JP4275877B2 - 小型艇の物品収納構造 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、艇体の前部にハンドルを設け、このハンドルの前方に表示パネルを取付け、この表示パネルの前方に物品収納箱を備えた小型艇の物品収納構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
ジェット推進艇は、艇体の後部にジェットポンプを取付け、このジェットポンプをエンジンで駆動することにより艇底から水を吸込み、吸込んだ水を後方に噴射して推進する船艇である。
ジェット推進艇として、例えば特開２０００−２３８６９３「水上オートバイ」が知られている。以下、この公報に示す図２の要部を次図に再掲（但し、符号は振り直す）してジェット推進艇を詳しく説明する。
【０００３】
図７は従来の物品収納構造を備えた小型艇の断面図であり、ジェット推進艇１００は、艇体１０１の前部１０１ａにハンドル１０２を配置し、このハンドル１０２の前方にスピードメータ１０３を備え、このスピードメータ１０３の前方に物入れボックス（物品収納箱）１０５を備え、この物品収納箱１０５の上端開口１０５ａをカバー（蓋）１０６で覆い、この蓋１０６の前端部１０６ａに蓋１０６を上下方向にスイング可能にヒンジを備え、蓋１０６の後端部１０６ｂに蓋１０６を閉位置にロックするラッチなどのロック部材を備える。
【０００４】
物品収納箱１０５によれば、ロック部材の施錠状態を解除し、ヒンジを軸にして蓋１０６をスイングして開位置まで持上げることで物品収納箱１０５の上端開口１０５ａを開けることができる。
また、ヒンジを軸にして蓋１０６をスイングして閉位置まで下げることで物品収納箱１０５の上端開口１０５ａを閉じることができる。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、物品収納箱１０５は、その上端開口１０５ａを艇体１０１の表面と略面一に配置しているので、上端開口１０５ａを覆う蓋は、艇体１０１の表面より上方に隆起した形状になる。このため、操縦者が艇体１０１の先端１０１ｂ近傍を見ようする場合には、操縦者が身体を起こして目線を高くする必要がある。
【０００６】
一方、ジェット推進艇１００の蓋１０６は、上端開口１０５ａから物品収納箱１０５内に海水が侵入することを防ぐためにシール性を高める必要がある。このため蓋１０６を強固な構造にする必要があり、蓋１０６は比較的重量物になる。
この重量物の蓋１０６を艇体１０１の表面から隆起して配置することで、ジェット推進艇１００の重心位置を低く抑える妨げになっていた。
【０００７】
そこで、本発明の目的は、小型艇の前方視界性をより一層好適に確保することができ、さらに小型艇の重心位置を下げることができる小型艇の物品収納構造を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項１は、艇体の幅方向中心線上にバータイプのハンドルを配置し、このハンドルの前方にゲージ類を表示する表示パネルを備え、この表示パネルの前方に物品収納箱を備え、この物品収納箱の上面を蓋で覆い、この蓋の前端部にヒンジを備えるとともに後端部に蓋をロックするロック部材を備えた小型艇において、前記表示パネルの前方で且つ、物品収納箱の後方に下方にへこんだ凹部を設け、この凹部に前記ロック部材に係止する係止部材を設けた小型艇の物品収納構造であって、前記ロック部材を前記後端部の裏面に備え、前記後端部を凹状湾曲に形成することにより、前記後端部と前記表示パネルとの間に、前記ロック部材を操作するために手を差込み可能な開口が形成され、前記表示パネルが前記艇体から上方に隆起された状態で前記ハンドルの前方に配置され、前記表示パネルの頂部から前方に向けて前傾斜面が下り勾配に傾斜され、前記表示パネルの前傾斜面に前記凹部が設けられるとともに、前記前傾斜面と前記蓋の後端部との間に前記開口が形成され、前記頂部が前記蓋の後端部の延長上に沿わせて設けられたことを特徴とする。
【０００９】
表示パネルの前方で且つ、物品収納箱の後方に下方にへこんだ凹部を設け、この凹部に係止部材を設けた。このため、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、操縦者の前方視界性をより一層好適に確保することができる。
加えて、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、小型艇の重心位置をより下げることができる。
さらに、ロック部材を蓋の後端部の裏面に備え、蓋の後端部を凹状湾曲に形成した。蓋の後端部と表示パネルとの間に開口を形成し、開口から差込み、ロック部材を操作することができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、本発明は小型艇に関するものであるが、以下ジェット推進艇を例に説明する。
図１は本発明に係る物品収納構造を備えた小型艇の側面図である。
ジェット推進艇１０は、艇体１１の前部１１ａに取付けた燃料タンク１４と、この燃料タンク１４の後方に設けたエンジン１５と、このエンジン１５の後方に設けたポンプ室１６と、このポンプ室１６に設けたジェットポンプ２０と、エンジン１５に吸気側を取付けるとともに排気側をポンプ室１６に取付けた排気管２４と、艇体１１の幅方向中心線上にバータイプの操舵ハンドル（ハンドル）２５を配置し、この操舵ハンドル２５の後方に配置したシート２７と、操舵ハンドル２５の前方に備えたスピードメータやゲージ類を表示する表示パネル２８と、この表示パネル２８の前方に備えた小型艇の物品収納構造３０とを備える。
【００１１】
ジェットポンプ２０は、艇底１２の開口１３から後方へ延びたハウジング２１を有し、このハウジング２１内にインペラ２２を回転自在に取り付け、インペラ２２をエンジン１５の駆動軸２３に連結したものである。
ジェットポンプ２０によれば、エンジン１５を駆動してインペラ２２を回転させることにより、艇底１２の開口１３から吸引した水をハウジング２１の後端開口を介して操舵ノズル２６から艇体１１の後方へ噴射することができる。
【００１２】
この船艇１０によれば、燃料タンク１４からエンジン１５に燃料を供給してエンジン１５を駆動し、このエンジン１５の駆動力を駆動軸２３を介してインペラ２２に伝え、インペラ２２を回転することにより艇底１２の開口１３から水を吸引し、吸引した水をハウジング２１の後端を通して操舵ノズル２６から噴射して推進することができる。
【００１３】
図２は本発明に係る小型艇の物品収納構造の側面図であり、操舵ハンドル２５の前方に表示パネル２８を備え、表示パネル２８の前方に小型艇の物品収納構造３０を備えた状態を示す。
表示パネル２８は、ケーシング２９の後端に開口２９ａを形成し、この開口２９ａに表示部２９ｂを設け、ケーシング２９の前端を前傾斜面２９ｃとし、この前傾斜面２９ｃを前方に向けて下り勾配に傾斜させ、この前傾斜面２９ｃの略中央に取付ブラケット２９ｄを形成したものである。
【００１４】
このように、前傾斜面２９ｃの略中央に取付ブラケット２９ｄを形成することで、取付ブラケット２９ｄを表示パネル２８の頂部２８ａから下方にへこんだ凹部とすることができる。この凹部となる取付ブラケット２９ｄには係止部材３１を取付けている。
【００１５】
艇体１１は、前部１１ａの上壁１１ｂを表示パネル２８の下方に配置し、この上壁１１ｂを艇体１１の先端１１ｃに向けて下り勾配に傾斜させ、上壁１１ｂの略中央に開口（上壁開口）１１ｄを形成し、この上壁開口１１ｄに物品収納構造３０の物品収納箱３２を嵌込ませるように形成したものである。
【００１６】
表示パネル２８の前方で且つ、物品収納箱３２の後方に下方にへこんだ凹部（すなわち、取付ブラケット）２９ｄを設け、この取付ブラケット２９ｄに係止部材３１を設けた。このため、係止部材３１に対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができる。
加えて、係止部材３１に対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができるので、ジェット推進艇１０の重心位置をより下げることができる。
【００１７】
小型艇の物品収納構造３０は、艇体１１の上壁開口１１ｄに物品収納箱３２を嵌込ませ、物品収納箱３２のフランジ３３を上壁開口１１ｄの周縁１１ｅに載せることにより、物品収納箱３２の上端開口（上面）３４が上壁１１ｂと略面一となるように物品収納箱３２を艇体１１に埋設し、この上端開口３４を蓋３５で覆い、この蓋３５の前端部３５ａにヒンジ３６を備えるとともに後端部３５ｂに蓋３５をロックするラッチ（ロック部材）３７を備える。
ヒンジ３６は、蓋本体４０の前端部４０ａにヒンジプレート３６ａを取付け、ヒンジプレート３６ａの先端の嵌合部３６ｂにロッド３６ｃを差込むことによりロッド３６ｃを介して艇体１１の先端１１ｃに回動自在に取付けるものである。
【００１８】
蓋３５は、物品収納箱３２の上端開口３４を塞ぐ蓋本体４０と、この蓋本体４０の前端部４０ａのヒンジプレート３６ａ及び蓋本体４０を保護する保護カバー４５と、この保護カバー４５を覆う化粧カバー５０とからなり、ヒンジプレート３６ａの先端に備えた嵌合部３６ｂをロッド３６ｃを介して艇体１１の先端１１ｃに回動自在に取付け、保護カバー４５の後端裏面にロック部材（ラッチ）３７を取付けたものである。
蓋３５を閉じてラッチ３７を係止部材３１に係止させることで、蓋３５を閉位置にロックすることができ、蓋本体４０で物品収納箱３２の上端開口３４を密閉することができる。
【００１９】
また、蓋本体４０の後端４０ｃに仕切壁４３を備え、この仕切壁４３の上端４３ａを保護カバー４５の突起４９に当接することにより、蓋本体４０と保護カバー４５との間の空間５４を後方の収容空間５５から仕切ることができる。
このため、蓋本体４０と保護カバー４５との間の空間５４に収容空間５５から海水が侵入することを阻止することができる。
【００２０】
この収容空間５５には、凹部となる取付ブラケット２９ｄを収容し、さらに、この収容空間５５には取付ブラケット２９ｄに取付けた係止部材３１や、この係止部材３１に係合するラッチ３７を収容する。
【００２１】
図３は本発明に係る小型艇の物品収納構造を構成する蓋の分解斜視図である。
蓋３５は、図２に示すように蓋本体４０、保護カバー４５及び化粧カバー５０を下から順に重ねた部材であって、蓋本体４０と保護カバー４５とをボルト５７・・・で一体に組付け、保護カバー４５と化粧カバー５０とを係止部材（図示しない）で一体に組付けることにより、蓋本体４０、保護カバー４５及び化粧カバー５０の３部材を一体に組付けたものである。
【００２２】
蓋本体４０は、外枠４１を略台形に形成し、外枠４１に沿ってシール材４２を備え、前端４０ａにヒンジプレート３６ａをボルト止めし、中央４０ｂを上方に隆起させ、後端４０ｃに仕切壁４３を備えた部材である。
ヒンジプレート３６ａの先端の嵌合部３６ｂにロッド３６ｃ（図２に示す）を差込むことで、ヒンジプレート３６ａを介して蓋本体４０を艇体１１の先端１１ｃ（図２に示す）にスイング自在に取付けることができる。
蓋本体４０の周縁１１ｅにシール材４２を取付け、このシール材４２を物品収納箱３２の上端開口３４のフランジ３３（図２に示す）に接触させることで、上端開口３４を確実に密閉することができる。
【００２３】
保護カバー４５は、上壁４６と左右の側壁４７，４８とで構成した部材で、左右の側壁４７，４８を艇体１１（図１に示す）の上方に外枠として露出させるように構成し、上壁４６の後端４６ａを凹状湾曲に形成するとともに、後端４６ａの裏面にラッチ３７（図２に示す）を取付けた部材である。
化粧カバー５０は、保護カバー４５の上壁４６をカバーする部材で、後端５１を凹状湾曲に形成した部材である。
【００２４】
図２に戻って、保護カバー４５の後端４６ａを凹状湾曲に形成するとともに、化粧カバーの後端５１を凹状湾曲に形成することで、保護カバー４５及び化粧カバー５０と表示パネル２８の前傾斜面２９ｃとの間に開口６０を形成し、この開口６０を収容空間５５に臨ませることで、開口６０から手を差込んでラッチ３７を操作することが可能になる。
【００２５】
次に、小型艇の物品収納構造１０の作用を図４〜図６に基づいて説明する。
図４は本発明に係る小型艇の物品収納構造の第１作用説明図であり、蓋３５を開ける状態を示す。
保護カバー４５及び化粧カバー５０と表示パネル２８との間に開口６０から手６２を入れて収容空間５５に差し込む。収容空間５５に差込んだ手６２でラッチ３７を操作することにより、ラッチ３７と係止部材３１との係合を解除する。この状態で、蓋３５の後端３５ｂを持上げることにより、ヒンジプレート３６ａのロッド３６ｃを軸にして矢印▲１▼の如く開放する方向にスイングする。
【００２６】
図５は本発明に係る小型艇の物品収納構造の第２作用説明図であり、蓋を開位置まで持上げた状態を示す。
蓋３５を開位置まで持上げることにより、蓋本体４０を物品収納箱３２の上端開口３４から上方に持上げることにより、上端開口３４を開けることができる。これにより、物品収納箱３２内に物品を収納することや、物品収納箱３２内から物品を取出すことができる。
【００２７】
図６（ａ），（ｂ）は本発明に係る小型艇の物品収納構造の第３作用説明図であり、（ａ）は従来技術のジェット推進艇１００を比較例として示し、（ｂ）は実施形態のジェット推進艇１０を実施例として示す。
（ａ）において、ジェット推進艇１００の物品収納箱１０５は、その上端開口１０５ａを艇体１０１の表面と略面一に配置しているので、上端開口１０５ａを覆う蓋１０６は、艇体１０１の表面より上方に隆起した形状になる。
このため、操縦者が艇体１０１の先端１０１ｂ近傍を見ようする場合には、操縦者が身体を起こして目線１１０を高くする必要がある。
加えて、蓋１０６を艇体１０１の表面から隆起して配置することで、ジェット推進艇１００の重心位置Ｇ１を低く抑えることが難しい。
【００２８】
（ｂ）において、ジェット推進艇１０は表示パネル２８の前方で且つ、物品収納箱３２の後方に下方にへこんだ凹部（すなわち、取付ブラケット）２９ｄを設け、この取付ブラケット２９ｄに係止部材３１を設けた。このため、係止部材３１に対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができるので、操縦者の前方視界性をより一層好適に確保することができる。
【００２９】
加えて、取付ブラケット２９ｄに対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができるので、ジェット推進艇１０の重心位置Ｇ２をより下げることができる。このため、ジェット推進艇１０の操縦性をより一層高めることができる。
【００３０】
なお、表示パネル２８のケーシング２９を構成する前傾斜面２９ｃの略中央に取付ブラケット２９ｄを設けることで凹部を形成する例について説明したが、これに限らないで、その他の部材で凹部を形成することも可能である。要は、表示パネル２８の前方で且つ、物品収納箱３２の後方に下方にへこんだ凹部を設けることが可能な部材であればよい。
【００３１】
また、前記実施形態では、取付ブラケット２９ｄに取付ける係止部材３１や、保護カバー４５の後端裏面にラッチ３７を取付け、ラッチ３７を係止部材３１に係止させることで、蓋３５を閉位置にロックする例について説明したが、蓋３５を閉位置にロックするロック手段はこれに限らないで、小型艇に合せて適宜決めることができる。
【００３２】
さらに、前記実施形態では、小型艇としてジェットポンプで推進するジェット推進艇１０を例に説明したが、小型艇の推進手段はこれに限定するものではない。
【００３３】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項１は、表示パネルの前方で且つ、物品収納箱の後方に下方にへこんだ凹部を設け、この凹部に係止部材を設けた。このため、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、操縦者の前方視界性をより一層好適に確保することができる。
【００３４】
加えて、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、小型艇の重心位置をより下げることができる。
このように、小型艇の視界性をより好適に確保することができ、かつジェット推進艇の重心位置を下げることができるので、小型艇の操縦性をより一層高めることができる。
さらに、ロック部材を蓋の後端部の裏面に備え、蓋の後端部を凹状湾曲に形成した。蓋の後端部と表示パネルとの間に開口を形成し、開口から差込み、ロック部材を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る物品収納構造を備えた小型艇の側面図
【図２】本発明に係る小型艇の物品収納構造の側面図
【図３】本発明に係る小型艇の物品収納構造を構成する蓋の分解斜視図
【図４】本発明に係る小型艇の物品収納構造の第１作用説明図
【図５】本発明に係る小型艇の物品収納構造の第２作用説明図
【図６】本発明に係る小型艇の物品収納構造の第３作用説明図
【図７】従来の物品収納構造を備えた小型艇の断面図
【符号の説明】
１０…小型艇（ジェット推進艇）、１１…艇体、２５…ハンドル（操舵ハンドル）、２８…表示パネル、２８ａ…頂部、２９ｃ前傾斜部、２９ｄ…凹部（取付ブラケット）、３０…物品収納構造、３１…係止部材、３２…物品収納箱、３４…上面（上面開口）、３５…蓋、３５ａ…蓋の前端部、３５ｂ…蓋の後端部、３６…ヒンジ、３６ａ…ヒンジプレート、３７…ロック部材（ラッチ）、６０…開口。
【発明の属する技術分野】
本発明は、艇体の前部にハンドルを設け、このハンドルの前方に表示パネルを取付け、この表示パネルの前方に物品収納箱を備えた小型艇の物品収納構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
ジェット推進艇は、艇体の後部にジェットポンプを取付け、このジェットポンプをエンジンで駆動することにより艇底から水を吸込み、吸込んだ水を後方に噴射して推進する船艇である。
ジェット推進艇として、例えば特開２０００−２３８６９３「水上オートバイ」が知られている。以下、この公報に示す図２の要部を次図に再掲（但し、符号は振り直す）してジェット推進艇を詳しく説明する。
【０００３】
図７は従来の物品収納構造を備えた小型艇の断面図であり、ジェット推進艇１００は、艇体１０１の前部１０１ａにハンドル１０２を配置し、このハンドル１０２の前方にスピードメータ１０３を備え、このスピードメータ１０３の前方に物入れボックス（物品収納箱）１０５を備え、この物品収納箱１０５の上端開口１０５ａをカバー（蓋）１０６で覆い、この蓋１０６の前端部１０６ａに蓋１０６を上下方向にスイング可能にヒンジを備え、蓋１０６の後端部１０６ｂに蓋１０６を閉位置にロックするラッチなどのロック部材を備える。
【０００４】
物品収納箱１０５によれば、ロック部材の施錠状態を解除し、ヒンジを軸にして蓋１０６をスイングして開位置まで持上げることで物品収納箱１０５の上端開口１０５ａを開けることができる。
また、ヒンジを軸にして蓋１０６をスイングして閉位置まで下げることで物品収納箱１０５の上端開口１０５ａを閉じることができる。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、物品収納箱１０５は、その上端開口１０５ａを艇体１０１の表面と略面一に配置しているので、上端開口１０５ａを覆う蓋は、艇体１０１の表面より上方に隆起した形状になる。このため、操縦者が艇体１０１の先端１０１ｂ近傍を見ようする場合には、操縦者が身体を起こして目線を高くする必要がある。
【０００６】
一方、ジェット推進艇１００の蓋１０６は、上端開口１０５ａから物品収納箱１０５内に海水が侵入することを防ぐためにシール性を高める必要がある。このため蓋１０６を強固な構造にする必要があり、蓋１０６は比較的重量物になる。
この重量物の蓋１０６を艇体１０１の表面から隆起して配置することで、ジェット推進艇１００の重心位置を低く抑える妨げになっていた。
【０００７】
そこで、本発明の目的は、小型艇の前方視界性をより一層好適に確保することができ、さらに小型艇の重心位置を下げることができる小型艇の物品収納構造を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項１は、艇体の幅方向中心線上にバータイプのハンドルを配置し、このハンドルの前方にゲージ類を表示する表示パネルを備え、この表示パネルの前方に物品収納箱を備え、この物品収納箱の上面を蓋で覆い、この蓋の前端部にヒンジを備えるとともに後端部に蓋をロックするロック部材を備えた小型艇において、前記表示パネルの前方で且つ、物品収納箱の後方に下方にへこんだ凹部を設け、この凹部に前記ロック部材に係止する係止部材を設けた小型艇の物品収納構造であって、前記ロック部材を前記後端部の裏面に備え、前記後端部を凹状湾曲に形成することにより、前記後端部と前記表示パネルとの間に、前記ロック部材を操作するために手を差込み可能な開口が形成され、前記表示パネルが前記艇体から上方に隆起された状態で前記ハンドルの前方に配置され、前記表示パネルの頂部から前方に向けて前傾斜面が下り勾配に傾斜され、前記表示パネルの前傾斜面に前記凹部が設けられるとともに、前記前傾斜面と前記蓋の後端部との間に前記開口が形成され、前記頂部が前記蓋の後端部の延長上に沿わせて設けられたことを特徴とする。
【０００９】
表示パネルの前方で且つ、物品収納箱の後方に下方にへこんだ凹部を設け、この凹部に係止部材を設けた。このため、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、操縦者の前方視界性をより一層好適に確保することができる。
加えて、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、小型艇の重心位置をより下げることができる。
さらに、ロック部材を蓋の後端部の裏面に備え、蓋の後端部を凹状湾曲に形成した。蓋の後端部と表示パネルとの間に開口を形成し、開口から差込み、ロック部材を操作することができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、本発明は小型艇に関するものであるが、以下ジェット推進艇を例に説明する。
図１は本発明に係る物品収納構造を備えた小型艇の側面図である。
ジェット推進艇１０は、艇体１１の前部１１ａに取付けた燃料タンク１４と、この燃料タンク１４の後方に設けたエンジン１５と、このエンジン１５の後方に設けたポンプ室１６と、このポンプ室１６に設けたジェットポンプ２０と、エンジン１５に吸気側を取付けるとともに排気側をポンプ室１６に取付けた排気管２４と、艇体１１の幅方向中心線上にバータイプの操舵ハンドル（ハンドル）２５を配置し、この操舵ハンドル２５の後方に配置したシート２７と、操舵ハンドル２５の前方に備えたスピードメータやゲージ類を表示する表示パネル２８と、この表示パネル２８の前方に備えた小型艇の物品収納構造３０とを備える。
【００１１】
ジェットポンプ２０は、艇底１２の開口１３から後方へ延びたハウジング２１を有し、このハウジング２１内にインペラ２２を回転自在に取り付け、インペラ２２をエンジン１５の駆動軸２３に連結したものである。
ジェットポンプ２０によれば、エンジン１５を駆動してインペラ２２を回転させることにより、艇底１２の開口１３から吸引した水をハウジング２１の後端開口を介して操舵ノズル２６から艇体１１の後方へ噴射することができる。
【００１２】
この船艇１０によれば、燃料タンク１４からエンジン１５に燃料を供給してエンジン１５を駆動し、このエンジン１５の駆動力を駆動軸２３を介してインペラ２２に伝え、インペラ２２を回転することにより艇底１２の開口１３から水を吸引し、吸引した水をハウジング２１の後端を通して操舵ノズル２６から噴射して推進することができる。
【００１３】
図２は本発明に係る小型艇の物品収納構造の側面図であり、操舵ハンドル２５の前方に表示パネル２８を備え、表示パネル２８の前方に小型艇の物品収納構造３０を備えた状態を示す。
表示パネル２８は、ケーシング２９の後端に開口２９ａを形成し、この開口２９ａに表示部２９ｂを設け、ケーシング２９の前端を前傾斜面２９ｃとし、この前傾斜面２９ｃを前方に向けて下り勾配に傾斜させ、この前傾斜面２９ｃの略中央に取付ブラケット２９ｄを形成したものである。
【００１４】
このように、前傾斜面２９ｃの略中央に取付ブラケット２９ｄを形成することで、取付ブラケット２９ｄを表示パネル２８の頂部２８ａから下方にへこんだ凹部とすることができる。この凹部となる取付ブラケット２９ｄには係止部材３１を取付けている。
【００１５】
艇体１１は、前部１１ａの上壁１１ｂを表示パネル２８の下方に配置し、この上壁１１ｂを艇体１１の先端１１ｃに向けて下り勾配に傾斜させ、上壁１１ｂの略中央に開口（上壁開口）１１ｄを形成し、この上壁開口１１ｄに物品収納構造３０の物品収納箱３２を嵌込ませるように形成したものである。
【００１６】
表示パネル２８の前方で且つ、物品収納箱３２の後方に下方にへこんだ凹部（すなわち、取付ブラケット）２９ｄを設け、この取付ブラケット２９ｄに係止部材３１を設けた。このため、係止部材３１に対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができる。
加えて、係止部材３１に対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができるので、ジェット推進艇１０の重心位置をより下げることができる。
【００１７】
小型艇の物品収納構造３０は、艇体１１の上壁開口１１ｄに物品収納箱３２を嵌込ませ、物品収納箱３２のフランジ３３を上壁開口１１ｄの周縁１１ｅに載せることにより、物品収納箱３２の上端開口（上面）３４が上壁１１ｂと略面一となるように物品収納箱３２を艇体１１に埋設し、この上端開口３４を蓋３５で覆い、この蓋３５の前端部３５ａにヒンジ３６を備えるとともに後端部３５ｂに蓋３５をロックするラッチ（ロック部材）３７を備える。
ヒンジ３６は、蓋本体４０の前端部４０ａにヒンジプレート３６ａを取付け、ヒンジプレート３６ａの先端の嵌合部３６ｂにロッド３６ｃを差込むことによりロッド３６ｃを介して艇体１１の先端１１ｃに回動自在に取付けるものである。
【００１８】
蓋３５は、物品収納箱３２の上端開口３４を塞ぐ蓋本体４０と、この蓋本体４０の前端部４０ａのヒンジプレート３６ａ及び蓋本体４０を保護する保護カバー４５と、この保護カバー４５を覆う化粧カバー５０とからなり、ヒンジプレート３６ａの先端に備えた嵌合部３６ｂをロッド３６ｃを介して艇体１１の先端１１ｃに回動自在に取付け、保護カバー４５の後端裏面にロック部材（ラッチ）３７を取付けたものである。
蓋３５を閉じてラッチ３７を係止部材３１に係止させることで、蓋３５を閉位置にロックすることができ、蓋本体４０で物品収納箱３２の上端開口３４を密閉することができる。
【００１９】
また、蓋本体４０の後端４０ｃに仕切壁４３を備え、この仕切壁４３の上端４３ａを保護カバー４５の突起４９に当接することにより、蓋本体４０と保護カバー４５との間の空間５４を後方の収容空間５５から仕切ることができる。
このため、蓋本体４０と保護カバー４５との間の空間５４に収容空間５５から海水が侵入することを阻止することができる。
【００２０】
この収容空間５５には、凹部となる取付ブラケット２９ｄを収容し、さらに、この収容空間５５には取付ブラケット２９ｄに取付けた係止部材３１や、この係止部材３１に係合するラッチ３７を収容する。
【００２１】
図３は本発明に係る小型艇の物品収納構造を構成する蓋の分解斜視図である。
蓋３５は、図２に示すように蓋本体４０、保護カバー４５及び化粧カバー５０を下から順に重ねた部材であって、蓋本体４０と保護カバー４５とをボルト５７・・・で一体に組付け、保護カバー４５と化粧カバー５０とを係止部材（図示しない）で一体に組付けることにより、蓋本体４０、保護カバー４５及び化粧カバー５０の３部材を一体に組付けたものである。
【００２２】
蓋本体４０は、外枠４１を略台形に形成し、外枠４１に沿ってシール材４２を備え、前端４０ａにヒンジプレート３６ａをボルト止めし、中央４０ｂを上方に隆起させ、後端４０ｃに仕切壁４３を備えた部材である。
ヒンジプレート３６ａの先端の嵌合部３６ｂにロッド３６ｃ（図２に示す）を差込むことで、ヒンジプレート３６ａを介して蓋本体４０を艇体１１の先端１１ｃ（図２に示す）にスイング自在に取付けることができる。
蓋本体４０の周縁１１ｅにシール材４２を取付け、このシール材４２を物品収納箱３２の上端開口３４のフランジ３３（図２に示す）に接触させることで、上端開口３４を確実に密閉することができる。
【００２３】
保護カバー４５は、上壁４６と左右の側壁４７，４８とで構成した部材で、左右の側壁４７，４８を艇体１１（図１に示す）の上方に外枠として露出させるように構成し、上壁４６の後端４６ａを凹状湾曲に形成するとともに、後端４６ａの裏面にラッチ３７（図２に示す）を取付けた部材である。
化粧カバー５０は、保護カバー４５の上壁４６をカバーする部材で、後端５１を凹状湾曲に形成した部材である。
【００２４】
図２に戻って、保護カバー４５の後端４６ａを凹状湾曲に形成するとともに、化粧カバーの後端５１を凹状湾曲に形成することで、保護カバー４５及び化粧カバー５０と表示パネル２８の前傾斜面２９ｃとの間に開口６０を形成し、この開口６０を収容空間５５に臨ませることで、開口６０から手を差込んでラッチ３７を操作することが可能になる。
【００２５】
次に、小型艇の物品収納構造１０の作用を図４〜図６に基づいて説明する。
図４は本発明に係る小型艇の物品収納構造の第１作用説明図であり、蓋３５を開ける状態を示す。
保護カバー４５及び化粧カバー５０と表示パネル２８との間に開口６０から手６２を入れて収容空間５５に差し込む。収容空間５５に差込んだ手６２でラッチ３７を操作することにより、ラッチ３７と係止部材３１との係合を解除する。この状態で、蓋３５の後端３５ｂを持上げることにより、ヒンジプレート３６ａのロッド３６ｃを軸にして矢印▲１▼の如く開放する方向にスイングする。
【００２６】
図５は本発明に係る小型艇の物品収納構造の第２作用説明図であり、蓋を開位置まで持上げた状態を示す。
蓋３５を開位置まで持上げることにより、蓋本体４０を物品収納箱３２の上端開口３４から上方に持上げることにより、上端開口３４を開けることができる。これにより、物品収納箱３２内に物品を収納することや、物品収納箱３２内から物品を取出すことができる。
【００２７】
図６（ａ），（ｂ）は本発明に係る小型艇の物品収納構造の第３作用説明図であり、（ａ）は従来技術のジェット推進艇１００を比較例として示し、（ｂ）は実施形態のジェット推進艇１０を実施例として示す。
（ａ）において、ジェット推進艇１００の物品収納箱１０５は、その上端開口１０５ａを艇体１０１の表面と略面一に配置しているので、上端開口１０５ａを覆う蓋１０６は、艇体１０１の表面より上方に隆起した形状になる。
このため、操縦者が艇体１０１の先端１０１ｂ近傍を見ようする場合には、操縦者が身体を起こして目線１１０を高くする必要がある。
加えて、蓋１０６を艇体１０１の表面から隆起して配置することで、ジェット推進艇１００の重心位置Ｇ１を低く抑えることが難しい。
【００２８】
（ｂ）において、ジェット推進艇１０は表示パネル２８の前方で且つ、物品収納箱３２の後方に下方にへこんだ凹部（すなわち、取付ブラケット）２９ｄを設け、この取付ブラケット２９ｄに係止部材３１を設けた。このため、係止部材３１に対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができるので、操縦者の前方視界性をより一層好適に確保することができる。
【００２９】
加えて、取付ブラケット２９ｄに対応させて物品収納箱３２の蓋３５を下方に下げることができるので、ジェット推進艇１０の重心位置Ｇ２をより下げることができる。このため、ジェット推進艇１０の操縦性をより一層高めることができる。
【００３０】
なお、表示パネル２８のケーシング２９を構成する前傾斜面２９ｃの略中央に取付ブラケット２９ｄを設けることで凹部を形成する例について説明したが、これに限らないで、その他の部材で凹部を形成することも可能である。要は、表示パネル２８の前方で且つ、物品収納箱３２の後方に下方にへこんだ凹部を設けることが可能な部材であればよい。
【００３１】
また、前記実施形態では、取付ブラケット２９ｄに取付ける係止部材３１や、保護カバー４５の後端裏面にラッチ３７を取付け、ラッチ３７を係止部材３１に係止させることで、蓋３５を閉位置にロックする例について説明したが、蓋３５を閉位置にロックするロック手段はこれに限らないで、小型艇に合せて適宜決めることができる。
【００３２】
さらに、前記実施形態では、小型艇としてジェットポンプで推進するジェット推進艇１０を例に説明したが、小型艇の推進手段はこれに限定するものではない。
【００３３】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項１は、表示パネルの前方で且つ、物品収納箱の後方に下方にへこんだ凹部を設け、この凹部に係止部材を設けた。このため、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、操縦者の前方視界性をより一層好適に確保することができる。
【００３４】
加えて、係止部材に対応させて物品収納箱の蓋を下方に下げることができるので、小型艇の重心位置をより下げることができる。
このように、小型艇の視界性をより好適に確保することができ、かつジェット推進艇の重心位置を下げることができるので、小型艇の操縦性をより一層高めることができる。
さらに、ロック部材を蓋の後端部の裏面に備え、蓋の後端部を凹状湾曲に形成した。蓋の後端部と表示パネルとの間に開口を形成し、開口から差込み、ロック部材を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る物品収納構造を備えた小型艇の側面図
【図２】本発明に係る小型艇の物品収納構造の側面図
【図３】本発明に係る小型艇の物品収納構造を構成する蓋の分解斜視図
【図４】本発明に係る小型艇の物品収納構造の第１作用説明図
【図５】本発明に係る小型艇の物品収納構造の第２作用説明図
【図６】本発明に係る小型艇の物品収納構造の第３作用説明図
【図７】従来の物品収納構造を備えた小型艇の断面図
【符号の説明】
１０…小型艇（ジェット推進艇）、１１…艇体、２５…ハンドル（操舵ハンドル）、２８…表示パネル、２８ａ…頂部、２９ｃ前傾斜部、２９ｄ…凹部（取付ブラケット）、３０…物品収納構造、３１…係止部材、３２…物品収納箱、３４…上面（上面開口）、３５…蓋、３５ａ…蓋の前端部、３５ｂ…蓋の後端部、３６…ヒンジ、３６ａ…ヒンジプレート、３７…ロック部材（ラッチ）、６０…開口。
Claims (1)
- 艇体の幅方向中心線上にバータイプのハンドルを配置し、このハンドルの前方にゲージ類を表示する表示パネルを備え、この表示パネルの前方に物品収納箱を備え、この物品収納箱の上面を蓋で覆い、この蓋の前端部にヒンジを備えるとともに後端部に蓋をロックするロック部材を備えた小型艇において、
前記表示パネルの前方で且つ、物品収納箱の後方に下方にへこんだ凹部を設け、この凹部に前記ロック部材に係止する係止部材を設けた小型艇の物品収納構造であって、
前記ロック部材を前記後端部の裏面に備え、
前記後端部を凹状湾曲に形成することにより、前記後端部と前記表示パネルとの間に、前記ロック部材を操作するために手を差込み可能な開口が形成され、
前記表示パネルが前記艇体から上方に隆起された状態で前記ハンドルの前方に配置され、
前記表示パネルの頂部から前方に向けて前傾斜面が下り勾配に傾斜され、
前記表示パネルの前傾斜面に前記凹部が設けられるとともに、前記前傾斜面と前記蓋の後端部との間に前記開口が形成され、
前記頂部が前記蓋の後端部の延長上に沿わせて設けられたことを特徴とする小型艇の物品収納構造。
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