JP4279066B2 - 環状シロキサン化合物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な環状シロキサン化合物からなる無機粉体の表面処理剤及びその製造方法に関するものである。更に詳しくは、分子内にハロゲン化アルキル基を有するため、無機粉体の表面処理剤として、従来公知のアルキル基のみを有する環状シロキサン化合物とは異なる物性を示す環状シロキサン化合物からなる無機粉体の表面処理剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリカや酸化チタン等の無機粉体の表面処理剤として、シランカップリング剤がよく知られている。このようなシランカップリング剤としては様々な官能基を有するものが知られており、無機粉体の用途や目的に応じて使用されている。シランカップリング剤による無機粉体の表面処理方法には、大別して溶媒を用いる湿式法と、無溶剤で行う乾式法がある。シランカップリング剤が溶解した溶液中で無機粉体を処理する湿式法では、処理後の乾燥時に無機粉体の凝集が起こってしまったり、乾燥の際に多量のエネルギーを必要とするといった欠点があった。また、シランカップリング剤を無機粉体に噴霧処理する乾式法では多量の無機粉体を短時間で処理できるといった利点はあるが、均一に細孔内まで処理することが難しい、その被覆量が表面の水酸基数に依存する、シランカップリング剤同士により縮重合物が生成するといった問題があった。さらに、シランカップリング剤の有するシラノール基を処理時間内に完全に無機粉体表面と反応させることも難しく、経時的に粉体の物性が変化するという問題も指摘されている。
【0003】
そこで、表面処理剤として環状シロキサン化合物を用いることが提案されてきた(例えば、特許文献1)。環状シロキサン化合物は粉体の表面を均一に改質するだけでなく、シロキサン結合が開環することにより粉体の表面と化学結合を形成するので、処理が確実に行われる上、経時的な粉体特性の変化が少ないといった利点がある。表面処理剤として用いられる環状シロキサン化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのジメチルシロキサン化合物等が用いられている。しかしながら、これらはいずれも耐水性(疎水性)向上を目的として用いられており、炭化水素基しか有しておらず、したがって、粉体の表面処理後には、これら炭化水素基に由来する表面物性しか得られず、種々の官能基を有するシランカップリング剤を用いた場合のような官能基に応じた反応性を付与することはできない。
【0004】
このような反応性を有する官能基の一つとして、脂肪族炭化水素基に結合したハロゲン原子がある。このようなハロゲン原子を有する脂肪族炭化水素基は、第3級アミン化合物と反応させることにより、イオン交換性や抗菌性を発現する第4級アンモニウム塩へと容易に変換される。
【0005】
このような第4級アンモニウム基を有する表面処理無機粉体としては、反応性のSi−H基を有する環状シロキサン化合物で無機粉体を表面処理し、該粉体表面のSi−H基と、ビニル基及びクロロメチル基を有する化合物のビニル基とをヒドロシリル化反応によって反応させることによって得る方法が提案されている(例えば、特許文献2)。しかしこの方法では、環状シロキサン化合物による表面処理時にSi−H基同士が加水分解による架橋反応を起こしてしまうため、実質的に導入できる官能基の数が少なくなったり、導入できる官能基の種類が制限されるといった点で十分に満足できるものではない。また、粉体表面でヒドロシリル化反応を行うため、該粉体上にヒドロシリル化触媒が残存しやすいといった問題がある。
【0006】
他方、環状シロキサンは鎖状ポリシロキサンの合成原料としても用いられている。これらは他のシロキサン化合物と反応させることにより、該環状シロキサンに由来する特定の官能基を有するブロックを持つ鎖状ポリシロキサンとするものである。このような特定の官能基としては、(メタ)アクリル基、アルコキシル基等(例えば、特許文献3)、3−クロロプロピル基(例えば、特許文献4)、ビニル基等(例えば、特許文献5)などがある。
【特許文献1】
特開平6−154513号公報
【特許文献2】
特開平10−267908号公報
【特許文献3】
特開2000−053683号公報
【特許文献4】
特開平10−279691号公報
【特許文献5】
特開平8−048779号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、環状シロキサン化合物は、シランカップリング剤よりも遥かに粉体表面処理特性に優れた材料であるが、第4級アンモニウム基を導入可能なハロゲン置換された飽和炭化水素基を有する化合物は、3−クロロプロピル基を有する化合物しか知られていない。
【0008】
そして、本発明者らの検討によれば、3−クロロプロピル基を有する環状シロキサン化合物は、合成が極めて困難であり、無機粉体の表面処理剤として採用するには問題がある。なお、該3−クロロプロピル基を有する環状シロキサン化合物の記載された前記特開平10−279691号公報には、該化合物の入手又は製造方法は記載されていない。一般に、環状シロキサン化合物は、ビスアルキル(或いはアリール)ジハロゲノシラン化合物の縮合反応により製造されるが、置換基として有するアルキル基によりその反応性は大きく変化し、様々な生成物の混合物となったり、ポリマー化してしまう。本発明者らは、炭素数がハロゲン原子の結合している有機基の炭素数が4以上の化合物の合成を該縮合反応で合成する方法を検討したが、目的物を得られなかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ってきた。その結果、Si−H基を有する環状シロキサンと、特定の構造のハロゲン置換された不飽和炭化水素化合物とは効率よく反応し、これによりハロゲン置換された飽和炭化水素基を有する環状シロキサンを容易に入手可能であることを見出した。そしてさらに検討を進めた結果、本発明を完成した。
【0010】
即ち本発明は、下記一般式(1)
【0011】
【化4】
Figure 0004279066
【0012】
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数4〜10の脂肪族飽和炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、かつ該XはSi原子との間に少なくとも3個の炭素原子が介在する位置に結合しており、nは3〜6の整数である)
で表される環状シロキサン化合物からなる無機粉体の表面処理剤である。また他の発明は、上記式(1)で示される化合物の、効率的な製造方法に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の環状シロキサンからなる無機粉体の表面処理剤は、前記一般式(1)で示される。(なお、以下では簡便のため、当該一般式(1)を、{−OSi(R)(R−X)−}nと表すこともある)。
【0014】
当該一般式(1)で表される環状シロキサン化合物は、無機粉体表面に均一に分散するため、粉体の細孔内まで処理することが可能であり、それにより官能基を粉体表面全体に均一に導入することができる。また、環状骨格に起因する環ひずみを持っているため、環開裂が生じやすく反応性が高くなっており粉体表面との化学結合を形成しやすい。したがって、該環状シロキサン化合物で表面処理した無機粉体を、化粧料をはじめとする溶剤にフィラーとして添加した場合、表面処理剤であるシロキサンが粉体の表面から剥がれることが無く、粉体の表面改質効果の低下や、むき出しになった粉体の活性点とその他成分との反応による製品の劣化、品質の低下などの恐れがない。
【0015】
さらに、R−Xとして、他の化合物、特に第3級アミン化合物と容易に反応する官能基を有しているため、該化合物で処理された無機粉体に、さらに必要に応じて他の官能基を導入することが容易である。
【0016】
上記式(1)において、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。当該炭化水素基としては炭素数1〜10であれば特に制限されるものではない。当該炭素数1〜10の炭化水素基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;フェニル基、トルイル基等のアリール基類が例示されるが、表面被覆の効率が良い点でアルキル基であることが好ましく、さらには商業的に大量に原料が入手できる点で、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0017】
上記式(1)において、Rは炭素数4〜10の脂肪族飽和炭化水素基である。炭素数が4未満であったり、不飽和炭化水素基であったりすると、後述する本発明の製造方法での合成が事実上不可能である。さらに、炭素数4未満であるとSi原子とハロゲン原子が近すぎて自由度が少なくなり、後述するハロゲン原子(X)をさらに他の官能基に変換する際の反応性が低下する。また、炭素数が10より多くなるとシロキサン環に対してRがかさ高くなることにより、無機粉体の表面処理時に表面に近づきにくくなり、表面処理効率が低下し、さらには、分子量の増加により粘度が上がって取扱い性が悪く、また揮発性がほとんどなくなるため、無溶剤で用いる表面処理剤としての効果が劣ったものとなる。
【0018】
上記式(1)において、Xはハロゲン原子であり、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらのなかでも、第3級アミン化合物と反応しやすい点で、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、さらには、ある程度の安定性を有する点で塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
【0019】
当該Xは、上記Rに結合し、R−Xで表されるハロゲン置換された脂肪族飽和炭化水素基を形成しているが、このXがRに結合している位置は、環を形成しているSi原子との間に少なくとも3個の炭素原子が介在する位置、即ち、Si原子とハロゲン原子が最も近い場合でも、Si−C−C−C−Xの部分構造を有していなくてはならない。この介在している原子数が2以下であると、やはり後述する本発明の製造方法での合成が事実上不可能となる。
【0020】
このようなR−Xで表されるハロゲン置換された脂肪族飽和炭化水素基を具体的に例示すると、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、8−クロロオクチル基、3−クロロ−1−メチルプロピル基、3−クロロ−2−メチルプロピル基、3−クロロ−2−エチルプロピル基、3−クロロ−2−ブチルプロピル基、3−クロロ−2−ヘキシルプロピル基、4−クロロ−1−メチルブチル基、4−クロロ−2−メチルブチル基、4−クロロ−3−メチルブチル基、4−クロロ−3−エチルブチル基、3−クロロブチル基、3−クロロペンチル基、4−クロロペンチル基、4−クロロ−1,2−ジメチルブチル基、4−クロロ−1,2−ジエチルブチル基、5−クロロ−1,2−ジメチルペンチル基、4−クロロ−2−エチル−1−メチルブチル基、4−クロロ−1−エチル−2−メチルブチル基等のXが塩素原子であるハロゲン置換脂肪族飽和炭化水素基類、及びこれらに対応するフッ素、臭素又はヨウ素置換体が例示される。
【0021】
これらのなかでも、原料の入手が容易で、また後述する製造方法による反応収率も良い点で、1位が無置換であるか、あるいはメチル基により置換されたものが好ましい。また、第3級アミン化合物との反応性が良い点で、ハロゲン原子が結合している炭素原子はメチレン原子(CH)であることが好ましい。
【0022】
前記一般式(1)において、nは3〜6である。nが3未満であると環歪みが大きくなりすぎて環状シロキサンの安定性が低下し、安定な化合物としがたい。他方、6を超えると環状シロキサンの分子量の増加により粘度が上がって取扱い性が悪くなったり、無機粉体表面に均一に分散しにくくなったりするだけでなく、環歪みが小さくなりすぎて無機粉体表面との反応性も低下する。より好ましくはnが3又は4の化合物である。
【0023】
上記一般式(1)で表される環状シロキサン化合物をより具体的に例示すると、例えばn=3であれば、{−SiO(CH)(CCl)−}、{−SiO(C)(CCl)−}、{−SiO(CH)(CHCH(CH)CHCl)−}、{−SiO(C)(CHCH(CH)CHCl)−}、{−SiO(CH)(CBr)−}、{−SiO(C)(CBr)−}、{−SiO(CH)(CHCH(CH)CHBr)−}、{−SiO(C)(CHCH(CH)CHBr)−}、{−SiO(CH)(CI)−}、{−SiO(C)(CI)−}、{−SiO(CH)(CHCH(CH)CHI)−}、{−SiO(C)(CHCH(CH)CHI)−}等が例示される。
【0024】
またn=4であれば、{−SiO(CH)(CCl)−}、{−SiO(C)(CCl)−}、{−SiO(CH)(CHCH(CH)CHCl)−}、{−SiO(C)(CHCH(CH)CHCl)−}、{−SiO(CH)(CBr)−}、{−SiO(C)(CBr)−}、{−SiO(CH)(CHCH(CH)CHBr)−}、{−SiO(C)(CHCH(CH)CHBr)−}、{−SiO(CH)(CI)−}、{−SiO(C)(CI)−}、{−SiO(CH)(CHCH(CH)CHI)−}、{−SiO(C)(CHCH(CH)CHI)−}等が例示される。
【0025】
これらのなかでも、工業的に原料が入手しやすいことから、(−SiO(CH)(CBr)−)、(−SiO(C)(CBr)−)、(−SiO(CH)(CHCH(CH)CHCl)−)、(−SiO(C)(CHCH(CH)CHCl)−)が特に好ましい。
【0026】
本発明の環状シロキサン化合物の構造は、NMRスペクトルにより同定できる。29Si−NMRによると、酸素原子が2つ結合した構造をもつSi原子[Si(Y)(OZ)](Yは炭化水素基を示し、Zは炭化水素基、又はSi置換基を示す)は−20〜−30ppm付近にピークを示し、酸素原子が3つ結合した構造をもつSi原子[Si(Y)(OZ)](Yは炭化水素基を示し、Zは炭化水素基、又はSi置換基を示す)は−50〜−60ppm付近にピークを示し、結合した酸素原子の数により化学シフトが大きく異なる。したがって、29Si−NMRにおける生成物のピークの化学シフトから、Si原子の結合環境を確認することができ、−20〜−30ppm付近にのみピークが存在していれば、ジアルキル基が存在し、環状構造が維持されているということがわかる。またH−NMRでは、R、Rのピークの積分比を比較することにより両アルキル基の存在、及びハロゲン原子の存在を確認することができる。また、IRスペクトルによっても、シロキサン結合の吸収とハロゲン原子−炭素原子の結合の吸収を確認することによって同定することができる。
【0027】
上述の環状シロキサン化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、反応収率がよく、工業的に入手可能な原料から極めて少ない反応ステップ数で合成できる点で、以下に示す方法で合成することが好ましい。
【0028】
即ち、下記一般式(2)
【0029】
【化5】
Figure 0004279066
【0030】
(式中、R及びnは前記一般式(1)と同義である)で表される環状シロキサン化合物と、下記一般式(3)
【0031】
【化6】
Figure 0004279066
【0032】
(式中、R、RおよびRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜7の脂肪族飽和炭化水素基であり、mは、Rが水素原子のときは2〜8の整数、Rが水素原子以外のときは1〜7の整数であり、mが2以上のときには、−C(R)(R)−で表される基は各々同一でも異なっていてもよく、かつ該分子の有する総炭素数は4〜10である)
で表されるハロゲン置換された不飽和炭化水素化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下に反応させる方法である。
【0033】
これら上記一般式(1)で表される環状シロキサン化合物及び一般式(3)で表されるハロゲン置換された不飽和炭化水素化合物は商業的に種々のものが入手可能である。
【0034】
上記一般式(2)で表される代表的な環状シロキサン化合物を例示すると、トリメチルシクロトリシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、トリエチルシクロトリシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタエチルシクロペンタシロキサン等があげられる。
【0035】
上記一般式(3)において、R、RおよびRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜7の脂肪族飽和炭化水素基である。当該脂肪族飽和炭化水素基としては、前記一般式(1)のRとしてあげた炭素数1〜10の炭化水素基のうちの、炭素数7以下のアルキル基と同様である。
【0036】
上記一般式(3)において、mは、Rが水素原子のときは2〜8の整数、Rが水素原子以外のときは1〜7の整数である。下記式に示すように、Rが水素原子の時には、Si−H基の水素原子は二重結合の双方のいずれにでも付加する。そのため、Rが水素原子でmが1のときに、1位の炭素原子に対して付加すると、ハロゲンの脱離反応が起き、ケイ素原子との結合を生じなくなってしまう。従って、Rが水素原子のときはmが2以上でなくては本発明の環状シロキサン化合物が得られない。他方、Rになんらかの置換基が結合している場合には、立体障害のため、2位の炭素原子側にしか付加しないため、ハロゲンの脱離反応は起きず、よってmは1でも良い。
【0037】
【化7】
Figure 0004279066
【0038】
また、mが2以上の場合には、−C(R)(R)−で示されるアルキル置換又は非置換のメチレン基は、各々同一でも異なっていても良い。
【0039】
本発明の製造方法においては、前記のような反応機構が推測され、二重結合の周辺に立体障害があると、反応性、収率が低下する傾向にある。従って、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましく、さらにRおよびRも水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0040】
上記一般式(3)で示される化合物を具体的に例示すると、4−フルオロ−1−ブテン、4−クロロ−1−ブテン、4−ブロモ−1−ブテン、4−ヨード−1−ブテンなどのハロゲン原子以外の置換基を有さない不飽和炭化水素;3−フルオロ−2−メチルプロペン、3−クロロ−2−メチルプロペン、3−ブロモ−2−メチルプロペン、3−ヨード−2−メチルプロペンなどのアルキル置換されたハロゲン置換不飽和炭化水素等が例示される。
【0041】
上記反応に用いられる触媒としては、一般にヒドロシリル化反応に使われる触媒を利用することができる。この触媒としては、Ni、Rh、Pd、Pt等の第VIII族遷移金属、又はその化合物、錯体を用いることができる。これらの触媒の使用にあたっては、例えば、塩化白金酸、白金−1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、ジシクロペンタジエニルプラチナムクロリド、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド、トリストリフェニルホスフィンロジウムクロリドなどの溶媒に溶解させる均一系触媒や、それら遷移金属をカーボン、シリカなどに担持させた不均一系触媒などを使用することができるが、Pt担持カーボンが比較的入手しやすく、反応後除去しやすいため好ましい。この場合、ヒドロシリル化反応に要するPt量は基質の種類、反応温度、反応時間等の要素に関連し、一律に決めることはできないが、触媒の経済性及び反応時間の観点からは、使用した2重結合化合物に対して0.001〜0.5mol%の範囲で使用するのが好ましい。
【0042】
また、反応において溶媒は必ずしも必要ではないが、必要に応じて適当な溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒としては、反応を阻害するものでなければよく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系の溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系の溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系の溶媒などがあげられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、複数の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
この反応の温度は特に限定されず、一般には20℃〜120℃の温度で行うことができるが、50℃〜110℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは、80℃〜100℃の範囲内である。また、処理時間についても限定されず、一般的には1〜80時間の範囲内で行うことができ、好ましくは2〜24時間の範囲内である。また、この反応は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0044】
このようにして得られた本発明の環状シロキサン化合物は、純度が高くそのままでも使用可能であるが、精製が必要な場合には、溶媒洗浄、減圧蒸留等により精製できる。
【0045】
本発明の環状シロキサン化合物からなる無機粉体の表面処理剤は、シランカップリング剤よりも均一に表面処理できる利点を持っているため、例えばシリカ等の無機粉体の表面改質剤として好適に利用できる。更には分子内に反応性のハロゲン化アルキル基を有しているため、求核置換反応を利用して各種の試薬と反応させ、用途に応じた官能化を行うことができる。例として、ハロゲン化アルキル基を第3級アミン化合物と反応させることによって第4級アンモニウム基とし、抗菌剤、防曇剤、帯電防止剤として有利に使用できる。また、シリカの表面に第4級アンモニウム基を導入したものはイオンクロマトグラフィー用のカラム充填材としても有用である
【0046】
【実施例】
本発明を更に詳細に説明するため、以下実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例1
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌子、及び窒素導入管を備えた500mlの3つ口フラスコを十分に窒素置換し、トルエン100ml、Pt/C(5wt%担持)0.9g、4−ブロモ−1−ブテン25gを加えた。この混合溶液にテトラメチルシクロテトラシロキサン11.1gを30分間かけて滴下した後に、100℃にて10時間攪拌した。Pt/Cをろ過によって分離し、得られたろ液をロータリーエバポレーターにより50℃/1mmHgで濃縮し、透明液体状の環状シロキサン化合物を収率92%で得た。
【0048】
得られた生成物のH−NMRの分析では次のようなスペクトルが観測された。
δ(ppm):0.12−0.24(12H、Si−CH)、0.56−0.62(8H、Si−CH−)、1.52−1.55(8H、Si−C−CH−)、1.88−1.90(8H、Si−C−C−CH−)、3.40−3.43(8H、CH−Br)
また、29Si−NMRの分析では次のようなスペクトルが観測された。
δ(ppm):−22(−O−Si(CH)(CBr)−O−)
また、赤外吸収スペクトル分析では、次のようなスペクトルが観測された。
1080cm−1(Si−O−Si)、803cm−1、1272cm−1、1410cm−1(Si−CH)、559cm−1(CH−Br)
以上のことより、得られたオイル状生成物は、下記構造式で表されるSi原子上にメチル基とブロモブチル基を有する環状シロキサンであると同定した。
【0049】
【化8】
Figure 0004279066
【0050】
実施例2
4−ブロモ−1−ブテンの代わりに3−クロロ−2−メチルプロペンを16.8g用いた他は実施例1と同様にして透明液体状の環状シロキサン化合物を収率85%で得た。H−NMRの分析では次のようなスペクトルが観測された。
δ(ppm):0.14−0.21(12H、Si−CH)、0.55(4H、Si−CH−:A)、0.82(4H、Si−CH−:B)(A、Bは隣接キラル炭素の影響で分離)、1.08−1.10(12H、Si−C−CH(C )−)、2.03(4H、Si−C−C(CH)−)、3.37−3.45(8H、CH−Cl)
また、29Si−NMRの分析では次のようなシフト値の2本のスペクトルが強度比1:1で観測された。隣接キラル炭素の影響で分離したものと考えられる。
δ(ppm):−18(−O−Si(CH)(CH(CH)CHCl)−O−)
δ(ppm):−20(−O−Si(CH)(CH(CH)CHCl)−O−)
また、赤外吸収スペクトル分析では、次のようなスペクトルが観測された。
1078cm−1(Si−O−Si)、798cm−1、1266cm−1(Si−CH)、745cm−1(CH−Cl)
以上のことより、得られたオイル状生成物は、下記構造式で表されるSi原子上にメチル基と3−クロロ−2−メチルプロピル基を有する環状シロキサンであると同定した。
【0051】
【化9】
Figure 0004279066
【0052】
実施例3
実施例1で製造した環状シロキサン6gをシリカ(比表面積200m/g)10gと混合し、250℃にて1時間オートクレーブ中で加熱処理し、表面処理シリカを得た。この粉末の疎水化度は、メタノール水溶液を5%刻みで準備し、その液に粉末0.5gを添加して沈降の有無を測定することで評価した。粉末が沈み始めたメタノール水溶液のメタノールパーセントをM値として疎水化の指標とした。この粉末のM値は52%であった。
【0053】
比較例1
4−ブロモ−1−ブテンの代わりにアリルクロライド(3−クロロプロペン)を16g用いた他は実施例1と同様にして反応を行ったが、目的物は全く得られず収率0%であった。
【0054】
比較例2
滴下漏斗、温度計、攪拌子を備えた300mlの2つ口フラスコに、水100mlを加えた後、かくはんしながら4−クロロブチルメチルジクロロシラン38.4gをトルエン32mlに溶解させた溶液を内温20℃で保ちつつ1時間かけて滴下した。滴下終了後、同じ温度でさらに10分間かくはんを続けた。分液漏斗にてトルエン可溶部を分離し、水層をトルエン50mlで2回抽出した。その後、トルエン可溶部と合わせて飽和食塩水による洗浄をpHが6〜7になるまで行い、そのトルエン溶液をロータリーエバポレーターにより50℃/1mmHgで濃縮したところ、溶液は徐々に高粘度化していき、ゲル化した。
【0055】
比較例3
市販のシランカップリング剤であるγ−クロロプロピルトリメトキシシラン4gをシリカ(比表面積200m/g)10gと混合し、200℃にて1時間オートクレーブ中で加熱処理し、表面処理シリカを得た。この粉末のM値は16%であった。このように疎水化が十分にされていないことから、環状シロキサン化合物を用いて処理したシリカと比べ、被覆の均一性が劣ることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の環状シロキサン化合物からなる表面処理剤均一な被覆が得られる利点を持つため、シリカ等の無機粉体の表面改質剤や、無機材料と有機材料の界面結合剤として有用である。さらには分子側鎖末端に反応性のハロゲン化アルキル基を有するため、表面処理後の粉体表面に、アンモニウム基等の各種の官能基を導入できる新規な改質剤になり得る。またハロゲン化アルキル基のままでも、カラム充填材用の表面処理剤として用いれば、非置換のアルキル基のものとは異なる特性の分離特性が得られる

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0004279066
    (式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数4〜10の脂肪族飽和炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、かつ該XはSi原子との間に少なくとも3個の炭素原子が介在する位置に結合しており、nは3〜6の整数である)
    で表される環状シロキサン化合物からなる無機粉体の表面処理剤
  2. 下記一般式(2)
    Figure 0004279066
    (式中、R及びnは一般式(1)と同義である)で表される環状シロキサン化合物と、下記一般式(3)
    Figure 0004279066
    (式中、R、RおよびRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜7の脂肪族飽和炭化水素基であり、mは、Rが水素原子のときは2〜8の整数、Rが水素原子以外のときは1〜7の整数であり、mが2以上のときには、−C(R)(R)−で表される基は各々同一でも異なっていてもよく、かつ該分子の有する総炭素数は4〜10である)
    で表されるハロゲン置換された不飽和炭化水素化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下に反応させる請求項1記載の環状シロキサン化合物からなる無機粉体の表面処理剤の製造方法。
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