JP4279087B2 - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents

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Description

本発明はアルミニウム電解コンデンサに使用される電解コンデンサ用電解液に関するものである。
アルミニウム電解コンデンサは、酸化皮膜が形成されたアルミニウム陽極箔とアルミニウム陰極箔とをセパレータを介在させて巻回したコンデンサ素子に電解液を含浸し、このコンデンサ素子をアルミニウム製金属ケース内に封口体とともに組み込んだ構造を有する。
このような電解コンデンサにおいて、使用電圧が400Vクラスの電解コンデンサ用電解液としては、エチレングリコールを溶媒とし、1,6−デカンジカルボン酸またはその塩を溶質として用いるもの(特許文献1参照)や同様にエチレングリコールを溶媒とし、1,9−ノナンジカルボン酸またはその塩を溶質として用いるもの(特許文献2参照)が公知である。
しかしながら、1,6−デカンジカルボン酸を含む電解液を電解コンデンサに使用した場合、コンデンサ素子を形成するアルミニウム箔と同酸が反応し、錯体を形成するため、製品(電解コンデンサ)の初期の静電容量が低く、また、製品の高温負荷試験においても静電容量の極端な減少が見られ、好ましくないものである。
また、1,9−ノナンジカルボン酸を含む電解液にあっては、火花電圧が低く、使用電圧が400Vの電解コンデンサを製品化することが困難なものとなっている。
上述した両電解液の欠点を補う電解液として、エチレングリコールを溶媒とし、1,10−デカンジカルボン酸またはその塩を溶質とした電解液(特許文献3参照)がある。この電解液は火花電圧が高いので、400V用の電解コンデンサに使用するには最適であるが、電解液の電導度が低いので、製品の低インピーダンス化が難しいという欠点を有している。
特許文献4には3級の二塩基酸を用いて、また、特許文献5では主鎖にメチル置換基を有する二塩基酸およびその塩や、主鎖のメチル置換基と共に分子内に3個のカルボン酸基を有する酸およびその塩を用いて、高温中においても特性を安定できるという長寿命化が述べられているが、この場合は電導度が高くできないという問題があった。
特公昭60−13293号公報 特公平4−74852号公報 特公昭58−13019号公報 特開平06−84705号公報 特開平2−277208号公報
本発明の課題は、高い火花電圧や長期安定性を維持しつつ、比電導度が高い電解コンデンサ用電解液を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、電解コンデンサ用電解液として、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含んだ電解液を用いることにより、電解液の火花電圧の著しい低下を招くことなく、電導度を向上させうることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含んでなることを特徴とする電解コンデンサ用電解液、
[2] 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含み、更に脂肪族二塩基酸またはその塩を含んでなることを特徴とする[1]記載の電解コンデンサ用電解液、
[3] 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩が、アクリロニトリルの電解還元反応により得られる1,3,6−トリシアノヘキサンを加水分解して製造されたものであることを特徴とする[1]または[2]記載の電解コンデンサ用電解液、
[4] 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩が、その10質量%水溶液の明度指数L値が98以上、クロマネティクス指数のa値が−2.0〜2.0、b値が−2.0〜3.0であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液、
である。
本発明は、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含んだ電解液を用いることにより、電解液の火花電圧の著しい低下を招くことなく、電導度を向上させることができることを見出したことに基づくものであり、更には1,10−デカンジカルボン酸またはその塩を溶質とした電解液において、同電解液に1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を添加することにより、高い電導度を維持したまま、電解液の火花電圧の低下を抑制できること、また、色相が改善された1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を用いることで長寿命化できることを見出したことに基づくものである。
本発明によると、高い火花電圧や長期安定性を維持しつつ、比電導度が高い電解コンデンサ用電解液を提供することができる。
本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、製造方法に限定はないが、アクリロニトリルの電解還元反応により得られるものが好ましい。
アクリロニトリルを電解還元反応させると、主生成物であるアジポニトリルの他に、各種のニトリル化合物が生成する。この反応溶液中には、未反応のアクリロニトリルも含まれる。また、プロピオニトリル、α−メチルグルタロニトリル、ヒドロキプロピオニトリル、サクシノニトリル、アクリロニトリルの3量体、さらにはアクリロニトリルが4量体以上となった高分子量体等の副生物も含まれる。ところで、アクリロニトリルの電解還元反応において、1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分とするアクリロニトリルの3量体や、4量体以上の高分子量体が副生し、得られることは、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)、30(5)1351(1965)に記載されている。
一般に、アクリロニトリルの電解還元反応で生成するアクリロニトリルの3量体であるトリニトリル化合物中の主成分は、1,3,6−トリシアノヘキサンであり、その他の異性体として3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン等が少量含有される。
各種のニトリル化合物からなる混合物から、例えば、減圧蒸留等により、アクリロニトリルやアジポニトリル等のトリニトリル成分に対して低沸点成分と、必要に応じて、アクリロニトリルの4量体以上の高分子量体を除去した後の、アクリロニトリルの3量体であるトリニトリル化合物を主成分とした混合物を、本発明においてはトリニトリル混合物という。いうまでもなく、この低沸点成分を除去したトリニトリル混合物中には、高沸点成分と共に、上記の操作で除去されなかった低沸点成分が残留していてもよいし、また、低沸点成分と共に4量体以上の高分子量体を除去したトリニトリル混合物中に、除去操作で除き切れなかった低沸点成分、高沸点成分が残留していてもよい。
上記トリニトリル混合物に含まれる、1,3,6−トリシアノヘキサンの含有率は着色の点から80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。1,3,6−トリシアノヘキサンの含有率が80質量%以上であれば、1,3,6−トリシアノヘキサンから誘導される化合物の純度が充分であり、着色も満足するものとなる。
以下、アクリロニトリルの電解還元反応について説明する。
アクリロニトリルの電解還元反応は、アクリロニトリルを原料とし、1対の陰極と陽極とが陽イオン交換膜で仕切られた陰極室と陽極室とからなる、いわゆる隔膜電解槽を用いて得られる他、イオン交換膜のない単一電解槽を用いても得ることができる。これらの電解法は、例えば、特公昭45−24128号公報、特開昭59−59888号公報、特開昭59−185788号公報等に開示されている。
例えば、隔膜電解槽を用いた電解は次のようにして行われる。陰極は、一般に水素過電圧の高いものが使用可能であり、例えば、鉛、カドミウム及びこれらを主成分とする合金が好適に用いられる。陽極は、鉛、鉛合金、白金等、耐食性の高いものがよく、鉛又は鉛合金が好ましく用いられている。
隔膜としては、一般に陽イオン交換膜が用いられ、陽極液として硫酸水溶液が用いられる。陰極液は、その反応中はアクリロニトリル、アジポニトリル、トリニトリル化合物、その他の副生物、水および電導性支持塩からなり、油相と水相に分離したエマルジョンになるか、アクリロニトリルが過剰になることによって均一溶液になっているか、いずれかの状態である。
電導性支持塩としては、一般式[NR]で示される第4級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
(式中、R、R、Rは炭素数1〜5のアルキル基、Rは炭素数1〜16のアルキル基、Xは硫酸、炭酸、アルキル硫酸、リン酸等のアニオン、又は有機酸、有機多価酸の残基である。)
陰極液のpHは、通常5〜12の範囲にある。
電解還元反応時における電槽内の陽極液や陰極液等の電解液の温度は、通常、40〜60℃の範囲であり、電流密度は、陰極表面1dmあたり、通常、5〜50アンペアの範囲である。陰極と陽極の距離は、隔膜を介して、通常、1〜20mmであり、陰極液、陽極液をそれぞれ、通常、0.1〜10.0m/秒の線速度で通過させる。
隔膜であるイオン交換膜のない単一電解槽を用いて、アクリロニトリルの電解還元反応を行う場合は、陰極として、鉛、カドミウム、水銀又はこれらを1種以上含有する合金が好ましく用いられ、陽極として、鉄、ニッケル、又はこれらの合金が用いられる。アクリロニトリルの電解還元反応の電解液は、アルカリ金属塩、上記第4級アンモニウム塩及び水を主成分とし、反応中は、該電解液にアクリロニトリル、アジポニトリル、トリニトリル化合物、その他副生物がエマルジョン又は均一溶解しした状態で存在する。アルカリ金属塩のカチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられ、アニオンは、リン酸、硼酸、炭酸、硫酸等の無機塩又は多価酸の残基が使用される。
反応終了後の電解液から、好ましくは1,3,6−トリシアノヘキサンが80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上となるトリニトリル混合物を得る方法には制限はなく、一般的な抽出法、蒸留法又はその組み合わせにより得ることができる。
すなわち、電解還元反応終了後の電解液が油水のエマルジョンになっている場合、未反応のアクリロニトリル及び副生物のプロピオニトリル等の低沸点成分を蒸留除去後、エマルジョン破壊を行い、油水の2層に分離する。水層には無機物や4級アンモニウム塩が分配し、油層には若干の水、低沸分、アジポニトリル、トリニトリル化合物、及びその他の高沸点成分が分配する。
一方、電解還元反応終了後の電解液が均一溶液となっている場合には、例えば、水及び塩化メチレン等の非水系有機溶媒を添加し、水層に無機塩や4級アンモニウム塩を抽出し、油層にアジポニトリル、トリニトリル化合物及びその他高沸点成分を抽出する。
それぞれの場合とも、アジポニトリル等の、トリニトリル成分に対して低沸点成分を、例えば、一般的な蒸留法等により除去することによって、トリニトリル化合物を含む高沸点成分残渣が得られる。本発明において、該電解液中に含まれるトリニトリル成分に対して低沸点成分を除去する操作は、このような操作により低沸点成分を除去することであり、前述のように、トリニトリル化合物を含む高沸点成分残渣中には、低沸点成分の除去操作によっても除去されなかったアジポニトリル等の低沸点成分をはじめ、アクリロニトリルの4量体以上の高沸物が含まれる。
本発明において、高沸点成分残渣の組成が、1,3,6−トリシアノヘキサンが80質量%未満の場合には、例えば、アジポニトリル等の低沸点成分や、必要に応じて、高沸点成分を除去する目的で、さらなる蒸留を1回以上行い、結果的に1,3,6−トリシアノヘキサンの含有率が80質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上のトリニトリル混合物とすることである。また、さらなる蒸留法としては、例えば、特開昭62−270550号公報に記載されているような分子蒸留法や薄膜蒸留法も好適に利用できる。また、本発明においては、好ましくは1,3,6−トリシアノヘキサンが80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上のトリニトリル混合物を得る目的で、必要に応じて、上記高沸点成分残差に対し、選択的にトリニトリル化合物を溶解するような溶媒を用いて抽出し、後工程で該溶媒を除去することにより、トリニトリル混合物を得てもよい。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩の原料として用いられるトリニトリル混合物は、以上説明した方法により得られるトリニトリル混合物において、1,3,6−トリシアノヘキサンの含有率が80質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、更にアジポニトリルの含有率が10質量%以下であることが好ましい。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は、上記のトリニトリル混合物を、アルカリまたは酸と、水やアルコールの存在下で加水分解して得られるものであることが好ましい。
次に、本発明の加水分解に関して説明する。
加水分解に用いられるアルカリは、水溶液においてアルカリ性を示す化合物であり、例えば、アルカリ金属系化合物、アルカリ土類金属系化合物、窒素系化合物等が挙げられる。
アルカリ金属系化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ルビジウム、重炭酸セシウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、カリウムブトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムブトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、リチウムブトキシド、リチウムエトキシド、リチウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
アルカリ土類金属系化合物としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸ラジウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ベリリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ルビジウムなどのアルカリ土類金属炭酸水素塩、重炭酸べりリム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸ストロンチウム、重炭酸バリウム、重炭酸ラジウムなどのアルカリ土類金属重炭酸塩等が挙げられる。
窒素系化合物としては、アンモニアや各種アミン系化合物等が挙げられる。
これらアルカリは単独で用いてもよく、また2種以上で用いてもよい。
加水分解に用いられる酸は、水溶液で酸性を示す化合物であり、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や各種カルボン酸やスルホン酸系の有機酸が挙げられる。
加水分解でアルカリを水溶液として使用するときのアルカリ水溶液の濃度は、本発明においては、特に制限はないが、通常、1〜50質量%の範囲である。例えばアルカリとして水酸化ナトリウムを用いて、大気圧下で加水分解を行う場合は、2〜40質量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜30質量%の範囲である。
1,3,6−トリシアノヘキサンとアルカリとの当量比は、ニトリル基に対して、塩基として理論的には1.00当量以上であるが、十分な反応速度を得る目的で、通常、1.01〜3当量、好ましくは1.05〜2当量の範囲である。3当量を超える場合には、過剰のアルカリ量が多く反応系に残留し、アルカリを除去するために副生物として塩が多量に生成する。
酸を用いて加水分解する場合、その濃度は酸の種類によって異なるが、通常、1〜98質量%範囲である。例えば、塩酸の場合2〜37質量%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜37%の範囲である。塩酸の場合、37質量%を越えると工業的に入手が困難となる。硫酸の場合は2〜85質量%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
1,3,6−トリシアノヘキサンと酸との当量比は、ニトリル基に対して、塩基として1.01〜5当量の範囲が好ましく、より好ましくは1.05〜3当量の範囲である。当量比が1.01未満では反応速度が遅くなり過ぎ、反応時間が長くなる。5当量を超える場合には用いた過剰の酸が反応系に多く残留し、酸を除去するために副生物として塩が多量に生成する。
反応温度は、アルカリ、酸いずれの場合も、通常、50〜250℃、好ましくは80〜140℃の範囲である。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く、250℃を越えると分解等の副反応を併発する傾向にある。反応時間は、通常、1〜200時間の範囲である。反応時の圧力には制限は無く、加圧下、大気圧下、さらには減圧下でおこなってもよい。
反応時の雰囲気は、副反応を併発しないものであれば制限はなく、例えば、窒素等の不活性気体の存在下や空気下でもよい。例えば、大気圧下で上記加水分解を行う場合には、反応容器には、蒸発する水を系内に戻すための冷却装置を有するものや、液相を窒素ガス又は空気などのガスによりバブリングし溶存しているアンモニアを系外に追い出す装置を有していてもよい。加圧条件下で行う場合は、副生するアンモニアを系外に逃がすことができる装置を具備した装置であることが望ましい。
本発明においては、加水分解は、1段の反応で行ってもよく、例えば、アルカリによる加水分解後、反応系内に中間体としてアミド化合物が存在する場合には、引き続き他のアルカリや酸を用いて加水分解を行ってもよい。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、色相を改善したものを用いることが好ましい。色相を改善したものを用いることによって、安定した性能を示すようになり、長寿命化が達成される。すなわち、本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩0.400gを4.0mlの蒸留水で溶解し水溶液として、25℃において測定された明度指数L値は98以上、クロマティクネス指数のa値は−2.0〜2.0、b値は−2.0〜3.0であることが好ましい。
本発明で用いられる、L値、a値及びb値は、JIS規格Z8722の方法にしたがって求められる。すなわち、分光測定器により標準の光Cを用いて、380〜780nmの波長範囲で透過法により測定されたXYZ系における三刺激値X、Y、Z値に基づき、JIS規格Z8730で規定された下式に示すハンターの色差式により計算され。L値は、ハンターの色差式における明度指数、a値及びb値は、ハンターの色差式におけるクロマティクネス指数と呼ばれるものである。
L=10Y0.5
a=17.5(1.02X−Y)/Y0.5
b=7.0(Y−0.847Z)/Y0.5
(式中、X、Y、及びZはXYZ系における三刺激値である)
一般に、明度指数L値は、100が上限であり、その数値が増加するにしたがい被測定物質の色相の白色度が増すことを意味し、その数値が低下するにしたがい黒色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるa値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相の緑色度が増すことを意味し、プラスになる場合は赤色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるb値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相の青色度が増すことを意味し、プラスになる場合は黄色度が増すことを意味する。L値が100に近いほど、a値やb値が0にほど低色相になる。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、明度指数L値が98以上であることが好ましく、より好ましくは99以上、特に好ましくは99.5以上である。a値は、−2.0〜2.0であることが好ましく、より好ましくは−1.0〜1.0、特に好ましくは−0.5〜0.5の範囲である。b値は、−2.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは−1.0〜1.0、特に好ましくは−0.5〜0.5の範囲である。色相を改善したものを用いることによって、安定した性能を示すようになり、長寿命化が達成される。
該低色相の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩と溶媒からなる溶液を固体吸着剤で処理することにより製造される。
固体吸着剤とは、25℃及び処理を行う温度において流動性がなく、固体の形状を保つ物質であり、かつ、正吸着を起こさせる界面を有する物質をいう。具体的には、アルミニウム、鉄、チタン、ケイ素、錫等の酸化物や水酸化物、活性炭、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土、ゼオライト類、ハイドロタルサイト類、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。上記アルミニウム、鉄、チタン、ケイ素、錫等の酸化物や水酸化物としては、例えば、活性アルミナ、シリカゲル、酸化チタン等が挙げられる。本発明においては、活性炭、活性アルミナ及びイオン交換樹脂が、脱色の効率が高い傾向にあり好ましい。
これら固体吸着剤は、1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して同時に、又は別々に用いてもよい。また、これら固体吸着剤の形状、粒径等には限定されない。
固体吸着剤の使用量は、本発明の低色相の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩が得られる範囲であれば限定はないが、通常、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩100質量部に対し、固体吸着剤を0.01〜500質量部、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.1〜50質量部の範囲である。0.01質量部未満では十分な脱色効果が得られず、500質量部を越えると十分な脱色効果が得られるものの、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩の収率が低下する傾向にある。
加水分解後の溶液を固体吸着剤で処理する際の、溶液のpHは、きわめて重要である。アルカリ加水分解後の溶液は、通常、13を越えており、酸加水分解後のpHは3未満である。この状態のまま、固体吸着剤で処理を行っても、色相が改善された1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は得られず、脱色効率が低下する傾向にある。
pHを調整する方法には制限はなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物等を添加する方法や、各種イオン交換樹脂と接触させる方法等により実施することができる。
固体吸着剤による処理時間は、本発明の色相の良い1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩が得られる範囲であれば限定されない。吸着させる方法は、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含む溶液に固体吸着剤を添加し攪拌したり、固体吸着剤をカラム等に充填させ該溶液を通液する等、限定されるものではない。
固体吸着剤による処理時の濃度にも限定はないが、通常、0.02〜2.0mol/L、好ましくは0.1〜1.5mol/Lの範囲である。0.02mol/L未満では処理量が多くなって溶液から回収が難しく、収率が低下する。2.0mol/Lを超える範囲では1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩からなる混合物が析出し固体吸着剤による着色物の吸着が不十分となる。
固体吸着剤による処理時の温度は、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩からなる混合物が凝固したり、さらには分解しない温度範囲であれば限定はない。例えば、固体吸着剤として活性炭を用い、溶媒に水を用いた場合は、温度範囲は通常5〜100℃の範囲である。
以上説明した固体吸着剤を用いた処理を行った後の、用いた固体吸着剤を分離除去する方法は任意であって制限はなく、濾過法等の公知の一般的方法を実施することができる。
このようにして得られた色相の良い、高純度の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、必要量の塩基を添加してカルボン酸塩に変換して電解質として用いても良いし、次に述べるように塩の状態を酸に変換して電解質として使用しても良い。さらに得られた酸に塩基を添加して、塩にした後、電解質として使用しても良い。
上記方法により回収された1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩からなる溶液は、pHが3〜13であるため、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の塩が存在し、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有率が低くなる傾向にある。そのため硫酸、塩酸、硝酸などの無機塩や有機カルボン酸化合物を添加したり、陽イオン交換樹脂を用いることにより、好ましくはpH3未満、より好ましくはpH1以下とすることにより、カルボン酸塩をカルボン酸化することで目的とする1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の含有率を高めることが可能である。
カルボン酸化する方法として、陽イオン交換樹脂を用いる場合には、回分式、流通式等の方法が好適に使用できるが、これらに限定されるものではない。陽イオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学(株)製のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の芳香環にスルホン酸基を導入した樹脂であるものを酸で再生して利用することができる。三菱化学(株)製のダイヤイオン(商標)SK102、SK104、SK106、SK1B、SK110、SK112、SK116、SK1BNなどの強酸性陽イオン交換樹脂が代表的なものである。同様に、ロームアンドハース(株)製のアンバーリスト(商標)15WET、16WET、31WET、35WETなどのスルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂を利用することも可能であり、これら陽イオン交換樹脂の種類については限定されるものではない。
無機酸によりカルボン酸化した場合は、副生する無機塩を1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の水溶液から分離する目的で溶媒により抽出することも可能である。抽出溶媒としては、例えば、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどを利用することができる。同様の効果が得られる他の溶媒を用いて行ってもよい。また、カルボン酸化した処理液を加熱減圧下において蒸留を行い完全に乾固させ、残渣を溶媒により1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を抽出することも可能である。この場合、用いる溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、などを1種以上用いることが可能である。
抽出方法は攪拌、ソックスレーなど、限定されるものではない。
抽出液を無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤により乾燥後ろ過によりろ液を回収し溶媒を蒸留し完全に乾固させることで多価カルボン酸混合物を回収することができる。
陽イオン交換樹脂によりカルボン酸化した場合は、イオン交換処理後の処理液を蒸留し、適当な濃度に濃縮した後、冷却、又は濃縮により析出させる方法で回収してもよい。また、イオン交換処理液を完全に乾固させることにより多価カルボン酸混合物を回収することもできる。
以上説明した製造方法により得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩をさらに色相を改善するために、水、有機溶媒、又はこれらの混合物からなる溶媒に溶解し、冷却したり、濃縮させることにより結晶を析出させる晶析法を用いて精製を行うことも可能である。
晶析に用いる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類などを単独又は1種以上用いることが可能である。
晶析を行う場合、沸点以下の温度で上記方法により得た多価カルボン酸混合物又はその塩を均一に溶解し、冷却又は濃縮することにより結晶を析出させる方法、溶解性の高い溶媒、例えば、アセトンなどに溶解し、溶解性の低い溶媒、例えばtert−ブチルメチルエーテルなどに該アセトン溶液を導入しそのままの温度、あるいは冷却、濃縮により結晶を析出させる方法を用いることも可能である。
上記の方法などにより生じた結晶は、ろ過により回収することが可能である。ろ過方法は限定されるものではなく、加圧ろ過、減圧濾過、遠心分離、圧搾などの方法を利用することが望ましい。
晶析操作を行うことにより、色相を改善させることが可能である。例えば、水で晶析させることにより晶析前にクロマネティクス指数b値が0.25であったものが、晶析後に0.1以下低減させることができる。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、色相を改善したものを用いることが好ましい。色相を改善したものを用いることによって、安定した性能を示すようになり、長寿命化が達成される。すなわち、本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩0.400gを4.0mlの蒸留水で溶解し水溶液として、25℃において測定された明度指数L値は98以上、クロマティクネス指数のa値は−2.0〜2.0、b値は−2.0〜3.0であることが好ましい。
本発明で用いられる、L値、a値及びb値は、JIS規格Z8722の方法にしたがって求められる。すなわち、分光測定器により標準の光Cを用いて、380〜780nmの波長範囲で透過法により測定されたXYZ系における三刺激値X、Y、Z値に基づき、JIS規格Z8730で規定された下式に示すハンターの色差式により計算され。L値は、ハンターの色差式における明度指数、a値及びb値は、ハンターの色差式におけるクロマティクネス指数と呼ばれるものである。
L=10Y0.5
a=17.5(1.02X−Y)/Y0.5
b=7.0(Y−0.847Z)/Y0.5
(式中、X、Y、及びZはXYZ系における三刺激値である)
一般に、明度指数L値は、100が上限であり、その数値が増加するにしたがい被測定物質の色相の白色度が増すことを意味し、その数値が低下するにしたがい黒色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるa値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相の緑色度が増すことを意味し、プラスになる場合は赤色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるb値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相の青色度が増すことを意味し、プラスになる場合は黄色度が増すことを意味する。L値が100に近いほど、a値やb値が0にほど低色相になる。
本発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、明度指数L値が98以上であることが好ましく、より好ましくは99以上、特に好ましくは99.5以上である。a値は、−2.0〜2.0であることが好ましく、より好ましくは−1.0〜1.0、特に好ましくは−0.5〜0.5の範囲である。b値は、−2.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは−1.0〜1.0、特に好ましくは−0.5〜0.5の範囲である。色相を改善したものを用いることによって、安定した性能を示すようになり、長寿命化が達成される。
次に本発明の電解コンデンサ用電解液の組成について説明する。
本発明に係る電解コンデンサ用電解液の組成中、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩の添加量は1〜30質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%、最も好ましくは3〜10質量%である。1質量%以上であれば十分な電導度が得られ、また、30質量%以下であれば、火花電圧の低下が発生することがなく好ましい。
塩としてはアンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。
これらの塩の中で、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムが好ましく、アンモニウム塩、メチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムがより好ましい。
カルボン酸の塩の調製は、特に限定されるものではないが、カルボン酸に対して当量よりやや過剰のアンモニア水、アミン、あるいは、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドにて中和後、減圧乾燥することにより水分を除去して調製するのが好ましい。
本発明では、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩に、脂肪族ニ塩基酸またはその塩を混合して使用することも、火花電圧を高め、また、比電導度の低下率を抑制する点から好ましい。脂肪族二塩基酸と混合して使用する場合、脂肪族二塩基酸またはその塩の量は3〜10質量%が好ましい。より好ましくは4〜9重量%、特に好ましくは4〜8重量%である。
脂肪族二塩基酸としては、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸等を例示することができる。これらの二塩基酸は分子内にアルキル置換基を1個または複数有していることも好ましい。特に好ましいものは1,10−デカンジカルボン酸である。該脂肪族二塩基酸の塩としては、上述の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の塩の場合と同じ塩が用いられ、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。
これらの塩の中で、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムが好ましく、アンモニウム塩、メチルアミン、トリメチルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムがより好ましい。
本発明に係る電解液において、主溶媒はエチレングリコールが好ましい。該主溶媒のエチレングリコールに対して、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルカルビトール、エチレンカルビトール、ブチルカルビトール、メチルジグライム、エチルジグライム、ブチルジグライムまたはポリエチレングリコールなどを加え、混合溶媒とすることもできる。
本発明に係る電解液においては、電解液の化成性を向上するために5質量%以下の量の水を添加してもよい。それ以上の量の水を添加するとコンデンサ素子のアルミニウム箔などを腐食してしまうので好ましくない。
本発明に係る電解液においては、その他の多価アルコール類を添加することも好ましい。その他の多価アルコール類の量は5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると電導度を低下させてしまう。その他の多価アルコール類は火花電圧の向上のため、硼酸と組み合わせて使用するのが好ましい。該多価アルコール類としてはマンニット、ソルビット、キシリットおよびエリトットなどを例示することができる。
本発明の電解液には、漏れ電流の低減や水素ガス吸収等の目的で種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、リン酸誘導体、ホウ酸誘導体およびニトロ化合物を挙げることができる。
発明の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩は、高電導性、高火花電圧と優れるが、色相が向上したものは、さらに長寿命化できる。
1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含んだ電解液を用いることにより、電解液の火花電圧の著しい低下を招くことなく、電導度を向上することができる。さらに、上述したエチレングリコールを主溶媒とし、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩に、脂肪族ニ塩基酸またはその塩を混合して使用することにより、高い電導度を維持したまま、電解液の火花電圧の低下を抑制できる。さらに、色相が改善された1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を用いることで長寿命化できる。
本発明を実施例及び比較例により説明する。
まず、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸およびその塩の調製を行った。
[製造例1]
低色相1,3,6−ヘキサントリカルボン酸およびその塩の調製
単一電解槽として、1cm×90cmの通電面を有する鉛合金を陰極とし、同じ通電面を有する炭素鋼を陽極として用い、陽極と陰極を2mmの間隔で保った。電解液は10質量部の油相及び90質量部の水相でエマルジョンをなしており、水相の組成は、アクリロニトリル約2.0質量%、KHPO約10質量%、K約3質量%、エチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸塩0.3質量%、若干のアジポニトリル、プロピオニトリル及び1,3,6−トリシアノヘキサンを含んだ水溶液であり、リン酸でpHを約8に調整した。油相は水相と溶解平衡をなしており、その組成はアクリロニトリル約28質量%、アジポニトリル約62質量%である。
このエマルジョンを、電解面で線速1m/secになるように単一電解槽に循環供給し、電流密度20A/dm、50℃で電解を行った。電解を始めると同時に、電解液タンクから油水分離器に送られたエマルジョンの水相を、約50℃に保温したイミノジ酢酸タイプのキレート樹脂(バイエル(株)製、Lewatit TP207(商標))K+型200CCで、6CC/AHの割合で処理を始め、電解液タンクに循環した。
同時に油相を連続的に抜き出し、前記電解液組成を保つようにアクリロニトリル及び水を連続的に添加し、油相に溶解して抜き出されたエチルトリブチルアンモニウムエチル硫酸を随時添加した。
このようにして2000時間電解を行った結果、初期電解電圧は3.9Vで安定に推移し、発生ガスに含まれる水素は電解終了時で0.16vol%であり、陰極の消耗速度は0.21mg/AH、陽極の消耗速度は0.23mg/AHであり、不均一の陽極腐食物はまったくなかった。消費アクリロニトリルに対するアジポニトリルの収率は90%、1,3,6−トリシアノヘキサンの収率は7.5%であった。
次に、上記電解で得られた油相を集め、水抽出処理を行い、アクリロニトリル、プロピオニトリル及び水を蒸留除去し、次いで、減圧蒸留によりアジポニトリルを除去した。この残差中のアジポニトリルは11.5質量%であった。
この残渣液からのアジポニトリルの除去は、径32mmφ、実段数5段の真空外套付蒸留塔を用いて、アジポニトリルを主成分として含む留分を回分式蒸留し、真空度2.0mmHgで塔頂温度120〜210℃までの留分を初留カットすることによって蒸留残渣を得た。
この蒸留残渣は、アジポニトリル4.0質量%、1,3,6−トリシアノヘキサン84.5質量%、3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン5.0質量%、及び高分子量体6.5質量%からなるトリニトリル化合物を主成分とするトリニトリル混合物であった。
この蒸留残渣からのトリニトリル混合物の単離を、スミス式実験室用分子蒸留装置(神鋼ファウドラー(株)製、2型、電熱面積0.032m、ガラス製)を用いて行った。真空度0.1mmHg、外壁面加熱温度180℃、蒸留残渣の供給速度2g/minで操作した。供給量2000g、蒸留物量1150g、蒸留残渣900gであった。蒸留液は、組成が1,3,6−トリシアノヘキサン93.3質量%、3−シアノメチル−1,5−ジシアノペンタン5.8質量%、及びアジポニトリル0.9質量%からなる黄色のトリニトリル混合物であった。
次に還流冷却器を取り付けた内容量1リットルの攪拌装置付四つ口フラスコに、上記で得たトリニトリル混合物161g(1.0モル)を、20%苛性ソーダ水溶液780g(3.9モル)とともに24時間加熱還流を行って加水分解した。室温まで冷却し、加水分解反応液を916g得た。
上記で得られた加水分解反応液916gを、氷で氷冷しながら液温が20℃を超えないように36%HClでpHを7とし、中和反応液1072gを得た。次いで、中和反応液に活性炭(白鷺A(商標)、武田薬品工業製)28.2gを加え、室温で1時間攪拌を行った。ろ過により活性炭を除去し、透明な脱色反応液1065gを得た。
このようにして得られた透明な脱色反応液をスチレン系陽イオン交換樹脂(アンバーリスト(商標)15WET、ロームアンドハース(株)製)を4000ml充填したカラムに通液し、さらに蒸留水でイオン交換されたものをカラムから排出させ、得られた溶液を1μmのTFEのフィルターでろ過後、ロータリーエバポレーターにて90℃で水を除去し、残渣を40℃で減圧下完全に乾燥させ無色の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を200.6g得た(収率92%)。得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸0.400gを蒸留水4.0mlで溶解し、色相測定したところ、Lは99.86、aは0.00、bは0.25であった。
また、カルボン酸の塩は、カルボン酸に対して当量よりやや過剰のアンモニア水にて中和後、減圧乾燥することにより水分を除去して使用した。
[製造例2]
従来の製法による1,3,6−ヘキサントリカルボン酸およびその塩の調製
還流冷却器を取り付けた1L四ッ口フラスコに、参考例1で調製したトリニトリル混合物20.0g(0.124モル)、20%水酸化ナトリウム水溶液130.0g(0.707モル)、テフロン(登録商標)コートされた回転子を入れてマグネティックスターラーを用いて撹拌しつつ加熱還流により5時間反応させた。混合物の冷却後、氷で冷却しながら、濃硫酸68.7g(0.70モル)を滴下した。この場合、反応混合物の温度は、20℃を超えないようにした。次いで、反応混合物を3回、それぞれtert−ブチルメチルエーテル50mlで抽出し、エーテル抽出物を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒の留去後、残渣をアセトン35ml及び、シクロヘキサン50mlの混合溶媒中に導入し、冷却し生じた析出物を濾過した。得られた析出物を真空乾燥し1,3,6−ヘキサントリカルボン酸混合物19.6g得た(収率72.7%)。得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸混合物0.400gを蒸留水4.0mlで溶解し、色相測定したところ、Lは96.70、aは1.76、bは4.07であった。
また、カルボン酸の塩は、カルボン酸に対して当量よりやや過剰のアンモニア水にて中和後、減圧乾燥することにより水分を除去して使用した。
次に、本発明に係る電解液の組成例を従来例とともに説明する。表1は各実施例、比較例の電解液の30℃における比電導度、火花電圧、および、150℃で10時間保持後の比電導度の低下率を示したものである。
比電導度は(株)堀場製作所製の電気伝導度計DS−15を使用して測定した。また、火花発生電圧は、(+、−)一組のアルミニウム平滑箔に、電解液を注入し、5mA/cmの一定電流となるように印加する条件で火花発生の電圧を測定することで求めた。比電導度の低下は、150℃で10時間保持前後での比電導度の変化率から求めた。
また、エチレングリコールは、和光純薬工業(株)製の特級試薬を用い、電解液は室温でエチレングリコールに所定量のカルボン酸アンモニウム塩を溶かして調製した。
[実施例1]
・製造例1の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸アンモニウム塩 10質量%
・エチレングリコール 90質量%
結果を表1に示す。
[実施例2]
・製造例1の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸アンモニウム塩 5質量%
・1,10−デカンジカルボン酸アンモニウム塩 5質量%
・エチレングリコール 90質量%
結果を表1に示す。
[実施例3]
・製造例2の1,3,6−ヘキサントリカルボン酸アンモニウム塩 10質量%
・エチレングリコール 90質量%
結果を表1に示す。
[比較例1]
・1,10−デカンジカルボン酸アンモニウム塩 10質量%
・エチレングリコール 90質量%
結果を表1に示す。
[比較例2]
・1,3−ジメチル−1,3,9−ノナントリカルボン酸アンモニウム塩 10質量%
・エチレングリコール 90質量%
結果を表1に示す。
[比較例3]
・α,α,α‘,α‘−テトラメチルアジピン酸アンモニウム塩 10質量%
・エチレングリコール 90質量%
結果を表1に示す。
Figure 0004279087
表1から明らかなように、本発明の実施例の電解液は、従来例の電解液と比較して、火花電圧や長期安定性を維持しつつ、比電導度を高めることができる。
本発明によると、火花電圧や長期安定性を維持しつつ、比電導度が高い電解コンデンサ用電解液を提供することができる。特に中高電圧用のアルミ電解コンデンサに好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含んでなることを特徴とする電解コンデンサ用電解液。
  2. 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩を含み、更に脂肪族二塩基酸またはその塩を含んでなることを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
  3. 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩が、アクリロニトリルの電解還元反応により得られる1,3,6−トリシアノヘキサンを加水分解して製造されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の電解コンデンサ用電解液。
  4. 1,3,6−ヘキサントリカルボン酸またはその塩が、その10質量%水溶液の明度指数L値が98以上、クロマネティクス指数のa値が−2.0〜2.0、b値が−2.0〜3.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解コンデンサ用電解液。
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