JP4280256B2 - 改修構造 - Google Patents

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Description

本発明は、既設屋根等の既設外装面から粉塵が飛散することを防止できる改修構造に関する。
既設屋根を葺き替える場合、既設屋根を構成する屋根材などを剥がさずに新設屋根を重ねる方法が多く採られている。
例えば特許文献1は、既設の波形スレート上に、特定のフレームを固定し、改修用折板を敷設する構造が提案されている。また、特許文献2は、既設の屋根瓦又は野地板上に、新設の屋根材を敷設する構造が提案されている。
これらの方法では、既設屋根の除去が不要となるという利点がある反面、新設屋根を固定するためのビス等の固定具を既設屋根に打ち込むため、「切り粉」と呼ばれる粉が発生する。
尚、既設屋根にビス等を打ち込まない工法も提案されているが、既設屋根の状態(劣化等)に左右され、極めて汎用性の低いものである。
実開平5−5943号公報 特開平7−317223号公報
そして、この種の葺き替えを必要とされる屋根の中には、アスベストが用いられているものが多い。このようなアスベスト(石綿)は、天然の繊維性鉱物であり、耐熱性、耐磨耗性、耐腐食性に優れ、安価な工業材料として、ドライヤ−やトースター、自動車のブレーキパッド、クラッチ板などに幅広く用いられ、さらに屋根瓦、屋根用波板、石膏板、天井用化粧版などの建材としても、防音・断熱用として各種の学校や建築物などに使用されていた。
このアスベストは、非常に細い繊維であって、悪性中皮腫などの病気を発症させることが明らかになったため、国内では吹付けアスベストを昭和55年に禁止、アスベスト(石綿)を含む建材の製造・使用は平成16年に禁止された。
しかし、多くの既設建築物中にアスベストが用いられてきたため、各種の既設建築物の経年による劣化や雨漏れ等によって葺き替えが求められている。例えば比較的軽微な地震等で、露出した吹付けアスベストにひび割れが発生してしまうため、その周辺環境や近隣住民は極めて重大な危険にさらされているものであった。
そのため、アスベストの飛散を抑える目的で、水を散布して改修施工する方法も存在するが、作業中は飛散しないものの、作業後に乾燥してアスベストが飛散するという問題もあった。
また、前述のような既設屋根へのビス等の打込みによって生ずる「切り粉」としての飛散アスベストは、作業者、住民の健康を害する恐れの高いものであった。
そこで、本発明は、緊急に対処することができ、既設屋根から飛散アスベストの拡散を防止できる改修構造を提案することを目的とする。
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、既設外装面の外側に新設外装構造を構築する改修構造であって、外装材又は外装材用保持部材を固定する固定具の固定箇所のみに介在させた不定形の粘性材料の上に固定具を打ち込んで取り付けたことを特徴とする改修構造に関するものである。
上記の既設外装面が既設屋根である場合、既設屋根の上に新設屋根を敷設する改修構造であって、屋根材又は屋根材用保持部材を固定する固定具の固定箇所のみに介在させた不定形の粘性材料の上に固定具を打ち込んで取り付けたことを特徴とする改修構造となる。
また、本発明は、第2の発明として前記第1の発明の改修構造において、外装材又は外装材用保持部材の裏面側に粘性材料を介在させて固定し、その表面側に更に粘性材料を介在させて固定具を固定することを特徴とするものである。
上記の既設外装面が既設屋根である場合、屋根材又は屋根材用保持部材の裏面側に粘性材料を介在させて固定し、その表面側に更に不定形の粘性材料を介在させて固定具を固定することを特徴とするものとなる。
本発明の改修構造は、外装材又は外装材用保持部材を固定する固定具の固定箇所のみ介在させた不定形の粘性材料の上に固定具を打ち込んで取り付けるため、固定具の固定によって既設外装面から発生する粉塵を粘性材料に接着(捕捉)させることができ、飛散を防止することができる。したがって、本発明の改修構造は、近年の緊急を要するアスベスト対策として、極めて広い既設外装面に適用することができ、極めて実用的価値が高く、社会的貢献度が高いものである。
特に外装材又は外装材用保持部材の裏面側に粘性材料を介在させて固定し、その表面側に更に不定形の粘性材料を介在させて固定具を固定する場合、既設外装面から発生する粉塵は、外装材又は外装材用保持部材の裏面側と表面側の二箇所で粘着性材料と粘性材料に接着(捕捉)されるので、飛散する可能性は更に低いものとなる。
本発明に適用される既設外装面は、特にその構造を限定するものではないが、そもそも本発明は、前述のように既設外装面から発生する粉塵を接着(捕捉)することを目的とするものであるため、本質的にアスベストなどの粉塵を含有するものである。例えば既設屋根の場合には、主に波形スレート、スレート瓦等である場合が多い。
本発明に適用される新設外装構造についても、特にその構造を限定するものではなく、どのような外装構造をも適用することができる。例えば新設屋根の場合には、折板屋根等の公知の屋根構造を適用できる。
本発明に適用される粘性材料は、少なくとも固定具の固定に際して生じる固定孔(ビス孔)を噴出口として既設外装面から発生する粉塵を接着(捕捉)できるものであれば、特にその構成は限定するものではなく、不定形でも定形のものでもよい。そのため、粘性材料は、例えばゴム等のようにガラス転移点(Tg)が低く、常温でも粘弾性を有するものでもよいし、少なくとも固定具の固定時に湿潤状態(粉塵が飛散しない程度の状態)である液状であればよい。即ち固定具の固定後には、粘性を維持するものでも固化するものであってもよい。例えばシリコーン樹脂やアクリル樹脂等の不定形の建築用シール材のように、塗布量を適宜に調整でき、所定期間は粘着性を維持し、所定期間後には硬化しては弾性を有する材料となるものは、粉塵の接着(捕捉)ばかりでなく、固定孔(ビス孔)からの浸水をも防ぐことができるため、好ましい。また、止水材として用いられるシリコーンゴムやブチルゴムを用いてもよい。さらに、外装材や保持部材を接着する機能、即ち接着剤として機能するものは更に好ましい。このような不定形の場合、一液性でも二液性でもよいが、硬化(架橋)タイプの方が好ましい。或いは定形のものとして、片面のみの粘着テープでもよいが、両面テープがより望ましく、特に支持体が弾性を有する両面テープ(両面フォーム)がさらに好ましい。
また、前記粘性材料は、固定具の固定箇所に介在させればよいものであって、具体的には外装材又は外装材用保持部材の表面側又は裏面側(=既設外装面の表面側)に、不定形のものを線状に介在させるものでも、固定箇所のみにスポットで山盛り状に介在させるものでもよく、固定具を固定した場合にその頭部まで覆うようにしてもよい。或いは定形のものを貼り付けておいてもよい。或いはビス等の固定具のねじ山表面に塗布してもよい。
図1に示す実施例では、既設外装面(既設屋根)は、野地材2上に平形屋根スレート1を配設した構造であって、その上にバックアップ材3を裏面側に配した横葺き外装材(以下、単に外装材という)4を、外装材用保持部材(以下、単に保持部材という)5により下段側から順に敷設して新設外装構造を構築する例である。尚、既設屋根を構成する平形屋根スレート1は、アスベストなどの粉塵を含有するものである。
図示実施例における外装材4は、図2(a)に拡大して示すように、略平坦状の面板部41の軒側及び棟側に成形部42(軒側成形部),43(棟側成形部)を設けた構成の屋根材であり、軒側成形部42は、面板部41の軒縁を下方へ略鉛直状に曲げ、その下端を棟側へ曲げ成形し、続いて上方へ略く字状に屈曲し、さらにその先端を裏面側へ折り返した構成とした。
棟側成形部43は、面板部41から延在する端縁を表面側へ段状に折り曲げ(段状部44)、さらに折り返し状に曲げ成形し、その軒端を下方へ折り曲げた構成とした。
そして、これらの軒側成形部42と棟側成形部43とは、敷設状態において保持部材5を介して係合する構成とした。
この外装材4の金属材料素材としては、代表的には概ね0.4〜1.6mm程度の溶融亜鉛メッキ鋼板やガルバリウム鋼板等の防錆処理鋼板、特殊鋼、非鉄金属、ステンレス鋼板、耐候性鋼板、銅板、アルミニウム合金板、鉛板、亜鉛板、チタニウム板などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは殆ど長尺なコイル状形態で供給される。また、これら各種の長尺なコイル状の金属材料の裏面に、結露防止、防音、防火対策上の理由により、必要に応じてポリエチレンフォーム、グラスウールシート等の裏貼り(裏張り)材を添装してもよい。
前記外装材4を保持する保持部材5は、図2(c)に拡大して示すように、前記外装材4の軒側成形部42と同様な形状を有して組み付け状態において軒側成形部42を上方から保持する保持部51と、その棟側に位置する段状部分52と、その更に棟側に位置する固定部53とからなるピース材である。また、固定部53には、起立片の上端が棟側に折り返された規制部54が設けられている。
また、前記外装材4の裏面側に配置されるバックアップ3は、図2(b)に拡大して示すように、その上面が、前記外装材4の面板部41及び段状部44の裏面を支持する本体部31と、その棟側に設けられ、前記保持部材5の段状部分52の裏面を支持する棟側部32とからなる。また、本体部31の軒側の裏面には、組み付け状態において前記保持部材5の規制部54に留め付けられるスリット33が設けられている。
そして、本発明の改修構造を構築するには、まず図1(a)に示すように、下段側の外装材4の棟側であって、保持部材5を固定する部分の平形屋根スレート1上に、粘性材料7を治具Aを用いて塗布した。
次に、図1(b)に示すように、塗布された粘性材料7上に保持部材5を取り付けた後、固定具6を打ち込む予定の部分(固定部53上)に、前記粘性材料7’(前述の塗布と区別するために『’』を付して区別する。)を同様に治具Aを用いて塗布した。
続いて、図1(c)に示すように、塗布された粘性材料7’上に固定具6を打ち込んで、その頭部が粘性材料6’の塗布部分に覆われるように取り付けた。
同様に繰り返し施工して、図1(d)に示すように、新設外装構造(新設屋根)を構築した。
このように施工される本発明の改修構造は、保持部材5を固定する固定具6の固定箇所に、粘性材料7を介在させるため、固定具6の固定によって発生するアスベスト等の粉塵を粘性材料7に接着(捕捉)させることができ、飛散を防止することができる。
特に図示実施例では、保持部材5の表面側及び裏面側に粘性材料7,7’を介在させるようにしたので、アスベスト等の粉塵は、保持部材5の裏面側と表面側の二箇所で粘性材料7,7’に接着(捕捉)され、飛散する可能性は更に低い。
図3に示す実施例では、既設外装面(既設屋根)は、前記図1の実施例と同様であり、野地材2上に平形屋根スレート1を配設した構造であって、その上に略平坦状の横葺きの外装材8を、下段側から順に敷設して新設外装構造を構築する例である。
図示実施例における外装材8は、図4(a)に拡大して示すように、略平坦状の面板部81の軒側及び棟側に成形部82(軒側成形部),83(棟側成形部)を設けた構成の屋根材であり、軒側成形部82は、面板部81の軒縁を下方へ略鉛直状に曲げ、その下端を棟側へ曲げ成形し、さらにその先端を裏面側へ折り返した構成とした。
棟側成形部83は、面板部81から延在する端縁を折り返し状に曲げ成形し、更にその先端を折り返し状に折り曲げた構成とした。
そして、これらの軒側成形部82と棟側成形部83とは、敷設状態において係合する構成とした。
そして、本発明の改修構造を構築するには、まず図3(a)に示すように、外装材8の棟側成形部83を固定する部分の平形屋根スレート1上に、粘性材料9を治具Aを用いて塗布した。
尚、この粘性材料9は、前記図1の実施例における粘性材料7,7’と全く同様であるが、図面上では符号9を付した。
次に、図3(b)に示すように、塗布された粘性材料9上に外装材8の棟側成形部83を取り付けた後、固定具6を打ち込む予定の部分(棟側成形部83上)に、前記粘性材料9’(前述の塗布と区別するために『’』を付して区別する。)を同様に治具Aを用いて塗布した。
続いて、図3(c)に示すように、塗布された粘性材料9’上に固定具6を打ち込んで、その頭部が粘性材料9’の塗布部分に覆われるように取り付けた。
同様に繰り返し施工して、図3(d)に示すように、新設外装構造(新設屋根)を構築した。
このように施工される本発明の改修構造も、外装材8を固定する固定具6の固定箇所に、粘性材料9を介在させるため、固定具6の固定によって発生するアスベスト等の粉塵を粘性材料9に接着(捕捉)させることができ、飛散を防止することができる。
また、この図示実施例でも、外装材8の棟側成形部83の表面側及び裏面側に粘性材料9,9’を介在させるようにしたので、アスベスト等の粉塵は、棟側成形部83の裏面側と表面側の二箇所で粘性材料9,9’に接着(捕捉)され、飛散する可能性は更に低い。
(a)本発明の一実施例である改修構造の施工手順を示し、外装材を固定する部分に粘性材料を塗布した状態を示す側断面図、(b)外装材を固定した後、固定具を固定する部分に粘性材料を塗布した状態を示す側断面図、(c)固定具を固定した状態を示す側断面図、(d)改修された新設外装構造を示す側断面図である。 (a)図1に用いた外装材の側断面図、(b)図1に用いたバックアップ材の側断面図、(c)図1に用いた保持部材の側断面図、(d)図1に用いた固定具の側断面図、(e)図1における既設外装構造を示す側断面図である。 (a)本発明の別の一実施例である改修構造の施工手順を示し、外装材を固定する部分に粘性材料を塗布した状態を示す側断面図、(b)外装材を固定した後、固定具を固定する部分に粘性材料を塗布した状態を示す側断面図、(c)固定具を固定した状態を示す側断面図、(d)改修された新設外装構造を示す側断面図である。 (a)図3に用いた外装材の側断面図、(b)図3に用いた固定具の側断面図、(c)図3における既設外装構造を示す側断面図である。
符号の説明
1 平形屋根スレート(既設屋根)
2 野地材
3 バックアップ材
4 (横葺き)外装材(新設屋根)
5 (外装材用)保持部材
6 固定具
7,7’ 粘性材料
8 (横葺き)外装材(新設屋根)
9,9’ 粘性材料

Claims (3)

  1. 既設外装面の外側に新設外装構造を構築する改修構造であって、外装材又は外装材用保持部材を固定する固定具の固定箇所のみに介在させた不定形の粘性材料の上に固定具を打ち込んで取り付けたことを特徴とする改修構造。
  2. 外装材又は外装材用保持部材の裏面側に粘着性部材を介在させて固定し、その表面側に更に不定形の粘性材料を介在させて固定具を固定することを特徴とする請求項1に記載の改修構造。
  3. 粘性材料は、少なくとも固定具の固定時に湿潤状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の改修構造。
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