JP4274683B2 - 反射鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源ランプとともに照明器具を構成する反射鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種形式の反射鏡は、ガラス製の基体の表面に薄膜の反射膜を蒸着して構成されているもので、光源ランプの発熱に曝されて高温化されることから、高い耐熱性が要請される。このため、従来の反射鏡においては、基体を耐熱性に優れたパイレックス級ガラスにて構成しているのが一般である。
【0003】
近年、照明装置や映写機等においては、使用される光源ランプが高輝度化される傾向にあり、これらに使用される照明機器を構成する反射鏡には、一層高い耐熱性が要請される。
【0004】
かかる要請に対処すべく、特公平7−92527号公報には、反射鏡を構成する基体を、β−スポジュウメン固溶体やβ−ユークリプタイト固溶体を主要成分とする結晶化ガラスにて構成することが提案されている。かかる結晶化ガラスは、低膨張結晶化ガラスとして知られているもので、耐熱性に優れていることから、高い耐熱性の反射鏡を構成することができる。
【0005】
また、基体を他の結晶化ガラスで構成している例は、米国特許第5786286号明細書に提案されている。当該明細書にて提案されている基体は、この種形式の反射鏡の基体とは異なり、高熱には曝されることがない基体であって、ヘキサセルジアンを主結晶相とする結晶化度が約50%の結晶化ガラスで構成されていて、熱膨張係数α(×10−7/℃)が78〜88と極めて高いものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これらの基体においては、その結晶化ガラスを構成するガラス原料は高い融点を有するものであって、基体を成形する際には、ガラス原料を1500℃以上という高い温度で溶融しなければならない。また、基体の成形には、プレス成形、ロール成形、キャスト成形、ブロー成形等の成形方法が採られるが、これらの成形方法においては、ガラス原料を1500℃以上に溶融して成形することから、使用する成形型の型面が酸化して早期に表面荒れが発生して成形型の寿命を縮めることになる。
【0007】
特に、成形型の型面に表面荒れが発生すると、基体の表面に要求される設定された面粗度が得られない。この条件で、設定された面粗度の基体を成形する場合には、成形型の寿命は一層短いものとなり、成形型自体の交換に要する費用や交換作業の費用が大幅に増大することになる。
【0008】
本発明の第1の目的は、反射鏡の基体を、β−スポジュウメン固溶体やβ−ユークリプタイト固溶体からなる結晶化ガラスとは異なる成分を主要構成成分とし、当該結晶化ガラスと同等の耐熱性を有する結晶化ガラスにて構成して、耐熱性に優れた反射鏡を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、耐熱性に優れた反射鏡を提供する場合の、基体の成形に起因する上記した諸問題を解消することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は反射鏡に関するもので、当該反射鏡は、結晶化ガラスからなる基体の表面に薄膜の反射膜を蒸着してなる反射鏡であり、前記基体は、SiO、AlおよびBaOを主要構成成分とするとともにTiOを結晶核成分とするセルジアンを主結晶相とする結晶化ガラスであって、熱膨張係数α(×10−7/℃)が30〜45の範囲にあることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る反射鏡においては、前記基体は、少なくともKOおよびNaOを修飾成分として含有する構成とし、さらには、これらの成分の他に、P、B、Sb、LiO、ZnOおよびBiの群から選択される1または複数の成分を修飾成分として含有する構成とすることができる。また、前記基体を構成する結晶化ガラスの融点は、1450℃とすることができる。これらの基体においては、その表面粗度を0.03μm以下とすることができる。
【0011】
【発明の作用・効果】
本発明に係る反射鏡においては、基体の熱膨張係数α(×10−7/℃)が30〜45の範囲にある結晶化ガラスで構成されている。かかる結晶化ガラスは、低膨張の結晶化ガラスの範疇に属するもので耐熱性に優れている。このため、当該基体は、β−スポジュウメン固溶体やβ−ユークリプタイト固溶体を主要構成成分とする結晶化ガラスからなる基体と同等、またはこれに近似する高い耐熱性を有する。従って、当該基体を構成部材とする本発明に係る反射鏡は、耐熱衝撃性に優れたものとなり、高輝度化されて発熱が著しい高機能化された光源ランプに対応する反射鏡として使用することができるとともに、長期間の使用を可能とする。
【0012】
本発明に係る反射鏡において、当該基体を、SiO、Al、BaOおよびTiOを主要構成成分とし、かつ、少なくともKOおよびNaOを修飾成分とする結晶化ガラスで構成する場合には、これらの主要構成成分と修飾成分からなるガラス原料は、これらの両成分が相乗して1450℃以下という、上記した従来の結晶化ガラスのガラス原料の融点(1500℃以上)に比較して著しく低い融点となる。従って、当該基体の成形時のガラス原料の溶融温度を、従来のガラス原料の溶融温度(1500℃以上)に比較して著しく低温度に設定することができる。このため、当該基体を成形する際には、使用する成形型の型面の高温加熱に起因する酸化を抑制し得て、型面の早期の表面荒れを防止することができ、これにより、成形型の寿命を向上させることができる。
【0013】
また、成形型の寿命の向上により成形型の交換の頻度が低減し、交換用に準備する成形型の数を大幅に低減し得て、成形型の準備に要するコストや交換作業のコストを大幅に軽減することができる。さらには、成形型の型面の表面荒れを抑制し得るため、当該基体に要求されている表面の面粗度(0.03μm以下)に対応して設定される成形型の型面の面粗度を長期間維持することができ、面粗度が0.03μm以下に設定されている基体を容易に、かつ、長期間にわたって成形できる利点がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る反射鏡は、結晶化ガラス製の基体の表面に薄膜の反射膜を蒸着してなるもので、従来のこの種の反射鏡とは構造的には同じものであるが、本発明に係る反射鏡を構成する基体は、従来の反射鏡を構成する基体とは、ガラス原料、結晶構造、および熱膨張係数αを異にするものであり、かかる相違に起因して、従来の反射鏡、これを構成する基体に比較して種々の利点を有するものである。
【0015】
本発明者等は、この種の反射鏡を構成する基体の成形用原料について、セルジアンを結晶相とする結晶化ガラスを構成するSiO−Al−BaO系ガラスに着目して、ガラス原料、結晶構造、および熱膨張係数αの関係を種々検討すべく実験を試みた。図1のグラフは、各ガラス原料の成分割合と、溶解性および結晶化性を示すグラフであり、実験では、SiO、Al、およびBaOを主要構成成分(100wt%)とするとともにTiOを結晶核成分(14wt%:外添加)とするガラス原料を、1500℃で溶融した場合の結果である。この結果から、注目すべきゾーンとして、第1ゾーン(1)、第2ゾーン(2)、第3ゾーン(3)、第4ゾーン(4)、第5ゾーン(5)、第6ゾーン(6)および第7ゾーン(7)の7つのゾーンを見出した。
【0016】
これらのゾーンのうち、第1ゾーン(1)はガラス原料の1450℃での溶解性がやや悪いが結晶化性および耐熱性に良好な結果が期待し得る領域であり、第2ゾーン(2)はガラス原料の溶解性が良好な領域、第3ゾーン(3)はガラス原料の溶解性は良好であるがガラス原料が溶解と同時に飛散を生じる領域、第4ゾーン(4)はガラス原料の溶解性は良好であるが成形する際に即結晶化を生じる領域、第5ゾーン(5)はガラス原料の溶解性は良好であるが成形後の徐冷時に結晶化を生じる領域、第6ゾーン(6)はガラス原料の溶解性に難点がある領域、第7ゾーン(7)はガラス原料の溶解性に難点があり1450℃においてはガラス原料が溶解しない領域である。これらのゾーンのうちの良好な結果を予測し得る第1ゾーン(1)および第2ゾーン(2)の成分割合のガラス原料についてさらに検討した結果、図2に示すグラフの結果を得た。
【0017】
図2は、図1のグラフにおける第1ゾーン(1)および第2ゾーン(2)の領域のおけるガラス原料の成分割合の良否について検討したものである。この結果では、第2ゾーン(2)の領域の成分割合のガラス原料は1500℃における溶解性は良好であるが、成形後の結晶化処理(加熱処理)においては、900℃での加熱処理では成形物(基体に相当する成形物)が軟化変形して、肉厚の中央部が十分に結晶化しないことが判明した。また、第1ゾーン(1)の領域の成分割合のガラス原料は、1450℃における溶解性には若干難点はあるが1500℃における溶解性には大きな問題はなく、第1ゾーン(1)の領域では、結晶化性および耐熱性に良好なことが判明した。第1ゾーン(1)の領域でのSiO、Al、BaOの各成分の割合は、各成分の合計を100wt%した場合、SiOは50〜55wt%、Alは15〜20wt%、BaOは30〜35wt%である。
【0018】
また、本発明においては、上記した実験結果から、SiO−Al−BaO系ガラスに着目して、SiO、Al、BaOおよびTiOを基本組成とするガラス原料の融点を低減させること、および、同ガラス原料を成形素材とする成形体の結晶性、および、結晶後の耐熱性についてさらに検討したところ、上記した基本組成の成分を主要構成成分とし、かつ、少なくともKOおよびNaOを修飾成分とすることにより、融点が1500℃より著しく低い1450℃以下の融点のガラス原料を構成することができること見出した。このような低融点のガラス原料を成形素材とするガラス成形体は、加熱処理により、セルジアンを主結晶相とする結晶化ガラスに変換でき、熱膨張係数α(×10−7/℃)が30〜45の範囲にある耐熱性の高い基体を構成することができる。
【0019】
当該基体を構成する成分は、上記したごとく、SiO、Al、BaOおよびTiO(結晶核成分)を主要構成成分とし、少なくともKOおよびNaOを修飾成分とするものであるが、さらに、修飾成分として、P、B、Sb、LiO、ZnOおよびBiの群から選択される1または複数の成分を追加することが好ましい。
【0020】
これらのガラス原料は、通常のガラス成形と同様、溶融状態で成形型に供給されてプレス成形、ロール成形、キャスト成形、ブロー成形等の成形手段により、基体と同一形状のガラス成形体に成形される。ガラス成形体の成形時には、ガラス原料の溶融温度はガラス原料の融点の関係から1450℃以下に設定することができる。このようなガラス原料の溶融温度では、当該基体の成形工程での成形型の型面の酸化の助長を抑制し得て、成形型の型面の表面荒れを大幅に抑制することができる。このため、成形型の予め設定された型面の面粗度を長期間維持し得て、成形される基体の表面の面粗度を、基体に要求される0.03μm以下の面粗度に保持することができる。
【0021】
当該基体は、上記した割合のガラス原料を溶融して成形されたガラス成形体を熱処理して、ガラス成形体を構成するガラスを結晶化することにより形成される。ガラス成形体の結晶化は加熱炉で行い、一般的には、100℃〜300℃/hrの昇温速度でガラスの変形温度以下の温度、例えば600℃〜750℃に昇温して、この温度で1〜3時間熱処理し、引き続き900℃〜1100℃に昇温して、この温度で1〜3時間熱処理をする。
【0022】
かかる熱処理により、ガラス成形体を構成するガラスは微結晶の均一な生成により、セルジアンを主結晶相とする結晶化ガラスに変換され、ガラス成形体は結晶化ガラスからなる基体に変換される。当該基体には、通常の手段で、その表面に薄膜多層の反射膜が蒸着されて反射鏡に形成される。形成された反射鏡は、高い反射率で散乱光を反射するとともに赤外線を透過し、その際、結晶化ガラスの多結晶構造が透過赤外線を散乱させて、反射鏡の背面側に配設される部品の温度上昇を抑制する。
【0023】
本発明に係る反射鏡においては、主要構成部材である基体がセルジアンを主結晶相とする結晶化ガラスにて構成されていて、熱膨張係数α(×10−7/℃)が30〜45という低い範囲にあって高い耐熱性を有するため、反射鏡は耐熱衝撃性に優れて高い温度での使用が可能な優れた反射鏡となる。
【0024】
また、当該基体を構成するガラス原料としては、融点が1450℃以下のもを選択することができ、この場合には、基体を成形する際のガラス原料の溶融温度を1450℃以下という、通常のガラス原料の溶融温度である1500℃に比較して著しく低温度に設定することができる。
【0025】
このため、当該基体を成形する際に使用する成形型の型面は、1450℃以上の高温に曝されることがなくて、高温加熱に起因する酸化の助長を抑制し得て、型面の表面荒れを抑制することができる。また、これにより、成形型の寿命が向上して、成形型の交換に起因する成形型のコストや交換作業のコストを大幅に低減することができ、かつ、成形型の型面の表面荒れを抑制し得るため、当該基体に要求されている表面の面粗度(0.03μm以下)に対応して設定される成形型の型面の面粗度を長期間維持することができて、面粗度が0.03μm以下の基体を長期間の間成形できる利点がある。
【0026】
【実施例】
本実施例では、BaO・Al・2SiOの結晶相(セルジアン)を主結晶層とし、熱膨張係数α(×10−7/℃)が30〜45という低い範囲にある結晶化ガラスを得るためのガラス原料の溶解性の実験を、各成分割合のガラス原料について試みた。本実験では、SiO、Al、BaOおよびTiOを基本組成として、これに、KO、NaO、P、B、Sb、LiO、ZnOおよびBiの複数の成分を修飾成分として添加してなる各種の成分割合のガラス原料(1〜9)を用いて、これらのガラス原料を1450℃で溶融して得られたガラスのガラス特性を測定した。1450℃で溶融状態が良好なガラス原料の成分割合を表1および表2に示すとともに、これらの各ガラス原料からなるガラスの特性を表3および表4に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004274683
【0028】
【表2】
Figure 0004274683
【0029】
【表3】
Figure 0004274683
【0030】
【表4】
Figure 0004274683

【図面の簡単な説明】
【図1】ガラス原料を1500℃で溶融した場合の、各ガラス原料の成分割合と、溶解性および結晶化性を示すグラフである。
【図2】図1のグラフにおける第1ゾーンおよび第2ゾーンの領域のおけるガラス原料の成分割合の良否の検討結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 結晶化ガラスからなる基体の表面に薄膜の反射膜を蒸着してなる反射鏡であり、前記基体は、SiO、AlおよびBaOを主要構成成分とするとともにTiOを結晶核成分とするセルジアンを主結晶相とする結晶化ガラスであって、熱膨張係数α(×10−7/℃)が30〜45の範囲にあることを特徴とする反射鏡。
  2. 請求項1に記載の反射鏡において、前記基体は、少なくともKOおよびNaOを修飾成分として含有することを特徴とする反射鏡。
  3. 請求項1または2に記載の反射鏡において、前記基体は、KOおよびNaOと、P、B、Sb、LiO、ZnOおよびBiの群から選択される1または複数の成分とを修飾成分として含有することを特徴とする反射鏡。
  4. 請求項1〜3のずれか一項に記載の反射鏡において、前記基体の表面粗度は0.03μm以下であることを特徴とする反射鏡。
  5. 請求項1〜4のずれか一項に記載の反射鏡において、前記基体を構成する結晶化ガラスのガラス原料の融点は1450℃以下であることを特徴とする反射鏡。
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