンイヤリング性も問題にならない。
【0020】
Cu:0.5 wt%以下、Ni:0.5 wt%以下、Cr:0.5 wt%以下およびMo:0.5 wt%以下
Cu、Ni、CrおよびMoは、耐食性の劣化を伴わずに、鋼を固溶強化できる有用な元素であり、必要に応じて添加される。しかし、これらの元素を0.5 wt%を超えて添加すると、効果が飽和するうえ、耐食性が劣化する。また、これらの元素は変態点を降下させる作用を有するので、焼鈍の均熱時において、望ましい量のオーステナイトをうる焼鈍温度はより低くなり、焼鈍条件をより緩和できる。
これらの元素の効果は、互いに相殺されることなく、複合添加して用いることができるが、合計の添加量が1.0 wt%を超えると熱延母板が硬質化し、冷間圧延性が低下する。
したがって、これらの各元素はそれぞれ0.5 wt%以下、合計量で1.0 wt%以下の範囲で添加する。なお、上記各元素の添加効果は0.01wt%以上の添加により、顕れるので、それぞれ0.01wt%以上添加することが望ましい。
【0021】
(2) 製造条件について;
・熱間圧延および酸洗
スラブ加熱につづく、熱間圧延では、800 〜1000℃の温度で仕上げ圧延する必要がある。仕上げ圧延温度が800 ℃未満では、鋼板の幅方向の材質不均一性が増大するうえ、最終的に形状の優れた鋼板を得ることが困難となる。一方、1000℃を超える高い温度で仕上げ圧延すると、圧延中のスケールに起因するスケール疵が発生するとともに、鋼板表面のスケール量が増大し、次工程での酸洗効率が著しく低下する。従って、仕上げ圧延温度は800 ℃〜1000℃とする。
熱延後の巻取温度については特に定めないが、最終的な材質の安定性、熱延母枚の形状安定性から設定される。巻取り温度を640 ℃以下とすることで、材質の均一化が達成されるが、イヤリング特性はやや劣化傾向となる。概ね500 〜700 ℃の範囲が望ましい。
酸洗については格別の制限条件を設ける必要はなく、通常の塩酸酸洗ラインで連続的に問題なく実施できる。
【0022】
・冷間圧延
冷間圧延においては、圧下率を80%以上とする必要がある。冷間圧下率を80%以上とすれば、本発明で目標とするノンイヤリング特性に加え、長手方向、幅方向の均一性に優れる安定した材質を得ることができる。
これらの効果が得られる詳細な機構は必ずしも明らかではないが、冷間圧下率を高くすることによって、連続焼鈍時のフェライト→オーステナイト→フェライトの繰り返し変態に伴う組織変化がより均一に起こるためと推定される。なお、冷延圧下率は、おおむね85〜95%の範囲が好適である。
【0023】
・連続焼鈍
加熱速度:10℃/sec 以上
加熱速度を10℃/sec 以上とすることにより、焼鈍後に均一、微細な再結晶組織を得ることができる。また、詳細な機構は不明であるが、急速加熱は組織の均一化、微細化と同時に、集合組織のランダム化にも有効である。加熱速度が、10℃/sec 未満では、混粒組織となりやすい。なお、加熱速度の上限は特に定める必要はなく、過度に急速加熱した場合に生ずる種々の操業上のトラブルが発生しない条件であればよい。したがって、加熱速度は10℃/sec 以上、好ましくは15℃/sec 以上とする。
【0024】
均熱温度:変態点〜800 ℃
均熱温度は、本発明において最も重要な要件の1つである。すなわち、焼鈍温度を変態点以上とすることにより、組織のランダム化がはかられ、焼鈍後にノンイヤリング性を達成するための基礎的条件が得られる。本発明でいう変態点は、均熱中のオーステナイト相の体積分率が2%以上となる最低温度として定義する。均熱時の変態率を2%以上とすれば、最終的にノンイヤリングの鋼板が製造できる。
一方、均熱温度が800 ℃を超えると、鋼組成にも依存するが、均熱中のオーステナイトの分率が大きくなり過ぎて組織が粗大化するとともに、冷却後に生成したパーライトが不均一に分布した組織となる。この組織の粗大化、不均一化は強度の低下につながるので、高強度極薄である缶用鋼板を製造することを目標とする本発明の目的に対しては望ましくない。従って、焼鈍温度は変態点以上、800 ℃以下とする。
【0025】
均熱時間:60 sec以下
焼鈍時間(均熱時間)が60sec を超えると、本発明のように、高温域の焼鈍を行った場合に鋼板の幅方向における材質の変動が特に顕著となる。
これまでにも、低炭素鋼で変態点以上の温度で焼鈍した例はあったが、これらはいずれも、本発明とは目的も要求特性も異なる一般の冷延鋼板においてであり、また、いずれも60sec を超える長い均熱時間を要しており、また上述した10℃/sec 以上という加熱速度の条件が達成されていなかった。
均熱時間の下限は特に定めないが、十分な量のオーステナイトが均熱中に出現する条件であれば、均熱時間が実質的に0sec であっても問題はない。なお、強度をより高く、材質の変動をさらに小さく抑えるには30sec 以下の範囲が好適である。さらに好ましくは20sec 以下がよい。
【0026】
450 ℃までの冷却速度:30℃/sec 以上
冷却速度を30℃/sec 以上とすることにより、鋼板組織の均一微細化、さらにコイルの長手方向、幅方向の材質の均一性が向上するとともに、焼鈍後の時効性を安定して制御することができる。
【0027】
・過時効処理
低い時効性が必要な用途では、インラインでの過時効処理を実施することは時効性の低減という観点から望ましい。この場合、時効条件は、250 〜450 ℃の温度で、30 sec以上の時間保持するものとする。このような処理は、N量が0.0030wt%以下の素材に対して特に効果的である。
【0028】
・2次冷間圧延
焼鈍後の冷間圧延(2次冷間圧延)は、素材の強度を加工強化により増加させるため、また、板厚を減少させ、表面粗度等を調整するために、さらに、改善の機構は必ずしも明らかではないが、鋼板の形状性の向上のために実施する。
しかし、その圧下率が20%を超える強度の加工を行うと、延性が悪化し、適用可能な用途が限定されてしまう。したがって、2次冷間圧延の圧下率は、20%以下、好ましくは15%以下、さらに良好なプレス成形性が要求されるような用途では、10%以下にすることが望ましい。なお、圧下率の下限は、材質以外の表面粗度管理などの面から決定され、1.0 %以上の付与が望ましい。また、1.0 %以上付与することで、本発明条件の鋼は、従来条件のものより顕著に“時効による降伏点伸びの回復”が抑制できる。
【0029】
以上説明したような、本発明に従う方法で製造すれば、ノンイヤリング性に優れ、加工特性や耐時効特性が適正な範囲にあり、しかも、コイルの長手方向、幅方向における材質均一性に優れる缶用鋼板が得られる。
特に、焼鈍後の2 従来冷延の圧下の条件を制御して、鋼板の引張強さTSを50 kgf/mm2以下にすれば、ほとんどの加工に耐える延性を有するため、極めて広範な用途に適用可能である。
また、製品の板厚についてはとくに定めないが、特に0.30mm以下の範囲では、缶体に成形した後の耐デント性なども重要な製品特性となるため、本発明の有する特性の1つである強度特性の優位性がより有利に発揮される。
さらに、この発明方法によれば、熱延条件に不可避な変動があっても、それに引き続く冷延−焼鈍 (特に、従来行われていなかった変態温度以上の高温焼鈍) により、新たに望ましい組織を再構築することができるため、熱延鋼板における製造条件の変動の影響が小さく、安定した特性を得ることができる。
【0030】
・表面処理
本発明で得られた鋼板は、通常の缶用鋼板に用いるいずれの表面処理も適用できる。例えば、表面処理としては、錫めっき、クロムめっき、ニッケルめっき、ニッケル・クロムめっきなどが挙げられる。また、本発明で得られた鋼板は、これらめっきの後、コイル状のまま塗装あるいは有機樹脂フィルムを貼って製缶するような、やや特殊な用途であっても、なんら問題なく適用可能である。
【0031】
【実施例】
表1に示す成分組成を含み、残部が実質的に鉄からなる鋼を転炉で溶製し、この鋼スラブを表2に示す条件で熱間圧延、1次冷延、連続焼鈍、そして2次冷延を行い、最終仕上げ板厚を0.22mmとする缶用鋼板を製造した。その後、ハロゲンタイプの電気錫めっきラインにて25番相当の錫めっきを連続的に施してぶりきに仕上げた。
【0032】
【表1】
Figure 0003915160
【0033】
【表2】
Figure 0003915160
【0034】
このようにして得られた錫めっき鋼板の鋼板特性の調査を行なった。
これらの調査方法は次のとおりである。
・△r
△r=(r0 +r90−r45)/2で求めた。ただし、r0 、r90、r45は、それぞれ圧延方向に0度、90度、45度の方向のr値を表す。
なお、高強度化のために、焼鈍後に5%超え程度の2次冷延を付与した材料では、均一伸びの低下のために、引張り法による安定したr値の測定が困難となるために、JIS G3315に規定される短冊形状試験片の固有振動数より算出する手法によった。なお、これら2つの測定法が十分に高い精度で対応することを確認した。
・引張特性とその標準偏差
15ton コイルの長手方向10点(先端、後端より20m ピッチ)、幅方向9点(両エッジより20,50,100 ,200mm および中央)について引張特性を調査し、平均値、標準偏差で評価した。
・時効特性
該めっき鋼板に対して、210 ℃にて30分の時効処理を行い、それによる伸びの劣化量、さらには2ピース缶に成形した際の外観不良であるストレッチャーストレインの発生に対応する降伏点伸びの量を引張試験により確認した。
・イヤリング高さ
絞り比2.0 の円筒絞りを行い、イヤリング高さの平均を求めた。
【0035】
得られた結果を表3に示す。表3から、本発明法で製造した鋼板は、Δrが±0.1 以内と小さく、降伏応力の標準偏差 1.0 kgf/mm2以下、引張応力の標準偏差 1.0 kgf/mm2以下、伸び20%以上という優れた材質均一性を有していることがわかる。
【0036】
【表3】
Figure 0003915160
【0037】
次に、これら鋼板を塗装、焼き付け処理後、深絞り成形に適用した場合の相違点を明らかにすべく、表1の鋼No1を用いて、表4に示す条件で製造した鋼板を、円筒絞り成形試験を実施した。変態点は、伸びの温度変化により算出した従来のデータベースをもとに回帰式により算出した。
なお、本発明においては、均熱中のオーステナイトへの変態率が2%を超える必要があるが、この管理に対しては、これらの回帰式が充分に有用であることを金属組織学的に確認した。また、均熱時におけるオーステナイトへの変態挙動に及ぼす熱延条件の影響は小さく、これは、大きな冷延ひずみが導入されていることに起因すると思われる。
その結果を、表5に示す。表5から、本発明法で製造された鋼は、時効による伸びの低下量が少なく、イヤリングも少ないことがわかる。
また、本発明鋼は、時効による降伏点伸びの出現量が3%以下であり、実際のプレス成形でストレッチャーストレインなどの問題は発生しない。これを、実験室での成形シミュレーションで確認し、実部品成形でも一部確認した。
【0038】
【表4】
Figure 0003915160
【0039】
【表5】
Figure 0003915160
【0040】
図1は、0.03wt%C−0.01wt%Si−0.21wt%Mn−0.005 wt%P−0.008 wt%S−0.O55 wt%Al−0.0015wt%N鋼(変態点:720 ℃)を素材とし、仕上げ圧延温度85O ℃、巻取り温度610 ℃にて、板厚1.8mm の熱延母板を製造し、89%の冷間圧延を行なった後、連続焼鈍における焼鈍温度のみを広範囲に変化させ、△rを調査した結果である。このときの焼鈍条件は、加熱速度:15℃/sec 、均熱時間:15sec 、冷却速度:15℃/sec であり、過時効条件は35O ℃−60sec 一定とした。
図1から、本発明では、変態点以上の高温焼鈍を行うことにより、良好な強度と延性のバランスに加えて、優れたノンイヤリング性を有する鋼板を製造できることが示される。
【0041】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、特に、変態点温度以上という、従来にない高温域で焼鈍を行うことにより、鋼板の集合組織をランダム化して、絞り成形時のイヤリングを回避できる。また、急速加熱、急速冷却の熱サイクルとすることにより、鋼板の金属組織を微細化し適度に強化できるので、成形性に優れた高強度缶用鋼板を製造することが可能となる。また、耐時効性を確保することも可能である。
また、本発明によれば、従来よりも一層、材質の均一性に優れた缶用鋼板を製造できるので、缶体製造(プレス成形)の安定化、製缶コストの低減化に寄与するところ大である。なお、本発明の効果は、絞り成形を行う2ピース缶への用途のみでなく、3ピース缶へも何ら問題なく適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼鈍温度と△rとの関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. C:0.010〜0.05wt%、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.04wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.005〜0.150wt%およびN:0.0150wt%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を用いて缶用鋼板を製造するに当たり、仕上げ圧延温度800〜1000℃で熱間圧延した後、圧下率80%以上で1次冷間圧延し、次いで、加熱速度を10℃/sec以上、均熱温度を、均熱中のオーステナイト相の体積分率が2%以上となる最低温度〜800℃、かつ均熱時間を60sec以下とする連続焼鈍を行い、450℃までの冷却速度30℃/sec以上で冷却し、さらに、圧下率20%以下で2次冷間圧延することを特徴とするノンイヤリング性に優れる缶用鋼板の製造方法。
  2. C:0.010〜0.05wt%、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.04wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.005〜0.150wt%およびN:0.0150wt%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を用いて缶用鋼板を製造するに当たり、仕上げ圧延温度800〜1000℃で熱間圧延した後、圧下率80%以上で1次冷間圧延し、次いで、加熱速度を10℃/sec以上、均熱温度を、均熱中のオーステナイト相の体積分率が2%以上となる最低温度〜800℃、かつ均熱時間を60sec以下とする連続焼鈍を行い、450℃までの冷却速度30℃/sec以上で冷却し、さらに、250〜450℃で30sec以上保持する過時効処理を行い、圧下率20%以下で2次冷間圧延することを特徴とするノンイヤリング性に優れる缶用鋼板の製造方法。
  3. C:0.010〜0.05wt%、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.04wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.005〜0.150wt%およびN:0.0150wt%以下を含み、かつCu:0.5wt%以下、Ni:0.5wt%以下、Cr:0.5wt%以下およびMo:0.5wt%以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0wt%以下の範囲で含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を用いる請求項1または2に記載のノンイヤリング性に優れる缶用鋼板の製造方法。
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