JP4277038B2 - 漏水補修方法、漏水補修構造 - Google Patents

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本発明は、地下構造物の継手部からの漏水を補修する漏水補修方法および漏水補修構造に関する。
トンネルなどの地下構造物のコンクリートの継手部からの漏水を防ぐ方法には、防水シートを土砂とコンクリートとの間に備える方法(特許文献1)や、止水ゴムを継手部に挿入する方法(図1)などがある。図1に示す方法は、止水ゴム710、720を継手部810に挿入し、止水ゴムの弾力性によって地下構造物の伸縮に追従させ、漏水を防ぐ方法である。しかし、これらの防水方法を施しても、止水部材の経年劣化などによって漏水することがある。
また、トンネル内の漏水には、継手部からの漏水の他に、コンクリートの亀裂からの漏水もある。このような漏水の補修方法として、防水止水膜を形成する方法(特許文献2)や樹脂を隙間に注入する方法(非特許文献1)などがある。しかし、これらの方法は、主に亀裂の補修を目的としたものであり、構造物の伸縮や地盤の変化により隙間が変化する継手部の補修では、長期的に安定した補修は難しかった。その一方で、安価に補修でき、かつ安定性のある補修方法が求められてきた。
特開2005−120576号公報 特開2003−176699号公報 ショーボンド建設株式会社、"バンデフレキシン工法"[online]、[平成18年10月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.sho-bond.co.jp/html/40-bt.html〉
本発明の目的は、地下構造物の継手部からの漏水を、安価に長期的に安定に補修する方法を提供することである。補修方法に求められる具体的な条件は、以下のとおりである。(1)構造物の伸縮に追従できる弾力性を有する。(2)材料の経年劣化が少ない。(3)高い水圧であっても、容易に施工できる。(4)安価である。
本発明の漏水補修方法は、継手部からの漏水を仮止水する仮止水部を、継手部の漏水部分に形成する仮止水部形成ステップと、止水材を注入する穴を設置する削孔ステップと、あらかじめ定めた期間に、継手部の変動以上の弾力性を維持できる樹脂を止水材として注入する止水材注入ステップとを有する。また、仮止水部形成ステップでは、継手部の内部に、水の中でも作業時間内に硬化する樹脂またはセメントで第1の仮止水手段を形成し、継手部の表面に、注入ホースを有する第2の仮止水手段を形成し、注入ホースから、止水材の硬化時間内に生じる継手部の変動に追従し、止水材の漏れを防ぐ接着性と弾力性を有する樹脂(以下、「仮止水樹脂」という)を、第1の仮止水手段と第2の仮止水手段の間に注入する。なお、あらかじめ定めた止水材が継手部の変動以上の弾力性を維持できる期間とは、地下構造物の寿命や補修期間から設計上定める期間である。
止水材には、24時間以内に硬化し強い接着強度を有する樹脂を用いればよい。例えば、水性エマルジョンタイプのアクリル樹脂から選定すれば、特定化学物質にあたる危険な物質を含まないで、微細な隙間まで入り込み、コンクリート面との接着性と弾力性を有する樹脂も選択できる。仮止水樹脂は、2〜3時間で硬化し、コンクリート面との接着性と弾力性を有する樹脂を用いればよい。第1の仮止水手段には、ある程度の粘度を有し、30分程度で硬化する急結セメントや発泡ウレタンなどを使用すればよい。第2の仮止水手段には、扱いやすく、60分以内で硬化する樹脂モルタルなどを使用すればよい。
本発明によれば、第1の仮止水手段によって漏水の水圧を止めた上で、第2の仮止水手段との間に仮止水樹脂を注入する。仮止水樹脂として、2〜3時間で硬化し、数十時間以上高い水圧に耐え、漏水や止水材が漏れることを防ぐことができる樹脂を選定すればよい。このような仮止水部によって、硬化時間の長い止水材でも、高圧の状態で用いることができる。つまり、止水材として利用できる樹脂の選択の幅が広がり、長期的な安定性、弾力性などの条件を満足する樹脂を選定できる。したがって、(1)構造物の伸縮に追従できる弾力性を有する、(2)材料の経年劣化が少ない、(3)高い水圧であっても、容易に施工できる、(4)安価であるという課題を満足させる地下構造物の継手部の漏水補修方法を提供できる。
検討
地下構造物の継手部の漏水補修では、仮止水樹脂を用いて一時的に漏水を少なくしておき(仮止水部を形成)、次に止水材を水圧よりも高い圧力で注入する(止水部を形成)という方法は古くから知られており、非特許文献1でも紹介した。しかし、高深度の地下(例えば、地下数10m)では、水圧も高くなるため、止水材を注入する圧力も高くなる。また、恒久的な補修への要求も高くなっており、(1)構造物の伸縮に追従できる弾力性を有する、(2)材料の経年劣化が少ない、(3)高い水圧であっても、容易に施工できる、(4)安価であるという課題が生じた。まず、仮止水部を形成し、止水部を形成するという方法で、これらの課題を解決するための具体的な問題点について検討する。
従来、止水材としては無機系のセメントと有機系の樹脂がよく用いられていた。セメントやエポキシ系の樹脂の場合、ほとんど弾力性がない。したがって、コンクリートの亀裂の補修のように、ほとんど変化のない部分の補修には使用できるが、継手部のように伸縮機能を有する部分では、伸縮に追従できないという問題があった。また、弾力性を有する有機系の樹脂では、60分以内に硬化するものがよく用いられていた。これは、上述のように水圧よりも高い圧力で注入しなければならないので、速く硬化しなければ仮止水部からこの樹脂(止水材)が漏れてしまうためである。しかし、一般に速く硬化する樹脂には、加水分解やバクテリア分解が起こりやすく、経年劣化しやすいものが多い。したがって、長期的に弾力性を維持できる樹脂を選定することが難しい。さらに、高深度地下の開発が進み、水圧が高くなると、より速く硬化することが止水材に求められる。しかし、この要求は、長期的に弾力性を維持するという要求と相反する。
長期的に安定に弾力性を維持できる樹脂としては、例えば、アクリル系の樹脂(三生化工株式会社、“アルファー・ゾル”[online]、[平成18年10月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.sansei-chem.co.jp/al_g.htm〉)が近年提供され始めた。この樹脂の場合、硬化に2〜24時間かかるが、伸び率が300%、コンクリート面との接着強度が1.0N/mm以上であって、加水分解やバクテリア分解などによる経年劣化がほとんどない。このような樹脂を止水材として選択するための仮止水部には、止水材が硬化するまでの間、高い圧力で注入される止水材の漏れを防ぐ機能が求められる。つまり、従来の仮止水部は、漏水を軽減する程度の機能だったが、上記の課題を解決するためには、硬化時間が長い中、高い圧力の止水材が漏れない仮止水部を形成しなければならない。
[第1実施形態]
構造
図2に、本発明の漏水補修構造を示す。本発明の漏水補修構造は、継手部810からの漏水を短期的に止水する仮止水部10と、仮止水部10よりも地下構造物の外側に、あらかじめ定めた期間に、継手部の変動以上の弾力性を維持できる樹脂によって形成される止水部400と、止水部を形成する樹脂を注入するための注入パイプとを備える。また、仮止水部10は、継手部の内部に位置する第1の仮止水手段100と、継手部の表面に位置する第2の仮止水手段200と、第1の仮止水手段100と第2の仮止水手段200の間に位置する第3の仮止水手段300から構成される。第1の仮止水手段100は、水の中でも作業時間内に硬化する樹脂またはセメントで形成され、漏水を防止する。第2の仮止水手段200には、仮止水樹脂を注入するための注入ホース210が取り付けられている。第3の仮止水手段300の樹脂(仮止水樹脂)の接着性と弾力性は、止水部400に用いる樹脂の硬化時間内に生じる継手部の変動以上でありかつ、高圧で注入される止水材の漏れを防ぐことができるものである。また、仮止水樹脂として引張強度が強い樹脂を用いれば、長期的な継手部の変動を小さくする機能も果たすことができる。なお、あらかじめ定めた止水材が継手部の変動以上の弾力性を維持できる期間とは、地下構造物の寿命や補修期間から設計上定める期間である。また、止水材を注入するための注入パイプ410は、コンクリート800を削孔して取り付けられている。
止水材には、24時間以内に硬化し強い接着強度を有する樹脂を用いればよい。例えば、水性エマルジョンタイプのアクリル樹脂から選定すれば、特定化学物質にあたる危険な物質を含まないで、微細な隙間まで入り込み、接着性と弾力性を有する樹脂も選択できる。例えば、止水材と促進硬化剤との配合(例えば、100:5)によって調整されるが、2時間から24時間で硬化し、コンクリートとの接着強度1.42N/mm、引張強度(20℃)0.29N/mm、伸び率(20℃)300%のアクリル樹脂がある。仮止水樹脂は、2〜3時間で硬化し、コンクリート面との接着性と弾力性を有する樹脂を用いればよい。このような樹脂を用いることによって、硬化までに長時間を要し、高圧で注入される止水材が漏れることを防ぐ機能を果たせる。さらに、引張強度の強い樹脂を選べば、長期的には継手部の変動を軽減することもできる。具体的には、例えば、コンクリートとの接着強度1.0N/mm、引張強度1.1N/mm、伸び率300%のアクリル樹脂がある(電気化学工業株式会社、“弾性ロック”[online]、[平成18年10月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.denka.co.jp/html/j-moreinfo/tokkon/pdf/dansei-rock.pdf〉)。第1の仮止水手段には、従来から一般的に止水用に使用されている急結セメントや発泡ウレタンを用いればよい。ただし、第1の仮止水手段に用いる樹脂またはセメントは、短期的でよいが、漏水を止めなければならないので、ある程度の粘度が求められる。急結セメントの場合は手で詰め、発泡ウレタンの場合はポンプで注入する。第2の仮止水手段に用いる樹脂は、細かい手作業が必要な施工部分であるため、扱いやすく軽い樹脂モルタルを用いればよい。
本発明の漏水補修構造は、このような仮止水部10を有するから、止水材として硬化時間が長い樹脂を高圧で注入しても、止水材が仮止水部10付近から漏れることがない。したがって、止水材として利用できる樹脂の選択の幅が広がり、長期的な安定性、弾力性などの条件を満足する安価な樹脂を選定できる。また、仮止水樹脂に引張強度の強い樹脂を選べば、地下構造物によっては長期的な継手部の変動を軽減することも期待できる。
補修方法
図3〜図8に漏水補修工程の様子を示す。また、図9に漏水補修のフローを示す。劣化した止水ゴム710などの止水部材がある場合には、必要に応じてそれらの止水部材を除去する(S10)。図3は、図1の止水ゴム710、720を除去した様子を示す図である。
第1の仮止水手段100を形成する(S100)。第1の仮止水手段100は、漏水の量を軽減し、仮止水樹脂を通常の圧力で注入できるようにする機能を果たす。第1の仮止水手段には、ある程度の粘度を有し、30分程度で硬化する急結セメントや発泡ウレタンなどを使用すればよい。急結セメントの場合は手で詰め、発泡ウレタンの場合はポンプで注入する。漏水の量が多いときには、急結セメントと発泡ウレタンの両方を用いる方法が有効である。図4は、第1の仮止水手段100を形成した様子を示す図である。
第2の仮止水手段200を形成する(S200)。第2の仮止水手段200には、仮止水樹脂を注入するための注入ホース210が備えられている。第2の仮止水手段200は、仮止水樹脂を注入し、硬化させるまで保持する機能(仮止水樹脂を閉じ込める機能)を果たす。第2の仮止水手段には、扱いやすく軽く、60分以内で硬化する樹脂モルタルなどを使用すればよい。図5に、第2の仮止水手段200を形成した様子を示す。
注入ホース210から仮止水樹脂を注入し、第3の仮止水手段300を形成する(S300)。第3の仮止水手段は、止水材の硬化時間内に生じる継手部の変動に追従し、止水材の漏れを防ぐ機能を果たす。したがって、仮止水樹脂には、長期的な安定性は求められないが、作業上問題のない時間内で硬化し、高圧で注入される止水材の漏れを防ぐだけの弾力性が求められる。仮止水樹脂としては、例えば、2〜3時間で硬化し、コンクリート面との接着性と弾力性を有する樹脂を用いればよい。さらに、引張強度の強い樹脂を選べば、地下構造物によっては長期的な継手部の変動を軽減することも期待できる。図6に、仮止水樹脂を注入した状態を示す。
コンクリート800を削孔し、止水材を注入するための注入パイプ410を取り付ける(S350)。必要に応じて、注入パイプ410にバルブを取り付けておいてもよい。バルブを取り付ければ、高圧で注入する止水材の逆流(注入パイプからの漏れ)を簡単に防ぐことができる。図7に、注入パイプ410を取り付けた状態を示す。
注入パイプ410から、漏水の水圧よりも高い圧力で止水材を注入し、止水部を形成する(S400)。仮止水部10(第1の仮止水手段100、第2の仮止水手段200、第3の仮止水手段300)によって、高圧の状態が長時間続いても漏れない構造と成っているので、硬化時間に関する制限を考慮することなく、地下構造物の伸縮や地盤の変動などによる長期的な継手部の変動に追従でき、経年劣化の少ない樹脂を選ぶことができる。もちろん、硬化時間が長すぎると地下水の流れによって樹脂が流れてしまうリスクもあるので、あまり硬化時間が長すぎない方がよい。具体的には、24時間以内に硬化するような樹脂を選べばよい。図8は、止水材を注入した状態を示す図である。
そして、注入ホース210や注入パイプ410のコンクリート800の表面から突出している部分を取り除くなどの後処理を行い、図2に示した漏水補修構造を形成する(S500)。
このような手順により漏水補修が行え、上述の漏水補修構造を形成できるので、(1)構造物の伸縮に追従できる弾力性を有する、(2)材料の経年劣化が少ない、(3)高い水圧であっても、容易に施工できる、(4)安価であるという条件を満たすことができる。
止水ゴムを継手部に挿入する方法を示す図。 本発明の漏水補修構造を示す図。 止水ゴム710、720を除去した様子を示す図。 第1の仮止水手段100を形成した様子を示す図。 第2の仮止水手段200を形成した様子を示す図。 仮止水樹脂を注入した様子を示す図。 注入パイプ410を取り付けた様子を示す図。 止水材を注入した様子を示す図。 漏水補修のフローを示す図。

Claims (8)

  1. 地下構造物の継手部の漏水を補修する漏水補修方法であって、
    継手部からの漏水を仮止水する仮止水部を、継手部の漏水部分に形成する仮止水部形成ステップと、
    止水材を注入する穴を設置する削孔ステップと、
    あらかじめ定めた期間に、継手部の変動以上の弾力性を維持できる樹脂を止水材として注入する止水材注入ステップと
    を有し、
    前記仮止水部形成ステップは、
    前記継手部の内部に、水の中でも作業時間内に硬化する樹脂またはセメントで第1の仮止水手段を形成し、
    前記継手部の表面に、注入ホースを有する第2の仮止水手段を形成し、
    前記注入ホースから、前記止水材の硬化時間内に生じる継手部の変動に追従し、止水材の漏れを防ぐ接着強度と弾力性を有する樹脂(以下、「仮止水樹脂」という)を、第1の仮止水手段と第2の仮止水手段の間に注入する
    ことを特徴とする漏水補修方法。
  2. 請求項1記載の漏水補修方法であって、
    前記止水材は、24時間以内に硬化する樹脂である
    ことを特徴とする漏水補修方法。
  3. 請求項1または2記載の漏水補修方法であって、
    前記止水材は、コンクリート面との接着強度が1.0N/mm以上の樹脂である
    ことを特徴とする漏水補修方法。
  4. 請求項2または3記載の漏水補修方法であって、
    前記止水材は、水性エマルジョンタイプのアクリル樹脂である
    ことを特徴とする漏水補修方法。
  5. 請求項2から4のいずれかに記載の漏水補修方法であって、
    前記仮止水樹脂は、3時間以内に硬化する樹脂である
    ことを特徴とする漏水補修方法。
  6. 請求項5記載の漏水補修方法であって、
    前記仮止水樹脂は、コンクリート面との接着強度が1.0N/mm以上の樹脂である
    ことを特徴とする漏水補修方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の漏水補修方法であって、
    前記第1の仮止水手段は急結セメントまたは発泡ウレタンで、前記第2の仮止水手段は樹脂モルタルで形成される
    ことを特徴とする漏水補修方法。
  8. 地下構造物の継手部の漏水を補修する漏水補修構造であって、
    継手部からの漏水を仮止水する仮止水部と、
    前記仮止水部よりも前記地下構造物の外側に、あらかじめ定めた期間に、継手部の変動以上の弾力性を維持できる樹脂を止水材として形成した止水部と、
    前記止水部を形成する樹脂を注入するための注入パイプと
    を備え、
    前記仮止水部は、
    前記継手部の内部に位置し、水の中でも硬化する樹脂またはセメントで形成される第1の仮止水手段と、
    前記継手部の内面側表面に位置する第2の仮止水手段と、
    第1の仮止水手段と第2の仮止水手段の間に、前記止水材の硬化時間内に生じる継手部の変動に追従し、止水材の漏れを防ぐ弾力性を有する樹脂で形成される第3の仮止水手段
    から構成される漏水補修構造。
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