JP4271356B2 - ラジカル重合性化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なラジカル重合性化合物、それからなる反応性界面活性剤及びポリマー改質剤、並びにそれを用いる改質ポリマーの製造法、及び該改質ポリマーを含有するポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、アクリル酸エステル、スチレン等のビニル系モノマーを乳化重合する際に、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)エーテル、酸化エチレン/酸化プロピレン共重合体等の非イオン界面活性剤が乳化剤として用いられてきた。乳化重合において乳化剤は、ポリマー粒子の生成とその分散安定化に関与するばかりでなく、ポリマーエマルジョンの機械的安定性、化学的安定性、凍結安定性、貯蔵安定性に影響し、さらにポリマーエマルジョンの粒子径、粘度、起泡性等のエマルジョン物性、さらには、フィルム化した場合にその耐水性、耐湿性、耐熱性、接着性、粘着性等のフィルム物性に大きく影響を及ぼす。塗料や粘着剤等の用途では、ポリマーエマルジョンの乾燥でポリマー塗膜が形成されるが、ポリマー塗膜中に残る乳化剤は耐水性、接着性、耐候性、耐熱性等を低下させる原因となることが指摘されている。また、合成ゴムの製造において、ポリマーエマルジョンから塩析等でポリマーを取り出す際に排水中に乳化剤が含まれ、排水処理の負荷が大きくなるという問題が指摘されている。
【0003】
このような欠点を解決する手段として反応性界面活性剤の使用に関する数多くの特許が提案されており、例えば、特公昭49−46291号、特開昭58−203960号、特開昭62−104802号、特開平4−53802号公報等がある。しかし、これらの反応性界面活性剤を乳化重合用乳化剤として単独で使用すると重合安定性が不十分となる場合が多い。このため、耐水性向上等の効果を犠牲にして従来の乳化剤を併用しなければならないという問題を有している。反応性界面活性剤の使用量を多くすることで重合安定性を改善することもできるが、この場合も耐水性を低下させることになる。
【0004】
一方、合成樹脂の用途において、耐水性、接着性、帯電防止性、顔料混和性、染色性、相溶化性、造膜性、耐候性等の様々な物性が要求される。これらの物性は、使用されるモノマーの選択だけでは解決できず、これらの物性を付与するために従来よりポリマー改質剤が提案されており、例えば、特開平1−174511号、特開平4−331217号、特公平3−80806号公報等がある。しかし、これらのポリマー改質剤は構成モノマーとの共重合性が十分でなく合成樹脂の製造工程で樹脂中にこの改質剤が取り込まれにくく、充分に満足する改質効果は得られないという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、上記問題を解決し得る乳化重合用の反応性界面活性剤として、さらには合成樹脂の製造において要求される物性を満足させ得るポリマー改質剤として有用な化合物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(1)で表されるラジカル重合性化合物(以下化合物(1)という)、化合物(1)からなる反応性界面活性剤、及び化合物(1)からなるポリマー改質剤、並びに化合物(1)を用いる改質ポリマーの製造法、及び該改質ポリマーを含有するポリマーである。
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基、R4は炭素数1〜18の1価の炭化水素基、Yは炭素数1〜14の2価の炭化水素基、pは0又は1、R5は炭素数2〜18の2価の炭化水素基、nは0〜1000の数、Xは水素原子又は親水基、aは1又は2を示し、n個のR5は同一でも異なっていても良い。)
【0009】
【発明の実施の形態】
[化合物(1)]
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基で、ラジカル重合性の観点から水素原子であることが好ましい。R2及びR3は水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基、R4は炭素数1〜18の1価の炭化水素基であり、炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、環式、飽和、不飽和にかかわらないが、環境に配慮する観点から直鎖炭化水素基が好ましい。界面活性剤として用いる場合にはR2、R3、R4の炭素数の合計は1〜20、好ましくは3〜16、さらに好ましくは5〜12であることが望ましい。Yは炭素数1〜14の2価炭化水素基であり、直鎖、分岐鎖、環式、飽和、不飽和にかかわらないが、上記と同様に環境に配慮する観点から直鎖であることが好ましく、特に炭素数1〜10の直鎖炭化水素基が好ましい。
【0010】
化合物(1)の
【0011】
【化3】
【0012】
部(以下疎水部という)は、末端にラジカル重合性の二重結合基、中央部にOH基の残基を持つ構造である。この疎水部では中央部にOH基の残基を持つことによって、これと結合する親水部が中央部に位置することになり、この特長として樹脂との相溶性が良好、界面活性剤としての用途では操作上の障害となる泡立ちが低くなるという利点がある。
【0013】
式(1)の疎水部は末端に二重結合基を有する不飽和アルコールに由来する。かかる不飽和アルコールとしては、例えば、1−ヘキセン−3−オール、5−エチル−1−ヘプテン−4−オール、1−オクテン−3−オ−ル、1−オクテン−4−オ−ル、2−メチル−1−オクテン−4−オ−ル、1−ノネン−3−オ−ル、1−ノネン−4−オ−ル、2−メチル−4−フェニル−1−ブテン−4−オール、1−ウンデセン−4−オール、2−メチル−1−ウンデセン−4−オール、1−ペンタデセン−4−オ−ル、1−ペンタデセン−11−オ−ル、2−メチル−1−ペンタデセン−4−オ−ル、1−ドデセン−4−オール、1−トリデセン−4−オール、1−トリデセン−5−オール、1−ペンタデセン−13−メチル−12−オール、1−ヘプタデセン−11−オール等を挙げることができる。これらの不飽和アルコールは公知の方法で製造することができる。例えば、3−ブロモ−1−プロペンや4−ブロモ−1−ブテン、11−ブロモ−1−ウンデンセン等の末端に二重結合を持つアルケニルハライドとアルキルアルデヒドとのMg(Grignard試薬反応)、Sn、Znを用いる有機金属試薬反応により得ることができる。この反応は、10−ウンデセナール等の末端に二重結合を持つアルケニルアルデヒドとヘキシルブロマイド等のアルキルハライドとの反応でもよい。これらの有機金属試薬反応については、第4版、実験化学講座25、有機合成VII、有機金属試薬反応による合成、(日本化学会編、丸善株式会社)に詳細な記載がある。この反応に用いる原料のハライドやアルデヒドのアルキル基又はアルケニル基は直鎖、分岐鎖、環式にかかわらないが、環境に配慮する観点から直鎖が望ましい。さらには、アルデヒド又はケトン化合物とアセチレンとの付加反応物を触媒存在下に部分水添する方法により、1−ヘキセン−3−オール等の不飽和アルコールを得ることができる。この方法で得られる不飽和アルコール類とその性質については、ALCOHOLS Their chemistry, Properties and Manufacture(JOHN A.MONICK、REINHOLD BOOK CORPORATION,1968)に詳細な記述がある。
【0014】
式(1)の(R5O)n部のR5は炭素数2〜18の2価の炭化水素基で、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基であり、特に好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の炭素数2〜4のアルキレン基である。(R5O)n部はエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、1,2−エポキシオクテン等を付加重合することにより得ることができる。これらの付加重合は公知の方法で行うことができ、これらのアルキレンオキサイド等は単独付加、2種以上のランダム付加又はブロック付加を任意に組み合わせることができる。(R5O)の平均付加モル数を示すnは0〜1000、好ましくは0〜100、さらに好ましくは0〜50である。乳化重合用途においてはnが0〜30の場合に重合安定性に優れ、特にnが5〜20の場合にはモノマーの乳化性に最も優れる。
【0015】
式(1)においてXは水素原子又は親水基を示すが、Xが水素原子の場合には非イオン界面活性剤であることを意味している。親水基としては、例えば、−SO3M、−R6−SO3M、−R6―COOM、−OC−R6−COOM、−OPO(OM)2(リン酸モノエステル塩)又は−OPO(OM)O−(リン酸ジエステル塩)等が挙げられる。式中のR6は炭素数が1〜8、好ましくは1〜3の2価の炭化水素基である。Mは水素原子又はカチオンであり、カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミンのアンモニウムイオン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンのアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0016】
親水基の−SO3Mは、例えば、上記の末端に二重結合基を有する不飽和アルコール又はこの不飽和アルコールのアルキレンオキサイド付加物にスルファミン酸の様な硫酸化剤を反応させることにより導入することができる。また、−R6−SO3Mは、イセチオン酸、プロパンサルトン等を反応させることにより導入することができる。また、−R6−COOMはモノクロル酢酸塩の様なハロゲン化アルキルカルボン酸塩を反応させることにより導入することができ、−OC−R6−COOMは、無水コハク酸、アジピン酸の様な二塩基酸を反応させることにより導入することができる。さらに、−OPO(OM)2又は−OPO(OM)O−は、五酸化二燐、ポリリン酸、オキシ塩化燐等を反応させることにより導入することができる。これらの親水基を導入する反応は公知の方法で行うことができる。式(1)において、aは、Xが−OPO(OM)O−(リン酸ジエステル塩)の時のみ2であり、その他は1である。
【0017】
[反応性界面活性剤及びポリマーの製造法]
本発明の化合物(1)は、反応性界面活性剤としてポリマーの製造に用いることができ、特に乳化重合用の乳化剤として有用である。
【0018】
乳化重合において反応性界面活性剤はポリマーエマルジョン製造時の重合反応においてモノマー又はポリマー鎖と化学的に結合(以下共重合と称する)してポリマー成分に取り込まれることによりポリマー中に含まれるフリーの界面活性剤を減少させることができ、これに基づいて耐水性、接着性、耐候性等のポリマー物性を向上させることができる。従って、反応性界面活性剤は原料モノマーと高い共重合性を有することが求められる。しかし、高い共重合性を有していても反応性界面活性剤が水系で単独重合を起こす場合には、水溶性の反応性活性剤ポリマー(高分子活性剤)を生成させてしまいポリマー物性を向上させる効果が不十分となる。このことより、水系で単独重合を起こさない反応性界面活性剤が求められる。本発明に係わる化合物(1)は(メタ)アクリル酸エステル等との共重合性が良好で、水系での単独重合性が小さいという優れた性質を有している。
【0019】
乳化重合において界面活性剤は、モノマーの乳化、ミセル形成による重合の場の提供、ポリマー粒子の分散安定化等の重要な役割を担っており、反応性界面活性剤の使用においても通常の界面活性剤と同様の役割が求められる。本発明に係わる反応性界面活性剤を乳化重合に用いた場合、優れたモノマー乳化性を有しており、重合安定性、及び機械的安定性に優れたポリマーエマルジョンを製造することができる。
【0020】
化合物(1)の最適な親水基は、ポリマーエマルジョンの用途、乳化重合の操作や使用するモノマー組成等により異なり、例えば、クラムを取り出す合成ゴムの製造の時には、酸析によりポリマーを簡単に水と分離できることから、親水基にカルボン酸塩の基をもつ化合物(1)が好ましい。また顔料が配合される塗料用などの合成樹脂エマルジョンを製造する場合には顔料混和時の安定性を良くする観点から、ポリオキシエチレン基に結合した親水基が好ましく、特にエトキシサルフェート塩が好ましい。
【0021】
本発明の反応性界面活性剤を用いて乳化重合できるモノマーの具体例を挙げれば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸類、アクリル酸アミド等のα,β−不飽和カルボン酸アミド類、(メタ)アクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル類、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン等の共役ジエン類、その他エチレン、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体等である。これらのモノマーは単独で重合させても、2種以上を共重合させても良い。
【0022】
本発明の反応性界面活性剤を用いる乳化重合条件には特に制限がなく、モノマー滴下法、モノマー一括仕込み法、プレエマルジョン法等、公知の乳化重合法で行うことができる。
【0023】
重合開始剤としては公知のものでよく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機過酸化物、t−ブチルペルオキサイド、クメンヒドロペルオキサイド、パラメンタンペルオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスジイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等のアゾ系開始剤、さらには過酸化化合物に亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤等が挙げられる。
【0024】
本発明に係わる反応性界面活性剤の使用量は、良好な乳化分散安定性や耐水性等のポリマー物性を得る観点から、モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜5重量部が更に好ましい。
【0025】
また乳化重合において、本発明に係わる反応性界面活性剤に、他の構造の反応性界面活性剤を組み合わせて使用することができる。さらには、反応性基を持たない通常の界面活性剤、又は高分子活性剤を併用することもできるが、排水処理の負荷低減、ポリマー物性の低下を防止する観点から、その使用量は単量体100重量部に対して2重量部以下、好ましくは1重量部以下であることが望ましい。
【0026】
[ポリマー改質剤]
化合物(1)からなる本発明のポリマー改質剤は、ポリマーの構成単位と反応してこれを改質するポリマー改質剤である。
【0027】
本発明のポリマー改質剤を用いることにより、親水性の調節、帯電防止性の向上、防曇性の向上、耐水性の向上、接着性の向上、造膜性の向上、耐候性の向上、樹脂の相溶性向上等の様々な物性が向上した改質ポリマーを得ることができる。例えば、化合物(1)の親水部の構造を適切なものに選択することにより、樹脂との相溶性、付与する親水性等を容易に調節することができる。
【0028】
本発明のポリマー改質剤は、改質するポリマーの重合工程で添加され、そのポリマーの構成単位であるモノマー又はポリマー鎖と化学的に反応することにより、ポリマーに種々の物性を付与する。本発明のポリマー改質剤を使用するのに適しているポリマーは、エチレン性の二重結合を有するモノマーから構成されるポリマーである。エチレン性の二重結合を有するモノマーとしては、乳化重合に用いられるモノマーとして例示した上記モノマーを挙げることができる。
【0029】
本発明のポリマー改質剤の使用はポリマーの重合工程で重合系に添加すればよい。このポリマーの重合方法は特に限定されず、例えば塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられ、公知の方法で重合を行うことができる。
【0030】
本発明のポリマー改質剤の使用量は、ポリマーの構成単位であるモノマーの種類、ポリマーの改質目的、要求される性能等により変えることができるが、ポリマーの総量に対して、化合物(1)が0.1〜80重量%、好ましくは0.5〜60重量%、特に好ましくは1〜40重量%となる割合が望ましい。
【0031】
さらには、この重合工程へ本発明のポリマー改質剤を添加する方法によって得た改質ポリマーを他のポリマーに添加する方法、例えば、スチレン樹脂やABS樹脂等のポリマーに練り込む等の方法によっても、ポリマーの物性を改質することができる。改質ポリマーのポリマーへの添加量は、ポリマーの総量に対して0.1〜80重量%、好ましくは0.5〜60重量%、特に好ましくは1〜40重量%となる割合が望ましい。
【0032】
【実施例】
不飽和アルコールの合成例(1−トリデセン−4−オールの合成)
攪拌機、冷却管、滴下ロート、ガス導入管を備えた3L−4つ口フラスコに、n−デシルアルデヒド(デカナール)156.3g(1mol)、イソプロピルエーテル100mL、イオン交換水400mL、THF100mL、亜鉛粉末130.8g(2mol)を仕込み、窒素ガス雰囲気のもと攪拌しながら内温を50℃に上げる。滴下ロートよりアリルブロマイド(2mol)を2時間要して滴下する。この滴下により反応熱が発生するので冷水を用いて内温を50〜55℃に制御する。その後、同温度で3時間熟成する。冷却後に、反応物の後処理として、沈殿物を除去した後に15%濃度塩酸973g(4mol)を冷却しながら徐々に加える。水層部を除去し、その後pH中性となるまでイオン交換水で数回洗浄する。反応に用いた溶剤及び水をエバポレータで留去した後に、減圧精留を行って純度98.8%の1−トリデセン−4−オールを対理論90.5%の収率で得た。
【0033】
表1に示すアルデヒド及びブロマイドを用い、上記不飽和アルコールの合成例と同様にして、表1に示す不飽和アルコールを合成した。
【0034】
また、この不飽和アルコールを用い、KOH触媒(2mol%)の存在下、反応槽内圧力0.1〜0.4MPa、反応温度150℃でエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加させ、表2に示す不飽和アルコールのアルキレンオキサイド付加物を合成した。
【0035】
この不飽和アルコールのアルキレンオキサイド付加物を用い、下記の方法で硫酸エステル化、リン酸エステル化あるいはカルボキシメチル化を行い、表3に示すラジカル重合性化合物を合成した。
【0036】
<硫酸エステル化>
反応器に1−ペンタデセン−4−オールのエチレンオキサイド10モル付加物(D−1)(1mol)を仕込み、窒素ガス雰囲気下、100℃に加熱した。これにスルファミン酸(1.05mol)を1時間要して加え、この間温度は120〜125℃に保った。さらに、同温度で1時間熟成した。冷却後、25%アンモニア水を加えてpH7.5に調整し、硫酸エステル化物(D−1−1)を得た。
【0037】
この反応物の有効成分をメチレンブルー分相逆滴定法(界面活性剤ハンドブック、増補7版、p397)で測定したところ、有効成分濃度は95.2%であった。
【0038】
化合物(D−1−1)の赤外線吸収スペクトルを図1に、1H−NMRスペクトル(CDCl3)を図2に示す。
【0039】
同様にして、表3に示すラジカル重合性化合物(硫酸エステル化物)A−1−1、B−0−1、C−1−2、E−1−1を合成した。
【0040】
<リン酸エステル化>
1−ウンデセン−4−オールのエチレンオキサイド10モル付加物(B−1)(1.25mol)に、五酸化リン(0.5mol)を温度が60〜70℃になるように徐々に加えた。窒素ガス雰囲気下、同温度で30分間攪拌した後、80℃に昇温して4時間反応した。これに、イオン交換水を全仕込みの10%(重量)量加え、さらに温度100℃で4時間攪拌した。
【0041】
この反応物の組成を電位差滴定法(油化学、第39巻第4号、250頁、1990)で測定したところ、リン酸モノエステル体が67.2mol%、リン酸ジエステル体が27.7mol%、リン酸が5.1mol%であった。この反応物に、電位差滴定の一段目変曲点に相当する量の48%−NaOH水溶液を添加してリン酸エステルのNa塩(B−1−1)を得た。
【0042】
<カルボキシメチル化>
1−トリデセン−4−オールのエチレンオキサイド10モル付加物(C−1)(1mol)とモノクロル酢酸ナトリウム(1.2mol)を攪拌混合し、減圧(4kPa)下73℃まで昇温した。これに48%−NaOH水溶液(1.2mol)を温度74℃、4kPaの減圧下で1.5時間要して滴下した。温度74℃、4kPaの減圧下で5時間反応させた後、温度を98℃に昇温して1時間熟成した。
【0043】
この反応物にイソプロピルエーテル300mLと4N−塩酸(1.3mol)を加えて攪拌した後、イソプロピルエーテル層を減圧乾固してカルボキシメチル化物(精製品、酸型)を得た。このカルボキシメチル化物の酸価(日本油化学協会編、基準油脂分析試験法)を測定し、その酸価の値より算出したカルボキシメチル化率は94.6%であった。このカルボキシメチル化物(精製品)に、この酸価に相当する量の48%−NaOH水溶液を加えてNa塩(C−1−1)を得た。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
実施例1〜7、比較例1〜3
表3に示すラジカル重合性化合物を本発明の反応性界面活性剤として、また下記に示す化合物を比較の反応性界面活性剤として用い、下記に示す方法で乳化重合を行い、下記に示す方法で性能を評価した。結果を表4に示す。
【0048】
【化4】
【0049】
<プレエマルジョン乳化重合法>
500mLのビーカーにアクリル酸2.5g、アクリル酸ブチル123.75g、メタクリル酸メチル123.75gを仕込み、モノマー混合物を調製した。イオン交換水107.1g、に反応性界面活性剤5.0g、過硫酸カリウム0.25gを溶解し、これを上記のモノマー混合物に添加して混合し、ホモミキサーで5000r/min10分間攪拌し、均一なモノマー乳化物を得た。
【0050】
1L−セパラブルフラスコにイオン交換水137.9g、過硫酸カリウム0.25g、及び上記モノマー乳化物36.2gを仕込み、窒素気流中で30分攪拌した。次にフラスコを80℃の水浴に入れ昇温した。30分間初期重合させ、残りのモノマー乳化物を3時間かけて滴下した。この間フラスコ内の温度を80±2℃に保った。滴下終了後1時間保ち熟成した後室温まで冷却した。その後、アンモニアでpH8.0〜8.5に調整してポリマーエマルジョンを得た。
【0051】
<ポリマーエマルジョンの評価法>
▲1▼ 重合安定性
ポリマーエマルジョンを200メッシュのステンレス製金網で濾過し、重合後の反応器壁や攪拌羽根等に付着した凝集物も同様に集めて濾過し、イオン交換水による水洗後、減圧(26.6kPa)下、105℃で2時間乾燥させて凝集物量を求めた。使用したモノマーの総量に対する凝集物量の重量%で重合安定性を表した。
【0052】
▲2▼ 機械的安定性
JIS K−6828-1996に準拠して(荷重:10kg、回転数:1000r/min、5分)、ポリマーエマルジョンの機械的安定性を測定した。
【0053】
▲3▼ 平均粒径
ベックマン・コールター(株)製のサブミクロン粒度分布測定装置(コールターN4 Plus)を使用して、ポリマーエマルジョン粒子の平均粒径(重量平均)を測定した。
【0054】
▲4▼ 粘度
B型粘度計(東京計器(株)製)を用い、25℃のポリマーエマルジョン粘度(ロータ回転数:12r/min)を測定した。
【0055】
▲5▼ 残乳化剤の抽出率
ポリマーエマルジョン10gを100mLビーカーにとり、これにメタノール20vol%と飽和Na2SO4上澄み液80vol%の混合液50mLを加え、ポリマーエマルジョンを破壊する。これにメタノール50vol%と飽和Na2SO4上澄み液50vol%の混合液40mLを加えた後、濾紙濾過して残乳化剤を含む濾過液を得る。さらに、濾紙上のポリマー分にメタノール50vol%と飽和Na2SO4上澄み液50vol%の混合液160mLを数回に分けて加えて洗浄する。最初の濾過液にこの洗浄液を加えたものを凍結乾燥し、メタノール、水、残モノマー等の揮発成分を完全に除く。これに、50℃のエタノール50mLを加えて残乳化剤を抽出する。これを再度濾紙濾過してエタノール不溶成分(Na2SO4/微量のポリマー成分)を除去した後、エバポレータにて減圧乾固する。この乾固物中に含まれる残乳化剤量を高速液体クロマトグラフ法(逆相分配クロマト)で測定し、下記式により、残乳化剤抽出率を求める。
残乳化剤抽出率(%)=[残乳化剤量(測定量)/ポリマーエマルジョン10g中の乳化剤仕込量]×100
【0056】
【表4】
【0057】
表4から明らかなように、本発明に係わる反応性界面活性剤を乳化重合用の乳化剤として用いた場合、重合安定性、及び機械的安定性は良好であり、残乳化剤抽出量が少ないことが判る。
【0058】
実施例8〜9及び比較例4〜6
攪拌機、冷却管、ガス導入管を備えた1L−4つ口フラスコに、表3に示す本発明のラジカル重合性化合物(B−0−1)20g、アクリル酸ブチル80g、イソプロパノール400mL、重合開始剤V−59(和光純薬製)2gを仕込み、窒素ガス雰囲気下、内部温度67〜73℃で10時間攪拌して重合反応を行った。この反応物中に含まれる未反応のアクリル酸ブチルとイソプロパノールを減圧で留去し、アクリル酸ブチル主体の改質ポリマー(略称:PA)85.7gを得た。
【0059】
上記のB−0−1を表3に示す本発明のラジカル重合性化合物(B−1−1)に置き換える他は同様に重合を行ってアクリル酸ブチル主体の改質ポリマー(略称:PB)を得た。
【0060】
また、比較として、B−0−1をラテムルS−180A(有効分)20gに置き換える他は同様に重合を行ってアクリル酸ブチル主体の改質ポリマー(略称:PC)を得た。さらには、B−0−1を用いないアクリル酸ブチル(100g)単独系に置き換えて同様にして重合を行い、アクリル酸ブチルポリマー(略称:PD)を得た。
【0061】
上記の改質ポリマーPA,PB,PC、改質しないポリマーPD及びSAS(パラフィンスルホネートナトリウム塩)をポリマー改質剤として用い、下記方法で改質剤の評価を行った。結果を表5に示す。
【0062】
<ポリマー改質剤の評価法>
市販のハイインパクトスチレン樹脂(スミブライトM540)に、ポリマー改質剤を2重量%濃度でブレンドし、220℃に設定した押出し機にてペレットに加工し、230℃の射出成型機にてJIS K7110に準拠したテストピースを作成した。作成したテストピースは、25℃、50%RHの条件で表面固有抵抗値の測定(横河電機製測定機使用)を行い、また同時に、アイゾット衝撃強度の測定を行った。
【0063】
【表5】
【0064】
表5から明らかなように、本発明に係わるポリマー改質剤では、アイゾット衝撃強度を低下させることなく、帯電防止性に関連する表面固有抵抗値を低下させることができた。
【0065】
【発明の効果】
本発明のラジカル重合性化合物を乳化重合用の反応性界面活性剤として用いた場合、通常の乳化剤を併用しなくても重合安定性、及び機械的安定性に優れる良好なポリマーエマルジョンを製造することができる。また、本発明のラジカル重合性化合物を用いたポリマー改質剤はポリマーの改質効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 化合物(D−1−1)の赤外線吸収スペクトルである。
【図2】 化合物(D−1−1)の1H−NMRスペクトルである。
Claims (5)
- 式(1)で表されるラジカル重合性化合物。
- 請求項1記載のラジカル重合性化合物からなる、反応性界面活性剤。
- 請求項1記載のラジカル重合性化合物からなる、ポリマー改質剤。
- 請求項1記載のラジカル重合性化合物を用いる改質ポリマーの製造法。
- 請求項4記載の製造法で得られる改質ポリマーを含有するポリマー。
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