JP4282204B2 - 熱処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に薄膜が形成された被処理基体を加熱するための熱処理技術に係わり、特に半導体や液晶等の製造分野で使用される熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体の高集積化に伴い、パターンの微細化及び高精度化が益々進んでいる。一般に、半導体や液晶といった基板を加熱又は冷却する工程を含むプロセスにおいては、レジスト又は下地基板の温度のばらつきがパターン寸法のばらつきに反映するので、その温度管理により高精度なものが求められている。ここでいう温度管理とは、被処理薄膜であるレジスト膜の温度を被処理基体の面内で高精度に測定すること、制御することの2点である。
【0003】
マスク製作工程の一つであるPEB(Post Exposure Baking)は、マスクの寸法管理上その均一性が非常に重要であるが、用いられてきた加熱方法はヒータを用いたものが一般的であった。その温度制御方法は、ヒータの複数箇所の異なる位置に熱電対を埋め込み、その出力値をフィードバックすることで複数存在するヒータパターンで発生させる熱量を制御するという方式であった。
【0004】
ヒータ加熱では、マスク面内での均一性を高めるために熱伝導率の高いプレートにマスク基板を埋め込む方式をとり、旦つ基板上方にも所望の温度に設定されたプレートを設け、上方プレートとマスク基板表面の空気も温度制御しつつ、空気の流れも制御して加熱処理を行うといった方法が取られている。しかし、上記方法においては、ヒータに埋設された熱電対で温度モニタを行っているため、正確な温度管理を必要としているレジスト膜の温度をモニタしているわけではなかった。
【0005】
レジスト膜の温度を正確に測定しようとすると、接触タイプの温度測定においては、熱電対をレジスト膜に埋め込む、或いは接触させる方法が考えられるが、技術的に非常に困難であること、欠陥等の発生が予想され実プロセスヘの現実性に欠けることなどから、非接触タイプの温度計である放射温度計を用いるのが一般的である。
【0006】
放射測温の現状の問題点としては、次のものがあげられる。放射温度計は、一般に被処理基体の放射率を入力し温度を算出するが、放射率の見積もりに誤差があると測温精度を劣化させる要因になる。本発明者らの調査では被処理基板毎に放射率が異なり、更には被処理基板の面内での放射率も異なるという事実もあることが分かり、これらの要素が測温誤差を大きくする要因となる。また、放射温度計のゲイン値及びオフセット値も温度計の環境温度や回路内部の温度によって時々刻々変動しており、さらにセンサ毎の個体差もあり、これらの要素も放射測温の誤差を大きくする。
【0007】
また、上記したような原理的な問題だけでなく、事実上の装置構成としても例えば放射率測定の場合、2対のセンサ及びセンサの基板表面に対する鏡像位置に温調されて配置された黒体を配置する構成にすることにより行われるが、測温精度を確保するためには必然的に体積的に大きいものとなってしまう。このため、基板面内の温度分布を同時に測定するために複数の放射温度計を設けることは実質的に不可能であり、また基板面内の温度分布を1つの放射温度計で同時に測定することは困難であるという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来、基板上の薄膜の温度を放射温度計で測定する場合、放射率及び温度の両方を測定可能な1つの放射温度計で面内を同時に測定することは困難であり、複数の放射温度計を用いると装置構成が大型化する問題があった。また、温度のみを測定可能な放射温度計を複数用いた場合、正確な温度測定ができない問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮して成されたもので、その目的とするところは、簡易な構成の放射温度計を複数用いて、被処理基板上の薄膜の温度分布を高精度に測定することができ、装置構成の大型化等を招くことなく高精度の加熱処理を可能にする熱処理方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(構成)
上記課題を解決するために本発明は次のような構成を採用している。
【0011】
即ち本発明は、被処理基体の表面温度を放射温度計で測定し、この測定結果により被処理基体の被加熱領域に対してそれぞれ独立に制御可能な分割された加熱領域を持つ加熱手段の出力制御を行いながら該基体を加熱する熱処理方法において、被測定対象面の放射率及び温度の測定が可能な第1の放射温度計で前記被処理基体の表面の放射率及び温度を面内で測定する第1の工程と、第1の工程で得られた放射率を基に、複数個の第2の放射温度計で前記被処理基体の表面の複数箇所の温度を測定する第2の工程と、第1の工程で得られた温度と第2の工程で得られた温度から第2の放射温度計のオフセット値を求め、第2の放射温度計の測温値を補正する第3の工程と、第1の工程で得られた放射率及び第3の工程で得られたオフセット値を基に、第2の放射温度計を用いて前記被処理基体の面内温度分布を測定しながら前記加熱手段の出力を制御する第4の工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、被処理基体の表面温度を放射温度計で測定し、この測定結果により被処理基体の被加熱領域に対してそれぞれ独立に制御可能な分割された加熱領域を持つ加熱手段の出力制御を行いながら該基体を加熱する熱処理方法において、被測定対象面の放射率及び温度の測定が可能な第1の放射温度計で前記被処理基体とは異なる校正用基体の表面の放射率及び温度を少なくとも2つの異なる温度に対して測定する第1の工程と、第1の工程で得られた放射率を基に、複数個の第2の放射温度計で前記校正用基体の表面の温度を少なくとも2つの異なる温度に対して測定する第2の工程と、第1の工程で得られた温度と第2の工程で得られた温度から第2の放射温度計のオフセット値及びゲイン値を求める第3の工程と、第1の放射温度計で前記被処理基体の表面の放射率を面内で測定する第4の工程と、第4の工程で得られた放射率及び第3の工程で得られたオフセット値及びゲイン値を基に、第2の放射温度計を用いて前記被処理基体の面内温度分布を測定しながら前記加熱手段の出力を制御する第5の工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明の望ましい実施態様としては次のものがあげられる。
【0016】
(1) 加熱前における被処理基体の面内温度の差が所定値以上の場合、加熱手段により被処理基体を本来の加熱温度より低い温度まで加熱し、該基体の面内温度を揃えること。
【0017】
(2) 第1の放射温度計により放射率及び温度の測定を行う個所と第2の放射温度計により温度の測定を行う個所とは同じであること。
【0018】
(3) 第1の放射温度計により被処理基体の表面の放射率を複数点で求め、第2の放射温度計で測定を行う個所の放射率を、上記求めた複数点の放射率からの補間によって求めること。
【0019】
(4) 第1の放射温度計は、赤外センサ,視野エリア中心,温度調整された黒体を同一光軸になるように配置され、且つそれぞれ2対の赤外センサ及び異なった温度に温調された黒体を併設したものであり、各々のセンサ部における同一視野エリアの測定結果から、該位置の放射率及び温度を算出するものであること。
【0020】
(作用)
本発明によれば、基板上の薄膜の温度及び放射率を面内で加熱処理前に測定することにより、薄膜の放射率の見積もり誤差を著しく低減することができる。また、基板の初期温度を処理前に測定しオフセット補正を行うことにより、第2の放射温度計の個体差による温度測定誤差を低減でき、放射率補正と合わせ非常に高精度な加熱処理が可能となる。
【0021】
また、第2の放射温度計は第1の放射温度計とは異なりそれ自体では放射率は測定できないが、第1の放射温度計と比べて構成が簡単で小型であるため、第2の放射温度計を複数個配置しても、第1の放射温度計を複数個配置する場合のような装置構成の大型化を招くこともない。従って、簡易な構成の放射温度計を複数用いて、被処理基板上の薄膜の温度分布を高精度に測定することができ、高精度の加熱処理を行うことが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を、半導体製造工程に使用されるクロムマスクの試作を例にとり説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係わる熱処理装置の基本構成を示す図である。
【0024】
図1において、1はレジスト付き6インチサイズ,厚さ0.25インチのクロムマスクブランクス(被処理基体)であり、石英基板上にクロム膜を形成し、その上にレジストを塗布したものである。2は被処理基体1の加熱を行うためのハロゲンランプであり、最大出力200W、ピーク波長1100nmで、それぞれ9つずつ3×3の格子状に配置されている。3はライトガイドであり、ハロゲンランプ2に対応して3×3の格子状に配置されている。ハロゲンランプ2の冷却は、冷却水が流せるよう加工された支持台30にランプ2を組み込むことにより行われる。4はフィルタであり、被処理基体1の下地としての石英の吸収波長である1.4μm付近と2.2μm以上の波長をそれぞれカットするバンドパスフィルタが2つ重ねてある。
【0025】
5はマスク支持体であり、全体はステンレスで形成され、マスク支持部(端部4点支持)は弗素樹脂で構成されている。支持体5は温度調節が可能なように温調水が内部に流れている構造となっている。
【0026】
6は制御部であり、後述する第1の放射温度計9で測定した放射量から被処理基体1の放射率,温度値を算出し、後述する複数の第2の放射温度計10で測定した放射量から温度を算出する際に、前記放射率,温度値で補正しながら温度を算出する機構を有する。具体的には、第1の放射温度計9で測定した放射率を記憶する機構、第1の放射温度計9で測定した被処理基体1の温度を記憶し、第2の放射温度計10で得られた温度を第1の放射温度計9の温度に一致するようオフセット補正又はゲイン補正を行う機構、前記補正を行った後に記憶した前記放射率でもって第2の放射温度計10からの測定信号を温度に換算する機構、得られた温度データからランプ3ヘの印加電圧、又は電力を決定する機構を有する。また、上記の制御は、ランプ3が配置された9つの位置で独立に制御可能となっている。さらに、制御は色々な方式が選択可能である。
【0027】
7は搬送アームで、被処理基体1の移設を行うものである。8は装置外枠であり、気流の乱れ等が起きないよう測定系を外乱から隔離するものである。また、図には記していないが装置内部から排気ダクトに接続し処理時に発生するガス等を外部に排出し、有機物等の蒸気が壁に付着するのを防止している。
【0028】
9は第1の放射温度計であり、その構造は赤外センサ,視野エリア中心,温調された基体(黒体)が同一光軸上になるよう配置した、それぞれ2対の赤外センサ9a,黒体9b(それぞれは異なった温度が一般的)から成る。そして、黒体9bの温度及び放射率データから被処理薄膜の温度と放射率を測定することが可能となっている。赤外センサ9aと黒体9bを鏡像位置にそれぞれ配置した理由は、レジスト付きマスクが非常に高い鏡面特性を示すため、サーモパイルに入る迷光を除去する意味合い、及び温度が既知の安定な放射量を入れることによって放射率と膜温度の2つの値を求めることが可能となるためである。
【0029】
第1の放射温度計9は、駆動部20で制御されるX−Y駆動ステージ15上に載置されており移動可能である。この放射温度計9の視野エリアはφ40mm程度である。また、第1の放射温度計9については、その測定値を校正するための校正用ヒータ21が被処理基体1を載置する支持体5から少し離れた場所へ備えられている。校正用ヒータ21は熱伝導率が非常に高い材質で作られており、その表面は鏡面加工され、かつ表面近傍に熱電対及び測温抵抗体が埋め込まれており、ある一定温度に制御されている。第1の放射温度計9でこの校正用ヒータ21の表面温度を測定し、一方熱電対及び測温抵抗体で測定される温度データは制御部6に取り込まれ、第1の放射温度計9から得られた温度との比較から第1の放射温度計9のゲインを補正することにより、第1の放射温度計9での測定精度を向上させるやり方をとっている。
【0030】
10は第1の放射温度計9とは異なる方式の複数の小型の第2の放射温度計である。第2の放射温度計10は、第1の放射温度計9とは異なり小型化するため、被処理薄膜上のある領域に対して鏡像位置に温調された黒体とサーモパイルの一対から構成されたものである。被処理薄膜の面内温度の計測,制御を行いやすいよう1つのランプ2に1つの第2の放射温度計10を対応させて全部で9つ配置した。高さ方向の位置関係についてはお互い干渉しないよう、図1のように第1の放射温度計9と被処理基体1の間のスペースに第2の放射温度計10を入れるようにした。この第2の放射温度計10についても、駆動部20で制御されるX−Y駆動ステージ17上に載置されており移動可能である。
【0031】
また、放射温度計9,10についてはそれぞれの検出波長を8〜14μmとした。上記検出波長を用いることにより基板や膜の透過率特性から遮光膜であるクロム層とレジスト膜の平均温度を測定することが可能となるためである。
【0032】
次に、図1の装置をクロムマスクの製作に適用した例について説明する。
【0033】
6インチのクロム膜付き石英基板(マスク)上にポジ型化学増幅レジストを塗布(レジスト膜厚500nm)し、電子線描画装置(50keV,5μC/cm2 )で露光されたマスクブランクス(被処理基体)1を用意した。図示していない位置決めユニットで位置決めを行った後、搬送アーム7により基体1を搬送し、マスク支持体5の中に載置した。まず、第2の放射温度計10は第1の放射温度計9の測定光路を妨げないような位置に退けておく。第1の放射温度計9を用いてマスク面内の温度及び放射率を9箇所順番に測定していく。測定バラツキを低減させるため、測定は10sec間に0.1sec間隔で行い、データの平均化を行う。
【0034】
その結果、図2(a)に示すように、位置▲1▼,▲2▼,〜,▲9▼に対応する放射率が0.2263,0.2265,0.2266,0.2302,0.2301,0.2304,0.2335,0.2335,0.2334であった。その時の基体1の温度がそれぞれ 25.25℃,25.28℃,25.24℃,25.28℃,25.25℃,25.28℃,25.26℃,25.24℃,25.23℃であった。
【0035】
次いで、これらの数値をメモリさせておき、第1の放射温度計9の下方に第2の放射温度計10をX−Y駆動ステージ17を使って配置させた。第1の放射温度計9で測定したそれぞれの位置に対応する第2の放射温度計10の出力と対応する放射率から、第2の放射温度計10で計測した場合の被処理基体1の温度は、図2(b)に示すように、それぞれ位置▲1▼から順に 25.35℃,25.37℃,25.35℃,25.38℃,25.34℃,25.36℃,25.37℃,25.32℃,25.33℃となった。第1の放射温度計9で算出した値に対して▲1▼の位置から順に0.10℃,0.09℃,0.11℃,0.10℃,0.09℃,0.08℃,0.11℃,0.08℃,0.10℃のオフセット値を第2の放射温度計10から差し引いて温度を算出した。
【0036】
これらの補正を行った後、第2の放射温度計10によってレジスト膜温度を計測しながら光照射によるレジスト膜加熱を開始した。制御はPID方式を用いて設定温度を100℃とし、ランプ2ヘの印加出力を決定した。設定最大温度は100℃,処理時間は40secとした。その後、ランプ2ヘの印加を0にし、被処理基体1の加熱を停止した。その後、クーリングユニットに前出の搬送系を用いて被処理基体1を搬送し、基体1の冷却を実施した。
【0037】
次いで、現像液(AD−10:多摩化学製)でディップ現像した後、遮光膜であるクロム膜をドライエッチングし、更にレジスト剥離・洗浄を行った。そして、寸法SEMにてクロムパターンの寸法をマスク面内(130mm□)で測定したところ、9.8nm(3σ)と極めて精度良いパターンが得られるのが確認できた。
【0038】
このように本実施形態によれば、マスク基板上のレジスト膜の温度及び放射率をマスク面上のエリアを9つに分けて面内測定し、それぞれ平均化することによって、マスク面内での測温誤差を大きく低減することが可能となった。放射率の代表値(1点)で制御を行った場合、面内の温度分布ばらつきは約1.30℃生じることになるが、本実施形態によればばらつきを約0.05℃にまで低減することができた。
【0039】
また、放射温度計のゲイン値及びオフセット値は温度計の環境温度や回路内部の温度によっても時々刻々変動しており、さらにセンサの個体差もあるため、面内において温度均一性を測定,制御するために複数の第2の放射温度計10を配置して測温精度を確保することは一般的には困難である。しかし本実施形態では、被処理基体1の初期温度を処理前に測定しオフセット補正を行うことにより、第2の放射温度計10の個体差による温度測定誤差が補正前が面内で0.3℃であったものが補正後は誤差が0.03℃にまで低減でき、前記放射率補正と合わせ非常に高精度な加熱処理が可能となった。
【0040】
そして、本実施形態を光照射によるフォトマスクブランクスの加熱処理を半導体製造工程で使用するクロムマスク製作に適用したところ、PEB時に生じる温度差に起因した寸法変動が大幅に低減され、マスク上のクロムパターンの寸法面内均一性で9.8nm(3σ)を達成することができた。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を半導体製造工程に使用されるクロムマスクの試作を例にとり図に示しながら説明する。本実施形態は、第1の実施形態におけるランプ、及びライトガイドの配置をそれぞれ5×5の格子状に配置した以外は第1の実施形態と同様である。
【0042】
6インチのクロム膜付き石英基板(マスク)上にポジ型化学増幅レジストを塗布(レジスト膜厚500nm)し、電子線描画装置(50keV,5μC/cm2 )で露光されたマスクブランクス(被処理基体)を用意した。図示していない位置決めユニットで位置決めを行った後、搬送アーム7により被処理基体1を搬送し、マスク支持体5の中に載置した。まず、第2の放射温度計10は第1の放射温度計9の測定光路を妨げないような位置に退けておく。第1の放射温度計9を用いてマスク面内の温度及び放射率を、図3(a)中に×印で示した9箇所順番に測定していく。
【0043】
測定バラツキを低減させるため、測定は15sec間に0.1sec間隔で行い、データの平均化を行った。そして、得られた放射率データからマスク面内で放射率及び温度分布のマッピングを行った。即ち、測定点以外の放射率は隣接する測定点からの補間によって求めた。その結果の一例として、放射率分布の例を図3(b)に示す。
【0044】
次いで、これらの数値をメモリさせておき、第1の放射温度計9の下方に第2の放射温度計10をX−Y駆動ステージ17を使って配置させ、第1の放射温度計9で測定したそれぞれの位置に対応する第2の放射温度計10の測定を第1の実施形態と同様にオフセット補正した。
【0045】
これらの補正を行った後、先述のマッピングで得られた放射率と第2の放射温度計10の出力によって、それぞれのランプ位置に対応するレジスト膜温度を計測しながら光照射によるレジスト膜加熱を開始した。
【0046】
制御は図3(a)中に○印で示すように、第2の放射温度計10で6つの代表点で実施し、放射特性が同一となると思われる位置についてはグループ化し、代表点の温度情報で実施し、放熱特性が同様になると思われる位置についてはグループ化し、代表点の温度情報で実施した。グループ化の例を図4に示す。
【0047】
設定最大温度は100℃、処理時間は40secとした。その後、ランプ2ヘの印加電圧を0にし、被処理基体1の加熱を停止した。その後、クーリングユニットに前出の搬送系を用いて被処理基体1を搬送し、基体1の冷却を実施した。
【0048】
次いで、第1の実施形態と同様にディップ現像、クロム膜のドライエッチング、レジスト剥離・洗浄を行った後、寸法SEMにてクロムパターンの寸法をマスク面内(130mm□)で測定した。その結果、第1の実施形態と同様に、極めて精度良いパターンが得られるのが確認できた。
【0049】
このように、本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果が得られる。また本実施形態では、放射率、基板初期温度についてマスク基板全面についてマッピングを行うことにより、放射率の測定を行わない個所の放射率についても大きな誤差なく予想でき、精度を落とすことなく処理を簡略化できる。
【0050】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。本発明の対象はマスク基板に限るものではなく、均一な熱処理を必要とする各種の基板に適用することが可能である。また、装置構成は図1に何ら限定されるものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。
【0051】
また、加熱前における被処理基体の初期温度が面内で大きくばらついており、加熱によってもこの温度差が一時的に残るような場合、均一な加熱処理が行えない。このような場合は、加熱手段により被処理基体を本来の加熱温度より低い温度まで加熱し、基体表面の面内温度が均一になるのを待って本来の加熱処理を行えばよい。
【0052】
また、実施形態では、被処理基体そのものを用いて第2の放射温度計のオフセット値及びゲイン値を求めたが、表面が均一な材料(例えば銅板)からなる校正用の基体を用いてこれらを求めるようにしてもよい。この場合、第1及び第2の放射温度計による測定を加熱前の低い温度と実際の加熱温度との2種の温度で行うことが可能となり、これによりゲイン値をより正確に設定することが可能となる。
【0053】
また、実施形態では第1及び第2の放射温度計を別々のステージ上に配置して移動可能にしたが、第1及び第2の放射温度計が相互に干渉しない位置にセットできるのであれば、これらの放射温度計を同一のステージ上に配置するようにしてもよい。さらに、第1及び第2の放射温度計を移動させる代わりに、被処理基体をヒータ等の加熱機構と共に移動させるようにしてもよい。
【0054】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、被測定対象面の放射率及び温度の測定が可能な第1の放射温度計と測定対象面の温度のみの測定が可能な複数の第2の放射温度計を用い、最初に第1の放射温度計により被処理基体の表面の放射率及び温度を面内で測定することにより、次に第2の放射温度計で被処理基体の表面の複数箇所の温度を測定することができ、第1及び第2の放射温度計の温度測定結果から、第2の放射温度計のオフセット値及びゲイン値を求めることができる。そして、オフセット値及びゲイン値を補正した後に第2の放射温度計で被処理基体の面内温度分布を測定することにより、温度分布を高精度に測定することが可能となる。
【0056】
そしてこの場合、構成が複雑で比較的大きな第1の放射温度計は1つで済み、複数個必要な第2の放射温度計は構成が簡単で小型であるため、第1の放射温度計を複数個配置するのに比して装置構成の小型化をはかることができる。即ち、簡易な構成の放射温度計を複数用いて、被処理基板上の薄膜の温度分布を高精度に測定することができ、高精度の加熱処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係わる熱処理装置の基本構成を示す図。
【図2】第1の実施形態におけるマスク面上の放射率分布と温度補正量分布を示す図。
【図3】第2の実施形態を説明するためのもので、第1の温度計を用いたマスク面内の温度及び放射率の測定位置と、放射率分布を示す図。
【図4】第2の実施形態におけるグループ化の例を示す図。
【符号の説明】
1…マスク基板
2…ハロゲンランプ
3…ライトガイド
4…フィルタ
5…マスク支持体
6…制御部
7…搬送アーム
8…装置外枠
9…第1の放射温度計
10…第2の放射温度計
11…ケミカルフィルタ
12…ダストフィルタ
15,17…X−Y駆動ステージ
20…駆動部
21…校正用ヒータ
30…冷却機構付きランプ支持台
Claims (5)
- 被処理基体の表面温度を放射温度計で測定し、この測定結果により被処理基体の被加熱領域に対してそれぞれ独立に制御可能な分割された加熱領域を持つ加熱手段の出力制御を行いながら該基体を加熱する熱処理方法であって、
被測定対象面の放射率及び温度の測定が可能な第1の放射温度計で前記被処理基体の表面の放射率及び温度を面内で測定する第1の工程と、第1の工程で得られた放射率を基に、複数個の第2の放射温度計で前記被処理基体の表面の複数箇所の温度を測定する第2の工程と、第1の工程で得られた温度と第2の工程で得られた温度から第2の放射温度計のオフセット値を求め、第2の放射温度計の測温値を補正する第3の工程と、第1の工程で得られた放射率及び第3の工程で得られたオフセット値を基に、第2の放射温度計を用いて前記被処理基体の面内温度分布を測定しながら前記加熱手段の出力を制御する第4の工程とを含むことを特徴とする熱処理方法。 - 加熱前における前記被処理基体の面内温度の差が所定値以上の場合、前記加熱手段により前記被処理基体を本来の加熱温度より低い温度まで加熱し、前記被処理基体の面内温度を揃えることを特徴とする請求項1記載の熱処理方法。
- 第1の放射温度計により放射率及び温度の測定を行う個所と第2の放射温度計により温度の測定を行う個所とは等しいことを特徴とする請求項1記載の熱処理方法。
- 第1の放射温度計により前記被処理基体の表面の放射率を複数点で求め、第2の放射温度計で測定を行う個所の放射率を、前記求めた複数点の放射率からの補間によって求めることを特徴とする請求項1記載の熱処理方法。
- 被処理基体の表面温度を放射温度計で測定し、この測定結果により被処理基体の被加熱領域に対してそれぞれ独立に制御可能な分割された加熱領域を持つ加熱手段の出力制御を行いながら該基体を加熱する熱処理方法であって、
被測定対象面の放射率及び温度の測定が可能な第1の放射温度計で前記被処理基体とは異なる校正用基体の表面の放射率及び温度を少なくとも2つの異なる温度に対して測定する第1の工程と、第1の工程で得られた放射率を基に、複数個の第2の放射温度計で前記校正用基体の表面の温度を少なくとも2つの異なる温度に対して測定する第2の工程と、第1の工程で得られた温度と第2の工程で得られた温度から第2の放射温度計のオフセット値及びゲイン値を求める第3の工程と、第1の放射温度計で前記被処理基体の表面の放射率を面内で測定する第4の工程と、第4の工程で得られた放射率及び第3の工程で得られたオフセット値及びゲイン値を基に、第2の放射温度計を用いて前記被処理基体の面内温度分布を測定しながら前記加熱手段の出力を制御する第5の工程とを含むことを特徴とする熱処理方法。
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