JP4279389B2 - 工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置 - Google Patents

工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラック・ピニオン駆動方式の工事用エレベータに係るものであって、詳しくはそのラック付鉄塔に沿って昇降駆動可能にされた頂部連台に付属して、鉄塔の組立あるいは解体が容易なようにされた工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、工事用エレベータにおける搬器の昇降を案内支持する鉄塔は、構築中の建物などの建設工程の進捗に応じて揚程を高めるために鉄塔を継足している。また、搬器の昇降駆動力を軽減させるために、カウンターウエイトを鉄塔頂部に設けられるガイドシーブを巡らせて搬器とロープで繋いでバランスさせる方式が採用されている。そのために、鉄塔頂部には、カウンターウエイト用ロープを案内支持するガイドシーブを移設可能に配設する頂部連台が、鉄塔に沿わせて移動可能に取付けられている。
【0003】
鉄塔の継足し作業は、高所位置に鉄塔のセグメントを運び上げて組立てることになるので、一般に建築中の建物の躯体などに設置されているクレーンを使用してその鉄塔のセグメントを吊上げ組立てる方式が採用されている。また、エレベータの搬器に鉄塔のセグメントを積み込んで運び上げ、その搬器に付設される小型のポストクレーンで既設の鉄塔上にその鉄塔のセグメントを吊上げて接続する方式もある。
【0004】
また、作業が完了して工事用エレベータを撤去する場合には、主に建築物の高所に設置されている工事用のクレーンによって鉄塔のセグメントを順次吊り降ろして解体する方法が採られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように鉄塔の継足し作業を建物の躯体などに設置のクレーンによって鉄塔のセグメントを吊り込む場合は、比較的作業性はよいが、エレベータの設置場所がクレーンの作業半径外になるとクレーンを使用できない。または、作業の合理化でクレーンは構築資材などの揚降作業に専用され、利用することが工程上困難であることが多い。このようなことから、この工事用エレベータ自体で揚程の延長に伴う鉄塔の継足し作業を効率よく、安全に実施できる手段が要求されている。また、工事が終了して工事用エレベータを解体撤去するに際しても、クレーンを使用できない場合には、自己の機能で鉄塔の解体を行うことが要求される。
【0006】
そこで、鉄塔の接続や解体について自己の機能によって作業ができるようにされた組立・解体装置を備える工事用エレベータについて、本出願人等の先願発明(特開平9−301656号)によって提案されている。この先願発明に係る先行技術では、鉄塔に沿って自動昇降できる機能を備えた頂部連台上に、鉄塔に対して進退できる移動台を搭載して、この移動台上に鉄塔の両脇を抱えて既設鉄塔上から手前側にまたは手前側から鉄塔上に移動できるようにされた鉄塔のセグメント支持手段を備えたものであり、鉄塔の位置からその前面側に鉄塔のセグメント1個分を外した状態で支持して、その頂部連台を昇降させることにより、組立時には下部から鉄塔頂部に、解体時には鉄塔頂部から取り外して地上階まで降ろすようにされている。
【0007】
しかしながら、この先行技術では、昇降できる頂部連台上で鉄塔位置からその前側に鉄塔のセグメントを移動させて運搬できるようにする移動台上に、上部のアームを水平にして移動方向に平行して設けられる鶴首状をした一対のフレームが立設され、その上部のアームに沿って鉄塔側へ直交するように設けられる複数の支持片挿入孔に外側から複数の支持片を挿入して鉄塔の横部材下に差し込むとともに鉄塔の前後を挟んで、それら支持片にて鉄塔を両側から支持するようにされているだけなので、昇降時安定性に不安がある。また、このような支持手段によるために、鉄塔のセグメントを積み下ろしする際、鉄塔のセグメントを立てた状態で行わねばならず作業性が悪い。特に、解体作業時には、地上階に降ろした鉄塔のセグメントを頂部連台上から作業階面に降ろす作業を行うのに起立状態ではその取扱が困難であるという問題点があった。
【0008】
また、前記先行技術には、別例として鉄塔セグメントを保持する鉄塔保持手段が90度反転して起立状態から水平状態に変位させることができるものが示されている。この開示技術では、移動台上に起立するフレームに沿って直動の駆動装置によって上下に移動できるアームに支持されて軸受により回転可能に支持された支持軸の先端に取付くクランプにて鉄塔セグメントの中間部横部材を1個所で左右から把持させて回動できる構造にされている。しかしながら、この先行技術では、重量がかなり大である鉄塔セグメントを両側の1点で左右から押し当てるクランプによって保持させて人手によって回動させる構成であるので、安全性に乏しく危険を伴うという問題がある。
【0009】
本発明では、このような問題点を解決するために、自走機能を備える頂部連台上で鉄塔セグメントを上下複数箇所で確実に把持できるとともに、鉄塔セグメントの受け払い場所ではその連台上にて鉄塔のセグメントを保持したまま直立状態からほぼ水平の状態に安全な姿勢で起倒可能なようにされ、取扱が容易な構成とされる工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置は、
ラック・ピニオン駆動式の工事用エレベータにおける自走機能を備えた頂部連台に搭載され、鉄塔のセグメントを両側で支持して鉄塔前側位置から鉄塔設置位置までの間を進退可能にされる鉄塔セグメント支持装置を備える工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置において、
前記鉄塔セグメント支持装置は、進退自在な移動台と、この移動台の両側に立設される一対のフレームと、このフレームをその基部で前記移動台上に軸支持させて起立位置から傾倒位置までの範囲で回動させるフレーム駆動装置と、前記フレームに上下所定の間隔で進退可能にそれぞれ設けられる鉄塔保持手段とを備え、
前記鉄塔保持手段は、前記フレームに付設されるアームと、このアームに支持されて鉄塔側面に向けて進退自在で左右対向配置される把持金物とを備え、該把持金物が、鉄塔の縦部材を外側の三方から抱持する把持部片を先端に有して、鉄塔把持位置と退避位置とで前記アームに対して固定可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
このように構成される工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置は、鉄塔のセグメントを移動させるのに、頂部連台上で鉄塔セグメント支持装置のフレームに付属する鉄塔保持手段を鉄塔の所要把持位置に設定して、それら鉄塔保持手段を鉄塔側に移動させて、鉄塔の部材を両側で把持させる。こうすると、支持される鉄塔のセグメントは、鉄塔セグメント支持装置のフレームに付属する鉄塔保持手段によって左右両側面部でその構成部材把持されて、三方から抱えられて支持されることになり、しかも上下複数箇所で保持されるので、鉄塔セグメントを持ち上げた状態で支持しても安定性が確保できる。
【0012】
したがって、鉄塔を解体してその鉄塔セグメントを地上部に降ろすには、頂部連台を上下移動させて搭載している鉄塔セグメント支持装置のフレームに付属する鉄塔保持手段を鉄塔の把持位置に設定し、その後に各鉄塔保持手段を鉄塔側に移動させてその鉄塔の部材を把持させ、鉄塔の接続部で接続ボルトを外し、移動台を鉄塔前側に移動させて鉄塔上から切り離し、この状態で頂部連台を自走させて地上部まで降ろして撤去できる。鉄塔セグメント支持装置のフレームは、その基部で移動台に軸支持されて起倒可能にされているので、フレーム駆動装置を作動して鉄塔セグメントを支持した状態でフレームを傾動させれば、支持されている鉄塔セグメントがフレームに付されている鉄塔保持手段によって上下複数箇所両側で把持されて、安定状態に保たれてそのまま横倒しにされるので、地上部でフォークリフトなどの運搬機を用いて運び出すことができ、安全性が確保されて取扱を容易にすることができるという効果を奏する。組立時には、前記解体時と逆の操作によって、地上部から継足す鉄塔頂部に鉄塔セグメントを運び上げて組立ができる。
【0013】
また、鉄塔セグメントを保持して組立(鉄塔の接続)あるいは解体を行うときには、前記アームに対する固定を解いて鉄塔に向かって把持部片を押し出して鉄塔の所定の部材に当接させるようにすれば、鉄塔の両側に位置する両鉄塔保持手段によって鉄塔を両側から把持することになり、その把持位置を鉄塔の横部材下側に配すればその横部材を介して自重を受支して把持するので、安定した支持ができる。もちろん、把持部片を鉄塔の部材に当接させた時点でアームに対して固定することにより、把持状態を維持できる。
【0014】
本発明において、前記把持部片は、前記鉄塔セグメントの側面部を構成する上下2段の横部材における一方の上側位置と他方の下側位置でそれぞれ鉄塔の縦部材を把持する位置関係を保ってスライド可能に構成されるのが好ましい。こうすると、鉄塔セグメントを把持するときに、上下に所要距離離れた位置で、かつ鉄塔構成の横部材を一方では上側に、他方では下側にそれぞれ把持部材を接触させるとともに両側面部で鉄塔の縦部材を把持させることができるので、鉄塔セグメントを起立状態で保持することはもちろん、フレームを傾動させるときにぐらつくことなく安全に操作できるという効果を奏するのである。
【0015】
また、前記アームは、その基部が前記フレームに所要角度外側へ回動可能に枢着され、そのアーム枢着部では着脱可能な固定ピンによって通常時所定方向に保持されるのがよい。こうすることにより、例えば解体で搬送されて来た鉄塔セグメントを地上部で頂部連台上から降ろす際に、鉄塔セグメントを横倒しにして受台などに仮受支させた後、鉄塔セグメント支持装置のフレームを起立させる作業を行うとき、その鉄塔保持手段におけるアームを枢支部で固定ピンを外し、外向きに回動させてアームを外向きに倒すと、鉄塔側面に付設されるカウンターウエイトのガイドレールなどの突出部をかわしてフレームを起立させ、次の作業に速やかに移行させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置について、その実施の形態を具体例の図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示されるのは本発明に係る鉄塔組立・解体装置が用いられる工事用エレベータの一具体例を表す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。図2は本発明に係る鉄塔組立・解体装置を搭載する頂部連台の正面図、図3は図2の側面図、図4は図2の平面図、図5は鉄塔セグメント支持装置の正面図、図6は図5の側面図、図7は図5の平面図、図8は鉄塔保持手段の平面図である。
【0018】
これらの図において、建物の躯体に支持されて立設される鉄塔1は、所要長さに分割された鉄塔セグメント1Aを多数積み重ねて所要高さに組立られている。この鉄塔1には、両側前部に搬器2を案内するガイドレール1a,1aが取付けられ、前面にそのガイドレール1aに平行してラック1bが連続するように取付けられている。また、鉄塔1の両側面にはカウンターウエイト7,7のガイドレール1c,1cが付設されている。搬器2は、前記鉄塔1のガイドレール1aに案内されて搭載する駆動機6により駆動されるピニオン(図示せず)を前記鉄塔1前面に付設のラック1bと噛み合わせて昇降するように装備された駆動フレーム3と、この駆動フレーム3に連結される昇降フレーム4に取付けられたケージ5とからなっている。
【0019】
前記鉄塔1の頂部前面には、頂部連台10が、搭載された駆動機15によって駆動されるピニオン(図示せず)を前記鉄塔1に付設のラック1bと噛み合わせて、昇降移動可能に取付けられている。この頂部連台10には、鉄塔1の両側に位置するようにしてカウンターウエイト用のワイヤーロープ8,8の吊下げシーブ9,9が左右一対付設されている。
【0020】
カウンターウエイト7,7は、前記鉄塔1の左右両側面に沿って設けられたガイドレール1c,1cにそれぞれ案内され、前記吊下げシーブ9,9に吊り掛けられたワイヤーロープ8,8の一端を繋がれ、そのワイヤーロープ8の他端部を搬器2に搭載される余巻きドラム(図示省略)を介して昇降フレーム4に繋がれ、搬器2とカウンターウエイト7,7がバランスするようにされている。なお、頂部連台10には搬器2を最上昇させて作業員がケージ5の天井部から乗り移れるようになっている。
【0021】
前記頂部連台10には、鉄塔セグメント支持装置20が搭載されている。この鉄塔セグメント支持装置20は、頂部連台10のフレーム11の前部位置に設けられる作業ステージ12の上面に、鉄塔1の幅寸法よりも広い間隔で、その鉄塔1に直交する方向に二本の断面コ字形をしたガイドレール13,13が左右対称に敷設され、このガイドレール13,13に案内されて鉄塔1の前部位置からその鉄塔1を抱え込むようになる位置まで進退自在にされた移動台21と、この移動台21に取付く一対のフレーム駆動装置25,25を介して支持されて前記鉄塔1の幅よりも広い間隔で立設される一対のフレーム30,30と、これらフレーム30を直立状態からほぼ90度鉄塔側から離れて倒伏する位置まで回動させるフレーム駆動装置25,25と、前記フレーム30に付設されるアーム34に支持されて鉄塔1を保持する鉄塔保持手段36,36’とで構成されている。
【0022】
移動台21は、図4〜図7にて示されるように、前記頂部連台10の作業ステージ(踊場)12上に敷設される2本のガイドレール13,13に、それぞれ所定の間隔で配される複数の車輪22,22’を係合させて手動により移動自在に設けられ、両側に起立して設けられる支持台23,23上に各々フレーム駆動装置25,25が取付けられ、これらフレーム駆動装置25,25によって上部に鉄塔保持手段36.36’を備えるフレーム30が立設されている。
【0023】
前記フレーム駆動装置25は、左右対称に配設され、それぞれ前記移動台21の上側に位置する支持台23上に搭載された一対の軸受26’にて支持される回転軸26と、前記支持台23の外側部に取付くブラケット23aに支持されるウオーム減速機27および駆動モータ27a並びに回転角規制リミットスイッチ29,29’からなっている。前記回転軸26の外向き端部には歯車28が取付けられ、駆動モータ27aによって駆動されるウオーム減速機27の出力軸上の出力歯車27bと噛み合わせて、前記フレーム30を直立状態からほぼ90度回転できるようにリミットスイッチ29,29’によって回転角を規制されて駆動できるようになされている。
【0024】
前記フレーム駆動装置25を介して支持されるフレーム30は、前記回転軸26に固着されて回動可能な取付ブラケット31に基端を取付けられて所要高さに設定され、所定の間隔(取扱う鉄塔セグメント1Aの二本の横部材を上下に挟む距離に対応)で上部および下部の前面(鉄塔に対向する面)にそれぞれ上下一対の突片32,32を平行して突設され、これら各対の突片32,32にそれぞれ基端をピン33にて枢支されて水平回動自在なアーム34が取付けられている。そのアーム34を枢支する突片32,32部には、図8に示されるように、そのアーム枢支ピン33と隣接して固定ピン33aが設けられ、この固定ピン33aを装着した状態でアーム34の向きが固定され、その固定ピン33aを抜き取るとアーム34が枢支ピン33を基点として水平に回転できるようにされている。図中符号35はアーム34の回動限界を規制するストッパーである。
【0025】
鉄塔保持手段36,36’は、いずれも前記フレーム30に取付く前述のアーム34と、このアーム34の先端部においてその軸線に直交する方向に設けられた保持孔34aに基幹部材37aを挿入支持されて鉄塔側面に向けて摺動可能に取付く把持金物37(下側に位置するものは、鉄塔セグメントを直立状態で支持するときにその鉄塔セグメント1Aの荷重を負担するために大きく頑丈に形成されている)と、この把持金物37を鉄塔把持位置と退避位置とに選択して固定する固定金具(ロックピン)38とで構成される。なお、符号36’は下側の鉄塔保持手段を表している。
【0026】
前記把持金物37は、基幹部材37aの先端に鉄塔のガイドレール1aを構成する縦部材(以後ガイドレールと同一の符号で説明する)を外側から抱持できる寸法でコ字状に形成された把持部片37bが一体に取付けられたものである。この把持金物37には、基幹部材37aの後端部と中間部とに位置決め孔37c,37dが上下に貫通して設けられ、前記アーム34の保持孔34a隣接部外側位置に付された固定枠34bに、上下方向に穿設されたロックピン孔34cを通じて前記基幹部材37aのいずれか一方の位置決め孔37c(37d)にロックピン38を挿入されると退避位置または鉄塔把持位置に固定できるようにされている。なお、基幹部材37aの後端には摺動操作用の把手37fが付されている。また、左右いずれか一方のフレーム側に付される把持金物37の一つ(具体例では下側に位置するもの)には、鉄塔セグメント1Aを把持したことを検知できるようにリミットスイッチ39が付設されている。
【0027】
このように構成される本実施例の鉄塔セグメント支持装置20は、その搭載される頂部連台10を、搬器2とは別に単独で運転可能なように電源を駆動部に接続して、例えば鉄塔を継足す組立作業を行うには、搬器2を最下位に降ろし、カウンターウエイト吊下げワイヤーロープ8は一時取り外した状態にして、頂部連台10を下部に下ろす。その後に、頂部連台10上で最後退させた移動台21の前側に、レッカーなどによって継足すための鉄塔セグメント1Aを吊り込み、この鉄塔セグメント1Aを作業ステージ12の床面から主要量離れた状態で維持させる。
【0028】
次いで、移動台21上に起立している一対のフレーム30,30に、図9で示されるように、それぞれ上下各アーム34の保持孔34aに挿入装着されている鉄塔保持手段36(36’)の把持金物37を、基幹部材37aの退避位置にあるロックピン38を取り外して前記鉄塔セグメント1Aの側面における縦部材1aに向けて突出し、図10にて示されるように、その把持金物37の先端部把持部片37bを前記縦部材1aに押し当てる。なお、把持金物37を前進させて鉄塔セグメント1Aの縦部材1aに当接した状態でロックピン38を位置決め孔37dに挿入して把持金物37を当該位置で固定する。
【0029】
このようにすると、前記フレーム30,30には上下二個所で予め鉄塔セグメント1Aの側面を構成する横部材1d,1d(図12参照)に対して上側では横部材1dの上面に近い位置で、また下側では横部材1dの下面に近い位置で、それぞれ把持金物37の把持部片37bが縦部材1aを把持する状態となるので、吊下げている鉄塔セグメント1Aを降ろすと、図12で示されるように、鉄塔セグメント1Aの中間の横部材1d二本分の上側と下側で挟むようにして鉄塔保持手段36,36’により支持される。この状態で鉄塔セグメント1Aの重量は下側に位置する鉄塔保持手段36’にて受支され、上側に位置する鉄塔保持手段36の把持金物37にて前後方向への振れが受け止められる。したがって、鉄塔セグメント1Aは起立状態で上記のようにして両側で鉄塔保持手段36,36’によって左右両フレーム30,30間に転倒することなく支持される。
【0030】
その後に、頂部連台10の駆動機15を駆動して鉄塔頂部まで上昇させ、鉄塔保持手段36,36’によって支持される鉄塔セグメント1Aの下端が既設の鉄塔1の頂面よりもやや上になる位置で上昇を停止させる。なお、この頂部連台10には作業者が搭乗して昇降運転操作される。また、この頂部連台10が鉄塔1の最上部まで上昇して、万一過上昇するようなことがあっても、頂部連台10を構成するフレーム11には抜け止め防止リミットスイッチ(図示省略)が付設されているので、鉄塔頂端からフレーム11が抜け出すことなく安全が確保される。
【0031】
次に、頂部連台10上で移動台21をガイドレール13,13に沿わせて前進させることにより、鉄塔保持手段36,36’によって支持している鉄塔セグメント1Aを既設の鉄塔1上方に移動させることができる。したがって、保持されている鉄塔セグメント1Aを既設鉄塔1との接続位置合わせが行われると、この鉄塔セグメント1Aが既設鉄塔1の頂面に積み重ねられるまでその頂部連台10を下降させる。
【0032】
このようにして、頂部連台10が所要位置に達したならば、この頂部連台10に予め設けられている連台支持片(昇降時には後退させて鉄塔と接触しないようになっている)を鉄塔1前面に突出して、鉄塔1前面に配設されている横部材上に受支させて頂部連台10を前記連台支持片によって鉄塔構成横部材に自重を支持され、鉄塔ガイドレールに係合しているガイドローラによって前後方向の振れを保持されて、安定状態に固定される。したがって、この頂部連台10は鉄塔継足し作業中に落下するようなことはなく安全性が確保される。
【0033】
鉄塔セグメント1Aが既設鉄塔1上に積み重ねられた時点では、その鉄塔セグメント1Aを支持していた下側の鉄塔保持手段36’における把持金物37に懸かる負荷が除かれた状態になるので、既設鉄塔1と積み重ねた鉄塔セグメント1Aとのボルト締結による接続が終った後、各鉄塔保持手段36,36’のロックピン38を外して把持金物37を後端の把手37fを持って後退させれば、簡単に鉄塔1の縦部材1aから引き離すことができる。把持金物37を退避位置まで後退させると、その退避位置でロックピン38によってその把持金物37を固定しておく。こうすると、鉄塔1と鉄塔保持手段36,36’の関わりが解除されるので、移動台21を後退させることができる。したがって、鉄塔セグメント1Aの継足しが終れば、連台支持片を後退させて頂部連台10を次の鉄塔セグメント1Aを積み込む位置まで下降させ、以後前記要領を繰り返して鉄塔の継足し作業を行うことができる。
【0034】
以上は鉄塔1の継足し作業について説明したが、鉄塔1を解体する場合には、まず搬器2を地上階に降ろして撤去し、次いで頂部連台10の駆動部に電源を接続して(通常運転時は頂部連台10の駆動部への動力源は接続されない)連台支持片を後退させ、これら連台支持片による鉄塔1への保持を解く。その後にその頂部連台10を一旦下降させるなどしてカウンターウエイト吊下げワイヤーロープ8を取り外す。
【0035】
次に、頂部連台10の駆動機15を作動させて鉄塔頂部まで上昇させ、頂部の鉄塔セグメント1本分が取り外せる位置で頂部連台10を停止させ、移動台21を鉄塔保持位置(鉄塔セグメント支持装置20の左右両フレーム30,30間に鉄塔が介在する状態)まで前進させる。その後に、その移動台21上の両フレーム30,30に付設された各鉄塔保持手段36,36’におけるアーム34の保持孔34aに挿入装着されている把持金物37を、ロックピン38による固定を解いて前方に押し出し、その把持金物37の把持部片37bを鉄塔1の縦部材1aに外側から押し当てる。この状態は前述の鉄塔組立操作で述べて鉄塔セグメント1Aを運び上げる際の保持操作と同様になる。したがって、詳細な説明は省略する。
【0036】
鉄塔1の取外し分(鉄塔セグメント1本分)の左右両側でそれぞれ把持金物37を所定の位置に当接させてその把持金物37を固定したならば、鉄塔1の接続ボルトを取り外し、その後に頂部連台10を少し上昇させて既設鉄塔1から取り外す鉄塔セグメント1Aを持ち上げる。次いで、移動台21を後退させれば、各鉄塔保持手段36,36’によって鉄塔セグメント1Aが持ち上げられたまま、鉄塔1の設置位置上からその手前側に移動して既設鉄塔1上から離されるので、駆動機15を駆動してそのまま頂部連台10を地上部まで降下させ、地上部において運び降ろした鉄塔セグメント1Aをトラッククレーンなどで吊って、鉄塔保持手段36,36’による保持を解き(把持金物37を後退させて係合を解く)鉄塔セグメント支持装置20上からその鉄塔セグメント1Aを撤去する。以後、この操作を繰り返し、鉄塔を順次解体して撤去することができる。
【0037】
このようにして鉄塔の解体作業を行うに際し、地上部で例えばクレーンやホイストなどの扛重機を使用して鉄塔セグメント1Aを撤去するのが困難な場合、フォークリフトのような扛重運搬機が用いられる。このような場合、本実施例の鉄塔セグメント支持装置20は、鉄塔セグメント1Aを保持しているフレーム30,30を起立位置からほぼ90度倒伏させることができるので、保持している鉄塔セグメント1Aを反転させて横倒しにして受台40などに預けることができるので、受台40に預けられた状態からフォークリフトのフォークで受け取り、そのまま外部に運び出すことができる。
【0038】
次に、その鉄塔セグメント支持装置20における鉄塔セグメントの反転の要領を説明する。
【0039】
解体された鉄塔セグメント1Aは、図12に示される状態で、地上部に降ろされた頂部連台10上の鉄塔セグメント支持装置20にて起立姿勢で支持されているので、まず移動台21に付設される2組のフレーム駆動装置25を駆動してフレーム30,30を外向きに回転させる。そのフレーム30,30は、移動台21上の支持台23に取付く軸受26’にて支持される回転軸26を基準にして、フレーム駆動装置25による駆動で、歯車列によって徐々に外向き(鉄塔と反対の方向)に回動され、それら一対のフレーム30,30に取付く各鉄塔保持手段36,36’で支持された鉄塔セグメント1Aが、保持状態を保たれたまま倒伏される。
【0040】
この鉄塔セグメント1Aの倒伏操作に際してその鉄塔セグメント1Aは、フレーム30,30に取付く鉄塔保持手段36(36’)の把持金物37によって、起立時における鉄塔セグメント1Aの上側横部材1dの上部位置と下側横部材1dの下部位置とで縦部材1aを保持されている、言い換えれば2本の横部材1d,1dを上下で挟むようにして縦部材1aを保持されているので、フレーム駆動装置25による回動によって鉄塔セグメント1Aが起立位置から次第に倒伏状態に移動しても保持状態が変動することなく、そのままの姿勢を保たれて横倒し状態にされる。
【0041】
したがって、地上部では、予め解体された鉄塔セグメント1Aの受取り用の受台40を用意しておき、前述のようにして頂部連台10上の鉄塔セグメント支持装置20にて鉄塔セグメント1Aを受台40上に仮預けさせる(図14参照)。その後、鉄塔セグメント支持装置20の鉄塔保持手段36(36’)における把持金物37をそれぞれロックピン38を外して後退させ、退避位置で再びロックピン38を挿入させて把持金物37を固定させることにより、鉄塔セグメント1Aは鉄塔セグメント支持装置20から離されることになる。したがって、鉄塔セグメント支持装置20をもとの状態に復帰させて次の解体操作に移行させる。なお、鉄塔セグメント支持装置20のフレーム30の起伏操作は、左右一対のフレーム30,30が同調して変位できることはもちろん、その両限界で付属するリミットスイッチ29,29’の働きにより起立位置および倒伏位置で自動的にフレーム駆動装置25の作動を停止させ、限界以上に回動しないようにされる。
【0042】
また、前記フレーム30による鉄塔セグメント1Aの受台40上への荷降ろし操作が終ってから、そのフレーム30,30を起立状態に復帰させる際、鉄塔セグメント1Aの側面部には、カウンターウエイト用のガイドレール1c,1cが突出して設けられているので、前記フレーム30がフレーム駆動装置25によって起立方向に回動されるとき側方に突出す鉄塔保持手段36(36’)の把持金物37が前記ガイドレール1cに接触することになる。
【0043】
そこで、鉄塔保持手段36(36’)の把持金物37は、図13で示されるように、フレーム30に突片32,32にて支持されている各アーム34を、その基部における固定ピン33aを取り外し、枢支ピン33を支点にしてストッパー35位置まで回動変位させる。この状態にすれば、前記ガイドレール1cと各鉄塔保持手段36,36’の各把持金物37の先端との間に移動可能な間隙tが形成されるので、フレーム30の起立動作が無理なく行えることになる。なお、フレーム30の起立後に、前記鉄塔保持手段36,36’はすべて元の状態に復帰させてそれぞれ固定ピン33aを装着して固定し、次の操作が確実に行えるようにする。
【0044】
以後、頂部連台10を鉄塔頂部に上昇させて前記要領で順次鉄塔セグメント1Aを解体して地上部に運び出すことができる。なお、この鉄塔セグメント支持装置10は、通常のエレベータの運転時には撤去しても、あるいは搭載した状態であっても何ら支障はない。
【0045】
本実施例におけるフレーム駆動装置25は、本発明の駆動装置に対応する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る鉄塔組立・解体装置が用いられる工事用エレベータの一具体例を表す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】図2は、本発明に係る鉄塔組立・解体装置を備える頂部連台の正面図である。
【図3】図3は、図2の側面図である。
【図4】図4は、図2の平面図である。
【図5】図5は、鉄塔セグメント支持装置の正面図である。
【図6】図6は、図5の側面図である。
【図7】図7は、図5の平面図である。
【図8】図8は、鉄塔保持手段の平面図である。
【図9】図9は、鉄塔保持手段が保持する鉄塔セグメントの側部に対応した状態を表す図である。
【図10】図10は、鉄塔保持手段によって鉄塔セグメントの側部を把持させた状態を表す図である。
【図11】図11は、鉄塔セグメントが鉄塔セグメント支持装置によって支持された態様を表す正面図である。
【図12】図12は、鉄塔セグメント支持装置によって鉄塔セグメントが支持された状態の側面図である。
【図13】図13は、鉄塔保持手段を外側へ傾動させる態様を示す図である。
【図14】図14は、鉄塔セグメント支持装置にて支持された鉄塔セグメントを倒伏させた状態の要部側面図である。
【符号の説明】
1 鉄塔
1A 鉄塔セグメント
1a ガイドレール(縦部材)
1c カウンターウエイト用ガイドレール
2 搬器
7 カウンターウエイト
8 カウンターウエイト用ワイヤーロープ
10 頂部連台
11 頂部連台のフレーム
12 作業ステージ(踊場)
13 ガイドレール
20 鉄塔セグメント支持装置
21 移動台
22,22’ ガイドローラ
23 支持台
23a ブラケット
25 フレーム駆動装置
26 回転軸
26’ 軸受
27 ウオーム減速機
27a 駆動モータ
27b 出力歯車
28 歯車
30 フレーム
31 フレームの取付ブラケット
32 アーム取付用の突片
33 アームの枢支ピン
33a 固定ピン
34 アーム
34a 保持孔
35 ストッパー
36,36’ 鉄塔保持手段
37 把持金物
37b 把持部片
38 ロックピン
40 受台

Claims (3)

  1. ラック・ピニオン駆動式の工事用エレベータにおける自走機能を備えた頂部連台に搭載され、鉄塔のセグメントを両側で支持して鉄塔前側位置から鉄塔設置位置までの間を進退可能にされる鉄塔セグメント支持装置を備える工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置において、
    前記鉄塔セグメント支持装置は、進退自在な移動台と、この移動台の両側に立設される一対のフレームと、このフレームをその基部で前記移動台上に軸支持させて起立位置から傾倒位置までの範囲で回動させるフレーム駆動装置と、前記フレームに上下所定の間隔で進退可能にそれぞれ設けられる鉄塔保持手段とを備え、
    前記鉄塔保持手段は、前記フレームに付設されるアームと、このアームに支持されて鉄塔側面に向けて進退自在で左右対向配置される把持金物とを備え、該把持金物が、鉄塔の縦部材を外側の三方から抱持する把持部片を先端に有して、鉄塔把持位置と退避位置とで前記アームに対して固定可能に構成されていることを特徴とする工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置。
  2. 前記把持部片は、前記鉄塔セグメントの側面部を構成する上下2段の横部材における一方の上側位置と他方の下側位置でそれぞれ鉄塔の縦部材を把持する位置関係を保ってスライド可能に構成される請求項に記載の工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置。
  3. 前記アームは、その基部が前記フレームに所要角度外側へ回動可能に枢着され、そのアーム枢着部では着脱可能な固定ピンによって通常時所定方向に保持される請求項1または2に記載の工事用エレベータの鉄塔組立・解体装置。
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