JP4282121B2 - 医療容器用口栓体及びその製造方法 - Google Patents

医療容器用口栓体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、点滴輸液等に用いられる合成樹脂製の医療容器の口栓体に係り、特に輸液容器のゴム栓部分に薬液注入または排出用針を穿刺、引抜する際に液洩れ、ゴム栓脱落がな〈、微小破片発生の極めて少ない経済的な口栓体に関する。
【0002】
【従来の技術】
輸液容器に設けられる口栓体のゴム栓には薬液の排出、他の薬剤の混注のために、金属、樹脂等で作られた針を穿刺する。このためこのゴム栓は一般に以下に述べるような特性が要求される。
すなわち、針を穿刺する際の抵抗はできるだけ小さく、引抜く際の抵抗は使用中の不意な引っ張り外力で抜けない程度に大きく、当然製造、輸送、在庫、使用あるいはこれらの作業中外郭支持体からの脱落や薬液の洩れがないよう確実に保持密閉されており、また穿刺した後実用的な時間内での穿刺部における液洩れがなく、抜針時には速やかに穴が閉塞して液密が確保される必要がある。なお薬液接触面から薬液への有害な物質の溶出、針穿刺時の微小破片の発生も極力少なくなくてはならない。
【0003】
従来、ゴム栓及びゴム栓支持体の構造についてはいくつかの種類があり、また改良の提案がなされてきた。
例えば、よく見られるものは円筒状ゴム栓の外周辺部円周上に連続的切り欠きを設け、別に成形された2つの合成樹脂製支持体で該切り欠き部に嵌合するよう上下から挟むことにより保持するものである。この方法では薬液の密封性が悪い上、ゴムの硬度が柔らがいと太いプラスチック製針の穿刺時に支持体からゴム栓が脱落しやすく、一方硬いと穿刺時の抵抗が高くなりクラックが生じやすく、また抜針時に液洩れの危険が大きくなる。またゴム栓内面に接液を防ぐ目的で内側の支持体に隔離膜を一体に形成した例もあり、ゴム栓の脱落は生じ離くなるが、成形上の制約から隔離膜が厚いため穿刺時の微小破片の発生が多く好ましくない。
【0004】
更にこれらを改善する方法としてゴム栓の表面に薄い合成樹脂製フィルムをラミネートしておき、その外側に配置する合成樹脂製外部支持体と合成樹脂フィルムとを溶融接着させるか、或いは該ゴム栓を金型にインサートして合成樹脂を支持体として射出成形し、該フィルムと射出された樹脂を溶融接着させることにより薬液の密封性、脱落に対する支持力を増大させる方法(特開平2−1275号公報)が提案されている。
しかし、ゴム栓に合成樹脂フィルムをラミネートする場合、ゴム栓製造の工程が複雑になり、ゴム栓打ち抜きの際にフィルムの微小くずの発生、歩留りの悪化、コストの増加などの製造上の問題点があり、また太いプラスチック針の穿刺時において微小破片の発生程度も必ずしも満足できるレベルでなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、医療容器用口栓体に求められる機能として、薬液の密封性はもちろん、穿刺時及び針引抜き後の液洩れの防止、穿刺時の微小破片の発生が極めて少なく、しかも穿刺抵抗が小さく、太いプラスチック針を穿刺しても外郭支持体からゴム栓の脱落が生じない確実な支持性を有し、且つ経済的にも優れた医療容器用口栓体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究した結果、ゴム栓をインサートして射出成形または射出圧縮成形などにより口栓体の外部支持体を成形する方法において、ゴム栓を特定の形状にすることにより上記課題を解決する医療容器用口栓体が得られることを見いだし本発明を完成した。
本発明は、予めゴム栓に外部から圧縮応力を作用させ径方向に圧縮を付与した医療容器用口栓体において、その優れた液漏れ防止性を損なわずに、ラミネートフィルムを用いないで実用十分なゴム栓支持性と薬液密封性を持たせ、微小破片の発生が極めて少なく且つ製造工程が簡略で経済的な医療容器用口栓体を提案するものである。
【0007】
すなわち本発明は、[1] ゴム栓と、一体で構成された合成樹脂製外郭支持体からなり、ゴム栓の外側部に設けられた凸断面環状部の上下面の双方がゴム栓の中心に向って上下方向厚みが薄くなるように傾斜し、且つ外郭支持体が該凸断面環状部の上下面を含む外側部に形成され、ゴム栓の天面側の外径がゴム栓の底面側の外径より大きいことを特徴とする医療容器用口栓体、[2] ゴム栓の外側部に設けられた凸断面環状部の上下面の少なくとも一面の一部ないし全部に、高さまたは深さが0.1mm以上の複数の凹部もしくは凸部または環状の溝または凸条を設けた前記[1]に記載の医療容器用口栓体、[3] ゴム栓の天面に設けられた穿刺用案内凹部と、該凹部に対応する位置の底面上に設けられた凹部との最小距離が2mmないし4mmである前記[1]または[2]に記載の医療容器用口栓体、及び
【0008】
[4] ゴム栓をインサートして射出成形または射出圧縮成形により医療容器用口栓体を製造する方法において、外郭支持体を形成する樹脂の注入口を、ゴム栓の外側部に設けられた凸断面環状部の最外周側面の厚さの中心よりも下側に設けた金型を用いる前記[1]ないし[3]のいずれかに記載の医療容器用口栓体の製造方法、を開発することにより上記の目的を達成した。
[5] さらに本発明は上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の医療容器用口栓体が輸液容器に取り付けられたポートの出口開口部に設けられていることを特徴とする輸液容器を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について図面を参照しながら詳しく説明する。
本発明の医療容器用口栓体に使用するゴム栓5は、使用する薬液に対する耐性、溶出物の量等について日本薬局方に規定されるプラスチック製医薬品容器試験法、輸液用ゴム栓試験法の規格に適合しているものを使用することが必要である。このゴム栓5には図示してはいないが輸液用チューブに取り付けた穿刺針を刺しやすくするためゴム栓の上面側6の所定の位置に通常は複数の円形または円錐状の凹み52または環状の突起を設けることが一般に行われる。
【0010】
合成樹脂製外郭支持体4は、ゴム栓5の周囲にあってゴム栓5を固定するとともに、合成樹脂製輸液容器1に通常取り付けられる円筒状の合成樹脂製ポート2の出口開口部に溶着して液密に栓をする。ここで言うポート2とは輸液容器1に液を充填したりまた使用時に液が通過しやすくするもので、さらに輸液用チューブに取り付けた針を抜き刺しする際に手で把持しやすく、また穿刺した針が輸液容器1を傷つけないような適当な長さと径を持つ円筒中空状の形状を有する。
材質は輸液容器1との接合性と上記機能を満たすため適当な剛性をもち、輸液容器1の接合部位と同種または同種の材料を含む材質で成形され、輸液容器に溶融接着できるよう選定される。
【0011】
また上記ゴム栓5の外部支持体4はこのポート2と溶着するため、ポート2及びゴム栓5と溶着する部位と同種または同種の材料を含む材質で形成される。具体的にはポート2の材質としては輸液容器1の材質に合わせポリエチレンまたはポリプロピレンなどを主体とする合成樹脂が使用される。そのため該外郭支持体4も同様にポリエチレン、ポリプロピレンを主体とする合成樹脂が使用されるが、熱溶着またはその他の接合方法での接合が可能であれば必ずしも同種の材質に限られるものではない。
【0012】
ゴム栓5の周囲にこの様な材質の樹脂を使用する場合、ゴム栓5に対して一定の圧縮力を作用させ、針引抜き後に速やがに針穴を閉塞して液洩れを防ぐとともにゴム栓5と外郭支持体4の境界部においてゴム栓5を圧縮状態にして両者を密に接触させ、薬液の洩れが生じないようにするのが好ましい。このような状態を得るためにはゴム栓5を金型内にインサートし、該外郭支持体4をゴム栓5の周囲に設けた空間に溶融樹脂を射出成形または射出圧縮成形して外郭支持体4を形成し、結果的に一定の圧力をかけてゴム栓を径方向に縮径させておくのが最適である。この成形方法は特開平8−317961号公報に詳しく述べられている。
【0013】
本発明のゴム栓においては、図2〜4に示すように外周側面部に設けられた凸断面環状部51の上下面の少なくとも一面が、円柱の中心に向がって上下方向厚みが薄くなるように傾斜し、凸断面環状部51の外側が最も厚みXが大きく、それより内側の部分の厚みYがこれより小さいことが必要である。このような口栓体はゴム栓5をインサートし、外郭支持体4を該上下面を含む外周側面に射出成形または圧縮成形により形成することにより製造できる。
ここでゴム栓5に外周側面部が凸状断面を形成しておらずに上下方向に平坦な形状であると、穿刺などの上下方向の荷重(引抜き力)に対して、凸断面環状部の上面57及び下面58が形成する狭い間隔の首部がないので挟持力が低く、抵抗力が弱くなり、比較的容易に脱落してしまう。また凸断面環状部51の上下面が平行または円柱の中心に向かって厚みが厚くなるように傾斜していると更に抵抗力が低くなり実用的でない。
【0014】
なお、該ゴム栓5凸断面環状部上下面は必ずしも平面でなくとも良く、小凹部54または小凸部55を設けることは引抜き抵抗性を一層高くする。また水平に対する角度は大きいほど、また直径方向の長さ(挟持する幅)が長いほど脱落に対する抵抗力は大きくなる。ゴム栓5及び外郭支持体4の外径と上下方向の厚みは輸液用容器1としての製品機能面及び製造工程上の制約などがあり、総合的なバランスから適性な寸法が決定される。一般的に外郭支持体4の外径は10〜30mm、厚みは5〜20mm程度の範囲が用いられる。
【0015】
さらに上記ゴム栓5の天面側、すなわち輸液用針が穿刺される天面側の外径Sが底面、すなわち輸液容器側に向く底面側の外径Tより大きいと脱落に対する抵抗が増す。天面側及び底面側の外径が同じか、若しくは逆に底面側の外径Tが小さいと脱落抵抗は小さくなる。その直径差は大きいほど抵抗が大きくなる、底面側の直径Tが小さ過ぎると天面側から刺した針が貫通する際にゴム栓5の凸断面環状部下側に形成された外郭支持体4の下部に接触し穿刺作業に支障を来す恐れがあり、その直径差(S−T)はゴム栓5の厚み及びゴム栓5の大きさにより変わるが、実用的には1mmから10mm以内が好ましい。
【0016】
また、上記ゴム栓5の凸断面環状部51の傾斜した上面57及び下面58の少なくとも一面の一部または全部に、複数または連続した小凹部54または小凸部58を設けることにより脱落に対する抵抗が更に増加する。この小凹部、小凸部は片側のみでも有効であるが上下両面に設ければ最も効果的である。凸部の形状は円柱状、半球状、円錐状等の複数の独立突起または円環状または渦巻き状等の連続突起および両者の組み合わせでも良く、高さは0.1mm以上必要である。高いほどまた突起部の底面の面積が大きい程効果的であるが、底面積に比べて高過ぎると外郭支持体4の形成時の樹脂圧力により変形するため実用的には高さ1mm程度までが望ましい。小凸部底面の面積は高さに合わせ可能な限り大きく選定される。
【0017】
また、小凸部に代えて小凹部を採用しても同様の効果を得ることができる。この場合も円柱状、半球状、円錐状等の複数の独立孔または円環状または渦巻き状等の連続溝及び両者の組み合わせでも良く、深さは0.1mm以上が必要である。深いほど効果的であるが孔径に比べ深過ぎると外郭支持体4を形成する際、孔の内部に樹脂が十分充填されず、効果が低下するため実用的には深さ1mm程度までが望ましい。また上下面からの孔が貫通していても良い。孔径は樹脂圧カによる有害な変形が生じない範囲で可能な限り大きく選定する。
【0018】
さらに、通常ゴム栓5の外郭支持体4からの脱落は、穿刺される針の侵入抵抗が大きいと発生しやすく、具体的には針の直径が大きいほど、またゴム栓5と針との間の摩擦係数が大きいほど侵入抵抗が増加し脱落しやすくなる。そこで上記の如く外郭支持体4とゴム栓5自体の脱落抵抗値を増加させる工夫以外に、針の侵入抵抗を低減し実質的に脱落を防止することを狙い種々検討を重ねた結果、ゴム栓4の天面6に設けられた穿刺用案内凹部52と、該凹部に対応する位置の底面7上に設けられた凹部53との距離を2ないし4mmとするのが最適であることを見いだした。この距離が2mmより小さいと抜針後の液洩れ防止性能が低下し、また4mmを越えると針侵入抵抗の低滅効果が不十分となる傾向が現れやすい。天面6に設ける穿刺用案内凹部52の形状は針の穿刺に支障がない限り特定する必要はないが、通常は円形または円錐形であり、複数の必要な数を設けることができる。またゴム栓底面7に設ける凹部53は円形の凹部となる。
【0019】
また、ゴム栓5は弾性体であるため金型内にインサートし、外部から溶融樹脂を射出成形する時は、樹脂の射出圧力で変形しやすい。抜針後の液漏れを防止するためゴム栓の周囲からゴム栓全体に均一に樹脂圧カがかかるように注入口(ゲート)を配置するのは勿論だが、上記の如くゴム栓5の外周側面部に凸断面環状部4を設け、その上下面が円柱状ゴム栓の中心に向かって厚みが薄肉になるように傾斜している形状の場合、主に樹脂の流動に起因する圧力の偏りにより、寸法によっては該凸断面環状部4の最も薄い部位に対する曲げモーメントが作用してゴム栓が変形し、成形終了後に予定した形状にならない場合が生じる。
この変形の程度はゴム栓5の樹脂注入口の位置により変化するが、凸断面環状部4の厚さXの中心よりも底面側に注入口を設けることにより変形を大きく減少し得ることを見いだした。この位置より上面側に注入口を設けると、樹脂注入時に発生する圧力が下向きに作用してゴム栓の凸断面環状部を下向きに変形しやすくなる。
この結果、射出成形などが困難な凸断面環状部を有するゴム栓であっても、穿刺時及び針引抜き後の液洩れの防止が可能である医療容器用口栓体を生産性良く効率的に成形できた。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、薬液の密封性に優れ、穿刺時または針引抜き後の液洩れが少なく、太いプラスチック針などの穿刺時においても外郭支持体からのゴム栓の脱落がなく、また微細破片の発生が少ない、かつ製造が容易であり生産性が高い医療容器用口栓体を開発した。本医療容器用口栓体を使用した輸液容器は安全で、操作も容易、確実なものであり、医療分野において広く使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療容器の外観図。
【図2】本発明の口栓体の断面図の一例。
【図3】本発明の口栓体の断面図の他の例。
【図4】本発明の口栓体の更に別の例。
【符号の説明】
1 輸液容器本体
2 ポート
3 口栓体
4 外郭支持体
5 ゴム栓
51 凸断面環状部
52 穿刺用案内凹部
53 針案内部
54 小凹部
55 小凸部
57 凸断面環状部上面
58 凸断面環状部下面
6 ゴム栓天面
7 ゴム栓底面
8 樹脂注入口
S ゴム栓の天面側の外径
T ゴム栓の底面側の外径
X 凸断面環状部の外周側面部厚み
Y 凸断面環状部の首部の厚み

Claims (5)

  1. ゴム栓と、一体で構成された合成樹脂製外郭支持体からなり、ゴム栓の外側部に設けられた凸断面環状部の上下面の双方がゴム栓の中心に向って上下方向厚みが薄くなるように傾斜し、且つ外郭支持体が該凸断面環状部の上下面を含む外側部に形成され、ゴム栓の天面側の外径がゴム栓の底面側の外径より大きいことを特徴とする医療容器用口栓体。
  2. ゴム栓の外側部に設けられた凸断面環状部の上下面の少なくとも一面の一部ないし全部に、高さまたは深さが0.1mm以上の複数の凹部もしくは凸部または環状の溝または凸条を設けた請求項1に記載の医療容器用口栓体。
  3. ゴム栓の天面に設けられた穿刺用案内凹部と、該凹部に対応する位置の底面上に設けられた凹部との最小距離が2mmないし4mmである請求項1または2に記載の医療容器用口栓体。
  4. ゴム栓をインサートして射出成形または射出圧縮成形により医療容器用口栓体を製造する方法において、外郭支持体を形成する樹脂の注入口を、ゴム栓の外側部に設けられた凸断面環状部の最外周側面の厚さの中心よりも下側に設けた金型を用いる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医療容器用口栓体の製造方法。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医療容器用口栓体が輸液容器に取り付けられたポートの出口開口部に設けられていることを特徴とする輸液容器。
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