JP4267087B2 - 耐脆化性ポリオレフィン組成物及びそれから製造される可撓性製品 - Google Patents

耐脆化性ポリオレフィン組成物及びそれから製造される可撓性製品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、実質的に透明な耐脆化性ポリオレフィン組成物及びそれから製造される可撓性の滅菌適性製品に関する。
種々のポリオレフィンから製造される製品は、照射又はオートクレーブにより滅菌しなければならない。例えば、高エネルギー照射により、シリンジバレル及びプランジャー、管材料、手術用の鉗子、包装用フィルム、組織培養管、手術用の服及びシーツの繊維のような製品を滅菌することは公知である。そのような造形品及びそれらに含まれる物質を効果的に滅菌するには、2.5乃至5.0メガラドの放射線量が通常十分な量である。しかしながら、そのような放射線に暴露した高分子製品は典型的には変色及び脆化し、それらの用途に不適当になる可能性がある。
【0002】
【従来の技術】
先行技術においては、ポリマーを有用な製品に成形又は造形する前に種々の添加剤をポリマー組成物に均質混合することにより、そのような放射線による変色及び/又は脆化を抑制しようとした。従って、例えば、米国特許第4,110,185号には、ポリマーの自由体積を増大させて照射後の可撓性を保持するために、低分子量の、好ましくは粘性の高くない、炭化水素のような液体の移動剤(mobilizer) を半結晶質ポリプロピレンに均質混合することが記載されている。米国特許第4,274,932号には、分子量分布を狭くするためにビスブレーキングした半結晶質ポリプロピレンに移動剤を均質混合することが記載されている。米国特許第4,474,734号も参照されたい。しかしながら、ペルオキシドブレーキングは不愉快な臭気をもたらすtert- ブチルアルコールをポリマー中に生ずる。
Cooke による米国特許第5,371,124号には、プロピレンポリマー組成物の耐放射線性を増大させるための種々の添加剤の要約が提供されている。Moore,Jrによる米国特許第4,888,369号も参照されたい。しかしながら、いかなる添加剤もポリマー組成物のその他の成分と適合しなければならず、不愉快な臭気及び/又は色、加工の困難さ、時間経過後の製品からの添加剤のブリード等のようなその他の問題を引き起こす可能性がある。例えば、米国特許第4,110,185号及び同第4,274,932号に記載されている移動剤を含むと望ましくない取扱及び捺印の問題を引き起こすことを示唆する米国特許第4,710,524号を参照されたい。また、オイル移動剤を添加すると、ポリマー製品の価格が有意に増大する。
【0003】
ポリプロピレンから製造されるシリンジグレードの物質は、典型的には狭い分子量分布を得るために低い溶融流量(MFR)からペルオキシドビスブレーキングしなければならず、ヒンダードアミン光安定剤のラジカル掃去能を改良するために移動剤としてオイルを含まなければならない。ポリプロピレン物質は典型的には透明剤としてソルビトールを基剤とする添加剤も含む。
それから製造される製品の機械的性質を増大するために、高分子組成物にエラストマー成分を均質混合することは公知である。例えば、米国特許第4,985,479号には、良好な耐候性及び機械的性質を有するとされている安定化ポリオレフィン組成物が開示されている。ポリオレフィンには、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンブテン-1コポリマー、エチレンヘキセン-1コポリマー、及びエチレン、プロピレン及び非共役ジエンのターポリマー(EPDM)のようなエチレン及びα‐オレフィンの合成コポリマーが含まれうる。エラストマー性成分を有する安定化ポリオレフィン組成物のその他の例は、米国特許第4,972,009号、同第4,785,034号及び同第4,467,061号に開示されている。
しかしながら、そのようなエラストマーの添加は典型的には製品の透明性を低下させ、望ましくないことがしばしばである。この問題は特に、フィルムと比較して射出成形法により製造される製品の場合に重大である。射出成形品はフィルム(厚さ0.015cm(0.006インチ))の10倍以上(厚さ0.15cm(0.06インチ))の厚さであることがしばしばであり、従って、射出成形品においてはフィルムより曇りが顕著である。フィルムは典型的には二軸延伸により製造され、透明性及び耐放射線性が改良される傾向がある。これに対し、射出成形は典型的には望ましくない脆化の増大を引き起こす。
【0004】
放射線よりむしろオートクレーブで滅菌されうる製品の別の要件は、高い熱変形温度である。そのような製品は好ましくは熱変形温度が少なくとも70℃で、熱変形温度は少なくとも60℃でなければならない。
特公平第4−142354(1992年)号には、結晶質プロピレン−エチレンランダムコポリマー、線状低密度ポリエチレン、及びエチレン−ブテンコポリマーゴムから成るポリオレフィン樹脂成分と、特定量のヒンダードアミン化合物、有機燐化合物及びソルビトール化合物を含む特定の添加剤から調製された耐放射線性のビスブレーキングしたポリオレフィン包装フィルム材料が開示されている。曇り度は、フィルムの透明性の試験である、JIS K 7105にしたがって測定する。(典型的には、フィルムの厚さは0.008乃至0.01cm(3乃至5ミル)であるが、0.02cm(8ミル)程度でもよい。)実施例2と比較例2の比較は、耐放射線性の改良には線状低密度ポリエチレンの添加が不可欠であることを示す。しかしながら、線状低密度ポリエチレンは、典型的な厚さが0.10乃至0.23cm(40乃至90ミル)である射出成形品の透明性を実質的に低下又は除去する。例えば、0.10乃至0.23cm(40乃至90ミル)の厚さにおいては、製品の曇り度は約60乃至80%であり、透明性は実質的には存在しない。典型的には、シリンジ部分の厚さは0.11乃至0.18cm(45乃至70ミル)である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐放射線性を付与するのに高価なビスブレーキング工程又は移動剤オイルの均質混合を必要としない耐脆化性ポリマー組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、エラストマー性成分を含むが、実質的に透明である耐脆化性ポリマー組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、可撓性で実質的に透明な製品に射出成形しうる耐脆化性ポリマー組成物を提供することである。
本発明の更に別の目的は、少なくとも60℃、好ましくは70℃より高い熱変形温度を示す耐放射線性及び耐熱性ポリマー組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
一面においては、本発明は、
(a)ポリマー組成物の総重量に対して少なくとも80重量%の、アイソタクチック指数が90より高いプロピレンホモポリマー、又はエチレン又はC4 〜C10の1-オレフィンとプロピレンとのランダムコポリマーのいずれかを含む結晶質ポリマー、
(b)プロピレン又はブテン-1とエチレンとのエラストマー性コポリマー
を含む耐脆化性ポリオレフィン組成物において、
エラストマー性コポリマーがポリオレフィン組成物の透明性に悪影響を及ぼすことなくポリオレフィン組成物の可撓性を増大させるのに十分な量だけ存在し、ポリオレフィン組成物の熱変形温度が少なくとも60℃であるポリオレフィン組成物に関する。
本発明は又、その構成物質の少なくとも一部が本発明の耐脆化性ポリオレフィン組成物を含む滅菌適性製品を提供する。
別の実施態様においては、本発明は、本発明のポリオレフィン組成物を有用な製品に変換し、次いで製品を高エネルギー照射又はオートクレーブにより滅菌することにより製造される滅菌製品を提供する。
【0007】
本出願人は予期せぬことに、、結晶質プロピレンポリマー及びエラストマー性コポリマーの溶融流量(MFR)が実質的に同一であるか、又はエラストマー性コポリマーを製造するのに使用するモノマーのカイ値が少なくとも0.90、好ましくは0.95となるような方法で重合させるか、又はその両方であれば、耐放射線性を付与するのに高価なビスブレーキング工程又は移動剤の均質混合を必要としない耐脆化性で透明なポリマー組成物が提供されうることを発見した。更に、本出願人の組成物から調製した射出成形品は、移動剤を含む組成物の先行技術と比較して驚くべき長期にわたる耐脆化性を示す。
本明細書において使用されている“実質的に同一のMFR”という用語は、ΔMFRが0以上10まで、好ましくは0乃至2、最も好ましくは0乃至0.7であることを意味する。但し、ΔMFRは結晶質ポリマーのMFRからエラストマー性コポリマーのMFRを引いた値に等しい。“カイ値”は0乃至2であり、14C−NMRスペクトルのデータに基づく、コポリマーにおける2種類のモノマーの分布のランダム度の尺度である。従来のZiegler-Natta 触媒を用いて重合したエチレンプロピレンポリマーのカイ値は、一般的には0.85乃至0.89である。
【0008】
結晶質プロピレンポリマーは、アイソタクチック指数が少なくとも90のプロピレンホモポリマーでもよいが、更に好ましくは、結晶質の、エチレン、及びC4 〜C10の1-オレフィンから成る群から選択されたオレフィンとプロピレンとのランダムコポリマー(但し、オレフィンがエチレンの場合には、重合したエチレンの最大含量が約10重量%、好ましくは4重量%であり、オレフィンがC4 〜C10の1-オレフィンの場合には、重合したそれらの最大含量が約20重量%、好ましくは約16重量%であるという条件である。)である。結晶質ランダムコポリマーは典型的には、エチレンがコモノマーの場合にはプロピレン含量が少なくとも95重量%であり、C4 〜C10の1-オレフィンがコモノマーの場合にはプロピレン含量が少なくとも90重量%である。
4 〜C10の1-オレフィンには、例えば1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1- ブテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1- ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1- ヘキセン等のような直鎖状及び分枝鎖状のC4 〜C10の1-オレフィンが含まれる。1-ブテンが好ましい。
エラストマー性コポリマーのエチレン含量は55乃至80重量%、好ましくは65乃至75重量%である。
結晶質プロピレンポリマー、エラストマー性コポリマー及び以下で論述する種々の添加剤は、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー等のような従来の押出又は混合装置を用いることにより溶融ブレンドしうる。好ましくは、重合したままの(すなわち、更に加工したり処理したすることなく重合反応により製造されたままの)結晶質ポリマー及びエラストマー性コポリマーの組成物を添加剤と溶融ブレンドする。
【0009】
重合したままのポリオレフィン組成物又はそれらの個々のポリマー成分は、メタロセン、又はチタン又はバナジウムを基剤とするZiegler-Natta 触媒のようなZiegler-Natta 触媒を用いて調製しうる。重合したままの組成物が好ましい。特に結晶質プロピレンポリマーは、その開示が明白に本明細書に導入されている米国特許第5,324,800号に記載されているようなメタロセン触媒により調製しうる。エラストマー性コポリマーは、その開示が明白に本明細書に導入されている米国特許第5,001,205号及び同第5,491,207号に記載されているようなメタロセン触媒により調製しうる。
本発明の耐脆化性組成物は、例えば1種以上の、当業者に公知の、通常HALSと呼ばれているヒンダード複素環状アミン光安定剤のようなヒンダードアミン光安定剤を1種以上含みうる。そのような添加剤は、例えば、その開示がHALS物質に関して本明細書に参考として導入されている、前述の米国特許第4,710,524号、同第4,749,734号、同第4,797,438号、及び同第4,888,369号に記載されている。
【0010】
代表的なヒンダードアミン光安定剤には、ポリメチルプロピル-3- オキシ-[4-(2,2,6,6- テトラメチル) ピペリジニル] シロキサン、ビス(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル) セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル) セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル)-2-n-ブチル-233,5-ジ-tert-ブチル-4- ヒドロキシベンジル) マロネート、4-ベンゾイロキシ-2,2,6,6- テトラメチルピペリジン、1,2,3,4-テトラ(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル) ブタンテトラ- カルボキシレート、1,4-ジ-(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)-2,3-ブタンジオン、トリス-(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル) トリメリテート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジルn-オクトエート、トリス-(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル) ニトリルセバケート、4-ヒドロキシ-2,2,6,6- テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-1,2,2,6,6- ペンタメチルピペリジン、及び1,1 ′-(1,2-エタンジイル) ビス-3,3,6,6- テトラメチルピペラジノンが含まれる。そのようなアミンの混合物も使用しうる。
ポリメチルプロピル-3- オキシ-[4-(2,2,6,6- テトラメチル) ピペリジニル] シロキサンが特に好ましく、Uvasil 299という商標名でGreat Lakes Chemical Corporationから市販されている。
HALS化合物は、典型的には約0.01乃至3.0pph 、好ましくは0.05乃至2.0pph 、最も好ましくは0.10乃至0.2pph 存在する。3.0pph より多いHALSも本発明の最も幅広い面の範囲内であるけれども、3.0pph より多いHALS化合物は一般的には必要ない。
【0011】
本発明の耐脆化性組成物には、金属石鹸、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、カルシウム、及び第II族金属の酸化物及び水酸化物から成る群から選択しうる酸中和剤を1種以上含みうる。ステアリン酸ナトリウムが公知であり、市販されている好ましい酸中和剤である。
酸中和剤は、典型的には組成物の総重量に対して0.01乃至1重量%、好ましくは0.05乃至0.1重量%存在する。
本発明の耐脆化性組成物には、ビス-(3,5-ジメチルベンジリデン) ソルビトール、(1,3)2,4- ジ(p- メチルベンジリデン) ソルビトール、(1,3)2,4- ジ(p- クロロベンジリデン) ソルビトール、及び(1,3)2,4- ジ(p- メトキシベンジリデン) ソルビトールから成る群から選択しうる透明剤としてのソルビトールを基剤とする化合物を1種以上含みうる。ビス-(3,5-ジメチルベンジリデン) ソルビトールが好ましいソルビトールを基剤とする化合物である。
ソルビトールを基剤とする化合物は、典型的には組成物の総重量に対して0.01乃至4重量%、好ましくは0.1乃至0.25重量%存在する。
少量の、酸化防止剤及び/又は光安定剤のようなその他の添加剤もプロピレンポリマー組成物中に存在しうる。これらには、例えばテトラキス[ メチレン-3-(3 ′,5′- ジ-tert-ブチル-4′- ヒドロキシフェニル) プロピオネート] メタンのようなポリオレフィンに使用する種類のフェノール系酸化防止剤(150ppm 未満存在しうる)が含まれる。例えばトリス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル) ホスファイトのような熱及び酸化防止剤安定化ホスファイトは0.1乃至1重量%存在しうる。充填剤及び着色剤のようなその他の添加剤も存在しうる。
【0012】
典型的には、組成物のMFRは5乃至30であり、好ましくは6乃至25である。
本発明の耐脆化性組成物は、ASTM D 1003-92にしたがって測定される曇り度が20%以下である。典型的には、組成物は厚さ0.10cm(0.040インチ)のプレートに射出成形すると、11乃至17%の曇り度を示す。
本発明の耐脆化性組成物は、好ましくはWilliamsらによる米国特許第4,749,734号に開示されているような従来の移動剤オイルを含まない。しかしながら、そのようなオイルの使用は本発明の最も幅広い範囲の範囲内である。
本発明の耐脆化性組成物は、良好な可撓性を有する種々の製品に製造しうる。典型的な有用な製品には、シリンジバレル及びプランジャー、管材料及び管集成体、ピンセット、手術用の鉗子、包装用フィルム、組織培養管、手術用の服、シーツ等の繊維が含まれる。製品の製造には、射出成形、圧縮成形、押出成形、又は真空成形を含む成形、押出、押出注型、紡績結合、溶融ブロー等のような従来の製造法を使用しうる。
耐脆化性製品は、当業者に公知の従来の技術及び装置を用いて滅菌しうる。2.5乃至5.0メガラドの放射線量が造形品及びそれらに含まれる物質を効果的に滅菌するのに通常十分な量であり、工業的な標準量である。しかしながら、滅菌するのに2.5メガラド以上の線量が必要なくても約5.0メガラドまでの放射線量は適用しうる。また、従来のオートクレーブ滅菌技術及び装置も製品の滅菌に使用しうる。
【0013】
【実施例】
以下の実施例は、本発明の耐脆化性プロピレンポリマー組成物及び滅菌適性製品の好ましい実施態様を記載し、説明の目的のためにのみ提供する。
特に記載がなければ、全ての成分の量の単位はプロピレンポリマー物質の場合を除いてプロピレンポリマー物質のpph である。
表に示す物理的性質は以下の方法により測定した。
Figure 0004267087
【0014】
実施例1
この実施例は、本発明のポリオレフィン組成物及びそれらの調製を説明する。
85gの、95.25重量%のプロピレンと4.75重量%のブテンとの結晶質ランダムコポリマーを、15gの、エチレンとブテンのモル比が70:30のエラストマー性コポリマー、ポリマー100重量部当たり0.125部の、ヒンダードアミン光安定剤であるUvasil 299ポリメチル- プロピル-3- オキシ-[4-(2,2,6,6- テトラメチル) ピペリジニル] シロキサン、ポリマー100重量部当たり0.18部のMillad 3988 ソルビトール化合物、及びポリマー100重量部当たり0.1部のステアリン酸ナトリウムと混合した。結晶質コポリマーとエラストマー性コポリマーは、活性化した塩化マグネシウム物質に支持させた塩化チタン化合物を含む触媒を用い、逐次重合により調製した。
微粉状又は粒状の成分を均質混合物が得られるまでタンブルブレンドした(約3分)。次いで混合物を、Davis の標準、テーパー、反対方向回転、一軸スクリュー押出機を用い、232℃(450°F)の温度及び125rpm の速度で押し出した。得られたブレンドをストランドとして押し出し、水中で冷却し、ペレット化して実施例1の試料配合物を形成した。試料配合物は以下の表1にまとめた。
【0015】
ペレットの第一の試料はポリマー組成物の溶融流量を測定するのに使用し、ペレットの第二のポーションは、バレル温度が232℃(450°F)で金型温度が60℃(140°F)の200トンHPM 射出成形機を用い、引っ張り及び屈曲棒を製造した。成形サイクルは16秒の射出時間、20秒の冷却時間、及び2秒の金型開放時間であり、最大射出速度(15に設定)を用い、スクリューは2に設定した。そのようにして製造した引っ張り及び屈曲棒は、ポリマー組成物の引っ張り強さ、曲げ弾性率、及び熱変形温度(HDT)の測定に使用した。
ペレットの第三のポーションは2.5″×2.5″×0.040″のプラックに射出成形し、従来の技術及び装置を用い、3メガラドの放射線量でコバルト60ガンマ線に暴露した後の曇り特性を評価するのに使用した。ペレットの第四のポーションは、DWIのための5″×5″×0.090″のプラックを射出成形するのに使用した。
これらの試験より得られたデータは以下の表2に示す。
【0016】
実施例2
この実施例は、本発明の別のポリオレフィン組成物及びそれらの調製を説明する。
実施例1の手順にしたがって、93gの、97重量%のプロピレンと3重量%のエチレンとの結晶質ランダムコポリマー、7gの、エチレンとプロピレンのモル比が25:75のエラストマー性コポリマー、ポリマー100重量部当たり0.125部のUvasil 299ポリメチル- プロピル-3- オキシ-[4-(2,2,6,6- テトラメチル) ピペリジニル] シロキサン、ポリマー100重量部当たり0.18部のMillad 3988 ソルビトール化合物、及びポリマー100重量部当たり0.1部のステアリン酸ナトリウムから試料配合物を調製した。この場合も、結晶質コポリマーとエラストマー性コポリマーは、活性化した塩化マグネシウム物質に支持させた塩化チタン化合物を含む触媒を用い、逐次重合により調製した。配合物は以下の表1にまとめ、表2には、実施例1の方法にしたがってこの配合物から製造したペレットの溶融流量、引っ張り強さ、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、落錘衝撃試験により測定した可撓性(DWI)、及び曇り度より得られたデータをまとめた。
【0017】
実施例3
この実施例は、本発明の別のポリオレフィン組成物及びそれらの調製を説明する。
実施例1の手順にしたがって、92.8gの、97重量%のプロピレンと3重量%のエチレンとの結晶質ランダムコポリマー、7.2gの、エチレンとプロピレンのモル比が32:68のエラストマー性コポリマー、ポリマー100重量部当たり0.125重量部のUvasil 299、ポリマー100重量部当たり0.18重量部のMillad 3988 ソルビトール化合物、及びポリマー100重量部当たり0.1重量部のステアリン酸ナトリウムから試料配合物を調製した。この場合も、結晶質コポリマーとエラストマー性コポリマーは、活性化した塩化マグネシウム物質に支持させた塩化チタン化合物を含む触媒を用い、逐次重合により調製した。結晶質ポリマー及びエラストマー性ポリマー間のΔMFRは0.67であった。配合物は以下の表1にまとめ、表2には、実施例1の方法にしたがってこの配合物から製造したペレットの溶融流量、引っ張り強さ、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、落錘衝撃試験により測定した可撓性(DWI)、及び曇り度より得られたデータをまとめた。
【0018】
比較例1
この比較例は、滅菌適性製品を製造するのに通常使用されている典型的なビスブレーキングした移動剤を含む配合物を説明する。
溶融流量が0.4で、Lupersol 101ペルオキシドでビスブレーキングして溶融流量を12としたポリプロピレンのホモポリマー100gを、ポリマー100重量部当たり4.7重量部のDrakeol 34炭化水素オイル移動剤、ポリマー100重量部当たり0.125部のTinuvin 770 ヒンダードアミン光安定剤、ポリマー100重量部当たり0.18部のMillad 3940 ソルビトール化合物、及びポリマー100重量部当たり0.1部のステアリン酸ナトリウムと混合した。プロピレンホモポリマーは、活性化した塩化マグネシウム物質に支持させた塩化チタン化合物を含む触媒を用い、逐次重合により調製した。配合物は以下の表1にまとめ、表2には、実施例1の方法にしたがって比較例の試料配合物から製造したペレットの溶融流量、引っ張り強さ、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、落錘衝撃試験により測定した可撓性(DWI)、及び曇り度より得られたデータをまとめた。
【0019】
【表1】
表1 試料配合物
Figure 0004267087
【0020】
【表2】
表1 試料配合物(続き)
Figure 0004267087
1Uvasil 299ポリメチル- プロピル-3- オキシ-[4-(2,2,6,6- テトラメチル) ピペリジニル] シロキサン
2Milliken Corporationより市販されているビス(3,5- ジメチルベンジリデン) ソルビトール
3Milliken Corporationより市販されているビス(p- メチルベンジリデン) ソルビトール
4ビス(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル) セバケート
【0021】
【表3】
表2
Figure 0004267087
【0022】
実施例4
この実施例は、本発明のポリオレフィン組成物からのシリンジの製造を説明する。
実施例1乃至3及び比較例1で調製したペレットの更に別のポーションから、従来の射出成形技術及び装置を用いてシリンジを製造した。試料配合物から調製したシリンジを、従来の技術及び装置を用い、3メガラドの通常の放射線量でコバルト60ガンマ線に暴露した。
次いで、以下の手順に従って“最終曲げ角度”を測定することにより可撓性について調べた。
インストロン試験機を用い、破損するまでシリンジバレルのフランジを曲げる。破損がおこる角度が可撓性の尺度である。90°が最大破損角度である。すなわち、この試験により測定しうる可撓性の最大量である。試験毎に8個のシリンジを用い、破損角度を平均した。試験は、60℃において0、2、4、6及び8週間貯蔵して実施した。“初期曲げ角度”は、シリンジを製造した後高温貯蔵をしないですぐに測定した平均破損角度である。“最終曲げ角度”は、8週間貯蔵した後測定した平均破損角度である。図1乃至4を参照すると、3種の本発明の組成物から成形したシリンジの照射後の曲げ角度が、時間が経過してもビスブレーキングしたポリマー組成物から調製したシリンジの照射後より可撓性が残っていることを示す。以下の表3には、ビスブレーキングしていない本発明の組成物及びビスブレーキングした、移動剤を含む対照組成物から調製したシリンジ試料の粘度、初期及び最終曲げ角度をまとめた。
【0023】
【表4】
表3
Figure 0004267087
【0024】
データは、本発明のポリオレフィン組成物が、耐放射線性を付与するために高価なビスブレーキング工程や移動剤オイルのような添加剤の均質混合を必要としないことを示す。特に重要な利点は、本発明のポリオレフィン組成物が時間経過後も脆化に対して耐性があるということである。驚くべき特徴は、本発明のポリオレフィンがエラストマー性成分を含んでも実質的に透明であるということである。更に別の利点は、本発明のポリオレフィン組成物が高い熱変形温度を有し、オートクレーブ作業に適するということである。これらの特徴から、ポリオレフィン組成物からオートクレーブ又は放射線により滅菌しうる可撓性で透明な製品を製造することが許容される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のビスブレーキングしていない、オイル移動剤を含まないポリオレフィン組成物から製造したシリンジ試料を60℃において10週間保持した際の曲げ角度のグラフである。
【図2】比較例1のビスブレーキングした、オイル移動剤を含むポリオレフィン組成物から製造したシリンジ試料を60℃において10週間保持した際の曲げ角度のグラフである。
【図3】実施例3のビスブレーキングしていない、オイル移動剤を含まないポリオレフィン組成物から製造したシリンジ試料を60℃において10週間保持した際の曲げ角度のグラフである。
【図4】実施例2のビスブレーキングしていない、オイル移動剤を含まないポリオレフィン組成物から製造したシリンジ試料を60℃において10週間保持した際の曲げ角度のグラフである。

Claims (16)

  1. (a)ポリオレフィン組成物の総重量に対して少なくとも85重量%の、アイソタクチック指数が90より高いプロピレンホモポリマー、又はエチレン又はC4 〜C10の1-オレフィンとプロピレンとのランダムコポリマーのいずれかを含む結晶質ポリマー、
    (b)プロピレン又はブテン-1とエチレンとを含む、エチレン:プロピレン又はブテン -1 のモル比が25:75〜70:30であるエラストマー性コポリマー
    を含む、放射線滅菌されるシリンジバレル用の耐脆化性ポリオレフィン組成物において、
    前記エラストマー性コポリマーが前記ポリオレフィン組成物の総重量に対して7乃至15重量%の量で存在し、
    ASTM D 1003−92にしたがい測定される前記ポリオレフィン組成物の曇り度が19.1%以下であり、かつ
    前記ポリオレフィン組成物の熱変形温度が少なくとも60℃であり、ΔMFR(前記結晶質ポリマーの溶融流量から前記エラストマー性コポリマーの溶融流量を引いた値に等しい)が0乃至2.0であるポリオレフィン組成物。
  2. 前記組成物のΔMFRが0乃至0.7である請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  3. 前記エラストマー性コポリマーをメタロセン触媒の存在下で重合させた請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  4. 前記ポリオレフィン組成物の曇り度が11乃至17%である請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  5. 前記結晶質ポリマーが、プロピレン含量が少なくとも95重量%のランダムコポリマーである請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  6. ポリメチルプロピル-3- オキシ-[4-(2,2,6,6- テトラメチル) ピペリジニル] シロキサン、ビス(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル) セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル)-2-n-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4- ヒドロキシベンジル) マロネート、4-ベンゾイロキシ-2,2,6,6- テトラメチルピペリジン、1,2,3,4-テトラ(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル) ブタンテトラ- カルボキシレート、1,4-ジ-(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)-2,3-ブタンジオン、トリス-(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル) トリメリテート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジルn-オクトエート、トリス-(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル) ニトリルセバケート、4-ヒドロキシ-2,2,6,6- テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-1,2,2,6,6- ペンタメチルピペリジン、及び1,1 ′-(1,2-エタンジイル) ビス-3,3,6,6- テトラメチルピペラジノンから成る群から選択される1種以上のヒンダードアミン光安定剤を更に含む請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  7. 前記ヒンダードアミン光安定剤がポリメチルプロピル-3-オキシ-[4-(2,2,6,6- テトラメチル) ピペリジニル] シロキサンである請求項記載のポリオレフィン組成物。
  8. 金属石鹸、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、及びカルシウム、及び第II族金属の酸化物及び水酸化物から成る群から選択される1種以上の酸中和剤を更に含む請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  9. ビス-(3,5-ジメチルベンジリデン) ソルビトール、(1,3)2,4- ジ(p- メチルベンジリデン) ソルビトール、(1,3)2,4- ジ(p- クロロベンジリデン) ソルビトール、及び(1,3)2,4- ジ(p- メトキシベンジリデン) ソルビトールから成る群から選択される1種以上のソルビトールを基剤とする化合物を更に含む請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  10. a)前記結晶質ポリマーが85重量%存在して、95.25重量%のプロピレンと4.75重量%のブテンとのランダムコポリマーから成り、かつ
    b)前記エラストマー性コポリマーが15重量%存在して、エチレン及びブテンのモル比が70/30のエラストマー性コポリマーから成る請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  11. a)前記結晶質ポリマーが92.8重量%存在して、97重量%のプロピレンと3重量%のエチレンとのランダムコポリマーから成り、かつ
    b)前記エラストマー性コポリマーが7.2重量%存在して、エチレン及びプロピレンのモル比が32/68のエラストマー性コポリマーから成る請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  12. a)前記結晶質ポリマーが93重量%存在して、97重量%のプロピレンと3重量%のエチレンとのランダムコポリマーから成り、かつ
    b)前記エラストマー性コポリマーが7重量%存在して、エチレン及びプロピレンのモル比が25/75のエラストマー性コポリマーから成る請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  13. 前記組成物が移動剤を含まない請求項1記載のポリオレフィン組成物。
  14. 構成物質の少なくとも一部が請求項1記載のポリオレフィン組成物である、放射線滅菌されるシリンジバレル
  15. 熱変形温度が少なくとも70℃である請求項14記載のシリンジバレル
  16. 構成物質の少なくとも一部が請求項1記載のポリオレフィン組成物である、放射線滅菌されたシリンジバレル
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