JP4269474B2 - 分繊用異型マルチフィメント糸パッケージ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分繊用異型マルチフィラメント糸のパッケージとその製造方法に関する。更に詳しくは直接紡糸延伸法でドラム形状に巻き上げられた、分繊性および品質が良好な分繊用異型マルチフィラメント糸のパッケージとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、分繊用異型マルチフィラメント糸のパッケージは一般的にボビン形状であり、2工程法で生産されていた。ボビン形状に巻かれた分繊用異型マルチフィラメント糸は製糸する際に撚りが入るため、分繊する際に撚りを戻しながら解舒し分繊する必要があった。しかしながら分繊工程において、解撚しながら解舒しても撚りを完全に戻すことは困難であり、分繊時に単糸の絡みによる糸切れ、また解撚する際の擦過による削れや、断面形状が変形するなどの問題があった。そのため分繊工程において解撚工程がなく、直接分繊可能な実質的に無撚りであるドラム状に巻かれたパッケージが提供されてきている。ドラム状パッケージにより分繊性は向上しているが、異型断面糸においては満足できるレベルではない。
【0003】
一方、ドラム状に巻かれたパッケージを生産する方法として直接紡糸延伸によるものが種々提案されている。これら直接紡糸延伸法では、糸条に油剤を付与した後、加熱延伸して巻き取るのが一般的である。しかしながら、該製法で分繊用異型マルチフィラメント糸のドラム状パッケージを製造すると、単糸の横断面形状が異型でかつ単糸繊度が太いことから、給油した際に異型断面の凹部に油剤溜まりができ、油剤付着斑が起こりやすく、油剤付着斑による加熱ローラー上での糸条間接触による糸切れ、不均一延伸に起因する糸切れ、染め斑等が発生し、品位面、高次通過性で問題があった。これらを改善するため種々の提案があり、例えば特開昭61−282412号公報では、糸条が低水分率となるように水系、または非水系の高温度、高濃度油剤を付与する方法が開示されているが、この方法では油剤を加熱する装置が必要なので、安全性や温度コントロールに問題があり、さらに油剤を加熱することでノズル吐出部に油剤成分が濃縮凝固して油剤付着斑が発生する等の問題がある。また特開平5−148705号公報では、糸条に油剤が均一付与するように低粘度油剤を付与する方法が開示されているが、この方法では逆に異型断面の凹部に油剤溜まりが発生しやすく、油剤付着斑を完全に解決できない等の問題があった。
【0004】
これらの油剤付着斑が操業性、品位面だけでなく、パッケージに巻かれた糸の絡み状態に大きく影響を及ぼして分繊性を低下させることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題を解決し、分繊性および品質が良好な分繊用異型マルチフィラメント糸のパッケージとその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、単糸デシテックスが10〜40dtex、単糸の横断面形状が異型であるマルチフィラメント糸条であって、エンタングルメント法において触針にかかる負荷張力が単位繊度当たり0.20CN/dtex以下、各単糸の油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)が10.0%未満である糸条が巻き付いた分繊用異型マルチフィラメント糸パッケージを得ることで解決される。
【0007】
【発明の実施の形態】
分繊用異型マルチフィラメント糸パッケージの糸条は、エンタングルメント法において触針にかかる負荷張力が単位繊度当たり0.20CN/dtex以下であること必要である。エンタングルメント法とは、糸条の絡みを検知する触針を糸条に突き刺したまま一定の速度で走行させたとき、触針にかかる負荷張力で糸条の絡みの度合いを測定するものであり、分繊工程での分繊性の挙動と非常に相関がみられるものである。すなわち触針にかかる負荷張力が0.20CN/dtex以下であれば、分繊工程において異型マルチフィラメント糸を解舒する時に糸条内の単糸移動がなく解舒性が良く、分繊点に撚り溜まりなく分繊可能であり、より好ましくは触針にかかる負荷張力が単位繊度あたり0.18CN/dtex以下であれば分繊時の糸離れ性が良好であり、良好な分繊性が得られる。一方、触針にかかる負荷張力が0.20CN/dtexより大きい場合は分繊工程において糸離れ性が悪く単糸が絡まり、分繊性が極めて悪くなり、更には分繊する際の単糸にかかる張力が高くなるため、得られる分繊糸は削れや変形等の問題が発生しやすくなる。
【0008】
本発明における異型とは特に規定されるものではないが、例えば三角、五角など単糸の横断面形状が凹部を1個以上有するものであれば良い。
【0009】
また、繊度は単糸デシテックスが10〜40dtexのものとする。総デシテックスが150〜500dtexの分繊用異型マルチフィラメント糸については、本件エンタングルメント法と分繊性とに著しい相関がみられる。
【0010】
分繊用異型マルチフィラメント糸の単糸数は少ないほど分繊性は向上するが、本発明であれば6本以上でも良好な分繊性が得られる。
【0011】
本発明におけるマルチフィラメント糸とは、ポリエチレンテレフタレートを主たる対象構成成分とするが、エチレンテレフタレート単位を85モル%以上(好ましくは95モル%以上)含む共重合ポリエステル等の他のポリエステルであっても良い。これらのポリエステルには固有粘度(P)(35℃のo−クロロフェノール溶液にて測定)が0.3〜1.0のものが好適である。
【0012】
本発明におけるパッケージとは、内層から外層まで巻幅(W)が略概一定で分繊用異型マルチフィラメント糸を糸管に巻いたものであり、通常ドラム状パッケージと呼ばれるものである。ドラム状パッケージのサイズは、特に規定されるものではないが、解舒性から糸条最内層幅は200mm以下が好ましい。
【0013】
本発明において、分繊用異型マルチフィラメント糸を構成する各単糸の油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)は10.0%未満である。ここで、単糸の油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)とは、分繊用異型マルチフィラメント糸条を構成する各単糸の油剤付着量のバラツキ度合いを示すため、各単糸の油分の標準偏差を各単糸の油剤付着量の平均値で除したものである。油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)が10.0%未満であれば、製糸工程ではドラム端面の糸落ちがなく、解舒性が良好であり、分繊工程においては解舒時に単糸移動がないため糸離れ性に優れ、分繊性が極めて良好である。更に好ましくは7.0%未満であれば良い。
【0014】
本発明において、分繊用異型マルチフィラメント糸の油剤付着量は分繊工程以降の高次通過性に問題ないレベルで付着していれば良いが、製糸工程における染め斑、分繊工程における分繊性の点で2.0%以下とすることが好ましい。
【0015】
概ドラムの製法として、一実施例を図1に示す。
【0016】
図1に示したような直接紡糸延伸装置において、分繊用異型マルチフィラメント糸をドラム状パッケージに巻き取る場合、給油後に加熱ローラー入口で流体処理装置として、交絡ノズルを使用し、流量が90〜300Nm3 /hrで糸条を流体処理することが本発明のドラムを得るのに特に有効的である。ここでいう流量とは、流体処理装置から分繊用異型マルチフィラメント糸に付与される空気の流量であり、流体処理装置入口側に取り付けた流量計の実測値である。本願規定の流量で糸条を流体処理するときの加熱ローラー入口の糸条にかかる張力は、単位繊度当たり0.15〜0.30CN/dtexが好ましく、分繊性が良好でかつ油剤付着斑がない糸条を得ることができる。
【0017】
本発明において、流体処理装置の形状は特に規定されるものではないが糸条が触れる流体処理部の材質はセラミックスが好ましい。
【0018】
【実施例】
以下実施例より本発明をさらに具体的に説明する。
【0019】
実施例1
総繊度220dtex、単糸繊度22dtexの分繊用異型マルチフィラメント糸のドラム状パッケージを得るため、固有粘度(35℃のクロロフェノール溶液にて測定)0.65のポリエチレンテレフタレートを凸部を3個持つ形状の繊維となるオリフィス孔10個を有する紡糸口金から溶融吐出、冷却固化し、その糸条の油剤付着量が単位長さあたり1.0%となるように濃度20%の水系油剤を給油装置で付与させてから速度1000m/分の一対の冷ローラーで糸条を引き取った後、流体処理装置を使用して糸条を流体処理し、速度1024m/分、温度100℃の加熱ローラーで単位繊度当たり0.20CN/dtexの張力を糸条に付与しながら糸条を引き取り、加熱ローラーと加熱延伸ローラーとの間で延伸倍率4.2倍で延伸し、巻き取り速度4300m/分でドラム状パッケージに10kg巻き取った。このとき、流体処理装置の流量を変更し、加熱ローラー上での糸条間接触、ドラム状パッケージに巻上がった糸条のエンタングルメント法による分繊性、単糸の油剤付着量、染め斑、ウースター糸斑、分繊工程での分繊性を確認した。その結果を表1示す。なお、実施例における物性値、および評価は次のようにして行った。
(a)エンタングルメント法における分繊性評価
ロシールド社製ニードルプルテスターを用いて、前述の方法で製糸した糸条に触針を突き刺して負荷張力を変更し、糸速5m/分で糸長1000mを評価した。
【0020】
○○:触針の負荷張力が単位繊度あたり0.18CN/dtex以下でトリップなし
○ :触針の負荷張力が単位繊度あたり0.20CN/dtex以下でトリップなし
× :触針の負荷張力が単位繊度あたり0.20CN/dtex以上でトリップあり
(b)単糸油剤付着量のバラツキ変動率
前述の方法で製糸した分繊用異型マルチフィラメント糸条を構成する10本の単糸の油剤付着量を、JIS(日本工業規格)メチルアルコール抽出法で測定したときの標準偏差を平均値で除し、バラツキ変動率(C.V.)を確認した。
【0021】
○○:単糸の油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)が7.0%未満。
【0022】
○ :単糸の油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)が7.0%以上10.
0%未満。
【0023】
× :単糸の油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)が10.0%以上。
(c)加熱ローラー上での糸条間接触確認
前述の方法で製糸した際に、加熱ローラー上で糸条の単糸割れ、および接触状態を目視にて確認した。
【0024】
○ :糸条間接触なし、単糸割れなし
△ :糸条間接触なし、単糸割れ若干あり
× :糸条間接触あり、糸切れあり
(d)染色斑
糸条100mを筒編みにして精錬した後、分散染料(キャリアー含有)で染色し、目視で確認した。
【0025】
○ :濃染異常部発生なし
△ :濃染異常部発生なし、濃淡差あり
× :濃染異常部発生あり
(a)ウスター糸斑
糸条を糸速200m/分で1分間連続走行させ、試料の太さ斑によって生じる電気容量の変化を糸の断面としてチャートに出力したときのウスター値(U%)で確認した。
【0026】
○ :U%値1.2未満
△ :U%値1.2以上1.5未満
× :U%値1.5以上
(f)分繊性
10kgに巻き取ったドラム状パッケージ100個を、単糸切れなく分繊速度600m/分で10本のモノフィラメントに分繊できた割合を満管率(%)で表した。
【0027】
○○:満管率80%以上
○ :満管率60%以上80%未満
× :満管率60%未満
【0028】
【表1】
本発明の実験No.2〜6は良好であった。実験No.1は加熱ローラー上での糸条の糸割れ、および糸条間接触が発生し、糸切れが多発した。実験実験No.7〜8は単糸が絡み、分繊工程において単糸切れが多発し満足できるレベルではなかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の分繊用異型マルチフィラメント糸の直接紡糸延伸法によれば、単糸横断面形状が異型であるマルチフィラメント糸条は、エンタングルメント法において規定した触針の負荷張力以下で分繊し、その糸条は給油後に流体処理するときの流量を規定することで得ることが可能である。該方法によれば製糸時の糸切れ、ダイフレックが発生しない分繊性良好なパッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の直接紡糸延伸方法の一実施態様を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 : 紡糸口金
2 : 糸条
3 : 冷却装置
4 : 油剤付与装置
5a: 張力付与引き取りローラー
5b: 張力付与引き取りローラー
6 : 流体処理装置
7 : 加熱引き取りローラー
8 : 分離ローラー
9 : 加熱延伸ローラー
10 : 分離ローラー
11 : 巻き取り機
12 : パッケージ
Claims (1)
- 単糸デシテックスが10〜40dtex、単糸の横断面形状が異型であるマルチフィラメント糸条であって、エンタングルメント法において触針にかかる負荷張力が単位繊度当たり0.20CN/dtex以下、各単糸の油剤付着量のバラツキ変動率(C.V.)が10.0%未満である糸条が巻き付いた分繊用異型マルチフィラメント糸パッケージ。
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