JP4279213B2 - インホイールモータシステム - Google Patents
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Description
図16及び図17は、従来のインホイールモータシステムの一例を示す図で、図16の例では、インホイールモータ33のステータ33Sは固定部であるアップライト37に連結・支持されて、ダイレクトドライブホイール32のホイールディスク32bの内側に配置され、上記ホイールディスク32bに連結された回転軸34とは軸受け34Jにより結合されている。また、上記ステータ33Sの外周側に配置されたロータ33Rは、上記回転軸34と結合された第1のブラケット35aと、上記アップライト37と軸受け37Jを介して回転可能に固定された第2のブラケット35bとにより支持されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、図17の例では、ホイール41に固定されたハウジング42の内側に、磁気手段(永久磁石)40Mを有するロータ40Rを搭載し、上記磁気手段40Mの内側に、コイル40Cを有するステータ40Sを配置し、このステータ40Sをナックル43に連結された中空状のシャフト44に固定的に取付けるとともに、上記ハウジング42の内側及び外側の側壁42a,42bを、軸受け44a,44bを介して上記ステータ40Sと結合することにより、インホイールモータ40のロータ40Rを、上記ステータ40Sに対して回転可能に結合するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
この問題に対して、駆動用モータを粘弾性要素を介してバネ下部に支持することで、上記モータをダイナミックダンパとして作用させ、インホイールモータ搭載車輌の接地性能と乗り心地性能とを改良する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。図18はその一例を示す図で、インホイールモータ3のステータ3Sを支持するステータ側ケース3aを、直動ガイド51を介して互いに車輌の上下方向に作動方向が限定され、かつ、車輌の上下方向に作動するバネ52及びダンパ53により結合された2枚のプレート54,55を備えた緩衝機構50を介して、車輌の足回り部品であるナックル5に対して弾性支持するとともに、ロータ3Rを支持するロータ側ケース3bとホイール2とを、モータのロータ側ケース3bに取付けられた中空円盤状のプレート21と、このプレート21とホイール2間を結合する、表裏で作動方向が直交する複数個の直交ガイド22とを備えたフレキシブルカップリング20により結合する。これにより、上記モータ3の質量は、車輌のバネ下質量相当分から切り離され、いわゆるダイナミックダンパのウエイトとして作用するので、接地性能や乗り心地性能を向上させることができる。
しかしながら、モータ3に車輪を駆動させながら、上記モータ3を上下方向及び前後方向に対してダイナミックダンパとして作用させるには、モータ3の固定部分は回転せず、かつ、上下方向及び前後方向にのみ作動するように上記モータ3を弾性支持しなければならない。
このような要求を実現する方法としては、モータを1方向のみ作動するような直動案内機構と粘性及び弾性を持つ部品を組合わせたモータサスペンション装置を2組直交させて組合わせる構成が考えられる。具体的には、例えば、図19及び図20に示すように、モータ3のステータ側ケース3aを、中央に切り欠き部61hが形成されたモータ取付部材61Aの外周部に取付け、このモータ取付部材61Aと前後方向に長軸を有する中間支持部材61Bとを、車輌上下方向に案内するスライドガイド62Gに装着されたバネ部材から成るダンパ62及び車輌上下方向に案内する第1の直動ガイド63Aを介して結合するとともに、上記中間支持部材61Bと固定部であるナックル5に取付けられるナックル取付部材61Cとを、弾性体64と車輌前後方向に案内する第2の直動ガイド63Bとにより結合する構成の緩衝機構60により支持する構成とすることにより、インホイールモータ3を車輌上下方向に直動ガイド及び弾性体を介して支持するとともに、上記上下方向支持部品を車輌足回り部品に対して、直動ガイド及び弾性体を介して、車輌前後方向に支持することができる。
これにより、インホイールモータ3を車輌の足回り部品であるバネ下部分に対してフローティングマウントすることができ、タイヤの接地果樹変動を低減することができるとともに、モータ軸と車輪軸とは別々に車輌前後方向にも揺動可能となるので、タイヤ前後力変動も減少させることができ、前後方向のタイヤ発生力についても安定化させることができる。
また、上記粘弾性要素を構成する質量の大きなダンパシリンダをモータ側に固定して、バネ下質量から切り離すようにすれば、バネ下質量を低減しつつダンパマスを増やすことができるので、接地性能や乗り心地性能を更に向上させることができる。
図1は、本実施の形態1に係るインホイールモータシステムの構成を示す図で、同図において、1はタイヤ、2はリム2aとホイールディスク2bとから成るホイール、3は半径方向に対して内側に設けられたステータ側ケース3aに固定されたモータステータ(以下、ステータという)3Sと、半径方向に対して外側に設けられ、ベアリング3jを介して上記ステータ側ケース3aに対して回転可能に接合されたロータ側ケース3bに固定されたモータロータ(以下、ロータという)3Rとを備えたアウターロータ型のインホイールモータ、4はホイール2とその回転軸において連結されたハブ部、5は上下のサスペンションアーム6a,6bに連結された、車輌の足回り部品であるナックル、7はショックアブゾーバ等から成るサスペンション部材、8は上記ハブ部4に装着されたブレーキディスクから成る制動装置である。
また、10は車輌上下方向及び前後方向に配向した直交ガイド11と、上記モータ3を車輌上下方向及び車輌前後方向に支持する2つのモータ支持サスペンション14,15とを備え、上記インホイールモータ3のステータ側ケース3aを上記ナックル5に弾性支持するための緩衝機構、20は複数の直交ガイド22を備え、上記モータ3のロータ側ケース3bとホイール2とを結合するフレキシブルカップリングである。
本例では、上記直動ガイド16の上記第1の上下部連結部材16mとは反対側のガイド部材16aを、上記ナックル側取付プレート13に取付けられた第2の上下部連結部材16nに固定するようにしているので、モータ側取付プレート12とナックル側取付プレート13とが上記上下支持用粘弾性要素14A及び上下用のバネ要素14Bとにより連結されるとともに、上記上下支持用粘弾性要素14A及び上下用のバネ要素14B(上下用サスペンション14)とバネ下部であるナックル5に連結されるナックル側取付プレート13との接続部分には、作動方向が車輌前後方向になるように配置された直動ガイド16が介在する構成となっている。
また、上記モータ3はナックル5に対して上下方向及び前後方向に振動するが、上下用サスペンション14は上下方向にしか移動できないため、前後方向の入力があった場合には、上記上下用サスペンション14には不要な力が作用し動作が不安定になってしまう恐れがあるが、本発明のように、上記上下用サスペンション14とナックル側取付プレート13との間に、作動方向が車輌前後方向になるように配置された直動ガイド16を介在させるようにすれば、上記前後方向の入力は上記直動ガイド16で吸収されて上記上下用サスペンション14には上下方向の振動だけが入力されるので、動作が安定する。
また、前後用サスペンション15とナックル側取付プレート13との間にも、作動方向が車輌上下方向になるように配置された直動ガイド17を介在させているので、上記前後用サスペンション15には前後方向の振動だけが入力されるので、動作が安定する。
逆に、上記モータ3がナックル5に対して下方に移動する時には、ピストン14bが引き上げられて減衰力を発生させるとともに、上記バネ要素14Bのバネロッド14pが引き上げられるので、第2のバネ部材14rが圧縮され反発力を発生させる。
これにより、上記モータ3がナックル5に対して上下方向に変位した場合には、上記上下用サスペンション14は、減衰力ととともにバネの反発力を発生させるので、上記変位を有効に減衰させることができる。
また、上記モータ3がナックル5に対して前後方向に変位した場合には、上記前後用サスペンション15は、上記上下用サスペンション14と同様に、前後支持用粘弾性要素15Aによる前後方向に減衰力ととともに、前後用のバネ要素15Bによる反発力を発生させるので、上記変位を有効に減衰させることができる。
また、少ない部品点数でモータ3を車輌上下方向及び前後方向に弾性支持することができるとともに、構造が簡素化されるので、組立作業が容易となる。
更に、上記粘弾性要素14A,15Aを構成する質量の大きなダンパシリンダ14a,15aをモータ側取付プレート12に固定して、バネ下質量から切り離すようにしたので、バネ下質量を低減しつつダンパマスを増やせるので、接地性能や乗り心地性能を更に向上させることができる。
タイヤの接地荷重変動とは、車輌が悪路を走行する際のタイヤの接地状態を表わす指標であり、接地荷重変動が小さいほどタイヤはより大きな力が出せる。また、前後力変動はタイヤのトランクションを表わす指標であり、これが小さいほど安定したトランクションが得られる。
なお、上記図4の表において、
m1 は車輌上下方向のバネ下質量
m1’は車輌前後方向のバネ下質量
m2 は車輌上下方向のバネ上質量
m2’は車輌前後方向のバネ上質量
m3 は車輌上下方向のダイナミックダンパ質量
m3’は車輌前後方向のダイナミックダンパ質量
k1 はタイヤ縦バネ定数
k1’はタイヤ前後バネ定数
k2 はサスペンション上下方向バネ定数
k2’はサスペンション前後方向バネ定数
k3 は車輌上下方向のモータ支持バネ定数
k3’は車輌前後方向のモータ支持バネ定数
c1 はタイヤ上下方向減衰係数
c1’はタイヤ前後方向減衰係数
c2 はサスペンション上下方向減衰係数
c2’はサスペンション前後方向減衰係数
c3 はモータ支持ダンパ上下方向減衰係数
c3’はモータ支持ダンパ前後方向減衰係数である。
表の比較例1は、図5(a),(b)の振動モデルで表わせる、モータをボディに搭載したタイプの一般的な電気自動車の条件である。なお、(a)図は車輌上下方向の振動モデルであり、(b)図は車輌前後方向の振動モデルである。また、以下の図6,図7についても同様である。
また、比較例2は、図6(a),(b)の振動モデルで表わせる、従来のモータバネ下固定型のインホイールモータ搭載車輌の条件である。
比較例3は、図7(a)及び図6(b)の振動モデルで表わせる、上下方向のみ作動するダイナミックダンパ型インホイールモータ搭載車輌の条件である。
比較例4は、図7(a),(b)の振動モデルで表わせる、上下方向及び前後方向に作動するダイナミックダンパ型インホイールモータ搭載車輌の条件である。
また、表の実施例1,2は、図7(a),(b)の振動モデルで表わせる、本発明の上下方向及び前後方向に作動するダイナミックダンパ型インホイールモータ搭載車輌の条件である。
これを、比較例3のように、モータを上下方向にダイナミックダンパとして搭載すれば、バネ下からモータ質量がなくなるために、車輌上下方向のバネ下質量を比較例1と同等まで軽くすることができる上に、ダイナミックダンパの吸振作用でバネ下振動が抑制され、その結果、図8,図9に示すように、タイヤの接地荷重変動や上下方向のバネ上振動を大幅に低減することができる。しかし、上記のダイナミックダンパは車輌上下方向にしか作動せず、車輌前後方向においてはバネ下質量は重いままなので、図10,図11に示すように、前後力変動や前後方向のバネ上振動は悪化したままである。
これを、比較例4のように、モータを上下方向に加えて前後方向にもダイナミックダンパとして作動するように搭載すれば、車輌上下方向及び前後方向のバネ下質量を比較例1と同等まで軽くすることができるので、図8〜図11に示すように、接地荷重変動や前後力変動、及び、上下・前後方向のバネ上振動を大幅に低減することができる。
これを、本発明の実施例1のように、リニアガイド付きの上下及び前後モータサスペンションで支持する構成とすれば、比較例4に比べて車輌上下方向のバネ下質量を軽くすることができるので、図12及び図13に示すように、接地荷重変動や上下方向のバネ上振動を更に低減することができる。
また、実施例2のように、モータサスペンションを構成するダンパシリンダ質量をダイナミックダンパ側に固定することで、比較例4に比べて車輌上下・前後方向のバネ下質量を軽くでき、かつ、車輌上下・前後方向のダンパマスを増やすことができるので、図12〜図15に示すように、比較例4に比べて、接地荷重変動や前後力変動、及び、上下・前後方向のバネ上振動を低減することができる。
3 インホイールモータ、3R モータロータ、3S モータステータ、
3a ステータ側ケース、3b ロータ側ケース、3j ベアリング、4 ハブ部、
5 ナックル、6a,6b サスペンションアーム、7 サスペンション部材、
8 制動装置、10 緩衝機構、11 直交ガイド、11a,11b 直動ガイド、
12 モータ側取付プレート、13 ナックル側取付プレート、
14 上下方向用モータ支持サスペンション、14A 上下支持用粘弾性要素、
14a,15a ダンパシリンダ、14b,15b ピストン、
14c,15c ダンパロッド、14B 上下用のバネ要素、
14p,15p バネロッド、14q,15q 第1のバネ部材、
14r,15r 第2のバネ部材、15 前後方向用モータ支持サスペンション、
15A 前後支持用粘弾性要素、15B 前後用のバネ要素、16,17 直動ガイド、16m 第1の上下部連結部材、16n 第2の上下部連結部材、
17m 第1の前後部連結部材、17n 第2の前後部連結部材、
18 上下サスペンション取付部材、19 前後サスペンション取付部材、
20 フレキシブルカップリング、21 中空円盤状のプレート、22 直交ガイド。
Claims (1)
- 車輪部に電気モータを備え、上記モータによりホイールを駆動するインホイールモータシステムであって、
上記モータのステータを支持するステータ側ケースを、車輌の足回り部品であるナックルに対して、弾性支持する緩衝機構を備えており、
上記緩衝機構は、上記ステータ側ケースに取付けられるモータ側取付プレートと、
上記ナックルに取付けられるナックル側取付プレートと、
ダンパシリンダとピストンと一端が上記ピストンに連結されたダンパロットとを備えた上下用粘弾性要素と上下用バネ要素とを有し、上記モータ側取付プレートと上記ナックル側取付プレートとを結合する、車輌上下方向に作動する上下方向用モータ支持サスペンションと、
ダンパシリンダとピストンと一端が上記ピストンに連結されたダンパロットとを備えた前後用粘弾性要素と前後用バネ要素とを有し、上記モータ側取付プレートと上記ナックル側取付プレートとを結合する、車輌前後方向に作動する前後方向用モータ支持サスペンションと、
車輌上下方向に配向した直動ガイドと車輌前後方向に配向した直動ガイドとから成り、上記モータ側取付プレートと上記ナックル側取付プレートとを結合する直交ガイドと、
上記ナックル側取付プレートと上記上下方向用モータ支持サスペンションとを連結する車輌前後方向に配向した第1のサスペンション用直動ガイドと、
上記ナックル側取付プレートと上記前後方向用モータ支持サスペンションとを連結する車輌上下方向に配向した第2のサスペンション用直動ガイドとを備え、
上記上下用粘弾性要素のダンパシリンダは上記モータ側取付プレートに取付けられ、ダンパロットの他端は上記第1のサスペンション用直動ガイドに連結され、
上記上下用バネ要素の一端は上記上下用粘弾性要素のダンパシリンダに取付けられ、他端は上記第1のサスペンション用直動ガイドに連結され、
上記前後用粘弾性要素のダンパシリンダは上記モータ側取付プレートに取付けられ、ダンパロットの他端は上記第2のサスペンション用直動ガイドに連結され、
上記前後用バネ要素の一端は上記前後用粘弾性要素のダンパシリンダに取付けられ、他端は上記第2のサスペンション用直動ガイドに連結されていることを特徴とするインホイールモータシステム。
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