JP4278039B2 - 非接触icカード、インレットシート及び非接触icカードの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSIを搭載し、外部機器とのデータ通信処理が可能なICカード、そのICカードに用いられるICモジュールに関し、特に、非接触状態でのデータ通信処理が可能な非接触ICカード、インレットシート及び非接触ICカードの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるカード技術の発達により、各種のシステムに用いられる情報記録媒体として、広範囲な用途に利用されているICカードがあり、特に、非接触型のICカードは、情報の書き込み処理、あるいは、読み出し処理を行う際に、専用の装置に挿入する必要がないため、カード自体の取り扱いが便利なこともあり、産業上に急速に普及しつつある。このような、非接触型のICカードは、通信処理を制御する制御部やメモリ等の機能を有するICチップと、電磁波の送受信のためのアンテナと、が実装されたインレットシートがカード本体となるカード基板に埋設されて構成されており、電磁波等を用いて外部装置とのデータ通信処理が行われることとなる。
【0003】
このため、非接触型のICカードは、折り曲げや、点衝撃などにより、ICチップが機械的に破壊されると、ICチップに記録されたデータ自体が失われることから、図10に示すように、ICチップ自体を封止する封止樹脂上に金属性の補強板を配備するICカードを構築することで、ICチップの破壊を防止し、ICチップの動作の信頼性を確保するようにしていた。以下に、図10に示すICカードの構成について説明する。
【0004】
図10は、従来の非接触型のICカードの断面構造を示しており、インレットシート1には、螺旋状のアンテナやコンデンサ等のアンテナパターン2が形成されている。なお、アンテナパターン2は、スクリーン印刷や、エッチング等により形成される。そして、このアンテナパターン2と接続するように、演算処理やデータの保存を行うICチップ3が実装されている。
【0005】
そして、このICチップ3を覆うように封止樹脂4が設けられている。なお、封止樹脂4は、汚れ、水分等からICチップ3を保護するために配置される樹脂であり、一般的には、エポキシ系やシリコン系の樹脂が用いられる。
【0006】
また、ICチップ3の上面には、ICチップ3よりも幅広い金属性の補強板5が設けられている。なお、補強板5は、ICチップ3を外力から保護するために封止樹脂4を介して接着された基板であり、一般的には、ステンレス等の金属性の素材が用いられる。
【0007】
中間シート7は、ICチップ3を実装したインレットシート1を封止する樹脂性のシートであり、例えば、非結晶性ポリエステル(PET−G)や塩化ビニル等の熱融着性の樹脂が適用される。カバーシート8は、カード基板の最外層となる樹脂シートであり、例えば、非結晶性ポリエステル(PET−G)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル等の樹脂が適用される。
【0008】
なお、図10に示す補強板5を設けた構成のICカードの一般的な製造方法は、以下のような手順で行われている。
まず、アンテナコイルやコンデンサ等のアンテナパターン2が形成されたインレットシート1を用意して、インレットシート1に形成したアンテナパターン2と導電性接着剤を介して接着するようにICチップ3を実装する。
【0009】
次に、インレットシート1に実装したICチップ3を封止するための封止樹脂4により、ICチップ3を封止すると共に、封止樹脂4の上面に封止樹脂4を介して金属性の補強板5を装着する。また、インレットシート1にICチップ3を実装した面とは反対の面に対して、ICチップ3が実装された位置に封止樹脂4を介して金属性の補強板5を装着する。
【0010】
そして、補強板5を装着したインレットシート1の上下方向から中間シート7と、カバーシート8と、の樹脂シートでインレットシート1を挟持して、加熱プレス機にて熱融着を行い、樹脂シート7、8を自己融着させつつインレットシート1と樹脂シート7、8とを一体化させる。
【0011】
そして、その一体化させたカード基板の表面に、サーマルヘッド方式を用いて印字処理を施すこととなる。
【0012】
また、本発明より先に出願された技術文献として、回路パターンの形成された基板上に、半導体積回路チップ(以下、ICチップ)を接着すると共に、そのICチップの電極を回路パターンに接続し、且つ、ICチップを補強するための第1の補強用金属板上に、封止用樹脂を所定量塗布し、ICチップが接着された上記基板を、所定量塗布した封止用樹脂を介して第1の補強用金属板上に載置する。また、ICチップの上に封止用樹脂を所定量塗布し、該塗布された封止用樹脂上に、ICチップを補強するための第2の補強金属板を配設する。そして、第1および第2の補強金属板を介して封止用樹脂を加圧して、封止用樹脂をICチップ周面に流れ込ませ、該流れ込ませた封止用樹脂を硬化させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−222549号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱プレスを行う上記のような一般的な製造方法を採用して図10に示すように金属性の補強板を設けた構成のICカードを形成した場合に、熱プレス後の冷却時に、金属性の補強板と接する樹脂シートの部分が、他の樹脂シートの部分よりも早く冷却されることとなり、最終的に形成されるICカードの表面部分に凹凸が生じてしまう虞がある。
【0015】
このため、カードの表面部分に凹凸が生じている場合は、カード表面部分に印字処理を施す際に、カード表面への印字抜けを生じさせてしまうこととなる。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ICチップを保護しつつ、且つ、カード表面の平滑化を図る非接触ICカード、インレットシート及び非接触ICカードの製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために本発明は以下のような特徴を有する。
【0018】
<非接触ICカード>
本発明にかかる非接触ICカードは、
絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、前記ICチップを封止する封止樹脂を介して、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該補強板の上面に、前記補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層が設けてなるインレットシートを、ICカードの本体基板となる樹脂シートにて挟持して構成し、前記樹脂層は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0019】
<インレットシート>
本発明にかかるインレットシートは、
絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、前記ICチップを封止する封止樹脂を介して、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該装着した補強板の上面に、前記補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層が設けてなり、前記絶縁性の基板上にICチップが実装されていない側の面に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該装着した補強板の下面に前記補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層が設けてなるインレットシートであり、前記インレットシートは、ICカードの本体基板となる樹脂シートに挟持されるものであり、前記樹脂層は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0020】
<非接触ICカードの製造方法>
本発明にかかる非接触ICカードの製造方法は、
絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、当該ICチップを封止するための封止樹脂を配置し、前記ICチップを前記封止樹脂で封止する封止工程と、
前記封止樹脂の上面に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板と、当該補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層と、を装着する装着工程と、
前記ICチップが実装された面とは反対側の前記基板上に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着し、インレットシートを形成するインレットシート形成工程と、
前記インレットシートの上下面を、ICカードの本体基板となる樹脂シートにて挟持し、熱プレス機にて熱融着を行い、前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を一体化させると共に、該一体化させた前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を冷却し、ICカードを形成するICカード形成工程と、
を有し、
前記装着工程は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されている樹脂層を前記金属性の補強板の上面に装着する工程を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる非接触ICカードの製造方法は、
絶縁性の基板上にICチップを実装することになる面とは反対側の前記基板上に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着する装着工程と、
ICチップを実装することになる前記基板上の面に、ICチップを実装する実装工程と、
前記ICチップの上面に、当該ICチップを封止するための封止樹脂を配置し、前記ICチップを前記封止樹脂で封止する封止工程と、
前記封止樹脂の上面に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板と、当該補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層と、を装着し、インレットシートを形成するインレットシート形成工程と、
前記インレットシートの上下面を、ICカードの本体基板となる樹脂シートにて挟持し、熱プレス機にて熱融着を行い、前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を一体化させると共に、該一体化させた前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を冷却し、ICカードを形成するICカード形成工程と、
を有し、
前記インレットシート形成工程は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されている樹脂層を前記金属性の補強板の上面に装着する工程を含むことを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
(発明の特徴)
まず、図1を参照しながら、本発明にかかる非接触ICカードの特徴について説明する。
本発明にかかる非接触ICカードは、ICチップ3を保護する金属性の補強板5をICチップ3の上方に封止樹脂4を介して設けつつ、該設けた金属性の補強板5から発する熱の伝導を和らげる樹脂層6を設けたことを特徴とする。これにより、樹脂層6が断熱材として機能し、熱プレス後の冷却時に、金属性の補強板5から発する熱の伝導を樹脂層6が和らげ、金属性の補強板5近辺の樹脂シート部分が他の樹脂シート部分よりも早く冷却されることを防止することが可能となり、樹脂シートが均一に冷却されることとなる。これにより、ICチップ5を保護しつつ、且つ、ICカードの表面を平滑にすることが可能となる。
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明にかかる実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
まず、図2を参照しながら本発明にかかる第1の実施の形態における非接触ICカードの構成について説明する。
本発明にかかる非接触ICカードは、インレットシート1上に、螺旋状のアンテナやコンデンサ等のアンテナパターン2が形成され、このアンテナパターン2と導電性接着剤を介して接続するように、ICチップ3がインレットシートに実装されている。なお、ICチップと、アンテナパターンとの接続は、特に限定せず、ワイヤーボンディン等公知の手法により接続することが可能である。そして、アンテナパターン2と接続されたICチップ3を覆うように封止樹脂4が設けられている。
【0028】
また、ICチップ3の上方には、ICチップ3よりも幅広い金属性の補強板5が封止樹脂4を介して設けられている。更に、補強板5の上面には、補強板5から発する熱の伝導を防止するための樹脂層6が設けられており、補強板5と樹脂層6とは接着剤にて接着されている。なお、この補強板5と樹脂層6とを予め接着し、ICチップ3の上面に封止樹脂4を介して設けることも可能である。
【0029】
また、ICチップ3が実装されたインレットシート1の面とは反対側の面に、封止樹脂4を介して金属性の補強板5が設けられている。なお、接着剤を介して金属性の補強板5を設けることも可能である。
【0030】
また、ICチップ3を実装したインレットシート1を封止するように、中間シート7と、カバーシート8と、がインレットシート1を挟持するように積層されている。
【0031】
次に、図2に示す非接触ICカードを構成する各々の構成部分について説明する。
【0032】
(インレットシート)
インレットシート1は、アンテナパターン2が形成される絶縁性のシートである。インレットシートに適用可能な樹脂としては、一般用ポリスチレン樹脂、耐衝撃用ポリスチレン樹脂、ポリエステル,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルローストリアセテート,セルロールジアセテート等のセルロース系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル酸エチル樹脂、ポリエチルメタクリレート樹脂、酢酸ビニル樹脂等、従来からインレットシートに使用される公知の樹脂が挙げられる。
【0033】
(アンテナパターン)
アンテナパターン2を形成する材質としては、銅、アルミニウム、金、銀、鉄、錫、ニッケル、亜鉛、チタン、タングステン、ハンダ、合金等が適用可能である。
なお、インレットシート1上にアンテナパターン2を形成する手法としては、エッチング法や、印刷法(スクリーン印刷法、オフセット印刷法)が用いられる。
【0034】
(封止樹脂)
ICチップを封止するための封止樹脂4としては、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂が適用可能である。また、封止樹脂としては、紫外線硬化型の樹脂も適用可能である。なお、熱硬化性の樹脂を用いる場合には、熱硬化反応により体積収縮が生じてICチップに応力が加わるのを抑えるために、フィラー、中空粒子、箔片を単体あるいは複合させたものを分散することが好ましい。
【0035】
(補強板)
ICチップを保護するための補強板5としては、金属性の材質を用いて構成されており、補強板に用いられる金属性の材質としては、ステンレス系、チタン系の金属が適用可能である。
【0036】
(樹脂層)
補強板の熱の伝導を和らげる樹脂層6としては、ラミネート処理を行う際の熱プレス時の温度(140度〜150度)に耐えられる耐熱性の高い樹脂により構成されており、樹脂層に用いられる耐熱性の高い樹脂としては、熱硬化性ポリイミド、芳香族ポリイミド等のポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、樹脂層は、熱プレス時の温度に耐えられる耐熱性の高い樹脂であり、且つ、補強板5から発する熱の伝導を防止する樹脂であれば特に限定せず、あらゆる樹脂が適用可能である。好ましくは、補強板5の熱の伝導を遮断する樹脂が好ましい。なお、樹脂層6と補強板5とは接着剤を介して接続されており、この接着剤として用いる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。好ましくは、耐熱性の高い接着剤を用いることが好ましく、熱硬化性ポリイミド接着剤、熱可塑性ポリイミド接着剤、熱可塑性液晶ポリマー接着剤などが好ましい。
【0037】
(中間シート)
インレットシートを挟持する中間シート7としては、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非結晶ポリエステル樹脂(PET−G)等の非結晶性樹脂が適用可能である。
【0038】
(カバーシート)
ICカードの最外層となるカバーシート8としては、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、セルローストリアセテート、セルロールジアセテートなどのセルロース系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル酸エチル樹脂、ポリエチルメタクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、非結晶ポリエステル樹脂(PET−G)等の樹脂が適用可能である。
【0039】
(ICカードの製造方法)
次に、図3を参照しながら、上記構成からなる非接触ICカードの製造方法について説明する。
まず、アンテナコイルやコンデンサ等のアンテナパターンが形成されたインレットシートを用意して、インレットシートに形成したアンテナパターンと導電性接着を介して接着するようにICチップを実装する(ステップS1)。
【0040】
次に、インレットシートに実装したICチップを封止するための封止樹脂により、ICチップを封止すると共に(ステップS2)、封止樹脂の上面に金属性の補強板を装着する。そして、補強板の上面に耐熱性の樹脂層を、接着剤を介して装着する(ステップS3)。なお、予め補強板と樹脂層とを接着剤を介して装着し、封止樹脂の上面に装着することも可能である。封止樹脂は、スクリーン印刷手法を用いてICチップの上面および周辺に封止樹脂を塗布するか、または、ディスペンサーによりポッティングすることで封止樹脂を塗布することとする。なお、ポッティングとは、シリンジまたはボトル内の封止樹脂の滴下時を調整し、封止樹脂を塗布する方法である。
【0041】
また、インレットシートにICチップを実装した面とは反対側の面に対して、ICチップが実装された同じ位置に金属性の補強板を、封止樹脂(または接着剤)を介して装着する(ステップS4)。封止樹脂は、スクリーン印刷手法またはポッティング手法を用いて封止樹脂を塗布することとする。
【0042】
次に、補強板と樹脂層とを装着したインレットシートの上下方向から中間シートと、カバーシートと、の樹脂シートでインレットシートを挟持して、加熱プレス機にて熱融着を行い、樹脂シートを自己融着させつつインレットシートと樹脂シートとを一体化させる(ステップS5)。
【0043】
このように、本発明にかかる非接触ICカードは、ICチップを保護する金属性の補強板をICチップの上方に設けつつ、該設けた金属性の補強板の上面に、耐熱性の樹脂層を設けることで、樹脂層が断熱材として機能し、熱プレス後の冷却時に、金属性の補強板から発する熱の伝導を樹脂層が和らげ、補強板周辺の樹脂シートの部分が他の樹脂シートの部分よりも早く冷却されることを防止し、均一に樹脂シートが冷却されることとなる。これにより、補強板にてICチップを保護しつつも、ICカードの表面を平滑にすることが可能となる。
【0044】
なお、上記非接触ICカードの製造方法において、インレットシートの両面に補強板を装着する工程(ステップS1〜ステップS4)は、ICチップを実装する側の面から先に行っても、ICチップを実装する側とは反対側の面から先に行っても良く、特に限定しないが、図4に示すように、ICチップを実装する側とは反対側の面から先に補強板を装着するほうが、特に好ましい。これは、ICチップをインレットシートに実装する際に、インレットシートが熱により、歪んでしまう虞があるため、予め、ICチップを実装する前に、ICチップを実装する側とは反対側の面から先に補強板を装着する方が、歪みを生じていないインレットシートに対して樹脂を均一に塗布することが可能となるためである。
【0045】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、図5に示すように、ICチップ3を実装する面とは反対側となる面に装着した金属性の補強板5にも、熱の伝導を和らげる樹脂層6を設けることとする。
これにより、熱プレス後の冷却時に、ICチップを実装する面とは反対側となる面に装着した金属性の補強板5から発する熱の伝導を樹脂層6が和らげ、補強板5周辺の樹脂シートの部分が他の樹脂シートの部分よりも早く冷却されることを防止し、ICカードの両面を平滑にすることが可能となる。
【0046】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、図6、図7に示すように、第1または第2の実施の形態における非接触ICカードにおいて、少なくとも一方のカバーシート8の上面に、熱により発色、消色が可逆的に変化する材料を予め表面にコーティングした感熱記録層9を設けたこととする。なお、図6は、第1の実施の形態における非接触ICカードを構成する一方のカバーシート8の上面に感熱記録層9を積層した図であり、図7は、第2の実施の形態における非接触ICカードを構成する一方のカバーシート8の上面に感熱記録層9を積層した図である。
【0047】
(感熱記録層)
カード表面に設けられる感熱記録層9は、サーマルヘッド方式にて印字操作が行われるものである。この感熱記録層は、高分子/低分子タイプとロイコ化合物タイプとの何れかを選択し、使用することが可能であるが、この感熱記録層は、公知の印字方式に対応する公知の材質を用いて形成することが可能であり、特に限定しない。
【0048】
第3の実施の形態における非接触ICカードは、第1の実施の形態における製造方法のように、ICチップを実装したインレットシートを、中間シートとカバーシートとで挟持すると共に、少なくとも一方のカバーシートの上面に接着剤を介して積層接着するように感熱記録層を積層し、ラミネートを行い一体化した非接触ICカードを形成する。
【0049】
なお、最終的に形成されたカードの厚さは、規定されているため、第1または第2の実施の形態における非接触ICカードを構成する少なくとも1つのシート(例えば、中間シート7)の厚さを薄くすることとする。
【0050】
このように、第3の実施の形態は、補強板によりICチップを確実に保護しつつ、且つ、補強板の上面に設けた樹脂層により、ICカード表面の平坦性を確保することが可能となり、ICカード表面に設けた感熱記録層の全面に対して、サーマルヘッドにより均一に加熱処理を施すことが可能となり、確実に感熱記録層の全面に印字処理を施すことが可能となる。なお、感熱記録層の上面には、感熱記録層を保護するための保護層を設けることが好ましい。
【0051】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態は、図8、図9に示すように、第1または第2の実施の形態における非接触ICカードの構成において、少なくとも一方のカバーシート8に対して、熱により発色、消色が可逆的に変化する材料を、予め表面にコーティングすることとする。そして、この少なくとも一方に可逆的に変化する材料をコーティングしたカバーシート(感熱記録層)8を、中間シート7と積層しつつ、第1の実施の形態と同様に、ICチップ3を実装したインレットシート1を挟持すると共に、ラミネートを行い一体化したICカードを形成する。なお、図8は、第1の実施の形態における非接触ICカードの構成において、一方のカバーシート8に対して、可逆的に変化する材料をコーティングして形成した感熱記録層9を積層した図であり、図9は、第2の実施の形態における非接触ICカードの構成において、一方のカバーシート8に対して、可逆的に変化する材料をコーティングして形成した感熱記録層9を積層した図である。
【0052】
このように、第4の実施の形態は、補強板によりICチップを確実に保護しつつ、且つ、補強板の上面に設けた樹脂層により、ICカード表面の平坦性を確保することが可能となり、ICカード表面の可逆的に変化する材料をコーティングしたカバーシート(感熱記録層)の全面に対して、サーマルヘッドにより均一に加熱処理を施すことが可能となり、確実にカバーシート(感熱記録層)の全面に印字処理を施すことが可能となる。なお、可逆的に変化する材料をコーティングしたカバーシート(感熱記録層)の上面には、感熱記録層を保護するための保護層を設けることが好ましい。
【0053】
なお、上述する実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。例えば、補強板と樹脂層とを装着したインレットシートの上下方向から中間シートと、カバーシートと、の樹脂シートでインレットシートを挟持して、加熱プレス機にて熱融着を行い、樹脂シートを自己融着させつつインレットシートと樹脂シートとを一体化させたが、インレットシートの中心軸がICカードの中心軸となるように、インレットシートの上下方向に構成する中間シートと、カバーシートと、の厚さを同一とし、且つ、同一の素材を用いて積層することで、ICカードの反りを防止することも可能となり、カード表面の平滑を図ることが可能となる。また、本発明にかかる非接触ICカードは、インレットシートを挟持して積層する際の層構成は、上記実施の形態に限定するものではなく、ICチップを保護する金属性の補強板の上面に、その補強板から発する熱の伝導を和らげる樹脂層を設けた構成のICモジュールをカード化したものであれば特に限定せず、あらゆるカードに適用可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように本発明は以下のような効果を奏する。
本発明にかかる非接触ICカードは、絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、ICチップを封止する封止樹脂を介して、ICチップを保護するための補強板を装着しつつ補強板の上面に、補強板の熱の伝導を和らげる耐熱性の樹脂層が設けてなるICモジュールを、ICカードの基板となる樹脂シートにて挟持した構成とすることで、樹脂層が断熱材として機能し、非接触ICカードの製造時に行う熱プレス後の冷却時に、金属性の補強板から発する熱の伝導を樹脂層が和らげ、金属性の補強板近辺の樹脂シート部分が他の樹脂シート部分よりも早く冷却されることを防止することが可能となり、樹脂シートが均一に冷却されることとなり、ICチップを保護しつつ、且つ、ICカードの表面を平滑にすることが可能となる。
【0055】
また、本発明にかかるICモジュールは、絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、ICチップを封止する封止樹脂を介して、ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該装着した補強板の上面に、補強板の熱の伝導を和らげる耐熱性の樹脂層が設けてなり、絶縁性の基板上にICチップが実装されていない側の面に、ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該装着した補強板の下面に補強板の熱の伝導を和らげる耐熱性の樹脂層が設けてなることで、このICモジュールをカード化することで、ICチップを保護しつつも、カードの表面の平坦を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる非接触ICカードの具備するICモジュールを示す図である。
【図2】第1の実施の形態における非接触ICカードの構成を示す図である
【図3】第1の実施の形態における非接触ICカードの第1の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における非接触ICカードの第2の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態における非接触ICカードの構成を示す図である。
【図6】第3の実施の形態における第1の非接触ICカードの構成を示す図である。
【図7】第3の実施の形態における第2の非接触ICカードの構成を示す図である。
【図8】第4の実施の形態における第1の非接触ICカードの構成を示す図である。
【図9】第4の実施の形態における第2の非接触ICカードの構成を示す図である。
【図10】従来における非接触ICカードの構成を示す図である。
【符号の説明】
1 インレットシート
2 アンテナパターン
3 ICチップ
4 封止樹脂
5 補強板
6 樹脂層
7 中間シート
8 カバーシート
9 感熱記録層
Claims (10)
- 絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、前記ICチップを封止する封止樹脂を介して、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該補強板の上面に、前記補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層が設けてなるインレットシートを、ICカードの本体基板となる樹脂シートにて挟持して構成し、前記樹脂層は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されていることを特徴とする非接触ICカード。
- 前記インレットシートは、前記ICチップが実装されていない側の前記絶縁性の基板上に、前記ICチップが実装される位置と同じ位置に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該装着した補強板の上面に、前記補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層が設けられており、前記樹脂層は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1記載の非接触ICカード。
- 前記樹脂層は、接着剤を介して前記補強板の上面に設けてなることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカード。
- 前記樹脂層は、前記インレットシートを前記樹脂シートにて挟持した際に行う熱プレスの温度でも溶融しない耐熱性の高い樹脂層であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の非接触ICカード。
- 前記樹脂層と前記補強板とを接着する接着剤は、耐熱性の高い接着剤であることを特徴とする請求項3記載の非接触ICカード。
- 前記ICカード基板となる樹脂シートの少なくとも一方の表面にサーマルヘッド方式による印字処理が可能な感熱記録層を設けたことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の非接触ICカード。
- 前記樹脂シートの一方は、熱により発色、消色が可逆的に変化する層が施されてなることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の非接触ICカード。
- 絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、前記ICチップを封止する封止樹脂を介して、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該装着した補強板の上面に、前記補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層が設けてなり、前記絶縁性の基板上にICチップが実装されていない側の面に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着しつつ、該装着した補強板の下面に前記補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層が設けてなるインレットシートであり、前記インレットシートは、ICカードの本体基板となる樹脂シートに挟持されるものであり、前記樹脂層は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されていることを特徴とするインレットシート。
- 絶縁性の基板上に実装されたICチップの上面に、当該ICチップを封止するための封止樹脂を配置し、前記ICチップを前記封止樹脂で封止する封止工程と、
前記封止樹脂の上面に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板と、当該補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層と、を装着する装着工程と、
前記ICチップが実装された面とは反対側の前記基板上に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着し、インレットシートを形成するインレットシート形成工程と、
前記インレットシートの上下面を、ICカードの本体基板となる樹脂シートにて挟持し、熱プレス機にて熱融着を行い、前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を一体化させると共に、該一体化させた前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を冷却し、ICカードを形成するICカード形成工程と、
を有し、
前記装着工程は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されている樹脂層を前記金属性の補強板の上面に装着する工程を含むことを特徴とする非接触ICカードの製造方法。 - 絶縁性の基板上にICチップを実装することになる面とは反対側の前記基板上に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板を装着する装着工程と、
ICチップを実装することになる前記基板上の面に、ICチップを実装する実装工程と、
前記ICチップの上面に、当該ICチップを封止するための封止樹脂を配置し、前記ICチップを前記封止樹脂で封止する封止工程と、
前記封止樹脂の上面に、前記ICチップを保護するための金属性の補強板と、当該補強板の熱の伝導を防止するための耐熱性のある樹脂層と、を装着し、インレットシートを形成するインレットシート形成工程と、
前記インレットシートの上下面を、ICカードの本体基板となる樹脂シートにて挟持し、熱プレス機にて熱融着を行い、前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を一体化させると共に、該一体化させた前記インレットシートと、前記樹脂シートと、を冷却し、ICカードを形成するICカード形成工程と、
を有し、
前記インレットシート形成工程は、前記金属性の補強板と接する前記樹脂シートの部分が、前記金属性の補強板と接しない部分の樹脂シートよりも早く冷却されないようにすることでICカードの表面部分に凹凸が生じないようにするための熱硬化性樹脂で構成されている樹脂層を前記金属性の補強板の上面に装着する工程を含むことを特徴とする非接触ICカードの製造方法。
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