JP4282115B2 - 海洋構造物の構築工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工リーフや潜堤、防波堤や突堤等のように、波浪や水流の影響により、海底地盤が吸出しや洗掘の影響を受けやすい場所での地盤の保護部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
防波堤、岸壁や護岸等のような海洋構造物を構築するに際しては、一般に海底の地盤を均してから、その上に所定の高さの基礎捨石堤を構築し、その基礎捨石堤の上面にケーソンのような構造物を設置して構築することが行われている。また、前記基礎捨石堤の構築に際しては、その地盤が軟質な場合には、地盤の改良工事を行ってから、その地盤上に基礎捨石堤を構築し、その基礎捨石堤の上にケーソン等を載置している。前記構造物としては、一般にコンクリート製の箱型のものや鋼製のもの、鋼製の構造物の表面に所定の厚さのコンクリートを被覆したハイブリッドケーソンと呼ばれるもの等が用いられる。また、前記ケーソンは陸上で構成されたものを、海上に浮かべて構築箇所まで曳航したり、クレーン等により吊り下げた状態で搬送され、構造物構築現場で海面に沈めて基礎捨石堤の上に載置される。
【0003】
例えば、一般的な海洋構造物として例示する防波堤は、図13に示すように構成されるもので、海底地盤7の上に捨石による基礎捨石堤4を構築し、その上面を平らに均した上面に、ケーソン1のような構造物を載置して構築している。前記基礎捨石堤4の上面とケーソン等の構造物1の底版2との間には、摩擦増大用のマット3を配置しており、前記マット3はケーソンを陸上で製作する際に、そのケーソンの底版2の下面に一体に取り付けて構成することが多い。
【0004】
前記ケーソンを支持するための基礎捨石堤は、前述したような地盤改良を行った海底地盤上に構築されるが、海洋構造物の構築現場が潮流や波浪の影響を受けやすいところでは、海底地盤が吸出されたり洗掘されるという問題がある。そこで、従来より基礎捨石堤の構築地盤上にアスファルトマットや繊維製のシート部材等を敷設して、砂地等の地盤を吸出しおよび洗掘から保護し、構造物を支持する基礎捨石堤を安定させるような手段が用いられている。前記海底地盤を保護するための工法およびそれに使用するシート状の保護部材として、例えば、特開平7−82719号公報等に示されるように、通水性を有するが砂等を通さない合成繊維製のシートと、金網とを重ねた重合シートを用いることが知られている。そして、前記重合シートを用いて海底地盤を保護することにより、波浪とか潮流の影響により地盤の砂等が吸出されたり、洗掘されたりせずに、基礎捨石堤に対する支持作用を良好に行い得るとともに、海底地盤上に重合シート部材を介して捨石を投棄して基礎捨石堤を構築する場合にも、軟質な海底地盤上に安定して基礎捨石堤を構築できるという特徴を発揮できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来例のように、海底地盤7上に重合シート部材を配置した上に基礎捨石堤を構築する場合に、前記基礎捨石堤の端部に位置する海底地盤を洗掘から保護するためには、その構造物の施工場所の海底地盤の地質に応じて、重合シート部材の敷設範囲を設定することが必要である。この点に関して、前記従来例では、基礎捨石堤端部からの重合シート部材の突出長さを洗掘を防止できる長さに設定し、その重合シート部材の先端部に重量帯を配置することにより、海底地盤の洗掘が発生した場合に、前記重合シート部材端部に配置した重量帯が、重合シート部材とともに洗掘部に入り込んで、一定の値以上の洗掘が生じないようにすることが示されている。
【0006】
しかしながら、前記重量帯として蛇籠等のようなものを配置するのみでは、基礎捨石堤先端部にまで洗掘が進行することを防止できない場合があり、広い面状の洗掘に対する押さえが要求される場合が多くある。また、潮流が速い海域や波の荒い海域、または、防波堤等の外洋に面した基礎捨石堤の先端部、および、海底地盤が砂地や軟質の地層の場合には、特に洗掘に対して十分な対応策を採用することが求められる場合が多くあり、海洋構造物を安定して設置するためには、従来の工法以上の高い耐久性を要求されている。
【0007】
本発明は、前述したような従来の構造物の安定性を向上させるもので、重合シート部材の先端部に任意の長さのマット層を一体に取り付け、前記マット層が海底地盤の洗掘に対して容易に湾曲し、洗掘の進行を防止できるようにすること、および、ケーソンを支持する基礎捨石堤を安定して保護できる海洋構造物の構築工法を提供することを目的としている。
【0008】
(課題を解決するための手段)
本発明は、防波堤のような構造物を支持する基礎捨石堤を、海底地盤面上に敷設した重合シート部材の上に構築する工法に関する。
本発明において、前記重合シート部材は繊維層の上に金網層を重ね、両者を固定して一体化したものとして構成し、
前記重合シート部材の周囲には、その端部が重なるようにアスファルトで構成したマット部材を配置し、
前記マット部材の内部に埋め込んで荷役等に使用するワイヤに係止ワイヤを接続して、前記係止ワイヤの前記マット部材の端部から突出させた端に接続部を設け、
前記マット部材から突出させた前記係止ワイヤの接続部を、重合シート部材の金網に接続して取付けるとともに、
前記重合シート部材の周囲に取付けられた前記マット部材は、隣接するものを相互に所定の巾の重なり部を持たせて組み合わせて海底地盤面上に敷設し、
前記重合シート部材を敷設した上に基礎捨石堤を構築するに際しては、前記マット部材の端部に基礎捨石堤の端部を位置させて構築し、
前記重合シート部材の上に構造物の基礎を支持した状態で海底地盤が洗掘を受けて、前記重合シート部材の周囲のマット部材が、各々不等に沈下したとしても、その洗掘を受けた地盤を保護する作用を維持可能としたことを特徴とする。
【0009】
そして、前述したように構成したことにより、本発明においては、重合シート部材を繊維層と金網層とを重合したもので構成し、その重合シート部材の端部にマット部材を一体に設けることにより、海底地盤に洗掘部が形成された場合に、その洗掘部の斜面に沿って容易に変形するので、洗掘作用が基礎捨石堤の基部にまで到達することを防止できるので、基礎捨石堤を安定した状態で支持可能であり、構造物が崩壊したりすることを防止できる。また、重合シート部材に対するマット部材の固定は、重合部と接続ワイヤとを用いて行うとともに、重合部からマット部材の所定の範囲を基礎捨石堤の端部が覆うように設けるために、マット部材の端部が洗掘部に向けて曲り込んだ場合にも、マット部材が重合シート部材から離間することを防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図示される例にしたがって、本発明の海洋構造物の構築工法を説明する。図1に示す例は、前記図13に示したように、海底地盤7上に基礎捨石堤4を構築し、その基礎捨石堤4上にケーソン1を設置して海洋構造物を構築する場合を示している。この実施例においては、基礎捨石堤4を構築する際に、海底地盤7上に重合シート部材10を配置して、基礎捨石堤の捨石の投棄に対処させるようにしているが、前記重合シート部材10の両側には、所定の長さ(巾)のマット部材15をそれぞれ配置して、前記重合シート部材10とマット部材15とを一体化したものを用いている。また、前記重合シート部材10の両側に配置するマット部材15は、前記ケーソンの下面に配置する摩擦増大部材等と同様に、内部に補強部材を一体に入れたアスファルトマスチックを、所定の厚さに形成したマット部材として構成したものを用いている。
【0011】
前記図1に示す構造を図2の平面図にしたがって説明すると、ケーソン1の設置場所の両側に所定の範囲で基礎捨石堤4を構築するが、前記基礎捨石堤4の端部よりも若干内側に重合シート部材10とマット部材15との重合部17を、所定の範囲で設けている。そして、前記重合部17に対して基礎捨石堤4の端部が押え部材として作用するように配置し、マット部材15の基部を固定保持している。また、この実施例では、マット部材15の基礎捨石堤4端部からの突出長さLをほぼ同一に設定しているが、波の荒い外洋側と波の静かな内海側とでは、マット部材の突出長さを異ならせても良く、その突出長さLは洗掘の発生予測に応じて任意に設定が可能である。また、洗掘が構造物の外洋側のように、一方でのみ発生すると予測される場合には、内海側のマット部材の突出長さを非常に短く形成して、マット部材の施工単価を引き下げることも可能である。
【0012】
図3の例に示すように、海底地盤7を覆う重合シート部材10の端部が、前記基礎捨石堤4の端部よりも内側に位置され、前記基礎捨石堤4の端部に対してはマット部材15の端部が入り込む状態で、長さLだけ基礎捨石堤の外側に延長させて設けている。そして、前記重合シート部材10とマット部材15とを重ねた重合部17をL1だけ設定して、前記重合部17の所定の位置で、マット部材15を金網層に係止して両部材を一体化している。また、前記基礎捨石堤4において、重合シート部材10と重合部の上に所定の厚さで捨石層5を構築した上に、その表面を覆う被覆石層6の層を所定の厚さで形成しているが、この構成は一般の基礎捨石堤の場合と同様に構築されるものである。
【0013】
前記図3に示すように、マット部材15の基部を基礎捨石堤の下部にまで入り込ませて、金網層10の端部に係止保持させる手段を用いた場合には、図4に示すように、マット部材の洗掘に対する抵抗作用を良好に発揮できる。つまり、海底地盤7が洗掘作用を受けて洗掘部8が形成されると、その洗掘部8に向けてマット部材の端部が地盤の形状の変化に適応して曲がり、先端部15aが孔に入り込む状態となる。そして、前述したようにして先端部15aが曲げられて、洗掘部の斜面を覆うようにして落ち込むことにより、マット部材15の先端部が外側に引っ張られるような力が作用した場合でも、重合部17と両シートの係止部材とがマット部材の移動を阻止し、金網層からマット部材が外れて抜け出したりしないように保持できるようにする。
【0014】
前記基礎捨石堤の下部に配置する重合シート部材10とマット部材15とは、図5に示すように構成しているもので、重合シート部材10としては、下面に繊維層11を配置した上面に金網層12を配置して両者を固定部材を用いて一体化し、2種類のシート状の部材を重合したものとして構成している。前記重合シート部材10の両側に配置して固定するマット部材15は、重合部17と固定部16とを介して重合シート部材10と一体化して、マット部材が外側に向けて重合シート部材から離れるような力が加えられても抵抗できるようにしている。前記固定部16としては、任意の固定手段を用いることができるものであり、例えば、ナス環やその他のワンタッチで固着できるようなものを用いることができ、マット部材の端部に突出させて設けた係止手段としての係止ワイヤ等を用い、前記ワイヤの端部に設けた固定部を介して金網層の針金に係止する。なお、前記マット部材15においては、重合シート部材との間に配置する固定部16は、任意の間隔で設けることができる。
【0015】
前記マット部材15においては、長方形の単位マット20を用いて、隣接する単位マットとの間を重ね部21を介して連続するように設けており、多数枚の単位マット20……を配置した場合でも、それが1枚のマット部材として作用できるようにしている。また、前記単位マット20としては、従来より港湾工事に用いられているアスファルトマットと同様な部材を用いているもので、前記単位マットは例えば、巾が5mで長さが10m以上のものとして構成している。そして、前記単位マットを多数枚組み合わせてマット部材を構成した場合に、マット部材の端部の一部に対応する位置で、海底地盤の洗掘部が発生した時には、該当する位置にある単位マットの端部が洗掘部に対応して変形し、洗掘部に曲り込むことにより、洗掘や吸出しが進むことを防止できるように作用する。
【0016】
なお、1つの単位マットが変形した場合には、隣接する単位マットとの間の重ね部ではズレが生じることが想定されるが、そのような局部的な単位マット端部の変形が生じたとしても、マット部材の全体の連続性には支障が生じることはない。さらに、前述したようにして単位マットを組み合わせてマット部材15を構成し、重合シート部材の周辺に配置する場合に、マット部材の先端部で広い範囲で洗掘が生じたとしても、各単位マットの先端部が図4に示したような状態で変形し、洗掘部の斜面を覆う状態となるので、前記単位マットに覆われる地盤部分を保護できる。そして、基礎捨石堤の基部にまで洗掘が進行することが阻止されるので、重合シート部材の部分にまで洗掘が進行することはなく、基礎捨石堤を安定した状態で保持できる。
【0017】
一般的な単位マットにおいては、図6に示すように、巾方向に平行な多数本の荷役用ワイヤ23……を配置しており、前記荷役用ワイヤの端部に形成したアイ部24を吊具に係止して、単位マットの荷役に用いている。そこで、本実施例においては、前記単位マット20に配置している荷役用ワイヤ23のうちの端部のものに対して、図7に示すような接続ワイヤ25を取り付けて、金網層に対する接続手段を構成している。前記図7に示す例においては、符号25で示す接続ワイヤのように、端部の荷役用ワイヤ23に対して基部固定部26を介して接続し、突出端部に接続部27を配置することができる。
【0018】
また、1本の荷役用ワイヤに対して接続する他に、マット中に埋設される端部の2本の荷役用ワイヤに対してそれぞれ基部固定部26aを用いて固定した接続ワイヤ25aとして構成することもできる。さらに、接続ワイヤ25bとして示すように、単位マットの長さ方向に荷役用ワイヤに直交させる状態で配置して、前記荷役用ワイヤ25bの端部に設けた基部固定部27bを介して金網層に固定する手段を用いることもできる。前記接続ワイヤによる接続方式は、マット部材に付与されると推定される引っ張り力に対して、接続ワイヤを用いてマット部材を安定させて保持できるような手段を用いるものであり、構造物の構築海域の条件に応じて任意に選択可能である。
【0019】
前記図7に示すような接続手段としての接続ワイヤは、図8〜10に各々開示されるように、単位マット本体に取り付けられるもので、図8に示す例では、荷役用ワイヤ23に接続部27を介して接続したものを、マットの上面に向けて露出させ、接続ワイヤの自由側端部を任意の長さに延長して置くことにより、金網層との接続作業に対処できるようにする。また、図8の鎖線で示すように、接続ワイヤ25をマットの下面に突出させておくことも可能であるが、前記接続ワイヤはマットの上下の任意の位置に露出させることは、マット部材の施工条件に対応させて任意に選択される。
【0020】
図9に示す例は、単位マットの端部から接続ワイヤを露出させる場合を示しているもので、端部の荷役用ワイヤから単位マットの端部まで接続ワイヤを埋設して設けることにより、アスファルト層により接続ワイヤを保持できるという利点がある。図10に示す例では、荷役用ワイヤ23に直交するようにして、長い接続ワイヤ25bを埋設して設けるが、これは前記図7の接続ワイヤ25bに対応する断面で示している。
【0021】
前述したように、本実施例において説明している単位マット20は、従来の海洋工事に用いるアスファルトマットと同様に、2層に分けて打設するアスファルト層の間に、内部補強部材22と荷役用ワイヤ23……とを挟むようにして配置し一体化している。前記内部補強部材としては、ガラスクロスや金網等のようなものを用い、内部補強部材を介して上下のアスファルト層を接続することにより、荷役用ワイヤに吊り荷重が付与された際にも、荷役用ワイヤが抜け出したりすることがないように保持される。そして、前述したような荷役用ワイヤに対して接続ワイヤの端部を固定した場合にも、その基部固定部がアスファルト層の中で固定保持されることにより、接続ワイヤに引っ張り力が付与された際にも、接続ワイヤがマットから抜け出したりすることがない。さらに、前記図7〜9の各々に示すように、接続ワイヤを荷役用ワイヤに対して1か所または複数箇所で基部固定部を介して接続することにより、接続ワイヤによる単位マットの保持作用を確実に発揮させることが可能になる。
【0022】
図11に示す例は、前記各実施例に示されたような接続ワイヤを荷役用ワイヤに接続して設けることに代えて、単位マット20の端部にロープネット30を一体に設けておき、前記ロープネット30の端部ロープ31を用いて接続用ワイヤ32を配置する例を示している。前記ロープネット30としては、従来より荷役に使用しているワイヤネットと同様に、ワイヤロープをネット状に編み込んで構成しているものを用いることができるもので、前記ロープネットに使用するワイヤとしては、任意の太さのものを用いることができる。図11の例では、前記図10に示したように、単位マット20の内部補強部材と重ねるようにしてロープネット30を配置し、前記ロープネット30の端部ロープ31を所定の長さだけ単位マットの端部から露出させる。
【0023】
そして、前記端部ロープ31と重合シートとを、任意の接続部材を用いて固定することにより、重合シートに対して単位マットの端部を接続するが、その接続部では、2本のワイヤまたは針金の接続であるから、簡単なクリップ等を用いても容易に接続が可能である。また、前記単位マットに埋設したロープネットを用いる場合には、重合シートとの接続手段としては任意の位置で接続することができるものであり、単位マットに付与される力の大きさに対応させて、接続箇所を選択することができる。
【0024】
図12に示す例では、単位マット20の内部補強部材とほぼ同じ大きさのロープネット30を用い、前記ロープネット30を介して荷役用ワイヤと接続用ワイヤとを取り付ける場合を示している。この実施例では、単位マットの内部補強部材としての、従来より用いられている補強ワイヤや補強鉄筋に代えて、ロープネット30を用いることができるものであり、単位マットの周囲に配置されるロープネットの端部ロープ31に対して、接続用ワイヤ32……と、端部にアイ部材36を設けた荷役用ワイヤ35……とを、各々接続して設けることができる。
【0025】
前記接続用ワイヤと荷役用ワイヤとは、ロープネットのクロスしているワイヤの端部に接続して配置することができるものであるから、荷役時に荷役用ワイヤに付与される張力に対しては、ロープネットの縦のワイヤが対応し、重合シートとの接続後に接続用ワイヤに加えられる張力に対しては、ロープネットの横のワイヤがそれぞれ対応する状態となる。したがって、前記ロープネットを単位マットの内部に一体に埋設して用いる場合には、そのロープネット自体が補強部材としての役目を負担するものであると同時に、荷役用と接続用との2つの張力負担部材として作用させることが可能になる。
【0026】
前記ロープネットに代えて、本実施例に示す単位マットにおいては、金網のようなネット状の部材を用いることができるもので、金網を用いる場合には、前記ロープネット30の例と同様に配置して、単位マットと一体に構成し、接続用ワイヤと荷役用ワイヤとをそれぞれ取り付けることが可能である。また、前記金網の他に、合成繊維製のネット部材を用いて、前記ロープネットと同様に単位マットと一体に設けることも可能であり、そのようなネットを用いた場合にも、接続用ワイヤと荷役用ワイヤとをそれぞれの端部に配置して構成することが可能となる。
【0027】
さらに、前記ロープネットに代えて、「ジオグリット」または「ポリマーグリッド」と呼ばれる高強度の樹脂ネットを用いることもできる。前記樹脂ネットは、ポリプロピレンまたは高密度ポリエチレン等の厚手のシートに孔を開け、1軸または2軸方向に加熱しながら延伸して、強度の大きなネット状のものとして構成したものである。そして、前記樹脂ネットを、前記図11、12に示すようにして単位マットの内部に埋設して配置し、接続用ワイヤと荷役用ワイヤとをそれぞれ接続して配置することにより、前記ロープネットと同様な作用を負担させることができる。
【0028】
なお、前記樹脂ネットを用いる場合に、重合シートとの接続部に対しては、荷役時のような大きな力が付与されないので、樹脂ネットに対して直接接続用ワイヤを接続しても良いと考えられる。これに対して、荷役用ワイヤを接続する位置には大きな張力が付与されることが想定される時には、図6等に示したようなアイ部材を端部に設けた荷役用ワイヤを取り付けて、荷役に供することもでき、単位マットを吊り上げて敷設する時等に、前記樹脂ネットに単位マットの重量を負担させないようにすることも可能である。
【0029】
前記各実施例においては、基礎捨石堤上にケーソンのような既成の構造物を設置して、海洋構造物を構築する場合で説明したが、本発明の海洋構造物の構築工法は、消波用の離岸堤や潜堤等のような構造物に対しても適用が可能である。前記潜堤等の構造物においては、前記図1に示すような基礎捨石堤4を、海面よりも若干低い位置にまで構築するもので、基礎捨石堤の被覆石層を大きなもので構築することや、一般的な消波ブロックを乱積み状態で基礎捨石堤の上に構築する。そして、前記ケーソンのように、海面上に突出させないで潜堤を構築する場合にも、マット部材による海底地盤の洗掘を防止して、潜堤を安定させる状態に維持できるものとされる。
【0030】
なお、前述したような構成を有する単位マットは、接続ワイヤを介して重合シート部材に固定接続させることの他に、多数の単位マットを配置してマット部材を構成する際に、隣接する単位マット同士、または、任意の単位マットの間を荷役用ワイヤを用いて接続することも可能である。前記荷役用ワイヤを介して単位マットを接続することは、多数の単位マットを個別に分離させることがなく、マット部材を一体化する上では有効なものであり、特に、波の荒い海域や洗掘が進行しやすい海底地盤に対しては、マット部材が個々にあおられたりすることを防止して、基礎捨石堤が海底地盤の洗掘により不安定になることを防止し、ケーソンを安定保持させることができる。
【0031】
また、前記実施例において、重合シート部材としては任意の大きさのものを用いることができるが、例えば、重合シート部材の単位体の大きさが、荷役や敷設の作業の都合により制限される場合には、多数枚の重合シート部材単位体を海底地盤上で接続して、所定のサイズの重合シート部材を構成することができる。前記重合シート部材単位体を接続するためには、金網層を接続することができるが、その他に、任意の接続手段を用いることが可能である。また、重合シート部材の単位体を端部が所定の巾で重なるように配置し、複数の金網層に亘って長いワイヤや針金のような張力部材を配置して、その張力部材の端部に単位マットの接続ワイヤを接続するような手段を用いると、マット部材と重合シート部材との一体化をより良好に設定できる。
【0032】
【発明の効果】
前述したように、重合シート部材を繊維層と金網層とを重合したもので構成し、その重合シート部材の端部にマット部材を一体に設けることにより、前記重合シート部材が捨石の投棄等に対して対抗でき、海底地盤の砂等の吸出しを防止できる。また、重合シート部材の端部に配置するマット部材は、海底地盤に洗掘部が形成された場合に、その洗掘部の斜面に沿って容易に変形するので、洗掘作用が基礎捨石堤の基部にまで到達することを防止できるので、基礎捨石堤を安定した状態で支持でき、構造物が崩壊したりすることを防止できる。さらに、重合シート部材に対するマット部材の固定は、重合部と接続ワイヤとを用いて行うとともに、重合部からマット部材の所定の範囲を基礎捨石堤の端部が覆うように設けるために、マット部材の端部が洗掘部に向けて曲り込んだ場合にも、マット部材が重合シート部材から離間することを防止できる。そして、本発明の海底地盤の保護手段を潜堤に適用する場合にも、前記構造物の場合と同様に、洗掘や吸出しに対する基礎捨石堤の保護を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の海洋構造物の施工状態の説明図である。
【図2】 図1の平面図である。
【図3】 基礎捨石堤の端部に対する重合シート部材とマット部材の配置状態の説明図である。
【図4】 マット部材の端部で洗掘が生じた場合の説明図である。
【図5】 重合シート部材とマット部材の構成を示す説明図である。
【図6】 一般的なアスファルトマットの構成の説明図である。
【図7】 単位マットに接続ワイヤを取り付ける例の説明図である。
【図8】 接続ワイヤの取り付け状態を示す説明図である。
【図9】 接続ワイヤの取り付け状態の別の例の説明図である。
【図10】 接続ワイヤの取り付け状態の他の例の説明図である。
【図11】 接続手段としてロープネットを用いる例の説明図である。
【図12】 単位マットと一体に設けた大サイズのロープネットを用いる例の説明図である。
【図13】 一般的な海洋構造物の施工状態の説明図である。
【符号の説明】
1 ケーソン、 2 底版、 3 マット部材、
4 基礎捨石堤、 5 捨石層、 6 被覆石層、
7 海底地盤、 8 洗掘部、 10 重合シート部材、
11 繊維層、 12 金網層、 15 マット部材、
20 単位マット、 21 重ね部、 22 内部補強部材、
23 荷役用ワイヤ、 25 接続ワイヤ、
30 ロープネット、 31 端部ロープ、 32 接続用ワイヤ。
Claims (1)
- 防波堤のような構造物を支持する基礎捨石堤を、海底地盤面上に敷設した重合シート部材の上に構築する工法であって、
前記重合シート部材は繊維層の上に金網層を重ね、両者を固定して一体化したものとして構成し、
前記重合シート部材の周囲には、その端部が重なるようにアスファルトで構成したマット部材を配置し、
前記マット部材の内部に埋め込んで荷役等に使用するワイヤに係止ワイヤを接続して、前記係止ワイヤの前記マット部材の端部から突出させた端に接続部を設け、
前記マット部材から突出させた前記係止ワイヤの接続部を、重合シート部材の金網に接続して取付けるとともに、
前記重合シート部材の周囲に取付けられた前記マット部材は、隣接するものを相互に所定の巾の重なり部を持たせて組み合わせて海底地盤面上に敷設し、
前記重合シート部材を敷設した上に基礎捨石堤を構築するに際しては、前記マット部材の端部に基礎捨石堤の端部を位置させて構築し、
前記重合シート部材の上に構造物の基礎を支持した状態で海底地盤が洗掘を受けて、前記重合シート部材の周囲のマット部材が、各々不等に沈下したとしても、その洗掘を受けた地盤を保護する作用を維持可能としたことを特徴とする海洋構造物の構築工法。
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