JP4271850B2 - Il−18受容体 - Google Patents
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Description
発明の背景
発明の分野
本発明は、IL−1受容体ファミリーのメンバーであるタンパク質に関する。より詳しくは、本発明は、高親和性IL−18結合および活性を媒介し、更には、IL−18に媒介される活性を阻害するIL−1Rrp1およびAcPL受容体複合体に関する。
【0002】
関連技術の説明
I型インターロイキン−1受容体(IL−1RI)は、前炎症性サイトカインであるインターロイキン−1の生物学的作用を媒介する(Simsら,Science 241:585−589,1988;Curtisら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3045−3049,1989)。もう一つのインターロイキン−1受容体(II型IL−1RまたはIL−1RIIと称される)はIL−1を結合するが、シグナル伝達を媒介しているとは考えられない(McMahanら,EMBO J.10:2821,1991;Simsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6155−6159,1993)。IL−1RIおよびIL−1RIIはそれぞれ、IL−1αおよびIL−1βを結合する。IL−1は、慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患に関与している。IL−1が骨粗鬆症においてある役割を果たしていることは益々明らかである。これら活性は全て、I型IL−1Rの細胞質部分のシグナリング機能によって開始される。IL−1raは、I型IL−1受容体に結合することによってIL−1の活性を阻害し、それによってIL−1αおよびIL−1βへの接近を阻止するが、それ自体の生物学的応答を導くことはない。
【0003】
IL−1RIおよびIL−1RIIは、有意の配列相同性を示すタンパク質のファミリーに属する。一つのこのようなタンパク質は、Greenfederら(J.Biol.Chem.270:13757−13765,1995)に記載のIL−1R補助タンパク質(IL−1R AcP)である。このタンパク質だけではIL−1を結合できないが、IL−1RIとIL−1αおよびIL−1βと一緒に複合体を形成する。IL−1RIと一緒に同時発現された場合、組換え体IL−1R AcPは、IL−1βへのIL−1RIの結合親和性を増加させる(Greenfederら,上記)。
【0004】
IL−1RIおよびIL−1RIIファミリーに配列相同性を示すもう一つのタンパク質は、IL−1受容体関連タンパク質I(IL−1RrpI)である(Parnetら,J.Biol.Chem 271:3967,1996およびTorigoeら,J.Biol.Chem 272:25737,1997を参照されたい)。尚もう一つのこのようなタンパク質はAcPLである。
【0005】
IL−18は、IL−1αおよびIL−1βの同族体であり、IL−1によって活性化される同様の応答の多くを活性化することが知られている。例えば、IL−18を用いて刺激された細胞は、NFκBを活性化し、既知の炎症メディエーターを生じる。IL−18は、Th1細胞の成長および分化の刺激薬として作用し、Th1細胞からのγインターフェロン生産の強力な誘導物質である。ヘルパーT細胞のTh1細胞は、炎症反応を媒介することが知られている。IL−18は、NK細胞致死活性を増大させ、敗血症性ショック、肝臓破壊、炎症性腸疾患および糖尿病に関与している。
【0006】
最近、IL−1RrpIはIL−18に結合し、トランスフェクションされた細胞中でのIL−18シグナリングを媒介することが示された。しかしながら、IL−18へのIL−1RrpI結合親和性は極めて低いので、1種類またはそれ以上の追加の受容体または受容体サブユニットはIL−18の結合およびシグナリングに関与すると考えられる。
【0007】
したがって、IL−18の追加の受容体の識別が望まれる。このような受容体タンパク質を研究して、それらがIL−18を結合するか否か、そして結合するならば、それら受容体がシグナル伝達の媒介においてある役割を果たしているかどうか確認することができる。更に、このような受容体の可溶性の形を用いて、IL−18活性を阻害し、そしてIL−18シグナリングに起因する炎症性および/または自己免疫疾患をいずれも改善することができる。IL−18に関して可能性のある更に別の親和性変換サブユニットの存在も探求することができる。
【0008】
発明の概要
本発明は、本明細書中においてIL−18受容体複合体と称される受容体ポリペプチドを提供する。より詳しくは、本発明は、AcPLポリペプチドまたはそのフラグメントおよびIL−1Rrp1ポリペプチドまたはそのフラグメントを含むマルチマー受容体ポリペプチドを提供する。そのAcPLポリペプチドは、任意の適当な手段によってIL−1Rrp1ポリペプチドに共有結合していてよいしまたは非共有結合していてよい。このような手段には、架橋試薬、ポリペプチドリンカーによる、およびジスルフィド結合によるまたはロイシンジッパーの使用によるような結合が含まれる。本発明の一つの実施態様において、受容体は、組換えDNA技術によって生産される融合タンパク質である。本発明のこのマルチマー受容体は、IL−1Rrp1単独の場合より大きい親和性でIL−18を結合する。IL−18によって媒介される障害は、このような障害に苦しむ患者に治療的有効量の本発明の受容体を投与することによって治療することができる。
【0009】
発明の詳細な記述
本発明は、AcPLおよびIL−1Rrp1の同時発現が、IL−18を用いて刺激された細胞中においてNFκB活性を劇的に増大させるという知見に基づいている。IL−1Rrp1単独ではIL−18を弱くしか結合しないし、AcPLはIL−18を結合しないので、同時発現されたAcPLおよびIL−1Rrp1によるNFκB活性の増大は、これらポリペプチドがIL−18受容体複合体のサブユニットであることを示している。本発明により、IL−18受容体複合体と称される新規ポリペプチドを提供する。好都合には、IL−1Rrp1およびAcPLまたはそれらのフラグメントを含むこのようなダイマーIL−18受容体複合体は、IL−18の前炎症作用を含めたIL−18活性を阻害するのに有用であり、同一細胞中で同時発現されるタンパク質として、または受容体サブユニットとしてのAcPLに結合したIL−1Rrp1としてIL−1Rrp1およびAcPLを含むことができる。好ましくは、それらサブユニットは共有結合によって結合している。それらサブユニットは、架橋試薬またはポリペプチドリンカーなどによる任意の適当な手段によって共有結合していてよい。
【0010】
本発明の一つの実施態様において、受容体は、組換えDNA技術によって生産される融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、IL−1Rrp1:Fc融合タンパク質をコードしているDNAおよびAcPL:Fc融合タンパク質をコードしているDNAを用いて細胞をトランスフェクションし、同一細胞中でそれらダイマーを同時発現させることによって製造することができる。
【0011】
或いは、AcPL/IL−1Rrp1ダイマーは、受容体サブユニットの一方を免疫グロブリン重鎖の定常領域に融合し、もう一方の受容体サブユニットを免疫グロブリン軽鎖の定常領域に融合することによって製造することができる。例えば、AcPLタンパク質は、ヒトIgG1のCH1−ヒンジ−CH2−CH3領域に融合することができ、IL−1Rrp1タンパク質は、Igκ軽鎖のCκ領域に融合させることができ、逆の場合も同じである。免疫グロブリン軽鎖融合タンパク質および免疫グロブリン重鎖融合タンパク質をコードしているDNAを用いてトランスフェクションされた細胞は、AcPL融合タンパク質およびIL−1Rrp1融合タンパク質を含有する重鎖/軽鎖ヘテロダイマーを発現する。重鎖間のジスルフィド結合により、それらヘテロダイマーは、マルチマー、主にテトラマーを与えるように更に結合する。好都合には、2個のホモダイマーの場合、重鎖または軽鎖融合が発現され、このようなホモダイマーはヘテロダイマーから容易に分離することができる。
【0012】
IL−18受容体タンパク質複合体に加えて、本発明は、ヘテロマーポリペプチドをコードしている単離されたDNA、ヘテロマーポリペプチドをコードしているDNAを含有する発現ベクター、およびこのような発現ベクターを用いてトランスフェクションされた宿主細胞を包含する。可溶性の形のタンパク質を含めた組換え体IL−18受容体の製造方法も開示する。新規ポリペプチドと免疫反応性の抗体も、本明細書中において提供する。
【0013】
本発明の一つの実施態様において、ヘテロマーIL−18受容体のポリペプチドサブユニットには、配列番号:2または配列番号:6に記載の少なくとも1個のAcPLサブユニット、および配列番号:4または配列番号:8に記載の少なくとも1個のIL−1Rrp1サブユニットが含まれる。これらポリペプチドをコードしているDNAは、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:3および配列番号:7にそれぞれ示される。配列番号:1によってコードされるAcPLサブユニットタンパク質には、14アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号:2の残基1−14)を含む356アミノ酸の細胞外ドメイン(配列番号:2のN末端からC末端への残基1−356);25アミノ酸の膜貫通領域(残基357−381)および218アミノ酸の細胞質ドメイン(残基382−599)が含まれる。配列番号:5によってコードされるAcPLサブユニットタンパク質には、14アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号:6の残基1−14)を含む356アミノ酸の細胞外ドメイン(配列番号:6の残基1−356);24アミノ酸の膜貫通領域(残基357−380)およびアミノ酸残基381−614の細胞質ドメインが含まれる。配列番号:3によってコードされるIL−1Rrp1サブユニットタンパク質には、19アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号:4の残基1−19)を含む329アミノ酸の細胞外ドメイン(配列番号:4の残基1−329);21アミノ酸の膜貫通領域(配列番号:4の残基330−350);およびアミノ酸残基351−541の細胞質ドメインが含まれる。配列番号:7によってコードされるIL−1Rrp1サブユニットタンパク質には、18アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号:8の残基1−18)を含む322アミノ酸の細胞外ドメイン(配列番号:8の残基1−322);25アミノ酸の膜貫通領域(配列番号:8の残基323−347);およびアミノ酸残基348−537の細胞質ドメインが含まれる。更に、IL−1Rrp1は、米国特許第5,776,731号に記載されているし、AcPLは、本明細書中に援用される同時係属出願S/N60/078,835号およびS/N60/072,301号に記載されている。
【0014】
好ましくは、ダイマーIL−18受容体のポリペプチドサブユニットは、所望の活性を有するヘテロマー複合体を一緒に形成するIL−1Rrp1およびAcPLポリペプチドの可溶性フラグメントである。このようなポリペプチドには、タンパク質の膜貫通領域および細胞質ドメインの全部または一部分を欠いたものが含まれる。したがって、例えば、本発明のヘテロマー受容体複合体には、配列番号:2または配列番号:6の細胞外ドメインである少なくとも1個のサブユニットおよび配列番号:4または配列番号:8の細胞外ドメインである少なくとも1個のサブユニットが含まれうる。AcPLおよびIL−1Rrp1のこれら可溶性細胞外ドメインは、それらのシグナルペプチドを含むことができるしまたは除外することができる。したがって、もう一つの実施態様において、ヘテロマーIL−18受容体には、配列番号:2または配列番号:6のアミノ酸残基1−356または残基15−356、および配列番号:4のアミノ酸残基1−329または残基20−329または配列番号:8のアミノ酸残基1−325または残基19−322が含まれる。シグナル配列を含むことの妥当性は、融合タンパク中のAcPLまたはIL−1Rrp1の位置および組換えDNA技術によって受容体が生産される予定の宿主細胞のような因子に依る。好ましい実施態様において、可溶性AcPLまたは可溶性IL−1Rrp1フラグメントの一方をコードしているDNA構築物を、免疫グロブリン重鎖の定常領域をコードしているDNAに融合し、可溶性AcPLまたは可溶性IL−1Rrp1フラグメントのもう一方をコードしているDNA構築物を、免疫グロブリン軽鎖の定常領域をコードしているDNAに融合する。
【0015】
或いは、IL−18受容体は、AcPLまたは可溶性AcPLフラグメントと一緒に非共有結合によって複合体を形成したIL−1Rrp1または可溶性IL−1Rrp1フラグメントを含んでいてよい。IL−1Rrp1のAcPLへの非共有結合は、IL−18を結合する受容体の能力を妨げない任意の適当な手段によって得ることができる。一つのアプローチにおいて、最初の化合物をIL−1Rrp1に結合し、その最初の化合物に非共有結合するであろうもう一つの化合物をAcPLに結合する。このような化合物の例は、ビオチンおよびアビジンである。例えば、ビオチンとアビジンとの非共有結合相互作用によって受容体が形成される。本発明の一つの実施態様において、IL−1Rrp1およびAcPLは組換え体ポリペプチドであり、それぞれ組換え体細胞から精製された後、互いに非共有結合して受容体を形成する。宿主細胞は、二つの異なった発現ベクターを用いて形質転換することができるので、IL−1Rrp1およびAcPLは両方とも、組換え体宿主細胞によって生産される。このような形質転換された宿主細胞によって生産されるIL−1Rrp1およびAcPLは、非共有結合相互作用によって複合体を形成するように結合することができる。このような形質転換された細胞が、膜に結合した形のタンパク質を発現する場合、このような細胞は、競合検定を含めた種々の検定で有用である。
【0016】
実施例1に記載の結合検定は、IL−1Rrp1単独、AcPL単独、およびIL−1Rrp1およびAcPLの組合せを用いてトランスフェクションされた細胞からの上澄みによるIL−18の結合を比較する。IL−1Rrp1およびAcPLを同時発現する細胞からの上澄みは、高レベルのIL−18結合を示し;IL−1Rrp1だけを発現する細胞からの上澄みは、低レベルのIL−18結合を示し;そしてAcPLだけを用いてトランスフェクションされた細胞からの上澄みは、IL−18を結合しない。実施例2に記載のNFκB誘導検定は、IL−1Rrp1単独でトランスフェクションされた細胞およびAcPL単独でトランスフェクションされた細胞が、IL−18刺激に応答しないことを示している。しかしながら、IL−1Rrp1およびAcPL両方を用いて同時トランスフェクションされ且つIL−18を用いて刺激された細胞は、NFκB誘導を大きく増大させた。
【0017】
本明細書で用いられる用語IL−1Rrp1及びAcPLは、所望の生物学的活性を有する天然のタンパク質の変異体及び短縮型(truncated form)を含む。天然の配列の1つ又は複数のアミノ酸の付加、置換又は削除によって産生される変異体は、後ほどより詳細に論ずる。
【0018】
上述したように、可溶性IL−1Rrp1および可溶性AcPLポリペプチドは、いくつかの用途に好適である。本発明の文脈中で用いられる“可溶性IL−1Rrp1”とは、天然のIL−1Rrp1ポリペプチドの細胞外領域の全部または一部分とアミノ酸配列がほぼ同様であり、しかも細胞膜上にポリペプチドを保持させると考えられる膜貫通領域を欠いているために、発現時に分泌されるポリペプチドを意味する。適当な可溶性IL−1Rrp1ポリペプチドは、所望の生物学的活性を保持する。可溶性IL−1Rrp1は、その可溶性IL−1Rrp1が分泌されうるという条件ならば、膜貫通領域の一部分または細胞質ドメインの一部分または他の配列も含んでいてよい。
【0019】
同様に、本明細書中で用いられる“可溶性AcPL” という用語は、天然のAcPLポリペプチドの細胞外領域の全部または一部分とアミノ酸配列がほぼ同様であり、しかも発現時に分泌されるが、所望の生物学的活性を保持しているタンパク質を意味する。可溶性AcPLは、そのポリペプチドが分泌されるのであれば、膜貫通領域、細胞質ドメイン、または他の配列の一部分を含んでいてよい。
【0020】
一つの実施態様において、可溶性IL−1Rrp1およびAcPLポリペプチドには、細胞外ドメイン全体が含まれる。分泌されるためには、それら可溶性ポリペプチドは、天然のシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドを含む。したがって、可溶性IL−1Rrp1ポリペプチドの例は、配列番号:4のアミノ酸1−329(ヒトIL−1Rrp1)および配列番号:8のアミノ酸1−322(ネズミIL−1Rrp1)を含む。可溶性AcPLポリペプチドの例は、配列番号:2のアミノ酸1−356(ヒトAcPL)および配列番号:6のアミノ酸1−356(ネズミAcPL)を含む。
【0021】
抗体Fc領域ポリペプチドに融合した配列番号:4のIL−1Rrp1の細胞外ドメインおよびFc領域ポリペプチドに融合したAcPLの細胞外ドメインを含む可溶性融合タンパク質を実施例1に記載する。
【0022】
可溶性AcPLおよび可溶性IL−1Rrp1は、所望のタンパク質を発現するそのままの細胞を、例えば遠心分離によって培地から分離し、所望のタンパク質の存在についてその培地(上澄み)を検定することによって確認する(そして、その非可溶性膜結合対応物と識別する)ことができる。その培地は、以下の実施例に記載されたのと同様または同一である手順を用いて検定することができる。培地中のAcPLまたはIL−1Rrp1の存在は、そのタンパク質が細胞から分泌されたこと、したがって、可溶性の形の所望のタンパク質であることを示している。可溶性AcPLおよび可溶性IL−1Rrp1は、これらタンパク質の天然に存在する形であってよい。或いは、AcPLおよびIL−1Rrp1タンパク質の可溶性フラグメントは、以下に記載のように、組換えDNA技術によって製造することができるしまたはそれ以外の場合は単離することができる。
【0023】
可溶性の形のIL−1Rrp1およびAcPLの使用は、いくつかの用途に好都合である。組換え体宿主細胞からのタンパク質の精製は、可溶性タンパク質がそれら細胞から分泌されるので容易になる。更に、可溶性IL−1Rrp1およびAcPLタンパク質を含む本発明の受容体は、概して、静脈内投与に一層適している。
【0024】
IL−1Rrp1およびAcPLタンパク質のいろいろなドメインおよびシグナルペプチドについての前述の考察に関して、当業者は、タンパク質のこのような領域の上記境界がおおよそのものであることを認識するであろう。例えば、シグナルペプチドの切断部位を予測する計算機プログラムが利用可能であるが、予測される部位以外の部位で切断が起こることがありうる。更に、タンパク質標品は、2ヶ所以上の部位でのシグナルペプチドの切断のために、異なったN末端アミノ酸を有するタンパク質分子の混合物を含むことがありうるということが確認されている。したがって、細胞外ドメインを含む可溶性IL−1Rrp1およびAcPLポリペプチドには、細胞外ドメインのC末端として上で確認されるものとは異なることがありうるC末端アミノ酸を有するものが含まれる。更に、用いられる特定の発現系によって異なることがありうる翻訳後プロセシングは、異なったN末端を有するタンパク質を生じるかもしれない。所望の生物学的活性を保持しているこのような変異体は、本明細書中で用いられる“IL−1Rrp1ポリペプチド” および“AcPLポリペプチド”という用語によって包含される。
【0025】
可溶性ポリペプチドを含めて切断されたIL−1Rrp1およびAcPLは、多数の慣用的な技術のいずれによっても製造することができる。組換え体タンパク質の場合、所望のフラグメントをコードしているDNAフラグメントは、発現ベクター中にサブクローン化することができる。或いは、所望のDNA配列は、既知の技術を用いて化学的に合成することができる。DNAフラグメントは、完全長さのクローン化されたDNA配列の制限エンドヌクレアーゼ消化によって製造され、そしてアガロースゲル上の電気泳動によって単離することができる。1ヶ所または複数の制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有するリンカーは、所望のDNAフラグメントを発現ベクター中に挿入するのに用いることができるし、またはそこに天然に存在する切断部位でそのフラグメントを消化することができる。DNAフラグメントのN−またはC末端を所望の地点まで再構築するオリゴヌクレオチドを合成することができる。そのオリゴヌクレオチドは、所望のコーディング配列の上流に制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有し且つそのコーディング配列のN末端に開始コドン(ATG)を置くことができる。
【0026】
周知のポリメラーゼ連鎖反応手順を用いて、所望のタンパク質フラグメントをコードしているDNA配列を単離することもできる。そのフラグメントの所望の末端を含むオリゴヌクレオチドプライマーは、このようなポリメラーゼ連鎖反応において用いられる。いずれの適当なPCR手順も用いてよい。一つのこのような手順は、Saikiら,Science 239:487(1988)に記載されている。もう一つは、Recombinant DNA Methodology,Wuら監修,Academic Press Inc.,サン・ディエゴ(1989),189−196頁に記載されている。概して、PCR反応は、適当な緩衝化溶液中において、5’および3’オリゴヌクレオチドプライマーを鋳型DNA(この場合、IL−1Rrp1またはAcPL DNA)および4種類のデオキシヌクレオチド三リン酸それぞれと結合することを行う。その溶液を加熱し(例えば、95℃−100℃)、二本鎖DNA鋳型を変性させた後、DNAポリメラーゼ酵素を加える前に冷却する。所望のDNAフラグメントを増幅させるために、多数の反応サイクルを行う。
【0027】
AcPLポリペプチドを、共有結合または非共有結合によってIL−1Rrp1ポリペプチドに結合する。共有結合は、非共有結合とは反対に、概して共有結合によって与えられる増大した安定性を考えると、いくつかの用途に、例えば、in vivo 使用に好適である。本発明の受容体を構築する場合、共有結合は、架橋試薬、ペプチドリンカーまたは任意の他の適当な技法によって得ることができる。
【0028】
一つのタンパク質分子をもう一つに架橋するのに有用な多数の試薬が知られている。ヘテロ二官能性およびホモ二官能性リンカーは、この目的のために、例えば、Pierce Chemical Company,ロックフォード,イリノイ州から入手可能である。このようなリンカーは、アミノ酸側鎖上のいくつかの官能基と反応するであろう2種類の官能基(例えば、エステルおよび/またはマレイミド)を含有するので、一つのポリペプチドをもう一つに結合する。
【0029】
本発明において用いることができるペプチドリンカーの一つの種類は、AcPLおよびIL−1Rrp1ドメインを、それぞれのドメインが適当に折りたたまれ、所望の生物学的活性に必要な二次および三次構造を確実にする充分な距離まで隔てる。そのリンカーは、AcPLおよびIL−1Rrp1の細胞外ドメインに適当な空間的配向をとらせて、IL−18の結合部位も形成させるはずである。
【0030】
適当なペプチドリンカーは、当業者に知られており、慣用的な技法によって用いることができる。適当なペプチドリンカーの中には、本明細書中に援用される米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されたものがある。ペプチドリンカーは、一つのポリペプチドをもう一つのポリペプチドに結合させるのに用いられる慣用法のいずれによっても結合させることができる。上記のPierce Chemical Companyから入手可能な架橋試薬は、用いることができるものに含まれる。このような試薬と反応性の側鎖を有するアミノ酸は、ペプチドリンカー中に、例えばその末端に含まれていてよい。好ましくは、ペプチドリンカーによってIL−1Rrp1に結合したAcPLを含む融合タンパク質は、組換えDNA技術によって製造される。
【0031】
本発明の一つの実施態様において、AcPLおよびIL−1Rrp1を、免疫グロブリンに由来するポリペプチドによって結合させる。抗体由来ポリペプチドのいろいろな部分(Fcドメインを含めた)に融合した異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の製造は、例えば、Ashkenaziら(PNAS USA 88:10535,1991)およびByrnら(Nature 344:677,1990)によって記載されている。一つの例として、抗体のFc領域に由来するポリペプチドは、IL−1Rrp1のC末端に結合することができる。別のFcポリペプチドをAcPLのC末端に結合する。ジスルフィド結合は、それら二つのFcポリペプチド間に(例えば、鎖間ジスルフィド結合が、通常は抗体分子中に存在している、いわゆるヒンジ領域中に)形成して、IL−1Rrp1/Fc融合タンパク質に結合したAcPL/Fc融合タンパク質を含むヘテロダイマーが生じる。好都合には、二つの異なった発現ベクター、すなわち、可溶性IL−1Rrp1/Fcをコードしている一つおよび可溶性AcPL/Fcをコードしているもう一つを用いて宿主細胞を同時トランスフェクションする。そのヘテロダイマーは、細胞内にまたは分泌中に形成すると考えられる。
【0032】
本明細書中で用いられる“Fcポリペプチド”という用語には、天然のおよび突然変異タンパク質の形、更には、ダイマー化を促進するヒンジ領域を含有して切断されたFcポリペプチドが含まれる。ヒトIgG1抗体のFc領域に由来する単鎖ポリペプチドをコードしているcDNAは、pBluescript SK(登録商標)クローニングベクター(Stratagene Cloning Systems,ラホヤ,CA)中にクローン化されて、hIgG1Fcと称する組換え体ベクターを生じることができる。独特のBgIII部位は、挿入されたFcをコードしている配列の5’末端付近に位置している。SpeI部位は、停止コドンのすぐ下流である。cDNAによってコードされているFcポリペプチドは、N末端ヒンジ領域から天然のC末端まで伸長している、すなわち、完全長さ抗体Fc領域である。このFcポリペプチドの一つの適当な突然変異タンパク質は、本明細書中に援用される米国特許出願第08/097,827号に記載されている。その突然変異タンパク質は、Fc受容体に関して減少した親和性を示す。
【0033】
ジスルフィド結合によって結合した2個のIL−1Rrp1/Fcポリペプチドまたは2個のAcPL/Fcポリペプチドを含むホモダイマーも、本明細書中に開示されたトランスフェクションされた宿主細胞のいくつかによって生産される。それらホモダイマーは、寸法の違いによって(例えば、ゲル電気泳動によって)互いにおよびヘテロダイマーから分離することができる。ヘテロダイマーも、逐次イムノアフィニティークロマトグラフィー(以下に記載される)によって精製することができる。
【0034】
本発明のIL−18受容体複合体には、抗体軽鎖の定常領域(またはそのフラグメント)および抗体重鎖の定常領域(またはそのフラグメント)の融合タンパク質が含まれる。重鎖の定常領域には、軽鎖と結合するCH1、ヒンジ領域、および重鎖分子のダイマー化に関与するCH2およびCH3ドメインを含めたその定常領域ドメインの4種類全部またはそれらドメインの一部分が含まれうる。前述の融合タンパク質の範囲内にあるのは、重鎖/軽鎖ダイマーをそれぞれの重鎖領域間のジスルフィド結合によって結合する二つのダイマーによって形成されるテトラマーがある。
【0035】
免疫グロブリン軽鎖ポリペプチドに関して、κファミリーおよびλファミリーのポリペプチドは、本発明の実施に適している。したがって、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEを含めた免疫グロブリンダイマーまたはテトラマーのいずれの種類も、本発明のヘテロマー分子の基準でありうる。
【0036】
本発明により、機能性ヘテロマーポリペプチドは、通常は互いに結合する多数の重鎖および多数の軽鎖の分子間の結合によって製造することができる。例えば、ヒトIgG1の定常領域は、ヒト軽鎖κの定常領域(Cκと称される)と結合するであろう。hIgG1定常領域のアミノ酸配列は報告されている(Ellison,JW,Berson,BJおよびHood,LE 1982)。ヒト免疫グロブリンCγ1遺伝子のヌクレオチド配列は報告されている(Nuc.Acids Res.10:4071およびWalls,MA,Hsiao,KCおよびHarris,LJ 1993)。ヒト定常領域を含むPCR増幅免疫グロブリン可変ドメインの発現のためのベクターは開示されている(Nuc.Acids Res.21:2921)。ヒト軽鎖cκの配列も報告されている(Shuford,W,Raff,HV,Finley,JW,Esselstyn,JおよびHarris,LJ.1991)。IgGオリゴマー化への軽鎖V領域重複の作用および in vivo 効力。Science 252:724およびSteinberger,P,Kraft,DおよびValenta,R(1996)。アレルギー患者からの組合せIgEライブラリーの構築。主要チモシー草花粉アレルゲンに関して特異性を有するヒトIgE Fabの単離および特性決定。Ph1 p5.J.Biol.Chem.,271:10972)。
【0037】
重鎖および軽鎖の抗体領域を含むIL−18受容体実施態様は、式
R1−L1:R2−L2またはR2−L2:R1−L1または
R1−L2:R2−L1またはR2−L1:R1−L2
R1−L1:R2−L2/R2−L2:R1−L1または
R1−L2:R2−L1/R2−L1:R1−L2
(式中、L1は免疫グロブリン重鎖フラグメントであり、そのN末端は、少なくともCH1領域によって伸長し;L2は免疫グロブリン軽鎖フラグメントであり;R1はAcPLまたはAcPLフラグメントであり;R2はIL−1Rrp1またはIL−1Rrp1フラグメントであり;:は重鎖および軽鎖の抗体領域間の結合であり、そして/は重鎖および重鎖の抗体領域間の結合である)
によって示される融合タンパク質である。ダイマーの場合、得られた融合ポリペプチドは、重鎖/軽鎖によって結合した二つの受容体サブユニットを含む。テトラマーの場合、その融合タンパク質は、4個の受容体サブユニットを含み、構造が抗体に似ていて、IL−18結合部位を二価で示す。
【0038】
前述の融合ポリペプチドを得るために、ヒトIgG1抗体に由来する抗体重鎖ポリペプチドをコードしているcDNA(CH1−H−CH2−CH3)を、pDC409発現ベクター中にクローン化して、hIgG1と称される組換え体ベクターを生じることができる。独特のBgIII部位は、挿入された重鎖をコードしている配列の5’末端付近に位置している。NotI部位は、停止コドンのすぐ下流である。cDNAによってコードされている重鎖ポリペプチドは、CH1領域のN末端から天然のC末端まで伸長している。抗体軽鎖を得るためには、ヒトκ鎖定常領域に由来する単鎖ポリペプチドをコードしているcDNAをpDC409発現ベクター中にクローン化して、hIgκと称される組換え体ベクターを生じることができる。この配列は、5’末端で独特のBgIII部位までおよび3’末端で独特のNotI部位まで隣接している。このような抗体ポリペプチドを包含する本発明の実施態様には、抗体軽鎖(またはそのフラグメント)の定常領域の上流にAcPL(またはそのフラグメント)を含む第一融合ポリペプチドおよび抗体重鎖(または重鎖フラグメント)の定常領域の上流にIL−1Rrp1を含む第二融合ポリペプチドが含まれ、そのN末端は、少なくともCH1領域によって伸長している。AcPL軽鎖融合ポリペプチドとIL−1Rrp1−重鎖融合ポリペプチドとの間に1個または複数のジスルフィド結合が形成され、したがって、本発明の受容体が生じる。更に代わるものとして、IL−1Rrp1−抗体軽鎖融合ポリペプチドを製造し、そしてAcPL−抗体重鎖融合ポリペプチドを含む融合ポリペプチドと結合させる(にジスルフィド結合させる)。前述のジスルフィド結合した分子の二つを結合する場合、追加のジスルフィド結合がそれら二つの抗体領域間に形成される。4個の融合ポリペプチドを含む得られた本発明の受容体は、構造が抗体に似ていて、IL−18結合部位を二価で示す。
【0039】
AcPLおよびIL−1Rrp1ポリペプチドは、細胞源から別々に精製された後、互いに結合させることができる。或いは、組換えDNA技術を用いて、本発明の受容体を製造することができる。AcPLおよびIL−1Rrp1ポリペプチドは、別々に製造され、そして引き続き共有結合させるために、形質転換された宿主細胞から精製することができる。本発明の一つの実施態様において、宿主細胞は、AcPLおよびIL−1Rrp1を別々のポリペプチドとしてコードする異種DNAを用いて形質転換/トランスフェクションされる。それら二つのポリペプチドは、二つの遺伝子それぞれの開始および停止コドンを含む同じ発現ベクターによってコードされていてよいし、または組換え体細胞は、二つの別々の発現ベクターを用いて同時トランスフェクションされてよい。もう一つの実施態様において、受容体は、組換え体細胞中において融合タンパク質として生産される。
【0040】
本発明の一つの実施態様において、受容体タンパク質は、式
R1−L−R2またはR2−L−R1
(式中、R1はAcPLまたはAcPLフラグメントであり;R2はIL−1Rrp1またはIL−1Rrp1フラグメントであり;そしてLはペプチドリンカーである)
を有する組換え体融合タンパク質である。
【0041】
本発明の融合タンパク質には、AcPLのC末端部分がリンカーに融合し、それがIL−1Rrp1のN末端部分に融合している構築物、およびIL−1Rrp1のC末端部分がリンカーに融合し、それがAcPLのN末端部分に融合している構築物も含まれる。AcPLは、AcPLおよびIL−1Rrp1の所望の生物学的活性を保持している単一タンパク質を生じるような方法で、IL−1Rrp1に共有結合している。融合タンパク質の成分を、それらが存在する順に挙げる(すなわち、N末端ポリペプチドを最初に挙げ、続いてリンカー、そして次に、C末端ポリペプチド)。
【0042】
融合タンパク質をコードしているDNA配列は、組換えDNA技術を用いて、AcPLおよびIL−1Rrp1をコードしている別々のDNAフラグメントを適当な発現ベクター中に挿入するように構築される。AcPLをコードしているDNAフラグメントの3’末端は、mRNAを単一の生物学的に活性な融合タンパク質に翻訳させる段階のそれら配列の読み枠を用いて、IL−1Rrp1をコードしているDNAフラグメントの5’末端に(リンカーによって)連結される。或いは、IL−1Rrp1をコードしているDNAフラグメントの3’末端は、mRNAを単一の生物学的に活性な融合タンパク質に翻訳させる段階のそれら配列の読み枠を用いて、AcPLをコードしているDNAフラグメントの5’末端に(リンカーによって)連結される。N末端シグナル配列をコードしているDNA配列は、N末端ポリペプチドをコードしているDNA配列上で保持されうるが、次の(C末端)DNA配列まで通読するのを妨げると考えられる停止コドンは排除される。逆に、翻訳を終結させるのに必要な停止コドンは、次のDNA配列上で保持されている。シグナル配列をコードしているDNAは、好ましくは、C末端ポリペプチドをコードしているDNA配列から除去される。
【0043】
所望のポリペプチドリンカーをコードしているDNA配列は、任意の適当な慣用的な技法を用いて、AcPLおよびIL−1Rrp1をコードしているDNA配列の間におよびそれらと同様の読み枠中に挿入することができる。例えば、リンカーをコードしていて且つ適当な制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する化学合成オリゴヌクレオチドは、AcPLおよびIL−1Rrp1をコードしている配列の間に連結することができる。
【0044】
或いは、化学合成されたDNA配列は、AcPLおよびIL−1Rrp1のどちらかの3’末端(停止コドンを含まない)に相補的な配列、続いてリンカーをコードしている配列、その後に、AcPLおよびIL−1Rrp1のもう一方の5’末端に相補的な配列を含有しうる。次に、オリゴヌクレオチドに支配される突然変異誘発を用いて、そのリンカーをコードしている配列を、AcPLおよびIL−1Rrp1の直接融合を含有するベクター中に挿入する。
【0045】
本発明は、AcPL、IL−1Rrp1およびペプチドリンカーを含む上記融合タンパク質をコードしている単離されたDNA配列を提供する。本明細書中に開示されたAcPLポリペプチドをコードしているDNAも提供するが、それは、免疫グロブリン由来ポリペプチドに融合したAcPLポリペプチドをコードしているDNAである。本発明によって包含されるAcPLをコードしているDNAには、例えば、cDNA、化学合成DNA、PCRによって単離されたDNA、ゲノムDNAおよびそれらの組合せが含まれる。
【0046】
本明細書中で更に提供されるのは、単離されたDNA配列を含有する組換え体発現ベクターである。“発現ベクター”とは、所望のタンパク質をコードするDNAであって、しかも(1)遺伝子発現において調節の役割を有する1種類または複数の遺伝因子、例えば、以下の(2)に機能的に結合したプロモーター、オペレーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写され且つタンパク質に翻訳される所望のタンパク質をコードしているDNA配列、および(3)適当な転写および翻訳の開始および終結配列の集合を含む転写単位を含むDNAを発現させるのに用いられる複製可能なDNA構築物を意味する。プロモーターおよび他の調節因子の選択は、概して、予定の宿主細胞によって変化する。
【0047】
それら発現ベクターにおいて、転写または翻訳を制御する調節因子は、概して、哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫の遺伝子に由来する。通常は、複製起点、および形質転換細胞の認識を容易にする選択遺伝子によって与えられる、宿主中で複製する能力は、追加的に包含されうる。レトロウイルスに由来するベクターも用いることができる。
【0048】
DNA領域は、それらが互いに機能的に関連している場合、機能的に結合される。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)をコードしているDNAは、宿主細胞膜によって分泌される前駆物質としてポリペプチドが発現される場合、そのポリペプチドのDNAに機能的に結合され;プロモーターは、コーディング配列の転写を制御している場合、当該コーディング配列に機能的に結合され;そしてリボソーム結合部位は、翻訳を可能にするようにコーディング配列が配置されている場合、それに機能的に結合される。概して、“機能的に結合される”とは、隣接している、分泌リーダーの場合、隣接しているおよび読み枠中を意味する。
【0049】
形質転換された宿主細胞は、組換えDNA技術を用い、異種DNAを用いて形質転換またはトランスフェクションされている細胞である。本発明の文脈中の異種DNAは、本発明のタンパク質をコードしている配列を含む。宿主細胞は、その異種DNAをクローン化するまたは増幅する目的で形質転換されてよいし、またはタンパク質の生産のために発現ベクターを用いて形質転換されてよい。適当な宿主細胞には、原核生物、酵母または高等真核生物の細胞が含まれる。細菌、真菌、酵母および哺乳動物の細胞宿主と一緒に用いるのに適当なクローニングベクターおよび発現ベクターは、Pouwelsら(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,エルセビア,ニューヨーク,1985)に記載されており、その関連性のある開示は本明細書中に援用される。
【0050】
原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性の微生物、例えば、大腸菌(E.coli)またはバチルス属が含まれる。原核生物発現ベクターは、概して、1種類またはそれ以上の表現型選択性マーカー、例えば、抗生物質耐性を与えるまたは独立栄養要求を与えるタンパク質をコードしている遺伝子、および宿主内で確実に増幅させるための宿主によって認識される複製起点を含む。形質転換に適した原核生物宿主の例には、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、並びにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)およびブドウ球菌属(Staphylococcus)の属内の様々な種が含まれるが、選択の問題として、他のものを用いてもよい。
【0051】
細菌用途に有用な発現ベクターは、周知のクローニングベクターpBR322(ATCC37017)の遺伝因子を含む商業的に入手可能なプラスミドに由来する選択性マーカーおよび細菌複製起点を含むことができる。このような市販のベクターには、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,ウプサラ,スウェーデン)およびpGEM1(Promega Biotec,マディソン,WI,USA)が含まれる。これらpBR322“主鎖”部分を、適当なプロモーターおよび発現される構造配列と結合する。大腸菌は、典型的には、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322の誘導体を用いて形質転換される(Bolivarら,Gene 2:95,1977)。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性の遺伝子を含有し、これが、形質転換された細胞を識別するための簡単な手段を提供する。
【0052】
組換え体微生物発現ベクターにおいて一般的に用いられるプロモーターには、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系(Changら,Nature 275:615,1978;およびGoeddelら,Nature 281:544,1979)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら,Nucl.Acids Res.8:4057,1980;およびEPA 36,776)およびtacプロモーター(Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,412頁,1982)が含まれる。特に有用な細菌発現系は、ファージλPLプロモーターおよびcI857ts熱誘導性リプレッサーを用いる。λPLプロモーターの誘導体を組み込む、American Type Culture Collectionから入手可能なプラスミドベクターには、大腸菌株JMB9に内在するプラスミドpHUB2(ATCC37092)および大腸菌株RR1に内在するpPLc28(ATCC53082)が含まれる。
【0053】
組換え体受容体タンパク質は、酵母宿主において、好ましくは、ビール酵母菌(S.cerevisiae)のようなサッカロミセス属種(Saccharomyces)から発現させてもよい。ピチア属(Pichia)またはクルイベロミセス属(Kluyveromyces)のような他の属の酵母を用いてもよい。酵母ベクターは、概して、2μm酵母プラスミドからの複製起点または自律複製配列(ARS)、プロモーター、受容体融合タンパクをコードしているDNA、ポリアデニル化および転写終結のための配列、および選択遺伝子を含有するであろう。好ましくは、酵母ベクターは、例えば、酵母および大腸菌両方の形質転換を可能にする複製起点および選択性マーカー、大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子、およびトリプトファン中で成長する能力を欠いた酵母の突然変異菌株に関する選択マーカーを与えるビール酵母菌trp1遺伝子、および構造配列下流の転写を誘導する高発現された酵母遺伝子に由来するプロモーターを含むであろう。次に、酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1損傷の存在は、トリプトファンの不存在下の成長によって形質転換を検出するのに有効な環境を与える。
【0054】
酵母ベクター中の適当なプロモーター配列には、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzemanら,J.Biol.Chem.255:2073,1980)、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼのような他の解糖酵素(Hessら,J.Adv.Enzyme Reg.7:149,1968;およびHollandら,Biochem.17:49000,1978)のプロモーターが含まれる。酵母発現に用いるのに適したベクターおよびプロモーターは、R.Hitzemanら,EPA73,657号に更に記載されている。
【0055】
好ましい酵母ベクターは、大腸菌中の選択および複製のためのpBR322からのDNA配列(Ampr遺伝子および複製起点)、およびグルコース抑制性ADH2プロモーターおよびα因子分泌リーダーを含めた酵母DNA配列を用いて組み立てることができる。そのADH2プロモーターは、Russellら(J.Biol.Chem.258:2674,1982)およびBeierら(Nature 300:724,1982)によって記載されている。酵母α因子リーダーは、異種タンパクの分泌を支配し、発現されるプロモーターと構造遺伝子との間に挿入されうる。例えば、Kurjanら,Cell 30:922,1982;およびBitterら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5330,1984を参照されたい。リーダー配列は、その3’末端付近に1ヶ所またはそれ以上の有用な制限部位を含有するように修飾されて、そのリーダー配列の異種遺伝子への融合を容易にすることができる。
【0056】
適当な酵母形質転換プロトコールは、当業者に知られている。典型的な技法は、Hinnenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929,(1978)に記載されており、0.67%酵母窒素基剤、0.5%カザミノ酸、2%グルコース、10μg/mlアデニンおよび20μg/mlウラシルからなる選択培地中でTrp+形質転換細胞について選択することである。
【0057】
ADH2プロモーターを含むベクターによって形質転換された宿主菌株は、80μg/mlアデニンおよび80μg/mlウラシルを補足した1%酵母エキス、2%ペプトンおよび1%グルコースからなる富裕培地中において発現のために成長させることができる。ADH2プロモーターの抑制解除は、培地グルコースの消耗で起こる。粗製酵母上澄みを濾過によって集め、更に精製する前に4℃で保持する。
【0058】
種々の哺乳動物または昆虫の細胞培養系を用いて、組換え体タンパクを発現させることができる。昆虫細胞中における異種タンパクの生産のためのバキュロウイルス系は、LuckowおよびSummers,Bio/Technology 6:47(1988)によって概説されている。適当な哺乳動物宿主細胞系の例には、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒーラおよびBHK細胞系が含まれる。更に別の適当な哺乳動物宿主細胞には、両方ともサル腎に由来するCV−1細胞(ATCC CCL70)およびCOS−7細胞(ATCC CRL1651;Gluzman,Cell 23:175,1981によって記載されている)が含まれる。もう一つのサル腎細胞系であるCV−1/EBNA(ATCC CRL10478)は、エプスタイン・バールウイルス核抗原−1(EBNA−1)をコードしている遺伝子およびCMV調節配列を含有するベクターを用いたCV−1細胞系のトランスフェクションによって誘導された(McMahanら,EMBO J.10:2821,1991)。EBNA−1遺伝子は、EBV複製起点を含有するHAV−EOまたはpDC406のような発現ベクターのエピソーム複製を可能にする。
【0059】
哺乳動物発現ベクターは、複製起点、発現される遺伝子に結合した適当なプロモーターおよびエンハンサー、および他の5’または3’フランキング非転写配列などの非転写因子、および必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよび受容体部位などの5’または3’非翻訳配列、および転写終結配列を含んでいてよい。脊椎動物細胞を形質転換する場合に用いられる発現ベクター中の転写および翻訳調節配列は、ウイルス源によって提供されうる。例えば、一般的に用いられるプロモーターおよびエンハンサーは、ポリオーマ、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)およびヒトサイトメガロウイルスに由来する。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列、例えば、SV40複製起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化部位は、異種DNA配列の発現に必要な他の遺伝因子を提供するのに用いることができる。初期および後期プロモーターは、両方とも、SV40ウイルス複製起点も含有するフラグメントとしてウイルスから容易に得られるので、特に有用である(Fiersら,Nature 27:113,1978)。より小さいまたはより大きいSV40フラグメントも、HindIII部位からBglI部位の方へ伸長した、ウイルス複製起点に位置する約250bp配列が含まれるならば用いることができる。
【0060】
典型的なベクターは、OkayamaおよびBerg(Mol.Cell.Biol.3:280,1983)によって開示されたように構築することができる。C127ネズミ乳房上皮細胞中での哺乳動物受容体cDNAの安定した高レベル発現に有用な一つの系は、実質的には、Cosmanら(Mol.Immunol.23:935,1986)によって記載のように構築することができる。レトロウイルスに由来するベクターを用いてもよい。
【0061】
AcPLおよび/またはIL−1Rrp1タンパクの宿主細胞からの分泌が望まれる場合、発現ベクターは、シグナルまたはリーダーペプチドをコードしているDNAを含んでいてよい。天然のシグナル配列の代わりに、米国特許第4,965,195号に記載のインターロイキン−7(IL−7)のシグナル配列;Cosmanら,Nature 312:768(1984)に記載のインターロイキン−2受容体のシグナル配列;EP367,566号に記載のインターロイキン−4シグナルペプチド;米国特許第4,968,607号に記載のI型インターロイキン−1受容体シグナルペプチド;およびEP460,846号に記載のII型インターロイキン−1受容体シグナルペプチドなどの異種シグナル配列を加えることができる。
【0062】
本発明は、本発明の組換え体タンパク質を製造する方法であって、そのタンパク質をコードするDNA配列を含む発現ベクターを用いて形質転換された宿主細胞を、発現を促進する条件下で培養することを含む方法を提供する。次に、所望のタンパク質を培地または細胞抽出物から精製する。所望のタンパク質は、例えば、AcPL、IL−1Rrp1またはそのヘテロダイマー受容体であってよい。細胞不含翻訳系も、本発明の新規DNAに由来するRNAを用いて所望のタンパク質を製造するのに用いることができると考えられる。
【0063】
一つの実施例として、組換え体タンパク質を培地中に分泌する発現系からの上澄みを、最初に、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を用いて濃縮することができる。濃縮工程後、その濃厚物を適当な精製マトリックスに適用することができる。例えば、適当なアフィニティーマトリックスは、IL−18を含むことができる。IL−18アフィニティーマトリックスは、臭化シアンで活性化されたセファロース(Pharmacia)またはHydrazide Affigel(Biorad)に、製造者の推奨規格にしたがって、組換え体ヒトIL−18をカップリングさせることによって製造することができる。適当な支持体に結合した抗体を用いる逐次的免疫精製が好適である。AcPLに特異的な抗体に結合したタンパク質を回収し、不溶性支持体上のIL−1Rrp1に特異的な抗体と接触させる。このように、両抗体と免疫反応性のタンパク質を識別し且つ単離することができる。
【0064】
或いは、陰イオン交換樹脂、例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)側基を有するマトリックスまたは基質を用いることができる。それらマトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に一般的に用いられる他の種類でありうる。或いは、陽イオン交換工程を用いることができる。適当な陽イオン交換体には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスが含まれる。スルホプロピル基が好適である。逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)工程を、疎水性RP−HPLC培地、例えば、メチル側基または他の脂肪族側基を有するシリカゲルを用いて1回またはそれ以上行って、融合タンパク質を更に精製することができる。
【0065】
前述の精製工程のいくつかまたは全部をいろいろな組合せで行って、本質的に均一な組換え体タンパク質を提供することができる。組換え体細胞培養物は、タンパク質それぞれの由来の種において、例えば、いくつかの細胞種類の表面上で実際に見出されるような、通常はIL−1Rrp1またはAcPLと結合しうるタンパク質を混入したものを含まない融合タンパク質の製造を可能にする。
【0066】
前述の精製手順は、本発明の非組換え受容体を精製するのにも用いることができるものの中にある。ホモダイマー(IL−1Rrp1−リンカー−IL−1Rrp1およびAcPL−リンカー−AcPL)を生じることができる結合手順を用いる場合、このようなホモダイマーからヘテロダイマーを分離する精製手順を用いる。このような手順の一例は、上で考察されたような逐次的免疫精製である。一つの実施態様において、AcPL(組換え体または非組換え体)を、SDS−PAGEによって他の(混入した)タンパク質に該当するバンドが検出されないように精製する。
【0067】
細菌培養物中で生産される組換え体タンパク質は、通常、最初に細胞ペレットからの抽出後、1回またはそれ以上の濃縮、塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーの工程によって単離される。最後に、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を、最終精製工程に用いることができる。組換え体融合タンパク質の発現において用いられる微生物細胞は、凍結・融解サイクル、音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤の使用を含めたいずれの慣用法によっても破壊することができる。
【0068】
融合タンパク質を分泌タンパク質として発現する酵母の発酵は、精製を極めて簡単にする。大規模発酵から得られる分泌された組換え体タンパク質は、Urdalら(J.Chromatog.296:171,1984)によって開示されたのと類似した方法により、分離用HPLCカラム上での組換え体タンパク質の精製に2回の逐次的逆相HPLC工程を行って精製することができる。
【0069】
IL−1Rrp1またはAcPLのDNA配列またはアミノ酸配列は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:7に示されるものとは異なることがありうる。既知の遺伝暗号縮重のために、同様のアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列には、かなりの変異がありうる。更に、中程度ストリンジェントまたは高ストリンジェント条件下において、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7の天然のDNA配列にハイブリッド形成しうるDNA配列であって、生物学的に活性なIL−1Rrp1またはAcPLポリペプチドをコードするDNA配列も、本発明の文脈中において、IL−1Rrp1をコードしているまたはAcPLをコードしているDNA配列であると考えられる。このようなハイブリッド形成性配列には、以下に記載のもの、および他の哺乳動物種に由来するDNAなどの変異型配列が含まれるが、それらに制限されるわけではない。
【0070】
中程度ストリンジェント条件には、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,1巻,1.101−104頁,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載の条件が含まれる。Sambrookらによって定義される中程度ストリンジェンシーの条件には、5X SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の予洗溶液の使用および約55℃、5X SSC、一晩中のハイブリダイゼーション条件が含まれる。高ストリンジェント条件には、高温でのハイブリダイゼーションおよび洗浄が含まれる。当業者は、温度および洗浄溶液塩類濃度を、プローブの長さなどの因子によって必要に応じて調整してよいことを理解するであろうが、それら条件には、68℃でのハイブリダイゼーション後、0.1X SSC/0.1%SDS中において63−68℃での洗浄が含まれる。もう一つの実施態様において、本発明は、AcPLおよびIL−1Rrp1を含むヘテロダイマー受容体であって、そのAcPLおよびIL−1Rrp1が、中程度または高ストリンジェント条件下において、配列番号:1または配列番号:5、または配列番号:3または配列番号:7それぞれのDNAにハイブリッド形成するDNAによってコードされているヘテロダイマー受容体を提供する。
【0071】
更に、AcPLまたはIL−1Rrp1をコードするヌクレオチド配列におけるいくつかの突然変異は、最終タンパク質産物中において発現されないであろう。例えば、ヌクレオチド置換は、発現を促進して、主に、転写されるmRNA中の二次構造ループを避けるように行うことができる(EP75,444A号を参照されたい)。ヌクレオチド配列の他の変更は、選択された宿主によって一層容易に翻訳されるコドン、例えば、大腸菌発現に周知の大腸菌選択コドンを提供するように行うことができる。
【0072】
天然のIL−1Rrp1またはAcPLのアミノ酸配列は、1個またはそれ以上のアミノ酸を置換、欠失、付加または挿入することによって変更されて、IL−1Rrp1またはAcPL変異体を生じることができる。天然のIL−1Rrp1およびAcPLタンパク質の所望の生物学的活性を有する変異体は、本発明の受容体中で用いることができる。変異タンパク質の生物学的活性を分析することができる検定を、以下の実施例に記載する。生物学的に活性なIL−1Rrp1ポリペプチドは、IL−18を結合することができる。本明細書中に開示されたAcPLポリペプチドの所望の生物学的活性は、AcPLがIL−1Rrp1に結合した場合のIL−18の結合を、IL−1Rrp1単独へのIL−18結合レベルと比較して増大させる能力である。
【0073】
天然のアミノ酸配列への変更は、多数の既知の技法のいずれによっても行うことができる。例えば、突然変異は、天然の配列のフラグメントへの連結を可能にする制限部位に隣接した、突然変異配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の遺伝子座に導入することができる。連結反応後、得られる再構築された配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換または欠失を有する類似体をコードしている。
【0074】
或いは、オリゴヌクレオチドに支配される部位特異的突然変異誘発手順を用いて、必要な置換、欠失または挿入によって変更された特定のコドンを有する変更された遺伝子を提供することができる。上記の変更を行う典型的な方法は、本明細書中に援用されるWalderら(Gene 42:133,1986);Bauerら(Gene 37:73,1985);Craig(BioTechniques,1985年1月,12−19);Smithら(Genetic Egineering:Principles and Methods,Plenum Press,1981);米国特許第4,518,584号および米国特許第4,737,462号によって開示されている。
【0075】
AcPLおよびIL−1Rrp1の生物学的等価変異体は、例えば、アミノ酸残基のいろいろな置換を行うこと、または生物学的活性に必要でない末端または内部のアミノ酸を欠失することによって構築することができる。本発明の一つの実施態様において、変異アミノ酸配列は、天然の配列と少なくとも80%同一、好ましくは、少なくとも90%同一である。類似性%は、例えば、ウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)から入手可能なGAP計算機プログラム6.0バージョンを用いて配列情報を比較することによって決定することができる。そのGAPプログラムは、SmithおよびWaterman(Adv.Appl.Math.2:482,1981)によって変更されたような、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:443,1970)の整列法を用いる。簡単にいうと、そのGAPプログラムは、整列された記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の類似している数を、二つの配列の短い方の記号の全数で割ったものとして類似性を定義している。GAPプログラムの好ましい暗黙値パラメーターには、(1)ヌクレオチドについてのユナリー比較マトリックス(同一性に1および非同一性に0の値を含む)、およびSchwartzおよびDayhoff監修,Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,353−358頁,1979によって記載のような、GribskovおよびBurgess,Nucl.Acids.Res.14:6745,1986の加重比較マトリックス;(2)それぞれのギャップに3.0のペナルティーおよびそれぞれのギャップの記号それぞれに追加の0.10ペナルティー;および(3)末端のギャップにペナルティー無しが含まれる。
【0076】
概して、置換は保存的に行われるはずであり、すなわち、最も好ましい代わりのアミノ酸は、置換される残基に似た物理化学的特性を有するものである。保存的置換の例には、Ile、Val、LeuまたはAlaを互いにのような、一つの脂肪族残基を別のものへの置換、またはLysおよびArg;GluおよびAsp;またはGlnおよびAsn間のような一つの極性残基を別のものへの置換が含まれる。他のこのような保存的置換、例えば、類似の疎水性を有する領域全体の置換は周知である。
【0077】
システイン残基は、再生の際、不必要なまたは不正確な分子内ジスルフィド橋の形成を妨げるように欠失することができるしまたは他のアミノ酸と置き換えることができる。親水性アミノ酸を、IL−1Rrp1およびAcPLの膜貫通領域および/または細胞内ドメイン中の疎水性アミノ酸の代わりに置き換えて、タンパクの水への溶解性を増大させることができる。
【0078】
隣接した二塩基アミノ酸残基は、KEX2プロテアーゼ活性が存在する酵母系において発現を増大させるように修飾することができる。EP212,914号には、タンパク質中のKEX2プロテアーゼプロセシング部位を失活させる部位特異的突然変異誘発の使用が開示されている。KEX2プロテアーゼプロセシング部位は、Arg−Arg、Arg−LysおよびLys−Argの対を変更するように残基を欠失、付加または置換することによって失活して、これら隣接した塩基性残基を生じさせない。これらアミノ酸対は、KEX2プロテアーゼプロセシング部位を構成し、配列番号:2のAcPLタンパク質の残基98−99、323−333、333−334、472−473および475−476で見出される。これらKEX2部位は、配列番号:4のIL−1Rrp1タンパク質の113−114、314−315、364−365、437−438および465−466位で見出される。Lys−Lys対合は、KEX2切断への感受性がかなり小さく、Arg−LysまたはLys−ArgのLys−Lysへの変換は、不活性KEX2部位への保存的且つ好ましいアプローチである。
【0079】
本発明は、関連した天然パターングリコシル化を伴うまたは伴わないタンパク質も包含する。大腸菌などの細菌中における融合タンパク質をコードしているDNAの発現は、非グリコシル化分子を提供する。失活したN−グリコシル化部位を有する機能性突然変異類似体は、オリゴヌクレオチド合成および連結によってまたは部位特異的突然変異誘発技術によって製造することができる。これら類似のタンパク質は、酵母発現系を用いて、均一な還元炭水化物の形で充分な収率で製造することができる。真核生物タンパク質中のN−グリコシル化部位は、アミノ酸トリプレットAsn−A1−Z(但し、A1はProを除く任意のアミノ酸であり、ZはSerまたはThrである)を特徴とする。この配列において、アスパラギンは、炭水化物の共有結合のための側鎖アミノ基を与える。
【0080】
配列番号:2のAcPLアミノ酸配列は、アミノ酸21−23、119−121、152−254および345−347のところに、全て細胞外ドメイン中で見出される4個のこのようなN−グリコシル化部位を含有する。IL−1Rrp1の細胞外ドメインは、配列番号:4の91−93、102−104、150−153、168−170、197−199、203−205、236−238および297−299位にN−グリコシル化部位を含む。このような部位は、別のアミノ酸をAsnの代わりにまたは残基Zの代わりに置換する、AsnまたはZを欠失する、または非Zアミノ酸をA1およびZ間にまたはAsn以外のアミノ酸をAsnおよびA1間に挿入することによって除去することができる。タンパク質中のN−グリコシル化部位を失活させる既知の手順には、米国特許第5,071,972号およびEP276,846号に記載されたものが含まれる。
【0081】
本発明の受容体タンパク質の変異体には、生物学的活性を保持する一次タンパク質の種々の構造体も含まれる。イオン化しうるアミノ基およびカルボキシル基の存在のために、例えば、受容体タンパク質は、酸性または塩基性の塩の形であってよいし、または中性の形であってよい。個々のアミノ酸残基は、酸化または還元によって修飾することもできる。
【0082】
一次アミノ酸構造も、グリコシル基、脂質、リン酸塩、アセチル基等のような他の化学残基と一緒に共有結合または凝集結合を形成することによって修飾されうる。共有結合誘導体は、特定の官能基をアミノ酸側鎖にまたはN−若しくはC末端に結合することによって製造される。本発明の範囲内の受容体タンパク質の他の誘導体には、N−またはC末端融合のように組換え体培養物中での合成などによる他のタンパク質またはポリペプチドと受容体タンパク質の共有結合または凝集結合が含まれる。例えば、結合したポリペプチドは、タンパク質の転移を細胞膜または壁の内側または外側の合成部位から機能部位まで同時翻訳によってまたは翻訳後に支配するタンパク質のN末端領域にあるシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列であってよい(例えば、酵母α−因子リーダー)。
【0083】
ペプチドは、所望のタンパク質に(例えば、組換えDNA技術によって)融合して、精製または識別を容易にすることができる。例には、ポリ−HisまたはFlag(登録商標)ペプチド(Hoppら,Bio/Technology 6:1204,1988および米国特許第5,011,912号)が含まれる。そのFlag(登録商標)ペプチドは、極めて抗原性であり、特異的単クローン性抗体によって可逆的に結合したエピトープを与え、発現された組換え体タンパク質の迅速な検定および容易な精製を可能にする。ある与えられたタンパク質のN−またはC末端にFlag(登録商標)オクタペプチドを融合するのに有用な発現系は、Eastman Kodak Co.,Scientific Imaging Systems Division,ニューヘブン,CTから入手可能であり、それはそのオクタペプチドを結合する単クローン性抗体である。
【0084】
IL−1Rrp1およびAcPLの天然の存在する変異体を含むダイマーIL−18受容体複合体も、本発明によって包含される。このような変異体の例は、別のmRNAスプライシング現象によってまたはAcPLおよびIL−1Rrp1タンパク質のタンパク質分解切断によって生じるタンパク質であり、この場合、所望の生物学的活性は保持される。mRNAの別のスプライシングは、天然に存在する可溶性の形のタンパク質のような、切断されているが生物学的に活性なAcPLおよびIL−1Rrp1タンパク質を生じることができる。タンパク質分解に起因する変異には、例えば、AcPLおよびIL−1Rrp1タンパク質からの1個またはそれ以上の末端アミノ酸(概して、1−5個の末端アミノ酸)のタンパク質分解除去による、異なった種類の宿主細胞中の発現におけるN−またはC末端の相違が含まれる。
【0085】
本発明は、本発明の受容体タンパク質を生理学的に許容しうる担体または希釈剤と一緒に含む医薬組成物も提供する。このような担体および希釈剤は、用いられる用量および濃度において受容者に無毒性であろう。このような組成物は、例えば、緩衝化溶液中にその受容体を含んでいてよく、それに、アスコルビン酸のような酸化防止剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロースまたはデキストランを含めた炭水化物、EDTAのようなキレート化剤、グルタチオン、および他の安定化剤および賦形剤を加えることができる。本発明の受容体は、静脈内注射、局所投与、連続注入、植込錠からの徐放のような、指標に適するように任意の適当な方法によって投与することができる。
【0086】
本発明のヘテロダイマー受容体は、IL−18結合試薬として有用である。この受容体は、好ましくは、可溶性AcPLおよび可溶性IL−1Rrp1を含み、in vitro および in vivo 両方で使用される。それら受容体は、in vitro 検定において、例えば、細胞上のこの受容体へのIL−18の結合によって開始される生物学的シグナルの伝達機序の研究で用いることができる。このような受容体は、いろいろな in vitro 検定または in vivo 操作においてIL−18の生物学的活性を阻害するのにも用いることができると考えられる。本発明の一つの実施態様においては、本発明の受容体を投与してIL−18を結合させ、それによって、内因性細胞表面受容体へのIL−18の結合を阻害する。したがって、このようなIL−18の細胞への結合によって媒介される生物学的活性も阻害される。
【0087】
IL−1Rrp1単独では、比較的低い親和性だけでIL−18を結合する(Torigoeら,J.Biol.Chem.272:2573,1997)。本発明の受容体は、例えば、AcPLおよびIL−1Rrp1をコードしているDNAを用いて同時トランスフェクションされた細胞によって生産され、高親和性でIL−18を結合する。このような本発明の受容体は、IL−18に媒介される活性の阻害が望まれる場合に用いることができる。更に、in vitro 検定における本発明の受容体の使用は、その検定結果がIL−18の結合に起因することを確認させる利点を与える。
【0088】
本発明の一つの実施態様においては、AcPLおよびIL−1Rrp1を含むヘテロダイマー受容体を in vivo 投与して、IL−18の生物学的活性を阻害する。IL−18は、NFκB活性を媒介することが知られており、Th1細胞の成長および分化の刺激薬として作用し、そしてTh1細胞からのγインターフェロン生産の強力な誘導物質である。IL−18は、NK細胞致死活性も増大させ、敗血症性ショック、肝臓破壊および糖尿病に関与している。IL−18のこれらまたは他の生物学的作用が望ましくない場合、本発明の受容体を投与してIL−18を結合し且つIL−18活性の作用を改善することができる。
【0089】
本発明の受容体は、IL−18によって媒介される障害を治療する治療的有効量で患者に投与することができる。障害は、IL−18がその障害を(直接的にまたは間接的に)引き起こすまたは悪化させる場合、IL−18によって媒介されるといわれる。可溶性受容体タンパク質は、IL−18に競合的に結合させ、それによって、内因性細胞表面受容体へのIL−18の結合を阻害するのに用いることができる。
【0090】
IL−1RrpIに結合したAcPLを含むヘテロダイマー受容体も、IL−18タンパク質の生物学的活性に関する検定で用いられ、その生物学的活性は、受容体への結合親和性によって測定される。詳しく説明すると、その受容体は、結合検定において、IL−18フラグメント、変異体または突然変異タンパク質の生物学的活性を測定するのに用いることができる。その受容体は、IL−18タンパク質の修飾(例えば、化学的修飾、突然変異等)後に、IL−18の生物学的活性が保持されているかどうか確認するのに有用である。修飾されたIL−18タンパク質の受容体への結合親和性を未修飾IL−18タンパク質の場合と比較して、生物学的活性へのその修飾の何らかの悪影響を検出する。したがって、その修飾タンパク質を研究実験または検定で用いる前に、生物学的活性を評価することができる。
【0091】
それらヘテロダイマー受容体は、例えば、異なった条件下でのIL−18タンパク質の有効期間および安定性を監視する“品質保証”実験の実施者が用いることができる試薬としても使用される。それら受容体は、異なった温度で異なった期間貯蔵された、または例えば、異なった種類の組換え体発現系で製造されたIL−18タンパク質の生物学的活性(受容体の結合親和性に関して)を確認するのに用いることができる。
【0092】
次の実施例は、本発明のいくつかの実施態様を詳しく説明するために与えられており、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
実施例
実施例1
in vitro 沈降実験
AcPL、IL−1Rrp1またはそれら二つのポリペプチドの組合せがIL−18を結合するかどうか確認するために、いくつかのFc融合タンパク質を製造し、次のように試験した。可溶性AcPL/Fc融合タンパク質をコードしている発現ベクターは、抗体に由来するFc領域ポリペプチドのN末端に融合したAcPLの切断された細胞外ドメインを含み、それを次のように構築した。ベクターpDC304中にAcPL DNAを含む組換え体発現ベクターを、所望のインフレーム制限部位を5’および3’末端に含有するプライマーを用いてPCR増幅させた。得られたフラグメントは、AcPL DNAの5’末端を含み、配列番号:1のヌクレオチド1551で終結し、導入されたSalIおよびBglII部位を5’および3’末端それぞれに含み、それを慣用的な技法によって単離した。
【0093】
pDC412−hIgG1Fcと称される組換え体ベクターは、FcポリペプチドをコードしているcDNA(−H−CH2−CH3のみ)を含む。ベクターpDC412−hIgG1Fcを、ベクターのポリリンカー領域内で切断する制限酵素SalIおよびBglIIを用いて、FcポリペプチドをコードしているcDNAの上流で消化した。
【0094】
上で単離されたAcPLをコードしているDNAを、SalI/BglIIで消化されたpDC412−hIgG1Fc中に連結して、FcポリペプチドDNAがAcPL DNAの3’末端に融合するようにした。得られた発現ベクターは、配列番号:2のAcPL配列のアミノ酸1−365の後にhIgG1FcのH−CH2−CH3領域を含む融合タンパク質をコードしていた。
【0095】
可溶性IL−1Rrp1/Fc融合タンパク質をコードしている発現ベクターを次のように構築した。IL−1Rrp1 DNAを含む組換え体ベクターを、所望の制限部位を含有する遺伝子特異的プライマーを用いてPCR増幅させた。得られたフラグメントは、IL−1Rrp1の5’末端を含み、それを慣用的な技法によって単離した。Asp718およびBglIIを用いて消化されたこのIL−1Rrp1フラグメントを、上記のhIgG1Fcフラグメントと結合し、BglIIおよびNotIを用いて消化した。得られた消化物フラグメントを、Asp718およびNotIを用いて消化されたpDC304に連結した。組換え体ベクターによってコードされる得られたIL−1Rrp1/Fc融合タンパク質は、配列番号:4の(N末端からC末端への)アミノ酸1−329の後にhIgG1/FcのH−CH2−CH3領域を含む。
【0096】
一つの試料セットにおいて、COS−7細胞を、pDC206対照またはpDC206−IL−18ベクターを用いてトランスフェクションした。トランスフェクションされたCOS−7細胞のもう一つの試料セットにおいて、上記のFc融合ベクターをトランスフェクションした。全試料セットは次の通りであった。
【0097】
試料 細胞のトランスフェクションに用いたベクターにコードされるもの
A 空pDC206発現ベクター(対照)
B pDC206hIL−18
1 pDC409(対照)
2 IL−1Rrp1/Fc
3 AcPL/Fc
4 AcPL/FcおよびIL−1Rrp1/Fc
トランスフェクションから2日後、試料AおよびBをcys/met不含培地中で1時間飢餓状態にした後、[35S−cys][35S−met]含有培地を用いて6時間標識した。上澄みを取り出し、遠心分離を行い、プロテアーゼインヒビターの存在下で0.4M NaCl/1.0%トリトンX−100に調整した。試料1−4のFc融合タンパク質を用いてトランスフェクションされた細胞からの上澄みを、トランスフェクションから2日後に取り出し、遠心分離した。それぞれのFc融合上澄みを、(a)ベクターでトランスフェクションされた;かまたは(b)IL−18でトランスフェクションされた35S標識上澄みと混合した。精製IL−1Rrp1/Fc受容体タンパク質を、対照としてのもう一つの放射性標識された上澄み部分に加えた。プロテインG−セファロースを各実験試料に加え、4℃で一晩沈降させた。次に、それら試料を、0.4M NaCl、0.05%SDS、1.0%NP−40緩衝液中で充分に洗浄し、4−20%トリス−グリシンゲル中の電気泳動によって分離した。そのゲルを固定し、増幅させ、乾燥させ、フィルムに露出させた。タンパク質の全レベルを評価し、未標識Fc融合タンパク質を考慮するために、それぞれの沈降の一部分を、別の4−20%トリス−グリシンゲル上で分析し且つ銀染色した。
【0098】
細胞試料1−4の上澄みは、対照上澄み(試料A)からの10−30Kd範囲内にタンパク質をほとんど沈降させなかった。IL−18(試料B)は、細胞試料2(IL−1Rrp1/Fc)からの上澄みによって沈降したが、細胞試料1(対照)または細胞試料3(AcPL/Fc)からの上澄みによって沈降しなかった。有意に多量のIL−18は、IL−1Rrp1/FcおよびAcPL/Fcの同時トランスフェクションから得られた試料4全ての上澄みによって沈降した。
【0099】
したがって、IL−1Rrp1はIL−18を結合できるが;AcPLはIL−18を結合できないし;そして同時発現されたIL−1Rrp1およびAcPLはIL−18を結合することができ、それら同時発現されたタンパク質は、IL−1Rrp1単独より高レベルのIL−18結合を示す。銀染色されたゲルは、IL−1Rrp1単独でトランスフェクションされた上澄みと比較して、IL−1Rrp1およびAcPLでトランスフェクションされた上澄み中のIL−1Rrp1が多くないことを示している。これは、これら試料中で発現されるIL−1Rrp1がより多いという可能性を排除する。それら結果は、IL−1Rrp1/AcPLダイマーのIL−18結合親和性が、IL−1Rrp1単独の親和性より大きいことを示している。
【0100】
実施例2
NFκB活性の誘導
IL−18シグナリングにおけるIL−1Rrp1およびAcPLの役割を確認するために、AcPL、IL−1Rrp1、およびIL−1Rrp1およびAcPLの組合せを、COS細胞およびS49.1細胞中で過発現させ、IL−18刺激のNFκB活性への作用を評価した。
【0101】
COS−7細胞を、DEAE/デキストラン法によって12ウェルフォーマットでトランスフェクションした。各ウェルを、合計200ngの1種類または複数の適当な発現ベクター、およびルシフェラーゼ発現を媒介する3ヶ所のNFκB部位を含有する800ngのNFκB−Lucレポータープラスミドを用いてトランスフェクションした。約107個のS49.1細胞を、0.7mL中において40μgのNFκB−Lucレポータープラスミドおよび合計200ngの1種類または複数の適当な発現ベクターを用いてエレクトロポレーションによってトランスフェクションした。エレクトロポレーションは、960μFおよび320Vで行った。
【0102】
それら細胞を2日間インキュベート後、40ng/mLのIL−18(PeproTechから購入された)を用いて4時間刺激した。細胞を洗浄し、溶解させ、ルシフェラーゼ活性についてLuciferase Assay Reagent(Promega Corp.から購入された)を製造者の指示にしたがって用いて検定した。
【0103】
対照ベクター単独、mIL−1Rrp1だけをコードしているベクター、またはmAcPLだけをコードしているベクターを用いてトランスフェクションされたCOS7細胞またはS49.1細胞は、mIL−18刺激に応答しなかった。更に、mAcPLでトランスフェクションされたS49.1細胞は、そのトランスフェクションを、mIL−1R I型またはmIL−1RAcPをコードしている発現ベクターと組み合わせた場合、mIL−18刺激に応答しなかった。しかしながら、mAcPLおよびmIL−1Rrp1で同時トランスフェクションされ且つmIL−18で刺激された細胞は、NFκB DNA結合活性の増加を示し、それは、COS細胞で10倍およびS49.1細胞で300倍であった。hIL−1Rrp1でトランスフェクションされたCOS7細胞は、hIL−18刺激への応答を示さなかったが、hAcPL単独でトランスフェクションされ且つhIL−18で刺激されたCOS7細胞は、NFκB活性の8倍増加を示した。これは、COS7細胞に内因的なサルIL−1Rrp1とhAcPLの結合に起因している。hAcPLを含むhIL−1Rrp1の過発現は、hIL−18に応答したNFκB活性の刺激を、hAcPLだけを過発現する細胞中で見られる場合を越えて増大させることはなかった。NFκB活性のこの劇的な増大は、AcPLおよびIL−1Rrp1がIL−18受容体のサブユニットであり、IL−18刺激に応答したNFκBシグナリングを誘導するように協同する。
【0104】
実施例3
AcPLおよびIL−1Rrp1抗体重鎖および軽鎖融合タンパク質の製造
次に、抗体重鎖および抗体軽鎖ポリペプチドに融合したAcPLおよびIL−1Rrp1を含む融合タンパク質の製造を記載する。
【0105】
最初に、上流にリンカー領域を含むヒトIgG1の定常領域全体をコードしている発現ベクターを構築する。このような発現ベクターは、融合タンパク質をコードしているプラスミドの生成を容易にする。PCR技術を用い、上流のBglII部位および下流のNotI部位を含有するプライマーを用いて、上述のIgG1定常領域を増幅させる。得られたPCR生産フラグメントを消化し、精製し、そしてBglIIおよびNotIで消化されているpDC412に連結させる。次に、pDC412−hIgG1発現ベクターをSalIおよびBglIIで消化する。
【0106】
次に、リンカー領域の前にIgκ定常ドメイン、そして続いてリンカー領域およびポリ−Hisドメインを含有する発現ベクターを製造する。そのポリ−Hisドメインは、好都合に、タンパク質精製処理を助ける。PCR技術を用い、BglII−NotIフラグメントを含有するプライマーを用いて、定常領域を増幅させる。得られたPCR生産フラグメントを消化し、精製し、そしてpDC412に連結させる。目的の可溶性受容体は、独特のSalIおよびBglII部位を用いることによって上流にクローン化することができる。
【0107】
IL−1Rrp1−Cκ発現ベクターを製造するために、IL−1Rrp1の細胞外ドメインを、SalI(5’)およびBglII(3’)制限部位を含有するプライマーを用いてPCR増幅させる。この精製され且つ消化されたPCR産物を、SalI/BglIIで消化されたpDC412−Igκ発現ベクターに連結して、IL−1Rrp1の可溶性部分をCκの定常領域に結合する融合タンパク質をコードするインフレーム構築物を生成する。
【0108】
IL−1Rrp1−hIgG1発現ベクターを製造するために、可溶性IL−1Rrp1をコードしているSalI/BglII制限フラグメントをIL−1Rrp1−Cκから取り出し、同じ制限酵素で消化されたpDC412−hIgG1に連結する。両方のベクターが同じ読み枠中にBglII部位を有するので、これは、可溶性IL−1Rrp1およびhIgG1間の融合を容易に生じさせるであろう。
【0109】
AcPL−Cκ発現ベクターを製造するために、AcPLの細胞外ドメインを、SalI(5’)およびBglII(3’)制限部位を含有するプライマーを用いてPCR増幅させる。次に、この精製され且つ消化されたPCR産物を、SalI/BglIIで消化されたpDC412−Cκに連結して、AcPLの可溶性部分をCκの定常領域に結合するインフレーム融合タンパク質を生成する。
【0110】
AcPL−hIgG1発現ベクターを製造するために、可溶性AcPLをコードしているSalI/BglII制限フラグメントをAcPL−cκから取り出し、同じ制限酵素で消化されたpDC412−hIgG1に連結する。両方のベクターが同じ読み枠中にBglII部位を含有するので、これは、可溶性AcPLおよびhIgG1間の融合を容易に生じさせるであろう。
【0111】
COS−7細胞を、上記の融合ベクターを用いてトランスフェクションする。実施例1に記載のように細胞を培養し、融合タンパク質を集める。
実施例4
IL−18に誘導されたNFκB活性の阻害
COS7細胞を、12ウェルプレート中において、ウェル当たり各10ngのmIL−1Rrp1およびmAcPL発現ベクターおよび50ngの3XNFκB−ルシフェラーゼレポータープラスミドを用いて一時的にトランスフェクションした。トランスフェクションから2日後、細胞を、10ng/mLのmIL−18(Peprotechから購入された)を用いて増加する量のいろいろなレポーターFc融合タンパク質の存在下で刺激した。mIL−18は、それらタンパク質と一緒に室温で20分間プレインキュベート後、細胞に加えられた。Fcタンパク質の量は、1ug/ml−50ug/mlまで滴定された。細胞を4時間刺激後、溶解させ、そしてPromega Luciferase Assay Reagentを用いてルシフェラーゼ活性を評価した。
【0112】
mIL−1Rrp1−Fc、mIL−1Rrp1−FlagpolyHisまたはmAcPL−Fcを用いたIL−18のプレインキュベーションは、試験されたいずれの濃度においても、NFκBの誘導にほとんど影響しなかった。対照的に、異種mIL−1Rrp1−Fc+mAcPL−Fcタンパク質混合物(mIL−1Rrp1−Fcのホモダイマー、mAcPL−FcのホモダイマーおよびヘテロダイマーmIL−1Rrp1−Fc/mAcPL−Fc分子から成る)を用いたIL−18のインキュベーションは、NFκB誘導の用量依存性阻害を引き起こした。誘導されない細胞は、3X 10e3RLUを示し、いずれの受容体-Fcタンパク質も不存在下でmIL−18を用いて刺激された細胞は、25X 10e3RLUを示した。NFκB誘導の最大阻害は、20μg/mlおよび50μg/mlのmIL−1Rrp1−Fc+mAcPL−Fcタンパク質混合物について認められ、それは6X 10e3RLUを生じ、IL−18活性の87%阻害を示した。
【配列表】
Claims (16)
- 少なくとも1個のAcPLポリペプチドに結合した少なくとも1個のIL−1Rrp1ポリペプチドを含むポリペプチドであって、該IL−1Rrp1ポリペプチドが、
(a)配列番号:3に示されるヌクレオチド配列のコーディング領域および配列番号:7に示されるヌクレオチド配列のコーディング領域から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含むDNA;
(b)(a)のDNAにハイブリッド形成しうるDNAに相補的なDNA、ここでハイブリッド形成条件は高ストリンジェント条件である;および
(c)配列番号:4に示されるアミノ酸配列をコードするDNAおよび配列番号:8に示されるアミノ酸配列をコードするDNAから成る群より選択されるDNA;
から成る群より選択されるDNAによってコードされていて;
そしてここにおいて、該AcPLポリペプチドが、
(a’)配列番号:1に示されるヌクレオチド配列のコーディング領域および配列番号:5に示されるヌクレオチド配列のコーディング領域から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含むDNA;
(b’)(a’)のDNAにハイブリッド形成しうるDNAに相補的なDNA、ここでハイブリッド形成条件は高ストリンジェント条件である;および
(c’)配列番号:2に示されるアミノ酸配列をコードするDNAおよび配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードするDNAから成る群より選択されるDNA;
から成る群より選択されるDNAによってコードされる生物学的に活性なポリペプチドであり、
そして、当該少なくとも1個のAcPLポリペプチドに結合した少なくとも1個のIL−1Rrp1ポリペプチドを含むポリペプチドは、IL−1Rrp1ポリペプチド単独の場合よりもIL−18に対する高い親和性を有する、
上記ポリペプチド。 - 少なくとも1個の第二ポリペプチドに結合した少なくとも1個の第一ポリペプチドを含むポリペプチドであって、該第一ポリペプチドが、
(a)配列番号:4のアミノ酸y−329を含むポリペプチドをコードするDNA、ここでyは1または20である整数を表す;
(b)配列番号:8のアミノ酸y’−322を含むポリペプチドをコードするDNA、ここでy’は1または19である整数を表す;および、
(c)(a)または(b)のDNAにハイブリッド形成しうるDNA相補的なDNA、ここでハイブリッド形成条件は高ストリンジェント条件である;
から成る群より選択されるDNAによってコードされ、
そしてここにおいて、該第二ポリペプチドが、
(a’)配列番号:2のアミノ酸x−356を含むポリペプチドをコードするDNA、ここでxは1および15の間およびそれらを含む整数を表す;
(b’)配列番号:6のアミノ酸x’−356を含むポリペプチドをコードするDNA、ここでx’は1および15の間およびそれらを含む整数を表す;
(c’)(a’)または(b’)のDNAにハイブリッド形成しうるDNA相補的なDNA、ここでハイブリッド形成条件は高ストリンジェント条件である;
から成る群より選択されるDNAによってコードされ、
そして、当該少なくとも1個の第二ポリペプチドに結合した少なくとも1個の第一ポリペプチドを含むポリペプチドは、第一ポリペプチド単独の場合よりもIL−18に対する高い親和性を有する、
前記ポリペプチド。 - 少なくとも1個のAcPLポリペプチドに結合した少なくとも1個のIL−1Rrp1ポリペプチドを含むポリペプチドであって、該IL−1Rrp1ポリペプチドが配列番号:4のポリペプチドを含み、そして該AcPLポリペプチドが配列番号:2のポリペプチドを含む、前記ポリペプチド。
- IL−1Rrp1ポリペプチドおよびAcPLポリペプチドがペプチドリンカーを介して結合した、請求項3に記載のポリペプチド。
- 少なくとも1個のAcPLポリペプチドに結合した少なくとも1個のIL−1Rrp1ポリペプチドを含むポリペプチドであって、該IL−1Rrp1ポリペプチドが配列番号:4のアミノ酸y−329、ここでyは1または20である整数を表す;および配列番号:4;を有するポリペプチドを含み、そして該AcPLポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸x−356、ここでxは1および15の間およびそれらを含む整数を表す、を有するポリペプチドを含む、前記ポリペプチド。
- 少なくとも1個のAcPLポリペプチドに結合した少なくとも1個のIL−1Rrp1ポリペプチドを含むポリペプチドであって、該AcPLポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸x−356、ここでxは1および15の間およびそれらを含む整数を表す、を有するポリペプチドと少なくとも90%同一のポリペプチドを含み;そして該IL−1Rrp1ポリペプチドが配列番号4のアミノ酸y−329、ここでyは1または20である整数を表す、を有するポリペプチドと少なくとも90%同一のポリペプチドを含み;そしてここにおいて、同一性%はGAPプログラムを用いて決定される、
そして、当該少なくとも1個のAcPLポリペプチドに結合した少なくとも1個のIL−1Rrp1ポリペプチドを含むポリペプチドは、IL−1Rrp1ポリペプチド単独の場合よりもIL−18に対する高い親和性を有する、
前記ポリペプチド。 - R1−L1:R2−L2、R2−L2:R1−L1、R1−L2:R2−L1、R2−L1:R1−L2、R1−L1:R2−L2/R2−L2:R1−L1およびR1−L2:R2−L1/R2−L1:R1−L2
(式中、L1は免疫グロブリン重鎖フラグメントであり;L2は免疫グロブリン軽鎖フラグメントであり;R1はAcPLまたはAcPLフラグメントであり;R2はIL−1Rrp1またはIL−1Rrp1フラグメントであり;:は重鎖および軽鎖の抗体領域間の結合であり、そして/は重鎖および重鎖の抗体領域間の結合である;そして
R2が、
(a)配列番号:4のアミノ酸y−329(但し、yは1または20である整数を表す);および
(b)配列番号:8のアミノ酸y’−322(但し、y’は1または19である整数を表す);
から成る群より選択され;
そして、前記R1が、
(a’)配列番号:2のアミノ酸x−356(但し、xは1または15である整数を表す);および
(b’)配列番号:6のアミノ酸x’−356(但し、xは1または15である整数を表す);
から成る群より選択される)
から成る群より選択される式を有するポリペプチド。 - 可溶性IL−1Rrp1または可溶性AcPLのC末端に結合した抗体軽鎖ポリペプチドを含む第一融合ポリペプチド、および可溶性AcPLまたは可溶性IL−1Rrp1のC末端に結合した抗体重鎖ポリペプチドを含む第二融合ポリペプチドを含むポリペプチドであって、ここにおいて当該第一融合ポリペプチドは当該第二融合ポリペプチドに重鎖および軽鎖ポリペプチドの間のジスルフィド結合を介して結合し、そして、
ここで当該可溶性IL−1Rrp1が、
(c)配列番号:4のアミノ酸y−329を含むポリペプチド、ここでyは1または20である整数を表す;および
(d)配列番号:8のアミノ酸y’−322を含むポリペプチド、ここでy’は1または19である整数を表す;
から成る群より選択され、
そして当該可溶性AcPLが、
(a’)配列番号:2のアミノ酸x−356を含むポリペプチド、ここでxは1または15である整数を表す;および
(b’)配列番号:6のアミノ酸x’−356を含むポリペプチド、ここでx’は1または15である整数を表す;
からなる群より選択される、前記ポリペプチド。 - R1−L1:R2−L2、R2−L2:R1−L1、R1−L2:R2−L1、R2−L1:R1−L2、R1−L1:R2−L2/R2−L2:R1−L1およびR1−L2:R2−L1/R2−L1:R1−L2
から成る群より選択される式を有する第一ポリペプチドであって、
式中、L1は免疫グロブリン重鎖フラグメントであり;L2は免疫グロブリン軽鎖フラグメントであり;R1はAcPLフラグメントであり;R2はIL−1Rrp1フラグメントであり;:は重鎖および軽鎖の抗体領域間の結合であり、そして/は重鎖および重鎖の抗体領域間の結合である;ここにおいて当該AcPLフラグメントは配列番号:6のアミノ酸1−356を有する可溶性ポリペプチドの一部であり、そして当該IL−1Rrp1フラグメントは配列番号:4のアミノ酸1−329を有する可溶性ポリペプチドの一部であり、そして、当該第一ポリペプチドはIL−1Rrp1単独よりも高い親和性でIL−18に結合する、
前記第一ポリペプチド。 - (a)請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載のポリペプチドをコードするDNA;および、
(b)(a)のDNAにハイブリッド形成しうるDNAに相補的なDNA、ここでハイブリッド形成条件は高ストリンジェント条件である;
から成る群より選択される単離されたDNA。 - 請求項10に記載のDNA分子のいずれかを含む組換え体発現ベクター。
- ポリペプチドを製造する方法であって、請求項11に記載の発現ベクターのいずれかで形質転換された宿主細胞を、ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養することを含む前記方法。
- 請求項8に記載のポリペプチドを製造する方法であって、前記第一融合ポリペプチドをコードしている第一発現ベクターおよび前記第二融合ポリペプチドをコードしている第二発現ベクターを用いて同時トランスフェクションされた宿主細胞を、該第一および第二融合ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養することを含む、前記方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、または8に記載のポリペプチドおよび適当な希釈剤または担体を含む組成物。
- IL−18の作用を阻害するための、請求項14に記載の組成物。
- 少なくとも1個の第二ポリペプチドに結合した少なくとも1個の第一ポリペプチドを含むポリペプチドであって、当該第一ポリペプチドが配列番号:4のアミノ酸1−329のフラグメントを含み、そして当該第二ポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸1−356のフラグメントを含み、ここにおいて当該ポリペプチドは当該第一ポリペプチド単独よりも大きい親和性でIL−18に結合する、前記ポリペプチド。
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