本発明は、極低温冷却装置に係り、特に、核磁気共鳴測定装置(NMR装置)で使用される、電子品の一種である低温プローブヘッド内の照射コイル、受信コイル及び前置増幅器を冷却することにより、照射コイルまたは受信コイルのQ値とS/N比を高めることが可能な核磁気共鳴測定装置に使用する極低温冷却装置に好適なものである。
電子機器の一種である核磁気共鳴測定装置では、連続的に無線周波数信号電磁波を試料に照射するCW型と、パルス状の電磁波を試料に照射するパルスフーリエ型が存在するが、最近では後者のパルスフーリエ型NMR装置を指すことが多くなっている。なお、この明細書において、核磁気共鳴測定装置という場合は、パルスフーリエ型NMR装置を指すものとする。
核磁気共鳴測定装置に関する基本的構成については「NMRの書」(荒田洋治著、丸善刊、1100年)第III部測定技術に記載されている。同著によると、核磁気共鳴測定装置は、静磁場を発生する超電導磁石、内部に収納した試料に高周波パルス磁場を照射する照射コイル、試料から発せられる自由誘導減衰信号(FID信号)を受信する受信コイル、前記コイルを内部に備えた低温プローブヘッド、照射コイルに高周波電流を供給する高周波電源、自由誘導減衰信号を増幅する増幅器、信号を検波する検波器、検波器によって検出した信号を解析する解析装置等を有して構成される。
なお、照射コイルまたは受信コイルについては様々な核種や測定方法に対応するため複数のコイルを備える低温プローブヘッドがある。また、照射コイルと受信コイルはそれらの機能を併せ持っているコイルもある。これらコイルを総称して低温プローブヘッドコイルと称する。
前記「NMRの書」によれば、低温プローブヘッドとは、低温プローブヘッドコイルを超電導化し、極低温のヘリウムガスによって低温プローブヘッド内部を冷却する方式の低温プローブヘッドをいい、超電導体としては一般的には酸化物超電導体が用いられる。
低温プローブヘッドの利点は二つある。利点の1つは、回路の電気抵抗が低くなるため、コイルのQ値を高めることができることである。コイルのQ値Qは式(1)で表すことができる。
ここで、Lは回路のインダクタンス、Cはキャパシタンス、Rは電気抵抗である。式(1)によれば、電気抵抗Rが小さくなると、Q値Qが高くなることがわかる。
利点のもう1つは、低温にしたため、回路全体の熱雑音を減少させることができ、S/N比が向上することである。ノイズ電圧Vnは式(2)で表すことができる。
ここで、Kはボルツマン定数、Tは温度、Dfは周波数幅、Rは電気抵抗である。式(2)によれば、温度Tが低くなると、ノイズ電圧Vnは小さくなることがわかる。また、一般的な金属では温度Tが低くなると、電気抵抗Rも小さくなる。したがって、低温プローブヘッド内部を冷却、低温プローブヘッドコイルを超電導化することにより、ノイズ電圧Vnは電気抵抗Rの1/2乗以上で小さくすることができる。
核磁気共鳴測定装置では、冷凍機を電子品から離して設置することが行なわれる。その理由は、冷凍機の運転振動を電子品に伝えないためである。低温プローブヘッドが振動すると、ノイズの原因となるため、冷凍機と電子品との間の移送配管の主な配管部品は可撓性に富むベロー管を使用し、かつ距離を長くとって振動を吸収する構造がとられるのが一般である。
プローブヘッド内部を冷却して低温プローブヘッドを実現するための冷却技術としては、特開平10−332801号公報(特許文献1)、特開2001−153938号公報(特許文献2)に示されたものがある。これらによれば、冷凍機の運転振動を低温プローブヘッド側に伝搬することを防止するために、低温プローブヘッドを冷却する冷凍機で冷却される低温作動媒体(例えばヘリウムガス)の循環装置と低温プローブヘッドとを離して設置し、内部に低温作動媒体配管を有する断熱された移送配管で両者を連結しており、受信コイルの温度を低温作動媒体30K以下に冷却できる。
特開平10−332801号公報
特開2001−153938号公報
しかしながら、特許文献1では、断熱された移送配管が温度約77K用と温度約10K用の別々の2種類必要となり、装置コストが増加すると共に、移送管路への熱侵入が増加するという問題があった。そして、移送管路への熱侵入の増加によって、冷凍機の必要冷凍量が増加し、冷凍機が大型化し、装置コストが増加すると共に、冷凍機の消費電力が増加し、運転コストが増加するという問題を派生していた。
また、特許文献2では、断熱された移送管路において、温度約77K用と温度約10K用の2つの温度レベルの低温作動媒体の往復管路を内蔵する輸送管路として、4つの管路が必要となる。これらを同軸管路で多重円筒状管路で構成してそれぞれの管路間に真空断熱層を設けると、8重管構成が必要となる。これによって、装置コストが増加するとともに、移送管路の最外直径は非常に大きくなり、管路をフレキシブル管で構成しても曲げ半径が大きくなって曲げ難い移送管路となる。このため、低温プローブヘッドの設置室内への移送管路の配置がほぼ直線状にしか配置できず、設置室が狭い場合設置できない場合が生じる問題があった。
本発明の目的は、安価で、消費電力が少なく、据付性に優れた極低温冷却装置を提供することにある。
前述の目的を達成するために、本発明は、極低温に冷却される被冷却体を内蔵する第1真空容器と、温度レベルの異なる複数の冷却ステージを有する冷凍機と、前記複数の冷却ステージを内蔵する第2真空容器と、前記第1真空容器と前記第2真空容器との間で極低温度の作動媒体を移送する第1移送往路管及び第1移送復路管と、前記第1真空容器と前記第2真空容器との間で前記第1移送往路管及び前記第1移送復路管の作動媒体より低い温度レベルの作動媒体を移送する第2移送往路管及び第2移送復路管と、を備える極低温冷却装置において、フレキシブル管で形成し且つ内部を真空とした第2移送往路断熱管内に前記第2移送往路管を収納すると共に、フレキシブル管で形成し且つ内部を真空とした第2移送復路断熱管内に前記第2移送復路管を収納し、フレキシブル管で形成し且つ内部に気体を封入した熱シールド管内に、前記第1移送往路管、前記第1移送復路管、前記第2移送往路断熱管及び前記第2移送復路断熱管を、非同軸で且つそれぞれ独立して隙間を有するように収納し、フレキシブル管で形成し且つ内部を真空とした収納断熱管内に前記熱シールド管を収納したものである。
係る本発明におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記第2移送往路断熱管、前記第2移送復路断熱管、前記熱シールド管及び前記収納断熱管を軸方向断面が波型のベロー管としたこと。
(2)前記第2移送往路管を移送される作動媒体の温度レベルを5K以下として前記被冷却体を約5K以下に冷却すること。
(3)前記第2移送往路断熱管、前記第2移送復路断熱管及び前記収納断熱管の内部空間を連通して真空空間としたこと。
(4)熱シールド管内に封入する気体として熱伝導媒体であるヘリウムガスを用いたこと。
(5)前記第2移送往路管及び前記第2移送復路管の外周にポリアミド系合成繊維等のスペーサを螺旋状に巻きつけて、前記第2移送往路管及び前記第2移送復路管を、軸方向断面が波型のフレキシブル管で形成された前記第2移送往路断熱管及び前記第2移送復路断熱管の真空空間内にそれぞれ収納したこと。
(6)前記熱シールド管の外面に多層断熱層であるスーパーインシュレータを全周に巻回して前記熱シールド管を前記収納断熱管内に収納したこと。
(7)前記断熱収納管の両端部にスリーブを設け、そのスリーブの端部にフランジを設け、このフランジを、真空Oリングを介して、前記第1真空容器及び前記第2真空容器に設けられたフランジに連結して前記断熱収納管、前記第1真空容器及び前記第2真空容器のそれぞれの内部の真空空間を連通したこと。
(8)前記熱シールド管内の気体を封入した空間と、第2移送往路断熱管内の真空空間、第2移送復路断熱管内の真空空間及び前記収納断熱管内の真空空間とを隔離するように、前記熱シールド管の両端にフランジを設けたこと。
(9)前記(8)において、前記第1移送往路管、前記第1移送復路管、第2移送往路管及び第2移送復路管を前記熱シールド管のフランジを貫通して設け、貫通した前記第1移送往路管及び前記第1移送復路管の支持体と、貫通した第2移送往路管及び第2移送復路管に支持体とを別部材としたこと。
(10)前記第1真空容器内の真空空間側と前記収納断熱管内の真空空間側とを真空弁を介して配管で連結したこと。
(11)前記第1移送往路管、前記第1移送復路管、第2移送往路管及び第2移送復路管の少なくとも何れかの前記第1真空容器との接続部にガス吸着手段を備えたこと。
本発明によれば、安価で、消費電力が少なく、据付性に優れた極低温冷却装置を提供することができる。
以下、本発明の複数の実施例について図を用いて説明する。各実施例の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
まず、本発明の第1実施例の極低温冷却装置を図1から図4を用いて説明する。図1は本発明の第1実施例の極低温冷却装置を示す構成図、図2は図1の極低温冷却装置の移送管の断面図、図3は本実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部を示す図2のA−A線に沿った断面図、図4は図1の極低温冷却装置の低温プローブヘッドの構成図である。
本実施例の極低温冷却装置は、電子機器の一種である核磁気共鳴測定装置の冷却装置として用いられるものである。この極低温冷却装置は、従来技術の問題点の解決を図りつつ、装置の性能向上を図ったものであり、直径が小さく(すなわち、曲げ半径が小さく)曲げ易い、しかも2つの温度レベルの低温作動媒体用往復路管を共に内蔵した断熱された移送配管36を有するものである。
さらに、本実施例の極低温冷却装置は、移送する作動媒体の温度を5K以下の極低温にし、低温プローブヘッド10の冷却温度を5K以下(換言すれば、被冷却体の超伝導温度以下)にして、低温プローブヘッド10による計測精度を向上させるようにしている。すなわち、断熱された移送配管36において、温度約77K用と温度約5K用の2つの温度レベルの低温作動媒体の往復路管を共に内蔵し、これを非同軸管で構成することにより、移送配管36の最外直径を小さくして曲げ半径を小さくすることができ、曲げ易い移送配管36を実現している。このため、低温プローブヘッド10の設置室内への移送配管36の配置が曲線状に配置できるので、設置室が狭い場合でも移送配管36を曲げることにより容易に設置できる。しかも、断熱された移送配管36が1本で済むため、移送配管36への熱侵入が低減され、冷凍機の必要冷凍量を低減し冷凍機を小型化できる。
本実施例の核磁気共鳴測定装置は、1つまたは複数のNMR受信コイル及び照射コイルからなるプローブコイル50を備えたNMR低温プローブヘッド10を有する核磁気共鳴(NMR)測定用の測定装置であって、低温プローブヘッド10内にNMR受信コイルによって受信されるNMR信号を増幅するための1つ又は複数の前置増幅器51と、低温プローブヘッド10内のプローブコイル50と循環作動媒体とを熱交換させるコイル冷却用熱交換器11と、低温プローブヘッド10内に前置増幅器51と循環作動媒体とを熱交換させる前置増幅器用熱交換器21と、循環作動媒体を冷却及び圧縮できる冷却装置と、循環作動媒体を冷却装置から低温プローブヘッド10に移送できる第1移送往路管31と、循環作動媒体を低温プローブヘッド10から冷却装置に移送できる第1移送復路管32と、循環作動媒体を冷却装置から低温プローブヘッド10に移送できる第2移送往路管33と、循環作動媒体を低温プローブヘッド10から冷却装置に移送することができる第2移送復路管34とを備える。
冷却装置は、第1段熱交換器12を有する第1冷却ステージと、第2段熱交換器8を有する第2冷却ステージを有する単一の極低温冷凍機2を備えている。第1冷却ステージは第2冷却ステージの第2段温度より高い第1段温度を有している。冷却装置は、さらに、圧縮機6、第1向流式熱交換器13、第2向流式熱交換器7を備える。第1向流式熱交換器13、第2向流式熱交換器7では、第1、第2移送復路管31〜34内を流動する循環作動媒体間で熱交換する。
圧縮機6で加圧された、例えばヘリウムガス等の循環作動媒体は、常温で冷却装置に流入し、第1向流式熱交換器13の往路で第1向流式熱交換器13の復路内の低温の循環作動媒体と熱交換し、温度約58Kとなり第1移送往路管33に流入する。移送配管36出口から低温プローブヘッド10内に流入した循環作動媒体は、低温プローブヘッド10内の前置増幅器51及び低温プローブヘッド10内の輻射シールド42を冷却し、移送配管36中の第1移送復路管34に流入し、収納断熱管30内の熱シールド管83を間接的に冷却した後、真空容器1内の極低温冷凍機2の第1冷却ステージに熱的に一体化された第1段熱交換器4に流入し、約温度45Kに冷却される。
第1段熱交換器12を出た循環作動媒体は、第2向流式熱交換器7の往路に流入し、同第2向流式熱交換器7内の復路注の極低温の循環作動媒体と熱交換し、温度約7.5Kとなって第2向流式熱交換器7の往路を流出し、極低温冷凍機2の第2冷却ステージに熱的に一体化された第2段熱交換器8に流入し、第2冷却ステージにより温度約4.5Kに冷却され、第2移送往路管31に流入する。移送配管36出口から低温プローブヘッド10内に流入した循環作動媒体は、低温プローブヘッド10内のプローブコイル50と循環作動媒体を熱交換できるコイル冷却用熱交換器11に流入し、プローブコイル50を温度約5Kに冷却する。
冷却後、移送配管36中の第2移送復路管32に流入し、移送配管36を出た後、移送配管36内に設けた移送配管36内の熱シールド管83を間接的に冷却した後、第2向流式熱交換器7の復路に流入し当該第2向流式熱交換器7内の復路の循環作動媒体を冷却して第2向流式熱交換器7を低温状態で出て、第1向流式熱交換器13の復路に流入し、当該第1向流式熱交換器13内の往路の循環作動媒体を冷却して第1向流式熱交換器13を出て常温となり、圧縮機6に流入し、再度加圧されて常温の循環作動媒体となり、冷却装置内を循環する。
ここで、温度が3Kから5Kに達する極低温の第2移送往路管31及び第2移送復路32は移送配管36内を流動する間、常温から熱が侵入し循環作動媒体が上昇してしまうことを防止するため、第2移送往路管31もしくは第2移送復路32内の温度約58Kの循環作動媒体で冷却する熱シールド管83を設け、熱シールド管83で非接触的に取り囲まれるように第2移送往路管31及び第2移送復路32を配置している。
この熱シールド管83は、常温の真空容器となる第1ベロー管(収納断熱管)30内の真空空間に第1ベロー管30と同軸の第2ベロー管83で構成される。第2ベロー管83は、第1ベロー管30内の真空空間内に隔離形成され、第2ベロー管83内には伝導循環作動媒体の例えばヘリウムガスが静的に満たされている。第2ベロー管83内より外径がかなり小さな第2移送往路管31及び第2移送復路32は、第2ベロー管83外の真空空間から第2ベロー管83内を貫通して配置され、その貫通部は溶接等で気密性を有している。この構造により、第1移送往路管33もしくは第1移送復路34の寒冷で伝導循環作動媒体のヘリウムガスを冷却し、第2ベロー管83を冷却する。
熱シールド体の第2ベロー管83内には、第2ベロー管83内より外径が小さな第3ベロー管(第2移送往路断熱管)81A及び第4ベロー管(第2移送復路断熱管)81Bがそれぞれ第2ベロー管83とは非同軸に配置される。第3ベロー管81A及び第4ベロー管81Bは、常温の第1ベロー管30の真空空間から第2ベロー管83内を貫通して配置され、その貫通部は溶接等で気密性を有している。
第3ベロー管81A及び第4ベロー管81B内は、第1ベロー管30内の真空空間に連通されている。第3ベロー管81A及び第4ベロー管81Bも、第2ベロー管83の温度と同程度に冷却される。第3ベロー管81A内は真空空間であり、その真空空間に第3ベロー管81Aと同軸状態でスペーサを介して、第3ベロー管81Aの内径よりも小さな外径の第2移送往路管31を貫通して配置する。また、第4ベロー管81B内は真空空間であり、その真空空間にスペーサを介して第4ベロー管81Bと同軸状態で第4ベロー管81Bの内径よりも小さな外径の第2移送復路管32を貫通して配置する。
これにより、第2移送往路管31及び第2移送復路管32は熱シールド体の第2ベロー管83で熱的にシールドされるので、第2移送往路管31内の循環作動媒体の温度は上昇せず、低温プローブヘッド10内のプローブコイル50を温度約5K以下の極低温に冷却できる。これによって、プローブコイル50の熱雑音も小さく、計測精度を向上させた低温プローブヘッド10を実現することができる。
さらに、第2移送往復路管31、32を熱シールド体の第2ベロー管83内に非同軸状に断熱真空空間を介して配置できるので、第2ベロー管83を小径に構成でき、第2ベローを内蔵する第1ベロー管30を小径に構成できる。これによって、可撓性に優れた移送配管36を提供できる。したがって、低温プローブヘッド10の設置室内への移送配管36の配置が曲線状に配置できるので、設置室が狭い場合でも移送配管36を設置できる。しかも、断熱された移送配管36が1本で済むため、移送配管36への熱侵入が低減され、極低温冷凍機2の必要冷凍量を低減し冷凍機を小型化できる。
また、移送配管36の両端では極低温の第2移送往路管31及び第2移送復路管32を真空空間にて断熱的に常温の第1ベロー管30の一部から支持されている。第1ベロー管30の真空空間において、第1ベロー管30の内壁から少なくとも一部を低熱伝導率材料で製作した第1支持体を介して第2支持体を支持し、第2支持体に第1移送往路管33及び第1移送往路管34を固定する。更に、真空空間にて第2支持体を介し、かつ第1移送往路管33及び第1移送往路管34とは一部に低熱伝導率材料で製作した部材を介して支持される。本構造より、極低温の第2移送往路管31及び第2移送復路管32は、第1移送往路管33及び第1移送往路管34で冷却された第2支持体を介して常温の第1ベロー管30から支持されるので、常温の第1ベロー管30から極低温の第2移送往路管31及び第2移送復路管32に侵入する熱は、第1移送往路管33及び同復路の循環作動媒体で冷却吸収され、極低温の第2移送往路管31及び第2移送復路管32への熱侵入を小さくすることができる。このため、第2移送往路管31内の循環作動媒体の温度は上昇せず低温プローブヘッド10内のプローブコイル50を温度5K以下の温度に冷却できるので、コイルの熱雑音も小さく、計測精度を向上させた低温プローブヘッド10を実現することができる。
本実施例の極低温冷却装置について、図1から図4を参照しながらさらに具体的に説明する。
本実施例の極低温冷却装置において、循環作動媒体は、圧縮機6、第1向流式熱交換器13、第1移送往路管33、増幅器用熱交換器21、第1移送復路管34、第1段熱交換器12、第2向流式熱交換器7、第2段熱交換器8、第2移送往路管31、コイル冷却用熱交換器11、第2移送復路管32、第2向流式熱交換器7、第1向流式熱交換器13、圧力調整弁24、圧縮機6の順で循環される。
極低温冷凍機2は極低温冷凍機用圧縮機5により駆動され、第1冷却ステージ4は第1段熱交換器12と熱的に接続され、第2冷却ステージ3は第2段熱交換器8と熱的に接続されている。第1段熱交換器12は循環作動媒体を45Kまで冷却することができ、第2段熱交換器8は循環作動媒体を4.5Kまで冷却することができる。
第1向流式熱交換器13、第1段熱交換器12、第2向流式熱交換器7、第2段熱交換器8は、真空容器1内の輻射シールド41内部に設置されている。輻射シールド41は極低温冷凍機2の第1冷却ステージ4と熱的に接続されている。真空容器1内は真空であり、輻射シールド41の外側は多層断熱層であるスーパーインシュレータ(図示せず)が巻回されており、輻射シールド41内にある装置類への輻射熱を軽減している。圧力調整弁24は循環作動媒体が圧縮機6の吸入口側の室温環境に設置されており、開度は0%から100%まで任意に調整できる。なお、低温プローブヘッド10を構成する真空容器を第1の真空容器とすると、真空容器1は第2の真空容器となる。
移送配管36の内部構造を図2及び図3に示す。第2移送往路管31、第2移送復路管32、第1移送往路管33及び第1移送復路管34は、単一の断熱収納管30内の真空空間80に設置され、この真空断熱空間80で気体の対流、熱伝導、輻射熱により移送管路へ侵入する熱を低減している。
断熱収納管30は、軸方向断面が波型のフレキシブル管の真空断熱管で構成され、可撓性を有している。薄肉銅製で可撓性を有した第2移送往路管31及び第2移送復路管32は、軸方向断面が波型のフレキシブル管の第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bの真空空間内に、ポリアミド系合成繊維等のスペーサ82を螺旋状に巻きつけて配置される。スペーサ82は、第2移送往路管31及び第2移送復路管32がそれぞれ直接真空断熱管81に接触することを防止し、より温度が高い第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bから、より温度が低い第2移送往路管31及び第2移送復路管32に熱が侵入することを防止し、第2移送往路管31及び第2移送復路管32内を流動する循環作動媒体の温度が上昇することを防止する。軸方向断面が波型のフレキシブル管は、上述したベロー管のことである。
第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81B内の真空空間80は、断熱収納管30内の真空空間80に移送配管36端部で連通している。
第2移送往路管31、第2移送復路管32、第2移送往路断熱管81A、第2移送復路断熱管81B、第1移送往路管33及び第1移送復路管34は、薄肉銅製で軸方向断面が波型のフレキシブ管等の可撓性を有した熱シールド管83内に収納される。熱シールド管83内の空間85と真空空間80とは、熱シールド管83の両端のフランジ84で隔離されている。第2移送往路管31、第2移送復路管32、第2移送往路断熱管81A、第2移送復路断熱管81B、第1移送往路管33、及び第1移送復路管34は、フランジ84を貫通し、貫通部は溶接や銀ろう付けや接着等で気密性を有して一体化され、熱シールド管83内の空間85と真空空間80とを隔離している。
熱シールド管83内の空間85内には、熱伝導媒体として、ヘリウムガス等の熱伝導機能を有した気体を封入している。熱伝導媒体として、液体や、粉末を混合した液体や気体を使用しても良い。空間85内の第1移送往路管33の外表面には、ポリアミド系合成繊維製等のカバー86が断熱材として巻きつけられている。
熱シールド管83の外面には、収納断熱管30への輻射侵入熱を低減できるよう、多層断熱層であるスーパーインシュレータ35が全周に巻回されている。
第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bの両端部にはスリーブ87が設けられ、このスリーブ87がフランジ84両端に溶接等で一体化されている。
断熱収納管30の両端部にはスリーブ88が設けられ、そのスリーブ88の端部には簡易着脱用フランジ89が設けられている。簡易着脱用フランジ89は、真空Oリング90を介して、締結用ボルト穴91を有する真空フランジ92に一体化された簡易着脱用フランジ93とクランプ94で連結されている。真空容器1または低温プローブヘッド10と真空フランジ92とは、真空用のフランジ95aまたは95b、真空Oリングを介して、真空を確保しながら連結されている。
熱シールド管83、第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bは、主に空間85内の熱伝導媒体を介して、低温の第1移送復路管34で温度約78Kに冷却される。第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bは、第2移送往路管31、第2移送復路管32の熱シール体として機能し、第2移送往路管31、第2移送復路管32への熱侵入を低減する。
係る構成により、熱シールド管83内において、第2移送往路管31、第2移送復路管32、第2移送往路断熱管81A、第2移送復路断熱管81B、第1移送往路管33、及び第1移送復路管34がどの位置にあっても、熱シールド管83、第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bの温度はほとんど変わらないので、断熱収納管30を曲げた状態でも良好に第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bが冷却され、第2移送往路管31、第2移送復路管32への熱侵入を低減することができる。
一方、低温プローブヘッド10内部には輻射シールド42が設置されている。低温プローブヘッド10内部は真空であり、真空空間80と連通していても良い。輻射シールド42の外側は多層断熱層であるスーパーインシュレータが巻回されており、輻射シールド42内にある装置類への輻射熱を軽減している。輻射シールド42は、前置増幅器用熱交換器21と熱的に接続されており、第1移送往路管33内の循環作動媒体で低温に冷却される。
図4に低温プローブヘッド10内部の構造の一例を示す。上述したように、低温プローブヘッド10内部は、真空であり、輻射シールド42の外側は多層断熱層であるスーパーインシュレータが巻回されており、輻射シールド42内にある装置類への輻射熱を軽減している。輻射シールド42は前置増幅器用熱交換器21と熱的に接続されている。
また、前置増幅器51と前置増幅器用熱交換器21との間はプローブコイル冷却用伝熱部52を介して熱的に接続されている。プローブコイル50とコイル冷却用熱交換器11とは、プローブコイル冷却用伝熱部52を介して熱的に接続されている。さらに好ましくは、前置増幅器用熱交換器21は調整回路54と熱的に接続するとよい。なお、図4においては、プローブコイル50は照射用と受信用を兼用としたタイプを図示している。プローブコイル50は照射用と受信用を分けて複数配置してもかまわない。
プローブコイル50と調整回路54とは電気的に接続され、調整回路54と前置増幅器51とは電気的に接続され、調整回路54と高周波パルス入力端子55とは電気的に接続され、前置増幅器51とFID信号出力端子56とは電気的に接続されている。
高周波パルス磁場をサンプルに照射する場合、低温プローブヘッド10の外部の高周波電源により発生された高周波パルス電流はFID信号出力端子56を介して調整回路54を介してプローブコイル50に入り、磁場としてサンプル管53内のサンプルに照射される。この際、高周波パルス電流が前置増幅器51に入力されると前置増幅器51を破壊するおそれがあるので、調整回路54は高周波パルス電流が前置増幅器51に入らないような回路を構成している。サンプルの発するFID信号はプローブコイル50により受信され、調整回路54に電気信号として入り、前置増幅器51により増幅され、FID信号出力端子56を介して低温プローブヘッド10外部の増幅器、検波器、解析装置等に送られる。
調整回路54は高周波パルス電流が流れることにより受動的にスイッチングを行う回路でも、外部からのトリガー信号によりスイッチングを行う回路でもかまわない。後者の場合、PINダイオードスイッチや機械的高速度スイッチ等を採用する方法が挙げられる。調整回路54にはNMR低温プローブヘッド10内の回路の共鳴周波数やインピーダンス整合を行うための任意のキャパシタやインダクタ等を含むことが望ましい。さらに、一つのプローブコイル50で多重共鳴、すなわち、一つのコイルで複数の核の共鳴周波数の高周波パルス磁場を発生できるよう、キャパシタやインダクタを含む回路を調整回路54内に備えてもよい。
なお、調整回路54及び前置増幅器51は熱雑音を防ぐために低温に冷却されるが、特に熱雑音を考慮しない場合は常温環境に置いてもよい。また、図4においては、照射用と受信用を一つのプローブコイル50で動作させていたが、照射用コイルと受信用コイルを別に設置してもかまわない。
本実施例における断熱収納管30の長さは約3m、直径は約4cmであり、スーパーインシュレータ35の厚さ、枚数等を最適化した結果、表2に示す侵入熱量であることがわかった。
上述した条件で本実施例を動作させた場合の各部温度の測定結果を図1内に示す。これは、循環作動媒体圧力を圧縮機6の吐出口で1MPa、圧力調整弁24の直後で0.3MPaとし、循環作動媒体の流量を0.08g/sで運転した場合の温度測定結果である。図1からわかるようにコイル冷却用熱交換器11を約5Kにまで冷却することが可能であった。これにより、プローブコイル50を極低温に冷却することができ、Q値とS/N比を向上することが可能であった。また、5Kという温度は常圧中での液体ヘリウムの温度である4.2Kに近く、照射コイルまたは受信コイルとしてはY−123系、Bi−2223系またはBi−2212系酸化物系超電導体等はもちろん、MgB2、Nb3Al、Nb3Sn、NbTi等の金属系超電導体の安定使用も可能な温度である。
本実施例によれば、第2移送往路管31、第2移送復路管32は、別々の第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81B内に配置され、それぞれの第2移送往路断熱管81A、第2移送復路断熱管81B、第1移送往路管33及び第1移送復路管34は、非同軸で熱シールド管83内に収納されているので、空きスペースを最小にして配置できる。これによって、熱シールド管83の内径を小さくでき、結果的に断熱収納管30の外径を小さくできる。したがって、低温の熱シールド管83の外表面を小さくできるので、室温の断熱収納管30から輻射熱等で熱シールド管83に侵入する熱量を小さくできる。これによって、第1移送往路管33、第1移送復路管34内の循環作動媒体で冷却される熱シールド管83、第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bの壁温をより低温に冷却できる。したがって、第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bから第2移送往路管31及び第2移送復路管32に輻射熱等で侵入する熱量を小さくできるので、第2移送往路管31内の循環作動媒体の温度上昇を防止できる。したがって、プローブコイル50を極低温に冷却できるので、プローブコイル50を5Kにまで冷却することができ、Q値やS/N比をさらに向上できる効果がある。
また、本実施例によれば、断熱収納管30の外径を小さくできるので断熱収納管30の曲げ剛性を小さくできる。よって、許容曲げ半径を小さくし、曲げやすくでき、低温プローブヘッド10の設置室内への配置が自由にでき、設置室が狭い場合でも設置できる効果がある。また、曲げた状態でも良好に第2移送往路断熱管81A及び第2移送復路断熱管81Bが冷却され、第2移送往路管31、第2移送復路管32への熱侵入を低減することができる。このため、プローブコイル50を極低温に冷却できるのでプローブコイル50を5Kにまで冷却することができ、Q値やS/N比を向上できる効果がある。
また、本実施例によれば、冷却用作動循環作動媒体用の管路への熱侵入量を小さくできるので極低温冷凍機2の冷凍量を小さくでき、これによって極低温冷凍機2の消費電力を小さくして、冷却運転コスト低減できる。
次に、本発明の第2実施例について図5を用いて説明する。図5は本発明の第2実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部の断面図である。この第2実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
この第2実施例では、第1移送往路管33、第1移送復路管34、第2移送往路管31及び第2移送復路管32を断熱収納管30端部で支持もしくは固定する構造となっている。これは、温度が異なるそれぞれの管路が断熱収納管30端部でより高温の部分に接触し、熱侵入によりそれぞれの管路内の循環作動媒体の温度が上昇することを防止するためである。
それぞれの管路31〜34は、室温側の断熱収納管30の両端部に、簡易着脱用フランジ89を有するスリーブ88から支持もしくは固定される。図5は低温プローブヘッド10側に設けたフランジ95bに取り合うフランジ92側の支持構造を示している。
熱伝導率が大きな例えば銅で製作した熱シールドフランジ96は、熱伝導率が小さく且つ高い剛性を有する例えばガラス繊維入りのFRPで製作した第1支持円筒体97に固定一体化される。第1支持円筒体97は、その端部をスリーブ88の内面に接着材等で固定一体化されている。熱シールドフランジ96には穴98、99、100が設けられ、穴98には第1移送往路管33が貫通され、穴99には第1移送復路管34が貫通され、穴100には第2移送往路管31及び第2移送復路管32が貫通される。穴98と第1移送往路管33との間には、熱伝導率が小さく且つ高い剛性を有する例えばガラス繊維入りのFRPで製作したスリーブ101が挿入されている。穴98と第1移送往路管33とスリーブ101の接合面は、半田、銀ロー付け、接着等で固定され、熱シールドフランジ96両面の空間間で気密性を有している。また、穴99と第1移送復路管34との接合面は、半田、銀ロー付け、接着等で固定され、熱シールドフランジ96両面の空間間で気密性を有している。穴100と第2移送往路管31及び第2移送復路管32とは非接触状態を確保できるよう、穴100の穴径を大きくしている。
熱シールドフランジ96には第2支持円筒体102がボルトや接着材等で取り付けられている。第2支持円筒体102には穴104、105、106、107が設けられている。穴104、105にはそれぞれ第1移送往路管33及び第1移送復路管34が貫通され、穴との非接触状態を確保している。穴103には第2移送往路管31が貫通され、第2移送往路管31と穴とは接合面を半田、銀ロー付け、接着等で固定一体化され、第2支持円筒体102の両面の空間間で気密性を有している。
また、第2移送復路管32も穴103と同様な穴(図示せず)に貫通され、第2移送復路管32とこの穴とは接合面を半田、銀ロー付け、接着等で固定一体化され、第2支持円筒体102の両面の空間間で気密性を有している。
熱シールドフランジ96には、銅網線や銅製のリボン状の板109が第1移送復路管34と熱的に半田等で接続されており、熱シールドフランジ96は第1移送復路管34内の循環作動媒体で低温に冷却される。
熱シールドフランジ96には、熱伝導率の良い銅やアルミニュウム製の熱シールド円筒体106,107及びフランジ108が半田、銀ロー付けや接着剤による接着等で熱的に一体化され、熱シールドフランジ96で低温に冷却されている。
第1支持円筒体97、第2支持円筒体102及び熱シールド円筒体106,107の周りには積層断熱材35を巻きつけ輻射熱を防止している。
この第2実施例によれば、熱シールドフランジ96は主に熱的に一体化された第一移送往路管34で冷却されるので、低温に冷却される。したがって、熱シールドフランジ96から熱伝導率が小さな第2支持円筒体102に固定された第2移送往路管31及び第2移送復路管32は、熱シールドフランジ96を介して間接的に室温部の簡易着脱用フランジ89から支持固定されるが、室温から第2移送往路管31及び第2移送復路管32への伝導伝熱による侵入熱は、熱シールドフランジ96でシールドされるので極めて小さくなる効果がある。したがって、低温及び極低温管路を室温部から固定し管路の接触により第2移送往路管31及び第2移送復路管32内の循環作動媒体の温度が上昇することを防止できる効果がある。これによって、プローブコイル50を極低温に冷却できるので、NMR50を5Kにまで冷却することができ、Q値やS/N比を向上できる効果がある。
なお、この第2実施例では図には示していないが、低温プローブヘッド10側に設けたフランジ95bに取り合うフランジ92側の支持構造と低温プローブヘッド10側に設けたフランジ109に取り合う低温プローブヘッド10側取り合いフランジ(図示せず)の端部構造と同一である。
しかし、低温プローブヘッド側と取り合いフランジ側との端部構造において、以下の違いがあっても良い。すなわち、穴98と第1移送往路管33とスリーブ101の接合面は、半田、銀ロー付けや接着剤による接着等で接着されずに摺動する構造で、かつ、穴99と第1移送復路管34の接合面は、半田、銀ロー付けや接着等により固定されずに摺動する構造で、穴106、107と第2移送往路管31及び第2移送復路管32も貫通し摺動する構造であってもよい。
両端固定の構造においては、第1移送往路管33、第1移送復路管34、第2移送往路管31、第2移送復路管32、熱シールド管83は運転時低温になるので、室温の断熱収納管30の軸方向に熱収縮する。熱収縮量はそれぞれの移送管路で異なる。第1移送往路管33、第1移送復路管34、第2移送往路管31、第2移送復路管32の両端が固定されると熱収縮量はそれぞれの移送管路で異なるので、断熱収納管30軸長に移送管路が変形し、温度が異なる部位に移送管路が接触し移送復路管32内の循環作動媒体の温度が上昇する問題が生じる。
したがって、本構造によれば断熱収納管30の一方端部では第1移送往路管33、第1移送復路管34、第2移送往路管31、第2移送復路管32がスリーブ88からは固定されず、穴99、101、103内面を摺動するので、第1移送往路管33、第1移送復路管34、第2移送往路管31、第2移送復路管32の軸方向熱収縮量が異なっても各移送管は変形することなく、移送復路管32内の循環作動媒体の温度が上昇することが無いという効果を有する。
次に、本発明の第3実施例について図6を用いて説明する。図6は本発明の第3実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部の断面図である。この第3実施例は、次に述べる点で第2実施例と相違するものであり、その他の点については第2実施例と基本的には同一である。
この第3実施例では、スリーブ88から支持もしくは固定される熱伝導率が小さく且つ高い剛性を有する例えばガラス繊維入りのFRPで製作した第1支持円筒体110に、熱伝導率が大きな例えば銅で製作した熱シールドフランジ111を接着材等で第1支持円筒体11に固定一体化されている。スリーブ88と第1支持円筒体110との接合面は、接着材等で固定一体化されている。
熱シールドフランジ111には穴112、113、114が設けられている。穴112には第1移送往路管33が貫通され、穴113には第1移送復路管34が貫通され、穴114には第2移送往路管31及び第2移送復路管32が貫通されている。穴112と第1移送往路管33との接合面は、半田、銀ロー付けや接着剤による接着等で接着され、熱シールドフランジ111両面の空間間で気密性を有している。
また、穴113と第1移送復路管34の接合面は、半田、銀ロー付けや接着剤による接着等で接着され、熱シールドフランジ111両面の空間間で気密性を有している。穴114と第2移送往路管31及び第2移送復路管32とは非接触状態を確保できるよう、穴114の穴径を大きくしている。
熱シールドフランジ111には第2支持円筒体115が接着材で取り付けられている。この第2支持円筒体115には穴116が設けられている。穴116には第2移送往路管31が貫通され、第2移送往路管31と穴とは接合面を半田、銀ロー付け、接着等で固定一体化され、第2支持円筒体115の両面の空間間で気密性を有している。
また、第2移送復路管32も穴114と同様な穴(図示せず)に貫通され、第2支持円筒体115と同様な第2支持円筒体(図示せず)とは接合面を半田、銀ロー付け、接着等で固定一体化され、第2支持円筒体の両面の空間間で気密性を有している。
熱シールドフランジ111には、熱伝導率の良い銅やアルミニュウム製の熱シールド円筒体117及び熱シールド円筒体118が半田、銀ロー付けや接着剤による接着等で熱的に一体化されて熱シールドフランジ111で低温に冷却されている。
この第3実施例によれば、第2支持円筒体を第2移送往復路管31、32毎に設けるので、第2支持円筒体の外径を第2移送往復路管31、32の外径に合わせて小さくできる。したがって、図5の第2支持円筒体の軸方向断面積に比べ、図6の2個の第2支持円筒体の軸方向断面積を小さくすることができる。したがって、熱シールドフランジ111から熱伝導率が小さな第2支持円筒体115に固定された第2移送往路管31及び第2移送復路管32は、熱シールドフランジ111を介して間接的に室温部の簡易着脱用フランジ89から支持固定されるが、室温から第2移送往路管31及び第2移送復路管32への伝導伝熱による侵入熱は、2支持円筒体の軸方向断面積を小さくすることができるので、さらに小さくなる効果がある。プローブコイル50を極低温に冷却できるので、NMR50を5Kにまで冷却することができ、Q値やS/N比を向上できる効果がある。
また、この第3実施例によれば、スリーブ88、第1支持円筒体110、熱シールドフランジ111及び第2支持円筒体115の連結部、及び熱シールドフランジ111と第2支持円筒体115との貫通部は冶金的や接着剤等で気密性を有して一体化されているため、移送管路内部側と低温プローブヘッド10に内部とを熱シールドフランジ111、熱シールド円筒体117及び熱シールド円筒体118を配置させて真空隔離することができる。したがって、室温から第2移送往路管31及び第2移送復路管32への伝導伝熱による侵入熱を小さくして移送管路内部側と低温プローブヘッド10に内部と真空隔離できるので、低温プローブヘッド10の部品交換の場合に必要となる低温プローブヘッド10内部の大気開放作業時においても、移送管路内部側を真空の状態のまま保持できる。一般に低温プローブヘッド10内部の真空空間容積は、真空容器1、移送管路の真空空間容積に比べはるかに小さい。したがって、再度低温プローブヘッド10内部を低温冷却運転のために真空排気する場合、低温プローブヘッド10内部のみを真空排気すれば良く、短時間内に真空排気作業を完了し、短時間に低温運転できる効果がある。
次に、本発明の第4実施例について図7を用いて説明する。図7は本発明の第4実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部の断面図である。この第4実施例は、次に述べる点で第3実施例と相違するものであり、その他の点については第3実施例と基本的には同一である。
この第4実施例では、低温プローブヘッド10側に取り合うフランジ92の真空空間側とスリーブ88内部とを連通口119、120とを真空弁121を介して配管122で連結した構造にある。この第4実施例によれば、真空弁121を開にすることにより、第1実施例に示すように真空容器側の真空ポンプ130で、真空容器1、断熱収納管30、低温プローブヘッド10内を真空排気することができる。
したがって、この第4実施例によれば、低温プローブヘッド10の部品交換の場合に必要となる低温プローブヘッド10内部の大気開放作業後の再真空排気作業時においても、真空弁121を開にすることにより真空ポンプ130で再度低温プローブヘッド10内部を低温冷却運転のために真空排気することができ、低温プローブヘッド10専用の磁性部材を有する真空ポンプを、低温プローブヘッド10を取り付ける超電導磁石の強磁場域内に置かずに済み、かつ低温プローブヘッド10専用の電気モータを有する真空ポンプを設ける必要が無く真空排気を安全にでき、かつ装置コストを低減できる効果がある。
次に、本発明の第5実施例について図8を用いて説明する。図8は本発明の第5実施例の極低温冷却装置を示す構成図である。この第5実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
この第5実施例では、低温プローブヘッド10と移送配管36との接続部の第1移送往路管33及び第1移送復路管34、もしくは第2移送往路管31及び第2移送復路管32の接続部に活性炭等の吸着剤を内蔵した吸着手段である吸着器123を、気密性を有したパッキンを用いた分解が可能なネジ式の接続手段(図示せず)で連結する構造にある。
低温プローブヘッド10と移送管を分離、再組立する際には、循環作動媒体中に作業空間の大気から空気や水分等の不純ガス混入するが、本構造により、循環作動媒体が循環する間に循環作動媒体中の不純ガスは吸着器123で吸着することができる。
この第5実施例によれば、不純ガスが低温で固化し、第1移送往路管33及び第1移送復路管34、もしくは第2移送往路管31及び第2移送復路管32内に蓄積して縮流が生じ、流体抵抗となって循環作動媒体の循環流量が減少することを防止することができる。したがって、循環作動媒体でプローブコイル50を良好に冷却でき、低温プローブヘッド10内のプローブコイル50を温度5K以下の温度に冷却できるので、コイルの熱雑音も小さく、計測精度を向上させた低温プローブヘッド10を実現することができる。
吸着器123内の不純ガスが飽和状態となると新品との交換が必要となるが、不純ガスが混入するのは、低温プローブヘッド10の交換時に行う低温プローブヘッド10と移送管を分離する作業時であるので、その接続部に吸着器123を設置することで容易に吸着器123を交換することができる効果がある。
なお、以上の実施例では、冷凍機にギフォード・マクマホン式冷凍機を適用する場合で説明したが、適用する冷凍機が他の冷凍機、例えば、パルス管式冷凍機、ソルベー式冷凍機、スターリング式冷凍機、電子式冷凍機、ジュール・ソムソン弁を有する冷凍機等の冷凍機であっても同様の作用、効果を生じる。
また、以上の実施例では、核磁気共鳴測定装置のNMR受信・照射用のコイルを被冷却体とした場合で説明したが、被冷却体が磁気計測装置のSQUID素子、コンピュータの電子素子であっても同様の作用、効果を生じる。
本発明の第1実施例の極低温冷却装置を示す構成図である。
図1の極低温冷却装置の移送管の断面図である。
第1実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部を示す図2のA−A線に沿った断面図である。
図1の極低温冷却装置の低温プローブヘッドの構成図である。
本発明の第2実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部の断面図である。
本発明の第3実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部の断面図である。
本発明の第4実施例の極低温冷却装置における移送配管の端部接続部の断面図である。
本発明の第5実施例の極低温冷却装置を示す構成図である。
符号の説明
1…真空容器、2…極低温冷凍機、3…第2冷却ステージ、4…第1冷却ステージ、5…極低温冷凍機用圧縮機、6…圧縮機、7…第2向流式熱交換器、8…第2段熱交換器、10…低温プローブヘッド、11…コイル冷却用熱交換器、12…第1段熱交換器、13…第1向流式熱交換器、14…第3向流式熱交換器、21…前置増幅器用熱交換器、24、24a、24b…圧力調整弁、25…冷媒タンク、30…収納断熱管(第1ベロー管)、31…第2移送往路管、32…第2移送復路管、33…第1移送往路管、34…第1移送復路管、35…スーパーインシュレータ、36…移送管、50…プローブコイル、51…前置増幅器、52…プローブコイル冷却用伝熱部、53…サンプル管、54…調整回路、55…高周波パルス入力端子、81A…第2移送往路断熱管(第3ベロー管)、81B…第2移送復路断熱管(第4ベロー管)、82…スペーサ、83…熱シールド管(第2ベロー管)、86…カバー、88…スリーブ、96…熱シールドフランジ、96a…フランジ、96b…フランジ、97…第1支持円筒体、102…第2支持円筒体。