JP4282795B2 - 可飽和リアクトル及びそれを用いた直流安定化電源 - Google Patents

可飽和リアクトル及びそれを用いた直流安定化電源 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の透磁率比をもつ可飽和リアクトルを使用することにより、出力電圧誤差検出回路を必要とせず、安定した直流電圧を得ることが出来る可飽和リアクトル及びそれを用いた直流安定化電源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、直流安定化電源装置としては、例えばフォワードコンバータの場合図1に示すような回路構成になっていた。動作原理としては、端1−2間に直流電圧が印加され、スイッチング素子であるMOS−FET5によってオン・オフ電圧がトランス3の1次側巻線4に伝えられ、2次側トランス巻線6に伝えられる。可飽和リアクトル19は、出力端子11、12の出力電圧と、基準電圧(定格電圧)との誤差分を検出する誤差検出回路13から可飽和リアクトルへリセット電流を流すことによりフィードバックし、所定の出力電圧になるように制御していた。このような誤差検出回路を用いた安定化電源としては特開平6−113538号や特開平9−252577号がある。
【0003】
また、仮に誤差検出回路を作動させずに可飽和リアクトルのみで動作させた場合、出力電圧は無制御状態となり、出力電圧は定格値を上回り、特に、軽負荷時の出力電圧上昇が大きくなり、無負荷時(0[A])が最大となる。誤差検出回路を作動させると、この電圧誤差分を検出し、誤差に応じたリセット電流を可飽和リアクトルにフィードバックして定格電圧に制御していた。
【0004】
これら安定化電源に使用される可飽和リアクトルは、通常、磁性薄帯を巻回して成る磁性コアに巻線を施したものを用い、従来、磁性材料には高い直流角形比をもつCo系アモルファス合金が使用されていた。
【0005】
近年の安定化電源に対する小型・軽量化の要望は強まっているものの、例えば従来の可飽和リアクトルを用いたマグアンプでは誤差検出回路が必須であるため小型・軽量化が図れずにいた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べたように、直流安定化電源に関し、従来の可飽和リアクトルを用いたマグアンプ制御回路では誤差検出回路が必須の構成であるために、小型・軽量化が困難であった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、所定の透磁率比をもつ可飽和リアクトルを用いることにより誤差検出回路を不要にし、なおかつ安定した出力電圧、小型・軽量化及びコストダウンをも可能にする可飽和リアクトル及びそれを用いた直流安定化電源を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上の目的を達成するため請求項1に係る発明として、軟磁性材料からなる可飽和リアクトルに関し、10kHz時の透磁率が1[mH/m]以下となる直流磁界をX[A/m]とした場合、直流磁界0[A/m]時との透磁率比μXA/m/μ0A/mが0.1以下であることを特徴とする可飽和リアクトル。
【0009】
請求項2として、トランスの2次側に可飽和リアクトル及び整流回路から構成されるマグアンプ制御回路を用いた直流安定化電源において、誤差検出回路を必要とせず、可飽和リアクトルのもつ自己電圧ドロップを利用して定格電圧を得ることを特徴とする直流安定化電源。
【0010】
請求項3として、可飽和リアクトルの自己電圧ドロップが、トランスの2次側電圧を整流した出力電圧と定格電圧との電圧差に対して40%以上であることを特徴とする請求項2記載の直流安定化電源。
【0011】
請求項4として、トランスと、該トランスの1次側にスイッチング素子を、2次側に直列に接続した可飽和リアクトルを備え、該可飽和リアクトルの10kHz時の透磁率が1[mH/m]以下となる直流磁界をX[A/m]とした場合、直流磁界0[A/m]時との透磁率比μXA/m/μ0A/mが0.1以下であることを特徴とする直流安定化電源。
【0012】
請求項5として、トランスの2次側に、ダミー抵抗又は、チョークコイルを接続したことを特徴とする請求項2ないし4いずれかに記載の直流安定化電源。
請求項6として、可飽和リアクトルとダミー抵抗の電圧ドロップ値の和が、マグアンプ制御状態時の出力電圧と定格電圧との電圧差と同じであることを特徴とする請求項5記載の直流安定化電源。
【0013】
請求項7として、出力電圧のバラツキが±5%であることを特徴とする請求項2ないし6いずれかに記載の直流安定化電源。
請求項8として、直流角形比(Br/B800A/m)が30%以下であることを特徴とする請求項1記載の可飽和リアクトル。
【0014】
請求項9として、直流角形比(Br/B800A/m)が30%以下であることを特徴とする請求項2ないし7いずれかに記載の直流安定化電源。
請求項10として、軟磁性材料が非晶質合金であることを特徴とする請求項1ないし9いずれかに記載の可飽和リアクトル又は直流安定化電源、となる。
【0015】
本発明においては、10kHzにおける透磁率が1[mH/m]以下となる直流磁界をX[A/m]とした場合、直流磁界0[A/m]との透磁率比μXA/m/μ0A/mを0.1以下とした可飽和リアクトルを用いることにより、安定した出力電圧が得られ、誤差検出回路が不要なため小型・軽量化及びコストダウンをも可能にする可飽和リアクトル及びそれを用いた直流安定化電源を得ることが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の可飽和リアクトルは、10kHz時の透磁率が1[mH/m]以下となる磁界をX[A/m]とした場合、直流磁界0[A/m]時との透磁率の比μXA/m/μ0A/mが0.1以下であることを特徴としている。
【0017】
本発明の可飽和リアクトルの直流ヒステリシス曲線(BHカーブ)を図3、従来の可飽和リアクトルの直流ヒステリシス曲線を図2に示す。一般的に、磁束密度をB、磁界の強さをH、透磁率をμで表した時、透磁率μ=B/Hとなる。この透磁率が大きいとヒステリシス曲線でのグラフの傾きが大きく、逆に透磁率μが小さいと傾きが小さいということが分かる。
【0018】
図2及び図3には、直流磁界0[A/m]時の(a)点、保磁力となる(b)点、透磁率が1[mH/m]以下となる直流磁界X[A/m]を示す(c)点がある。また、(d)点は直流安定化電源の直流磁界0[A/m]時の磁束密度Bが負の状態における見かけ上の値であり、点線で示す曲線は磁束密度が負の状態における見かけ上のヒステリシス曲線である。
【0019】
本発明の可飽和リアクトルは、(d)点から(b)点へのカーブが緩やかに上昇し、(b)点から(c)点以降は飽和状態となり、若干の上昇カーブを形成しているもののほぼ水平となる。この(d)点から(b)点へのカーブが緩いということは、小さいエネルギー、例えば0.3[A]以下の微小電流では磁束密度Bが飽和しないことが分かる。一方、(b)点から(c)点のカーブは、ほぼ水平になり磁束がほぼ飽和状態となり、(c)点以降は、飽和透磁率1[mH/m]以下のわずかあまりの上昇となる。
【0020】
本発明は、この直流磁界0[A/m]時の(a)点での透磁率をμ0A/m、飽和透磁率1[mH/m]以下となる(c)点の磁界をX[A/m]とした場合の透磁率をμXA/mとし、透磁率比μXA/m/μ0A/mが0.1以下、好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.005以下となる。このような透磁率の比を持つことにより、保磁力以下の低磁界(低電流)では大きな透磁率を持ち、この大きな透磁率に相当した磁心自身の電圧ドロップ現象を利用することが可能となる。一方、保磁力以上の磁界(大電流)では透磁率が極めて小さいため磁心自身の電圧ドロップ分が小さく安定した電圧を得ることができる。その結果、本発明の可飽和リアクトルは低電流時は自己電圧ドロップが大きく、大電流時は自己電圧ドロップが小さいという2つの非線形特性を持つため、マグアンプ制御のための誤差検出回路がなくても定電圧が得られる直流安定化電源を形成することが可能となる。
【0021】
また、(c)点以降の飽和透磁率は1[mA/m]以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5[mH/m]以下である。前述したように、(c)点以降はほぼ水平となり若干の上昇しか示さないが、この上昇を示す傾斜が飽和透磁率となり、この値が1[mA/m]以下、つまりはほとんど上昇しないものが良く、このことにより、保磁力より大きな磁界では安定した飽和状態を得ることができ、つまりは自己電圧ドロップ値がほぼ一定値となる。一方、この値が1[mA/m]より大きいと大電流時の電圧ドロップ分が大きくなるため出力電圧が低下しすぎてしまう。
【0022】
なお、本発明では、10kHzにおける飽和透磁率及び透磁率比μXA/m/μ0A/mを基準値としているが、10kHzより低い周波数では、これらの比率は大きくなり、逆に高周波では比率は小さくなる。
【0023】
一般に定電圧を得るためのマグアンプ制御は、誤差検出回路を付けず無制御状態とした場合、出力電圧は定格値を超えた値を示す。定格負荷時は、定格電圧の1.2倍程度であったものが、無負荷時に近づくと急激に上昇し約3〜4倍に跳ね上がる。従来この誤差電圧分を抑えるために誤差検出回路が必須であった。
【0024】
本発明は、誤差電圧上昇分を可飽和リアクトルの自己電圧ドロップで負担させようとするもので、特に負荷電流に対して非線形の電圧ドロップをもたせるような特性にしている。
【0025】
つまり、本発明のように、大きい電流では飽和状態となり自己電圧ドロップが小さく、低電流では飽和しない状態で自己電圧ドロップが大きいことで、前記跳ね上がり電圧を抑えることを可能としている。
【0026】
本発明では所定の透磁率の比を得られるものであれば特に限定されるものでは無いが、所定の透磁率比を得るためには、後述している磁性合金薄帯からなる磁心に対し、図4のように磁心の磁路方向に対して垂直方向(磁心の幅方向)に磁場を印加しながら熱処理を施すことが効果的である。従来は、コアの磁路方向と同一方向に磁場を印加しながら熱処理を施すことにより90%以上の高直流角形比を得ていた。それに対し、本発明では磁路に対し垂直に磁場を印加しながら熱処理することにより直流角形比(Br/B800A/m)を0〜30%にすることが可能となる。
【0027】
次に、本発明では、出力端にダミー抵抗又はチョークコイルを接続することでリアクトルの負担を軽くすることもできる(図6)。
本発明では可飽和リアクトルの透磁率の比を制御することにより、低電流下でも電圧誤差検出回路を必要としていないが、前述のダミー抵抗を用いることにより可飽和リアクトルの負担が減り出力電圧のバラツキをさらに抑えることが可能となる。
【0028】
ここで用いる抵抗は、抵抗に数100mA程度の電流が流れるものが望ましい。チョークコイルについても、特に限定されるものではないが平滑チョークコイル又は非線形チョークコイルであることが好ましい。
【0029】
ダミー抵抗や非線形チョークコイルを用いると、特に無負荷時の出力電圧上昇(跳ね上がり値)を抑制することができるため、可飽和リアクトル自身の電圧負担分が軽減されることになり、より高精度な出力電圧を得ることができる。
【0030】
つまり、トランスを備えた所定の定格電圧を供給する直流安定化電源において、電圧誤差検出回路を用いない状態で従来の可飽和リアクトルの自己電圧ドロップのみによる制御を行った場合、無負荷状態(0[A])に近づくと出力電圧が跳ね上がり、出力電圧と定格電圧には大きな電圧差が起きていた。
【0031】
本発明では、この電圧差を可飽和リアクトルの自己電圧ドロップ、又は、可飽和リアクトルとダミー抵抗の自己電圧ドロップの合計値で、出力電圧の跳ね上がりを抑えている。
【0032】
可飽和リアクトルの自己電圧ドロップ値を前述の出力電圧の跳ね上がり値と同じにすることが最も良いが、この値は各電源の定格電圧値などの使用環境により変化する。このため、可飽和リアクトルの電圧ドロップ値を電源の出力電圧の跳ね上がり値の40%以上に、好ましくは40〜80%、さらに好ましくは40〜60%に揃え不足分をダミー抵抗で補う構成が良い。ダミー抵抗を用いることにより無負荷状態〜低電流値の範囲においても定格電圧を得ることができ、出力電圧のバラツキも±5%に抑えることが可能となる。
【0033】
例えば、40%より低いとダミー抵抗の抵抗値を小さくし、電流を多く流し見かけ上の出力電圧を下げる必要が生じるため効率低下を招き好ましくない。
また、80〜100%の範囲では跳ね上がり値を抑えるという点では好ましいが、可飽和リアクトルそのものに負担が掛かり過ぎてしまい発熱等の問題が発生する。
【0034】
このようにダミー抵抗を併用する構成にすることにより、可飽和リアクトルのみに負担が掛からずにすむことができるため、可飽和リアクトルの寿命や発熱の問題を低減することが可能となる。
【0035】
本発明の可飽和リアクトルを形成する磁性材料は、所定の透磁率比を備えるものであれば特に限定されるものではないが次に上げる非晶質合金又は微細結晶構造を有するFe基磁性合金であることが好ましい。
【0036】
非晶質合金としては、Fe系非晶質合金、Co系非晶質合金、Fe−Ni系非晶質合金が好ましい。
Fe系、Co系の非晶質合金としては、次の一般式1を満たすものが好ましい。
【0037】
一般式1:(M1-a M’a100-bb
式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素を、M’はTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる少なくとも1種の元素を、XはB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%)となる。
【0038】
ここでM元素はCo又はFeとなり磁束密度や鉄損、微小電流に対する感度等要求される磁気特性に応じて組成比を調整していく、M’元素は熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素であり、好ましくはCr、Mn、Nb、Moであり、X元素は非晶質合金を得るのに必要な元素であり、特にBは非晶質化するのに有効な元素であり、Siは非晶質を助成すること及び結晶化温度の上昇に有効な元素である。
【0039】
Fe−Ni系非晶質合金としては次の一般式2を満たすものが好ましい。
一般式2:(Ni1-a Fea100-x-y-zx Siyz
式中、MはV、Cr、Mn、Co、Nb、Ta、W、Zrから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.2≦a≦0.5、0.05≦x≦10、4≦y≦12、5≦z≦20(各数字はat%)となる。このFe−Ni系非晶質合金はNiリッチなFe−Ni系をベースとすることにより前述のCo系よりは安価に製造することができ、磁気特性も良好である。ここでM元素は、熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素であり、好ましくはCr、Mn、Co、Nbである。
【0040】
非晶質合金の製造方法としては、液体急冷法が好ましく、例えば所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から105 ℃/秒以上の冷却速度で急冷することによって得られる。このような液体急冷法は通常、単ロール法又は双ロール法と呼ばれる方法であり、得られる非晶質合金は薄帯として得られる。薄帯の厚みとしては30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは8〜15μmであり、薄帯の厚さを制御することにより低損失のリアクトルを得ることが可能となる。
【0041】
微細結晶構造を有するFe基磁性合金については、次ぎの一般式3を満たすものが好ましい。
一般式3:Fea Cubc Side
式中、Mは周期律表4a、5a、6a族元素又はMn、Ni、Co、Alから選ばれる少なくとも1種以上の元素を示し、a+b+c+d+e=100at%、0.01≦b≦4、0.01≦c≦10、10≦d≦25、3≦e≦12となる。ここでCuは耐食性を高め、結晶粒の粗大化を防ぐと共に、鉄損や透磁率等の軟磁気特性を改善するのに有効な元素であり、M元素は結晶径の均一化に有効であると共に、磁歪及び磁気異方性の低減、温度変化に対する磁気特性の改善に有効な元素である。微細結晶構造としては、50〜300オングストロームの結晶粒を合金中に面積比50%以上、好ましくは90%以上存在している状態である。
【0042】
微細結晶構造を有するFe基磁性合金の製造方法としては、液体急冷法により非晶質合金薄帯を得た後、該非晶質合金の結晶化温度に対し−50〜+120℃、1分〜5時間の熱処理を行い、微細結晶を析出させる方法、又は液体急冷法の急冷速度を制御して微細結晶を直接析出させる方法により得ることが可能となる。
【0043】
このような非晶質合金薄帯又は微細結晶構造を有するFe基磁性合金薄帯等の磁性薄帯を得た後、これらの薄帯を巻回又は積層することにより磁心を形成し、その後絶縁外装処理を施しリアクトルを形成する。
【0044】
絶縁外装処理の前後どちらかに、前述の磁心の磁路長方向に垂直(磁心の幅方向)に磁場を印加しながら熱処理を施す磁場中熱処理を行うことが好ましい。磁場中熱処理条件としては、垂直方向に有効に磁場が印加されるのであれば多少の傾きは許容される。また、この磁場中熱処理は磁心を形成した後の歪取り熱処理の次の処理として連続して行ってもよいし、歪取り熱処理後一旦冷却した後、改めて磁場中熱処理を行ってもよい。磁場の印加も、磁場中熱処理時に始めて印加してもよいし、歪取り熱処理時から印加してもよい。
【0045】
磁場中熱処理温度は、キュリー温度以下であればよく、100℃以上が実用的であり、180℃以上であるとより効果的である。雰囲気については、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、真空中や水素ガス等の還元雰囲気中、大気中等のいずれでもよい。熱処理時間は10分〜3時間程度が好ましく、特に好ましくは15〜60分である。
【0046】
前述の絶縁外装としては、磁性薄帯間の層間絶縁と磁心外装の絶縁の2種類ある。リアクトルを形成する磁性薄帯には絶縁性を得るために層間絶縁処理を施している。絶縁処理については、層間絶縁を得るためにマグネシア、アルミナ、シリカ、ジルコニアといった金属酸化物の絶縁被覆を薄帯表面に設ける。その後、コアを形成し、樹脂被覆、樹脂含浸、樹脂ケースへの収納等の処理を行うと良く、ここで用いる樹脂としてはエポキシ系、シリコーン系、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系、液晶ポリマー系等の絶縁性のある樹脂であれば特に限定されるものではない。
【0047】
【実施例】
(実施例1〜4、参考例1〜3
図7に示す回路を用いて説明する。なお、比較例として誤差検出制御回路13をスイッチSW1にてオン・オフすることにより制御・無制御状態に切り替えられる回路設定とした。
【0048】
回路方式は、1石フォワード方式を採用し、定格出力電圧3.6V、定格電流5A、動作周波数50kHzとした。
本発明のリアクトルは、表1にある組成及び製造条件のものを用い、リアクトル用磁心のサイズは外径18mm、内径12mm、幅(高さ)4.5mmのトロイダル状磁心を用いた。巻線は、UEW線を使用し、1.0mmΦを14ターン施した。
【0049】
なお、表1の透磁率1は直流磁界0[A/m]時の値であり、透磁率2は透磁率が1[mH/m]以下となる点として保磁力の50倍の磁界での値を採用した。
【0050】
このような条件の中で、誤差検出回路を作動させず(SW1オフ)に負荷電流を変えたときの出力電圧を測定した。図8には実施例1、比較例2の可飽和リアクトルを用いた場合と、比較例1の可飽和リアクトルを用いない場合(SW1オフ・SW2オフ)のレギュレーション特性(出力電圧[V]−負荷電流[A])を示した。他の実施例及び比較例については、表2に0[A]時と5[A]時の値を示した。
【0051】
(比較例1)
可飽和リアクトルを挿入しない無制御状態(SW1オフ・SW2オフ)の回路を用意した。
【0052】
(比較例2〜3)
比較のために、表1に記載のように本発明の範囲外である透磁率比をもつ可飽和リアクトルを用意した。可飽和リアクトルのサイズ、巻線処理については実施例1と同じものを用いた。
【0053】
【表1】
Figure 0004282795
【0054】
表1から分かる通り本発明の可飽和リアクトルは透磁率比μXA/m/μ0A/mが0.1以下となっており、比較例2〜のものは0.1より大きい数値となっている。
【0055】
図8から0.5[A]以上の電流値では定格電圧の±5%の範囲で出力電圧が得られている。また、0〜0.5[A]の低電流値では、比較例と比較して出力電圧の跳ね上がり値が抑えられていることが分かる。
【0056】
【表2】
Figure 0004282795
【0057】
表2から本発明の可飽和リアクトルを用いた回路は、無負荷時(0[A])の出力電圧が比較例と比べて低いことが分かり、可飽和リアクトルの自己電圧ドロップ効果があることが分かる。さらに、透磁率比が小さく、直流角形比が小さいものの方が低電流領域での電圧ドロップ現象が有効であることも分かる。
【0058】
(実施例8)
定格電圧を3.6[V]と設定された誤差検出回路を用いない本発明実施例1の可飽和リアクトルと出力端にダミー抵抗を接続した回路を構成し、出力電圧のバラツキを測定した。図9にレギュレーション特性を示した。
【0059】
また、比較例4として誤差検出回路を作動させた比較例2の可飽和リアクトルを用いた回路を実施例8と同様の負荷条件で出力電圧を測定した。
図9から分かる通り、本発明の誤差検出回路を用いない回路は、誤差検出回路を用いた従来の回路と同様に0.5A以下〜無負荷状態の間においても出力電圧のバラツキが少ないことが分かる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の所定の透磁率比をもつ可飽和リアクトル及びそれを用いた直流安定化電源では、従来の電圧誤差検出回路が必要ないため回路を小型・軽量化、コストダウンができ、0.5A以下の微小電流時でも安定した出力電圧を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電圧誤差検出回路を備えた直流安定化電源の回路図である。
【図2】従来の可飽和リアクトルの直流ヒステリシス曲線を示す図である。
【図3】本発明の可飽和リアクトルの直流ヒステリシス曲線を示す図である。
【図4】本発明の可飽和コアの幅方向を示す図である。
【図5】本発明の可飽和リアクトルを備えた直流安定化電源の回路図である。
【図6】本発明の可飽和リアクトル及び平滑チョークコイルを備えた直流安定化電源の回路図である。
【図7】本発明の実施例に用いた直流安定化電源の回路図である。
【図8】本発明の実施例におけるレギュレーション特性(出力電圧−負荷電流)を示す図である。
【図9】本発明の実施例におけるレギュレーション特性のバラツキを示す図である。
【符号の説明】
1、2…入力端子
3…トランス
4…トランス3の1次側巻線
6…トランス3の2次側巻線
5…スイッチング素子(MOS−FET)
7、8…ダイオード
9…平滑チョークコイル
10…コンデンサ
11、12…出力端子
13…電圧誤差検出制御回路
14…ダミー抵抗
19…可飽和リアクトル

Claims (9)

  1. 軟磁性材料からなる可飽和リアクトルに関し、10kHz時の透磁率が1[mH/m]以下となる直流磁界をX[A/m]とした場合、直流磁界0[A/m]時との透磁率比μXA/m/μ0A/mが0.1以下、直流角形比(Br/B 800A/m )が30%以下であることを特徴とする可飽和リアクトル。
  2. トランスの2次側に請求項1記載の可飽和リアクトル及び整流回路から構成されるマグアンプ制御回路を用いた直流安定化電源において、誤差検出回路を必要とせず、可飽和リアクトルのもつ自己電圧ドロップを利用して定格電圧を得ることを特徴とする直流安定化電源。
  3. 前記可飽和リアクトルの自己電圧ドロップが、トランスの2次側電圧を整流した出力電圧と定格電圧との電圧差に対して40%以上であることを特徴とする請求項2記載の直流安定化電源。
  4. トランスと、該トランスの1次側にスイッチング素子を、2次側に直列に接続した請求項1記載の可飽和リアクトルを備えたことを特徴とする直流安定化電源。
  5. トランスの2次側に、ダミー抵抗又は、チョークコイルを接続したことを特徴とする請求項2ないし4いずれかに記載の直流安定化電源。
  6. 前記可飽和リアクトルとダミー抵抗の電圧ドロップ値の和が、マグアンプ制御状態時の出力電圧と定格電圧との電圧差と同じであることを特徴とする請求項5記載の直流安定化電源。
  7. 出力電圧のバラツキが±5%であることを特徴とする請求項2ないし6いずれかに記載の直流安定化電源。
  8. 前記軟磁性材料が非晶質合金であることを特徴とする請求項1に記載の可飽和リアクトル。
  9. 前記可飽和リアクトルは磁路長方向に垂直に磁場を印加しながら熱処理を施す磁場中熱処理が行われたものであることを特徴とする請求項1に記載の可飽和リアクトル。
JP25621698A 1998-09-10 1998-09-10 可飽和リアクトル及びそれを用いた直流安定化電源 Expired - Lifetime JP4282795B2 (ja)

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