JP4277482B2 - 電子写真法を用いた回路形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミックグリーンシート上に電子写真法を用いて回路パターンを形成する回路形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、セラミック基体上に回路パターンを形成する技術の1つとして、電子写真法を用いた回路形成方法が実用化され、当該技術に関するいくつかの提案がなされている。例えば特開平11−193402号公報には、金属粒の表面が熱可塑性絶縁物により被覆され、平均粒径が2〜20μmの範囲にある回路形成用荷電性粉末(以後、回路形成用トナーと呼ぶ)を用いた回路形成方法が提案されている。具体的には、感光体の表面に回路パターン状の電荷の像(静電潜像)を形成し、その静電潜像に回路形成用トナーを静電的に付着させ、回路パターン状の回路形成用トナーによる像をセラミックグリーンシート上に転写させた後、定着させるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
回路形成用トナーを電子写真法で現像する現像方式として、磁性体キャリアと混合して現像剤とする二成分現像法が広く用いられている。ところが、セラミックグリーンシート上にキャリアが付着することがあり、わずかでも付着すると、図4の(a)のように回路パターンPをショートさせたり、(b)のように回路パターンPの断線または抵抗値を著しく増加させるという問題が発生する。なお、Cはキャリアである。
【0004】
図5は、電子写真法で回路パターンPを形成したセラミックグリーンシートGを積層し、焼成して多層基板を形成した例を示す。セラミックグリーンシートGは近年益々薄層化され、数μm〜数百μmの厚みのものが提供されている。一方、キャリアCの粒径は例えば25〜80μm程度であるから、セラミックグリーンシートGに付着したキャリアCが上下層の回路Pをショートさせたり、デラミネーションの原因となることがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、セラミックグリーンシートにキャリアが付着しても、このキャリアを簡単に除去でき、回路の不具合を解消できる回路形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、感光体の表面に回路パターン状の静電潜像を形成し、回路形成用荷電性粉末と磁性体キャリアとを混合して現像剤とする二成分現像法を用いて、上記静電潜像に回路形成用荷電性粉末を静電的に付着させ、回路パターン状の回路形成用荷電性粉末による像をセラミックグリーンシート上に転写させた後、定着させてセラミックグリーンシート上に回路を形成する回路形成方法において、上記回路形成用荷電性粉末を上記セラミックグリーンシートに転写した後、上記セラミックグリーンシートの上記回路形成用荷電性粉末の付着面に磁石を近づけ、または接触させることにより、セラミックグリーンシート上に付着したキャリアを磁石の磁力により吸着除去することを特徴とする回路形成方法を提供する。
【0007】
本発明では、セラミックグリーンシートの回路形成用荷電性粉末の付着面に磁石を近づけることにより、セラミックグリーンシート上に付着した磁性キャリアを磁石の磁力により吸着除去する。このとき、回路形成用荷電性粉末は非磁性またはセラミックグリーンシートに転写又は定着した状態にあるから、キャリアのみが磁石に吸着除去され、回路形成用荷電性粉末はセラミックグリーンシート上に残る。そのため、回路パターンを損なうことがない。
【0008】
本発明ではセラミックグリーンシートに対して磁石を近づければよく、定着前後を問わない。
請求項2のように定着前であれば、回路形成用荷電性粉末の樹脂成分が溶着していないので、キャリアの除去は比較的簡単である。但し、回路パターンが乱れる恐れがあるので、磁石をセラミックグリーンシートの表面に接触させることはできない。一方、請求項3のように定着後であれば、回路形成用荷電性粉末の樹脂成分が溶着しているため、キャリアとセラミックグリーンシートとの付着力は定着前に比べて大きくなるが、磁石をセラミックグリーンシートの表面に接触させることができるので、磁石とキャリアとの距離を短縮でき、効率よく吸着することができる。
【0009】
請求項4のように、磁石を近づけると同時に、磁石とセラミックグリーンシートとの間に電界を作用させ、クーロン力によりキャリアを磁石に吸着させるのがよい。
例えば、キャリアがプラス電荷を持つ場合、磁石とセラミックグリーンシートとの間に磁石側が負となる電界を作用させれば、キャリアが磁力だけでなくクーロン力によっても磁石に吸着される。この場合、回路形成用荷電性粉末はマイナス電荷を持つので、磁石側に負の電界を作用させても、回路形成用荷電性粉末が吸着されることがない。このように、磁力による吸着力に加えて、電界を利用した吸着力を作用すれば、キャリアを一層効率よく除去できる。
なお、帯電器などを用いて磁石を直接マイナス帯電させてもよい。
【0010】
請求項5のように、キャリアは磁性体の周囲を樹脂で被覆したものであり、キャリアの被覆樹脂のガラス転移点あるいは軟化点を、回路形成用荷電性粉末の定着温度より高くするのがよい。
キャリアの被覆樹脂のガラス転移点あるいは軟化点が、回路形成用トナーの定着温度に近いか、それ以下の場合は、キャリアまで定着されてしまうため、磁石による除去が困難になるからである。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明にかかる電子写真装置の一例を示す。この実施例は、被転写体の一例である多層基板用のセラミックグリーンシート10に回路パターンを形成するために用いられるものであり、感光体ドラム1、帯電器2、露光装置3、現像装置4、キャリア吸着用磁石5、転写装置6、定着装置7、クリーニング装置8などを備えている。
【0012】
まず、感光体ドラム1を矢印方向に回転させながら、帯電器2により感光体ドラム1の表面電位を一定電位(例えばマイナス電荷)に均一に帯電させる。具体的な帯電方法としては、スコロトロン帯電法,ローラ帯電法,ブラシ帯電法などがある。
次に、露光装置3で画像信号に応じて光を感光体ドラム1に照射し、照射部分のマイナス電荷を除去し、感光体ドラム1の表面に回路パターン状の電荷の像 (静電潜像)を形成する。照射光はレーザ発振器やLED等により発生する。
【0013】
次に、現像装置4で感光体ドラム1上の静電潜像に回路形成用トナー4aを静電的に付着させ、可視像を形成する。ここでは、現像剤として回路形成用トナー4aと磁性キャリア4bとを20:80wt%の配分で混合した乾式二成分現像剤を用いた。回路形成用トナー4aは、図2に示すようにCu,Pd,Agなどの導電性でかつ非磁性の金属粉末Mを熱可塑性樹脂Rで被覆した構造を持ち、粒径は2〜20μm(中心粒径5.8μm)である。導電性金属粉末Mと熱可塑性樹脂Rの含有比率は80:20〜95:5(wt%)に設定されている。キャリア4bは例えばフェライトなどの磁性体の周囲を樹脂で被覆したものであり、その中心粒径は60μmである。現像装置4内で回路形成用トナー4aとキャリア4bとを混合攪拌することにより、トナー4aはプラスに、キャリア4bはマイナスに帯電される。回路形成用トナー4aは現像スリーブ4cによって感光体ドラム1に反転現像され、キャリア4bは現像スリーブ4cから脱落せずに回収される。
【0014】
キャリア4bの粒径は、大きい程現像時に現像スリーブ4cから脱落しにくいが、その反面、回路パターンを精密に描きにくくなる。逆に、キャリア4bの粒径が小さいほど、現像スリーブ4cから脱落しやすいものの、回路パターンを精密に描きに易くなる。望ましいキャリア4bの粒径は25〜80μmである。
キャリア4bもトナー4aと同様に磁性体の周囲を樹脂で被覆したものであるが、キャリア4bの被覆に用いられる樹脂のTgあるいは軟化点は、回路形成用トナー4aの定着温度(樹脂RのTgあるいは軟化点)よりも20℃以上高いことが望ましい。回路形成用トナー4aの定着温度に近いか、それ以下の場合は、キャリア4bまで定着されてしまうため、磁石5による除去が困難になるからである。
【0015】
転写装置6では、セラミックグリーンシート10をプラス電位に帯電させ、ドラム1の表面の回路形成用トナー4aをセラミックグリーンシート10上に転写する。具体的には、コロナ転写法、ローラ転写法、ベルト転写法などの公知の方法で転写すればよい。なお、図1ではセラミックグリーンシート10のみを矢印方向へ搬送する例を示したが、セラミックグリーンシート10をキャリアフィルムの上に形成し、このキャリアフィルムと一緒に搬送してもよい。
【0016】
表面に回路形成用トナー4aが転写されたセラミックグリーンシート10は、キャリア吸着用磁石5の下を通過する。この実施例の磁石5は平板状磁石であり、セラミックグリーンシート10と近接した位置に配置されている。ただし、セラミックグリーンシート10の上面から少なくとも50μm以上離すのがよい。50μmよりも近づけると、未定着のトナー4aの像に磁石5が接触し、回路パターン形状を乱す可能性があるからである。現像装置4で感光体ドラム1上の静電潜像に回路形成用トナー4aを静電的に付着させたとき、キャリア4bの全てが回収されずにトナー4aと共にキャリア4bの一部がドラム1に付着することがある。そして、キャリア4bはトナー4aと共にセラミックグリーンシート10に転写されて磁石5の下を通過する。この時、磁石5の磁力によってキャリア4bのみが磁石5に吸着除去される。トナー4aは非磁性体であるから吸着されない。
【0017】
キャリアが吸着除去されたセラミックグリーンシート10は定着装置7へ送られ、回路形成用トナー4aを定着させて回路パターン11が形成される。定着には、熱ローラ定着、オーブン定着、フラッシュ定着、溶剤定着などの種々の定着法を用いることができる。
転写後のドラム1はクリーニング装置8によって、表面に残った回路形成用トナー4aが除去され、回収される。
回路パターン11が形成されたセラミックグリーンシート10は、積層工程で所定枚数だけ積層圧着され、その後、焼成工程へ運ばれて所定温度で焼成される。このとき、回路パターン11に含まれる樹脂成分が分解されるとともに、金属粉末同士が結合し、電気抵抗の低い高品質な回路が形成される。
【0018】
本発明者が、キャリア吸着用磁石5を装備しない電子写真装置を用いてセラミックグリーンシートに回路形成用トナー4aを転写、定着させたところ、100枚のセラミックグリーンシート中、3枚のセラミックグリーンシートにキャリア4bが付着していた。
一方、キャリア吸着用磁石5を装備した電子写真装置を用いて同様の方法でセラミックグリーンシートに回路形成用トナー4aを転写、定着させたところ、100枚のセラミックグリーンシートの中で、キャリア4bが付着したセラミックグリーンシートは発生しなかった。
【0019】
上記実施例では、定着前のセラミックグリーンシート10に対して、磁石5を近づけることで、キャリア4bを吸着除去する方法について述べたが、定着後のセラミックグリーンシート10に磁石5を接触させることで、キャリア4bを除去することもできる。定着後であるから、磁石5を接触させてもセラミックグリーンシート10上の回路パターンの乱れがない。
上記のようにキャリア4bが付着した3枚のセラミックグリーンシート(定着後)の表面に平板状の磁石5を接触させ、引き離したところ、付着したキャリア粒子4bを完全に除去することができた。
【0020】
図3は、本発明により回路形成方法の他の実施例を示す。
この方法は、トナー4aとキャリア4bとが付着したセラミックグリーンシート10上に、磁石5を近接または接触させて配置するとともに、磁石5がマイナス、セラミックグリーンシート10がプラスとなるように直流電界を印加したものである。セラミックグリーンシート10の背後にプラス側の電極板12を配置してある。
この場合は、マイナス側の磁石5にプラスの電荷を持つキャリア4bがクーロン力によって吸着されると同時に、磁石5による磁力によって磁性キャリア4bが吸着されるので、両方の力が相俟ってキャリア4bを強力に吸着除去できる。
なお、磁石5に直接マイナス電界を印加してもよいが、磁石5がフェライトのように高抵抗材料である場合には強い電界を印加できないので、磁石5の表面を透磁性のある電極材料で被覆し、その電極材料にマイナス電界を印加してもよい。また、帯電器で磁石5を直接マイナス帯電させてもよい。
【0021】
上記実施例では、回路形成用トナーとして、Cu,Pd,Agなどの導電性でかつ非磁性の金属粒子を含むものについて説明したが、例えばNiやFeなどの磁性金属を含む場合でも適用可能である。ただし、磁石による除去はトナーを十分に定着した後で行う必要がある。
本発明で使用される磁石は、永久磁石に限らず、電磁石を用いてもよい。永久磁石の場合、セラミックグリーンシート上のキャリアを除去した後、その表面に付着したキャリア粒子をスクレーパ等を用いてかき落とすことで、何度でも使用できる。また、電磁石の場合には、電流のON/OFFによって磁力を制御できるので、その表面に付着したキャリア粒子を簡単に除去できる。
磁石の形状は、平板状に限らず、円筒状、棒状など任意の形状を取ることができる。また、その磁力も、キャリア粒子の磁気特性に応じて必要な磁力を有しておればよい。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、セラミックグリーンシートの回路形成面に磁石を近づけ、または接触させることにより、セラミックグリーンシート上に付着したキャリアを磁石の磁力により吸着除去するようにしたので、セラミックグリーンシート上にキャリアが残存することがない。そのため、電子写真法を用いた回路の問題点であったキャリアによる回路パターンのショートや抵抗値の増加という問題を解消でき、高品質の回路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる電子写真装置の一例の構造図である。
【図2】回路形成用トナーの一例の構造図である。
【図3】キャリアの除去方法の他の実施例の構成図である。
【図4】キャリアによる回路パターンのショート例と抵抗値の増大例である。
【図5】電子写真法で回路パターンを形成したセラミックグリーンシートを積層した多層基板の断面図である。
【符号の説明】
1 感光体ドラム
2 帯電器
3 露光装置
4 現像装置
4a 回路形成用荷電性粉末(回路形成用トナー)
4b キャリア
5 キャリア吸着用磁石
6 転写装置
7 定着装置
10 セラミックグリーンシート
11 回路パターン

Claims (5)

  1. 感光体の表面に回路パターン状の静電潜像を形成し、回路形成用荷電性粉末と磁性体キャリアとを混合して現像剤とする二成分現像法を用いて、上記静電潜像に回路形成用荷電性粉末を静電的に付着させ、回路パターン状の回路形成用荷電性粉末による像をセラミックグリーンシート上に転写させた後、定着させてセラミックグリーンシート上に回路を形成する電子写真法を用いた回路形成方法において、
    上記回路形成用荷電性粉末を上記セラミックグリーンシートに転写した後、上記セラミックグリーンシートの上記回路形成用荷電性粉末の付着面に磁石を近づけ、または接触させることにより、セラミックグリーンシート上に付着したキャリアを磁石の磁力により吸着除去することを特徴とする回路形成方法。
  2. 上記回路形成用荷電性粉末をセラミックグリーンシートに定着させる前に、上記磁石によりセラミックグリーンシート上に付着したキャリアを吸着除去することを特徴とする請求項1に記載の回路形成方法。
  3. 上記回路形成用荷電性粉末をセラミックグリーンシートに定着させた後に、上記磁石によりセラミックグリーンシート上に付着したキャリアを吸着除去することを特徴とする請求項1に記載の回路形成方法。
  4. 上記磁石を近づけると同時に、磁石とセラミックグリーンシートとの間に電界を作用させ、クーロン力によりキャリアを磁石に吸着させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回路形成方法。
  5. 上記キャリアは磁性体の周囲を樹脂で被覆したものであり、
    上記キャリアの被覆樹脂のガラス転移点あるいは軟化点は、回路形成用荷電性粉末の定着温度より高いことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の回路形成方法。
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