JP4272842B2 - 結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高弾性率かつ高強度の結晶性熱可塑性樹脂フィルム並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶性熱可塑性樹脂のフィルムとしては、各種のものが公知であり、実用に供されている。高弾性率の結晶性熱可塑性樹脂フィルムを提供する技術として、例えば、特開平7−173302号公報には、結晶化核剤を添加したポリプロピレンを用いたポリプロピレンシートの製造方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公知技術のポリプロピレンシートは、それ以前のポリプロピレンシートに比して弾性率が高く、真空成形性などの二次加工性も改良されているが、未だ十分であるとは言えない。
【0004】
本発明の目的は、高弾性率かつ高強度の結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、該フィルム中の結晶のc軸の、前記フィルムのMD方向に対する配向係数は0.8以上であり、かつ重量平均分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン[A]と重量平均分子量700〜6000のポリオレフィンワックス[B]とを、[A]/[B]=90/10〜50/50の重量比にて配合し、溶融混練して得られるポリオレフィン系樹脂を少なくとも1対のロールを用いて圧延成形する圧延工程を有し、前記圧延工程におけるロールの表面温度Toと結晶性熱可塑性樹脂の融点Tmとが、下記条件を満たすことを特徴とする。
To>Tm
【0006】
かかる構成の製造方法により得られた熱可塑性樹脂フィルムは、高弾性率であり、しかも光沢の優れたフィルムである。またかかる構成の結晶性熱可塑性樹脂フィルムは、延伸や真空成形等の二次加工性に優れたフィルムである。
【0007】
前記ポリオレフィン系樹脂は、高強度のフィルムが得られることから、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを全樹脂中の10重量%以上含有するものである。分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンの量は、全樹脂中の20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが特に好ましい。
【0008】
ここに、ポリオレフィンの分子鎖長は、後述するGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の分子鎖長であり、より具体的には以下の手順で求められるパラメータである。
【0009】
すなわち、GPC測定の移動相としては、測定する未知試料も分子量既知の標準ポリスチレンも溶解することができる溶媒を使用する。まず、分子量が異なる複数種の標準ポリスチレンのGPC測定を行い、各標準ポリスチレンの保持時間を求める。ポリスチレンのQファクターを用いて各標準ポリスチレンの分子鎖長を求め、これにより、各標準ポリスチレンの分子鎖長とそれに対応する保持時間を知る。尚、標準ポリスチレンの分子量、分子鎖長およびQファクターは下記の関係にある。
分子量=分子鎖長×Qファクター
【0010】
次に、未知試料のGPC測定を行い、保持時間−溶出成分量曲線を得る。標準ポリスチレンのGPC測定において、保持時間Tであった標準ポリスチレンの分子鎖長をLとするとき、未知試料のGPC測定において保持時間Tであった成分の「ポリスチレン換算の分子鎖長」をLとする。この関係を用いて、当該未知試料の前記保持時間−溶出成分量曲線から、当該未知試料のポリスチレン換算の分子鎖長分布(ポリスチレン換算の分子鎖長と溶出成分量との関係)が求められる。
【0011】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂フィルムが延伸により容易に多孔性フィルムを与えることができるフィルムであるように、前記結晶性熱可塑性樹脂は、当該樹脂100重量部に対し、充填剤を10〜300重量部含むものであることが好ましい。
【0012】
なお、本発明において「フィルム」とは、厚さが5μm〜1mmのものを指し、いわゆるシートも包含する。
【0013】
また、本発明において、「結晶性熱可塑性樹脂」とは、X線解析において明確な結晶性を示す熱可塑性樹脂を意味し、より詳細には、広角X線回折により求めた結晶化度が10%以上である熱可塑性樹脂を意味する。尚、上記定義における「熱可塑性樹脂」には、単一種類の熱可塑性樹脂のみならず、二種類以上の熱可塑性樹脂の混合物も含まれる。すなわち、二種類以上の熱可塑性樹脂の混合物であって、該混合物の広角X線回折により求められた結晶化度が10%以上である混合物は、本発明における「結晶性熱可塑性樹脂」である。二種類以上の熱可塑性樹脂の混合物の場合、混合される熱可塑性樹脂の全てがそれぞれ結晶性を有する必要はない。すなわち、結晶性熱可塑性樹脂と非結晶性熱可塑性樹脂の混合物であっても、該混合物全体の結晶化度が10%以上であれば、その混合物は本発明における「結晶性熱可塑性樹脂」である。
【0014】
図1(A)は、後述するフィルムの製造方法における圧延工程を経て圧延成形された結晶性熱可塑性樹脂フィルム31がカレンダーロール33から送り出され、ロール36として巻き取られる状況を示した図であり、フィルム31の流れ方向がMD方向である。フィルム31の結晶化した部分Xを拡大した図1(B)に模式的に示す。この図に示すように、フィルムを構成する結晶性熱可塑性樹脂を構成する重合体分子35の80%以上の結晶のc軸(ラメラの厚さ方向の軸)がMD方向に配向している状態は、「結晶性熱可塑性樹脂フィルム中の結晶のc軸の、フィルムのMD方向に対する配向係数が0.8以上である」状態の一例である。
【0015】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂フィルムは、このように、フィルム中の結晶のc軸の、フィルムのMD方向に対する配向係数が0.8以上であることに特徴を有するものである。
【0017】
結晶性熱可塑性樹脂をフィルム化する方法としては、インフレーション法やTダイによる押出し法などがあるが、ロールを用いる圧延成形により結晶性熱可塑性樹脂をフィルム化することにより、フィルム中の結晶のc軸の、フィルムのMD方向に対する配向係数が0.8以上であり、高弾性率で延伸や真空成形等の二次加工性にも優れた結晶性熱可塑性樹脂フィルムを容易に得ることができる。
【0018】
特に、前記圧延工程におけるロールの表面温度Toと、結晶性熱可塑性樹脂の融点Tmとが、下記条件を満たすことが好ましい。
To>Tm
圧延工程においてロールの表面温度を結晶性熱可塑性樹脂の融点よりも高くして圧延することにより、高い厚み精度で高弾性率のフィルムを得ることができる。
【0019】
また、圧延工程におけるロールの表面温度Toは、その温度における前記結晶性熱可塑性樹脂の溶融張力MTと伸長度Lが以下の範囲となる温度であることが好ましい。
MT>98mN(10gf),かつ L>100%
このようにロールの表面温度を設定して圧延を行うことにより、高い厚み精度で高弾性率のフィルムを得ることができる。
【0020】
前記結晶性熱可塑性樹脂は、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを全樹脂中の10重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂を使用する。分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンの量は、全樹脂中の20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが特に好ましい。
【0021】
延伸により容易に多孔性フィルムを与えることができる結晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造するために、前記結晶性熱可塑性樹脂は、当該樹脂100重量部に対し、充填剤を10〜300重量部含むものであることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
結晶性熱可塑性樹脂を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体、および1種類以上のオレフィンとこのオレフィンと重合可能な1種類以上の重合性モノマーとの共重合体であるポリオレフィン樹脂などが挙げられる。単独で10%以上の結晶化度を有する結晶性熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンの単独重合体または二種類以上のオレフィンの共重合体、一種類以上のオレフィンとこのオレフィンと重合可能な一種類以上の重合成モノマーとの共重合体であるポリオレフィン樹脂等が挙げられる。単独では10%以上の結晶化度を有しない熱可塑性樹脂であっても、前記単独で10%以上の結晶化度を有する結晶性熱可塑性樹脂と適当な配合割合でブレンドすることにより本発明に適用することができる。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムは、リサイクル性、耐溶剤性に優れ、また、焼却してもダイオキシンを発生せず、環境を悪化させないなどの理由から、結晶性熱可塑性樹脂としてはポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0024】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂フィルムは、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン(以下、長分子鎖ポリオレフィンと記すことがある)を全樹脂中の10重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂で構成することがより好ましい。とりわけ、全樹脂中の長分子鎖ポリオレフィンの量は20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることが特に好ましい。このように長分子鎖ポリオレフィンを含有するポリオレフィン系樹脂で構成されたフィルムは、強度に顕著に優れる。
【0025】
加工の容易さを勘案すると、長分子鎖ポリオレフィンは、ポリオレフィンワックスと併用することが好ましい。
【0026】
かかるポリオレフィンワックスの具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン/α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)およびエチレン/酢酸ビニル共重合体のワックスが挙げられる。
【0027】
例えば、分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィンを10重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン[A]と、重量平均分子量700〜6000のポリオレフィンワックス[B]とを、[A]/[B]=90/10〜50/50の重量比にて配合し、溶融混練することにより得ることができる。
【0028】
ポリオレフィンの分子鎖長、重量平均分子鎖長、分子量および重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、特定の分子鎖長範囲または特定分子量範囲のポリオレフィンの混合比率(重量%)は、GPC測定により得られる分子量分布曲線の積分により求めることができる。また、多くの場合には、GPC測定において使用する溶媒はo−ジクロロベンゼンであり、測定温度は140℃である。
【0029】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて各種の添加剤や充填剤を添加することができる。かかる添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、色素などが例示される。また、充填剤としては、無機充填剤、樹脂微粉末などの有機充填剤などが例示される。特に、多孔性フィルム製造用の原反として使用するためのフィルムにおいては、結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対し、10〜300重量部(好ましくは50〜200重量部)の充填剤を配合するのが好ましい。
【0030】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の金属塩類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛等の金属酸化物、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、マイカ、ゼオライト、ガラス粉、などが使用できる。
【0031】
有機充填剤としては、種々の樹脂粒子を使用することができる。好ましくは、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の重合体、メラミン、尿素などの重縮合樹脂などの粒子が挙げられる。
【0032】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂フィルムは、結晶性熱可塑性樹脂を少なくとも1対のロールを用いて圧延成形する圧延工程を行うことにより製造することができる。圧延成形に先立ち、結晶性熱可塑性樹脂は、混練装置を用いて圧延可能なように可塑化されて混練され、圧延装置に供給される。結晶性熱可塑性樹脂には、必要に応じて添加剤や充填剤が添加され混練装置内で混合される。混練装置としては、具体的には、ゴムの混練に通常使用されるようなバンバリーミキサー、ニーダー、混練ロールや、熱可塑性樹脂の混練に通常使用されるようなスクリュー混練装置などが例示される。
【0033】
以下に、本発明の実施の形態を、長分子鎖ポリオレフィンとポリオレフィンワックスとの混合物であるポリオレフィン系樹脂をフィルム形成原料として使用し、混練装置としてスクリュー混練装置を使用した場合を例として説明する。
【0034】
<フィルム製造工程>
結晶性熱可塑性樹脂フィルムを製造するための製造ラインは、工程順に混練工程、圧延工程、スリット工程の各工程から成っている。
【0035】
混練工程には、スクリュー混練装置が使用され、この混練装置は、長分子鎖ポリオレフィンPEとポリオレフィンワックスPEを供給する第1ホッパーを備えている。充填剤を配合する場合には、充填剤を供給する第2ホッパーをさらに備えたスクリュー混練装置を用いる。スクリュー混練装置は、二軸のスクリューを備えており、ホッパーから供給される混合樹脂を強混練しつつ前方に押し出す。混練して得られたポリオレフィン系樹脂フィルム製造用組成物は、ペレット化される。
【0036】
圧延工程には、スクリュー押出し装置と圧延ロール機構とが組み合わせて使用される。このスクリュー押出し装置には、混練工程により得られた樹脂組成物のペレットを投入するホッパーと、スクリューとが設けられている。このスクリュー押出し装置により、樹脂組成物を前方に押し出し、ダイにより棒状またはシート状にして排出し、少なくとも1対のロールを備えた圧延ロール機構により圧延して圧延フィルムを得る。
【0037】
スリット工程では、圧延工程で得られた圧延フィルムを幅方向で2つにカットし、例えば600mm幅のフィルムから300mm幅のフィルムを2丁得る。
【0038】
圧延工程において、ロールの表面温度Toを、圧延する結晶性熱可塑性樹脂の溶融張力MTがMT>98mN(10gf)、かつ、伸長度LがL>100%となる温度に設定したり、To>Tm(ただし、Tmは結晶性熱可塑性樹脂の融点)となる温度に設定することにより、高い厚み精度で結晶性熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。特に、1対の圧延ロールの周速度を略同一にすることにより、厚み精度一層を高めることができる。この場合、両ロールの周速度は必ずしも厳密に同一周速度である必要はなく、両ロールの周速度は異なっていても、それらの差異が±5%以内程度であればよい。
【0039】
本発明における結晶性熱可塑性樹脂の溶融張力および伸長度は、以下に記載する方法で求めた値である。
【0040】
〔溶融張力〕
測定装置として東洋精機製作所(株)製Capirograph 1B PC−9801VMを使用し、径D=2.095mm、長さL=14.75mmのオリフィスを使用する。まず、樹脂を5mm/分の速度で押出し、引取り速度を変化させて樹脂を引き取り、樹脂が切れたときの引取り速度を「最大引取り速度」とする。この最大引取り速度での溶融張力をその温度での溶融張力とする。
【0041】
〔伸長度〕
測定装置として東洋精機製作所(株)製Capirograph 1B PC−9801VMを使用し、径D=2.095mm、長さL=14.75mmのオリフィスを使用する。まず、樹脂を5mm/分の速度で押出し、樹脂の直径D1(mm)を求める。次いで、引取り速度を変化させて樹脂を引き取り、樹脂が切れたときの樹脂の直径D2(mm)を求め、式
伸長度(%)=[(D1 2 −D2 2 )/D1 2]×100
により伸長度を求める。
【0042】
尚、融点は、DSC(示差走査熱量測定)におけるピーク温度のことであり、複数のピークがある場合は、最も融解熱量ΔH(J /g)が大きいピーク温度を融点とする。又、融点を測定するときの昇温速度は、5℃/分である。
【0043】
樹脂組成物を圧延装置に供給する方法は、特に制限されるものではなく、例えば、押出機から押し出された棒状の溶融樹脂などを供給することができる。また、可能であれば、予めTダイ成形法などにより、厚さ数mm〜数cm程度の予備成形体を形成し、これを供給することもできる。また、圧延には、略等速で回転する1対のロールで圧延することのできる圧延ロール装置を用いることが好ましい。圧延装置の圧延部位は複数個あってもよい。
【0044】
また、上記圧延工程の後に、適宜の方法で延伸を実施することにより、溶融粘度が高く溶融伸びの低い樹脂を多く含み一般に成形が難しい結晶性熱可塑性樹脂組成物についても、均質性が高い延伸フィルムを得ることができ、しかも200μm以下の厚さまで延伸するときでさえも、±2%程度以内という高い厚み精度の延伸フィルムを得ることができる。
【0045】
かかる延伸に適した延伸工程は、上記のカットして得られた圧延フィルムを巻物より巻き戻して加熱装置内において加熱しながら幅方向に2〜10倍、好ましくは4〜5倍延伸する工程である。係る延伸は、例えばクリップテンターを使用して行う。延伸されたフィルムは第2スリット工程において、さらに幅方向に2以上にカットする。
【0046】
<スクリュー混練装置の構成>
次に、長分子鎖ポリオレフィンを含有するポリオレフィン系樹脂を使用する場合に特に好適なスクリュー混練装置の構成を説明する。
【0047】
スクリューは、エレメントと呼ばれる部品を、スクリュー軸と呼ばれる軸上に固定することにより構成される。
【0048】
上記エレメントはフルフライトスクリューや深い溝の形成された深溝のフルフライトスクリューを使用することができる。フルフライトスクリューは、その全長にわたって螺旋状に溝が形成されたスクリューエレメントである。このような深溝のフルフライトスクリューを使用することにより樹脂の滞留時間を長くすることができる。フルフライトスクリューは、混練材料を前方、すなわち混練装置の下流に向けて送り出す機能を有する。
【0049】
エレメントの一部には、ニーディングブロックを使用する。ニーディングブロックは、通常は、同一の断面形状を有する複数のニーディングディスクが、それぞれのディスクの幾何学的中心が共通の直線上に位置し、該直線の周りに一定方向に互いに所定の角度のずれを持って順次ずらされて重ねられた形状を有している。なお、各ニーディングディスクの厚さは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
スクリューがバレル内に装填された状態において、ニーディングブロックを構成するニーディングディスクとバレルの間隔には分布があり、その間隔が最も小さくなるところで、最も強く混練材料にせん断応力が作用する。
【0051】
またエレメントとしては、ニーディングブロックにおけるニーディングディスクの積み重ねのねじれとは逆方向にねじれるようにニーディングディスクが重ねられた形状を有するニーディングブロックを使用することもできる。二種類のニーディングブロックを組み合わせて使用することにより、一種類のニーディングブロックの場合よりも混練材料の滞留時間を長くすることができ、より強いせん断応力を与えることができる。
【0052】
隣接するニーディングディスクを比較したときに、混練装置の下流側のニーディングディスクが上流側のニーディングディスクよりも薄くなるようにニーディングブロックを組み合わせて使用することにより、混練材料の下流側への流れ速度を調整することができ、混練材料によりよく圧縮・伸長作用を与えることができる。
【0053】
このようなスクリュー混練装置では、スクリュー全体のL/Dは30以上に設定する。L/Dが大きいほど滞留時間は長くなる。
【0054】
使用するスクリュー混練装置は、全く同一のスクリューエレメントから構成される2本のスクリューからなる二軸スクリューのものが最も好ましいが、本単軸式であっても、3本以上のスクリューを有していても構わない。
【0055】
本発明により提供される結晶性熱可塑性樹脂フィルムは、弾性率および強度が高く、必要に応じて延伸や真空成形などの二次加工を経て、食品、医薬品、化粧品、文具等の包装用途、カード用途などに使用することができる。また、充填剤を含有するフィルムは、多孔性フィルムの材料として好適に使用することができる。
【0056】
【実施例】
以下、実際の測定試験結果について説明する。
【0057】
(実施例1)
長分子鎖ポリエチレン粉末70重量%(三井化学(株)製、ハイゼックスミリオン340M、重量平均分子鎖長17000nm、重量平均分子量300万)、および低分子量ポリエチレン粉末30重量%(重量平均分子量1000)を2軸反応押出機にて230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。この組成物中の樹脂分中の分子鎖長2850nm以上のポリエチレンの含有量は30重量%であった。この樹脂組成物をロール表面温度145℃で等速度で回転する一対のロールで圧延し、膜厚約60μmのフィルムを作成した。得られたフィルムについて、広角X線回折により(110)面の配向を調べたところ、MD方向に対する樹脂の結晶のc軸の配向係数は0.90であった。
【0058】
(実施例2)
長分子鎖ポリエチレン粉末70重量%(三井化学(株)製、ハイゼックスミリオン340M、重量平均分子鎖長17000nm、重量平均分子量300万)、低分子量ポリエチレン粉末30重量%(重量平均分子量1000)を2軸反応押出機にて混練し押出機の途中から樹脂混合物100重量部に対して120重量部の炭酸カルシウム(白石カルシウム株製、スターピゴット15A)を添加して230℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。この組成物中の樹脂分中の分子鎖長2850nm以上のポリエチレンの含有量は27重量%であった。この樹脂組成物をロール表面温度150℃で等速度で回転する一対のロールで圧延し、膜厚約60μmのフィルムを作成した。得られたフィルムについて、広角X線回折により(110)面の配向を調べたところ、MD方向に対する樹脂の結晶のc軸の配向係数は0.90であった。
【0059】
(比較例1)
実施例1で作成したMD方向に対する結晶のc軸の配向係数が0.90のフィルムを2段プレス機(220℃、98MPa(100kgf/cm2 ))でプレスし、樹脂の結晶のc軸のMD方向に対する配向係数が0であり、a軸のMD方向に対する配向係数が0.44であるフィルムを製作した。
【0060】
表1に、得られたフィルムの弾性率を示す。尚、弾性率の測定は、JIS K7161に準拠して行った。
【0061】
【表1】
【発明の効果】
本発明により提供される結晶性熱可塑性樹脂フィルムは、高弾性率であり、延伸や真空成形等の二次加工に好適に適用することができる。本発明の方法によれば、有用性に富むこのような結晶性熱可塑性樹脂フィルムを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルム中の結晶の配向を示す模式図
Claims (3)
- 結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、該フィルム中の結晶のc軸の、前記フィルムのMD方向に対する配向係数は0.8以上であり、かつ重量平均分子鎖長が2850nm以上のポリオレフィン[A]と重量平均分子量700〜6000のポリオレフィンワックス[B]とを、[A]/[B]=90/10〜50/50の重量比にて配合し、溶融混練して得られるポリオレフィン系樹脂を少なくとも1対のロールを用いて圧延成形する圧延工程を有し、前記圧延工程におけるロールの表面温度Toと結晶性熱可塑性樹脂の融点Tmとが、下記条件を満たすことを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
To>Tm - 前記圧延工程におけるロールの表面温度Toは、その温度における前記結晶性熱可塑性樹脂の溶融張力MTと伸長度Lが以下の範囲となる温度であることを特徴とする請求項1記載の結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
MT>98mN(10gf)、かつ L>100% - 前記結晶性熱可塑性樹脂が、当該樹脂100重量部に対し、充填剤を10〜300重量部含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
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