JP4268368B2 - インクセット、インクカートリッジ、記録装置、記録方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用シアン色水系インクに色材として疎水性染料を用い、他のマゼンタ、イエロー、ブラック色水系インクに色材として顔料インクを用いたインク、インクセット、インクカートリッジ、記録装置及び記録方法に関し、特に普通紙に印字した際に、良好な色調が得られるインクジェット記録用インクセットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェットプリンタにおいて、着色剤として水溶性染料を使用した水系インクが主に用いられてきた。しかしながら、前述の染料インクは耐候性、耐水性に劣る欠点を有しており、近年、水溶性染料に代えて顔料を使用する顔料インクの研究が目覚しく、最近では上市するに至っている。しかしながら、顔料インクは染料インクに比べ、発色性や安定性にいまだ課題は多く残されており、特にOA用プリンタの高画質化技術の向上に伴い、顔料インクにおいても染料インクと同等の印字品質、色相、彩度、光沢、保存性などが要求されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、特に顔料インクに使用されるマゼンタ色インク、シアン色インクにはそれぞれC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3が用いられる事が一般的で、染料インクと比べて色再現範囲が異なっている。また、色相誤差を小さくするために調色も行われているが、この場合、彩度の低下は免れず、印字品質に問題を生じる。
【0004】
これに対し、前記調色によらず色相を変えるために、顔料自体の改良も進んでおり、例えば特開2000−17207号公報では特定の結晶構造を持つフタロシアニン顔料により、シアン染料と同じ色域にある色相を有するシアン顔料が提案されているが、コストの問題等、全ての特性を満足するには至ってない。
【0005】
また、黒色インクの色材に顔料を用いて、イエロー、マゼンタ、シアン色インクの色材に染料を用いてインクセットとして使用する特開2000−239590号公報等など提案は多数あるが、いまだ普通紙に印字した際の普通紙特性で満足なものは得られていないのが現状である。
【0006】
この他、ブラックインクとカラーインクとからなるインクセットとして、自己分散型カーボンブラックを有するブラックインクと、このブラックインクの色材に対して逆極性の色材を含有するカラーインクとからなるインクセットが特開平10−140064号公報に開示されている。また、特開2000−191972号公報には着色剤内包樹脂分散型インクにおいてインクのイオン性の異なるインクセットが開示されている。しかし、これらのインクセットを用いた印刷物は、色境界にじみは改善されるものの、他の普通紙特性は依然として満足なものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の欠点を解消し、インクジェット記録用シアン色水系インクに色材として疎水性染料を用い、他のマゼンタ、イエロー、ブラック色水系インクに色材として顔料インクを用いたインクおよびインクセット、このインクおよびインクセットを用いた好適なインクジェット記録方法、このインクを収容したインクカートリッジ、このインクカートリッジを備えた記録装置を提供し、特に普通紙に印字した際に、良好な色調が得られるインクジェット記録用インクおよびインクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録装置を提供することをその課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題について鋭意検討を行なった結果、ポリマー微粒子に色材を含有させたエマルジョンを用いて、特定の湿潤剤、浸透剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤を使用したインクは従来のインクに比べて高粘度であるが表面張力が低く、普通紙の印字において、ビヒクルは速やかに浸透し、色材成分が表面に残りやすくなるという、従来の高い浸透性を有するインクの特徴のほかに、特にフッ素系界面活性剤を使用することにより、さらに、色材成分が紙表面に残りやすいだけでなく、色材の偏在が無く、均一に紙表面に存在し、また、紙に対する均染性が顕著に向上し、その結果、高彩度、高発色濃度で、しかも裏抜けの少ない画像が得られることを見出して本発明に至った。
【0009】
また、ブラックインクとカラーインクとからなるインクセットにおいて、着色ポリマー微粒子を含有する前記構成のカラーインク、特にシアン色水系インクに色材として疎水性染料を用い、マゼンタ、イエロー色水系インクに色材として顔料インクを用いたインクおよび色材として自己分散型カーボンブラックを用いてカラーインクと同様に高粘度低表面張力としたブラックインクを組み合わせると、普通紙印字において、ブラックの画像濃度が高く、ブラック/カラー間の色境界にじみが極めて少なく、また、本発明のポリマー微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させたポリマー微粒子の水分散体(以下では、「ポリマーエマルジョン」という場合もある。)を使用した本インクセットを用いることにより、単に色相の調整だけにとどまらず、顕著な彩度向上が図られ、カラーの発色性に優れ、裏抜けの少ない両面印刷性に優れた記録画像を得ることができることを見出した。
【0010】
上記の知見に基づいて本発明者等が完成した発明は次のとおりの構成を有するものである。
(1)ブラックインクとカラーインクとからなるインクジェット用インクセットであって、前記カラーインクが、色材を含有させたポリマー微粒子の水分散体であって、シアン色インクの色材として疎水性染料を用い、イエロー、マゼンタ色インクの色材として顔料を用い、インクセットを構成するインクが、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上の湿潤剤(第1の種類のヒドロキシ化合物)、炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテル、水溶性有機溶剤及び水を少なくとも含有すると共に、アニオン、ノニオン及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種類以上とフッ素系界面活性剤の少なくとも1種類以上とを含有し、25℃におけるインク粘度が5mPa・sec以上であることを特徴とするインクジェット用インクセット。
(2)前記疎水性染料がフタロシアニン骨格を有することを特徴とする上記(1)記載のインクジェット用インクセット。
【0011】
(3)前記フタロシアニン骨格が下記構造式(A)で示されるものであることを特徴とする上記(1)または(2)記載のインクジェット用インクセット。
【0012】
【化11】
【0013】
(ここで上記構造式中R1,R2は水素原子、置換または無置換のアルキル基を表わし、mは1〜4の整数を表わす。)
【0014】
(4)前記フッ素系界面活性剤が、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物の中から選ばれる一種類以上のフッ素系界面活性剤であることを特徴とする上記(3)記載のインクジェット用インクセット。
【0015】
(5)前記アニオン、ノニオン及び両性界面活性剤が、下記一般式(I)〜(IX)の界面活性剤から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする上記(4)記載のインクジェット用インクセット。
【0016】
【化12】
【0017】
【化13】
【0018】
(R2:炭素数5〜16の分岐したアルキル基、M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
【0019】
【化14】
【0020】
(R:分岐しても良い6〜14の炭素鎖、k:5〜20)
【0021】
【化15】
【0022】
【化16】
【0023】
(R:分岐しても良い炭素数6〜14の炭素鎖、J,k,m,n:j,k,m,n≦20)
【0024】
【化17】
【0025】
(R’:炭素数6〜14の炭素鎖、j,k,m,n:j,k,m,n≦20)
【0026】
【化18】
【0027】
【化19】
【0028】
((VIII)式中、R1、R2は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、R3は炭素数10〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を示す。)
【0029】
【化20】
【0030】
((IX)式中、R1、R2は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、R3はアミド基を含んでもよい炭素数10〜16のアルキル基もしくはヤシ油由来のアルキル基を示す。)
【0031】
(6)前記ポリマー微粒子を形成するポリマーが、ビニル系ポリマーまたはポリエステル系ポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(5)記載のインクジェット用インクセット。
(7)前記炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテルが2−エチル−1,3−ヘキサンジオールよりなることを特徴とする上記(1)〜(6)記載のインクジェット用インクセット。
(8)前記炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテルが2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールよりなることを特徴とする上記(1)〜(6)記載のインクジェット用インクセット。
【0032】
(9)前記ブラックインクが自己分散型顔料であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
(10)インクの表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れかに記載のインクジェット用インクセット。
(11)前記色材を含有させたポリマー微粒子の水分散体が、固形分を8〜20重量%含有することを特徴とする上記(1)〜(10)何れかに記載のインクジェット用インクセット。
【0033】
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のインクジェット用インクセットにエネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とするインクジェット記録方法。
(13)インクに熱エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする上記(12)に記載のインクジェット記録方法。
(14)インクに力学的エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする上記(12)に記載のインクジェット記録方法。
(15)Mjが5〜35pl、Vjが6〜20m、周波数1KHz以上、解像度が300dpi以上、ワンパス印字条件において、上記(1)〜(11)のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを用いることを特徴とする上記(12)〜(14)のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(16)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを収容したインク収容部を備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
【0034】
(17)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを収容したインク収容部あるいはインクカートリッジ、該インクをエネルギーの作用により滴化し吐出させるためのヘッド部あるいは記録ユニットを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
(18)前記インクジェット記録ヘッドのノズルプレートの表面に撥インク性皮膜層が共析メッキにより形成されていることを特徴とする上記(17)に記載の記録装置。
(19)前記インクジェット記録ヘッドのノズル径が30μ以下であることを特徴とする上記(17)又は(18)に記載の記録装置。
【0035】
以下、各インクの構成要素について説明する。
色材としては、ポリマー微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させたポリマーエマルジョンを用いる。本明細書において、「色材を含有させた」とは、ポリマー微粒子中に色材を封入した状態およびポリマー微粒子の表面に色材を吸着させた状態の何れか又は双方を意味する。この場合、本発明のインクに配合される色材はすべてポリマー微粒子に封入または吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、該色材がエマルジョン中に分散していてもよい。
【0036】
上記色材としては、水不溶性若しくは水難溶性であって、上記ポリマーによって吸着され得る色材であれば特に制限なく用いられる。本明細書において、水不溶性若しくは水難溶性とは、20℃で水100重量部に対して、色材が0.1重量部以上溶解しないことをいい、溶解するとは、目視で水溶液表層または下層に色材の分離や沈降が認められないことをいう。
【0037】
本発明に使用される色材としては、シアン色に関して、疎水性染料が挙げられるが、ここでいう疎水性染料とは水に不溶ないしは難溶性であり、かつ有機溶剤に可溶である染料を指し、例えば、油溶性染料、分散染料をあげる事ができ、また、本発明においてはポリマー微粒子に対する良好な吸着・封入性の観点から油溶性染料(Oil Dyes)及び分散染料(Disperse Dyes)が好ましい。
【0038】
油溶性染料としては例えば、各種C.I.ソルベントブルー等が挙げられ、具体的にはC.I.ソルベントブルー14、24,25,35,38,48、64,67、68、70,75、89、132などが挙げられ、分散染料としては各種C.I.ディスパーズブルー等が挙げられ、具体的にはC.I.ディスパーズブルー56,60,73,87,113,128,143,165などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0039】
これらの染料は商業的に市販されており、例えば、Vali Fast blue1603、1605、1607、2606、2610、Oil Blue BOS、Oil Blue613,Oil Blue 2N(オリエント化学(株)製)、Neopen Blue 808, Neopen Blue FF4012,Neopen Cyan FF4238(BASF社製),オレオゾルファストブルーELN、オレオゾルファストブルーGL、オレオゾルブルーG(田岡化学工業社製)、アイゼンゾットブルー1、アイゼンゾットブルー2、アイゼンスピロンブルーGNH、アイゼンスピロンブルー2BNH、アイゼンスピロンブルーBPNH(保土ヶ谷化学工業社製)、オラゾールブルーGN、オラゾールブルー2GLN、オラセットブルー2R、フィラミッドブルーR、フィレスターブルーGN(チバガイギー社製)、オイルブルーBO(中央合成化学社製)などがある。
【0040】
特にこの中でも耐光安定性等の観点からフタロシアニン骨格を有する油溶性染料が好ましく、具体的にはC.Iソルベントブルー24,25、70、75、89等が好適に使用でき、特に好ましくは請求項3の構造を持つC.I. ソルベントブルー70、89が好適に使用できる。
【0041】
本発明で使用されるシアンインクに用いる色材としては下記構造式(A)で示されるフタロシアニン構造を有するもの、具体的には下記表1で示されるものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
【化21】
【0043】
(ここで上記構造式中R1,R2は水素原子、置換または無置換のアルキル基を表わし、mは1〜4の整数を表わす。)
【0044】
【表1】
【0045】
また、ブラック色に関しては、ブラック顔料としてのカーボンブラックが挙げられ、その他、イエロー、マゼンタ色に関しては、カラー顔料として、アントラキノン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キナクリドンおよび(チオ)インジゴイド等を含む。
【0046】
キナクリドンの代表的な例はピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19およびピグメントバイオレット42を含む。アントラキノンの代表的な例はピグメントレッド43、ピグメントレッド194(ペリノンレッド)、ピグメントレッド216(臭素化ピラントロンレッド)およびピグメントレッド226(ピラントロンレッド)を含む。ピレリンの代表的な例はピグメントレッド123(ベルミリオン)、ピグメントレッド149(スカーレット)、ピグメントレッド179(マルーン)、ピグメントレッド190(レッド)、ピグメントバイオレット、ピグメントレッド189(イエローシェードレッド)およびピグメントレッド224を含む。チオインジゴイドの代表的な例はピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36およびピグメントバイオレット38を含む。複素環式イエローの代表的な例はピグメントイエロー117およびピグメントイエロー138を含む。他の適切な着色顔料の例は、The Colour Index、第三版(The Society of Dyers and Colourists,1982)
に記載されている。
【0047】
本発明に用いられる上記の各染料は、ポリマー微粒子に効率的に含浸される観点から、有機溶剤、例えば、ケトン系溶剤に2g/リットル以上溶解することが好ましく、20〜600g/リットル溶解することが更に好ましい。
上記色材の配合量は、ポリマーの配合量との関係において、該ポリマーの重量に対して約10〜200重量%、特に約25〜150重量%であることが好ましい。
【0048】
上記ポリマーエマルジョンを形成するポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー及びポリウレタン系ポリマー等を用いることが出来る。特に好ましく用いられるポリマーはビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーであり、特開2000−53897号公報、2001−139849号公報に開示されているポリマーを引用する。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、これらの色材を含有するポリマー微粒子の平均粒子径はインク中において最も好ましくは0.16μm以下である。
インク中のポリマー微粒子の含有量は固形分で8〜20重量%程度が好ましく、より好ましくは8〜12重量%程度である。
【0050】
本発明のインクセットの第1の特徴は、インクとして25℃における表面張力が40mN/m以下、好ましくは35mN/m以下の低表面張力の水性インク、インクセットを用いることにある。これは本発明者らが、記録画像の乾燥性を改善するために種々の手段について検討を行なった結果、インクの表面張力を40mN/m以下になるように調整すればほとんどの被記録材に対しても速やかな浸透乾燥が可能であることを見出したことに基づくものである。
【0051】
また、インクの表面張力を40mN/m以下にすることで、インクのヘッド部材への濡れが良くなり8mPa・sec(25℃)以上の高粘度インクでも周波数応答性が向上し、吐出安定性が格段に向上したことによる。この低表面張力のインクは特定のインク組成においてポリオールまたはグリコールエーテルと、フッ素系界面活性剤を併用することにより達成できる。
【0052】
本発明の第2の特徴は、5mPa・sec(=5cps)以上、好ましくは8mPa・sec(25℃)以上の高粘度インク、インクセットを用いることにより印字品位が格段に向上したことである。従来のインクジェットプリンターに用いられてきた3mPa・sec(25℃)程度の低粘度インクではインク中の水分が約70%であるが、8mPa・sec(25℃)程度の高粘度インクでは約50%以下になり、インク滴が紙面上に着弾するときの水分蒸発率が2.0〜3.0倍も高くなる。このために高濃度の顔料が紙面上で凝集する速さも速くなり滲み(フェザリング)がほとんどなくなる。
【0053】
本発明の第3の特徴は、インク中の色材を含有するポリマーエマルジョンの固形分濃度が8wt%以上、好ましくは10wt%以上にすることである。色材として自己分散型カーボンブラックを用いてインクセットを構成する場合のブラックインクの顔料濃度は6wt%以上、好ましくは8wt%以上にすることである。ポリマーエマルジョン濃度あるいは顔料濃度を高めることにより、インクの粘度が高くなり、顔料が紙表面で凝集してとどまり易くなり発色濃度、色調が向上するとともにフェザリングもほとんどなくなる。
【0054】
本発明の第4の特徴は、従来用いられてきたエチレングリコール(ジエチレングリコール)とグリセリンの混合した低粘度の湿潤剤よりも、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上の高粘度の湿潤剤とグリセリンの混合した高粘度の湿潤剤を用いることにある。高粘度の湿潤剤を用いると、高顔料濃度と相まって高粘度のインクを達成できる。
【0055】
本発明のインク組成物は、次の構成よりなるインク粘度が5mPa・sec以上、好ましくは8mPa・sec(25℃)以上の記録用インクである。印字するための着色材、それを分散させるための水とを必須成分とし、必要に応じて添加される湿潤剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、エマルジョン、防腐剤、pH調製剤から構成される。湿潤剤1と2を混合するのは各々の湿潤剤の特徴を活かすためと、粘度調製ができるためであるが、湿潤剤1と2を必ず併有するわけではない。
【0056】
▲1▼着色剤
▲2▼湿潤剤1(グリセリン)
▲3▼湿潤剤2(1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上、:第1の種類のヒドロキシ化合物)
▲4▼水溶性有機溶剤
▲5▼界面活性剤
▲6▼炭素数8以上、11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテル
▲7▼防腐剤
▲8▼pH調整剤
▲9▼純水
【0057】
その他の湿潤剤としては、糖を含有してなるのが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
【0058】
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここでn=2〜5の整数を表わす。)で表わされる。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。これら糖類の含有量は、インク組成物の0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲が適当である。
【0059】
また、色材を含有するポリマー微粒子と湿潤剤の比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が高いのに湿潤剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらす。
【0060】
湿潤剤の配合量は10〜50wt%であり、これに対して色材を含有するポリマー微粒子は8wt%以上、好ましくは8〜20wt%であるので、湿潤剤とポリマー微粒子固形分の両者の比は0.5〜6.25となるが、より好ましくは2.0〜6.0であり、最も好ましくは3.0〜5.0の範囲である。この範囲にあるインクは、乾燥性や保存試験や信頼性試験が非常に良好である。
【0061】
湿潤剤と水溶性有機溶剤に関して、本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にするため、インクの乾燥を防止するために、また、分散安定性を向上するため等の目的で、例えば下記の水溶性有機溶媒が使用される。これら水溶性有機溶媒は複数混合して使用してもよい。
【0062】
湿潤剤と水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、チオジグリコール、ペンタエリスリトール等の前記第1及び第2の種類のヒドロキシ化合物以外の多価アルコール類(第3の種類のヒドロキシ化合物);
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物(ラクタム類);
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;
ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類;
プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。
【0063】
これら有機溶媒の中でも、特にチオジエタノール、ポリエチレングリコール200〜600、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
【0064】
また、本発明においては尿素類及びアルキルグリシンを所望に応じて含ませることができる。このような尿素類としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、また、アルキルグリシンとしては、N−メチルグリシン、N,N−ジメチルグリシン、N−エチルグリシン等が挙げられる。
【0065】
これら尿素類及びアルキルグリシンは、基本的にどちらも水系インクにおいて、優れた保湿性を維持(保存安定性に向上につながる)させ、インクジェットプリンタの記録ヘッドの吐出安定性、耐目詰まり性に優れた効果を発揮する。また、インクの粘度調整、表面張力の調整に幅広く対応でき、耐目詰まり性に優れることにより、ヘッドの目詰まりを防ぎ、インク吐出において、インク滴の飛行曲がりなど吐出不良を防止できる。
【0066】
インクへの添加量としては、一般的に0.5〜50重量%で、より好ましくは1〜20重量%であり、0.5重量%以下では所望のインクジェットプリンタ記録ヘッドの要求特性を満たすことができず、50重量%以上の添加では増粘を引き起こし、インクの保存安定性に対して悪影響及びインクの吐出不良につながってしまう。
【0067】
本発明において使用する界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも一種以上を用い、かつフッ素系界面活性剤の少なくとも一種以上を用いる。その際、色材の種類や湿潤剤、水溶性有機溶剤の組合せによって、分散安定性を損なわない界面活性剤を選択する。
また、本発明では界面活性剤を使用することで記録紙への濡れ性を改善することができる。
【0068】
上述の界面活性剤の中で特に好ましい界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルカルボニルオキシポリオキシエチレン、アルキルカルボニルオキシポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレングリコール系界面活性剤が挙げられる。
【0069】
アニオン系界面活性剤としては下記式(I)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、及び/または炭素鎖が5〜7の分岐したアルキル鎖を有する下記式(II)で示されるジアルキルスルホ琥珀酸塩を用いることで普通紙特性も改善されさらに着色剤の溶解・分散安定性が選られる。
さらに本発明の上記界面活性剤の対イオンとしてリチウムイオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムを用いることにより界面活性剤が優れた溶解安定性を示す。
【0070】
【化22】
【0071】
【化23】
【0072】
R2:炭素数5〜16の分岐したアルキル基
M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン
【0073】
本発明に用いる上記界面活性剤(I)、(II)の具体例を以下に遊離酸型で示す。
【0074】
【化24】
【0075】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどが挙げられる。
【0076】
アセチレングリコール系界面活性剤は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール系(例えばエアープロダクツ社(米国)のサーフィノール104、82、465、485あるいはTGなど)をもちいることができるが、特にサーフィノール465、104やTGが良好な印字品質を示す。
本発明に用いる上記界面活性剤の具体例を以下に、一般式(III)、(IV)、(V)、 (VI) 、(VII)で示す。
【0077】
【化25】
【0078】
【化26】
【0079】
【化27】
【0080】
【化28】
【0081】
【化29】
【0082】
また、好ましい界面活性剤としては、一般式(III)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、一般式(IV)のポリオキシエチレンアルキルエーテル、一般式(V)のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、一般式(VI)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等の非イオン性界面活性剤及び一般式(VII)のアセチレングリコール系界面活性剤をあげることができる。
これらを併用することによりさらに相乗効果として浸透性があげられ、これにより色境界にじみが低減されまた文字にじみも少ないインクが選られる。
【0083】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
具体例として以下に挙げるものが好適に使用されるが、これらに限定されるわけではない。
【0084】
ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、ジメチルラウリルベタイン等。
本発明に用いる上記界面活性剤(VIII) 、(IX)を具体的に以下に示す。
【0085】
【化30】
【0086】
((VIII)式中、R1、R2は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、R3は炭素数10〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を示す。)
【0087】
【化31】
【0088】
((IX)式中、R1、R2は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、R3はアミド基を含んでもよい炭素数10〜16のアルキル基もしくはヤシ油由来のアルキル基を示す。)
【0089】
特に、本発明で用いられる、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエーテル化合物等が挙げられるが、フッ素系化合物として市販されているものを挙げると、サーフロンS-111,S-112,S-113,S121,S131,S132,S-141,S-145(旭硝子社製)、フルラードFC-93,FC-95,FC-98,FC-129,FC-135,FC-170C,FC-430,FC-431(住友スリーエム社製)、メガファックF-470,F1405,F-474(大日本インキ化学工業社製)、Zonyl TBS,FSP,FSA,FSN-100,FSN,FSO-100,FSO,FS-300,UR(DuPont社製)、FT-110,250,251,400S(株式会社ネオス社製)等が簡単に入手でき本発明に用いることができるが、特に株式会社ネオス社製のFT-110,250,251,400Sが良好な印字品質、特に発色性、紙に対する均染性が著しく向上する。
【0090】
さらに、フッ素系界面活性剤と一般式(IV)のポリオキシエチレンアルキルエーテル、一般式(V)のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテルと併用する事により、著しい浸透性向上がはかられ、これにより色境界にじみが低減され、発色性向上、また文字にじみも少ないインクが選られる。
前記界面活性剤は、単独または二種以上を混合して用いることができる。
【0091】
なお、このインクのpHを6以上にすることによりインクの保存安定性が得られ、また、オフィスで使用されているコピ−用紙や用箋等はpHが5〜6のものが多く、これらの記録紙にインクを9〜60μmの微細な吐出口より吐出し重量が3ng〜50ngの液滴として5〜20m/sで飛翔させ、単色での付着量を1.5g/m2から30g/m2としてJIS P-8122試験法によるステキヒトサイズ度が3秒以上の所謂普通紙に記録するこにより高画質、高解像の記録画像を形成する記録方式を提供することができる。ただし、pHが9以上では保存時に(II)の活性剤では分解による物性変化が起こりやすいため(II)を用いる場合はpHを6〜9とすることが好ましい。
【0092】
本発明に用いることができる(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)の添加量は0.05〜10重量%の間でプリンタ−システムにより要求されるインク特性に対し所望の浸透性を与えることが可能である。ここで0.05%以下ではいずれの場合も2色重ね部の境界でのにじみが発生し、10重量%以上添加する場合は化合物自体が低温で析出しやすことがあり信頼性が悪くなる。
【0093】
また、フッ素系界面活性剤の添加量は、上記(I)〜(IX)の界面活性剤との併用使用により、添加量を少なくでき、0.05〜5重量%の間でプリンタ−システムにより要求されるインク特性に対し所望の浸透性をあたえることが可能である。ここで0.05%以下の併用ではいずれの場合も浸透性向上に顕著な効果が無く、5重量%以上添加する場合は、高温保存における粘度上昇、凝集等信頼性が悪くなる。好ましくは0.1〜2重量%の添加量が保存性の観点からも好適に使用できる。
【0094】
本発明における表面張力は紙への浸透性を示す指標であり、特に表面形成されて1秒以下の短い時間での動的表面張力を示し、飽和時間で測定される静的表面張力とは異なる。測定法としては特開昭63−31237号公報等に記載の従来公知の方法で1秒以下の動的な表面張力を測定できる方法であればいずれも使用できるが本発明ではWilhelmy式の吊り板式表面張力計を用いて測定した。表面張力の値は40mN/m以下が好ましく、より好ましくは35mN/m以下とすると優れた定着性と乾燥性が得られる。
【0095】
本発明に用いる炭素数8以上、11以下のポリオールまたはグリコールエーテルは、25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する部分的に水溶性のポリオールおよび/またはグリコールエーテルを記録用インク全重量に対してを0.1〜10.0重量%添加することによって、該インクの熱素子への濡れ性が改良され、少量の添加量でも吐出安定性および周波数安定性が得られることが分かった。
【0096】
炭素数8以上、11以下のポリオールの好適な具体例としては、次のものを挙げることができる。
▲1▼2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 溶解度:4.2%(20℃)
▲2▼2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 溶解度:2.0%(25℃)
【0097】
25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤は溶解度が低い代わりに浸透性が非常に高いという長所がある。従って、25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤と他の溶剤との組み合わせや他の界面活性剤との組み合わせで非常に高浸透性のインクを作成することが可能となる。
【0098】
本発明のインクには上記着色剤、溶媒、界面活性剤の他に従来より知られている次の添加剤を加えることができる。
【0099】
〈防腐防黴剤〉
防腐防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が本発明に使用できる。
【0100】
〈pH調整剤〉
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば任意の物質を使用することができる。
その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0101】
〈防錆剤〉
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等をあげることができる。
【0102】
〈その他の添加剤〉
その他、目的に応じて水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤等を添加することができる。
【0103】
次に、本発明のインクセットについて説明する。
インクセットはブラックインクとカラーインクとからなる。カラーインクは上記の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンを含有するカラーインクが適用される。ブラックインクはカラーインクを構成するポリマーエマルジョンを自己分散型カーボンブラックに置き換えた構成に相当するものである。
【0104】
すなわち、本発明のインクセットは、ブラックインクと少なくとも1種のカラーインクとからなるインクジェット記録用インクセットにおいて、ブラックインクが自己分散型顔料を含有し、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上の湿潤剤(第1の種類のヒドロキシ化合物)を含有し、炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテル、水溶性有機溶剤、水を少なくとも含有し、更に、アニオン、ノニオン、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有し(更に、フッ素系界面活性剤を含んでもよい)、水溶性有機溶剤、水を少なくとも含有し、25℃におけるインク粘度が5mPa・sec以上のインクであって、カラーインクがポリマー微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンを含有し、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上の湿潤剤(第1の種類のヒドロキシ化合物)を含有し、炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテル、水溶性有機溶剤、水を少なくとも含有し、また、アニオン、ノニオン、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有し、かつ、フッ素系界面活性剤を少なくとも1種類以上含有する25℃におけるインク粘度が5mPa・sec以上のインクであることを特徴とするインクジェット記録用インクセットからなる。
【0105】
カラーインクは以下の構成よりなる。
▲1▼カラー色材を含有するポリマーエマルジョン
▲2▼湿潤剤1(グリセリン)
▲3▼湿潤剤2(1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上、:第1の種類のヒドロキシ化合物)
▲4▼水溶性有機溶剤
▲5▼界面活性剤
▲6▼炭素数8以上、11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテル
▲7▼防腐剤
▲8▼pH調整剤
▲9▼純水
【0106】
ブラックインクは以下の構成よりなる。
(i)自己分散型カーボンブラック
(ii)湿潤剤1(グリセリン)
(iii)湿潤剤2(1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上)
(iv)水溶性有機溶剤
(v)界面活性剤
(vi)炭素数8以上、11以下のポリオールまたはグリコールエーテル
(vii)樹脂エマルジョン
(viii)防腐剤
(ix)pH調整剤
(x)純水
【0107】
色材としては、少なくとも一種の親水性基がカーボンブラックの表面に直接若しくは他の原子団を介して結合した分散剤を使用することなく安定に分散させることができる自己分散型カラー顔料を用いる。この結果、従来のインクの様に、カーボンブラックを分散させるための分散剤が不要となる。本発明で使用する自己分散型カーボンブラックとしては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
【0108】
アニオン性親水性基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NH2、−SO2NHCOR(但し、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。)等が挙げられる。本発明においては、これらの中で、特に、−COOM、−SO3Mがカラー顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
【0109】
また、上記親水性基中の「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、有機アンモニウムとしては、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。アニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、カラー顔料表面に−COONaを導入する方法として、例えば、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられるが、勿論、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0110】
カチオン性親水性基としては、例えば、第4級アンモニウム基が好ましく、より好ましくは、下記に示す第4級アンモニウム基が挙げられ、本発明においては、これらのいずれかがカーボンブラック表面に結合されたものが色材として好ましく使用される。
【0111】
【化32】
【0112】
上記した様な親水基が結合されたカチオン性の自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN−エチルピリジル基を結合させる方法としては、カーボンブラックを3−アミノ−N−エチルピリジウムブロマイドで処理する方法が挙げられるが、勿論、本発明はこれに限定されない。
【0113】
【化33】
【0114】
また、本発明においては、上記に挙げた様な親水性基が、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。上記した親水性基が他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合する場合の具体例としては例えば、−C2H4COOM、−PhSO3M、−C5H10NH3 +等が挙げられるが、勿論、本発明はこれらに限定されない。
【0115】
本発明のインクセットのブラックインクに用いる自己分散型カーボンブラックは、カーボンブラック表面の親水性基によってカチオン性もしくはアニオン性に帯電しており、そのイオンの反発によって水分散性を有し、また、その親水性基により親水性も向上している。そのため、長期間放置されても、顔料の粒径や粘度が増大したりすることなく水性媒体中に安定して分散された水性顔料インクが得られる。ブラックインクの極性はインクセットを構成するカラーインクの極性と逆極性にした場合には最も色境界にじみの少ない画像がえられるが、本発明のインクセットにおいては、高粘度低表面張力の浸透性に優れたインクを構成できるので、カラーインクとブラックインクの極性が同じインクセットであっても色境界にじみは非常に少なく、ノズルの維持機構やノズルプレート上でインクが混合した場合にも極端な凝集増粘が起こることなく、取り扱い性に優れたインクセットが得られる。
【0116】
インクセットのブラックインクに用いられる他の構成材料は色材を含有するポリマー微粒子を含有するインクで記載した材料がそのまま適用できる。
なお、ブラックインクにのみ用いて好適なものとして樹脂エマルジョンが挙げられる。
【0117】
樹脂エマルジョンとは、連続相が水であり、分散相が次の様な樹脂成分であるエマルジョンを意味する。分散相の樹脂成分としてはアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0118】
本発明の好ましい態様によれば、この樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。また、これらの樹脂成分の粒子径はエマルジョンを形成する限り特に限定されないが、150nm程度以下が好ましく、より好ましくは5〜100nm程度である。
【0119】
これらの樹脂エマルジョンは、樹脂粒子を、場合によって界面活性剤とともに水に混合することによって得ることができる。
例えば、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル系樹脂のエマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンと、(メタ)アクリル酸エステルと、場合により(メタ)アクリル酸エステルと、界面活性剤とを水に混合することによって得ることができる。樹脂成分と界面活性剤との混合の割合は、通常10:1〜5:1程度とするのが好ましい。界面活性剤の使用量が前記範囲に満たない場合、エマルジョンとなりにくく、また前記範囲を超える場合、インクの耐水性が低下したり、浸透性が悪化する傾向があるので好ましくない。
前記エマルジョンの分散相成分としての樹脂と水との割合は、樹脂100重量部に対して水60〜400重量部、好ましくは100〜200の範囲が適当である。
【0120】
市販の樹脂エマルジョンとしては、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)などが挙げられる。
【0121】
本発明に使用するインクは、樹脂エマルジョンを、その樹脂成分がインクの0.1〜40重量%となるよう含有するのが好ましく、より好ましくは1〜25重量%の範囲である。
【0122】
樹脂エマルジョンは、増粘・凝集する性質を持ち、着色成分の浸透を抑制し、さらに記録材への定着を促進する効果を有する。また、樹脂エマルジョンの種類によっては記録材上で皮膜を形成し、印刷物の耐擦性をも向上させる効果を有する。
【0123】
本発明の記録液を収容した記録液カートリッジおよび記録液カートリッジを具備するインクジェット記録装置について、添付図面を参照して説明するが、以下は構成例のひとつに過ぎず、本発明になんら限定を加えるものではない。
【0124】
図1は本発明の記録液を収容した記録液収容部を備えたインクカートリッジを搭載するシリアル型インクジェット記録装置の機構部の概略正面図である。
【0125】
このインクジェット記録装置の機構部は、両側の側板1,2間に主支持ガイドロッド3及び従支持ガイドロッド4を略水平な位置関係で横架し、これらの主支持ガイドロッド3及び従支持ガイドロッド4でキャリッジユニット5を主走査方向に摺動自在に支持している。キャリッジユニット5には、それぞれイエロー(Y)インク、マゼンタ(M)インク、シアン(C)インク、ブラック(Bk)インクをそれぞれ吐出する4個のヘッド6を、その吐出面(ノズル面)6a(撥インク性皮膜層が共析メッキされているノズル面)を下方に向けて搭載し、またキャリッジユニット5のヘッド6の上側には4個のヘッド6に各々インクを供給するための各色のインク供給体である4個のインクカートリッジ7y,7m,7c,7kを交換可能に搭載している。
【0126】
そして、キャリッジユニット5は主走査モータ8で回転される駆動プーリ(駆動タイミングプーリ)9と従動プーリ(アイドラプーリ)10との間に張装したタイミングベルト11に連結して、主走査モータ8を駆動制御することによってキャリッジ5、即ち4個のヘッド6を主走査方向に移動するようにしている。
また、側板1,2をつなぐ底板12上にサブフレーム13,14を立設し、このサブフレーム13,14間に用紙16を主走査方向と直交する副走査方向に送るための搬送ローラ15を回転自在に保持している。そして、サブフレーム14側方に副走査モータ17を配設し、この副走査モータ17の回転を搬送ローラ15に伝達するために、副走査モータ17の回転軸に固定したギヤ18と搬送ローラ15の軸に固定したギヤ19とを備えている。
【0127】
さらに、側板1とサブフレーム12との間には、ヘッド6の信頼性維持回復機構(以下、「サブシステム」という。)21を配置している。サブシステム21は、各ヘッド6の吐出面をキャッピングする4個のキャップ手段22をホルダ23で保持し、このホルダ23をリンク部材24で揺動可能に保持して、キャリッジユニット5の主走査方向の移動でホルダ23に設けた係合部25にキャリッジユニット5が当接することで、キャリッジユニット5の移動に従ってホルダ23がリフトアップしてキャップ手段22でインクジェットヘッド6の吐出面6aをキャッピングし、キャリッジユニット5が印写領域側へ移動することで、キャリッジユニット5の移動に従ってホルダ23がリフトダウンしてキャップ手段22がインクジェットヘッド6の吐出面6aから離れるようにしている。
【0128】
なお、キャップ手段22は、それぞれ吸引チューブ26を介して吸引ポンプ27に接続すると共に、大気開放口を形成して、大気開放チューブ及び大気開放バルブを介して大気に連通している。また、吸引ポンプ27は吸引した廃液を、ドレインチューブ等を介して図示しない廃液貯留槽に排出する。
【0129】
さらに、ホルダ23の側方には、インクジェットヘッド6の吐出面6aをワイピングする繊維部材、発泡部材或いはゴム等の弾性部材からなるワイピング手段であるワイパブレード28をブレードアーム29に取付け、このブレードアーム29は揺動可能に軸支し、図示しない駆動手段で回動されるカムの回転によって揺動させるようにしている。
【0130】
次に、インクカートリッジ7について図2、図3を参照して説明する。ここで、図2は記録装置に装填する前のインクカートリッジの外観斜視図、図3はインクカートリッジの正断面図である。
【0131】
インクカートリッジ7は、図3に示すように、カートリッジ本体41内に所要の色のインクを吸収させたインク吸収体42を収容してなる。カートリッジ本体41は、上部に広い開口を有するケース43の上部開口に上蓋部材44を接着又は溶着して形成したものであり、例えば樹脂成型品からなる。また、インク吸収体42は、ウレタンフォーム体等の多孔質体からなり、カートリッジ本体41内に圧縮して挿入した後、インクを吸収させている。
【0132】
カートリッジ本体41のケース43底部には記録ヘッド6へインクを供給するためのインク供給口45を形成し、このインク供給口45内周面にはシールリング46を嵌着している。また、上蓋部材44には大気開放口47を形成している。
そして、カートリッジ本体41には、装填前の状態で、インク供給口45を塞ぐとと共に装填時や輸送時などのカートリッジ取扱い時、或いは真空包装時による幅広側壁に係る圧力でケース43が圧縮変形されて内部のインクが漏洩することを防止するため、キャップ部材50を装着している。
【0133】
また、大気開放口47は、図2に示すように、酸素透過率が100ml/m2以上のフィルム状シール部材55を上蓋部材44に貼着してシールしている。このシール部材55は大気開放口47と共にその周囲に形成した複数本の溝48をもシールする大きさにしている。このように大気開放口47を酸素透過率が100ml/m2以上のシール部材55でシールすることで、インクカートリッジ7を透気性のないアルミラミネートフィルム等の包装部材を用いて減圧状態で包装することにより、インク充填時やインク吸収体42とカートリッジ本体41との間に生じる空間A(図3参照)にある大気のためにインク中に気体が溶存したときでも、シール部材55を介してインク中の空気が真空度の高いカートリッジ本体41外の包装部材との間の空間に排出され、インクの脱気度が向上する。
【0134】
また、図4には、本発明の記録液を収容した記録液収容部と、記録液滴を吐出させるためのヘッド部を備えた記録カートリッジの構成例を示し、説明する。
【0135】
すなわち、記録ユニット30は、シリアルタイプのものであり、インクジェットヘッド6と、このインクジェットヘッド6に供給される記録液を収容するインクタンク41と、このインクタンク41内を密閉する蓋部材とで主要部が構成される。インクジェットヘッド6には、記録液を吐出するための多数のノズル32が形成されている。記録液はインクタンク41から、図示しないインク供給管を介して、やはり図示しない共通液室へと導かれ、電極31より入力される記録装置本体からの電気信号に応じて、ノズル32より吐出される。
【0136】
このようなタイプの記録ユニットは、構成上、安価に製造できるタイプのヘッド、いわゆるサーマル方式、バブル方式と呼ばれる、熱エネルギーを駆動の動力源とするヘッドに適した構造である。本発明の記録液は、バブルやサーマル方式等の記録方法において、成分(A)を添加することによって、熱素子への濡れ性が改良されるため、少量の添加量でも吐出安定性及び周波数安定性が得られ、かつ安全性も高く、非常に適している。
【0137】
ここでは、前述のようなシリアル型インクジェット記録装置を説明したが、本発明の記録液は、ノズルを千鳥など任意の配列で、目的とする画像の解像度と同じか数分の1程度の密度に集積し、記録媒体の幅以上に配列させた、いわゆるラインヘッドを有する記録装置に適用することも可能である。
また、ここでいう記録装置とは、PCやデジカメ用の出力プリンタのみならず、ファックスやスキャナ、電話などと組み合わせた複合的な機能を有する装置であっても構わない。
【0138】
【実施例】
以下、調製例、製造例、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の調製例、製造例、実施例によって限定されるものではない。なお、調製例、製造例、実施例に記載の各成分の量(%)は重量基準である。
【0139】
<調製例1>(疎水性シアン染料含有ポリマー微粒子分散体の調製)
特開2001−139849号公報の調製例3を参考に、すなわち、以下に記述するように追試調製した。
まず始めに、ポリマー溶液の調製として、機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管および滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)4.0gおよびメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次にスチレン100.8gアクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4gおよびメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
【0140】
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gおよびメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。次にポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量は15000であった。
【0141】
前述で得られたポリマー溶液28g、Vali Fast Blue2606(オリエント化学工業(株)社製、C.I.ソルベントブルー70)26g、1mol/l水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20gおよびイオン交換水30gを十分に攪拌した。その後、3本ロールミル((株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR−84A)を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトンおよび水を留去し、固形分量が20.0重量%の青色のポリマー微粒子分散体160gを得た。
ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は80nmであった。
【0142】
<調製例2>(ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製)
調製例1の疎水性染料Vali Fast Blue2606を顔料ピグメントレッド122に変更したほかは調製例1と同様にして赤紫色のポリマー微粒子分散体を得た。
ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は127nmであった。
【0143】
<調製例3>(モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製)
調製例1の疎水性染料Vali Fast Blue2606を顔料ピグメントイエロー74に変更したほかは調製例1と同様にして黄色のポリマー微粒子分散体を得た。ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は76nmであった。
【0144】
<調製例4>(カーボンブラック分散液の調製)
市販のpH2.5の酸性カーボンブラック(キャボット社製 商品名モナーク1300)300gを水1000ミリリットルに良く混合した後に次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で8時間撹拌した。この液に更に次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)100gを加え、横型分散機で3時間分散した。得られたスラリーを水で10倍に希釈し、水酸化リチウムにてpHを調整し、電導度0.2mS/cmまで限外濾過膜にて脱塩濃縮し顔料濃度15%のカーボンブラック分散液とした。遠心処理により粗大粒子を除き、さらに1ミクロンのナイロンフィルターで濾過しカーボンブラック分散液とした。マイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は95nmであった。
【0145】
<調製例5>(フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製)
調製例1.の疎水性染料Vali Fast Blue2606を銅フタロシアニン顔料に変更したほかは調製例1と同様にして青色のポリマー微粒子分散体を得た。
ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は93nmであった。
【0146】
<調製例6>(黒色のポリマー微粒子分散体の調製)
調製例1の疎水性染料Vali Fast Blue2606をカーボンブラック(デグサ社FW100)に変更したほかは参考例1と同様にして黒色のポリマー微粒子分散体を得た。ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は104nmであった。
【0147】
以下では、上記調製例1〜8で得たポリマー微粒子分散体を用いてインク組成物を製造した。以下の製造例で得られたインク組成物の粘度及び表面張力の値を後掲の表2に示した。
【0148】
<製造例1>
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調製した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
調製例1の疎水性染料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
一般式(IV)のR: C12、,n=9 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0149】
<製造例2>
下記組成物を用いる以外は製造例1と同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
調製例2のジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
一般式(IV)のR: C12、,n=9 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0150】
<製造例3>
下記組成物を用いる以外は製造例1と同様にし、pHを水酸化リチウムで9にしてインク組成物を調製した。
調製例3のモノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
一般式(IV)のR: C12、,n=9 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0151】
<製造例4>ブラック顔料インク
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
調製例6のカーボンブラック含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
2−ピロリドン 2.0wt%
一般式(IV)のR: C12、,n=9 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0152】
<製造例5>
調製例1. 疎水性染料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
一般式(IV)のR:C12、n=9 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0153】
<製造例6>
調製例2のジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3-ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
一般式(IV)のR: C12、n=9 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0154】
<製造例7>
調製例3.モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3-ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
一般式(IV)のR:C12、n=9 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0155】
<製造例8>
調製例4にて処理したカーボンブラック分散液 5.0wt%
1,3-ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
2−ピロリドン 2.0wt%
ユニセーフA-LY (日本油脂社製両性活性剤) 2.0wt%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2.0wt%
FT-250((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0156】
<製造例9>
調製例1の疎水性染料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3-ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 10.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0157】
<製造例10>
調製例2のジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3-ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 10.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0158】
<製造例11>
調製例3のモノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,3-ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 10.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0159】
<製造例12>
調製例1の疎水性染料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,6-ヘキサンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0160】
<製造例13>
調製例2のジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,6-ヘキサンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0161】
<製造例14>
調製例3のモノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散液 20.0wt%
1,6-ヘキサンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
FT-110((株)ネオス社製) 0.5wt%
プロキセルLV(アベシア社製) 0.2wt%
イオン交換水を加えて100%とした。
【0162】
<製造例15>
調製例5の銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体を用いる事以外は、製造例1と同様にインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
【0163】
<製造例16>
製造例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールに代えて、2,2,4-トリメチル−1,3-ペンタンジオールにする事以外は製造例1と同様にインクを作製した。
【0164】
<製造例17>
製造例2において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールに代えて、2,2,4-トリメチル−1,3-ペンタンジオールにする事以外は製造例2と同様にインクを作製した。
【0165】
<製造例18>
製造例3において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールに代えて、2,2,4-トリメチル−1,3-ペンタンジオールにする事以外は製造例3と同様にインクを作製した。
【0166】
<製造例19>
調製例5の銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体を用いる事以外は、製造例5と同様にインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
【0167】
<製造例20>
調製例5の銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体を用いる事以外は、製造例9と同様にインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
【0168】
<製造例21>
調製例5の銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体を用いる事以外は、製造例12と同様にインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
【0169】
【表2】
【0170】
<実施例1〜5、参考例1〜5>
前記各製造例で作製したシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクを以下の表3に示すような組み合わせのインクセットとし、これについて、画像評価試験を行った。
評価方法は次に示すとおりである。
【0171】
[画像の鮮明性]
(印字使用プリンター)
(1)インクジェットプリンターEM−900(セイコーエプソン株式会社製)にて、ヘッドの駆動電圧、周波数、パルス幅を変え、下記の各紙に印刷を行った。印刷パターンは、本発明のイエロー、マゼンタ、シアンの各カラーインクは100%dutyで印字し、本発明の黒インクを充填したブラックインクは文字を同時に印刷した。印字条件は、Mjが35pl、Vjが20m/sec、周波数が1kHz、記録密度は360dpi、ワンパス印字とした。
(2)キャノン社製バブルジェット(登録商標)方式のインクジェットプリンターBJC430とHP社製バブルジェット(登録商標)方式のインクジェットプリンターhp diskjet815のBKカートリッジにインクをつめ、印字条件、Mjが35pl、Vjが20m/sec、周波数が1kHz、記録密度は360dpi、ワンパス印字でべた及び文字を印字した。
(3)リコー製インクジェットプリンターIPSiO Jet300のヘッドの駆動電圧、周波数、パルス幅を変え、(1)(2)と条件にしてワンパス印字でべた及び文字を印字した。
【0172】
(印字に使用した紙)
用いた印刷試験用紙を以下に示す。
▲1▼マイペーパー(株式会社NBSリコー製)
▲2▼紙源S・再生紙(株式会社NBSリコー製)
▲3▼PB紙(キャノン株式会社製)
▲4▼マルチエース(富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)
▲5▼やまゆり紙(本州製紙株式会社製・再生紙)
▲6▼LH紙(富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)
▲7▼Xerox 4024紙(富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)
▲8▼Neenah Bond紙(キンバリークラーク社製)
【0173】
(評価基準)
印字乾燥後、2色重ね部境界の滲み、画像滲みを目視により総合的に調べ、以下の評価基準にしたがって判定した。
◎:全紙滲みの発生なく鮮明な印刷である。
○:一部の用紙(再生紙)にひげ状の滲みの発生がある。
△:全紙にひげ状の滲みの発生がある。
×:文字の輪郭がはっきりしないほど滲みが発生している。
【0174】
【表3】
【0175】
前述の(1)〜(3)で記載したどのプリンターで印字した場合でも、どの印刷試験用紙においても下記表4の結果を示した。
【0176】
【表4】
【0177】
[カラー画像評価−色再現性評価(色相、彩度)]
リコー製インクジェットプリンターIPSiO Jet300を用い、マイペーパー(株式会社NBSリコー製)上に印字を行い、印刷パターンは、本発明のイエロー、マゼンタ、シアンの各カラーインクを100%dutyで印字し、本発明の黒インクを充填したブラックインクは文字を同時に印刷した。印字条件は、Mjが35pl、Vjが20m/sec、周波数が1kHz、記録密度は360dpi、ワンパス印字とした。
【0178】
印字乾燥後、上記インクセットにおいて、イエロー、マゼンタ、シアンの各単色とそれぞれの混色によるブルー、グリーン、レッド部のベタ画像部において、反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)により測定し、CIE(Commision International de l� Eclairage)で規定されている色差表示法のL*a*b*表色系の座標を求めた。また、上記インクセット中の各インク組成物で色材の色相がそれぞれ異なるので、各実施例で純水な比較を行うため、それぞれ各色において彩度C*を求めた。この彩度C*の値が高いほど、発色良好なインクといえる。
また、併せて、参考値として、ダイレクトブルー199を使用したシアン色染料インクのデータを示し、本発明の疎水性染料を用いたシアン色の色調と比較した。
なお彩度C*は下記式で定義される。
C* = { ( a* )2 + ( b* )2 }1/2
下記表5に、シアン色の色調および、彩度結果を示す。
【0179】
【表5】
【0180】
上記画像評価結果より以下表6に、比較参考値として示したシアン染料のシアン色を色調基準値として、色差ΔE*abを次に示す式より求めた。ここで色差ΔE*abの値が小さいほど、基準としたシアン染料に近い色再現性を示す事が分かる。
ΔE*ab={(ΔL*)2 + (Δa*)2 +(Δb*)2 }1/2
【0181】
【表6】
【0182】
また、上記実施例の各インクセットにおける、各色の彩度値C*を以下表7に示す。
【0183】
【表7】
【0184】
【発明の効果】
1)本発明において、シアン色インクの色材に疎水性染料を用いる事で、調色する事無くダイレクトブルー染料と同等の色域にある色相のインクが得られ、普通紙においても良好な画像特性を示した。
2)本発明において、シアン色インクの色材に疎水性染料を用い、その他カラーインクの色材に顔料を用いたインクセットにおいて、さらに、フッ素系の界面活性剤を用いる事により、特にマゼンタ色インクにおいて他色のインクよりも顕著な効果が認められ、彩度が顕著に向上し、発色性が改善される。また、普通紙上での印字画像について、2次色のグリーン、ブルー、レッド色の彩度、特にグリーン色の彩度が顕著に向上し、また、べた画像部において、普通紙上へのインクの均染性が向上、それにより各色すべての彩度が顕著に向上し、特に顔料系インクの課題であった発色性を向上する事ができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した記録液を収容するインクカートリッジを搭載するシリアル型インクジェット記録装置の構成例を示す概略正面図
【図2】 記録装置に装填する前のインクカートリッジの外観斜視図
【図3】 インクカートリッジの正断面図
【図4】 記録ヘッドと一体化された記録ユニットの外観斜視図
【符号の説明】
1,2 側板
3 主支持ガイドロッド
4 従支持ガイドロッド
5 キャリッジユニット
6 ヘッド
6a 吐出面(ノズル面)
8 主走査モータ
9 駆動プーリ(駆動タイミングプーリ)
10 従動プーリ(アイドラプーリ)
11 タイミングベルト
12 底板
13,14 サブフレーム
15搬送ローラ
16 用紙
17 副走査モータ
15 搬送ローラ
18,19 ギヤ
21 サブシステム
22 キャップ手段
23 ホルダ
24 リンク部材
25 係合部
26 吸引チューブ
27 吸引ポンプ
28 ワイパブレード
29 ブレードアーム
30 記録ユニット
31 電極
32 多数のノズル
41 カートリッジ本体
42 インク吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 インク供給口
46 シールリング
47 大気開放
50 キャップ部材
55 フィルム状シール部材
A 空間
41 インクタンク
Claims (19)
- ブラックインクとカラーインクとからなるインクジェット用インクセットであって、前記カラーインクが、色材を含有させたポリマー微粒子の水分散体であって、シアン色インクの色材として疎水性染料を用い、イエロー、マゼンタ色インクの色材として顔料を用い、インクセットを構成するインクが、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上の湿潤剤(第1の種類のヒドロキシ化合物)、炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテル、水溶性有機溶剤及び水を少なくとも含有すると共に、アニオン、ノニオン及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種類以上とフッ素系界面活性剤の少なくとも1種類以上とを含有し、25℃におけるインク粘度が5mPa・sec以上であることを特徴とするインクジェット用インクセット。
- 前記疎水性染料がフタロシアニン骨格を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット用インクセット。
- 前記フッ素系界面活性剤が、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物の中から選ばれる一種類以上のフッ素系界面活性剤であることを特徴とする請求項3記載のインクジェット用インクセット。
- 前記ポリマー微粒子を形成するポリマーが、ビニル系ポリマーまたはポリエステル系ポリマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
- 前記炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテルが2−エチル−1,3−ヘキサンジオールよりなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
- 前記炭素数8以上で11以下のポリオール(第2の種類のヒドロキシ化合物)またはグリコールエーテルが2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールよりなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
- 前記ブラックインクが自己分散型顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
- インクの表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のインクジェット用インクセット。
- 前記色材を含有させたポリマー微粒子の水分散体が、固形分を8〜20重量%含有することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載のインクジェット用インクセット。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット用インクセットにエネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクに熱エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- インクに力学的エネルギーを作用させてインク吐出を行なうことを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- Mjが5〜35pl、Vjが6〜20m、周波数1KHz以上、解像度が300dpi以上、ワンパス印字条件において、請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを用いることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを収容したインク収容部を備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット用インクセットを収容したインク収容部あるいはインクカートリッジ、該インクをエネルギーの作用により滴化し吐出させるためのヘッド部あるいは記録ユニットを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 前記インクジェット記録ヘッドのノズルプレートの表面に撥インク性皮膜層が共析メッキにより形成されていることを特徴とする請求項17に記載の記録装置。
- 前記インクジェット記録ヘッドのノズル径が30μ以下であることを特徴とする請求項17又は18に記載の記録装置。
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