JP4275810B2 - 液封防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のエンジン等を支持するために設けられるサブフレームと車体フレームとの間に設けられるサブフレームマウント等に使用して好適な液封防振装置に関する。
【0002】
【背景技術】
図10は従来のサブフレームマウントにおける断面構造を示す。このサブフレームマウントは、外筒1とその内側に同心配置された筒状の内側部材2と、これらの間に介在された弾性防振部材3を備え、弾性防振部材3の周囲に設けられて外周側に開口する一対の円弧状溝4,5を内側部材2の反対側へ延出する一対の弾性仕切壁6,7により分断するとともに、各円弧状溝4,5に円弧状部材8,9を嵌合して内部を液室10,11とし、ここに非圧縮性の公知液体を封入するとともに、オリフィス通路14で連通している。なお、弾性防振部材3には液室10,11に相当する部分が窓開き状に開口した円筒状の中間スリーブ30を一体に埋設してあり、その結果、弾性仕切壁6,7の先端部6a,7aは円弧状部材8,9に対して摺動不能に固定されている。
【0003】
この弾性仕切壁6,7を左右方向に一致させて車体へ取付け、液室10,11を前後方向に配設すると、弾性仕切壁6,7はその先端部6a,7aが固定されているため、前後方向の振動に対して剪断方向を主体とする弾性変形をして液室10,11の体積が変化し、その際の体積変動に伴って液室10,11内の液体がオリフィス通路14を移動することにより減衰吸収する。但し、前後方向の振動吸収はオリフィス通路14による減衰が主体となる。また、左右方向の振動に対しては液室10,11間の流体移動は関与せず、弾性仕切壁6,7の圧縮方向を主体とする弾性変形及び弾性防振部材3全体の変形によりこれを吸収する。
【0004】
図11は図10と異なり、弾性仕切壁6,7の各先端部6a,7aを固定せず、円弧状部材8,9の内面を摺動自在にした参考例であり、各先端部6a,7aはそれぞれ略楔形の自由端をなしている。このようにすると、左右方向の振動に対してボリュームの少ない先端側から圧縮変形して吸収するので、バネ定数が振動の大きさに応じて変化する可変バネレート特性を発揮する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図6のAはこれらの前後方向振動に対する荷重と変位量の関係を示し、比較的変位量の少ない(数mm)段階ではそれぞれバネ定数は一定であり、荷重と変位量は直線的に変化(線形変化という)するが、先端部6a,7aをそれぞれ摺動自在にした参考例の方がこれを固定した従来例に比べて明らかに低動バネになっている。
【0006】
一方、左右方向の振動に対しては図6のBに示すように、従来例が一定でかつ高いバネ定数であり、荷重と変位量の相関曲線は線形の変化を示すのに対して、参考例は、先端部6a,7aが略楔形のため、バネ定数がより小さくかつ可変であって、荷重と変位量の相関曲線は変位量が大きくなるに従って急激に荷重が増大する曲線的変化(非線形変化という)を示す。
【0007】
ところで、このような液封防振装置においては、一般的に低動バネ化の要請があり、そのためには弾性仕切壁6,7を上記参考例のように外筒1側と分離させることが効果的である。また、単に低動バネ化するだけでなく、入力振動の大きさに応じて次第にバネ定数が高くなるような可変バネレート特性を有することが望ましく、これも参考例のように先端部6a,7aを楔形にすれば達成できる。
【0008】
しかしながら、上記参考例でも実際の使用においてはまだ改善が必要である。すなわち、特に前後方向の振動に対して、乗り心地を改善するため比較的小変位量のときバネ定数が小さく、かつ変位量がある程度大きくなると急激にバネ定数を増大させて安定感のある振動吸収を可能とする可変バネレート特性を発揮することが望まれる。また、前後方向及び左右方向の各振動に共通して、先端部6a,7aを固着した従来例よりも低動バネでかつ先端部6a,7aを摺動自在とした参考例よりも高動バネとなるよう、従来例と参考例の中間の特性を得ることができるようにすることも望まれる。そこで本願発明はこのような要請の実現を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願の液封防振装置に係る第1の発明は、略筒状をなす外筒と、この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材と、この弾性防振部材の外周面へ開口するよう内側部材を挟んで反対側に形成された一対の液室凹部と、これら液室凹部の各開口部を覆う内面が円弧状の外周壁と、各液室凹部間を仕切るため内側部材を挟んだ対称位置に設けられる一対の弾性仕切壁と、これら液室凹部内に液体を封入して形成される一対の液室間を連通するオリフィス通路とを備えた液封防振装置において、前記一対の弾性仕切壁の各先端部を前記外周壁内面へ当接するとともに、この嵌合部内における弾性仕切壁の先端部側面とこれに対向する外周壁の間に弾性仕切壁の変形を許容する間隙を設け、前記弾性仕切壁の先端部を前記嵌合部内において摺動可能にしたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は上記第1の発明において、前記弾性仕切壁先端部の先端側部分のみを外周壁へ密に嵌合して固定したことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は上記第2の発明において、前記外周壁が、一つのリングを形成するように組合さる一対の円弧状部材で構成され、両円弧状部材の接続部に形成された凹部により前記嵌合部が形成されるとともに、弾性仕切壁の前記先端固定部分を両円弧状部材の接続部間で挟むことにより固定したことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は上記第1の発明において、前記弾性仕切壁の先端部を先細り状にしたことを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
第1の発明によれば、一対の弾性仕切壁の各先端部を前記外周壁内面へ当接するとともに、この嵌合部内における弾性仕切壁の先端部側面とこれに対向する外周壁の間に弾性仕切壁の変形を許容する間隙を設けたので、比較的小変位量の振動に対しては先端部が嵌合部内で弾性変形自在となり低動バネになる。その後ある程度変位量が大きくなると、嵌合部内の先端部は外周壁の嵌合部に弾性変形を規制されるためバネ定数が急激に増大する。
【0015】
したがって、可変バネレート特性を実現でき、かつ従来例の先端部固着タイプよりも低動バネにできるので、比較的変位量の小さな振動に対しては、小さなバネ定数を示して低動バネとなり、体感的に柔らかなバネ感を得ることができる。また、所定以上の大変位量を伴う振動に対して大きなバネ定数で吸収でき、乗り心地の向上と大変位量の振動に対する確実な吸収の両立を実現できる。
また、弾性仕切壁の先端部を前記嵌合部内において摺動可能にしたので、従来例と参考例の中間特性を得られるとともに、全体をより低動バネ化することができる。
【0016】
第2の発明によれば、弾性仕切壁先端部の先端側部分のみを外周壁へ密に嵌合固定したので、最初から先端が固着されているためバネ定数が比較的大きくかつ変位と荷重の関係は線形となる従来例、並びに先端部が略楔形をなすことによりバネ定数が小さくかつ変位と荷重の関係は非線形となる参考例に対して、これらの中間特性を得ることができる。また、先端部の固定部分によってシールを確実にでき、かつ弾性仕切壁先端部における外周壁との接続部に対する応力集中を緩和して耐久性を向上させることができる。
【0017】
第3の発明によれば、外周壁として一つのリングを形成するように組合さる一対の円弧状部材で構成したので、両円弧状部材の接続部に形成された凹部により前記嵌合部を形成できるとともに、弾性仕切壁の前記先端固定部分を両円弧状部材の接続部間で挟むことにより容易に固定できる。
【0019】
第4の発明によれば、弾性仕切壁の先端部を先細り状にしたので、弾性仕切壁が圧縮方向へ弾性変形するとき、可変バネレート特性を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて実施例を説明する。図1乃至図6は第1実施例に係る自動車用サブフレームマウントを示し、図1は、このサブフレームマウントの円弧状溝部分を通る横断面図、図2はそのC部拡大図、図3は全体の上面図、図4は図3の4−4線に沿う断面図(外筒は省略)、図5は組立時の斜視図、図6は前後方向及び左右方向の振動に対する弾性仕切壁の荷重と変位に対する関係を示す図である。なお、以下の説明において前記図9及び10と共通する部分については共通の符号を用いるものとする。
【0021】
まず、このサブフレームマウントの概略構造を説明する。このサブフレームマウントは、適宜金属からなる外筒1、その内側へ同心もしくは偏心配置される同様材料製で筒状等適宜形状の内側部材2及びこれらの間に介在して相互を弾性的に連結するゴムやエラストマー等の適宜公知材料よりなる弾性防振部材3を備える。
【0022】
図5に示すように、全体として略筒状をなす弾性防振部材3の周囲には、一対の半円弧状をなす円弧状溝4,5がそれぞれ弾性防振部材3の径方向(以下、単に径方向という)外方へ開放されて形成され、それぞれは内側部材2を挟んで径方向反対側へ延出する一対の弾性仕切壁6,7により分断されるとともに、各円弧状溝4,5には円弧状部材8,9が嵌合され、これにより液室10,11が形成されている(図1)。
【0023】
液室10,11内には非圧縮性の公知液体が封入されるとともに、円弧状部材8,9の各端部のうち対向する接続面12,13の各近傍部に形成された流体通路15a,15bを介して連通し、この流体通路15a,15bにより一つのオリフィス通路14が構成されている。
【0024】
これら円弧状部材8,9を弾性防振部材3へ取付けた小組体18(図5)は、外筒1内へ圧入され、外筒1の一端に設けられた突起19及び他端をカシメることにより、全体が一体化したサブフレームマウントとなる(図4)。
【0025】
次に、細部を説明する。弾性防振部材3は内側部材2と一体にその周囲へ形成され、このとき同時に円弧状溝4,5並びに弾性仕切壁6,7が一体に形成され、図1に示すように、弾性仕切壁6,7の径方向内側端部は内側部材2と一体となり、他端である先端部6a,7aは、それぞれ組立前状態では自由になっている。
【0026】
但し組立時には、図1に示すように先端部6a,7aが、円弧状部材8,9の接合部近傍に設けられている段部20,21,22,23によって形成された凹部へ嵌合して位置決めされる。
【0027】
先端部6aの側部には図2に示すようにシール突起6bが予め形成されており、円弧状部材8,9側へ液密に嵌合した状態で先端を当接して前後の液室10,11間を仕切るようになっている。なお、図示を省略してあるが先端部7a側も同様のシール構造を有する。
【0028】
図1に明らかなように、弾性仕切壁6,7の先端部6a,7aは組立時に、円弧状部材8,9の接合部近傍に設けられ段部20と22によって形成された凹部並びに段部21と23によって形成された凹部へそれぞれ嵌合して位置決めされ、各先端部6a,7aの先端側は拘束されて自由な摺動を規制されている。
【0029】
但し、各段部20,21,22,23の壁面のうちサブフレームマウントの半径方向と略平行になる径方向部分20a,21a,22a,23aは、先端部6a,7aの各側面に対して傾斜し、これらの各側面との間にサブフレームマウントの中心側へ向かって末広がり状に拡開する間隙25を形成し、先端部6a,7aの拘束された先端側を除く部分が凹部内で変形することを許容している(図2参照)。
【0030】
各円弧状部材8,9は、一つのリングを2分割したものに相当し、プラスチックや金属等、弾性防振部材3よりも硬質の適宜材料で構成されるが、本実施例では、プラスチックを用いて型成形によりそれぞれ略半円弧状に形成されている。
【0031】
この円弧状部材8,9を円弧状溝4,5の開放部へ弾性防振部材3の径方向外方より嵌合し、互いの端部を接続させて組合わせることにより一つの連続するリング状をなし、円弧状溝4,5の各開放部を覆うとともに弾性防振部材3の周囲へ取付けられる。
【0032】
図5中に示す符号8a,9aは、それぞれ円弧状部材8,9の外周部適宜位置に一体形成された位置決め突起であり、組立てたとき円弧状溝4,5に臨んで弾性防振部材3の外周部に形成されている位置決め凹部3aへ嵌合し(図4)、弾性防振部材3の周方向に対する円弧状部材8,9の回り止めになっている。
【0033】
この取付により、円弧状部材8の両端における接続面12と16は、それぞれ円弧状部材9の両端における接続面13と17へ接合するとともに、円弧状部材8,9の各接続端部のうち、接続面12,13近傍に設けられている流体通路15a,15bが連通接続するようになっている。
【0034】
円弧状部材8の両端における接続面12と16は、それぞれ円弧状部材9の両端における接続面13と17へ接合するとともに、各円弧状部材8,9の両端部内周側には段部20,21,22,23が形成され、このうち段部20と22で接続面12と16の接合部を跨ぐ一つの凹部を形成して先端部6aを嵌合可能とし、他端側の段部21と23も同様に先端部7aを嵌合可能とする一つの凹部を形成している。
【0035】
段部20と22が設けられている円弧状部材8,9の各接続端部には、これらの段部20,22に略沿って流体通路15a,15bが設けられている。
【0036】
各流体通路15a,15bは、それぞれ段部20,22に沿いながら周方向へ延びて一端が接続面12,13へ開口する部分と、それぞれの他端側で屈曲して内方へ延び、各一端が液室10又は11へ開放される部分で構成され、接続面12と13の接合部において連通接続している。
【0037】
これらの流体通路15a,15bは円弧状溝8,9における図の上面側へ開放された溝であり、円弧状部材8,9を成形する際、それぞれの成形型の型面にて同時に形成することができる。但し、成形後にドリル等を用いた後加工を施すなど、形成方法は任意に採用できる。
【0038】
なお、図1に明らかなように、円弧状部材8,9の他方側における各接続面16,17近傍の各接続端部には流体通路が形成されず、液室10,11はこの部分で連通していない。ただし、必要により流体通路15a,15bと同様のものを設けることができる。
【0039】
次に、本実施例の作用を説明する。このサブフレームマウントは、図1に示すように、弾性仕切壁6,7を車体の左右へ向けて配置し、この状態で使用すると、前後方向への振動に対しては、弾性仕切壁6,7の弾性変形により液室10,11の体積が変化し、その際の体積変動に伴って液室10,11内の液体がオリフィス14を介して移動することにより減衰吸収する。
【0040】
このとき、弾性仕切壁6,7は剪断方向へ弾性変形するが、先端部6a,7aはその各側面と、嵌合する円弧状部材8,9の凹部との間に間隙25があるためこの凹部内で変形可能である。したがって、図6のAに示すように、比較的変位量の小さな振動に対しては、従来例の固着タイプよりも小さなバネ定数を示し、体感的には柔らかなバネ感を得ることができる。
【0041】
また、所定の変位量Pより大きくなると、一側面が弾性仕切壁6,7の径方向部分20a,21a,22a,23aのいずれかへ当接し、これにより弾性仕切壁6,7の径方向における支持スパンが短くなるため、急激にバネ定数が増大し、所定以上の大変位量を伴う振動に対して安定感のある吸収が得られる。
【0042】
したがって、弾性仕切壁6,7に可変バネレート特性を与えることができ、乗り心地の向上と大変位量の振動に対する確実な吸収の両立を実現できる。但し、本実施例における弾性仕切壁6,7のバネ定数は、変位の全範囲において従来例より小さくかつ先端部6a,7aを摺動自在とする参考例より大きくなるよう、これらの中間的な値を維持し、各例における不足を補うことができる。
【0043】
一方、左右方向の振動が加わった場合には、液室10,11間の流体移動は関与せず、弾性仕切壁6,7の圧縮方向を主体とする弾性変形及び弾性防振部材3全体の変形によりこれを吸収する(但し、液室10,11の断面の大きさを適当に設定すれば内側部材2の左右移動により液体共振を発生させてさらに低動バネ化させることもできる)。
【0044】
この左右方向の振動による弾性仕切壁6,7の圧縮に伴って先端部6a,7aがその側面方向(すなわち図1の断面においてサブフレームマウントの周方向であり間隙25を埋める方向)へ膨張するが、この膨張が前記弾性仕切壁6,7の径方向部分20a,21a,22a,23aとの間隙内にあるときはバネ定数が小さく圧縮が比較的容易になる。
【0045】
その後、先端部6a,7aの膨張が前記間隙25を埋めて径方向部分20a,21a,22a,23aのいずれかと接触する所定の変位量Qになると、圧縮に対する抵抗が生じるので、弾性仕切壁6,7のバネ定数が急激に増大する。したがって、左右方向の振動に対しても可変バネレート特性を得ることができる。
【0046】
なお、最初から先端が固着されているためバネ定数が比較的大きくかつ変位と荷重の関係は線形となる従来例、並びに先端部6a,7aが略楔形をなすことによりバネ定数が小さくかつ変位と荷重の関係は非線形となる参考例に対して、本実施例は前後方向の振動に対するときと同様にこれらの中間特性を得ることができる。
【0047】
さらに本実施例では、半円弧状をなす一対の円弧状部材8,9の接合部に設けられた凹部へ先端部6a,7aを嵌合させたので、先端部6a,7aの先端側を円弧状部材8,9の接合部で挟むことにより容易に固定できる。またこの固定部は先端部6a,7aを円弧状部材8,9側と固着一体化して連結するものではないから、この接続部に対する応力集中を緩和でき、その結果、先端部6a,7aさらにはサブフレームマウント全体の耐久性を向上させることができる。
【0048】
そのうえ、先端部6aが嵌合する凹部近傍で一対の流体通路15a,15bが接続するが、先端部6aは円弧状部材8,9の各段部20,22へ当接するとともに、シール突起7bを備えて凹部内へ嵌合するので、隣り合う液室10,11間を効率的かつ確実にシールできる。
【0049】
図7は第2実施例に係る弾性仕切壁6の先端部6a側を示し、ほぼ図2に相当する部分図である。なお、この実施例では先端部6aの構造とこれを嵌合する凹部が相違するだけなので、共通部分は同一符号を用いるものとし、言及しない部分は前実施例と同様構造である(以下の実施例も同様)。
【0050】
この実施例では、先端部6aが先端側へ尖った略楔形の先細り状をなし、これが嵌合する凹部は一方の円弧状部材9側のみに設けられた略コ字状の段部22によって形成されている。先端部6aの先端頭部6cはこの凹部の底面壁部分22bを摺動自在になっている。したがって、弾性変形しない通常時の先端部6aは凹部に対して先端頭部6cのみで接触する。
【0051】
なお、先端頭部6cにはシールリップ6dが一体に設けられ、これが底面壁部分22bへ液密に摺接することにより、液室10,11間のシールを確実にしている。また、先端部7a側も同様の構造になっており、こちらの凹部は円弧状部材8側のみに設けられる。また、円弧状部材8と同9の接続部は弾性仕切壁の先端部6a,7aから周方向へずれた位置に設けられ、さらにオリフィス通路14は単一の流体通路で構成され、円弧状部材9側の凹部近傍のみに設けられている(図11参照)。
【0052】
このようにすると、前後方向の振動に対して先端部6aが凹部内を摺動自在となるから、さらに低動バネ化を実現できる。また、左右方向の振動に対しても、先端部6aが先細り状をなすため、入力振動の大きさに応じてバネ定数を変化させることができ、同様にバネ定数をさらに低くできるとともに変化が一層急な非線形特性にすることができる。したがって、前実施例に比べて体感的により柔らかいサブフレームマウントを得ることができる。
【0053】
図8は図1に対応した第3実施例に係る図である。この例では先端部6
aと7aの各断面幅W1及びW2は、一方が広く他方が狭くなるように相違させ(例えば、W1>W2)てある。
【0054】
なお、本実施例では、弾性仕切壁6,7の各断面幅は長さ方向で一定であり、弾性仕切壁6の幅は先端部6aの幅W1と、弾性仕切壁7の幅は先端部7aの幅W2とそれぞれ同じである。したがって、左右の弾性仕切壁6,7の幅は広狭に相違している。このようにすると、弾性仕切壁6,7の各振動吸収能力に顕著な差異を出すことができる。
【0055】
図9は前実施例に対してさらに、各先端部6aと7aが対応する各凹部へ嵌合する深さD1及びD2を左右で相違させることにより(例えば、D1<D2)、先端部6a,7aの各拘束量を相違させたものであり、このようにするとさらに左右の弾性仕切壁6,7の特性に顕著な相違を出すことができる。
【0056】
なお、本願発明は上記実施例に限定されず、種々に変形可能であり、例えば、用途して各種のエンジンマウントやサスペンション用ブッシュなどの自動車用各種防振部材等がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例に係るサブフレームマウントの液室を通る横断面図
【図2】 その一部を拡大した図
【図3】 全体の上面図
【図4】 図3の4−4線断面図
【図5】 その組立説明図
【図6】 前後及び左右方向の各振動に対する荷重と変位の関係を示す図
【図7】 第2実施例に係る図1の拡大部と同様の部位を示す部分図
【図8】 第3実施例に係る図1と同様の概略図
【図9】 第4実施例に係る図1と同様の概略図
【図10】従来例における図1と同様の概略図
【図11】参考例における図1と同様の概略図
【符号の説明】
1:外筒、2:内側部材、3:弾性防振部材、4:円弧状溝、5:円弧状溝、6:弾性仕切壁、6a:先端部、7:弾性仕切壁、7a:先端部、7b:シール突起、8:円弧状部材,9:円弧状部材、10:液室、11:液室、14:オリフィス通路、25:間隙
Claims (4)
- 略筒状をなす外筒と、この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材と、この弾性防振部材の外周面へ開口するよう内側部材を挟んで反対側に形成された一対の液室凹部と、これら液室凹部の各開口部を覆う内面が円弧状の外周壁と、各液室凹部間を仕切るため内側部材を挟んだ対称位置に設けられる一対の弾性仕切壁と、これら液室凹部内に液体を封入して形成される一対の液室間を連通するオリフィス通路とを備えた液封防振装置において、前記一対の弾性仕切壁の各先端部を前記外周壁内面へ当接するとともに、この嵌合部内における弾性仕切壁の先端部側面とこれに対向する外周壁の間に弾性仕切壁の変形を許容する間隙を設け、
前記弾性仕切壁の先端部を前記嵌合部内において摺動可能にしたことを特徴とする液封防振装置。 - 前記弾性仕切壁先端部の先端側部分のみを外周壁へ密に嵌合して固定したことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 前記外周壁が、一つのリングを形成するように組合さる一対の円弧状部材で構成され、両円弧状部材の接続部に形成された凹部により前記嵌合部が形成されるとともに、弾性仕切壁の前記先端固定部分を両円弧状部材の接続部間で挟むことにより固定したことを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
- 前記弾性仕切壁の先端部を先細り状にしたことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
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