JP4282099B2 - 表面処理組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材表面に充分な汚染防止効果と優れた耐候性を付与し、かつ経済性に優れた基材の表面処理組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、樹脂等の基材は、自動車部品、OA機器、家電製品等として汎用されている。これらの基材表面は、車内、オフィス内、室内等に浮遊するゴミが付着したり、食品、機器用のオイル等に混合されている拭き取り困難な油状物質が付着したり、使用中にヒトの手により指紋が付着したりして汚染されるため、これらの汚染物質が付着しにくく、更には、いったん付着した汚染物質が容易に除去することができるような防汚のための工夫が必要となる。
【0003】
特開平1−126244号公報等には、ガラス表面の防汚処理手段として、ガラス表面にポリジメチルシロキサン等の高分子物質を直接塗布するか又は処理剤に浸漬することによって塗膜を形成する技術が開示されている。また、化学吸着法によってフッ素を含む化学吸着単分子膜をガラス表面に形成させる技術も知られている。
【0004】
特公平7−53913号公報には、金属表面の防汚処理手段として、亜鉛系メッキ皮覆の上層にシリカゾルシランカップリング剤を配合したクロメート皮覆を形成せしめ、その上層にイソシアネート系塗料組成物を用いて薄膜塗装をした有機複合メッキ鋼板に関する技術が開示されている。
【0005】
更に、反射防止フィルターの防汚効果を高める目的で、反射防止膜の上層にパーフルオロポリエーテル化合物をシラン処理した化合物の皮膜を形成せしめる技術が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の技術は、いずれも汚染防止作用を高めるために一定の効果を有するものではあるが、高価な含フッ素有機溶剤を多量に使用しなければならないので、生産コストの点で問題があるものであった。
上記の現状に鑑み、本発明は、充分な汚染防止作用を有するとともにその作用が永続し、更に充分な耐候性を併せもつ基材の表面処理組成物であって、かつ、経済性にも優れたものを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の表面処理組成物は、下記一般式(I)で表されるケイ素含有有機含フッ素ポリマー(1)、含フッ素有機溶剤(2)、及び、前記含フッ素有機溶剤(2)と相溶性を有する有機溶剤[ただし、含フッ素有機溶剤(2)を除く](3)を含有してなることを特徴とする。
【0008】
【化3】
【0009】
式中、Rf は、パーフルオロアルキル基を表す。Zは、フッ素又はトリフルオロメチル基を表す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、a+b+c+d+eは、少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。Yは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、水素、臭素又はヨウ素を表す。R1 は、水酸基又は加水分解可能な置換基を表す。R2 は、水素又は1価の炭化水素基を表す。lは、0、1又は2を表す。mは、1、2又は3を表す。nは、1以上の整数を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の表面処理組成物の第一の成分は、上記一般式(I)で表されるケイ素含有有機含フッ素ポリマー(1)である。
上記一般式(I)で表される式中、Rf としては、通常、有機含フッ素ポリマーを構成するパーフルオロアルキル基であれば特に限定されず、例えば、炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のものを挙げることができる。好ましくは、CF3 −、C2 F5 −、C3 F7 −である。
【0011】
上記一般式(I)中のZは、フッ素でもよいしトリフルオロメチル基でもよい。
上記一般式(I)中のa、b、c、d、eは、ケイ素含有有機含フッ素ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテル鎖の繰り返し単位数を表し、0又は1以上の整数でありa+b+c+d+eが1以上であれば特に限定されないが、それぞれ独立して、0〜200が好ましく、後述するケイ素含有有機含フッ素ポリマーの分子量を考慮すれば、より好ましくは、それぞれ独立して、0〜50である。a+b+c+d+eは、好ましくは、1〜100である。
【0012】
また、a、b、c、d、eでくくられた各繰り返し単位の存在順序は、便宜上一般式(I)中においてはこの順に記載したが、通常のパーフルオロポリエーテル鎖の構成に鑑み、これらの各繰り返し単位の結合順序は、この順に限定されるものではない。
【0013】
上記一般式(I)中のYは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。上記炭素数1〜4のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等を挙げることができ、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
上記一般式(I)のXは、水素、臭素又はヨウ素を表す。Xが臭素又はヨウ素である場合には、本発明のケイ素含有有機含フッ素ポリマーはラジカル反応性が高くなるので、化学結合により他の化合物と結合させるのには好都合である。
【0014】
上記一般式(I)中のlは、パーフルオロポリエーテル鎖を構成する炭素とこれに結合するケイ素との間に存在するアルキレン基の炭素数を表し、0、1又は2であるが、より好ましくは、0である。
【0015】
上記一般式(I)中のmは、ケイ素に結合する置換基R1 の結合数を表し、1、2又は3である。置換基R1 が結合していない部分には、当該ケイ素にはR2 が結合する。
【0016】
上記R1 は、水酸基又は加水分解可能な置換基を表す。上記加水分解可能な置換基としては特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、ハロゲン、−OR3 、−OCOR3 、−OC(R3 )=C(R4 )2 、−ON=C(R3 )2 、−ON=CR5 [式中、R3 は、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、R4 は、水素又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R5 は、炭素数3〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。]等を挙げることができる。より好ましくは、塩素、−OCH3 、−OC2 H5 である。
【0017】
上記R2 は、水素又は1価の炭化水素基を表す。上記1価の炭化水素基としては特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等を挙げることができ、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0018】
上記一般式(I)中のnは、1以上の整数を表し、特に上限はないが、本発明の目的を達するためには、1〜10の整数であることが好ましい。
上記nは、一般式(I)中においては整数を表すが、このような整数nを有する一般式(I)で表されるポリマーの混合物として本発明に係るケイ素含有有機含フッ素ポリマーが存在していてもよい。このように混合物としてケイ素含有有機含フッ素ポリマーが存在する場合には、上記nは、当該混合物中において平均値として表すことができ、当該ケイ素含有有機含フッ素ポリマーが混合物として存在する場合には、本発明の目的を考慮すれば、nの平均値は、1.3〜3が好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。
【0019】
上記ケイ素含有有機含フッ素ポリマーの分子量は、5×102 〜1×105 が好ましい。5×102 未満では、本発明の効果を発揮せず、1×105 を超えると加工性に乏しくなる。より好ましくは、1×103 〜1×104 である。
【0020】
上記ケイ素含有有機含フッ素ポリマーの好ましいものとして、例えば、下記一般式(II)で表されるもの等を挙げることができる。
【0021】
【化4】
【0022】
式中、pは、1以上の整数を表す。Y、X、R1 、R2 、l、m、nは、前記と同じ。
上記一般式(II)中のpは、1以上の整数であれば特に限定されないが、1〜200が好ましく、本発明のケイ素含有有機含フッ素ポリマーの分子量を考慮すれば、より好ましくは、1〜50である。
【0023】
上記ケイ素含有有機含フッ素ポリマーの分子量は、5×102 〜1×105 が好ましい。5×102 未満では、本発明の効果を発揮せず、1×105 を超えると加工性に乏しくなる。より好ましくは、1×103 〜1×104 である。
【0024】
上記ケイ素含有有機含フッ素ポリマーは、通常市販されているパーフルオロポリエーテルを原料として用い、末端に例えば、ヨウ素を導入した後、これに、例えば、下記一般式[式中、Y、R1 、R2 、l、mは、前記と同じ。]で表されるビニルシラン化合物を反応させること等により得ることができる。
【0025】
【化5】
【0026】
本発明の表面処理組成物の第二の成分は、含フッ素有機溶剤(2)である。
上記含フッ素有機溶剤(2)としては特に限定されず、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3―ジメチルシクロヘキサン、HCFC225(CF3 CF2 CHCl2 とCClF2 CF2 CHClFとの混合物)等を挙げることができる。
【0027】
本発明の表面処理組成物の第三の成分は、上記含フッ素有機溶剤(2)と相溶性を有する有機溶剤[ただし、含フッ素有機溶剤(2)を除く](3)である。本発明においては、上記有機溶剤(3)は、上記含フッ素有機溶剤(2)と互いに相溶性があることが必要である。相溶性がない場合、混合後に放置した際に相分離を起こし、本発明の目的を達成することができない。
【0028】
上記有機溶剤(3)としては特に限定されず、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、フッ素を除くハロゲン化炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類以外の炭化水素類等を挙げることができる。
【0029】
上記アルコール類としては特に限定されず、例えば、炭素数1〜8の一価のアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。なかでも、入手容易でかつ上記ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(1)を溶解するのに好適であることから、炭素数1〜4の一価のアルコールが好ましく、より好ましくは、イソプロパノールである。
【0030】
上記ケトン類としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0031】
上記エーテル類としては特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等を挙げることができる。
【0032】
上記エステル類としては特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。
【0033】
上記フッ素を除くハロゲン化炭化水素類としては特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、ブロモベンゼン等を挙げることができる。
【0034】
上記ハロゲン化炭化水素類以外の炭化水素類等としては特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0035】
本発明の表面処理組成物の各成分中、含フッ素有機溶剤(2)及び有機溶剤(3)は、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(1)の溶媒として機能する。含フッ素有機溶剤(2)及び有機溶剤(3)のうち、含フッ素有機溶剤(2)は高価であるが、有機溶剤(3)は一般に安価であり、含フッ素有機溶剤(2)に比較して有機溶剤(3)の配合比率を高めることにより、本発明の表面処理組成物を安価に調製することができる。
【0036】
本発明の表面処理組成物において、含フッ素有機溶剤(2)と有機溶剤(3)との重量配合比率は、(2):(3)が1:99〜99:1の範囲であることが好ましい。含フッ素有機溶剤(2)が1重量%未満であるとケイ素含有有機含フッ素ポリマー(1)の溶解性が低下して表面処理組成物としての機能が果たせなくなり、99重量%を超えると、本発明の表面処理組成物の実用的なコストを達成することができない。
より好ましくは、1:99〜50:50である。
【0037】
本発明の表面処理組成物を適用するにあたっては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボン、セメント等の微粉末充填剤、チタン、アルミニウム、ケイ素等のアルコキシド、その他の低分子量ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂の微粉末等を、硬度調整剤又は増量剤等として添加することができる。また、通常の架橋剤や水、塩酸、硫酸、カルボン酸、スルホン酸等の硬化触媒を更に加えて、硬度調整を行うこともできる。
【0038】
本発明の表面処理組成物を適用するにあたっては、対象となる基材の表面に、上記表面処理組成物を塗布する方法を採ることができる。上記塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗装、スピン塗装、浸漬塗装、ロールコート塗装、グラビアコート塗装、カーテンフロー塗装等を挙げることができる。
【0039】
本発明においては、溶剤で希釈したケイ素含有有機含フッ素ポリマーを、あらかじめシラン化合物を含有してなる処理液で表面に下地層を形成させた基材表面に塗布する方法を用いてもよい。
上記シラン化合物としては特に限定されず、例えば、一般式(III)
Si(OR11)4 (III)
[式中、R11は、脂肪族炭化水素基を表し、その炭素数は特に限定されない。]で表されるケイ素のアルコキシド化合物、一般式(III)で表される化合物の部分加水分解縮合生成物等を挙げることができる。なかでも、入手容易であることから、テトラエトキシシランが好ましい。
【0040】
上記シラン化合物は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン等の有機溶媒又は水溶媒によって所定濃度の溶液とする。この濃度は特に限定されないが、2〜80重量%の範囲内にあることが好ましい。2重量%未満であると、シリカゾルの形成に長時間を要し、80重量%を超えると、液粘度が高くなりすぎて作業性を損なうので好ましくない。
上記溶液に通常の触媒、例えば、塩酸を加えて所定時間静置してシリカゾルとなした後、塗布作業に適した濃度まで上記溶媒を用いて希釈する。静置時間は特に限定されないが、例えば、2〜10日である。希釈濃度は所望する下地層の厚さによって異なるが、例えば、0.2〜2重量%の範囲内である。
【0041】
次に、希釈した溶液を基材表面に塗布する。塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗装、スピン塗装、浸漬塗装、ロールコート塗装、グラビアコート塗装、カーテンフロー塗装等を挙げることができる。上記操作によって、基材表面にシラノールポリマーのゲル層が形成される。
【0042】
次に、上記基材を加熱することにより、酸化ケイ素を主成分とする下地層を形成することができる。加熱温度は基材によって異なるが、例えば、100〜300℃の範囲内である。加熱時間は特に限定されないが、例えば、10分〜3時間の範囲内である。形成される下地層の厚さは特に限定されないが、通常、0.05〜0.1μmの範囲内である。
【0043】
しかる後、上記溶剤で希釈したケイ素含有有機含フッ素ポリマーを上記の表面に下地層を形成させた基材表面に塗布する。塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗装、スピン塗装、浸漬塗装、ロールコート塗装、グラビアコート塗装、カーテンフロー塗装等を挙げることができる。
【0044】
本発明の表面処理組成物により形成される層の厚みは特に限定されるものではないが、0.001〜0.03μmが好ましい。0.001μm未満であると汚染防止作用が乏しくなり、0.03μmを超えると層が厚すぎて使用に障害が生じるので好ましくない。
【0045】
本発明の表面処理方法を適用することができる基材としては、例えば、以下に掲げるもの等の汚染されやすい部分等を挙げることができる。
ネクタイピン、ネックレス、ピアス等の装飾品;水道蛇口、金管楽器、木管楽器、ゴルフクラブ、扉の取っ手、ダンベル、刃物等の金属又はメッキ製品;碍子、タイル、衛生陶器、食器、屋根瓦等のセラミック材料;墓石、碁石、大理石等の石材;壁紙、ふすま紙、書籍、ポスター、写真等の紙製品;財布、靴、鞄、時計バンド、野球用グローブ等の皮革製品。
【0046】
扇風機の羽根、電子レンジの扉、冷蔵庫の表面等の家電製品;コピー機のコンタクトガラス、OHP本体のミラー、OHPシート、キーボード、電話機、事務机等の事務関連用品;グラス、食器棚の扉、鏡、窓ガラス、電灯の傘、シャンデリア等の家庭用品;ショーウインド、電話ボックス、水槽のガラス等の建築材料;車両ガラス、車体の塗装面等の車両部品;メガネフレーム、水中メガネのガラス、ゴーグル、ヘルメット、時計の文字盤のカバーガラス等の装身具;パチンコ台のガラス、トランプ、麻雀パイ等の遊具;家具、ピアノ等の塗装面。
【0047】
本発明の表面処理方法は、汚染防止作用が永続すること、及び、表面処理組成物を容易に調製することができること、が特徴であるので、本発明の表面処理方法を適用するのに適したものとしては、上記各種の基材のなかでも、例えば、以下に掲げるものが好ましい。
グラス、食器棚の扉、鏡、窓ガラス、電灯の傘、シャンデリア等の家庭用品;ショーウインド、電話ボックス、水槽のガラス等の建築材料;車両ガラス、車体の塗装面等の車両部品。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
合成例1
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた2.0L4つ口フラスコ中に2617g(10.3モル)のヨウ素、213.2g(1.54モル)の炭酸カリウム、及び、9000gのヘキサクロロ−1,3−ブタジエンを仕込み、系の温度を160℃に維持しながら窒素気流下に、化学式F−(CF2 CF2 CF2 O)n −CF2 CF2 COFで表されるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンアシルフルオライド(平均分子量3900)4000g(1.03モル)を10mL/分の速度で滴下した。
【0050】
滴下終了後、反応温度を185℃に上昇させ、20時間反応させた。
反応終了後、系を冷却したのちカリウム塩を濾別し、2層に分離した液相から分液ロートを用いて下層を分取した。これをアセトンを用いて数回洗浄したのち、1Lのパーフルオロヘキサンに溶解し、ガラスフイルターによって微細な不溶物を濾別した。得られた溶液から減圧下揮発分を完全に留去することによって3890g(収率95%)の化学式F−(CF2 CF2 CF2 O)n −CF2 CF2 Iで表されるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンヨウ素化物を得た。
赤外吸収スペクトルより、1890cm-1の−C(=O)Fの吸収が完全に消失し、910cm-1に新たに−CF2 Iの吸収が生じた。
トリクロロフルオロメタン(CFC−11)を標準とする19F−NMRより、20.7ppmの−C(=O)Fの吸収が完全に消失し、新たに−66.7ppmに、−OCF2 CF 2 Iに由来する吸収が生じ、−87.6ppmに、−OCF 2 CF2 Iに由来する吸収が生じた。積分値より、転化率は100%と計算された。
【0051】
合成例2
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた200mL4つ口フラスコ中に合成例1にて合成した化学式F−(CF2 CF2 CF2 O)n −CF2 CF2 Iで表されるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンヨウ素化物40gをダイフロンソルベントS−316(ダイキン工業社製)80gに溶解したもの、及び、ジt−ブチルパーオキシド1.5g(1×10-2モル)を仕込み、充分に系内を窒素置換したのち、窒素気流下滴下ロートよりビニルトリクロロシラン16.1g(0.10モル)を滴下した。滴下終了後系内の温度を120℃に昇温させ、4時間反応させた。反応終了後減圧下揮発分を完全に留去することによって末端にヨウ素を有するケイ素含有有機含フッ素ポリマー(A)38.7g(収率90%)を得た。
CFC−11を標準とする19F−NMRより、−66.7ppm、−87.6ppmの吸収は完全に消失し、−89.2〜−90.0ppmに幅広い吸収帯が現れた。また、 1H−NMRより、1.4〜3.0ppmに幅広い吸収帯が現れたが、内部標準として化学式F−(CF2 CF2 CF2 O)n −CF2 CF2 Hで表されるω−フルオロポリパーフルオロオキセタン水素化物5.0モル%を添加することにより、トリクロロビニルシランの重合度を計算すると、2.0であった。
【0052】
合成例3
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた200mL4つ口フラスコ中に合成例2にて合成したケイ素含有有機含フッ素ポリマー(A)34.4g(8×10-3モル)をパーフルオロヘキサン50gに溶解したものを仕込み、亜鉛2.1g(3.2×10-2モル)を強攪拌下分散させた。氷水浴で系を冷却し、窒素気流下無水メタノール10gを滴下した。
滴下終了後氷水浴を取り除き、加熱還流下2時間反応させた。反応終了後不溶物を濾別し、2層に分離した液相から分液ロートを用いて下層を分取した。得られた溶液を無水メタノールを用いて3回洗浄したのち、減圧下揮発分を完全に留去することによって、末端が水素化されたケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)31.6g(収率92%)を得た。
1H−NMRより、3.5ppmにSi−OCH3 の吸収が現れた。内部標準として化学式F−(CF2 CF2 CF2 O)n −CF2 CF2 Hで表されるω−フルオロポリパーフルオロオキセタン水素化物5.0モル%を添加し、1.2〜3.0ppmの幅広い吸収帯の積分強度が16.0%増していること、3.5ppmの吸収帯との強度比から、重合度が2.0であることを確認した。
【0053】
実施例1
HCFC225が10重量%、イソプロパノールが90重量%の組成からなる混合溶媒99.9重量%に、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)0.1重量%を混合して、白濁溶液状態の表面処理組成物を得た。
ガラス板を、使用前に水洗し、その後にメタノールとアセトンを用いて充分に洗浄した。このようにして準備したガラス板を上記表面処理組成物に1分間ディッピングし、引き上げた後、60℃、90%RHの条件下で24時間放置した。ついでHCFC225にて充分に洗浄して過剰の表面処理組成物分子を除去した。対水接触角の測定は、接触角計(協和界面科学機械社製CA−DT型)を用いて行った。
【0054】
実施例2
パーフルオロヘキサンが10重量%、n−ヘキサンが90重量%の組成からなる混合溶媒99.9重量%に、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)0.1重量%を混合して、白濁溶液状態の表面処理組成物を得、実施例1と同様にして処理液を調製し、試験に供した。結果を表1に示した。
【0055】
実施例3
パーフルオロヘキサンが10重量%、ジエチルエーテルが90重量%の組成からなる混合溶媒99.9重量%に、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)0.1重量%を混合して、白濁溶液状態の表面処理組成物を得、実施例1と同様にして処理液を調製し、試験に供した。結果を表1に示した。
【0056】
実施例4
HCFC225が10重量%、クロロホルムが90重量%の組成からなる混合溶媒99.9重量%に、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)0.1重量%を混合して、白濁溶液状態の表面処理組成物を得、実施例1と同様にして処理液を調製し、試験に供した。結果を表1に示した。
【0057】
実施例5
C4 F9 OCH3 が10重量%、アセトンが90重量%の組成からなる混合溶媒99.9重量%に、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)0.1重量%を混合して、白濁溶液状態の表面処理組成物を得、実施例1と同様にして処理液を調製し、試験に供した。結果を表1に示した。
【0058】
実施例6
C4 F9 OCH3 が10重量%、酢酸エチルが90重量%の組成からなる混合溶媒99.9重量%に、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)0.1重量%を混合して、白濁溶液状態の表面処理組成物を得、実施例1と同様にして処理液を調製し、試験に供した。結果を表1に示した。
【0059】
比較例1
HCFC225を99.9重量%、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)を0.1重量%混合して、透明溶液状態の表面処理組成物を得、実施例1と同様にして処理液を調製し、試験に供した。結果を表1に示した。
【0060】
比較例2
イソプロパノール99.9重量%に、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)0.1重量%を混合して表面処理組成物を調製しようとしたが、両者は混合せず、表面処理組成物は得られなかった。
【0061】
比較例3
パーフルオロヘキサンを99.9重量%、ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(B)を0.1重量%混合して、透明溶液状態の表面処理組成物を得、実施例1と同様にして処理液を調製し、試験に供した。結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明の表面処理組成物は、上述の構成よりなるので、充分な汚染防止作用を有するとともにその作用が永続し、充分な耐候性をも併せもち、また、安価に得られることができるので、汎用的に使用するのに特に好適である。
Claims (3)
- 下記一般式(I)で表されるケイ素含有有機含フッ素ポリマー(1)、含フッ素有機溶剤(2)、及び、前記含フッ素有機溶剤(2)と相溶性を有する有機溶剤[ただし、含フッ素有機溶剤(2)を除く](3)を含有してなり、前記ケイ素含有有機含フッ素ポリマー(1)は、混合物として存在し、下記nの平均値が1.3〜3であり、分子量が1×10 3 〜1×10 4 であるものであることを特徴とする表面処理組成物。
- 前記含フッ素有機溶剤(2)と相溶性を有する有機溶剤[ただし、含フッ素有機溶剤(2)を除く](3)が、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、フッ素を除くハロゲン化炭化水素類、及び、ハロゲン化炭化水素類以外の炭化水素類からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の表面処理組成物。
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