JP4281502B2 - 真空断熱材及び真空断熱材を使用した機器 - Google Patents

真空断熱材及び真空断熱材を使用した機器 Download PDF

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Description

本発明は、真空断熱材及びその真空断熱材を使用した機器に関するもので、複写機やレーザープリンタ等の印刷装置、特に高温部分を有する機器の断熱及び保温に関するものである。
真空断熱材は、発泡樹脂や粉末、又は繊維材等を芯材として外被材内に入れ、外被材内部を真空にすることにより気体の熱伝導率を著しく低下させた断熱材であり、その断熱性能を長期間に渡って維持するために断熱材内部を真空に保ち続けている。
この真空断熱材を家電製品である電気湯沸し器の貯水容器外周に設けて断熱し、保温電力を非常に少なくしたものがある。これは、真空断熱材を構成する積層フィルム中のガスバリア層において、高温にさらされる側に金属箔を用い、低温側は蒸着層を用いるもので、高温側では100℃程度の温度において、ガスバリア性が良好で真空状態を保持することができ、断熱性が長期間保たれ、低温側では蒸着層を用いることにより金属箔を伝って流れ込む熱を抑えることができ、真空断熱材全体の断熱性能を向上させたものである(例えば、特許文献1参照)。
反面、一般的な樹脂フィルムを外被材として構成する従来の真空断熱材は、100℃をわずかに上回る温度までしか使えず、たとえば複写機等の定着装置においては、断熱耐熱性を有するエンジニアリング樹脂を用いて、定着ローラ、排紙ローラ等の定着部を有する外枠部を設けている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−8828号公報 特開昭57−155570号公報
しかしながら、このように従来の真空断熱材が高温で使用できなかった理由の一つとして、外被材フィルム間の接着に2液硬化型のウレタン系接着剤を使用していたことがある。電気湯沸し器のように使用部位の温度が100℃以下のときは、長期間に渡って充分に断熱性能を維持することができたが、電気湯沸し器でも、貯湯容器の底面のヒーターが配設された部位や、複写機やレーザープリンタに用いられる定着装置のように、使用部位の温度が150℃程度になるときには、外被材フィルム間に剥離やデラミが生じる可能性があり、その部分から少しずつ真空度が低下し、長期間に渡って所定の断熱性能を維持することができない可能性がある。
また、従来の真空断熱材は、柔軟性とコスト安価という理由から外被材最外層にナイロンフィルムが使用されており、難燃の性質をもたないが、電子機器等への適用においては他の部品同様、真空断熱材にも難燃性が求められていた。特にノート型パソコン内部のような小スペースに配設する場合には、厚みを抑えた真空断熱材でもパソコン内部の精密部品と近接するため、難燃性が必要であった。
本発明は、外被材フィルム間の接着剤を変化させることにより、150℃以上の高温領域においても長期間に渡って断熱性能を維持することができる真空断熱材を提供することを目的とする。
また本発明は、ラミネート構造を有する外被材に難燃性を付与することにより、電子機器等の内部に真空断熱材を使用した時も安全性を確保することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、芯材と、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを有するラミネート構造の外被材とを備え、前記熱溶着層は融点200℃以上の樹脂フィルムからなり、前記ガスバリア層及び前記保護層の樹脂フィルムの融点が、前記熱溶着層の樹脂フィルムの融点よりも高く、前記外被材の前記熱溶着層と、前記ガスバリア層と、前記保護層とが、少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であり、フィルム間の接着剤がアクリル系又はポリエステル系又はエポキシ系又はシリコン系の接着剤であることを特徴とする真空断熱材である。
アクリル系又はポリエステル系の接着剤は約160℃の耐熱性があり、エポキシ系の接着剤は約200℃の耐熱性があり、シリコン系の接着剤は約250℃の耐熱性があるため、150℃程度の高温雰囲気においても、外被材フィルム間に剥離やデラミが生じる可能性を減少させる。そのため、150℃雰囲気においても相当期間、所定の断熱性能を維持することができる。また、フィルム間の接着強度が上昇するため、ラミネートフィルムとしての引張強度や突き刺し強度等の機械強度も上昇し、真空断熱材内部又は外部からの耐衝撃性も向上させることができる。
また、真空断熱材が使用できる周囲温度を熱溶着層のフィルムの融点に対して50K低い温度とすると、融点200℃以上のフィルムであれば150℃程度の高温雰囲気においてもガスバリア性の低下を少なく抑えることができ、長期間真空断熱材の断熱性能を維持することができるとともに、ガスバリア層や保護層に熱溶着層のフィルムよりも融点が高いフィルムを使用しているため、外被材を熱溶着するときにも問題なく真空断熱材を作製することができる。また、外被材の熱溶着層と、ガスバリア層と、保護層とが少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であるので、ラミネート構造を有する外被材を難燃性とし、更には真空断熱材としても難燃性を付与することができる。従って、真空断熱材使用時の安全性を向上することができる。
本発明によれば、アクリル系又はポリエステル系の接着剤は約160℃の耐熱性があり、エポキシ系の接着剤は約200℃の耐熱性があり、シリコン系の接着剤は約250℃の耐熱性があるため、150℃程度の高温雰囲気においても、外被材フィルム間に剥離やデラミが生じる可能性を減少させる。そのため、ガス侵入による断熱性能の低下を減らし、150℃雰囲気においても相当期間、所定の断熱性能を維持することができる。また、フィルム間の接着強度が上昇するため、ラミネートフィルムとしての引張強度や突き刺し強度等の機械強度も上昇し、真空断熱材内部又は外部からの耐衝撃性も向上させることができる。また、融点200℃以上のフィルムからなるため150℃程度の高温雰囲気においてもガスバリア性の低下を少なく抑えることができ、長期間真空断熱材の断熱性能を維持することができるとともに、ガスバリア層や保護層に熱溶着層のフィルムよりも融点が高いフィルムを使用しているため、外被材を熱溶着するときにも問題なく真空断熱材を作製することができる。また、外被材の熱溶着層と、ガスバリア層と、保護層とが少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であるので、ラミネート構造を有する外被材を難燃性とし、更には真空断熱材としても難燃性を付与することができる。従って、真空断熱材使用時の安全性を向上することができる。
本発明の請求項1に記載の発明は、芯材と、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを有するラミネート構造の外被材とを備え、前記熱溶着層は融点200℃以上の樹脂フィルムからなり、前記ガスバリア層及び前記保護層の樹脂フィルムの融点が、前記熱溶着層の樹脂フィルムの融点よりも高く、フィルム間の接着剤がアクリル系又はポリエステル系の接着剤であり、前記外被材の前記熱溶着層と、前記ガスバリア層と、前記保護層とが、少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であることを特徴とする真空断熱材である。
アクリル系又はポリエステル系の接着剤は約160℃の耐熱性があるため、150℃程度の高温雰囲気においても、外被材フィルム間に剥離やデラミが生じる可能性を減少させる。そのため、ガス侵入による断熱性能の低下を減らし、150℃雰囲気においても相当期間、所定の断熱性能を維持することができる。また、フィルム間の接着強度が上昇するため、ラミネートフィルムとしての引張強度や突き刺し強度等の機械強度も上昇し、真空断熱材内部又は外部からの耐衝撃性も向上させることができる。
また、真空断熱材が使用できる周囲温度を熱溶着層のフィルムの融点に対して50K低い温度とすると、融点200℃以上のフィルムであれば150℃程度の高温雰囲気においてもガスバリア性の低下を少なく抑えることができ、長期間真空断熱材の断熱性能を維持することができるとともに、ガスバリア層や保護層に熱溶着層のフィルムよりも融点が高いフィルムを使用しているため、外被材を熱溶着するときにも問題なく真空断熱材を作製することができる。また、外被材の熱溶着層と、ガスバリア層と、保護層とが少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であるので、ラミネート構造を有する外被材を難燃性とし、更には真空断熱材としても難燃性を付与することができる。従って、真空断熱材使用時の安全性を向上することができる。
本発明の請求項2に記載の発明は、芯材と、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを有するラミネート構造の外被材とを備え、前記熱溶着層は融点200℃以上の樹脂フィルムからなり、前記ガスバリア層及び前記保護層の樹脂フィルムの融点が、前記熱溶着層の樹脂フィルムの融点よりも高く、フィルム間の接着剤がエポキシ系の接着剤であり、前記外被材の前記熱溶着層と、前記ガスバリア層と、前記保護層とが、少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であることを特徴とする真空断熱材である。
エポキシ系の接着剤は約200℃の耐熱性があるため、150℃程度の高温雰囲気においても、外被材フィルム間に剥離やデラミが生じる可能性を請求項1の場合より更に減少させる。そのため、ガス侵入による断熱性能の低下を減らし、150℃雰囲気においてもより長い期間、所定の断熱性能を維持することができる。また、フィルム間の接着強度が上昇するため、ラミネートフィルムとしての引張強度や突き刺し強度等の機械強度も上昇し、真空断熱材内部又は外部からの耐衝撃性も請求項1の場合より更に向上させることができる。また、外被材の熱溶着層と、ガスバリア層と、保護層とが少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であるので、ラミネート構造を有する外被材を難燃性とし、更には真空断熱材としても難燃性を付与することができる。従って、真空断熱材使用時の安全性を向上することができる。
本発明の請求項3に記載の発明は、芯材と、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを有するラミネート構造の外被材とを備え、前記熱溶着層は融点200℃以上の樹脂フィルムからなり、前記ガスバリア層及び前記保護層の樹脂フィルムの融点が、前記熱溶着層の樹脂フィルムの融点よりも高く、フィルム間の接着剤がシリコン系の接着剤であり、前記外被材の前記熱溶着層と、前記ガスバリア層と、前記保護層とが、少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であることを特徴とする真空断熱材である。
シリコン系の接着剤は約250℃の耐熱性があるため、150℃程度の高温雰囲気においても、外被材フィルム間に剥離やデラミが生じる可能性を請求項1及び請求項2の場合より更に減少させる。そのため、ガス侵入による断熱性能の低下を減らし、150℃雰囲気においても約10年間は所定の断熱性能を維持することができる。また、フィルム間の接着強度が上昇するため、ラミネートフィルムとしての引張強度や突き刺し強度等の機械強度も上昇し、真空断熱材内部又は外部からの耐衝撃性も請求項1又は請求項2の場合より更に向上させることができる。また、外被材の熱溶着層と、ガスバリア層と、保護層とが少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であるので、ラミネート構造を有する外被材を難燃性とし、更には真空断熱材としても難燃性を付与することができる。従って、真空断熱材使用時の安全性を向上することができる。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の発明において、熱溶着層をフッ素系樹脂フィルムとしたもので、これらのフィルムは融点がかなり高く、難燃性も有している。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の発明において、熱溶着層をポリクロロ3フッ化エチレンフィルムとしたもので、フッ素系樹脂フィルムの中でも融点が低いため使いやすく経済的である。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の発明において、外被材の外層の樹脂フィルムをフッ素系樹脂又はイミド系樹脂のフィルムとしたもので、これらのフィルムは融点がより高いか或いは存在しないとともに、難燃性も有する。
本発明の請求項に記載の発明は、本体又は本体の内部に、100℃を超える発熱体と、前記発熱体の温度により悪影響を受ける被保護部材と、前記発熱体からの熱影響を遮断する断熱部材とを有し、前記断熱部材が請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の真空断熱材であることを特徴とする真空断熱材を使用した機器である。
発熱体の熱影響を遮断するために分厚い断熱材を配設したり、構造的に大きなスペースを設けたり、更には、風路を設けて送風を行ったりすることなく、薄いスペースで効果的に熱による悪影響を排除できる。
本発明の請求項に記載の発明は、本体又は本体の内部に100℃を超えて加熱された被保温部と、前記被保温部の温度状態を保つための断熱部材とを有し、前記断熱部材が請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の真空断熱材であることを特徴とする真空断熱材を使用した機器である。
高温に加熱された被保温部を保温するために、分厚い断熱材を配設したり、頻繁な加熱制御により大きなエネルギーを消費したりすることなく、薄いスペースで効果的に保温することができる。
本発明の請求項に記載の発明は、本体は印刷装置で、本体の内部に加熱定着手段を有する定着装置と、前記定着装置により記録紙に溶融定着されるトナーを収容するトナー収容部と、印刷を制御する制御装置とを備え、少なくとも、前記定着装置、又は前記トナー収容部、又は前期制御装置のいずれかの外周近傍に設けられ、前記定着装置から前記トナー収容部又は前記制御装置への熱影響を遮断する真空断熱材を有することを特徴とする請求項記載の真空断熱材を使用した機器である。
請求項1から請求項に記載されている真空断熱材はいずれも所定の耐熱性を有するものであり、150℃程度になっている定着装置の断熱部材として貼りつけても熱溶着部の劣化は小さく、長期間断熱性能を維持することができる。これにより定着装置からの熱が遮断されるため、定着装置の周辺にトナー収容部や感光ドラム等のトナーを転写するための転写装置、及び制御装置などの外部からの熱により悪影響を受け易い部品や装置を近接して配設することが可能となり、この定着装置を使用した印刷装置の小型化や品質向上等に寄与することができる。
本発明の請求項10に記載の発明は、本体は、印刷装置の内部に設けられた、記録紙にトナーを溶融定着するための定着装置で、前記定着装置は加熱手段により加熱される熱定着ローラーと、前記熱定着ローラーに記録紙を圧接する加圧ローラーと、少なくとも、前記熱定着ローラー又は前記加圧ローラーを囲むように配設された保温用真空断熱材とを有することを特徴とする請求項記載の真空断熱材を使用した機器である。
請求項1から請求項に記載されている真空断熱材はいずれも所定の耐熱性を有するものであり、およそ200℃になっている熱定着ローラーを囲むように配設された断熱部材のうち、ほぼ150℃まで温度低下した外側部分に配設したり、およそ120℃になる加圧ローラーを囲むように配設すれば、真空断熱材の熱溶着部の劣化は小さく、長期間断熱性能を維持することができる。これにより、薄い断熱材で熱定着ローラーと加圧ローラーの温度を安定して保つことができて、熱定着ローラーを加熱するためのエネルギーが少なくて済み、印刷装置の小型化や品質向上、及び装置立ち上がりの時間短縮、並びに省エネルギー化等に寄与することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図、図2は真空断熱材のヒレ部を示す要部断面図である図1,図2において、真空断熱材1は2枚の外被材2を向かい合わせて芯材3を覆い、内部を真空まで減圧して周囲を熱溶着により封止したものである。
外被材2は2種類のラミネートフィルム2a,2bを組み合わせて用い、内側からそれぞれ熱溶着層4a,4b、ガスバリア層5a,5b、第一の保護層6a,6b、及び第二の保護層7a,7bの各4層により構成しており、また、いずれのフィルムも少なくともVTM−2以上の難燃性を有するものである。
ラミネートフィルム2aは断熱面の高温側として用い、熱溶着層4aに融点が210℃のポリクロロ3フッ化エチレン(厚さ50μm)、ガスバリア層5aには高温側に配設することを考慮して厚さ6μmのアルミ箔、第一の保護層6aには融点270℃のポリエチレンナフタレート(厚さ12μm)、第二の保護層7aには融点260℃の4フッ化エチレン−エチレン共重合体(厚さ25μm)とした。ポリクロロ3フッ化エチレンは、フッ素系樹脂フィルムの中でも融点が低く使いやすい上、ガスバリア性も優れるものである。
また、ラミネートフィルム2bは断熱面の低温側として用い、熱溶着層4bにラミネートフィルム2aと同じポリクロロ3フッ化エチレン(厚さ50μm)、ガスバリア層5bには500Åの厚さにアルミニウムを蒸着した融点270℃のポリエチレンナフタレート(厚さ12μm)、第一の保護層6bにはガスバリア性の強化のために内側に500Åの厚さにアルミニウムを蒸着したポリエチレンナフタレート(厚さ12μm)、第二の保護層7bは融点260℃の4フッ化エチレン−エチレン共重合体(厚さ25μm)とした。
真空断熱材1の作製にあたってはラミネートフィルム2a,2bを向かい合わせにして三辺を熱溶着し、芯材を挿入するための袋を作成しておく。
芯材3は、平均一次粒子径7nmであるヒュームドシリカに粉体比抵抗値が0.6Ω/cmのカーボンブラックが均一分散され、充填されているものである。カーボンブラックの添加量は5wt%とした。この芯材3を水分吸着剤である酸化カルシウムと共に外被材2の袋内に挿入し、内部を10Paまで減圧して残りの一辺を熱溶着により封止して厚さ6mmの真空断熱材1を作製した。
また、フィルム間の接着剤は約160℃の耐熱性を有するアクリル系又はポリエステル系の接着剤、約200℃の耐熱性を有するエポキシ系の接着剤、約250℃の耐熱性を有するエポキシ系の接着剤等が使用できる。
これら材料とフィルム間の接着剤に約160℃の耐熱性を有するアクリル系又はポリエステル系の接着剤を使用した真空断熱材1をサンプル数N=15作製し、150℃の雰囲気に3年間放置したと見込まれる加速試験を行うと、全てのサンプルにおいて外被材フィルム間に剥離やデラミがなく、所定の断熱性能を維持することができた。
また、これら材料とフィルム間の接着剤に約200℃の耐熱性を有するエポキシ系の接着剤を使用し、真空断熱材1をサンプル数N=15作製し、150℃の雰囲気に5年間放置したと見込まれる加速試験を行うと、全てのサンプルにおいて外被材フィルム間に剥離やデラミがなく、所定の断熱性能を維持することができた。
また、これら材料とフィルム間の接着剤に約250℃の耐熱性を有するシリコン系の接着剤を使用し、真空断熱材1をサンプル数N=15作製し、150℃の雰囲気に10年間放置したと見込まれる加速試験を行うと、全てのサンプルにおいて外被材フィルム間に剥離やデラミがなく、所定の断熱性能を維持することができた。
また、UL94安全規格の機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験に準拠して燃焼性を確認したところ、ヒレ部端面においてもV−0相当の結果が得られた。
このように、150℃の高温雰囲気においても熱溶着層のガスバリア性の低下を少なく抑えることができるため熱伝導率の劣化は小さく、長期間真空断熱材の断熱性能を維持することができる。また、ラミネート構造を有する外被材2として、更には真空断熱材1としても難燃性を付与することができ、真空断熱材使用時の安全性を向上することができる。
なお、熱溶着層4a,4bに使用する樹脂フィルムは融点が200℃以上で熱溶着できる樹脂フィルムであれば特に指定するものではない。例えば、融点270℃のポリエチレンナフタレートやフッ素系樹脂フィルムである融点210℃のポリクロロ3フッ化エチレン、融点260℃の4フッ化エチレン−エチレン共重合体、融点285℃の4フッ化エチレン−6フッ化ポリプロピレン共重合体などが望ましい。
ガスバリア層5a,5bは熱溶着層4a,4bで使用したフィルムよりも融点が高い、金属箔や金属蒸着又は無機酸化物蒸着を施したフィルム、又は樹脂フィルムでもガスバリア性の高いものであれば特に指定するものではない。
例えば、金属箔としてはアルミニウム箔がよく使用され、他にも真空断熱材周囲の金属箔を伝って流れ込む熱量が少ない金属として、鉄,ニッケル,プラチナ,スズ,チタン,ステンレス及び炭素鋼が使用できる。また、金属蒸着の材料は、アルミニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀、或いはそれらの混合物等が使用でき、無機酸化物蒸着の材料は、シリカ、アルミナ等が使用できる。蒸着を施す樹脂フィルムにはポリエチレンナフタレートのほか、ポリイミドフィルムなどが使用できる。
また、保護層6a,6b,7a,7bは熱溶着層4a,4bで使用したフィルムよりも融点が高いフィルムであれば良く、具体的には、熱溶着層4a,4bに融点が260℃の4フッ化エチレン−エチレン共重合体を使用した場合は、融点が310℃の4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体、融点が330℃の4フッ化エチレン、融点が330℃のポリエーテルケトンなどが使用でき、他にもポリサルフォンやポリエーテルイミドなどが使用できる。
芯材3は、無機及び有機の粉末材料、無機及び有機の繊維材料などが利用でき、特に指定するものではないが、例えば、粉末材料としては凝集シリカ粉末、発泡パーライト粉砕粉末、珪藻土粉末、珪酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、クレー及びタルクなどの無機粉末が使用でき、繊維材料としてはグラスウール、セラミックファイバーなどの無機繊維が好ましい。その中でも二次凝集粒子径が20μm以下の無機粉末が望ましく、これら粉末材料は粒子が非常に細かいため粒子間の接触熱抵抗が増加して固体熱伝導率が小さくなり、更に10Torr以下の圧力下では圧力に関係せずに非常に小さな熱伝導率を示すものである。このため、空気分子の運動の大きい高温条件での使用に最適な材料である。
参考例1
図3は参考例1における真空断熱材の断面図で、高温部である発熱体に接している状態を示す図3において、真空断熱材8の外被材9は、実施の形態1の構成に対して熱溶着層4a,4bを融点が160℃の無延伸ポリプロピレンフィルムとしたもので、外被材9の内部に芯材3が存在しない密着部10と熱溶着部11とからなるヒレ部12を高温である発熱体13とは反対側となる低温側断熱面8bに沿うように折り曲げ、熱溶着部11を保護するようにしている。外被材9のガスバリア層と保護層、及び芯材3の構成については実施の形態1と同様である。
また、フィルム間の接着剤は約160℃の耐熱性を有するアクリル系又はポリエステル系の接着剤、約200℃の耐熱性を有するエポキシ系の接着剤、約250℃の耐熱性を有するエポキシ系の接着剤等が使用できる。
これら材料とフィルム間の接着剤に約160℃の耐熱性を有するアクリル系又はポリエステル系の接着剤を使用した真空断熱材1をサンプル数N=15作製し、150℃の雰囲気に3年間放置したと見込まれる加速試験を行うと、全てのサンプルにおいて外被材フィルム間に剥離やデラミがなく、所定の断熱性能を維持することができた。
また、これら材料とフィルム間の接着剤に約200℃の耐熱性を有するエポキシ系の接着剤を使用した真空断熱材1をサンプル数N=15作製し、150℃の雰囲気に5年間放置したと見込まれる加速試験を行うと、全てのサンプルにおいて外被材フィルム間に剥離やデラミがなく、所定の断熱性能を維持することができた。
また、これら材料とフィルム間の接着剤に約250℃の耐熱性を有するシリコン系の接着剤を使用し、真空断熱材1をサンプル数N=15作製し、150℃の雰囲気に8年間放置したと見込まれる加速試験を行うと、全てのサンプルにおいて外被材フィルム間に剥離やデラミがなく、所定の断熱性能を維持することができた。
また、ここで発熱体13の温度を150℃としたときでも、低温側断熱面8bに沿う熱溶着部11の温度は80℃以下を維持することができた。すなわち、熱溶着層に融点200℃以上の樹脂フィルムを使用せずに従来の融点200℃未満の安価な樹脂フィルムを使用しても劣化することがなく、熱溶着部11からガスが浸入して真空断熱材の断熱性能が低下することなく、150℃の発熱体13から断熱することができる。
このとき、融点が200℃未満のフィルムとしては、無延伸ポリプロピレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、及びエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等を使用しても何等問題はなく、安価な材料からなる外被材で長期間真空断熱材内部への空気及び水蒸気の浸入を防ぐことができ、断熱性能を維持することができる。
(実施の形態
は本発明の実施の形態における印刷装置の断面図である。
定着装置15を有する印刷装置16における記録紙17への印刷は、感光ドラム18の表面に静電荷画像を形成し、そこにトナー収容部19からトナーを吸着させた後、転写ドラム20を介して記録紙17に転写する。このトナー像が転写された記録紙17を定着装置15に搬入し、高温に保たれた熱定着ローラー21と加圧ローラー22の間に記録紙17を通過させることによりトナーを溶融定着させる。
熱定着ローラー21と加圧ローラー22の周囲には、所定の高い温度を保つために保温用真空断熱材23aを配設した。また、定着装置15の外枠には、周囲に熱影響を与えないように遮断用真空断熱材23bを側面全体及び上面に配設した。遮断用には真空断熱材23cのように配設してもよい。これらの真空断熱材23a,23b,23cは本発明の実施の形態1に示す構成とし、更にヒレ部を熱定着ローラー21とは反対側に折り曲げて使用した。
これにより、印字品質が向上するとともに、制御装置(図示せず)やトナー収容部19及び感光ドラム18等の転写装置は、トナーに悪影響が及ばない45℃以下に長期間維持することができた。
なお、本発明による真空断熱材は、印刷装置である複写機やレーザープリンタの定着装置以外にも、同じように150℃以下の発熱体を断熱したり、保温したりする必要がある製品においても使用することができる。
以上のように、本発明にかかる真空断熱材は、高温雰囲気での断熱性能の低下を抑制できるので、複写機やレーザープリンタ等の印刷装置、更には給湯機器等、特に高温部分を有する機器等の断熱材として幅広く適用できる。
本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図 本発明の実施の形態1における真空断熱材のヒレ部を示す要部断面図 参考例1における真空断熱材の部断面図 本発明の実施の形態における印刷装置の断面図
符号の説明
1 真空断熱材
2 外被材
2a,2b ラミネートフィルム
3 芯材
4a,4b 熱溶着層
5a,5b ガスバリア層
6a,6b 第一の保護層
7a,7b 第二の保護層
15 定着装置
16 印刷装置
17 記録紙
18 感光ドラム
19 トナー収容部
20 転写ドラム
21 熱定着ローラー
22 加圧ローラー
23a,23b,23c 真空断熱

Claims (10)

  1. 芯材と、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを有するラミネート構造の外被材とを備え、前記熱溶着層は融点200℃以上の樹脂フィルムからなり、前記ガスバリア層及び前記保護層の樹脂フィルムの融点が、前記熱溶着層の樹脂フィルムの融点よりも高く、前各樹脂フィルムを積層する接着剤がアクリル系又はポリエステル系の接着剤であり、前記外被材の前記熱溶着層と、前記ガスバリア層と、前記保護層とが、少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であることを特徴とする真空断熱材。
  2. 芯材と、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを有するラミネート構造の外被材とを備え、前記熱溶着層は融点200℃以上の樹脂フィルムからなり、前記ガスバリア層及び前記保護層の樹脂フィルムの融点が、前記熱溶着層の樹脂フィルムの融点よりも高く、前各樹脂フィルムを積層する接着剤がエポキシ系の接着剤であり、前記外被材の前記熱溶着層と、前記ガスバリア層と、前記保護層とが、少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であることを特徴とする真空断熱材。
  3. 芯材と、熱溶着層とガスバリア層と保護層とを有するラミネート構造の外被材とを備え、前記熱溶着層は融点200℃以上の樹脂フィルムからなり、前記ガスバリア層及び前記保護層の樹脂フィルムの融点が、前記熱溶着層の樹脂フィルムの融点よりも高く、前各樹脂フィルムを積層する接着剤がシリコン系の接着剤であり、前記外被材の前記熱溶着層と、前記ガスバリア層と、前記保護層とが、少なくともUL94規格でVTM−2以上の難燃性であることを特徴とする真空断熱材。
  4. 熱溶着層をフッ素系樹脂フィルムとしたことを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の真空断熱材。
  5. 熱溶着層をポリクロロ3フッ化エチレンフィルムとしたことを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の真空断熱材。
  6. 保護層をフッ素系樹脂又はイミド系樹脂のフィルムとしたことを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の真空断熱材。
  7. 本体又は本体の内部に100℃を超える発熱体と、前記発熱体の温度により悪影響を受ける被保護部材と、前記発熱体からの熱影響を遮断する断熱部材とを有し、前記断熱部材が請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の真空断熱材であることを特徴とする真空断熱材を使用した機器。
  8. 本体又は本体の内部に100℃を超えて加熱された被保温部と、前記被保温部の温度状態を保つための断熱部材とを有し、前記断熱部材が請求項1から請求項のうちいずれか一項記載の真空断熱材であることを特徴とする真空断熱材を使用した機器。
  9. 本体は印刷装置で、本体の内部に加熱定着手段を有する定着装置と、前記定着装置により記録紙に溶融定着されるトナーを収容するトナー収容部と、トナーを記録紙に転写するための転写装置と、印刷を制御する制御装置とを備え、少なくとも、前記定着装置、又は前記トナー収容部、又は前記制御装置のいずれかの外周近傍に設けられ、前記定着装置から前記トナー収容部又は前記制御装置への熱影響を遮断する真空断熱材を有することを特徴とする請求項記載の真空断熱材を使用した機器。
  10. 本体は、印刷装置の内部に設けられた、記録紙にトナーを溶融定着するための定着装置で、前記定着装置は、加熱手段により加熱される熱定着ローラーと、前記熱定着ローラーに記録紙を圧接する加圧ローラーと、少なくとも、前記熱定着ローラー又は前記加圧ローラーを囲むように配設された保温用真空断熱材とを有することを特徴とする請求項記載の真空断熱材を使用した機器。
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