JP4272304B2 - 水性樹脂分散液およびこれを用いた塗料用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐侯性を要する建築外装上塗り塗料、特に弾性タイプのトップコートや単層弾性塗料等に有用な水性樹脂分散液に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、無公害性、使用時の作業性の良さ等の利点から、塗装用塗料、構造物の表面保護剤、耐水性や耐侯性の低い基材のコーティング剤等として、水性樹脂分散液が配合された水性塗料が汎用されている。このような水性塗料は、特に、大量に使用することの多い建築外装上塗り塗料としては好適に用いられるのであるが、このような場合、長期間にわたり風雨や日光に曝されるため、優れた耐侯性、耐水性、耐汚染性等が要求されることが多い。
【0003】
耐侯性等に優れる水性樹脂分散液としては、従来から、カルボニル基を有するポリマーとヒドラジン化合物との混合物からなるものが知られており、架橋作用による耐侯性や耐汚染性の効果が報告されている。しかし、この架橋作用のみでは、例えば建築外装上塗り塗料に用いるのに十分な耐侯性および耐汚染性を付与することは困難であった。
【0004】
また、耐侯性を改良した水性樹脂分散液として、重合性紫外線安定性単量体とシクロアルキル基を有する重合性単量体とを必須成分とするものが、特開平3−128978号公報に報告されている。しかし、この水性樹脂分散液は耐侯性には非常に優れるものの、被塗物が軟質の場合の密着性を考慮に入れておらず、硬質の下地への用途に限定されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、長期にわたる優れた耐侯性、具体的には、優れた光沢保持性、耐クラック性、耐ブリスター性、耐黄変性等を示すとともに、下地への密着性、特に軟質皮膜への密着性に優れ、さらに、耐水性、耐汚染性、耐溶剤性に優れた塗膜を形成することができる水性樹脂分散液およびこれを用いた塗料用組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ヒドラジン化合物による架橋作用を利用するとともに、水性樹脂分散液を構成する重合体に特定量のシクロアルキル基を有する重合性単量体を含有させることによって、軟質皮膜への密着性を保持しつつ、耐侯性および耐水性を向上させることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の水性樹脂分散液組成物は、単層弾性塗料として用いられる水性樹脂分散液であって、シクロアルキル基を有する重合性単量体を5〜99.5重量%含むとともに分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基と少なくとも1個の重合可能な二重結合を有する単量体をも含む重合性単量体成分(a)(ただし、重合性単量体成分(a)を構成する各単量体の合計重量%は100重量%とする)と、前記重合性単量体成分(a)に含まれるよりも多くのカルボキシル基を有する不飽和単量体を含む重合性単量体成分(a’)とを、別々に重合させたのち混合するか、または、多段に重合させることにより、異相構造化がなされている重合体と、分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有するヒドラジン化合物と、を必須成分として含有してなる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の塗料用組成物は、前記本発明の水性樹脂分散液を含有してなるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の水性樹脂分散液は、シクロアルキル基を有する重合性単量体を含む重合性単量体成分(a)を重合させてなる重合体(A)を必須成分として含有してなるものである。シクロアルキル基を有する重合性単量体を含有させることによって、塗料として用いた場合、得られる塗膜に優れた耐侯性および耐水性を付与することができる。
【0010】
本発明におけるシクロアルキル基を有する重合性単量体は、シクロアルキル基を有し、かつ、少なくとも1個の重合可能な二重結合を有する単量体であれば、特に限定されるものではなく、例えば、一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R1 は、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を表し、Zは、シクロアルキル基を表す)で表される化合物が挙げられる。ここで、Zで示されるシクロアルキル基とは、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の単環式飽和炭化水素残基等が挙げられる。また、Zで示されるシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜7のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等が挙げられる。シクロアルキル基を有する重合性単量体の具体的な化合物名としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特に好ましくは、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがよい。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0013】
シクロアルキル基を有する重合性単量体の含有量は、重合性単量体成分(a)に対して5〜99.5重量%、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%でなければならない。シクロアルキル基を有する重合性単量体の含有割合が5重量%未満であると、耐侯性の向上が十分に図れず、また得られた水性樹脂分散液を塗料に用いた場合、乾燥塗膜の外観や肉持ち感が悪化することとなり、一方、99.5重量%を越えると、重合安定性が悪化し、得られる水性樹脂分散液の長期貯蔵安定性が低下することとなる。
【0014】
本発明においては、前記重合性単量体成分(a)として、さらに、カルボニル基を有する不飽和単量体をも含有していることが重要である。カルボニル基と後述するヒドラジン化合物(B)との架橋作用により、耐侯性および耐汚染性を向上させることができる。
重合性単量体成分(a)に含まれるカルボニル基を有する不飽和単量体は、分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基を有し、かつ、少なくとも1個の重合可能な二重結合を有する単量体、好ましくは重合可能なモノエチレン系不飽和アルド化合物およびモノエチレン系不飽和ケト化合物であり、しかもエステル基およびカルボキシル基のみを有する化合物を除くものである。具体的には、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(ビニルエチルケトン等)、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、ジアセトンアクリレート、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート等が挙げられる。これらのなかでも特に、ジアセトンアクリルアミド、アクロレインが好適である。これらのカルボニル基を有する不飽和単量体は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
カルボニル基を有する不飽和単量体の含有量は、重合性単量体成分(a)に対して0.3〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%であるのがよい。カルボニル基を有する不飽和単量体の含有割合が0.3重量%未満であると、架橋反応が不十分となり、一方、20重量%を越えると、得られた水性樹脂分散液を塗料に用いた場合、皮膜がもろくなり、実用に供しえないこととなる。
【0016】
本発明においては、前記重合性単量体成分(a)として、さらに、重合性紫外線安定性単量体および/または重合性紫外線吸収性単量体を含有していることが好ましい。重合性紫外線安定性単量体および/または重合性紫外線吸収性単量体を含有させることによって、耐侯性、特に、長期における光沢保持性をさらに向上させることができる。なお、重合性紫外線安定性単量体と重合性紫外線吸収性単量体とは、それぞれ、目的に応じてどちらか一方のみを用いてもよいし、併用してもよい。
【0017】
前記重合性紫外線安定性単量体としては、具体的には、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0018】
前記重合性紫外線吸収性単量体としては、具体的には、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0019】
重合性紫外線安定性単量体および/または重合性紫外線吸収性単量体を含有する場合、その含有量は、重合性単量体成分(a)に対してそれぞれ0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%とするのが好ましい。重合性紫外線安定性単量体および/または重合性紫外線吸収性単量体の含有割合が0.1重量%未満であると、耐侯性向上の効果を十分に発揮しにくく、一方、10重量%を越えると、コストが上がるばかりか、重合安定性も低下し易くなるので、好ましくない。
【0020】
本発明においては、前記重合性単量体成分(a)として、さらに、カルボキシル基を有する不飽和単量体を含有していることが好ましい。カルボキシル基を有する不飽和単量体を含有させることによって、塗料として用いた場合、得られる塗膜に優れた耐汚染性を付与することができる。
前記カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチル等のエチレン性不飽和多価モノカルボン酸の部分エステル化物等のカルボキシル基を有する重合性単量体;等が挙げられる。特に、前記例示のカルボキシル基を有する不飽和単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸がより好ましい。これらのカルボキシル基を有する不飽和単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
カルボキシル基を有する不飽和単量体を含有する場合、その含有量は、重合性単量体成分(a)に対して0.5〜15重量%とするのが好ましい。カルボキシル基を有する不飽和単量体の含有割合が0.5重量%未満であると、重合安定性が低下し易く、一方、15重量%を越えると、耐侯性および耐水性が損なわれることとなるので、好ましくない。
【0022】
本発明においては、前記重合性単量体成分(a)として、前記の各単量体のほかに、これら単量体と共重合可能な他の重合性単量体をもさらに含有していてもよい。共重合可能な他の重合性単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸とC1 〜C18(脂肪族、脂環族、芳香族を含む)のアルコールのエステルである(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールとのモノエステル等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する重合性単量体類;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル等のアジリジニル基を有する重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有する重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン等の塩基性、重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の架橋性(メタ)アクリルアミド類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルメチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基を有する重合性単量体;(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル等の分子内に重合性不飽和基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチルおよびその塩、ビニルスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有する重合性単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン等の有機ケイ素基を有する不飽和単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化単量体類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の多官能単量体類;等が挙げられる。これら例示の重合性単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
これら以外の共重合可能な重合性単量体を含有する場合、その含有量は、重合性単量体成分(a)に対して94.7重量%以下とするのが好ましい。他の共重合可能な重合性単量体の含有割合が、94.7重量%を越えると、前記の各単量体の含有割合が低くなりすぎ、各単量体を含有させることによる各効果が十分に得られないこととなるので、好ましくない。
【0024】
但し、本発明においては、重合性単量体成分(a)に含まれる前記各単量体の含有割合の合計重量%は、100重量%となるように調整されるものとする。
本発明の水性樹脂分散液は、前記重合体(A)とともにヒドラジン化合物(B)を含有してなるものである。ヒドラジン化合物(B)は、前記重合体(A)に対して架橋剤として作用して、水性樹脂分散液からの塗膜を硬化させる機能を発揮し、耐侯性および耐汚染性を向上させうるものである。
【0025】
本発明におけるヒドラジン化合物(B)としては、例えば、2〜10個、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸ジヒドラジド、具体的には、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。また、例えば、2〜4個の炭素原子を有する脂肪族水溶性ジヒドラジン、具体的には、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、等が挙げられる。これら例示のなかでも特に、アジピン酸ジヒドラジドが好ましい。これら例示のヒドラジン化合物は、1種類のみを用いてもよく、2種類を併用してもよい。
【0026】
本発明の水性樹脂分散液は、前記重合性単量体成分(a)が重合されてなる重合体(A)とヒドラジン化合物(B)とのみを必須成分として含有することによって、十分に優れた耐侯性を発揮するものであるが、実質的に前記重合体(A)の本質を損なわない範囲内で、前記重合性単量体成分(a)のほかに、前記重合性単量体成分(a)に含まれるよりも多くのカルボキシル基を有する不飽和単量体を含有する重合性単量体成分(a’)を重合成分としてさらに含有させることが好ましい。具体的には、この重合性単量体成分(a’)を前記重合性単量体成分(a)とは別に重合させてなる重合体(A’)を、重合体(A)とヒドラジン化合物(B)とともに混合して水性樹脂分散液とする手段、あるいは、前記重合性単量体成分(a)と重合性単量体成分(a’)とを多段重合させて得られる重合体と、ヒドラジン化合物(B)とを混合して水性樹脂分散液とする手段によって、重合性単量体成分(a’)を含有せしめるのである。重合性単量体成分(a’)にカルボキシル基を多く含有させることにより、耐汚染性を付与するに十分な水性樹脂分散液全体のカルボキシル基の量を保つと同時に、重合性単量体成分(a)に含まれるカルボキシル基の量を減らして水性樹脂分散液中のカルボキシル基を局在化させ、カルボキシル基の存在により生じる耐水性低下を抑制することができる。そして、良好な耐水性を有しつつ耐汚染性に優れる塗膜を形成することが可能となるのである。
【0027】
重合性単量体成分(a’)をさらに含有させる場合には、重合性単量体成分(a)の組成に由来する本発明の本質を実質的に損なわない範囲内の割合とすることが重要である。具体的には、〔重合性単量体成分(a)〕:〔重合性単量体成分(a’)〕=40:60〜100:0(重量%)であることが好ましい。重合性単量体成分(a)がこの割合よりも少ないと、シクロアルキル基による耐侯性向上の効果が十分に得られないこととなるので、好ましくない。
【0028】
重合性単量体成分(a)と重合性単量体成分(a’)とに各々含まれるカルボキシル基を有する不飽和単量体量の差は、4重量%以上であることが好ましい。カルボキシル基を有する不飽和単量体量の差が4重量%未満であると、カルボキシル基の局在化が難しく、耐水性と耐汚染性とを両立するという効果が顕著に現れないため好ましくない。また、重合性単量体成分(a’)をさらに含有させる場合、重合性単量体成分(a)に含まれるカルボキシル基を有する不飽和単量体量は0.5〜4重量%、重合性単量体成分(a’)に含まれるカルボキシル基を有する不飽和単量体量は4〜15重量%とすることが好ましく、さらに、重合性単量体成分(a)+(a’)に含まれるカルボキシル基を有する不飽和単量体量は1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%とするのがよい。
【0029】
重合性単量体成分(a’)は、前記特定量のカルボキシル基を有する不飽和単量体を含んでさえいればよく、カルボキシル基を有する不飽和単量体以外に、重合性単量体成分(a)に含有可能な前記例示の各種重合性単量体、すなわちシクロアルキル基を有する重合性単量体、カルボニル基を有する不飽和単量体、重合性紫外線安定性単量体、重合性紫外線吸収性単量体、これら単量体と共重合可能な他の重合性単量体が含まれていてもよい。
【0030】
本発明において、重合体を得る際の重合方法は、特に限定されるものではなく、乳化剤の存在下で重合を行う従来公知の種々の乳化重合方法を採用することができる。例えば、重合開始剤、水性媒体、乳化剤を一括添加して重合する方法や、いわゆるモノマー滴下法、プレエマルション法等の重合方法が挙げられる。また、重合性単量体成分(a’)をさらに含有させる場合には、例えばシード重合、コア・シェル重合、パワーフィード重合等の多段重合を行い、エマルション粒子の異相構造化を行うこともできる。
【0031】
本発明において用いられる乳化剤としては、特に限定はなく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等の全ての界面活性剤を使用することができる。さらに、分子中に1個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤を使用することができる。
【0032】
前記アニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;等を挙げることができる。
【0033】
前記ノニオン系界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物;等が使用できる。
【0034】
前記高分子界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;またはこれらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体等が挙げられる。また、クラウンエーテル類等の相関移動触媒は界面活性を示すので、界面活性剤として使用してもよい。
【0035】
前記重合性界面活性剤としては、具体的には、例えば、プロペニル−2−エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性重合性界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
本発明における乳化剤としては、前記例示の界面活性剤を1種類のみ用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、本発明において用いる乳化剤の使用量は、特に限定されないが、モノマー総重量に対して0.5〜10重量%が好ましい。
本発明における乳化重合は、重合性単量体成分と前記乳化剤とのほかに、乳化させる際の媒体となる水性媒体、および、重合を開始させるための重合開始剤を用いて行うことができる。
【0037】
前記水性媒体としては、通常、水が使用され、必要に応じて低級アルコールやケトン等の親水性溶媒が併用できる。水性媒体の使用量は、特に限定されず、得られる水性樹脂分散液の固形分が所望の含有量になるように適宜設定すればよい。
前記重合開始剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;過酸化水素、過酢酸、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物;等が挙げられる。これらは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、重合開始剤の使用量は、特に限定はされないが、モノマー総重量に対して0.01〜1重量%が好ましい。
【0038】
本発明においては、得られた乳化重合体に含まれる酸性基の少なくとも一部を中和して、重合体を得ることが好ましい。乳化重合体に含まれる酸性基を中和することによって、分散安定性が改良されるとともに、水性樹脂分散液から得られた乾燥塗膜の耐汚染性を向上させることができる。中和の時期は、重合前、重合中、重合後のどこでもよい。好ましくは、カルボキシル基を有する不飽和単量体を重合後がよい。また、重合性紫外線安定性単量体の重合において凝集物が発生しやすい時には、カルボキシル基を有する不飽和単量体と別々に重合するか、カルボキシル基を有する不飽和単量体を重合後に部分的に中和してから重合性紫外線安定性単量体を重合すればよい。
【0039】
酸性基を中和する際に用いる中和剤は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の中和剤を使用することができる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類;等が挙げられる。これらの中和剤のうち、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等の低沸点アミン類は、常温あるいは加熱下で飛散することから、水性樹脂分散液を含む塗料における硬化塗膜の耐水性の低下が防げるため好ましく、さらにアンモニアがより好ましい。前記例示の中和剤は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
本発明においては、さらに必要応じて、t−ドテシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドテシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を用いることができる。本発明において、重合温度および重合時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは、重合温度としては0〜100℃、さらに好ましくは50〜90℃、重合時間は1〜15時間であるのがよい。
【0041】
前述のように、本発明の水性樹脂分散液はヒドラジン化合物(B)を含有してなるものであるが、ヒドラジン化合物(B)は、例えば貯蔵の際に加水分解されやすく、加水分解されると毒性を有する遊離ヒドラジンを生じることとなる。本発明においては、この遊離ヒドラジンを抑制するために、ヒドラジン化合物1モルに対し0.0002〜0.02モルの重金属イオンを含有させることもできる。重金属イオンは、重金属塩の形で添加されるものであり、重金属塩としては、銅、亜鉛、鉄、クロム、マンガン、鉛、バナジウム、コバルト、ニッケル等の水溶性塩、具体的には、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、塩化マンガン(II)、酢酸鉛(II)、塩化ニッケル(II)、硫酸鉄(II)等が挙げられる。これらの添加方法としては、水溶液での添加が好ましく、前記重合体(A)の重合前に添加しておいてもよいし、重合後にヒドラジン化合物(B)と一緒に、あるいはその添加後に添加してもよい。
【0042】
本発明の塗料用組成物は、前記の本発明の水性樹脂分散液を含有してなるものである。詳しくは、本発明の塗料用組成物は、前記水性樹脂分散液のみをそのまま用いたものであってもよいし、必要に応じて種々の添加剤を含有するものであってもよい。添加剤としては、例えば、顔料、成膜助剤、充填剤(フィラー)、トナー、湿潤剤、帯電防止剤、顔料分散剤、可塑剤、酸化防止剤、流れコントロール剤、粘度調整剤等が挙げられる。また、他の水溶性樹脂あるいは水分散性樹脂を、添加、混合して使用してもよい。これら樹脂としては、例えば、スチレンアクリル、アクリル、ウレタン、シリコン、アクリルシリコン、アクリルウレタン、フッ素、アクリルフッ素等が挙げられる。
【0043】
前記添加剤のなかで、特に、顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白等の白色顔料や、カーボンブラック、黄鉛、モリブテン赤、ベンガラ、黄色酸化鉄、黄華等の着色顔料のような無機顔料;ベンジジン、ハンザイエロー等のアゾ化合物や、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン類のような有機顔料;が挙げられる。これらは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用することもできる。これら例示のなかでも、得られる塗膜の耐侯性を低下させないようにするためには、耐侯性の良好な顔料を使用することが好ましい。例えば、白色顔料である酸化チタンを使用する場合、アナターゼ型構造の酸化チタンよりもルチル型構造の酸化チタンを用いるほうが好ましい。さらに、ルチル型構造の酸化チタンを使用する場合、長期にわたる耐侯性を発現させるためには、硫酸法酸化チタンよりも塩素法酸化チタンを使用するほうが、より好ましい。また、これらの顔料は、体積濃度が30%以下となるように含有されていることが好ましい。体積濃度が30%を越えると、耐水性が著しく低下することとなるので、好ましくない。
【0044】
【実施例】
以下に、実施例、参考例、および、参考比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。得られた水性樹脂分散液の各種物性は、以下の方法により評価した。なお、実施例、参考例、および、参考比較例に記載の「部」は「重量部」を示している。
【0045】
<耐侯性>
水性樹脂分散液からなる塗料の耐侯性は、促進耐侯性試験を行うことにより評価した。すなわち、まず、水性樹脂分散液を下記組成からなる白塗料に調製した。
・水 62.4部
・特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤
(商品名「デモールEP」花王(株)製) 2.0部
・消泡剤(商品名「ノブコ8034」サンノブコ(株)製) 0.3部
・酸化チタン(ルチル型) 60.0部
・水性樹脂分散液 146.7部
・2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート
(商品名「CS−12」チッソ(株)製) 11.7部
・5%ポリエーテル系の増粘剤
(商品名「アデカノールUH−420」旭電化(株)製) 1.0部
合計284.1部
得られた白塗料を溶剤系シーラーを塗布したフレキシブルボード上に、乾燥塗膜が約120μmとなるように塗布した。そして、白塗料を25℃で7日間乾燥させ、これをテストピースAとした。このテストピースAを用いてサンシャインウエザオメーターによって促進耐侯性試験を行い、1500時間後の塗膜の変化を光沢維持率で表し、チョーキング状態を観察した。
チョーキング;○:異常なし、△:わずかにチョーキング、×:かなりチョーキング
<密着性>
単層弾性塗料(商品名「DANユニ」日本ペイント製)をフレキシブルボード上に1mm厚で塗布して7日間乾燥後に、得られた白塗料を乾燥塗膜が約120μmとなるように塗布した。そして、白塗料を25℃で7日間乾燥させ、これをテストピースBとした。カッターナイフでテストピースBの塗膜表面を×印に切った後、指で塗膜を剥いだときの状態で密着性を評価した。
○:膜状に剥がれない、△:わずかに剥がれるものの抵抗あり、×:簡単に剥がれる
<耐汚染性>
前記テストピースAを用い、南向き斜面での屋外暴露試験を行い、3ヵ月後の汚れの状態を目視にて観察した。
○:わずかな汚れで目立たない、△:少し汚れが目立つ、×:かなり汚れが目立つ
<耐水性>
前記テストピースAを用い、7日間没水試験を行い、ふくれの状態を目視にて観察した。
○:異常なし、△:少しふくれあり、×:ふくれ多し
<耐溶剤性>
前記テストピースAを用い、この表面をトルエンを含浸したガーゼを用いて指で擦り、20回擦った後の塗膜状態を目視にて観察した。
○:異常なし、△:少しリフティングあり、×:リフティング多し
[参考例1]
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに純水57.9部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に70℃まで昇温した。一方、シクロヘキシルアクリレート60部、2−エチルヘキシルアクリレート37.5部、アクリル酸1部、ジアセトンアクリルアミド1.5部からなる重合性単量体成分(a)に、ハイテノールN−08(第一工業製薬製)の15%水溶液6.7部と、ノニポール200(三洋化成製)の25%水溶液8部と、純水23.3部とを加え、プレエマルション混合物とした。このプレエマルション混合物のうちの5重量%を、前記フラスコに添加し、十分に窒素置換を行った後に続いて、過硫酸アンモニウムの5%水溶液0.8部を添加し、重合を開始した。反応系内を70℃で10分間保持した後、残りのプレエマルション混合物と過硫酸アンモニウムの5%水溶液7.2部とを180分にわたって均一に滴下した。滴下中は、反応系内を70℃に保持し、さらに滴下終了後は70℃で60分間攪拌しながら熟成させて重合を終了した。その後、反応系内を冷却し、60℃以下で25%アンモニア水0.6部を添加して、重合体(A)を得た。
【0046】
そして、得られた重合体(A)に、重合体(A)中のカルボニル基のモル数に対してヒドラジノ基が等モルになるように、20%アジピン酸ジヒドラジド水溶液を添加し、不揮発分50.0%の水性樹脂分散液を得た。各種物性の評価結果を表6に示す。
[参考例2〜7]および[参考比較例1〜6]
重合性単量体成分(a)の組成および20%アジピン酸ジヒドラジド水溶液の量を表1および表3に示すように変えた以外は、参考例1と同様にして水性樹脂分散液を得た。但し、参考例4についてのみ、20%アジピン酸ジヒドラジド水溶液の量は、(重合体(A)中のカルボニル基のモル数):(アジピン酸ジヒドラジド水溶液中のヒドラジノ基のモル数)=2:1となるようにした。各種物性の評価結果を表6に示す。
【0047】
[実施例1〜4]および[参考比較例7〜9]
参考例6、7および参考比較例1〜4、参考比較例6における重合性単量体成分(a)を表2および表4に示す割合で混合し、20%アジピン酸ジヒドラジド水溶液の量を表2および表4に示すように変えた以外は、参考例1と同様にして水性樹脂分散液を得た。各種物性の評価結果を表6に示す。
【0048】
[実施例5]
1段目の重合として、滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに純水59.9部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に70℃まで昇温した。一方、シクロヘキシルアクリレート29.5部、2−エチルヘキシルアクリレート18.75部、アクリル酸1部、ジアセトンアクリルアミド0.75部からなる重合性単量体成分(a)に、ハイテノールN−08(第一工業製薬製)の15%水溶液3.3部と、ノニポール200(三洋化成製)の25%水溶液4部と、純水10.5部とを加え、プレエマルション混合物1とした。このプレエマルション混合物1のうちの5重量%を、前記フラスコに添加し、十分に窒素置換を行った後に続いて、過硫酸アンモニウムの5%水溶液0.8部を添加し、重合を開始した。反応系内を70℃で10分間保持した後、残りのプレエマルション混合物1と過硫酸アンモニウムの5%水溶液3.6部とを90分にわたって均一に滴下した。滴下中は、反応系内を70℃に保持し、さらに滴下終了後は70℃で30分間攪拌しながら熟成させた。
【0049】
次いで、2段目の重合として、まず、シクロヘキシルアクリレート25.6部、2−エチルヘキシルアクリレート18.65部、アクリル酸5部、ジアセトンアクリルアミド0.75部からなる重合性単量体成分(a’)に、ハイテノールN−08(第一工業製薬製)の15%水溶液3.3部と、ノニポール200(三洋化成製)の25%水溶液4部と、純水10.5部とを加え、プレエマルション混合物2とし、このプレエマルション混合物2と、過硫酸アンモニウムの5%水溶液3.6部とを、前記1段目の熟成終了後の反応系内に90分にわたって均一に滴下した。滴下中は、反応系内を70℃に保持し、さらに滴下終了後は70℃で60分間攪拌しながら熟成させ、重合を終了した。その後、反応系内を冷却し、60℃以下で25%アンモニア水1部を添加して、重合体(A)を得た。
【0050】
そして、得られた重合体(A)に、重合体(A)中のカルボニル基のモル数に対してヒドラジノ基が等モルになるように、20%アジピン酸ジヒドラジド水溶液を添加し、不揮発分50.0%の水性樹脂分散液を得た。各種物性の評価結果を表6に示す。
[実施例6]
1段目の熟成終了後、25%アンモニア水1部を添加して中和し、その後2段目の滴下を開始したこと、および、重合性単量体成分の各成分を表5に示す量としたこと以外は、実施例5と同様にして水性樹脂分散液を得た。各種物性の評価結果を表6に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、長期にわたる優れた耐侯性、具体的には、例えば、優れた光沢保持性を示すとともに、下地への密着性、特に軟質皮膜への密着性に優れ、さらに、耐水性、耐汚染性、耐溶剤性に優れた塗膜を形成することができる水性樹脂分散液およびこれを用いた塗料用組成物を提供することができる。
Claims (3)
- 単層弾性塗料として用いられる水性樹脂分散液であって、
シクロアルキル基を有する重合性単量体を5〜99.5重量%含むとともに分子中に少なくとも1個のアルド基またはケト基と少なくとも1個の重合可能な二重結合を有する単量体をも含む重合性単量体成分(a)(ただし、重合性単量体成分(a)を構成する各単量体の合計重量%は100重量%とする)と、前記重合性単量体成分(a)に含まれるよりも多くのカルボキシル基を有する不飽和単量体を含む重合性単量体成分(a’)とを、別々に重合させたのち混合するか、または、多段に重合させることにより、異相構造化がなされている重合体と、
分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有するヒドラジン化合物と、
を必須成分として含有してなる、
ことを特徴とする、水性樹脂分散液。 - 前記重合性単量体成分(a)が、重合性紫外線安定性単量体および/または重合性紫外線吸収性単量体0.1〜10重量%をもさらに含む、請求項1に記載の水性樹脂分散液。
- 請求項1または2に記載の水性樹脂分散液を含有してなる、塗料用組成物。
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