JP4283953B2 - シール部材及びそれを用いたスクロール式流体機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空気圧縮機や空調機などに使用される冷媒圧縮機等に好適なシール部材及びそれを用いるスクロール圧縮機に関し、特に、旋回スクロール及び固定スクロールの渦部から作動流体の洩れを防止するシール部材及びそれを用いたスクロール式流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクロール式流体機械では、固定スクロールと旋回スクロールとの各渦部間に形成される複数の圧縮室を、旋回スクロールの旋回運動によって連続的に縮小させ、吹込みポートから吸込んだ流体を各圧縮室内で順次圧縮しつつ、この流体を吐出ポートから吐出する構造になっている。
【0003】
この時、各圧縮室には圧力差ができ、また、構造上各圧縮室には隙間があるため、各圧縮室から被圧縮流体の洩れが有り、この洩れ量の差でスクロール式流体機械の性能に大きな差が出てくる。この洩れを防ぐ有効な手段の一つが、旋回スクロール及び固定スクロールの渦の上面に凹溝を形成し、この溝内に相手側の渦の底面に摺接するシール部材を装着する方法である。
【0004】
シール部材で被圧縮流体の洩れを防ぐには、シール部材を相手側渦の底面に押付ける必要があるが、これには、渦の上面の凹溝と該チップシールとの間にばねを入れる方法、または特開平8−114188号公報に開示されているように、シール部材を弾性体にし、その弾性力で押付ける方法等が有るが、実用的で、且つ、有効な方法は、相隣合う圧縮室の被圧縮流体の圧力差を利用する方法である。
【0005】
然るに、この相隣合う圧縮室の圧力差を利用する方法は、スクロール流体機械の圧縮機構上各圧縮室の圧力差の小さい吸込みポート近くの圧縮室では、渦の上面の凹溝と該チップシールとの間の隙間からの被圧縮流体の洩れが大きいと、更に圧力差が出来ないため、該チップシールを相手側渦の底面に押付ける力がほとんど働かず、このため、相手側渦の底面とこのチップシールとの間から被圧縮流体が洩れ、スクロール式流体機械の性能を低下させるおそれがある。さらに、この方法によれば、渦の上面の凹溝とチップシールとの間の隙間から被圧縮流体が洩れ、スクロール式流体機械の性能を低下させるおそれがある。
【0006】
そこで、上記の不具合を解決するために、例えば、実開平2−147887号公報、実開平2−147888号公報及び特開平3−11101号公報に開示されたように、シール部材の側面と底面側にそれぞれシール部材の長さ方向に離間して複数の切込みを入れて、シール部材の側面と底面側とに複数の側面リップ部と複数の底面リップ部を形成し、被圧縮流体の洩れを防ぐようにしている。
【0007】
また、吸込みポート近くの圧縮室で、チップシールを相手側渦の底面に押付ける力がほとんど働かない不具合を解決するために、例えば、特開平8−93669号公報では、吸込みポート近くのチップシールの側面には切込みを入れず、チップシールの動く抵抗を少なくし、チップシールを相手側渦の底面に押付けている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、図1から図3に基づき説明するように下記の不具合があった。チップシールによる被圧縮流体のシール状況を、図1に示す。被圧縮流体の圧力差によりチップシール3が相手側渦の底面7に押付けられて渦の上面6と底面7の間の隙間を塞いでいる。これとともに、チップシール3に入れた切込みにより成形されるリップ4、5が、渦の上面6の凹溝8に接触し、凹溝8とチップシール3との隙間を塞ぎ、被圧縮流体の洩れを防いでいる。しかし、図2に示すように、チップシール21の側面と底面の切込み位置が離れていると、この間の隙間25から被圧縮流体が洩れるおそれがあり、漏れた場合にはスクロール式流体機械の性能が低下する。
【0009】
これを、図3に示すように、チップシールの側面と底面の切込み位置を一致させれば、このおそれは解消されるが、この場合でも、各切込みにより形成されるリップ26、27の間から被圧縮流体は洩れる可能性があり、漏れた場合にはスクロール式流体機械の性能が低下する。また、上述したように、チップシールの各切込みにより形成されるリップ26、27の間から被圧縮流体が漏れると、元々被圧縮流体の圧力差の小さい吸込みポート近くの各圧縮室には被圧縮流体の圧力差がほとんど生じない。この場合には、チップシール21が相手側渦の底面に押付けられず、それぞれの渦の底面と上面から被圧縮流体の洩れが生じる恐れがある。
【0010】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的はチップシールからの漏れを防止して圧縮機性能を向上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためにの本発明の第1の特徴は、スクロール式流体機械が有する渦部の上面に形成された凹溝内に装着されるスクロール式流体機械のシール部材において、このシール部材が凹溝底面と接触する第1の面の切込みの開始位置と、このシール部材の作動流体の高圧側の第2の面の切込みの開始位置とを実質的に一致させ、第1の面に第2の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込みを形成するとともに、第2の面に第1の面の反対側の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度の切込みを形成したものである。
【0012】
そして好ましくは、シール部材の第1の面は、作動流体の高圧側の面より低圧側の面の方が0.1〜0.3mm深く切り込まれ、前記第2の面は、前記第1の面よりこの第1の面の反対側の面の方が0.1〜0.3mm深く切込まれているものである。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の第2の特徴は、スクロール式流体機械が有する渦部の上面に形成された凹溝内に装着されるスクロール式流体機械のシール部材において、このシール部材が凹溝底面と接触する第1の面と、このシール部材の作動流体の高圧側の第2の面とのいずれかに切り込みを形成し、第1の面に切り込みを形成するときは第2の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込み、第2の面に切り込みを形成するときは第1の面の反対側の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込むものである。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の第3の特徴は、上記いずれかのシール部材をクロール式流体圧縮機に用いるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面の図4ないし図6を用いて説明する。図4は、チップシールの部分拡大斜視図である。チップシール部材21の相手側渦の底面と接触する面と反対側の面(第1の面)22の切込みの開始位置と、チップシール部材21の圧縮流体の高圧側の面(第2の面)23の切込みの開始位置とを一致させ、チップシール部材の相手側渦の底面と接触する面と反対側の面22に、圧縮流体の高圧側の面23を基準として被圧縮流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込む。また、チップシール部材の圧縮流体の高圧側の面23に相手側渦の底面と接触側の面を基準として被圧縮流体の洩れる方向に91〜105度の角度で、切込みを入れたチップシール部材にする。
【0016】
他の例としては、チップシール部材21の相手側渦の底面と接触する面と反対側の面22は、圧縮流体の高圧側の面23より低圧側の面の方が1〜0.3mm深く切込みを入れたチップシール部材、及びチップシール部材21の圧縮流体の高圧側の面23は、相手側渦の底面と接触側の面と反対側の面22より相手側渦の底面と接触側の面の方が0.1〜0.3mm深く切込みを入れたチップシール部材にする。
【0017】
チップシールをこのような形状にすると、図4に示すように切込みにより形成されるリップの立上りが、チップシールの入っている凹溝の反接触側に傾くため、チップシールの側面と底面に形成されたリップ間の洩れ面積5が50〜70%低減され、被圧縮流体の洩れが少なくなり、被圧縮流体の圧力差の小さい吸込みポート近くの各圧縮室でも、チップシールが相手側渦の底面に押付けられ、さらに被圧縮流体の洩れが少なくなり、スクロール式流体機械の性能を3〜5%向上可能である。
【0018】
なお、チップシールに上記以上の角度で切込みを入れると、またはチップシールに上記以上の切込み深さ差を付けると、被圧縮流体による力によりチップシールを相手側渦の底面より離す力が働くのと、チップシールと相手側渦の底面との接触面積が小さくなり、スクロール式流体機械の性能が低下する。
【0019】
上記実施例をさらに具体的に、以下に説明する。図5に、スクロールの渦部28とこれに装着されるチップシール21を示す。図6に、このチップシール21の拡大図を示す。図6に示すように、チップシール部材の第1の面22の切込みの開始位置と、チップシール部材の第2の面23の切込みの開始位置とを一致させ、チップシール部材21の第1の面22に、第2の面23を基準として作動流体である被圧縮流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込みを設ける。チップシール部材1の第2の面23に第1の面の反対面を基準として被圧縮流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切込みを入れる。この結果、切込みにより形成されたリップはチップシールの入っている凹溝の反接触側に傾き、チップシールの2つの面に形成されたリップ間の洩れ面積5が50〜70%低減され、被圧縮流体の洩れを低減可能となり、被圧縮流体の圧力差の小さい吸込みポート近くの各圧縮室でもチップシールが相手側渦の底面に押付けられ、被圧縮流体の洩れを防止でき、スクロール式流体機械の性能を3〜5%向上可能となる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、スクロール式流体機械の渦先端の凹溝に装着するシール部材が、被圧縮流体の洩れを小さくするので、スクロール式流体機械の性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクロール流体機械のチップシール部の詳細を示す断面図面である。
【図2】従来のチップシールの部分斜視図である。
【図3】従来のチップシールの部分斜視図である。
【図4】本発明に係るチップシールの一実施例の部分斜視図である。
【図5】本発明に係るスクロール式流体機械の渦部の部分斜視図である。
【図6】本発明に係るチップシールの一実施例の部分斜視図である。
【符号の説明】
11…旋回スクロールの渦部、
12…固定スクロールの渦部、
13…チップシール、14…リップ、15…リップ、
16…渦の上面、17…渦の底面、18…凹溝、
21…チップシール、22…第1の面、23…第2の面、
24…凹溝、25…洩れ面積、28…スクロールの渦。
Claims (4)
- スクロール式流体機械が有する渦部の上面に形成された凹溝内に装着されるスクロール式流体機械のシール部材において、このシール部材が前記凹溝底面と接触する第1の面の切込みの開始位置と、このシール部材の作動流体の高圧側の第2の面の切込みの開始位置とを実質的に一致させ、前記第1の面に第2の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込みを形成するとともに、前記第2の面に前記第1の面の反対側の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度の切込みを形成したことを特徴とするシール部材。
- 前記シール部材の第1の面は、作動流体の高圧側の面より低圧側の面の方が0.1〜0.3mm深く切り込まれ、前記第2の面は、前記第1の面よりこの第1の面の反対側の面の方が0.1〜0.3mm深く切込まれていることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
- スクロール式流体機械が有する渦部の上面に形成された凹溝内に装着されるスクロール式流体機械のシール部材において、このシール部材が前記凹溝底面と接触する第1の面と、このシール部材の作動流体の高圧側の第2の面とのいずれかに切り込みを形成し、前記第1の面に切り込みを形成するときは第2の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込み、前記第2の面に切り込みを形成するときは前記第1の面の反対側の面を基準として作動流体の洩れる方向に91〜105度の角度で切り込むことを特徴とするシール部材。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシール部材を使用したことを特徴とするスクロール式流体圧縮機。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP30202099A JP4283953B2 (ja) | 1999-10-25 | 1999-10-25 | シール部材及びそれを用いたスクロール式流体機械 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30202099A JP4283953B2 (ja) | 1999-10-25 | 1999-10-25 | シール部材及びそれを用いたスクロール式流体機械 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JP2001123970A JP2001123970A (ja) | 2001-05-08 |
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Family
ID=17903939
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP30202099A Expired - Lifetime JP4283953B2 (ja) | 1999-10-25 | 1999-10-25 | シール部材及びそれを用いたスクロール式流体機械 |
Country Status (1)
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JPH0696961B2 (ja) * | 1989-06-09 | 1994-11-30 | 岩田塗装機工業株式会社 | スクロール流体機械 |
-
1999
- 1999-10-25 JP JP30202099A patent/JP4283953B2/ja not_active Expired - Lifetime
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