JP3489929B2 - ポリエステル繊維の紡糸延伸方法 - Google Patents
ポリエステル繊維の紡糸延伸方法Info
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Description
紡糸延伸方法に関するものであり、更に詳しくは、ポリ
エステル繊維の直接紡糸延伸方法において、得られる糸
条の熱収縮性をほぼ4%以下に抑えながらしかも製造時
の操業性を円滑に保つことの出来る紡糸延伸方法に関す
るものである。 【0002】 【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートで代表され
るポリエステルマルチフィラメントは数多くの優れた特
性を備えており、種々の用途、特に衣料用繊維に広く利
用されている。前記ポリエステル繊維は、通常、溶融紡
糸、延伸、熱セットの各工程を順次経由して製造してお
り、溶融紡糸と延伸とは、従来別個の工程で行われてい
たが、近時生産性を高めるために溶融紡糸と延伸とを連
続して行う方法、即ち直接紡糸延伸方法が広く採用され
ている。 【0003】前記直接紡糸延伸方法の代表例を図3によ
り具体的に説明すると、紡糸口金1から吐出されたフィ
ラメント(以下糸条とも呼称する)2は、冷風により固
化された後、給油装置3により油剤を付与され、次いで
第1ゴデットローラ4と第1セパレートローラ5で構成
される供給ローラ6に5回程度巻着した後、更に第2ゴ
デットローラ7と第2セパレートローラ8で構成される
延伸ローラ9に5回程度巻着し、その後、トラバースガ
イド10を経て糸条巻き上げ機構11により巻き上げら
れる。前記機構において、供給ローラ6と第2セパレー
トローラ8は常温ローラ、第2ゴデットローラ7は通常
加熱ローラで構成されており、各ローラはその横断面が
眞円の円柱体であって、第1ゴデットローラ4と第2ゴ
デットローラ7の周速比により所定の延伸域を形成して
いる。 【0004】このような直接紡糸延伸方法において、得
られる糸条の物性並びにその生産性はほぼ引取速度で定
まっており、製糸技術の進歩により、その引取速度は従
来の1000〜1500m/分から2000m/分以
上、更には2500〜4000m/分まで大幅に上昇さ
せることが可能となっている。特に取引速度を2500
〜4000m/分にして得られる中間配向未延伸糸は、
通常そのままの形で延伸仮撚捲縮加工に供給できるの
で、近時、この種の用途は拡大し、製糸技術の主流とな
っている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前記直接紡糸延伸方法
においては、引取速度を更に4000m/分以上にする
超高速紡糸も試みられているが、このような超高速紡糸
では紡糸時の糸切れが多発し、又得られる製品の品位も
低下する欠点がある。加熱ローラ使いの直接紡糸延伸方
法において、該法揚りの糸条の熱収縮率(以下単に熱収
と略称する)が高いこともこれらの欠点の一つに挙げら
れる。 【0006】即ち、図3に示す加熱ローラ使いの通常の
直接紡糸延伸方法において、第2ゴデットローラ7の温
度を135℃に設定すると、得られる糸条の熱収はほぼ
7%前後となり、熱収4%前後の低熱収糸を得るために
は、第2ゴデットローラ7の設定温度を150℃以上に
高くする必要がある。ところが眞円柱体の第2ゴデット
ローラ7を用いる従来機構において、ローラ表面の温度
を140℃以上にすると、第2ゴデットローラ7表面で
の糸揺れが激しくなり、円滑な操業が不可能となる障害
がある。 【0007】このような糸揺れは、第2ゴデットローラ
7上で加熱により未延伸糸中のフィラメントが瞬間的に
ゆるむことに起因しており、ゆるんだフィラメントは主
束から曲がり、結果として前記横揺れ現象を生ずるので
あるが、この現象が過度になると、フィラメント数不
足、フィラメント切れ、ループ発生等、種々の欠陥を引
き起すこととなる。 【0008】前記現象によるトラブルは、図4に示すよ
うに、溶融紡糸筒の一つの紡糸口金から複数(通常2〜
8)のフィラメント群を同時に紡出して処理する複数エ
ンドプラントにおいて顕著となる。この場合は同一の第
2ゴデットローラ7上に例えばA・B2本のフィラメン
ト群が並列走行するので、熱弛緩による糸揺れが激しく
なると、走行する糸条が隣同志の糸を踏むことになり、
糸切れを多発する。更に糸掛け段階において第2ゴデッ
トローラ7上での糸揺れが激しくなると、巻始めの糸掛
けが困難となって紡糸不能となる。 【0009】本発明は前記問題点の解消を目的とするも
ので、加熱延伸ローラを用いる直接紡糸延伸方法におい
て、得られる糸条の熱収をほぼ4%以下に抑えるため延
伸ローラ側のゴデットローラの温度を高く維持しながら
しかも前記糸揺れ現象を解消することのできる新規な紡
糸延伸方法を提供しようとするものである。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は次の構成の手段を採用している。即ち、本発
明にかかるポリエステル繊維の紡糸延伸方法は、溶融紡
糸筒の紡糸口金より吐出したポリエステルマルチフィラ
メントを冷却固化した後、引き続いて、供給ローラと延
伸ローラに順次経由せしめて紡糸と延伸を連続的に行う
紡糸延伸方法において、延伸ローラの加熱ゴデットロー
ラを、フィラメントの進行方向に向って順次その径を大
きくしたテーパー部と、該テーパー部に隣接する眞円柱
体であって、軸線方向に向かう梨地仕上げ部分と鏡面仕
上げ部分とが順次繰り返す縞模様状の外周面を有するス
トレート部とで構成し、前記フィラメントをテーパー部
へ導入したのち、ストレート部より送り出すように走行
せしめることを特徴とする方法である。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施形態
について添付図面に基づいて説明する。尚以下の実施形
態において先に説明した従来技術と同一の構成要素につ
いては同一の符号を用い、且つその詳しい説明を省略す
る。 【0012】先ず最初に本発明方法を実施する装置の構
成を説明する。本装置は基本的には図3に示す従来機構
とほぼ同一の構成を備えており、紡糸口金1より吐出し
た糸条2を給油装置3、供給ローラ6、延伸ローラ9、
トラバースガイド10に順次経由せしめて糸条巻き上げ
機構11によりパッケージ12に形成する構成となって
いる。 【0013】本装置の中核となる構成要素は図1に示す
通り、新延伸ローラ13の構造にある。新延伸ローラ1
3は新第2ゴデットローラ14と新第2セパレートロー
ラ15の組合せからなっており、前記新第2ゴデットロ
ーラ14は糸条(フィラメント)2の進行方向に向って
順次その径を大きくしたテーパー部16と眞円柱体のス
トレート部17の両者を合体せしめたローラ体からな
り、又新第2セパレートローラ15は夫々独立して回転
する左輪18と右輪19を同一の支軸20上に支承して
なるもので、図上左輪18は新第2ゴデットローラ14
のテーパー部16と対向し、又右輪19はストレート部
17と対向して配置される。 【0014】 前記新第2ゴデットローラ14として
は、本実施形態の場合、全長約300mm、テーパー部
16の長さ約220mm、ストレート部17の長さ約8
0mm、ストレート部17の直径約230mmのものを
使用しており、テーパー部16の外周面には0.05m
m厚のセラミックコーティングを施し、その表面粗度を
1〜3Sにしている。尚、ストレート部17の外周面
は、軸線方向に向かう梨地仕上部分と鏡面仕上部分とが
順次繰り返す縞模様、所謂ゼブラ型に形成している。 【0015】次いで、本発明の重要なる特徴であるテー
パー部16の傾斜度及び全体の加熱温度について説明す
る。図2に示す形状において、最大径部即ち先端部の径
をD、最小径部即ち糸条導入部の径をd、軸線に沿う長
さをLとすると、テーパー率は(D−d)/L×100
%で示される。実験結果によれば、テーパー率は2%
(d=220.0、D=223.8、L=187.5)
から3%(d=220、D=225.6、L=187.
5)の範囲が好適と判断される。一方加熱温度℃は得ら
れる糸条の熱収を小さくする本発明の目的のためには高
い程良い結果が得られるが、190℃を超えると糸条か
ら油煙が生ずるのでこれ以下にする必要があり、又15
0℃未満では依然として得られる糸条の熱収が6%もあ
り、本発明の目的を達成できない。従って温度範囲は1
50℃〜190℃が好適である。 【0016】新第2セパレートローラ15は先に述べた
通り、支軸上に左輪18と右輪19を装着してなるもの
で、両輪18,19の支承用にはエアーを用い、全体と
して公知のエアセパレートローラ(特公平3−6177
3号参照)に類似する形となっている。本実施態様の場
合、全長385mm、左輪18の全長190mm、右輪
19の全長120mm、両輪18,19の作用面の直径
を45mmφとしたローラ体を用いている。又新第2セ
パレートローラ15の作用面は梨地硬質クロームメッキ
仕上げとし、表面粗度を3±1Z、硬度をHS90°以
上、メッキ厚を30um以上にしている。 【0017】本発明にかかる紡糸延伸方法は上述の如き
装置を用いて実施するもので、従来方法と同様、図3に
示す紡糸口金1より吐出した糸条2を冷却固化した後、
給油装置3により油剤を付与し、次いで図1に示す供給
ローラ6と新延伸ローラ13によって形成される延伸域
に導入する。この延伸域において、糸条2は先ず第1ゴ
デットローラ4と第1セパレートローラ5で形成される
供給ローラ6に複数回巻着し、次いで、150℃〜19
0℃に加熱され且つ上記のテーパー部16を備える新第
2ゴデットローラ14と、左右二つの駆動輪を備える新
第2セパレートローラ15の両者で形成される新延伸ロ
ーラ13に複数回巻着し、第1ゴデットローラ4と新第
2ゴデットローラ14の周速差によって生ずる延伸倍率
が付与され、次いで図3に示すトラバース10側へ走行
する。 【0018】本発明方法にかかる上記過程においては、
低熱収糸を得るために、新第2ゴデットローラ14の領
域で糸条2に150℃〜190℃の高温を付与する。こ
れにより横揺れの基因となるフィラメントの伸びが生ず
るが、本発明によるテーパー部16の直径増大はこれを
吸収し、糸条を常時張りながらゴデットローラ上を巻き
進めるので横揺れは完全に防止される。 【0019】又、テーパー面の周壁より糸離れを実施す
ると、解舒が不安定となるが、本発明においては解舒を
行う新第2ゴデットローラ14の糸条送り出し部分を眞
円柱体のストレート部17により形成しているのでこの
ような問題が生じない。 【0020】 【実施例】以下実施例により本発明方法を更に具体的に
説明する。尚、本明細書において熱収縮率(熱収と略
称)とは熱水収縮率を意味するのであって、無緊張状態
で測定した糸条(フィラメント)の長さLoと、沸騰水
中で30分間無緊張で処理した後、冷却した糸条(フィ
ラメント)の長さLより次式により求めた値である。 熱水収縮率=(L−Lo)/Lo×100% 【0021】固有粘度(0−クロルフェノール30℃)
0.690のポリエチレンテレフタレートを図3に示す
通常の方法を基本的に用いて直接紡糸延伸方法により7
8デニール/36フィラメントの半延伸糸を紡糸した。
その際、延伸ローラとして図1に示す新延伸ローラ13
を用い、紡出條件を次の通り種々変更した。得られた糸
質を表1に示す。 【0022】 【表1】【0023】表1において、最上段に記載した各項目は
次の意味である。 テーパー率:本実施例で用いた新第2ゴデットローラ1
4のテーパー部16のテーパー率 設定温度:当初予定した新第2ゴテッドローラ14の温
度 DR :ドラフト(第1ゴデットローラと新第2ゴテ
ッドローラの周速比) D :得られた糸条2の実デニール S :得られた糸条2の強度 E :得られた糸条2の伸度 10% :得られた糸条2の10%伸度時の張力 U :得られた糸条2のウスターによる斑指数 Sh :得られた糸条2の沸水収縮率 C :新第2ゴデットローラの実測表面温度 mg/d:単繊維強度 【0024】表1に示す試験結果、毛羽等その他の試験
結果、並びに糸条の横揺れ等の紡出調査を勘案して次の
総合判断を採用した。 (1)テーパー率4%では毛羽発生が多く採用は不可能
である。採用できる範囲は2〜3%である。 (2)3%では160℃〜180℃で糸揺れが小さく、
熱収も3〜5%の範囲にあり、毛羽、操業性共良好であ
る。 (3)2%では、160℃〜180℃で糸揺れが大き
く、160℃未満にする必要があり、この温度では熱収
が5%を超える怖れがある。以上の結果より、テーパー
率3%、温度180℃が最も適切な使用範囲と思われ
る。 【0025】 【発明の効果】以上述べた通り、直接紡糸延伸方法にお
いて更なる糸質向上のために必要とされていた低熱収糸
の製造を、本発明方法は第2ゴデットローラにテーパー
ローラを用いる簡便な方法で可能とするもので、特に異
収縮混繊糸の低収縮糸側糸条の製造に大きく寄与するの
である。
る。 【図2】新延伸ローラのテーパー率を算出する各基礎寸
法を示す説明図である。 【図3】直接紡糸延伸方法の従来過程を示す説明図であ
る。 【図4】直接紡糸延伸方法の従来過程を示す斜視図であ
る。 【符号の説明】 2 糸条 4 第1ゴデットローラ 5 第1セパレートローラ 6 供給ローラ 13 新延伸ローラ 14 新第2ゴデットローラ 15 新第2セパレートローラ
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 溶融紡糸筒の紡糸口金より吐出したポリ
エステルマルチフィラメントを冷却固化した後、引き続
いて、供給ローラと延伸ローラに順次経由せしめて紡糸
と延伸を連続的に行う紡糸延伸方法において、延伸ロー
ラの加熱ゴデットローラを、フィラメントの進行方向に
向って順次その径を大きくしたテーパー部と、該テーパ
ー部に隣接する眞円柱体であって、軸線方向に向かう梨
地仕上げ部分と鏡面仕上げ部分とが順次繰り返す縞模様
状の外周面を有するストレート部とで構成し、前記フィ
ラメントをテーパー部へ導入したのち、ストレート部よ
り送り出すように走行せしめることを特徴とするポリエ
ステル繊維の紡糸延伸方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP04820396A JP3489929B2 (ja) | 1996-02-09 | 1996-02-09 | ポリエステル繊維の紡糸延伸方法 |
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JPH09217226A JPH09217226A (ja) | 1997-08-19 |
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