JP4284636B2 - 金属基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大電流容量のパワー半導体デバイスに適用する金属絶縁基板に関し、特に、金属絶縁基板に用いる金属基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、大電流容量のパワー半導体デバイスでは、回路基板に半導体素子、およびその他の電子部品を実装した構成を有する。そして、このパワー半導体デバイスの回路基板には、通常の絶縁基板に比べて高い放熱性を示す金属絶縁基板が多用されている。図1は、従来の代表的な金属絶縁基板の構造を示す側面断面図である。図1に示すように、金属絶縁基板1は、銅板またはアルミニウム板などの金属板1aの上に絶縁層1b、および銅箔からなる回路パターン1cを積層することにより形成される。なお、図中、符号2は銅箔パターン1cの上に実装された半導体素子などの電子部品である。
【0003】
図1に示すように、電子部品2により発生した熱は、その大半が電子部品2をマウントした配線パターン1cに伝熱した後、さらに絶縁層1b、金属板1aを伝熱経路として、金属板1aに伝熱結合したヒートシンクなどの放熱部材3に移動し放熱する。パワー半導体デバイスの電流容量の増大に伴い、金属絶縁基板1には、より高い放熱性が要求されるようになっている。
【0004】
しかし、従来までの金属絶縁基板を用いてパワー半導体デバイスを構成すると、チップの発熱により、チップを配置した部分の基板温度が他の部分に比べて極端に上昇してしまう。その結果、金属絶縁基板に大きな熱歪みが発生し、パワーサイクルによってチップ下のハンダ部分の破壊、剥離が生じる。また、金属絶縁基板にチップを密に配置すると、お互いの発熱によりチップ温度が上昇し、チップの保証温度範囲を超えてしまう場合がある。そのため、電子部品を実装する基板の放熱対策として、熱移動量を増大させるため、伝熱媒体を充填させた伝熱経路を埋め込んだ金属板を、金属絶縁基板に積層させた構造が従来から検討されている。
【0005】
例えば、特開平5−121846号公報、特開平6−342992号公報では、プリント配線基板と、伝熱媒体で充填された伝熱経路とを組み合わせた構造を開示している。しかし、これらの構造は、いずれもプリント回路基板を基にして、伝熱媒体で充填された伝熱経路を有する金属板をプリント配線基板の絶縁層に埋め込んであったり、伝熱媒体を封止した長穴を作製した金属板をプリント配線基板で挟み込んだものである。そのため、これらの構造では、伝熱媒体を封止した長穴を形成するための金属板やプリント配線板に接着するための接着剤層を介して伝熱するため、伝熱媒体を封止した長穴までの熱伝導が悪く放熱性が低かった。また、伝熱媒体を封止した長穴自身の厚さにより基板全体が厚くなり、電子機器の薄膜化に対して問題があった。
【0006】
特開2000−13845号公報では、伝熱媒体を封止した長穴内蔵プリント配線基板を開示している。開示された長穴内蔵プリント配線基板は、多層からなるプリント配線基板の基板内層でグラウンドを構成する金属層に伝熱媒体を封止した長穴を一体化して形成した構造を有する。しかし、プリント配線基板が多層構造であるため伝熱媒体を封止した長穴までの熱伝導が悪く、また、伝熱媒体を封止した長穴の形成が困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の金属絶縁基板は、伝熱経路と金属基板とが別に構成されるか、または多層構造として構成されるため、電子部品からの熱伝導が悪く、放熱性が低いという解決すべき課題がある。また、近年の半導体デバイスの小型化、特に薄型化の要求により、基板のサイドに放熱部材を構成する構造が求められている。そのため、熱歪みを少なくする放熱性に優れた金属絶縁基板とともに、そのような基板を作製する簡便な製造方法が求められている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、放熱性に優れた金属絶縁基板、特に金属絶縁基板用の金属基板およびその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、金属の押し出し成形によって得られた、内部に空間を有する金属板を用いることにより放熱性に優れた新規な金属基板、さらに金属絶縁基板を完成するに至った。すなわち、本発明にもとづく金属基板は、金属基板と、該金属基板上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上に設けられた導電性材料からなる配線パターンとを少なくとも有し、その表面に上記配線パターンにより機能する電子部品が搭載されたパワー半導体デバイスに適用される金属絶縁基板用の金属基板に向けたものであり、該金属基板が、内部に伝熱媒体が充填された空間を有し、該空間内に充填された前記伝熱媒体が、前記金属基板上に積層された絶縁層と、該絶縁層上に設けられた導電性材料からなる配線パターンとを介して、該配線パターン上に搭載された前記配線パターンにより機能する電子部品の発熱を移動させることを特徴とする。
【0010】
ここで、上記伝熱媒体が充填された空間は、上記金属基板の表面に基板を貫通する互いに独立した複数の長穴と、これらの長穴の両開放端部を密閉する封止部材とにより構成され、前記基板内を貫通する複数の長穴に1対1で対応するくぼみが形成された封止部材により密閉された、互いに独立した空間からなることが好ましい。
【0011】
また、上記伝熱媒体が充填された空間は、前記基板を貫通する複数の長穴の一方の端部に配置される隣接する長穴同士を連通させる流路を有する封止部材、他方の端部に配置される隣接する長穴同士を連通させる流路および両端の長穴を連通する穴を有する封止部材、ならびに前記両端に配置された穴同士を連通させる流路を有する封止部材により構成されている、連続した流路であることが好ましい。
【0012】
また、上記金属基板には、空間中の伝熱媒体により移動される熱を外部に放出するための放熱部材が取り付けられていることが好ましい。
【0013】
また、上記伝熱媒体が充填された空間が、伝熱媒体が充填された空間と放熱フィンで構成される放熱部材の空間と連通流路により相互に連通していることが好ましい。
【0014】
さらに、上記放熱部材が、金属基板の両側面部に、上部に向かって折り曲げられた立上部として配置されていることが好ましい。
【0015】
本発明にもとづく金属絶縁基板用の金属基板の製造方法は、金属基板と、該金属基板の上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上に設けられた導電性材料からなる配線パターンとを少なくとも有し、その表面に形成した配線パターンに接続される電子部品を搭載させるとともに、該電子部品からの発熱を容易に移動させることのできる金属絶縁基板用の金属基板に向けた方法であり、金属の押し出し成形によって、押し出し方向に延在する少なくとも1つの空間を有する金属基板を形成する工程と、上記空間に伝熱媒体を充填する工程と、上記伝熱媒体が充填された空間を密閉する工程とを有することを特徴とする。
【0016】
ここで、上記金属基板の内部に延在し、かつ伝熱媒体が充填される少なくとも1つの空間を、該空間に対応する少なくとも1つのくぼみを有する封止部材を用いて密閉することが好ましい。
【0017】
また、上記金属基板の内部に延在し、かつ伝熱媒体が充填される少なくとも1つの空間が複数であり、該複数の空間を、該空間同士を連通させる少なくとも1つの流路を有する封止部材を用いて密閉することが好ましい。
【0018】
また、上記電子部品からの発熱を外部に逃すための放熱部材を、上記金属基板の少なくとも一部に固定する工程をさらに有することが好ましい。
【0019】
また、上記放熱部材は、該放熱部材の内部に延在し、かつ伝熱媒体が充填される少なくとも1つの空間を有することが好ましい。
【0020】
さらに、上記金属基板の内部に延在し、かつ伝熱媒体が充填される少なくとも1つの空間を、該空間と上記放熱部材の内部に延在する少なくとも1つの空間とを連通させる流路を有する封止部材を用いて密閉することが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明にもとづく金属絶縁基板用の金属基板について説明する。図2は、本発明にもとづく金属基板の構造を示す模式的断面図である。図2に示すように、本発明にもとづく金属基板10は、金属基板10と、該金属基板10の上に積層された絶縁層20と、該絶縁層20の上に設けられた導電性材料からなる配線パターン30とを少なくとも有し、その表面に前記配線パターン30により機能する電子部品40を搭載させる金属絶縁基板用の金属基板であって、金属基板10が、前記電子部品40の発熱を移動させる伝熱媒体11が充填された空間12を有することを特徴とする。このように金属基板10に該基板と一体化された空間12が存在することによって、電子部品40からの発熱を効率的に放熱することが可能となる。
【0022】
金属基板10の内部に形成され、伝熱媒体11が充填される空間12は、特に限定されるものではないが、放熱効率の見地から、金属基板10の内部に広範囲に広がり、かつ複数に区切られていることが好ましい。例えば、金属基板10の表面に対して平行方向に延び、かつ並列される複数の長穴から空間12を形成することができる。本発明にもとづく金属基板に適当である内部に空間を有する金属基板は、アルミニウム、銅などの金属を押し出し成形することにより容易に得られる。金属の押し出し成形によって金属基板の内部に形成される少なくとも1つの空間は、伝熱媒体によって充填され、封止部材によって密閉されることにより伝熱経路となる。
【0023】
ところで、金属の押し出し成形によって金属基板の内部に形成される少なくとも1つの空間は、押し出し方向に対して平行に金属基板を貫通している。そのため、金属基板内を貫通する空間を密閉するために用いる封止部材の形状を適宜変更することにより、様々な伝熱経路を形成することが可能である。
【0024】
以下、図面を参照しながら、金属基板内に形成される空間について例示する。
【0025】
図3は、本発明にもとづく金属基板の一例を示す平面図である。また、図4は図3のA−A’断面図、図5は図3のB−B’断面図である。これらの図から分かるように、金属基板10内に形成された空間12は、金属基板の表面に平行な方向に延びる互いに独立な複数の長穴から構成されている。この独立な複数の長穴は、金属基板を貫通する複数の空間と、該複数の空間に1対1で対応するくぼみ13aが形成された封止部材13とによって構成されている。
【0026】
図6は、本発明にもとづく金属基板の一例を示す平面図である。また、図7は図6のC−C’断面図、図8は図6のD−D’断面図、図9は図6のE−E’断面図、図10は図6のF−F’断面図、図11は図6のG−G’断面図である。これらの図から分かるように、金属基板10の内部に形成された空間12は、金属基板10の表面に平行な方向に延びる連続した流路から構成されている。この連続した流路は、金属基板10を貫通する複数の空間と、該複数の空間のうち隣接する空間同士を連通させる流路14aを有する封止部材14と、隣接する空間同士を連通させる流路15aおよびこの流路15aの端部に連通する穴15bを有する封止部材15と、さらにそれぞれの穴15b同士を連通させる流路16aを有する封止部材16とから構成されている。
【0027】
本発明にもとづく金属基板は、金属板の内部に金属板と一体化された空間が存在するため優れた放熱性を有するが、必要に応じて金属基板の少なくとも一部に放熱部材を取り付けてもよい。放熱部材を取り付けることにより、金属基板内の空間に充填された伝熱媒体によって移動される熱をさらに効率良く外部に放出することが可能となる。放熱部材の一例として、複数のフィンを有するヒートシンクが挙げられる。しかし、放熱部材は、ヒートシンクに限定されるものではなく、外部に熱を効率良く逃すことのできるいかなる部材であってもよい。本発明の好ましい実施形態では、放熱部材は内部に伝熱媒体が充填された空間を有する。このような放熱部材内の空間は、金属基板内の空間と同様にして容易に形成することができる。すなわち、放熱部材内の空間は、放熱部材の材料を押し出し成形することにより放熱部材内に貫通する少なくとも1つの空間を形成し、該空間に伝熱媒体を充填させた後に封止部材によって密閉することによって形成することができる。
【0028】
本発明にもとづく金属基板の好ましい実施形態では、金属基板内の空間は放熱部材の内部にまで連通している。金属基板内の空間が放熱部材と連通することで、金属絶縁基板の上に搭載される電子部品からの発熱は放熱部材まで良好に放熱され、金属絶縁基板の放熱特性をより向上させることが可能となる。金属基板内の空間と放熱部材内の空間とを連通させる流路を有する封止部材を用いることにより、それぞれの空間を容易に連通させることができる。このような実施形態について、以下、図面を参照しながら例示する。
【0029】
図12は、金属基板の内部に形成される空間が放熱部材にまで拡張された金属基板の一例を示す模式的断面図である。図12から分かるように、金属基板10を貫通する空間は、貫通する空間の一方に設けられた、空間に対応するくぼみを有する封止部材と、空間の他方に設けられた、金属基板10内の空間12aと放熱部材50内の空間12bとを基板の下面で連通させる流路を有する封止部材とによって連通され、かつ密閉されている。
【0030】
図13は、金属基板の内部に形成される空間を放熱部材にまで拡張した金属基板の別の形態を例示する斜視図である。図14は図13のH−H’断面図である。図14から明らかなように、金属基板10を貫通する空間は、この貫通する空間の両端に設けられた金属基板内の空間12aと放熱部材50内の空間12bとを側面で連通させる流路17aを有する封止部材17によって連通され、かつ密閉されている。
【0031】
一般に、放熱部材は金属基板の背面に設けられるが、本発明にもとづく金属基板は、金属基板内に伝熱経路となる空間が広範囲にわたって形成されているため、放熱部材を基板の側面に設置しても良好な放熱を達成することが可能となる。また、本発明にもとづく金属基板は、金属板の内部に放熱媒体が充填された空間が金属板と一体化されているため、金属板の内部に空間を維持しながら容易に加工することも可能である。図15は、側面に放熱部材が設置された金属基板の一例を示す模式的断面図である。図15に示した金属基板10は、金属基板10の両端が上部に向かって折り曲げられ、該折り曲げ部分にそれぞれ放熱部材50が設置されている。このように金属基板を構成することにより、放熱部材を金属基板の背面に設けた場合と比較してモジュール全体の厚さを薄くすることが可能となる。また、図15から分かるように、折り曲げられた部分にも連続した空間12が形成されているため、良好な放熱を達成することが可能となる。したがって、本発明にもとづく金属基板によれば、モジュール全体を薄型化できるだけでなく、放熱部材50への伝熱が良好に達成されるため放熱特性をさらに向上させることが可能となる。
【0032】
本発明にもとづく金属基板は、伝熱経路となる伝熱媒体が充填された空間が金属基板内に一体化されていることを除き、当業界で公知の技術を用いて構成することができる。本発明にもとづく金属基板を用いて構成される金属絶縁基板の一例として図2を参照されたい。図2に示したように、本発明にもとづく金属基板10の上に、少なくとも絶縁層20、配線パターン30を慣用の方法を用いて順次設けることにより放熱性に優れた金属絶縁基板を形成することが可能である。
【0033】
金属基板の材料としては、特に限定されるものではないが、加工性、伝熱性に優れたアルミニウムまたは銅が好ましい。
【0034】
また、絶縁層の材料としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの電気絶縁性の高分子樹脂が挙げられる。絶縁層の熱伝導を向上させるために、電気絶縁性のセラミックスフィラーなどを樹脂中に添加してもよい。フィラーは、特に限定されるものではないが、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、またはそれらの混合物などが適当である。本発明の好ましい実施形態では、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂とセラミックスフィラーとを組み合わせて絶縁層を形成する。そのことにより、電気絶縁性、放熱特性をかねそろえた金属絶縁基板を達成することができる。さらに、配線パターンは、銅箔などの導電性材料を用いて形成する。
【0035】
以上説明したように、本発明にもとづく金属基板を用いて金属絶縁基板を構成することにより電子部品からの発熱を良好に放熱することが可能となる。その結果、熱による基板の歪み、および電子部品の温度上昇を著しく改善することが可能となる。また、本発明にもとづく金属基板を用いることで、モジュール全体の小型化および薄型化を達成することが可能となる。
【0036】
次に、本発明にもとづく金属絶縁基板用の金属基板の製造方法について説明する。本発明にもとづく金属基板の製造方法は、金属基板と、該金属基板の上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上に設けられた導電性材料からなる配線パターンとを少なくとも有し、その表面に形成した配線パターンに接続される電子部品を搭載させるとともに、該電子部品からの発熱を容易に移動させることのできる金属絶縁基板用の金属基板に向けたものであり、金属の押し出し成形によって、押し出し方向に延在する少なくとも1つの空間を有する金属板を形成する工程と、前記空間に伝熱媒体を充填する工程と、前記伝熱媒体が充填された空間を密閉する工程とを有することを特徴とする。
【0037】
先に説明したように、金属の押し出し成形によって金属基板の内部に形成される少なくとも1つの空間は、金属基板を基板表面に対して平行に貫通している。そのため、貫通した空間の両端を密閉するために、空間の封止部材を設ける必要がある。封止部材に、空間に対応するくぼみ、または空間同士を連通させる流路を設けることにより、金属基板内に伝熱経路となる様々な空間を形成することができる。本発明の製造方法によって作製された金属基板のいくつかの例として、先に説明した図3、6を参照されたい。例えば、図3の金属基板に用いられた封止部材13は、金属基板を貫通する複数の空間に1対1で対応するくぼみ(図中、参照符号13a)が形成されている。また、図6の金属基板に用いられた封止部材は、例えば、図8に示すように金属基板を貫通する複数の空間のうち隣接する空間同士を連通させる流路14aが形成されている。このような封止部材を適宜組み合わせることによって様々な伝熱経路となる密閉空間を形成することが可能となる。
【0038】
本発明の製造方法によれば、既に説明したように内部に伝熱媒体が充填された少なくとも1つの空間を有する放熱部材を金属基板の少なくとも一部に設け、そのような放熱部材内の空間と、金属基板内の空間とを連通させる流路を有する封止部材を用いることが好ましい。かかる封止部材を用いて空間同士を連結、かつ密閉することにより放熱性をさらに向上させた金属基板を提供することが可能となる。金属基板内の空間と、放熱部材内の空間とを連通、かつ密閉する封止部材を用いて作製された金属基板の一例として図12および図14を参照されたい。このような放熱部材50の内部まで連通する空間12の形成について、以下、図14を参照しながら簡単に説明する。先ず、放熱部材50の上に、配線を施した金属基板10を積層し、ねじ止め(図示していない)して固定する。次いで減圧しながらそれぞれの空間12aおよび12bに伝熱媒体11を注入し、さらに、伝熱媒体11が注入されたそれぞれの空間の端部に連結流路17aを有する封止部材17をはめてエポキシ樹脂などの接着剤で固定する。
【0039】
以上、押し出し成形によって形成された金属基板内に延在する空間を密閉するために用いる封止部材の形状を例示した。しかし、封止部材の形状は、封止部材内部に金属基板内の空間に対応するくぼみ、または空間同士を連通させる流路を有することを除き、特に限定されるものではない。封止部材の材質としては、エポキシ樹脂、シリコーンなどの樹脂、またはゴム、金属などが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、気密性に優れた材質であればよい。
【0040】
本発明にもとづく金属基板内の熱伝達は、金属基板の空間に充填された媒体の蒸発および凝縮によりなされる。したがって、ヒートパイプの技術分野で慣用に使用されるいかなる媒体であってもよい。例えば、住友スリーエム株式会社製のフロリナート(商品名)などのフッ素系不活性液体が挙げられるが、充填時の減圧度を変えることでアルコールや水を適用することもできる。
【0041】
上述の方法にもとづいて作製された金属基板を金属絶縁基板のベース基板として使用することにより、電子部品からの発熱を効率良く放出することができる。このような金属絶縁基板は、上述の方法によって製造される金属基板の上に、絶縁層、配線パターンを当業者に周知の技術を用いて順次設けることにより製造可能である。以下、本発明にもとづく金属基板とあわせて金属絶縁基板の製造方法について簡単に説明する。図16は金属絶縁基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。図16に示したように、アルミニウムなどの金属を押し出し成形することにより、内部に貫通した少なくとも1つの空間を有する金属基板を形成する。次いで、別工程において絶縁層となるプリプレグシートを製造し、得られたプリプレグシートと、配線パターンとなる銅箔とを金属基板の上に順次積層した後、加熱プレスすることにより絶縁層を硬化させる。次いで、銅箔をエッチングすることにより配線パターンを形成する。次いで、上述の加工を施した金属基板の内部に形成された少なくとも1つの空間に伝熱媒体を充填した後、封止部材によって空間を密閉する。この製造方法では、金属基板を製造する途中で(空間を密閉する前に)金属基板に絶縁層、配線パターンを設けたが、金属基板内の空間を密閉した後に種々の加工を施すことも可能である。そのため、押し出し成形によって形成された空間に、確実に伝熱媒体が充填され、さらに伝熱媒体が充填された空間を確実に密閉できる範囲において、上述の製造方法を適宜変更することが可能である。
【0042】
以上説明したように、本発明にもとづく金属基板の製造方法によれば、放熱特性に優れ、小型化および薄型化を実現し得る金属基板を低コストで製造することができる。
【0043】
以下、本発明にもとづく金属基板およびその製造方法について、実施例により詳細に述べるが、これらは本発明を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0044】
(実施例1)
本実施例は、図3に示した金属基板の実施態様に関する。
【0045】
まず、所定量のエポキシ樹脂と、酸化ケイ素フィラーと、溶剤とをそれぞれ秤量し、混練機で混合した。次に、得られた混合物をドクターブレード法によりシート状に成形し、乾燥させることにより、絶縁層となる厚さ180μmのプリプレグシートを作製した。
【0046】
別の工程で、アルミニウムを押し出し成形することにより、内部にφ1mmの空間を有する、外形100×80mm、厚さ2mmのアルミニウム板を作製した。次いで、得られたアルミニウム基板にアルマイト処理を施し、アルミニウム表面を粗化させた。
【0047】
上述のようにして得られたアルミニウム基板の上に、先に作製したプリプレグシート、さらに市販の35μm厚さの片面電解銅箔を順次積層し、加熱プレス成形を行った。加熱プレス成形機を用い、加圧力4MPa、温度180℃で30分保持し、絶縁層を硬化させた。硬化後の絶縁層の厚さは150μmであった。次いで絶縁層の上に設けられた銅箔を所定のパターンにエッチングすることにより配線パターンを形成した。なお、封止部材は、エポキシ樹脂を成形金型に流し込んだ後に硬化させることにより作製した。
【0048】
最後に、減圧しながら空間に伝熱媒体として住友スリーエム株式会社製のフロリナート(商品名)を注入し、さらに空間の端部に図3中、参照符号13で示される形状のエポキシ製の封止部材を接着剤で固定することにより、金属基板内に伝熱経路となる伝熱媒体が充填された空間を形成した。
【0049】
上述のようにして得られた金属絶縁基板の放熱性を評価するために、図17に示すように半導体素子を実装した。図17に示すように、金属絶縁基板の中心に1mm厚さの銅からなるヒートスプレッタ60をハンダ付けし、その上に半導体素子40としてダイオードチップを6個並べてハンダ付けした。さらに、金属絶縁基板の背面(すなわち、アルミニウム基板の下面)に、高さ150mmのアルミニウム製ヒートシンクを取り付けて、簡易モジュールを作製した。作製されたモジュールの概略を図18に示す。次いで、実際に半導体素子に1000回繰り返し電圧を印加するパワーサイクル試験を行い、ハンダ部の破壊、剥離、基板の破壊などを確認した。また、半導体素子に電圧を印加し、基板の温度分布を熱電対で測定した。測定箇所は、図17のように基板中心のA、素子脇のヒートスプレッダ上のB、基板中心Aから20mm離れた所のC、同様に40mm離れた所のD、30mmずれて20mm離れた所のE、30mmずれて40mm離れた所のFである。試験結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
本実施例は、図6に示される金属基板の実施態様に関する。
【0051】
伝熱媒体が充填される空間を密閉するために用いる封止部材の形状が異なること以外は、実施例1と同様の手順で金属絶縁基板を作製した。すなわち、押し出し成形によってアルミニウム基板内部に形成され、住友スリーエム株式会社製のフロリナート(商品名)が注入される空間の端部に、図8、9および10に示した形状を有するエポキシ製の封止部材を設けてエポキシ系接着剤で固定した。
【0052】
上述のようにして得られた金属絶縁基板の放熱性を評価するために、実施例1と同様にして簡易モジュールを作製してパワーサイクル試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
通常の金属基板の作製方法により、基板内に伝熱媒体が充填された空間を持たない通常のアルミニウム基板を作製した。得られたアルミニウム基板の上に、実施例1と同様に絶縁層と、配線パターンとを形成し、通常の金属絶縁基板を作製した。
【0054】
上述のようにして得られた金属絶縁基板の放熱性を評価するために、実施例1と同様にして簡易モジュールを作製してパワーサイクル試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
Figure 0004284636
【0056】
※1)パワーサイクル試験は、電圧印加3分、印加なし3分を1000回繰り返して実施した。
※2)各温度は、周囲温度25℃で熱電対による実測値であり、電圧印加の10分後に測定したものである。
【0057】
表1から明らかなように、実施例1および2で作製された内部に伝熱媒体が充填された空間を有する金属基板を用いて構成された簡易モジュールは、比較例1で作製された通常の金属基板を用いたモジュールと比較して、熱の広がりが大きいことが分かる。実施例1のモジュールでは、半導体素子付近であるB地点(図17を参照)の局所的な温度の上昇が著しく抑えられている。これにより、半導体素子の加熱を防ぐことができる。実施例2のモジュールでは、EおよびF地点でも大きな温度の上昇が見られ、2次元的な熱の広がりが増したことが分かる。このように、基板内に形成される空間を図6に示されるような流路とすることにより半導体素子付近のB地点の局所的な温度の上昇をさらに抑えることができた。
【0058】
(実施例3)
本実施例は、金属基板内の空間が放熱部材の内部まで連通する実施態様に関する。
【0059】
最初に、アルミニウムの押し出し成形により内部に空間を有するヒートシンクを作製した。このヒートシンク上に、銅箔のエッチングまで実施例1と同様にして加工を施すことにより得られた金属絶縁基板を積層し、ねじ止めして固定した。次いで、減圧しながらそれぞれの空間内に住友スリーエム株式会社製のフロリナート(商品名)を注入した後、ヒートシンクと金属絶縁基板の端部に、それぞれの空間同士を連通する流路を有する図14中、参照符号17で示されるようなエポキシ製封止部材をはめてエポキシ系接着剤で固定した。なお、封止部材は、エポキシ樹脂を成形金型に流し込んだ後に硬化することによって作製した。
【0060】
このようにして得られたヒートシンクの内部まで空間が広がる金属絶縁基板の上に、実施例1と同様にして6個の半導体素子の実装を行うことにより簡易モジュールを作製した(図14を参照)。半導体素子の配列は、図17を参照されたい。このモジュールについて実施例1と同様にしてパワーサイクル試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0061】
(実施例4)
本実施例は、本発明にもどつく金属基板を用いて構成される基板側面にヒートシンクを備えた金属絶縁基板に関する。
【0062】
実施例1と同様にして伝熱媒体が充填された空間を基板内に有する金属基板を形成した。その際、金属基板は、基板の端部を折り曲げることを考慮して通常の大きさよりも長めに作製した。次に、この折り曲げ分を考慮して作製した金属絶縁基板の上に、実施例1と同様にして6個の半導体素子を実装した。半導体素子の配列は図17を参照されたい。次いで、金属絶縁基板の両端部を上部方向に90°に折り曲げ、折り曲げた部分にヒートシンクをねじ止めで固定した。このようにして、金属基板の両サイドにヒートシンクを設けた簡易モジュールを作製した(図15を参照)。このモジュールについて実施例1と同様にしてパワーサイクル試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
Figure 0004284636
【0064】
※1)パワーサイクル試験は、電圧印加3分、印加なし3分を1000回繰り返して実施した。
※2)各温度は、周囲温度25℃で熱電対による実測値であり、電圧印加の10分後に測定したものである。
【0065】
表2から分かるように、実施例3および4で作製されたモジュールは、いずれもパワーサイクル試験によってハンダ部や基板に破壊を生じることはなかった。なお、表2には、参考として実施例1で先に示した簡易モジュールの試験結果もあわせて示してある。
【0066】
実施例1で作製されたモジュールのB地点(図17を参照)の温度は118℃であるのに対し、実施例4で作製されたモジュールのB地点の温度は98℃であり、20℃低くなった。このことから、金属基板の空間をヒートシンクの内部まで連通させることによって、放熱性をさらに改善できることが分かった。
【0067】
金属基板の両端を折り曲げ、その両サイドにヒートシンクを設けて構成した実施例4で作製されたモジュールのB地点の温度は116℃であった。このことから、放熱部材を金属基板の側面に設けた場合であっても金属基板の背面にヒートシンクを固定した実施例1のモジュールに匹敵する放熱特性を達成可能なことが分かった。また、実施例1および4のモジュールの厚さは160mmであるのに対し、実施例4のモジュールの厚さは40mmであり、格段に薄い。このように背面にヒートシンクを有するモジュールとほぼ同じ放熱性能を持つモジュールを1/4の厚さで作製することができた。
【0068】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明にもとづく金属基板を用いて金属絶縁基板を構成することによって、従来の金属絶縁基板と比べて放熱性に優れ、熱による歪みが小さく、さらにチップ温度の上昇を抑えることが可能となる。また、本発明にもとづく金属基板の製造方法によれば、伝熱経路となる金属基板内の空間は、押し出し成形によって基板と一体化して容易に製造することができる。そのため、製造コストの面でも十分に実用に供し得る金属基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の金属絶縁基板の構造を示す側面断面図である。
【図2】本発明にもとづく金属基板を用いて構成される金属絶縁基板を模式的に示す側面断面図である。
【図3】本発明にもとづく金属基板の一例を示す平面図である。
【図4】図3のA−A’線断面図である。
【図5】図3のB−B’線断面図である。
【図6】本発明にもとづく金属基板の一例を示す平面図である。
【図7】図6のC−C’線断面図である。
【図8】図6のD−D’線断面図である。
【図9】図6のE−E’線断面図である。
【図10】図6のF−F’線断面図である。
【図11】図6のG−G’線断面図である。
【図12】本発明にもとづく金属基板を用いて構成されるモジュールの一例を示す側面断面図である。
【図13】本発明にもとづく金属基板を用いて構成されるモジュールの一例を示す斜視図である。
【図14】図13のH−H’線断面図である。
【図15】本発明にもとづく金属基板を用いて構成されるモジュールの一例を示す側面断面図である。
【図16】本発明にもとづく金属基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図17】パワーサイクル試験に用いるモジュールにおける半導体素子の配置と温度測定地点を示す模式図である。
【図18】本発明にもとづく金属基板を用いて構成されるモジュールの一例を示す側面断面図である。
【符号の説明】
10 金属基板
11 伝熱媒体
12 金属基板内に形成される空間
13、14、15、16、17 封止部材
13a 封止部材内に形成されたくぼみ
14a、15a、16a 連通流路
15b 連通穴
20 絶縁層
30 配線パターン
40 電子部品
50 放熱部材
60 ヒートスプレッタ

Claims (7)

  1. パワー半導体デバイスに適用される金属絶縁基板用の金属基板であって、該金属基板は、該金属基板表面に平行な方向に延び基板を貫通する互いに独立した複数の長穴を有する金属の押し出し成形によって得られた金属板と、該金属板の長穴の両開放端部を密閉するくぼみおよび/または連通流路を有するブロック状の封止部材と、該封止部材により密封された空間に充填された伝熱媒体とを少なくとも含み、前記伝熱媒体が、前記金属基板上に積層された絶縁層と、該絶縁層上に設けられた導電性材料からなる配線パターンとを介して、該配線パターン上に搭載された前記配線パターンにより機能する電子部品の発熱を移動させることを特徴とする金属基板。
  2. 前記伝熱媒体が充填された空間が、前記基板内を貫通する複数の長穴に1対1で対応するくぼみが形成された封止部材により密閉された、互いに独立した空間からなることを特徴とする請求項1に記載の金属基板。
  3. 前記伝熱媒体が充填された空間が、前記基板を貫通する複数の長穴の一方の端部に配置される隣接する長穴同士を連通させる流路を有する封止部材、他方の端部に配置される隣接する長穴同士を連通させる流路および両端の長穴を連通する穴を有する封止部材、ならびに前記両端に配置された穴同士を連通させる流路を有する封止部材により構成されている、連続した流路であることを特徴とする請求項1に記載の金属基板。
  4. 前記金属基板、伝熱媒体により移動される熱を外部に放出するための放熱部材がさらに取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の金属基板。
  5. 前記放熱部材が、伝熱媒体が充填された空間と放熱フィンで構成され、前記空間と前記金属基板内に配置された空間とが、連通流路により相互に連通していることを特徴とする請求項4に記載の金属基板。
  6. 前記放熱部材が、金属基板の両側面部に、上部に向かって折り曲げられた立上部として配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の金属基板。
  7. 前記封止部材が、エポキシ樹脂の成形品からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載された金属基板
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