JP3472942B2 - ポリエステル高強力仮撚加工糸の製造方法 - Google Patents

ポリエステル高強力仮撚加工糸の製造方法

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JP3472942B2 JP07713795A JP7713795A JP3472942B2 JP 3472942 B2 JP3472942 B2 JP 3472942B2 JP 07713795 A JP07713795 A JP 07713795A JP 7713795 A JP7713795 A JP 7713795A JP 3472942 B2 JP3472942 B2 JP 3472942B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステル高強力仮
撚加工糸の製造方法に関し、さらに詳細には体育衣料用
(トレーニングウエア、アウトドア用途)などとして有
用な高強力のポリエステル仮撚加工糸を生産効率よく、
高速で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】衣料用途に用いられるポリエステル仮撚
加工糸は、固有粘度が約0.60程度のポリエステル未
延伸糸条を約1,000m/分程度の紡糸速度で紡糸し
たのち、約3.5倍に延伸し、得られた延伸糸を低速
(150m/分程度)で仮撚加工する方法や、あるいは
3,000m/分前後の速度で紡糸した部分配向糸(P
OY)を延伸同時仮撚加工するPOY−DTY方式など
が知られている。しかしながら、このような方法で得ら
れたポリエステル仮撚加工糸を体育衣料用(トレーニン
グウエア、野球用ユニフォームなど)に用いた場合、ス
ライディング時の耐摩耗性が充分でなく、繊維が容易に
破断し布帛に穴あき現象が発生する。
【0003】この改良として、特開昭62−12502
9号公報には、固有粘度0.67以上1.20以下のポ
リエステルを溶融紡糸してなる紡出糸を一旦延伸熱処理
したのち、スピンドル仮撚で低速かつ接触ヒータを用
い、仮撚加工することが示されている。ところが、近
年、仮撚加工の高速化が進むにつれ、その設備コストを
低減させるために、高速加工に対する要請が強くなって
いる。しかしながら、高強力仮撚加工糸を得ようとする
場合、通常のPOY−DTY方式では、加工毛羽が上昇
する一方、強力が低下し充分な強力が得られず、しかも
低速加工のため製造コストの面からも高速加工が必要と
なっている。
【0004】しかしながら、従来技術で延伸同時仮撚加
工を行う場合には、高強力仮撚加工糸を得ようとして、
高倍率で延伸仮撚を行うと、毛羽が多発し製品品位の低
下、および後工程において製織性のトラブルの原因とな
り、さらには断糸が多発して生産性が著しく低下する。
特に、単糸繊度が5デニール以下のポリエステル仮撚加
工糸の場合には、強度4.5g/de以上の糸を得るの
は極めて難しい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の
問題点を解消し、充分に満足し得る高強力の仮撚加工
糸、例えば体育衣料用として有用な耐摩耗性に優れた仮
撚加工糸を生産効率よく、しかも高速で仮撚加工するこ
とにより、低コストで安価に製造する方法を提供するこ
とにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、固有粘度0.
71〜1.20、複屈折率0.03〜0.07のポリエ
ステル未延伸糸条を延伸しつつ仮撚ディスクにより仮撚
を施し、この仮撚を熱セットしてから冷却プレートによ
り冷却し、次いで解撚するに際し、このポリエステル未
延伸糸条をあらかじめ交絡度が40ケ/m以上となるよ
うに交絡処理するとともに、熱セット用のヒータを非接
触ヒータとし、該ヒータ温度を400℃以上、熱処理時
間を0.04〜0.08秒、かつD/Y〔ここで、Dは
仮撚ディスク速度(m/分)、Yは糸条速度(m/分)
を示す〕1.3〜1.7で延伸同時仮撚加工(以下「D
TY加工」ともいう)することを特徴とするポリエステ
ル高強力仮撚加工糸の製造方法である。
【0007】本発明でいうポリエステルとは、ポリエチ
レンテレフタレート単独重合体を主たる対象とするが、
エチレンテレフタレートを90モル%以上含むポリエス
テル共重合体であってもよい。後者の共重合体におい
て、テレフタル酸およびエチレングリコール成分に共重
合し得る第3成分としては、例えばイソフタル酸、2,
6−ナフタリンジカルボン酸、アジピン酸、シュウ酸、
トリメリット酸、ピロメリット酸、ジエチレングリコー
ル、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトー
ル、p−オキシ安息香酸あるいはこれらの機能的誘導体
などが挙げられる。また、これらのポリエステルには、
艶消し剤、安定剤、難燃剤、静電防止剤、着色剤、結晶
化促進剤、結晶化抑制剤などの改質剤や充填剤を含んで
いても差し支えない。
【0008】ここで、ポリエステル未延伸糸条には、固
有粘度(30℃、o−クロロフェノール溶液中で測定)
は、0.71〜1.20、好ましくは0.75〜1.0
5の、高イータポリエステルが用いられる。本発明のD
TY加工において、固有粘度が0.71未満では、強
度、耐疲労性、耐摩耗性などの力学特性が不足し、強度
が4.5g/de以上の仮撚加工糸が得られない。一
方、1.20を超えると、溶融紡糸時に口金直下での糸
切れが頻発し、安定した溶融紡糸が困難となるばかり
か、DTY加工時にも毛羽が多発し、加工断糸が発生し
やすく、安定した操業性が得られがたい。
【0009】また、本発明に用いられるポリエステル紡
出糸、すなわちポリエステル未延伸糸条は、複屈折率
(Δn)が0.03〜0.07、好ましくは0.035
〜0.065の高配向ポリエステル未延伸糸条である。
この複屈折率が0.03未満では、DTY加工において
高速加工すると、加撚張力(T1 )が低く、サージング
(ヒータ内での糸揺れ)現象が発生する。そして、これ
を防ぐため、高倍率加工にすると、加工毛羽が多発し、
得られる仮撚加工糸を体育衣料とした場合、耐摩耗性が
充分には改善されず、製品品位も不充分となる。一方、
この複屈折率が0.07を超えると、溶融紡糸中に口金
下での糸切れが多発し、安定した製造が困難となる。ま
た、DTY加工においては、加撚張力(T1 )が高く、
仮撚ディスクの損傷または摩耗が発生しやすい。これを
防ぐため、逆に低倍率加工にすると、強度が低く、スラ
イディングなどによる耐摩耗性が改善されない。
【0010】本発明に使用されるポリエステル未延伸糸
条を通常の溶融紡糸で得るためには、一般に紡糸速度
2,000〜3,500m/分が採用される。ただし、
ポリエステルの固有粘度や紡糸条件により、この紡糸速
度は変化する。すなわち、ポリエステルの固有粘度が高
ければ紡糸速度は低速側へシフトし、また紡糸口金直下
に加熱筒を設けて加熱を行うと、紡糸速度は高速側へシ
フトする。
【0011】本発明では、高速(1,000m/分以
上)仮撚加工するため、延伸と仮撚とを同時に行うDT
Y加工が必要である。紡出未延伸糸条を、一旦、延伸し
たのち、仮撚加工加工を行う、いわゆる別延伸方式は採
用されない。
【0012】従来の知見では、POY−DTY方式で
は、高強度のポリエステル仮撚加工糸が得難く、断面が
偏平化しやすいため、耐スライディング摩耗性が低下す
るということが特開昭62−1225029号公報に開
示されている。従来の方式では、図5に示すように、仮
撚ディスクからヒータへの撚り遡及が屈曲していること
や、ヤーンパスが長く、高速仮撚加工するためには、接
触ヒータでも高温領域約230℃で約3〜4m以上必要
となる。品質、捲縮率を無視して、高速仮撚加工したと
しても、上述のヤーンパスが長く、屈曲している点よ
り、ヒータ〜冷却プレートでの糸揺れ、サージング現象
が発生し、かつ工程加工性も断糸が多発し、操業生産は
不可能である。なお、図5において、符号5′は第1ヒ
ータ(接触ヒータ)、符号10は第2ヒータであり、そ
れ以外の符号は図1と同様である。
【0013】本発明では、上記高イータ・高配向ポリエ
ステル未延伸糸条を、特定の条件で、例えば図1に示す
工程によりDTY加工するものである。すなわち、図1
において、高イータ・高配向ポリエステル未延伸糸条で
ある原糸1は、糸条yとして解舒されてフィードローラ
2に供給され、第1デリベリローラ4との間に設けられ
た交絡用空気噴射ノズル(インターレースノズル)3で
交絡処理されたのち、非接触ヒータ5で高温(400℃
以上)、短時間熱処理(0.04〜0.08秒)され、
冷却プレート6を経て仮撚付与装置である仮撚ディスク
7に導入されて、低D/Y(D/Y=1.3〜1.7)
加工され、第2デリベリローラ8に引き取られ、この間
に仮撚セット(加撚)−解撚され、巻き取り機9にて高
速(1,000m/分以上)でチーズとして巻き取られ
る。
【0014】ここで、高イータ・高配向ポリエステル未
延伸糸条yには、あらかじめ交絡を付与したのち、DT
Y加工を施す必要である。すなわち、DTY加工する前
に、あらかじめポリエステル未延伸糸条yに交絡を付与
しておくと、交絡部では、仮撚加工時に構成単糸の層転
移が阻止され、捲縮クリンプの付与が妨げられる。一
方、交絡が付与されていない部分では、単糸の層転移が
起こり、捲縮クリンプが付与される。糸条yに、交絡が
付与された状態、具体的には交絡度が40ケ/m以上、
特に50ケ/m以上の交絡を付与された状態で、高温で
短時間、熱処理(ショック加熱)されると、糸条(マル
チフィラメント)yの長さ方向に、毛虫毛羽(長さ3〜
15mmの毛羽)の発生のない、高強力仮撚加工糸が得
られる。
【0015】ポリエステル未延伸糸条に交絡処理を施す
には、通常の上記交絡用空気噴射ノズル(インターレー
スノズル)のような流体噴射交絡付与装置が用いられ
る。本発明において、DTY加工前に付与する交絡は、
従来のDTY加工後に糸条に集束性を付与することを目
的として付与する交絡とは全く別の異なるものである。
仮撚加工後に交絡処理した加工糸は、本発明で得られる
仮撚加工糸と類似の外観を呈するが、その交絡は、僅か
なシゴキによって簡単に消滅してしまい、さらに交絡
部、非交絡部がともに同じ程度に、仮撚付与されている
ので、弛緩熱処理によって加工糸の長さ方向に、均一な
捲縮クリンプ形態が発現してしまう。このことは、特に
高速加工における高強力糸を仮撚加工後の交絡処理時に
損傷を与え、毛羽足の長い、“毛虫毛羽”(毛羽の長さ
3〜15mm)が発生し、品位低下を招くとともに、高
速加工性が不安定となる。さらには、後加工での解舒性
(市場での製織性)に問題が生ずる。また、DTY加工
前に、交絡を付与しなかった場合や、交絡を付与して
も、交絡度が40ケ/mに満たない場合も、同様に毛虫
毛羽が発生する傾向があり、好ましくない。
【0016】次に、上記高イータ、高配向ポリエステル
未延伸糸条をDTY加工するに際しては、熱セット用の
ヒータを非接触ヒータとし、該ヒータ温度を400℃以
上、熱処理時間を0.04〜0.08秒とし、かつD/
Y〔ここで、Dは仮撚ディスク速度(m/分)、Yは糸
条速度(m/分)を示す〕1.3〜1.7で仮撚加工す
ることが必要である。
【0017】本発明において、熱セット用のヒータは、
例えば図2に示すように、ヒータの長手方向に適宜の間
隔で設けたガイド54により、走行糸条yがヒータ本体
(ヒータブロック)51に接触しないようにした非接触
式ヒータであり、ヒータ長さは、通常、0.7〜1.0
mであり、加熱温度は、糸条の融点以上(400℃以
上)の温度にされている。本発明の非接触ヒータは、図
2に示すように、撚りによるバルーニングを防止するた
めに、ガイド54を設けたものが好ましく、この意味に
おいては完全な非接触式ヒータを意味するものではな
い。
【0018】図2に示す具体的な非接触ヒータについ
て、以下にさらに詳細に説明する。ヒータ5は、シーズ
ヒータ(図示せず)を内設したヒータ本体51に2本の
溝52、53が刻設され、該溝52、53には糸条案内
用のガイド54が設けられている。ヒータ内の溝は、ほ
ぼ2〜10cm間隔でガイド54が設けられ、糸条yは
このガイド54により、図2(b)、(c)に示すよう
にその底部に沿って定位置を走ることになる。この場
合、糸条yの安定走行性を確保するために、底部位置を
ある曲率を形成するごとく配置しておくのが好ましい。
【0019】ヒータの温度は、図2(c)に示すように
その中央部で測定される温度が、400℃以上、好まし
くは800℃以下にする必要がある。400℃未満で
は、供給原糸の欠点(巻き込み毛羽)などで断糸したと
き、ガイド54などに溶融ポリマーが付着し、それがな
かなか灰にならず、糸掛けが困難となり、再糸掛け性が
低下し、操業生産性、歩留り低下となって問題を生じ
る。もちろん、400℃未満でも仮撚加工はできるが、
ヒータ長さが0.7〜1.0mでの捲縮が従来の製品と
同レベルにするためには、加工速度を下げざるを得ず、
高速加工のメリットがなく、前述の作業性が悪くなる点
でも不利である。
【0020】この温度が、400℃以上であると、溶融
ポリマーが短時間(数分)で分解して灰となり、スカム
として残らなくなる。しかしながら、800℃を超える
と、ヒータの耐久性、エネルギーコストの上昇となり、
かつ熱処理時間が短くなるため、所望の熱処理効果が得
られない。
【0021】また、このヒータの熱処理時間は、0.0
4〜0.08秒、好ましくは0.04〜0.07秒であ
り、0.04秒未満では捲縮率が充分上がらず、また得
られる仮撚加工糸の強度も低下するので、スライディン
グ耐摩耗性が不充分となり好ましくない。また、上述の
高速加工のため、強度低下に加えて、サージングが発生
しやすく、染着不良が生じやすい。一方、0.08秒を
超える場合は、熱処理オーバーによる淡染化および染斑
発生や、加工毛羽が発生しやすくなり、品位に影響す
る。
【0022】図4は、本発明と比較例(従来技術)にお
けるサージング現象の起こる領域を示したサージングマ
ップグラフである。これによると、加撚張力の低い領域
では、一定の張力下で仮撚加工速度を上げるとサージン
グが発生するが、その速度は本発明の方が従来技術より
400m/分以上大きい。一方、加撚張力の高い領域で
は、一定の張力下で仮撚加工速度を上げると断糸が発生
するが、その速度は、本発明の方が従来技術より600
m/分以上大きくなっている。通常、安定に仮撚加工す
るためには、加撚張力の変動幅は10g程度許容されて
いることが必要である。この図から、本発明では、1,
000m/分以上でも安定に仮撚加工できるが、従来技
術では、せいぜい600〜700m/分でしか仮撚加工
できないことが分かる。
【0023】以上のように、本発明では、非接触型の高
温ヒータにより、高速(加工速度で1,000m/分以
上)で仮撚加工することができる。この際、熱セット用
のヒータで熱処理された糸条yは、随伴流を伴って冷却
プレート6に入ってくるが、随伴流は水分や油分(油
剤)を含んでおり、これが該プレート6の通路壁面で冷
却されると急激に液化し、油滴となる。また、糸条yに
付着した油剤が、高速回転撚による遠心力などで絞りだ
されて油滴となる。この油滴は、原糸の欠点(巻き込み
毛羽)がプレート溝を通過時にジャンピング現象を起こ
し、品質不良(未捲縮糸が発生、染斑不良)となり問題
である。
【0024】この油滴発生のメカニズムとして考えられ
ることは、例えば冷却プレート6の表面粗度(Ra)が
「ゴツゴツ」した状態の0.3μmを超える窒化処理コ
ーティングにおいては油滴発生が多い。これは、月面の
クレーターのごとく凹凸を核として、油剤、油滴成分が
徐々に蓄積され、ついにはプレート通路壁面に流れ出て
ジャンピングが発生するものと推定される。このことか
ら、冷却プレート6の表面粗度(Ra)は、「ツルツ
ル」の鏡面仕様である0.3μm以下にするが好まし
い。これにより、油滴成分は、糸条yに連れ込まれてい
く。このことは、加工後の糸条yのo.p.u測定結果
で確認されている。
【0025】積極的な油滴の強制吸引手段として、さら
に好ましくは冷却プレート6の糸条走行面に該走行面か
ら裏面に通じる吸引を行うとよい。これにより、油滴
は、冷却プレート内部の中空部に吸い込まれる。さら
に、必要に応じて、吸引ノズルを通して分離装置でもっ
て、排出、除去してもよい。その際でも、冷却プレート
6の表面粗度Raは、0.3μm以下が好ましい。
【0026】つまり、通常の接触式ヒータでは、ヒータ
上で接触、抵抗を受け発生する油煙は排煙され、糸条油
剤の脱着物はヒータタールとして残存するが、これらは
数日後にヒータ清掃処理される。これに対し、本発明に
おける高温非接触ヒータの場合、ヒータ部では接触抵抗
がなく、当然、ヒータタールもない。しかしながら、ヒ
ータ下の冷却装置である冷却プレート6が接触式プレー
トであると、このプレート上に油剤やその脱着物が付着
し、前述のような種々のトラブルを発生するわけであ
る。
【0027】本発明は、このような問題点を解消し、高
速加工における冷却プレートへの油剤付着による油滴の
発生をなくし、走行糸条の円滑な撚遡及、サージング現
象の抑制をし、安定加工させることが好ましい。そのた
めには、高速仮撚加工(1,000m/分以上)におけ
る、冷却プレート6の接糸溝底部が図3(b)のごと
く、その軸線直角断面において、少なくとも2mm以上
の曲率(R)で、かつRa≦0.3μmの鏡面仕上げを
施すことが好ましい。2mm未満の曲率の場合、上記の
ジャンピングが発生しやすく、かつ溝底部の清掃が困難
となる。この曲率は、好ましくは4mm以下である。さ
らに重要なことは、表面粗度であり、Raが0.3μm
以下が必要である。0.3μmを超える場合は、油滴の
発生が経時で増加傾向にあり、ジャンピングが発生す
る。Raの好ましい範囲としては、0.1〜0.3μm
である。
【0028】図3において、冷却プレート6は、湾曲状
の凹部を形成した糸条走行路を有する縦長接触式に冷却
プレートで構成され、その接糸溝走行部の縦断面図
(b)に示すように、2mm以上の曲率(R)を示す。
ヒータ5で加熱された糸条yは、随伴流をともなって冷
却プレート6に入ってくる。冷却プレート6で冷却安定
化されたのち、仮撚ディスク7で解撚された糸条yは、
第2デリベリローラ8で引き取られ、次いで巻き取り機
9に巻き取られる。なお、ヒータ5の温度は、前述のご
とく、加工速度、糸条繊度などによって設定されるが、
例えば1,000m/分以上の高速で加工されるときに
は、ヒータ温度は450〜500℃が好ましい。
【0029】本発明におけるDTY加工に際しては、上
記のように固有粘度0.71〜1.20、複屈折率0.
03〜0.07である高イータ・高配向ポリエステル未
延伸糸条を用い、この糸条にあらかじめ交絡処理を施し
たのち、DTY加工時に前述の熱セット用ヒータを非接
触式とし、400℃以上で0.04〜0.08秒熱処理
させる。本発明では、これらの条件とともに、特に重要
な点は、D/Y〔ここで、Dは仮撚ディスク速度(m/
分)、Yは糸条速度(m/分)を示す〕1.3〜1.7
で仮撚加工することが必要である。
【0030】すなわち、本発明において、D/Yが1.
3未満の場合は、加撚張力(T1 )が低くなり、サージ
ングが発生しやすく、毛羽が多発し、かつヒータ内での
バルーン糸揺れのため、染斑発生が起こり、目的とする
加工糸が得られない。一方、D/Yが1.7を超える
と、加撚張力(T1 )が高くなり、解撚張力(T2 )が
低く、K値(T2 /T1 )が0.6以下となることか
ら、タイトスポットが目立つようになり、未解撚が発
生、また加工断糸が多く、操業生産性上、問題となる。
【0031】本発明において、上記D/Y領域を得るに
は、実用的には、例えばディスク設計において、ウレタ
ンゴム製のディスク(ウレタンディスク)を用い、ディ
スク走行角(θ)=30〜40°、ディスク径54〜6
4φ、ディスク枚数4〜8枚、ディスク厚さ7〜11t
(mm)に設定することが好ましい。ただし、この条件
に限定されるものではない。ウレタンディスクを用いる
と、糸条の把持力、撚掛性に優れ、高速仮撚加工に適し
ており、毛羽が少なく、強度が大きい高強力仮撚加工糸
を得ることができる。
【0032】なお、加工後の単糸繊度は、好ましくは5
デニール以下、さらに好ましくは1.0〜4.0デニー
ルである。5デニールを超えると、強度や耐摩耗性は向
上するが、織編モノマーとした場合、ガサツキ、風合の
面から着心地が悪く、衣料分野に用いるには適さない。
また、加工後の仮撚加工糸繊度は、20〜150deに
するのが好ましい。加工後、150deを超える場合
は、目標とする糸強度、捲縮特性を得るため加工速度の
低下が必要となり(仮撚ディスク経時摩耗による寿命低
下)、本発明の目的とする高速仮撚加工によるメリット
がなくなる。一方、加工後、20de未満では、高速加
工におけるクリールからの解舒で負荷が発生し、また仮
撚加工時の僅かな張力変動が未解撚発生となりやすく、
かつ染斑が発生し易くなって好ましくない。かくて、本
発明によれば、加工後の強力が4.5g/de以上のポ
リエステル高強力仮撚加工糸が得られる。
【0033】
【作用】本発明は、固有粘度および紡出糸の複屈折率
が、特定の範囲にあるポリエステル未延伸糸条を、この
未延伸糸条にあらかじめ交絡処理を施すとともに、DT
Y加工時の熱セット用のヒータを非接触ヒータとし、ヒ
ータ温度、熱処理時間、およびD/Y(ディスク/糸条
速度)を特定の範囲で同時延伸仮撚加工することによ
り、強度4.5g/de以上のポリエステル高強力仮撚
加工糸を得るものである。
【0034】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳しく
説明する。なお、実施例において、各測定値は、以下の
方法で測定した。切断強度、切断伸度 引張試験機を用い、糸長25cm、引張速度10cm/
分の条件で、気温25℃および湿度60%の雰囲気で測
定した。断面偏平率 光学顕微鏡を用い、断面写真を撮り、断面の外接円の半
径(R)、内接円の半径(r)をそれぞれ求め、断面偏
平率を〔(R−r)/R〕×100(%)で算出した。
なお、測定は、1サンプル最低20ケの単糸で行った。
【0035】捲縮率(TC) 試料に50mg/deの張力を掛けてカセ枠に巻き取
り、約3,000deのカセを作る。カセ作製後、カセ
の一端に2mg/de+200mg/deの荷重を負荷
し、1分間経過後の長さl0 (cm)を測定する。次い
で、200mg/deの荷重を除去した状態で、100
℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後、2mg
/deの荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥
する。自然乾燥した試料に、再び2mg/de+200
mg/deの荷重を負荷し、1分間経過後の長さl
1 (cm)を測定する。次いで、200mg/deの荷
重を除去し、1分間経過後の長さl2 を測定し、次の算
式で捲縮率を算出した。 TC(%)=〔(l1 −l2 )/l0 〕×100
【0036】加工毛羽 毛羽数は、東レ(株)製、東レ毛羽カウンタータイプD
T−104を用いて測定した。また、毛虫毛羽は、完巻
チーズの端面を目視により判定した。また、毛虫毛羽
は、完巻チーズの端面を目視により判定した。風合 官能検査により評価し、○を良好、×を不良と判定し
た。
【0037】布帛耐摩耗性 30kgのダミーに、本発明のポリエステル仮撚加工糸
を約300g/m2 の編密度にて編んだ布帛を被せる。
この試験用サンプルを、車で20km/時間の速度でグ
ランド上を引っ張り、1,000m走行して表面状態を
観察した。 ○;表面に若干単糸切れが発生する程度でほとんど傷が
つかない。 △;ループ切れが発生し、耐摩耗性が不充分。 ×;布帛に穴あきが発生し、耐摩耗性不良。
【0038】サージング状況 仮撚加工時のヒータから冷却プレートまでの間における
糸揺れの状況で、揺れなし(○)、揺れ少し(△)、揺
れ中(×)、揺れ多し(××)と判定した。操業性 5kg巻きのチーズを200本巻き取ったのち、断糸に
より完巻できなかった割合を求め、その割合が15%以
上を×、10%以上15%未満を△、10%未満を○と
評価した。
【0039】実施例1 固有粘度0.80のポリエチレンテレフタレートを、
2,800m/分の紡糸速度で溶融紡糸し、複屈折率が
0.037のポリエステル未延伸糸条を得た。この未延
伸糸条を、図1に示すと同様の延伸同時仮撚加工装置に
より仮撚加工を行った。ここで、仮撚加工条件は、非接
触ヒータの設定温度=500℃、熱処理時間=0.06
秒(ヒータ長1m)、D/Y=1.60、DR(延伸倍
率)=1.65とし、ポリエステル未延伸糸条を、加工
後の繊度が75デニールになるように、1,000m/
分の速度で延伸同時仮撚加工した。結果を表1に示す。
【0040】実施例2 ヒータ温度を580℃、加工速度を1,200m/分、
熱処理時間を0.05秒とする以外は、実施例1と同様
にして延伸同時仮撚加工を行った。結果を表1に示す。
【0041】比較例1〜2 図5に示すような従来技術の延伸同時仮撚加工装置を用
い、実施例1と同じ原糸(未延伸糸条)を用い、230
℃で熱処理し、加工後の繊度が75デニールになるよう
に、500m/分の速度(比較例1)、1,000m/
分の速度(比較例2)で加工した。結果を表1に示す。
【0042】比較例3 実施例1と同じ原糸(未延伸糸条)を、別延伸方式で一
旦延伸(延伸倍率=3.5)して得た糸条を、市販のス
ピンドル仮撚加工機〔三菱重工業(株)製、LS−8〕
を用い、ヒータ温度230℃、10%オーバーフィー
ド、仮撚係数0.90、加工後の繊度が75デニールに
なるように、150m/分の速度で加工した。結果を表
1に示す。
【0043】実施例3 固有粘度が0.80のポリエチレンテレフタレートを、
1,000、2,000、2,500、3,000、
3,500、4,000m/分の紡糸速度で溶融紡糸
し、複屈折率がそれぞれ0.008、0.025、0.
031、0.038、0.050、0.072であるポ
リエステル未延伸糸条を得た。次いで、これらの未延伸
糸条を、実施例1と同様にしてDTY加工した。得られ
た仮撚加工糸の諸特性を表2〜3に示す。なお、表2〜
3中、実験No.に注記した(実)は本発明の範囲内の
実施例を、(比)は本発明の範囲外の比較例を示す。
【0044】実施例4 固有粘度が0.55、0.64、0.71、0.80、
0.99、1.25のポリエチレンテレフタレートを、
いずれも2,800m/分の紡糸速度で溶融紡糸し、複
屈折率がそれぞれ0.027、0.029、0.03
4、0.037、0.041、0.044であるポリエ
ステル未延伸糸条を得た。次いで、これらの未延伸糸条
を、実施例1と同様にしてDTY加工した。得られた仮
撚加工糸の諸特性を表4に示す。なお、表4中、実験N
o.に注記した(実)は本発明の範囲内の実施例を、
(比)は本発明の範囲外の比較例を示す。
【0045】実施例5 固有粘度0.80のポリエチレンテレフタレートを、
2,800m/分の紡糸速度で溶融紡糸し、複屈折率
0.037のポリエステル未延伸糸条を得た。次いで、
この未延伸糸条を、図1に示す装置を用い、ヒータ温
度、熱処理時間、D/Y、未延伸糸条の交絡度を各種変
更してDTY加工を行った。得られた仮撚加工糸の諸特
性を表5〜7に示す。なお、表5〜7中、実験No.に
注記した(実)は本発明の範囲内の実施例を、(比)は
本発明の範囲外の比較例を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】表1〜7から明らかなように、本発明によ
り得られる仮撚加工糸は、強度、伸度、TCのいずれに
おいても優れている。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、特に1,000m/分
以上の高速仮撚加工において、ヒータ上でのサージング
現象を防止でき、円滑な撚遡及を達成でき、コンパクト
な設備で高強力(4.5g/de以上)なポリエステル
仮撚加工糸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するに好適な装置の概略図であ
る。
【図2】(a)は図1のヒータの平面図、(b)は同ヒ
ータの部分的横断面図、(c)は同ヒータの上部縦断面
図である
【図3】(a)は図1の冷却プレートの拡大正面図、
(b)は同冷却プレートの拡大横断面図、(c)は同冷
却プレートの溝部の曲率を示す説明図である。
【図4】本発明と比較例のサージングマップグラフであ
る。
【図5】従来例を示す接触ヒータ式の中速仮撚加工機の
概略図である。
【符号の説明】
1 原糸 2 フィードローラ 3 交絡用空気噴射ノズル 4 第1デリベリローラ 5 仮撚の熱セット用ヒータ 6 冷却プレート 7 撚掛装置(仮撚ディスク) 8 第2デリベリローラ 9 巻き取り機 52,53 溝 54 ガイド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−241024(JP,A) 特開 昭61−19825(JP,A) 特開 平5−171535(JP,A) 特開 平6−158463(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 1/00 - 3/48 D02J 1/00 - 13/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固有粘度0.71〜1.20、複屈折率
    0.03〜0.07のポリエステル未延伸糸条を延伸し
    つつ仮撚ディスクにより仮撚を施し、この仮撚を熱セッ
    トしてから冷却プレートにより冷却し、次いで解撚する
    に際し、このポリエステル未延伸糸条をあらかじめ交絡
    度が40ケ/m以上となるように交絡処理するととも
    に、熱セット用のヒータを非接触ヒータとし、該ヒータ
    温度を400℃以上、熱処理時間を0.04〜0.08
    秒、かつD/Y〔ここで、Dは仮撚ディスク速度(m/
    分)、Yは糸条速度(m/分)を示す〕1.3〜1.7
    で延伸同時仮撚加工することを特徴とするポリエステル
    高強力仮撚加工糸の製造方法。
  2. 【請求項2】 延伸同時仮撚加工を、加工速度1,00
    0m/分以上で行う請求項1記載のポリエステル高強力
    仮撚加工糸の製造方法。
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