JP4281826B2 - ディーゼルエンジン制御方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジン回転数に基づいて黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を実行し、自動変速機の変速中に変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理を実行するディーゼルエンジン制御に関する。
ディーゼルエンジンにおける変速制御システムが変速時にエンジン制御システム側に対して燃料噴射量の低減を実行させることで、一時的にエンジン出力トルクを小さくさせ、このことにより自動変速機による変速ショックを防止する処理が知られている(特許文献1)。
一方、エンジン回転数が急激に上昇した場合においては、ディーゼルエンジンの燃焼不安定などに起因して黒煙が発生するおそれがある。このために、エンジン制御システム側においては、エンジン回転数変化が黒煙対策のために設けた判定値より大きい上昇を示した場合には、一時的に燃料噴射量を減量して黒煙の発生を抑制している。
特開平5−71385号公報
しかし、上述した変速制御システムとエンジン制御システムとを組み合わせた場合には次のような問題点が存在する。すなわち変速制御システムが変速処理を実行している時、特にパワーオン時のダウンシフトを行っている時には、エンジン回転数が急激に上昇することにより、エンジン制御システム側において前述した黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を引き起こさせる場合がある。
前述のごとく変速制御システム側では、変速ショック防止のためにディーゼルエンジンの出力トルクを低減し、かつこのエンジン出力トルクの低減に対応した適切なタイミングで自動変速機内部の各回転部材の組み合わせの切り替えを行っている。このような一連の処理を実行することにより変速に伴う自動変速機の出力軸におけるトルク変動が適切に防止されている。
ところが上述のごとく変速中に、変速制御とは異なり、黒煙防止の観点から燃料噴射量の低減が行われると、変速制御システム側としては予期しないエンジン出力トルクの低下が生じる。このため自動変速機内部の各回転部材の回転状態が、変速制御システムにとっては予想できない状態となり、前述した自動変速機内部の各回転部材の組み合わせの切り替えが適切なタイミングでなされなくなる。このため自動変速機の出力軸におけるトルク変動が適切に防止されなくなるおそれがある。
本発明は、黒煙防止のための燃料噴射量低減処理と自動変速機の変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理とが実行される構成のディーゼルエンジンにおいて、変速ショック防止効果が阻害されないようにすることを目的とするものである。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載のディーゼルエンジン制御方法は、エンジン回転数に基づいて黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を実行し、自動変速機の変速中に変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理を実行するディーゼルエンジンにおいて、前記各燃料噴射量低減処理は燃料噴射量の上限値の低減により行われ、前記2つの燃料噴射量低減処理により得られた上限値の内で小さい方の上限値を選択し、該選択した上限値に基づいて燃料噴射量を制限するとともに、自動変速機の変速中で、かつ前記黒煙防止のための燃料噴射量低減処理が実行されている場合は、前記選択された上限値を増加補正することを特徴とする。
このように自動変速機の変速中で、かつ黒煙防止のための燃料噴射量低減処理が実行されている場合は、前記選択された上限値を増加補正することで、実質的に黒煙防止のための燃料噴射量低減処理による燃料噴射量低減量を減少補正することができる。このことにより、変速中に、黒煙防止のための燃料噴射量低減処理が実行されても、変速制御システム側にとって予期しないエンジン出力トルクの低下は抑制される。このため変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理に対応したタイミングで自動変速機内部の各回転部材の組み合わせの切り替えを実行した場合にも、自動変速機内部の各回転部材の回転状態は予期した状態と大きな差はないため、変速ショックを確実に防止することができる。このようにディーゼルエンジンにおいて、黒煙防止のための燃料噴射量低減処理と自動変速機の変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理とが実行される構成であっても変速ショック防止効果が阻害されることがない。
尚、黒煙防止のための燃料噴射量低減量の減少補正は変速中になされるので一時的なものであり、更に、黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を完全に禁止しているわけではない。このため、通常よりは程度は低いが黒煙防止のための燃料噴射量の低減が行われる場合があるので黒煙防止に対する影響は非常に少ない。しかも、この変速中には変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理が行われることから、黒煙防止のための燃料噴射量低減量の減少補正を行っても黒煙は抑制される傾向にあるので黒煙防止に対する問題はほとんど生じない。
請求項2に記載のディーゼルエンジン制御方法は、エンジン回転数に基づいて黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を実行し、自動変速機の変速中に変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理を実行するディーゼルエンジンにおいて、前記各燃料噴射量低減処理は燃料噴射量の上限値の低減により行われ、前記2つの燃料噴射量低減処理により得られた上限値の内で小さい方の上限値を選択し、該選択した上限値に基づいて燃料噴射量を制限するとともに、前記変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理と前記黒煙防止のための燃料噴射量低減処理とが実行中である場合は、前記選択された上限値を増加補正することを特徴とする。
このように変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理と黒煙防止のための燃料噴射量低減処理とが共に実行中である場合は、前記選択された上限値を増加補正することで、実質的に黒煙防止のための燃料噴射量低減処理による燃料噴射量低減量を減少補正することができる。このことにより、変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理の実行中に、黒煙防止のための燃料噴射量低減処理が実行されても、変速制御システム側にとって予期しないエンジン出力トルクの低下は大きなものとならない。このため変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理に対応したタイミングで自動変速機内部の各回転部材の組み合わせの切り替えを実行した場合にも、自動変速機内部の各回転部材の回転状態が予期した状態と大きな差はないため、変速ショックを防止することができる。このようにディーゼルエンジンにおいて、黒煙防止のための燃料噴射量低減処理と自動変速機の変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理とが実行される構成であっても変速ショック防止効果が阻害されることがない。
尚、黒煙防止のための燃料噴射量低減量の減少補正は、変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理の実行中になされるので一時的なものであるとともに、黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を完全に禁止しているわけではない。このため、通常よりは程度は低いが黒煙防止のための燃料噴射量の低減が行われる場合があるので黒煙防止に対する影響は非常に少ない。しかも、この時には変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理が行われていることから、黒煙防止のための燃料噴射量低減量の減少補正を行っても黒煙は抑制される傾向にあるので黒煙防止における問題はほとんど生じない。
請求項3に記載のディーゼルエンジン制御装置は、ディーゼルエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数変化が黒煙対策判定値より大きい変化量を示した場合に、燃料噴射量の上限値の低減により黒煙防止のための燃料噴射量低減を実行する黒煙防止手段と、自動変速機の変速を制御する変速制御手段と、前記変速制御手段による前記自動変速機の変速中に、燃料噴射量の上限値の低減により変速ショック防止のための燃料噴射量低減を実行する変速ショック防止手段と、前記黒煙防止手段及び前記変速ショック防止手段にて設定されている上限値の内で小さい方の上限値を選択して、該選択された上限値に基づいて燃料噴射量を制限する制限手段と、前記変速制御手段が前記自動変速機を変速中であり、かつ前記黒煙防止手段による燃料噴射量低減の実行中である場合に、前記制限手段により選択された上限値を増加補正する黒煙防止燃料噴射低減量減少手段とを備えたことを特徴とする。
このように自動変速機の変速中で、かつ黒煙防止手段による燃料噴射量低減の実行中である場合には、黒煙防止燃料噴射低減量減少手段は、制限手段により選択された上限値を増加補正することで、実質的に黒煙防止のための燃料噴射量低減量を減少補正することができる。このため、変速中に、変速制御手段にとって予期しないエンジン出力トルクの低下は大きなものとならない。したがって、変速制御手段が、変速ショック防止手段が行う変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理に対応したタイミングで、自動変速機内部の各回転部材の組み合わせの切り替えを実行した場合に、自動変速機内部の各回転部材の回転状態は予期した状態と大きな差はない。このため確実に変速ショックを防止することができる。このようにディーゼルエンジンにおいて、黒煙防止手段と変速ショック防止手段とが設けられていても、変速ショック防止手段による変速ショック防止効果が阻害されることがない。
尚、黒煙防止燃料噴射低減量減少手段が行う燃料噴射量低減量の減少補正は、変速中になされるので一時的なものであるとともに、黒煙防止手段による燃料噴射量低減を完全に禁止しているわけではない。このため、黒煙防止手段により、通常よりは程度は低いが黒煙防止のための燃料噴射量の低減が行われる場合があるので黒煙防止に対する影響は非常に少ない。しかも、この変速中には変速ショック防止手段による燃料噴射量低減が行われることから、黒煙防止手段による燃料噴射量低減量の減少補正を実行しても黒煙は抑制される傾向にあるので黒煙防止に対する問題はほとんど生じない。
請求項4に記載のディーゼルエンジン制御装置は、ディーゼルエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数変化が黒煙対策判定値より大きい変化量を示した場合に、燃料噴射量の上限値の低減により黒煙防止のための燃料噴射量低減を実行する黒煙防止手段と、自動変速機の変速を制御する変速制御手段と、前記変速制御手段による前記自動変速機の変速中に、燃料噴射量の上限値の低減により変速ショック防止のための燃料噴射量低減を実行する変速ショック防止手段と、前記黒煙防止手段及び前記変速ショック防止手段にて設定されている上限値の内で小さい方の上限値を選択して、該選択された上限値に基づいて燃料噴射量を制限する制限手段と、前記変速ショック防止手段と前記黒煙防止手段とが共に燃料噴射量低減の実行中は、前記制限手段により選択された上限値を増加補正する黒煙防止燃料噴射低減量減少手段とを備えたことを特徴とする。
このように変速ショック防止手段と黒煙防止手段とが共に燃料噴射量低減を実行している場合は、黒煙防止燃料噴射低減量減少手段は、制限手段により選択された上限値を増加補正することで、実質的に黒煙防止のための燃料噴射量低減量を減少補正することができる。このことにより、変速ショック防止手段による燃料噴射量低減中に、黒煙防止手段による燃料噴射量低減が実行されても、変速制御手段にとって予期しないエンジン出力トルクの低下は大きなものとならない。このため変速ショックを防止することができる。このようにディーゼルエンジンにおいて、黒煙防止手段と変速ショック防止手段とが設けられていても、変速ショック防止手段による変速ショック防止効果が阻害されることがない。
尚、黒煙防止手段における燃料噴射量低減量の減少補正は、変速ショック防止手段による燃料噴射量が低減されている時であるので一時的なものであるとともに、黒煙防止手段における燃料噴射量低減を完全に禁止しているわけではない。このため、通常よりは程度は低いが黒煙防止のための燃料噴射量の低減が行われる場合があるので黒煙防止に対する影響は非常に少ない。しかも、この時には変速ショック防止手段による燃料噴射量低減が行われていることから、黒煙防止手段において燃料噴射量低減量の減少補正を行っても黒煙は抑制される傾向にあるので黒煙防止に対する問題はほとんど生じない。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1としての蓄圧式ディーゼルエンジン2、自動変速機4及びこれらの各ECU(電子制御ユニット)6,8を示すブロック図である。本蓄圧式ディーゼルエンジン2は自動車用エンジンとして車両に搭載されているものである。
ディーゼルエンジン2には、複数の気筒、例えば4気筒が設けられており、各気筒の燃焼室に対して燃料噴射弁がそれぞれ設けられている。この燃料噴射弁へはコモンレールから燃料噴射圧に昇圧された燃料が供給され、ディーゼルエンジン2に要求される燃料噴射量に応じた開弁期間の間、エンジン用ECU6の指令により燃料噴射弁を開くことにより各気筒内に燃料が噴射される。
又、ディーゼルエンジン2には、アクセル開度センサ、エンジン回転数センサ、気筒判別センサ、冷却水温センサ、吸気温センサ、燃料圧力センサ、車速センサ等の各種センサ類10が設けられており、これらの出力によりエンジン用ECU6はディーゼルエンジン2の運転状態や車両の走行状態を検出している。又、エンジン用ECU6は変速用ECU8とも交信して相互に指令やデータの交換を行っている。そしてエンジン用ECU6は、これらの指令やデータに基づいて、燃料噴射量制御等によりディーゼルエンジン2の燃焼状態を制御している。
自動変速機4はトルクコンバータ式オートマチックトランスミッションであり、内部の回転部材、すなわちプラネタリーギヤなどの各種ギヤ、クラッチ、ブレーキの作動を制御することにより変速を行う変速機である。各種センサ類10には、自動変速機4に設けられたシフト位置センサやタービン回転数センサも含まれている。変速用ECU8は、アクセル開度ACCP、スロットル開度、エンジン回転数NE、シフト位置、タービン回転数NT、車速等のデータにより、運転者の要求、自動変速機4の内部状態、車両走行状態を検出して、自動変速機4に対する変速制御を実行している。又、前記エンジン用ECU6が検出しているデータの内、冷却水温、ブレーキ状態等も読み込んでいる。又、前述したごとく変速用ECU8はエンジン用ECU6とも交信して相互に指令やデータの交換を行っている。そして変速用ECU8は、これらの指令やデータに基づいて、油圧制御回路4aの電磁弁の切り替えを行うことにより自動変速機4の変速制御を実行している。例えば予め記憶された変速線図から車速Vと燃料噴射量(あるいはアクセル開度)とに基づいて自動変速機4のギヤ段を決定し、この決定されたギヤ段を成立させるように油圧制御回路4aの電磁弁を切り替えている。
尚、エンジン用ECU6及び変速用ECU8は、次の各要素等を備えたマイクロコンピュータを中心として構成されている。
・中央処理制御装置(CPU)。
・各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)。
・CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)。
・演算結果や予め記憶されたデータ等を保存するバックアップRAM。
・タイマカウンタ、入力インターフェース。
・出力インターフェース。
次に、本実施の形態において、エンジン用ECU6により実行される制御の内、燃料噴射量制御処理について説明する。図2に燃料噴射量制御処理のフローチャートを示す。本処理は一定クランク角毎(爆発行程毎)の割り込みで実行される。なお個々の処理に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
本処理が開始されると、まず前述したセンサ類によりディーゼルエンジン2の運転状態が読み込まれる(S100)。そしてステップS100にて読み込んだ運転状態に基づいて演算処理を実行して、基本要求噴射量Qを算出する(S102)。この基本要求噴射量Qの算出処理は、アイドル時においては、アイドル目標回転数が実現されるように噴射量が増減計算されることで、基本要求噴射量Qに反映されるよう計算される。又、アイドル時以外においては、アクセル開度ACCPによる運転者の指示に応じたトルクを出力するようにエンジン回転数NE等を考慮して噴射量が増減計算されることで、基本要求噴射量Qに反映されるよう計算されている。
次に変速中か否かが判定される(S104)。変速中でなければ(S104で「NO」)、次に噴射量上限値QFULが次式1のごとく算出される(S106)。
[数1]
QFUL ← max(min(A,B),C) + D … [式1]
ここで、黒煙対策用計算値Aは後述する黒煙対策制御処理(図3)により設定される値であり、変速時トルクダウン用計算値Bは後述する変速時トルクダウン制御処理(図4)により設定される値である。又、最小ガード値Cは噴射量上限値QFULの最低レベルを決めるための値であり、オフセット値Dはガード後の値をオフセットするものである。又、min(x,y)は、x,yの内で小さい方を抽出することを意味する演算子であり、max(x,y)は、x,yの内で大きい方を抽出することを意味する演算子である。
実際には、ステップS106の処理時は変速中でないので、後述する変速時トルクダウン制御処理(図4)では変速時トルクダウン用計算値Bに変速時トルクダウンに要求される値は設定されておらず、十分に大きいデフォルト値が設定されている。このため黒煙対策用計算値Aの方が変速時トルクダウン用計算値Bよりも十分に小さいことから、min(A,B)では黒煙対策用計算値Aが抽出されて「QFUL=max(A,C)+D」となる。
又、黒煙対策用計算値A及び変速時トルクダウン用計算値Bが、共にデフォルト値が設定されている場合、例えばデフォルト値では変速時トルクダウン用計算値Bの方が小さいとすると、min(A,B)では変速時トルクダウン用計算値Bを抽出して、「QFUL=max(B,C)+D」となる。ただしこの場合には、変速時トルクダウン用計算値Bが十分に大きい値であるので、噴射量上限値QFULも高くなる。
一方、変速中であれば(S104で「YES」)、次に噴射量上限値QFULが次式2のごとく算出される(S108)。
[数2]
QFUL ← max(B,C) + D … [式2]
黒煙対策用計算値Aに黒煙対策用に設定される値は、変速時トルクダウン用計算値Bに変速時トルクダウン用に設定される値あるいは変速時トルクダウン用計算値Bのデフォルト値に比較して、十分に小さい値が設定される。したがって、もし変速中に黒煙対策用計算値Aに黒煙対策用の値が設定された場合に、前記式1が適用されると、「min(A,B)」では黒煙対策用計算値Aが抽出されて、「噴射量上限値QFUL=max(A,C)+D」となる。
しかし、本実施の形態では、変速中は前記式2が適用されるため、黒煙対策用計算値Aにいかなる値が設定されようとも、黒煙対策用計算値Aの値に関係なく噴射量上限値QFULが算出される。したがって変速中は噴射量上限値QFULには黒煙対策用計算値Aが影響しないようにされている。
そして前記ステップS106又はステップS108にて、噴射量上限値QFULが算出されると、基本要求噴射量Qが噴射量上限値QFULより大きいか否かが判定される(S110)。ここでQ>QFULであれば(S110で「YES」)、最終燃料噴射量QFINCに噴射量上限値QFULの値が設定される(S112)。Q≦QFULであれば(S110で「NO」)、最終燃料噴射量QFINCに基本要求噴射量Qの値が設定される(S114)。
前記ステップS112又はステップS114にて、最終燃料噴射量QFINCが求められると、次に今回噴射がなされる燃料噴射弁に対する噴射期間Tqが最終燃料噴射量QFINCと燃料圧力Pfとに基づいて算出される(S116)。
こうして一旦本処理を終了する。このことにより今回噴射がなされる燃料噴射弁にて噴射期間Tqに基づく開弁がなされて、最終燃料噴射量QFINCに相当する燃料が気筒内に噴射される。
次に黒煙対策制御処理(図3)について説明する。本処理はエンジン用ECU6により実行される処理であり、前記燃料噴射量制御処理(図2)前に実行される。本処理が開始されると、まずエンジン回転数NEの時間変化量DNEが読み込まれる(S200)。このエンジン回転数時間変化量DNEは、別途、一定時間周期で実行される処理により求められている値であり、エンジン回転数センサにて検出されるエンジン回転数NEの一定時間間隔における変化量に相当する。
次に、エンジン回転数時間変化量DNEが黒煙対策判定値DNEpm以上か否かが判定される(S202)。ここで黒煙対策判定値DNEpmは、エンジン回転数NEの上昇が急激となることで燃焼が不安定となり黒煙を発生しやすい状態になったか否かを判定するための基準値である。
DNE<DNEpmであれば(S202で「NO」)、燃料噴射量の減量による黒煙の抑制を実行しなくても良いことから、黒煙対策用計算値Aに対してデフォルト値を設定する(S204)。
一方、DNE≧DNEpmであれば(S202で「YES」)、燃料噴射量の減量により黒煙の抑制を実行する必要があることから、黒煙対策用計算値Aに対して黒煙対策用の値が設定される。この黒煙対策用の値は、黒煙を十分に抑制できる値であり、デフォルト値よりも十分に小さい。
こうして一旦本処理を終了する。
次に変速時トルクダウン制御処理(図4)について説明する。本処理は変速用ECU8により実行される処理であり、短時間周期で繰り返し実行される処理である。本処理が開始されると、まず変速中か否かが判定される(S300)。変速中でなければ(S300で「NO」)、変速中でのトルクダウンを実行する必要がないことから、変速時トルクダウン用計算値Bに対してデフォルト値を設定する(S302)。
一方、変速中であれば(S300で「YES」)、次にトルクダウンタイミングが計算される(S304)。このトルクダウンタイミングは、変速中においてトルクダウンすることにより変速ショックを抑制する期間を示している。このトルクダウンタイミングは、例えば、アクセル開度ACCP、車速V、タービン回転数NT、シフト状態などに基づいて設定されるものであり、具体的には変速中のイナーシャ相にて開始するトルクダウン開始タイミングとトルクダウン終了タイミングとからなるものである。
次にトルクダウン実行タイミングか否かが判定される(S306)。すなわち前記開始タイミングから前記終了タイミングまでの間の期間にあるか否かが判定される。トルクダウン実行タイミングでなければ(S306で「NO」)、まだトルクダウンを実行する必要がないことから、変速時トルクダウン用計算値Bに対してデフォルト値を設定する(S302)。
トルクダウン実行タイミングとなれば(S306で「YES」)、次に変速時トルクダウン用計算値Bに今回の変速時のトルクダウンに必要な値が設定される(S308)。例えば、アクセル開度ACCP、基本要求噴射量Q、車速V、タービン回転数NT、シフト状態などに基づいて設定される。この設定された変速時トルクダウン用計算値Bは、ステップS302におけるデフォルト値よりも十分に小さい値である。
こうして一旦本処理を終了する。
上述した処理の一例を図5のタイミングチャートに示す。本実施の形態では、実線にて示すパワーオンでのダウンシフト変速中(t0〜t5)に、エンジン回転数NEが急激に上昇して黒煙対策制御処理(図3)において黒煙対策用計算値Aの設定(S204:t2)がなされる。しかし、燃料噴射量制御処理(図2)においては、変速中であるので(S104で「YES」)、ステップS108が実行されて、前記式2により噴射量上限値QFULが求められる。このため黒煙対策用計算値Aは噴射量上限値QFULのレベルに影響することはない。したがって変速中は、黒煙対策のために破線(t2〜)に示すごとくに最終燃料噴射量QFINCが大きく低下することはないので、変速時トルクダウンのための燃料減量も早期に開始される(t3)。
更に、自動変速機4内部の回転部材の回転状態も黒煙対策の燃料減量により乱されることはないので、変速用ECU8が予期するごとくに、自動変速機4内の各回転部材の回転状態が変速ショックが防止できる状態に円滑に移行する。具体的には、ここでは自動変速機4内部のクラッチの係合時(t3〜t5)に、エンジン回転数NEの上昇が緩くなり、これに対応してタービン回転数NT(図示せず)の上昇が緩くなることから、クラッチ接続時のショックが少なくて済む。
従来例では変速中においても前記式1(S106)と同じ計算がなされるので、変速中のエンジン回転数NEの急上昇により設定された黒煙対策用計算値Aが、噴射量上限値QFULのレベルに影響して、時刻t2からの破線にて示すごとく最終燃料噴射量QFINCを大きく低下させることになる。このためエンジン回転数NEの上昇が遅れ、これに伴いタービン回転数NTの上昇も鈍化するが、その後、黒煙対策の燃料噴射量減量が終了すると、破線に示すごとく、急激にエンジン回転数NE及びタービン回転数NTの回転数が上昇する。したがって黒煙対策用の燃料減量がなされない場合に比較して変速完了(t6)が遅れる。この時、タービン回転数NT等を観測して、時刻t4から破線のごとく変速ショック防止のために燃料減量を実行しても、自動変速機4内の各回転部材の回転状態は、変速用ECU8が変速ショック防止のために予期している最適な状態となっているとは限らない。具体的には、自動変速機4の内部クラッチの係合時(t4〜t6)に、破線で示すごとくエンジン回転数NEの上昇が急激となる期間が生じ、これに対応してタービン回転数NTの上昇が急激となることから、クラッチ接続時のショックが大きくなってしまう。したがって変速ショック防止が不十分となるおそれがある。
上述した構成において、エンジン回転数センサがエンジン回転数検出手段に相当する。また、黒煙対策制御処理(図3)が黒煙防止手段としての処理に、変速用ECU8が変速制御手段に、変速時トルクダウン制御処理(図4)が変速ショック防止手段としての処理に相当する。更に、燃料噴射量制御処理(図2)のステップS104,S108が黒煙防止燃料噴射量低減禁止手段としての処理に相当する。尚、前記式1における「min(A,B)」の計算が制限手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).燃料噴射量制御処理(図2)において、自動変速機4の変速中(S104で「YES」)は、式1(S106)は実行されず、式2(S108)を実行することになり、黒煙防止のための燃料噴射量低減が禁止される。このため、変速用ECU8による変速制御を乱すようなエンジン出力トルクの低下は生じない。したがって変速時トルクダウン制御処理(図4)によるトルクダウンに対応して自動変速機4内部の各回転部材の組み合わせの切り替えを実行した場合に、自動変速機4内部の各回転部材の回転状態は、変速用ECU8が予期した状態となっている。このため適切なタイミングで回転部材の組み合わせが切り替えられて、変速ショックを確実に防止することができる。このようにディーゼルエンジン2において、黒煙対策制御処理(図3)と変速時トルクダウン制御処理(図4)とが実行されていても変速用ECU8による変速ショック防止が阻害されることがない。
(ロ).尚、前記式2を実行することによる黒煙防止のための燃料噴射量低減の禁止は、変速中であるので一時的なものであり、黒煙防止に対する影響は少ない。しかも、この変速中には変速時トルクダウン制御処理(図4)による燃料噴射量低減が行われることから、前記式1の実行を禁止しても黒煙は抑制される傾向にあるので黒煙防止に対する問題はほとんど生じない。
[実施の形態2]
本実施の形態では、前記実施の形態1の燃料噴射量制御処理(図2)の代わりに、図6に示す燃料噴射量制御処理を実行する点が異なる。他の処理は前記実施の形態1と同じである。
燃料噴射量制御処理(図6)について説明する。尚、図6においてステップS100,S102,S106〜S116については前記図2にて説明した同一ステップ番号の処理と同じである。前記図2と異なる点は、基本要求噴射量Qの算出(S102)の次に変速時トルクダウン用計算値Bの設定中であるが否かが判定される(S105)点である。すなわち変速中に常に黒煙防止のための燃料噴射量低減が禁止されるのではなく、変速時トルクダウン用計算値Bの設定中のみ黒煙防止のための燃料噴射量低減が禁止されることになる。
上述した処理の一例を図7のタイミングチャートに示す。ここでは、実線に示すごとく、ディーゼルエンジン2又は自動変速機4の特性あるいは要求性能により、前記実施の形態1に比較して変速開始後(t10)の早期に変速時トルクダウンの開始タイミングが設定されている場合を示している。そして、変速時トルクダウン中(t12〜t15)にエンジン回転数NEが急激に上昇して黒煙対策制御処理(図3)において黒煙対策用計算値Aの設定(S204:t13)がなされた場合であるとする。
燃料噴射量制御処理(図6)においては、ステップS105にて「YES」と判定されて、ステップS108が実行されることで、噴射量上限値QFULが前記式2のごとく算出される(S108)。このため黒煙対策用計算値Aは、噴射量上限値QFULのレベルに影響することはない。
したがって変速中でも特に変速時トルクダウン中には、黒煙対策のために最終燃料噴射量QFINCが大きく低下することがないので、変速用ECU8による変速制御が乱されることがない。このため変速用ECU8が予期するごとくに、自動変速機4内の各回転部材の回転状態が変速ショックが防止できる状態に円滑に移行する。具体的には、ここでは自動変速機4の内部クラッチの係合時(t12〜t17)に、エンジン回転数NEの上昇が全体に緩慢であり、これに対応してタービン回転数NTの上昇も全体に緩慢となることから、クラッチ接続時のショックが少なくて済む。
従来例では、破線で示すごとく変速時トルクダウン中に黒煙対策のために最終燃料噴射量QFINCが大きく低下する(S106:t13〜t14)ので、破線にて示すごとく、エンジン回転数NEの上昇が一旦鈍化し(t13〜)、これに伴いタービン回転数NTの上昇も鈍化する。しかし、その後、黒煙対策の燃料噴射量減量が終了すると(t14)、急激に、エンジン回転数NE及びタービン回転数NTの回転数が上昇する。したがって変速用ECU8による変速制御が乱される。このため自動変速機4内の各回転部材の回転状態は、変速用ECU8が変速ショック防止のために予期している最適な状態となっているとは限らなくなる。具体的には、自動変速機4の内部クラッチの係合時(t12〜t18)に、破線で示すごとくエンジン回転数NEの上昇が急激となる期間が生じ、これに対応してタービン回転数NTの上昇が急激となることから、クラッチ接続時のショックが大きくなってしまう。したがって変速ショック防止が不十分となるおそれがある。又、黒煙対策用の燃料減量がなされない場合に比較して変速完了(t18)が遅れるために、変速期間も長くなる。
上述した構成において、燃料噴射量制御処理(図6)のステップS105,S108が黒煙防止燃料噴射量低減禁止手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).燃料噴射量制御処理(図6)において、変速時トルクダウンの実行中(S105で「YES」)は、前記式1(S106)は実行されず、前記式2(S108)を実行することになり、黒煙防止のための燃料噴射量低減が禁止される。このため、変速用ECU8による変速制御は乱されることがなく、変速ショックを確実に防止することができる。
本実施の形態の場合には、変速中であっても変速時トルクダウンの実行中でなければ(S105で「NO」)、黒煙防止のための燃料噴射量低減は禁止されない。このように変速時トルクダウンの実行中以外にて黒煙防止のための燃料噴射量低減が実行されるような状態は、変速制御にほとんど影響しないので、変速ショックを十分に防止することができる。
(ロ).尚、前記式1の実行禁止は、変速時トルクダウンの実行中なので一時的なものであり黒煙防止に対する影響は少ない。しかも、この時には変速時トルクダウンによる燃料噴射量低減が行われていることから、前記式1の実行を禁止しても黒煙は抑制される傾向にあるので黒煙防止における問題はほとんど生じない。
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態1において、燃料噴射量制御処理(図2)のステップS104〜S108を図8に示すごとく置き換えることにより、変速中は、黒煙対策用計算値Aを増加補正することで、黒煙防止のための燃料噴射量低減程度を減少補正しても良い。すなわち、変速中でなければ(S104で「NO」)、前述した式1のごとく噴射量上限値QFULが算出される(S106)。一方、変速中であれば(S104で「YES」)、次式3のごとく黒煙対策用計算値Aから新たな黒煙対策用計算値Ahが算出される(S109a)。
[数3]
Ah ← A + dA … [式3]
ここで補正値dAは、黒煙対策用計算値Aを増加させて黒煙対策用計算値Ahに設定するための補正値である。
そして次式4のごとく噴射量上限値QFULが算出される(S109b)。
[数4]
QFUL ← max(min(Ah,B),C) + D …[式4]
ここで変速時トルクダウン用計算値B、最小ガード値C、オフセット値D、演算子min()及び演算子max()は前述したごとくである。又、黒煙対策用計算値A及び変速時トルクダウン用計算値BがそれぞれステップS204(図3)又はステップS308(図4)にて設定されている場合には、A<B<Ahとなるような関係に補正値dA設定されている。
したがって、図9のタイミングチャートに示すごとく、変速中(t20〜t25)においてもエンジン回転数NEの上昇により黒煙対策のための燃料減量を実施できる(t22〜)。ただし、破線で示した変速中でない場合の通常のレベルよりも減量の程度は少ない。したがって変速制御側に大きな影響を与えることなく、黒煙を抑制できる。尚、図9においてハッチングで示した部分(t23〜)は、前記式4においてB<Ah、すなわち「min(Ah,B)=B」となったことを示している。
このような構成によって、黒煙対策制御処理(図3)と変速時トルクダウン制御処理(図4)とが実行されていても変速用ECU8による変速ショック防止が阻害されることがない。又、変速中には、黒煙対策の燃料減量は減量の程度を少なくしているのみで、燃料減量を停止しているわけではないので、黒煙防止に問題はほとんど生じない。
この構成において、図8のステップS104,S109aが黒煙防止燃料噴射低減量減少手段としての処理に相当する。尚、前記式4における「min(Ah,B)」の計算は制限手段としての処理に相当する。
(b).前記実施の形態2において、前記(a)と同様に、図6のステップS105〜S108を図10に示すごとく置き換えることにより、変速時トルクダウン中(S105で「YES」)は、黒煙対策用計算値Aを増加補正することで、黒煙防止のための燃料噴射量低減程度を減少補正しても良い。
ただし、この例では黒煙対策用計算値A及び変速時トルクダウン用計算値BがそれぞれステップS204(図3)又はステップS308(図4)にて設定されている場合には、A<Ah<Bとなるような関係に補正値dA設定されている。
したがって、図11のタイミングチャートに示すごとく、変速時トルクダウン中(t32〜t34)においてもエンジン回転数NEの上昇により黒煙対策のための燃料減量を実施できる(t33〜)。ただし、破線で示した変速中でない場合の通常のレベルよりも減量の程度は少ない。したがって変速制御側に大きな影響を与えることなく、黒煙を抑制できる。尚、図11においてハッチングで示した部分は、前記式4においてAh<B、すなわち「min(Ah,B)=Ah」となった状態を示している。
このような構成によって、黒煙対策制御処理(図3)と変速時トルクダウン制御処理(図4)とが実行されていても変速用ECU8による変速ショック防止が阻害されることがない。又、変速時トルクダウン中には、黒煙対策の燃料減量は減量の程度を少なくしているのみで、燃料減量を停止しているわけではないので、黒煙防止に問題はほとんど生じない。
この構成において、図10のステップS105,S109aが黒煙防止燃料噴射低減量減少手段としての処理に相当する。
(c).前記実施の形態2において、図6のステップS105〜S108を図12に示すごとく置き換えることにより、変速時トルクダウン中(S105で「YES」)は、変速時トルクダウン用計算値Bにより、黒煙対策用計算値Aによる影響を制限しても良い。すなわち変速時トルクダウン用計算値Bが設定中であれば(S105で「YES」)、次に次式5が満足しているか否かが判定される(S109c)。
[数5]
A < B × kb … [式5]
ここで減少係数kbは変速時トルクダウン用計算値Bを減少させるための値であり、「0<kb<1」の範囲、例えば「0.9」に設定されている。すなわち前記式5は黒煙対策用計算値Aが変速時トルクダウン用計算値Bより小さいことに加えて、更に小さい側に或程度以上離れた関係になっているか否かを判定しているものである。
前記式5が満足されていない場合には(S109cで「NO」)、前記式1により噴射量上限値QFULが算出される(S106)。一方、前記式5が満足された場合には(S109cで「YES」)、次式6に示すごとく、黒煙対策用計算値Ahが算出される(S109d)。
[数6]
Ah ← B × kb … [式6]
したがって、黒煙対策用計算値Ahは、変速時トルクダウン用計算値Bに基づいて、変速時トルクダウン用計算値Bより小さい値に設定される。
次に次式7のごとく噴射量上限値QFULが算出される(S109e)。
[数7]
QFUL ← Ah + D … [式7]
このように噴射量上限値QFULが算出されることにより、変速時トルクダウン中では、黒煙対策の燃料減量は、変速時トルクダウン用計算値Bに基づいて制限できる。例えば、前述した図11のタイミングチャートを用いて説明すると、ハッチング部分(t33〜)の底辺が、この時、設定されている変速時トルクダウン用計算値B×kbより小さくなることはない。
この構成において、燃料噴射量制御処理(図12)のステップS105,S109c,S109d,S109eが黒煙防止燃料噴射低減量制限手段としての処理に相当する。
(d).前記実施の形態1において、燃料噴射量制御処理(図2)のステップS104〜S108を図13に示すごとく置き換えても良い。このことによって、変速中で(S104で「YES」)かつ黒煙対策用計算値Aの設定(図3:S204)がなされている時(S104aで「YES」)は、min(A,B)の値を増加補正することで、実質的に黒煙防止のための燃料噴射量低減程度を減少補正している。すなわち、変速中でない場合(S104で「NO」)、あるいは黒煙対策用計算値Aの設定中でない場合(S104aで「NO」)は、前述した式1のごとく噴射量上限値QFULが算出される(S106)。一方、変速中で(S104で「YES」)かつ黒煙対策用計算値Aの設定中であれば(S104aで「YES」)、次式8のごとく噴射量上限値QFULが算出される(S109f)。
[数8]
QFUL ← max(min(A,B)+α,C) + D …[式8]
ここで増加補正値αは、min(A,B)の計算結果を増加させる補正値である。すなわち、「min(A,B)」の演算は、ステップS104aにて「YES」と判定されている状況では、通常、黒煙対策用計算値Aが選択される。したがって「min(A,B)+α」の計算により、実質的に黒煙対策用計算値Aを増加補正値αにより増加補正して、黒煙防止のための燃料噴射量低減程度を減少補正することになる。
こうして前記(a)にて述べたごとくの効果を生じさせることができる。
この構成において、図13のステップS104,S104a,S109fが黒煙防止燃料噴射低減量減少手段としての処理に相当する。尚、前記式8における「min(A,B)」の計算は制限手段としての処理に相当する。

(e).前記実施の形態2において、図6のステップS105〜S108を図14に示すごとく置き換えても良い。このことにより、黒煙対策用計算値Aと変速時トルクダウン用計算値Bとが共に設定されている時(S105aで「YES」)は、min(A,B)の値を増加補正することで、実質的に黒煙防止のための燃料噴射量低減程度を減少補正している。すなわち、黒煙対策用計算値Aと変速時トルクダウン用計算値Bとの両方、あるいはいずれか一方が設定されていない場合には(S105aで「NO」)、前述した式1のごとく噴射量上限値QFULが算出される(S106)。一方、黒煙対策用計算値Aと変速時トルクダウン用計算値Bとの両方が設定されていれば(S105aで「YES」)、前記式8のごとく噴射量上限値QFULが算出される(S109g)。
黒煙対策用計算値Aと変速時トルクダウン用計算値Bとの両方が設定されていても、「min(A,B)」の演算では、通常、黒煙対策用計算値Aが選択される。したがって「min(A,B)+α」の計算により、実質的に黒煙対策用計算値Aを増加補正値αにより増加補正して、黒煙防止のための燃料噴射量低減程度を減少補正することになる。
こうして前記(b)にて述べたごとくの効果を生じさせることができる。
この構成において、図14のステップS105a,S109gが黒煙防止燃料噴射低減量減少手段としての処理に相当する。
(f).前記各実施の形態における噴射量上限値QFULを求めるためのオフセット値Dはディーゼルエンジンの運転状態などにより適宜設定されるが、オフセット値Dは用いなくても良い。
(g).前記各実施の形態では、噴射量上限値QFULの低減調整により燃料噴射量の低減を実行していたが、直接、燃料噴射量に対して低減補正を実行することで黒煙対策用や変速時トルクダウン用の燃料噴射量低減を実行しても良い。
実施の形態1の蓄圧式ディーゼルエンジン、自動変速機及びこれらの各ECUを示すブロック図。 実施の形態1の燃料噴射量制御処理のフローチャート。 実施の形態1の黒煙対策制御処理のフローチャート。 実施の形態1の変速時トルクダウン制御処理のフローチャート。 実施の形態1の処理の一例を示すタイミングチャート。 実施の形態2の燃料噴射量制御処理のフローチャート。 実施の形態2の処理の一例を示すタイミングチャート。 他の実施の形態における燃料噴射量制御処理の一部分を示すフローチャート。 他の実施の形態における処理の一例を示すタイミングチャート。 他の実施の形態における燃料噴射量制御処理の一部分を示すフローチャート。 他の実施の形態における処理の一例を示すタイミングチャート。 他の実施の形態における燃料噴射量制御処理の一部分を示すフローチャート。 他の実施の形態における燃料噴射量制御処理の一部分を示すフローチャート。 他の実施の形態における燃料噴射量制御処理の一部分を示すフローチャート。
符号の説明
2…ディーゼルエンジン、4…自動変速機、4a…油圧制御回路、6…エンジン用ECU、8…変速用ECU、10…各種センサ類。

Claims (4)

  1. エンジン回転数に基づいて黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を実行し、自動変速機の変速中に変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理を実行するディーゼルエンジンにおいて、
    前記各燃料噴射量低減処理は燃料噴射量の上限値の低減により行われ、前記2つの燃料噴射量低減処理により得られた上限値の内で小さい方の上限値を選択し、該選択した上限値に基づいて燃料噴射量を制限するとともに、自動変速機の変速中で、かつ前記黒煙防止のための燃料噴射量低減処理が実行されている場合は、前記選択された上限値を増加補正することを特徴とするディーゼルエンジン制御方法。
  2. エンジン回転数に基づいて黒煙防止のための燃料噴射量低減処理を実行し、自動変速機の変速中に変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理を実行するディーゼルエンジンにおいて、
    前記各燃料噴射量低減処理は燃料噴射量の上限値の低減により行われ、前記2つの燃料噴射量低減処理により得られた上限値の内で小さい方の上限値を選択し、該選択した上限値に基づいて燃料噴射量を制限するとともに、前記変速ショック防止のための燃料噴射量低減処理と前記黒煙防止のための燃料噴射量低減処理とが実行中である場合は、前記選択された上限値を増加補正することを特徴とするディーゼルエンジン制御方法。
  3. ディーゼルエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
    前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数変化が黒煙対策判定値より大きい変化量を示した場合に、燃料噴射量の上限値の低減により黒煙防止のための燃料噴射量低減を実行する黒煙防止手段と、
    自動変速機の変速を制御する変速制御手段と、
    前記変速制御手段による前記自動変速機の変速中に、燃料噴射量の上限値の低減により変速ショック防止のための燃料噴射量低減を実行する変速ショック防止手段と、
    前記黒煙防止手段及び前記変速ショック防止手段にて設定されている上限値の内で小さい方の上限値を選択して、該選択された上限値に基づいて燃料噴射量を制限する制限手段と、
    前記変速制御手段が前記自動変速機を変速中であり、かつ前記黒煙防止手段による燃料噴射量低減の実行中である場合に、前記制限手段により選択された上限値を増加補正する黒煙防止燃料噴射低減量減少手段と、
    を備えたことを特徴とするディーゼルエンジン制御装置。
  4. ディーゼルエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
    前記エンジン回転数検出手段により検出されたエンジン回転数変化が黒煙対策判定値より大きい変化量を示した場合に、燃料噴射量の上限値の低減により黒煙防止のための燃料噴射量低減を実行する黒煙防止手段と、
    自動変速機の変速を制御する変速制御手段と、
    前記変速制御手段による前記自動変速機の変速中に、燃料噴射量の上限値の低減により変速ショック防止のための燃料噴射量低減を実行する変速ショック防止手段と、
    前記黒煙防止手段及び前記変速ショック防止手段にて設定されている上限値の内で小さい方の上限値を選択して、該選択された上限値に基づいて燃料噴射量を制限する制限手段と、
    前記変速ショック防止手段と前記黒煙防止手段とが共に燃料噴射量低減の実行中は、前記制限手段により選択された上限値を増加補正する黒煙防止燃料噴射低減量減少手段と、
    を備えたことを特徴とするディーゼルエンジン制御装置。
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