JP3121641B2 - スイッチング電源 - Google Patents

スイッチング電源

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JP3121641B2
JP3121641B2 JP03252507A JP25250791A JP3121641B2 JP 3121641 B2 JP3121641 B2 JP 3121641B2 JP 03252507 A JP03252507 A JP 03252507A JP 25250791 A JP25250791 A JP 25250791A JP 3121641 B2 JP3121641 B2 JP 3121641B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スイッチング電源に係
り、さらに詳しくは高周波化が可能で、安定かつ効率よ
く発振する発振用磁心を具備するスイッチング電源に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種電子機器等の安定化電源とし
て、従来のシリーズドロッパ方式電源に比べ、小型、軽
量化が可能なスイッチング電源が多用されている。この
スイッチング電源は、例えば適当なスイッチング素子と
発振トランス用磁心の磁気特性(ヒステリシス特性)と
を用いて、入力側の直流を一旦高周波の交流に変換し、
再度整流回路により直流に変換して、出力を得るように
構成されている。このようなスイッチング電源に用いら
れる発振トランス用磁心の材質としては、従来、Fe-Ni
系合金、フェライト、アモルファス性合金等が使用され
てきた。
【0003】ところで、このようなスイッチング電源の
採用により、従来のシリーズ電源に比べて、電源の小型
化がなされてきたが、他の装置に比べるとまだ大型で重
量も大きい。そこで、スイッチング電源をより一層小型
化することが求められている。このような要請に対し
て、例えば発振周波数を高めることより、トランスやコ
イル等を小型化し、これによってスイッチング電源を小
型化することが検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
スイッチング電源に用いられてきた発振用磁心の材質の
うち、Fe -Ni系合金は鉄損が大きいために、発振周波数
を高周波化することが困難であり、またフェライトは、
温度に対する特性が悪く、回路の温度上昇により発振周
波数が著しく変化するという問題があった。
【0005】一方、アモルファス磁性合金は、低鉄損で
温度に対する特性も良好である半面、発振が不安定にな
りやすいという問題を有していた。さらに、最近、真空
中でアモルファス合金薄帯を作製することにより、板厚
を極めて薄くし、これによって高周波域での損失を低減
することが行われているが、どのような磁心でも発振用
として有効という訳ではなく、発振の安定化や高効率化
が求められていた。
【0006】本発明は、このような課題に対処してなさ
れたもので、発振周波数の高周波化が可能であると共
に、安定してかつ効率よく発振を行うことができる発振
用磁心を用いることにより、一層小型化されたスイッチ
ング電源を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段と作用】本発明のスイッチ
ング電源は、スイッチング電源の発振用周波数を決める
ためスイッチング素子のゲートとソース間に配置される
磁心であって、前記磁心は平均板厚が3μm〜14μm
の範囲のアモルファス合金薄帯からなり、かつ前記磁心
の外径と内径とを平均した値が2mm〜5mm、外径と
内径との差が、0.1mm〜3mm、前記磁心の実質断
面積が0.2mm2 〜5mm2 である発振用磁心を具備
することを特徴としている。
【0008】本発明のスイッチング電源に用いられる
振用磁心においては 一般式:(Co1-a-b Fea b 100-x (Si1-c c x …(1) (式中、MはV,Cr,Mn,Ni,Cu,Nb,M
o,TaおよびWから選ばれた少なくとも1種の元素
を、a,b,cおよびxは0≦a≦0.10、0.005 ≦b≦
0.10、0.15≦c≦0.90、20at%≦x≦30at%をそれぞれ
満足する数を示す)で組成が実質的に表されるCo基ア
モルファス合金薄帯を用いることが好ましく、その平均
板厚は3μm〜14μmの範囲とする。アモルファス合
金薄帯のより好ましい板厚は3μm〜12μmであり、
さらに好ましくは4μm〜10μmの範囲である。平均
板厚が14μmを超えると、基本的に低損失化を達成す
ることが困難となる。なお、上記平均板厚は、重量/
(密度×長さ×幅)の式に基づく重量法により測定した
値を指すものとする。
【0009】ここで、上記 (1)式におけるFeは、磁歪定
数をCoとのバランスにより零にすることができる元素で
あり、その量が aの値として0.01から0.10の範囲で達成
される。より好ましい aの値は0.02〜0.09であり、さら
に好ましくは0.03〜0.08である。 M元素は、角形比を高
める元素であり、その効果は bの値が 0.005未満では顕
著でなく、0.10を超えるとキュリー温度が低くなりすぎ
る。より好ましい bの値は0.01〜0.09であり、さらに好
ましくは0.02〜0.08である。Siおよび Bは、アモルファ
ス化のために有効な元素であるが、 cの値が0.15未満で
はアモルファス化が困難であり、 0.9を超えると十分な
磁気特性が得られなくなる。より好ましい cの値は 0.2
〜 0.8であり、さらに好ましくは 0.3〜 0.7である。ま
た、これらアモルファス化元素の合計量が 20at%未満で
は、低損失が得られる条件が極めて狭くなり、また 30a
t%を超えるとキュリー温度が低くなりすぎる。より好ま
しい xの値は 22at%〜 29at%であり、さらに好ましくは
23at%〜 28at%である。
【0010】また、板厚12μm 以上のアモルファス合金
薄帯は、通常の大気中における単ロール法等によって得
ることができるが、上記したような本発明で用いられる
板厚のCo基アモルファス合金薄帯を作製する際には、減
圧雰囲気もしくは不活性雰囲気中による単ロール法等を
適用することが好ましい。その際の条件は、例えば以下
に示す通りである。
【0011】すなわち、10-2Torr以下の減圧下や
60Torr以下の不活性雰囲気下で、下記の条件を満
足させつつ冷却ロールに溶融金属を射出して超急冷させ
る。上記した条件とは、合金溶湯を射出するノズル形
状、ノズルと冷却ロールとの距離、射出圧、冷却ロール
の材質および周速等であり、それぞれ好ましい範囲は次
の通りである。ノズル形状は矩形状とし、短辺を0.2
mm以下とする。ノズルと冷却ロールとの距離は0.2
mm以下が好ましく、射出時の圧力は0.03kg/c
2 以下が好ましい。冷却ロールの材質はCu基合金や
Fe基合金が、また周速は20m/sec以上が好まし
い。本発明のスイッチング電源に用いられる発振用磁心
は、上述したような方法によって得られたアモルファス
合金薄帯を後に詳述する所定の磁心形状に巻回した後、
結晶化温度以下で1時間〜10時間程度の熱処理を行う
ことによって、あるいはケミカルエッチング等によって
所定のリング形状に成形し、結晶化温度以下で1時間〜
10時間程度の熱処理を行った後、所定の磁心形状に積
層する等によって得られる。なお、積層体の場合には、
所定の磁心形状に積層した後、ケースに収容し、同様の
条件で熱処理することによって得られる。
【0012】そして、本発明のスイッチング電源に用い
られる発振用磁心の形状は、その外径をD1 、内径をD
2 としたとき、これらを平均した値((D1 +D2 )/
2)を2mm〜5mmの範囲とし、外径D1 と内径D2
との差(D1 −D2 )を0.1mm〜3mmの範囲と
し、かつその高さをtとしたとき、実質断面積((D1
−D2 )t×占積率(占積率とは磁心の内径、外径、高
さによって形成される体積中における磁性材料の占める
割合を示す))を0.2mm2 〜5mm2 の範囲とす
る。
【0013】外径 D1 と内径 D2 とを平均した値(以
下、平均径と称する)が 2mm未満であると、磁心形状へ
の成形が困難になり、一方 5mmを超えると、回路効率が
低下する。また、外径 D1 と内径 D2 との差(例えば巻
厚)は、 0.1mm未満では磁束量が不足し、発振用磁心と
しての機能が果たせず、一方 3mmを超えると、磁束が飽
和に至るまでの時間が長くなり過ぎるため、周波数を高
く設定することができない。外径 D1 と内径 D2 との差
のより好ましい値は 0.2mm〜 2.8mmであり、さらに好ま
しくは 0.5mm〜 2.5mmである。また、実質断面積も同様
に、 0.2mm2 未満では磁束量が不足し、発振用磁心とし
ての機能が果たせず、 5mm2 を超えると、磁束が飽和に
至るまでの時間が長くなり過ぎるため、周波数を高く設
定することができない。実質断面積のより好ましい値は
0.5mm2 〜 4.8mm2 であり、さらに好ましくは 1.0mm2
〜 4.5mm2 である。
【0014】すなわち、平均板厚が 3μm 〜14μm のア
モルファス磁性合金薄帯を用いると共に、上記した形状
条件を満足させることによって、発振周波数の高周波化
が達成でき、かつ安定して発振することが可能となる。
これにより、スイッチング電源をより一層小型化するこ
とが可能となる。
【0015】また、本発明のスイッチング電源に用いら
れる発振用磁心の磁気特性としては、特に角形比が重要
である。すなわち、本発明の対象とする特に高い周波数
での角形比(飽和磁束密度に対する残留磁束密度の比)
が重要であり、1MHzでの角形比が70%〜95%の
範囲にあることが好ましい。角形比が70%未満では、
飽和に至る時間が長すぎて周波数を高く設定することが
できない。一方、95%を超えると、リセット時に必要
とされる磁気的エネルギーが小さいためスイッチをオン
にできずに発振しない可能性があり、電源として問題に
なる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0017】実施例1 表1に示す合金組成を有する各Co基アモルファス合金薄
帯を、それぞれ下記の条件にしたがって単ロール法によ
り作製した。すなわち、Feからなる冷却ロールを用い、
これを周速 35m/sec〜 45m/secで回転させ、この冷却ロ
ールの表面に、0.15mm〜0.20mm離したノズルから各合金
溶湯を、 5×10-5Torrの真空中において0.01kg/cm2
0.015kg/cm2 の射出ガス圧力で射出し、それぞれ超急冷
してアモルファス合金薄帯を得た。なお、表1には平均
重量法にて算出した各薄帯の平均板厚を示す。
【0018】次に、このようにして作製した各Co基アモ
ルファス合金薄帯を、表1にそれぞれ示す磁心形状とな
るように巻回した後、それぞれ熱処理を施して発振用磁
心を得た。なお熱処理は、 440℃×30分の歪取り熱処理
を行い、試料によってはその後に 200℃× 1時間の長手
方向磁場熱処理(H=10Oe)、あるいは幅方向磁場熱処理
(H=1kOe)を行った。
【0019】このようにして得た各発振用磁心の特性評
価を、以下に示す方法にしたがって行った。まず、各磁
心の1MHzでの B-H曲線を磁気特性評価システム(岩崎通
信機製:SY8632)を用いて評価し、角形比を求めた。ま
た、図1に示す自励発振回路のAの部分の磁心として、
上記実施例による各発振用磁心を搭載し、1MHzでの発振
特性と効率を評価した。なお発振特性は、自励発振用磁
心の巻線の両端の電圧および電流波形をオシロスコープ
により観測して、発振周波数を読み取り、1MHzで発振可
能な磁心は○、発振不可であった磁心は×で示した。こ
れらの結果を併せて表1に示す。
【0020】なお、表中の比較例は、板厚や磁心形状等
を本発明の範囲外としたものであり、上記実施例と同様
に特性を評価した。
【0021】
【表1】
【0022】表1から明らかなように、本発明により規
定した磁心形状を有する発振用磁心は、いずれも1MHzで
の発振と効率が良好であることが分かる。
【0023】実施例2 (Co0.91Fe0.05Cr0.0475 (Si0.55 B0.4525で組成が
表されるアモルファス合金薄帯を、真空中にて単ロール
法により作製した。平均板厚は 6.8μm であり、幅は10
mmとした。この薄帯を適当な寸法にスリットした後、種
々の磁心形状に成形した。これらをそれぞれ図1に示し
た自励発振回路のAの部分に適用して、電源の効率を評
価した。その結果として、図2に磁心の実質断面積と電
源効率との関係を、また図3に平均径と電源効率との関
係を示す。図2および図3から明らかなように、本発明
により規定した磁心形状を有する発振用磁心は、特に高
い効率が得られていることが分かる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明においては
1MHzというような高周波での発振を安定に、かつ効
率よく行うことができる発振用磁心を用いることによっ
スイッチング電源のより一層の小型化が可能となる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にて特性評価用として用いた自
励発振回路を示す図である。
【図2】発振用磁心の実質断面積と電源効率との関係を
示す図である。
【図3】発振用磁心の平均径と電源効率との関係を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日下 隆夫 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株式会社東芝 横浜事業所内 (56)参考文献 特開 平3−75341(JP,A) 特開 平2−96307(JP,A) 特開 平2−96305(JP,A) 特開 昭63−239907(JP,A) 特開 昭63−186560(JP,A) 特開 昭63−129606(JP,A) 実開 平2−96797(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 17/04,19/00,27/24 H01F 41/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スイッチング電源の発振周波数を決める
    ためスイッチング素子のゲートとソース間に配置される
    磁心であって、前記磁心は平均板厚が3μm〜14μm
    の範囲のアモルファス合金薄帯からなり、かつ前記磁心
    の外径と内径とを平均した値が2mm〜5mm、外径と
    内径との差が、0.1mm〜3mm、前記磁心の実質断
    面積が0.2mm2 〜5mm2 である発振用磁心を具備
    することを特徴とするスイッチング電源
  2. 【請求項2】 前記発振用磁心における該アモルファス
    合金が、 一般式:(Co1-a-b Fea b 100-x (Si1-c c x 式中:MはV,Cr,Mn,Ni,Cu,Nb,Mo,
    Ta及びWから選ばれた少なくとも1種の元素を、a,
    b,c及びxは0≦a≦0.10、0.005 ≦b≦0.10 、0.
    15≦c≦0.90、20at%≦x≦30at%を満たす数字、から
    なるものであることを特徴とする請求項1記載のスイッ
    チング電源
  3. 【請求項3】 前記発振用磁心の1MHzでの角形比が
    70〜95%であることを特徴とする請求項1又は2記
    載のスイッチング電源
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