JP4275887B2 - 粘接着性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟化点の向上、粘着力や保持力等の粘着特性のバランスに優れた粘接着性組成物に関し、更に詳しくは、特定の官能基を含有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる変性ブロック共重合体又はその水添物と粘着付与剤及び特定の官能基を有する架橋剤からなる粘接着性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ホットメルト型の接着剤が、環境汚染、労働環境の観点から広く使用されるようになってきている。ホットメルト型接着剤のベースポリマーとしてはビニル芳香族炭化水素−共役ジエン系ブロック共重合体(SBS)が広く使用されている。例えば、特公昭44−17037号公報、特公昭56−49958号公報にはかかるブロック共重合体を用いた粘接着剤組成物が開示されている。しかしながら、保持力と粘着性とのバランスが不十分であり、これらの改良が望まれてきた。これらの改良方法として特開昭64−81877号公報、特開昭61−278578号や「接着」(第32卷1号、27頁(’88))にはトリブロック共重合体とジブロック共重合体よりなる接着剤組成物が開示されている。また、特開昭61−261310号公報及び特開昭63−248817号公報では、特定の2官能性カップリング剤(脂肪族系モノエステル、特定のジハロゲン化合物)でカップリングさせて得られるブロック共重合体よりなる接着剤組成物が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に開示されたいずれの方法でも改良効果は不十分であった。このような改善要求に対して、特公平4−28034号公報にはビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体に特定の官能基を付与した末端変性ブロック共重合体と粘着付与剤との組成物が記載されている。しかしながら、軟化点の向上、保持力と粘着性とのバランス性能においてなお一層の改善が要望されていた。
【0004】
このような背景の下、本発明は軟化点の向上、保持力と粘着性とのバランス性能に優れた粘接着性組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の好ましい粘接着性組成物を開発するために、鋭意検討を重ねた結果、粘着付与剤と特定の官能基を付与したブロック共重合体を含む組成物に特定の官能基を有する架橋剤を組み合わせることにより上記課題を効果的に解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記の通りである。
【0006】
1.(1)有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤を付加反応させてなる変性ブロック共重合体又はその水添物を100質量部、
(2)粘着付与剤を20〜400質量部、
(3)該成分(1)の官能基部分と反応性を有する架橋剤を0.01〜20質量部、
を含む粘接着性組成物。
2.(1')有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤を付加反応させてなる変性ブロック共重合体又はその水添物(1)に、該成分(1)の官能基部分と反応性を有する架橋剤(3)を、該官能基1当量あたり0.3〜10モル反応させた二次変性ブロック共重合体を100質量部、
(2)粘着付与剤を20〜400質量部、
を含む粘接着性組成物。
3.成分(1)、成分(2)及び成分(3)を溶融混練して得た請求項1記載の粘接着性組成物。
4.成分(1')と成分(2)を溶融混練して得た請求項2記載の粘接着性組成物。
5.変性ブロック共重合体又はその水添物(1)が、有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤を付加反応させてなり、該ブロック共重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性ブロック共重合体又はその水添物である請求項1〜4のいずれかに記載の粘接着性組成物。
6.架橋剤(3)がカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する架橋剤である請求項1〜5のいずれかに記載の粘接着性組成物。
7.変性ブロック共重合体又はその水添物(1)が、下記式(1)〜式(14)から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性ブロック共重合体又はその水添物である請求項1〜6のいずれかに記載の粘接着性組成物。
【化2】
(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、シリコン等の元素が結合していても良い。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基。)
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明で使用する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる変性ブロック共重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素含有量は、好ましくは粘着力と保持力のバランスから5〜95wt%であり、より好ましくは10〜90wt%、更に好ましくは15〜85wt%の範囲で使用できる。変性ブロック共重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素含有量が60wt%以上、好ましくは65wt%以上の場合は樹脂的な特性を有し、60wt%未満、好ましくは55wt%以下の場合は弾性的な特性を有す。本発明において特に好ましい変性ブロック共重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素含有量は、ビニル芳香族炭化水素の含有量が5wt%以上、60wt%未満、好ましくは10〜50wt%、更に好ましくは15〜45wt%である。
【0016】
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特公昭51−49567号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。これらの方法で得られるブロック共重合体のリビング末端に後述する変性剤を付加反応することにより本発明で使用する官能基含有ブロック共重合体が得られ、例えば下記一般式で表されるような構造を有する。
(A−B)n−X、 A−(B−A)n−X、
B−(A−B)n−X、 X−(A−B)n、
X−(A−B)n−X、 X−A−(B−A)n−X、
X−B−(A−B)n−X、 [(B−A)n]m−X、
[(A−B)n]m−X、 [(B−A)n−B]m−X、
[(A−B)n−A]m−X
(上式において、Aはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを主体とする重合体である。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。また、nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xは、後述する官能基を有する原子団が結合している変性剤の残基を示す。Xを後述するメタレーション反応で付加させる場合は、Aブロック及び/又はBブロックの側鎖に結合している。また、Xに結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)
【0017】
なお、上記において、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAとはビニル芳香族炭化水素を好ましくは50wt%以上、より好ましくは70wt%以上含有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体ブロック及び/又はビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックを示し、共役ジエンを主体とする重合体ブロックBとは共役ジエンを好ましくは50wt%を超える量で、より好ましくは60wt%以上含有する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロック及び/又は共役ジエン単独重合体ブロックを示す。共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、またテーパー状に分布していてもよい。また、該共重合体部分には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。本発明で使用するブロック共重合体は、上記一般式で表されるブロック共重合体の任意の混合物でもよい。
【0018】
本発明において、ブロック共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができ、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは5〜90%、より好ましくは10〜80%、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは3〜80%、より好ましくは5〜70%である。但し、ブロック共重合体として水添物を使用する場合のミクロ構造は、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは10〜80%、更に好ましくは25〜75%であり、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは5〜70%であることが推奨される。なお、本発明においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を以後ビニル結合量と呼ぶ。
【0019】
本発明において、共役ジエンとは1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等であるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらは一つのブロック共重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0020】
また、ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、等があるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。これらは一つのブロック共重合体の製造において一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0021】
本発明において、ブロック共重合体の共役ジエンとしてイソプレンと1,3−ブタジエンを併用する場合、イソプレンと1,3−ブタジエンの質量比は好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90、更に好ましくは85/15〜15/85である。特に、低温特性に優れた粘着性組成物を得る場合には、イソプレンと1,3−ブタジエンの質量比は好ましくは49/51〜5/95、より好ましくは45/55〜10/90、更に好ましくは40/60〜15/85であることが推奨される。イソプレンと1,3−ブタジエンを併用すると高温での溶融混練や塗布工程においても粘度安定性や外観特性の良好な組成物が得られる。
【0022】
本発明において、粘着付与剤との相容性を改善するため、ブロック共重合体に組み込まれているビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合(ビニル芳香族炭化水素のブロック率という)を調整することができ、ビニル芳香族炭化水素のブロック率を好ましくは50wt%以上、より好ましくは50wt%〜97wt%、さらに好ましくは60〜95wt%、とりわけ好ましくは70〜92wt%に調整することができる。ブロック共重合体に組み込まれているビニル芳香族炭化水素のブロック率の測定は、四酸化オスミウムを触媒としてtert−ブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
ビニル芳香族炭化水素のブロック率(wt%)=(ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの質量/ブロック共重合体中の全ビニル芳香族炭化水素の質量)×100
【0023】
本発明において、ブロック共重合体の製造に用いられる溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
また、ブロック共重合体の製造に用いられる有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。また、有機リチウム化合物は、ブロック共重合体の製造において重合途中で1回以上分割して添加してもよい。
【0025】
本発明において、ブロック共重合体の製造時重合速度の調整、重合した共役ジエン部分のミクロ構造の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との反応性比の調整等の目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスフィン及びホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。適当なエーテル類の例はジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルである。アミン類としては第三級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第三級アミン等も使用できる。ホスフィン及びホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド等がある。
【0026】
本発明において、ブロック共重合体を製造する際の重合温度は、好ましくは−10℃〜150℃、より好ましくは30℃〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に好適には0.5〜10時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないようにすることが好ましい。
【0027】
本発明で用いる変性ブロック共重合体又はその水添物(1)は、有機リチウム化合物を重合触媒として得た、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなり、該ブロック共重合体に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シラノール基、アルコキシシラン、ハロゲン化ケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性ブロック共重合体又はその水添物である。
【0028】
かかる官能基を有する原子団が結合しているブロック共重合体又はその水添物を得る方法は、ブロック共重合体のリビング末端との付加反応により、該ブロック共重合体に前記の官能基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合されている変性ブロック共重合体又はその水添物を生成する官能基を有する変性剤、あるいは該官能基を公知の方法で保護した原子団が結合している変性剤を付加反応させる方法により得ることができる。他の方法としては、ブロック共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、ブロック共重合体に有機アルカリ金属が付加した重合体に上記の変性剤を付加反応させる方法が上げられる。後者の場合、ブロック共重合体の水添物を得た後にメタレーション反応させ、上記の変性剤を反応させてもよい。変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。なお、本発明においては、ブロック共重合体のリビング末端に変性剤を反応させる際に、一部変性されていないブロック共重合体が成分(1)の変性ブロック共重合体に混在しても良い。成分(1)の変性ブロック共重合体に混在する未変性のブロック共重合体の割合は、好ましくは70wt%以下、より好ましくは60wt%以下、更に好ましくは50wt%以下であることが推奨される。
【0029】
本発明の粘接着性組成物においては、変性ブロック共重合体又はその水添物に結合している原子団は前記の官能基から選ばれる官能基を少なくとも1個有するため、粘着付与剤との親和性が高く、粘着付与剤の官能基との間の化学的な結合や水素結合等の物理的な親和力により相互作用が効果的に発現され、また、本発明で規定する架橋剤との間に化学的な結合や物理的な親和力を生じて本発明が目的とする特性に優れた粘接着性組成物を得ることができる。
【0030】
本発明で用いる変性ブロック共重合体又はその水添物(1)として特に好ましいものは、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性ブロック共重合体又はその水添物である。
【0031】
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団として好ましい原子団は、下記式(1)〜式(14)のような一般式で示されるものから選ばれる原子団が上げられる。
【0032】
【化3】
(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、シリコン等の元素が結合していても良い。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基。)
【0033】
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性ブロック共重合体又はその水添物を得るために使用される変性剤としては、下記のものが挙げられる。
【0034】
例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が上げられる。
【0035】
上記の変性剤を反応させることにより、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤の残基が結合している変性ブロック共重合体が得られる。ブロック共重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させる場合、ブロック共重合体のリビング末端はビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックAでも共役ジエンを主体とする重合体ブロックBのいずれでも良いが、粘接着性組成物の保持率等を高めるためには重合体ブロックAの末端に結合していることが好ましい。
【0036】
本発明において、変性ブロック共重合体の水添物は、上記で得られた変性ブロック共重合体を水素添加することにより得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(a)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(b)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(c)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
【0037】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0038】
水添反応は好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1〜15MPa、より好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は好ましくは3分〜10時間、より好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0039】
本発明に使用される変性ブロック共重合体の水添物において、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水添率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が水添されていても良いし、一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が10%以上、70%未満、あるいは15%以上、65%未満、所望によっては20%以上、60%未満にすることが好ましい。
【0040】
更に、本発明では、水素添加変性ブロック共重合体において、水素添加前の共役ジエンに基づくビニル結合の水添率が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であることが、熱安定性に優れた粘接着性組成物を得る上で推奨される。ここで、ビニル結合の水添率とは、ブロック共重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエンに基づくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
【0041】
なお、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下が推奨される。水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
【0042】
本発明で使用する変性ブロック共重合体又はその水添物の重量平均分子量は、粘接着性組成物の保持力の点から3万以上、溶融粘度、加工性(塗布性能等)及び粘着付与剤との相容性の点から100万以下であることが好ましく、より好ましくは4万〜50万、更に好ましくは5〜30万である。
【0043】
本発明において、変性ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づくビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて知ることができる。また水添率も、同装置を用いて知ることができる。変性ブロック共重合体又はその水添物の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
【0044】
上記のようにして得られた変性ブロック共重合体又はその水添物の溶液は、必要に応じて触媒残渣を除去し、変性ブロック共重合体又はその水添物を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば重合後又は水添後の溶液にアセトン又はアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、変性ブロック共重合体又はその水添物の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、又は直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。なお、本発明で使用する変性ブロック共重合体又はその水添物には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0045】
本発明において、成分(1)の変性ブロック共重合体又はその水添物として、
(1−A)有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする1個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性ブロック共重合体又はその水添物20〜90wt%、好ましくは25〜80wt%、
(1−B)有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に官能基含有変性剤を付加反応させてなる変性ブロック共重合体又はその水添物80〜10wt%、好ましくは75〜20wt%、
を含む変性ブロック共重合体又はその水添物を使用することが、保持力、粘着性及び溶融粘度のバランスが高度に優れた粘接着性組成物を得る上で推奨される。
【0046】
これらの変性ブロック共重合体又はその水添物の重量平均分子量(GPCによる測定において、標準ポリスチレン換算でのピーク分子量)は、成分(1−A)が3万〜15万、好ましくは4万〜14万、更に好ましくは5万〜13万であり、成分(1−B)が10万〜30万、好ましくは12万〜28万、更に好ましくは14万〜26万であることが、保持力と粘着性のバランス及び溶融粘度の点でとりわけ好ましい。なお、成分(1−A)と成分(1−B)の平均分子量は、上記本発明で使用する変性ブロック共重合体又はその水添物の重量平均分子量で説明した範囲に設定する必要がある。
【0047】
次に本発明に使用される成分(2)の粘着付与剤としては、種類は特に限定はなく、ロジン系テルペン系樹脂、水添ロジン系テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の公知の粘着付与性樹脂が挙げられ、これらの粘着付与剤は二種類以上混合して使用してもよい。粘着付与剤の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。粘着付与剤の使用量としては、成分(1)成分100質量部に対して20〜400質量部の範囲で使用され、好ましくは50〜350質量部の範囲で使用される。その使用量が20質量部未満では、粘接着性組成物の粘着性を付与しにくく、また、400質量部を超えると粘接着性組成物の保持力の低下を起こし、いずれの場合も粘接着性特性を損ねる傾向を生じる。
【0048】
また本発明の粘接着性組成物は、公知のナフテン系、パラフィン系のプロセスオイル及びこれらの混合オイルを、軟化剤として使用することができる。軟化剤を添加することにより、粘接着性組成物の粘度が低下するので加工性が向上するとともに、粘着性が向上する。アロマ系オイルは、粘接着性組成物の色調、及び熱安定性を損ねる傾向があり、その使用量は成分(1)100質量部に対して0〜200質量部の範囲で使用される。200質量部を超えると粘接着性組成物の保持力を著しく損ねる傾向を生じる。
【0049】
本発明において、成分(3)の架橋剤は、変性ブロック共重合体又はその水添物(1)の官能基と反応性を有する官能基を有する架橋剤であり、好ましくはカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する架橋剤である。架橋剤を使用する場合の配合量は、成分(1)の変性ブロック共重合体100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.2〜7質量部である。架橋剤をかかる配合量で用いた場合、機械強度に優れた難燃性重合体組成物を得ることができる。なお、本発明においては、これら架橋剤は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
成分(3)の架橋剤として具体的なものは、カルボキシル基を有する架橋剤としては、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、カルバリル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0051】
酸無水物基を有する架橋剤としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、シス−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキシテトラヒドロキシフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等である。
【0052】
イソシアネート基を有する架橋剤としてはトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、多官能芳香族イソシアナート等である。
【0053】
エポキシ基を有する架橋剤としてはテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、エチレングリコールジグリシジル、プロピレングリコールジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等である。
【0054】
シラノール基を有する架橋剤としては成分(1)のブロック共重合体を得るために使用される変性剤として記載されているアルコキシシラン化合物の加水分解物等が上げられる。
【0055】
アルコキシシラン基を有する架橋剤としてはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジスルファン、エトキシシロキサンオリゴマー等である。
【0056】
本発明において特に好ましい架橋剤は、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその酸無水物、あるいは酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる基を2個以上有する架橋剤であり、例えば無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン等である。
【0057】
本発明においては、上記の成分(1)に成分(3)を予め反応させた二次変性ブロック共重合体(本発明では成分(1’)と規定)を成分(2)と配合して粘接着性組成物とすることができる。成分(1)に成分(3)を予め反応させる場合、成分(1)に結合されている官能基1当量あたり、成分(3)が0.3〜10モル、好ましくは0.4〜5モル、更に好ましくは0.5〜4モルである。成分(1)と成分(3)を予め反応させる方法は、後述する溶融混練方法や各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法等が挙げられる。このようにして得られた成分(1’)を成分(2)と配合して粘接着性組成物とする場合、成分(1’)と成分(2)の合計量100質量部に対して、更に成分(3)を0.01〜20質量部配合することができる。
【0058】
本発明において成分(1)と成分(3)を予め反応させる方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。本発明においては押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の点から好ましい。
【0059】
更に、本発明の粘接着性組成物において、必要により、酸化防止剤、光安定剤等の安定剤等を添加することもできる。
【0060】
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロビオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等を挙げることができる。
【0061】
また、光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシー3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0062】
上記の安定剤以外に、本発明の粘接着性組成物には必要により、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、低分子量ポリエチレンワックス、等のワックス類;無定形ポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂;天然ゴム;ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、本発明以外のスチレン−イソプレン系ブロック共重合体等の合成ゴムを添加しても良い。その他、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に記載されたものが挙げられる。
【0063】
本発明の粘接着性組成物は、公知の混合機、ニーダー等で、加熱下で均一に溶融混練する方法で調製される。
【0064】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
なお、ブロック共重合体の物性測定、水添触媒の調製、ブロック共重合体の調製、粘接着性組成物の物性測定は下記の方法で行った。
【0065】
1.ブロック共重合体の物性測定
以下の実施例において、ブロック共重合体及びその水添物の物性の測定は、次のようにして行った。
【0066】
(1)スチレン含有量
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
【0067】
(2)ビニル結合量及び水添率
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
【0068】
(3)分子量及び組成比
GPC(装置:島津製作所社製LC10、カラム:島津製作所社製Shimpac GPC805+GPC804+GPC804+GPC803)で測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。また、成分(1)が成分(1−A)と成分(1−B)からなる場合の組成比は、クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求めた。
【0069】
(4)未変性ブロック共重合体の割合
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、変性ブロック共重合体と低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液について、上記(3)で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性ブロック共重合体の割合と、シリカ系カラムGPC(装置はデュポン社製:Zorbax)で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性ブロック共重合体の割合を比較し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定した。未変性ブロック共重合体の割合は、シリカカラムへ吸着しなかったものの割合である。
【0070】
2.水添触媒の調製
下記のブロック共重合体の調製において、水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
【0071】
1)水添触媒I
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0072】
2)水添触媒II
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
【0073】
3.ブロック共重合体の調製
1)ポリマー1
攪拌機及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、予め精製したスチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を投入した。次いでn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンを添加し、70℃で1時間重合した後、予め精製した1,3−ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を加えて70℃で1時間重合した。その後、変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(以後、変性剤M1と呼ぶ)を重合に使用したn−ブチルリチウムに対して0.7モル反応させた。その後メタノールを添加し、次に安定剤として2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレートをブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。得られたブロック共重合体(ポリマー1)は、分子量6万でA−B構造のポリマー約45%と、分子量19.5万で(A−B)n−X構造(n=3、4の混合物)のポリマー約55%から構成され、スチレン含量が30wt%、スチレンブロック率が97%、ポリブタジエン部のビニル結合量が15%であった。なお、ポリマー1中に混在する未変性のブロック共重合体の割合は約35%であった。
【0074】
2)ポリマー2
変性剤M1の代わりに四塩化シリカを使用した以外はポリマー1と同様の方法でポリマー2を得た。
【0075】
3)ポリマー3
攪拌機及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、予め精製したスチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を投入した。次いでn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンを添加し、70℃で1時間重合した後、予め精製した1,3−ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を加えて70℃で1時間重合した。その後、変性剤として変性剤M1を重合に使用したn−ブチルリチウムに対して2.5モル反応させた。得られたブロック共重合体は、スチレン含量が30wt%、スチレンブロック率が97%、ポリブタジエン部のビニル結合量が36%であった。
上記で得られたブロック共重合体に、水添触媒IをTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を1時間行った。なお、水添反応において、得られるブロック共重合体の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータルの水添率が46%になるように水素量を調整した。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。得られたブロック共重合体(ポリマー3)は、分子量9万であった。なお、ポリマー3中に混在する未変性のブロック共重合体の割合は20%であった。
【0076】
4)ポリマー4
攪拌機及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、予め精製したスチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を投入した。次いでn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンを添加し、70℃で1時間重合した後、予め精製した1,3−ブタジエン80質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を加えて70℃で1時間重合し、さらにスチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合した。その後、変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以後、変性剤M2と呼ぶ)を重合に使用したn−ブチルリチウムに対して当モル反応させた。得られたブロック共重合体は、スチレン含量が20wt%、ポリブタジエン部のビニル結合量が42%であった。
上記で得られたブロック共重合体に、水添触媒IIをTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を1時間行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。得られたブロック共重合体(ポリマー4)は、分子量6万、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータルの水添率は98%であった。なお、ポリマー4中に混在する未変性のブロック共重合体の割合は10%であった。
ポリマー1〜4の特性を表−1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
5)ポリマー5
ポリマー4に、該ブロック共重合体に結合する官能基1当量あたり2モルの無水マレイン酸を架橋剤として配合し、30mmφ二軸押出機で230℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練してポリマーの二次変性ブロック共重合体を得た。
【0079】
4.粘接着性組成物の物性測定
粘接着性組成物の特性を以下の方法で測定した。
(1)軟化点
JIS−K2207に準じ、規定の環に試料を充填し、水中で水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速さで上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れたときの温度を測定した。
【0080】
次に、粘接着性組成物を溶融状態で取り出し、アプリケーターでポリエステルフィルムに厚さ50マイクロメートルになるようにコーティングし、粘着テープサンプルを作製し、粘接着特性を以下の方法で測定した。
【0081】
(2)粘着力
25mm幅の試料をステンレス板に張り付け、引き剥がし速度300mm/minで180度剥離力を測定した。
【0082】
(3)保持力
保持力は、JIS Z−1524に準じて、ステンレス板に25mm×25mmの面積が接するように粘着テープを貼り付け、60℃において1kgの荷重を与えて粘着テープがずれ落ちるまでの時間を測定した。
【0083】
実施例1、2及び比較例1
ブロック共重合体100質量部に対して、粘着付与剤としてアルコンM100(荒川化学製)を250質量部、軟化剤としてダイアナ プロセスオイルPW−90(出光興産製)を60質量部、架橋剤を表−2に示した配合比で配合し、180℃×2時間、1リットルの攪拌機付き容器で溶融混練してホットメルト型粘接着性組成物を得た。なお、各粘接着性組成物には、ブロック共重合体100質量部に対して、安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを1質量部配合した。各接着性組成物の物性測定結果を表−2に示した。
表−2から明らかなように、本発明で規定する範囲の粘接着性組成物は良好な軟化点、粘着力及び保持力を示し、バランスのとれた粘接着特性を有することが分かる。
【0084】
実施例3、4
粘着付与剤としてクリアロンP105(ヤスハラケミカル製)を使用する以外は実施例1と同様の方法で粘接着性組成物を作製し、その粘接着特性を表−2に示した。
【0085】
実施例5
100質量部のポリマー5に対して、粘着付与剤としてクリアロンP105(ヤスハラケミカル製)を300質量部、軟化剤としてダイアナプロセスオイルPW−90(出光興産製)を100質量部の配合比で配合し、実施例1と同様にしてホットメルト型粘接着性組成物を得た。得られた組成物の粘接着特性を表−2に示した。
【0086】
【表2】
【0087】
【発明の効果】
本発明の粘接着性組成物は、良好な溶融粘度、軟化点、ループタック、粘着力及び保持力を示し、粘接着特性において優れたバランス性能を有する。これらの特徴を生かして各種粘着テープ・ラベル類、感圧性薄板、感圧性シート、各種軽量プラスチック成型品固定用裏糊、カーペット固定用裏糊、タイル固定用裏糊等に利用でき、特に粘着テープ・ラベル用として有用である。
Claims (7)
- (1)有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤を付加反応させてなる変性ブロック共重合体又はその水添物を100質量部、
(2)粘着付与剤を20〜400質量部、
(3)該成分(1)の官能基部分と反応性を有する架橋剤を0.01〜20質量部、
を含む粘接着性組成物。 - (1')有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤を付加反応させてなる変性ブロック共重合体又はその水添物(1)に、該成分(1)の官能基部分と反応性を有する架橋剤(3)を、該官能基1当量あたり0.3〜10モル反応させた二次変性ブロック共重合体を100質量部、
(2)粘着付与剤を20〜400質量部、
を含む粘接着性組成物。 - 成分(1)、成分(2)及び成分(3)を溶融混練して得た請求項1記載の粘接着性組成物。
- 成分(1')と成分(2)を溶融混練して得た請求項2記載の粘接着性組成物。
- 変性ブロック共重合体又はその水添物(1)が、有機リチウム化合物を重合触媒として得た、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBからなるブロック共重合体のリビング末端に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤を付加反応させてなり、該ブロック共重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性ブロック共重合体又はその水添物である請求項1〜4のいずれかに記載の粘接着性組成物。
- 架橋剤(3)がカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する架橋剤である請求項1〜5のいずれかに記載の粘接着性組成物。
- 変性ブロック共重合体又はその水添物(1)が、下記式(1)〜式(14)から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性ブロック共重合体又はその水添物である請求項1〜6のいずれかに記載の粘接着性組成物。
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