JP4265655B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents

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Description

本発明は、例えば複数色の液体インクの微小なインク滴を複数のノズルから吐出してその微粒子(インクドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタに関するものである。
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印刷ヘッド(インクジェットヘッドともいう)とが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体上をその搬送方向と交差する方向に往復しながらその印刷ヘッドのノズルから液体インク滴を吐出(噴射)して印刷媒体上に微小なインクドットを形成することで、当該印刷媒体上に所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎の印刷ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
また、このようにキャリッジ上のインクジェットヘッドを印刷媒体の搬送方向と交差する方向に往復させながら印刷を実行するようにしたタイプのインクジェットプリンタでは、1頁全体をきれいに印刷するためにインクジェットヘッドを10回程度から数十回以上も往復運動させる必要がある。これに対し、印刷媒体の幅と同じ寸法の長尺のインクジェットヘッド(一体である必要はない)を配置してキャリッジを使用しないタイプのインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドを印刷媒体の幅方向に移動させる必要がなく、所謂1パスでの印刷が可能となるため、高速な印刷が可能となる。なお、前者方式のインクジェットプリンタを一般に「マルチパス(シリアル)型インクジェットプリンタ」、後者方式のインクジェットプリンタを一般に「ラインヘッド型インクジェットプリンタ」と呼んでいる。特に、ラインヘッド型インクジェットプリンタでは、駆動ローラ及び従動ローラに搬送ベルトを巻回して張架し、この搬送ベルトで印刷媒体を搬送しながら高速印刷を行うことで、印刷媒体一枚あたりの印刷所要時間を短縮することが提案されている。
このようなインクジェットプリンタで高画質の印刷を行うためには、インク滴を印刷媒体の目標位置に確実に吐出(着弾ともいう)する必要がある。特に、ラインヘッド型インクジェットプリンタで、印刷媒体を搬送しながらインク滴を吐出する場合には、搬送ベルトによる印刷媒体の搬送状態とインク滴吐出タイミングとの適合性が重要である。そこで、搬送ベルトと印刷媒体、或いは搬送ベルトが巻回されているローラと搬送ベルトと印刷媒体とが同期して移動しているものとして、例えば下記特許文献1に記載されるインクジェットプリンタでは、駆動ローラに設けられたロータリエンコーダからの入力パルスに同期してインクジェットヘッドからインク滴を吐出するようにしており、例えば下記特許文献2に記載されるインクジェットプリンタでは、搬送ベルト上に設けられたリニアエンコーダからの入力パルスに同期してインクジェットヘッドからインク滴を吐出するようにしている。
特開平11−170623号公報 特開平11−245383号公報
しかしながら、搬送ベルトによる印刷媒体の搬送には、少なくとも2つのローラを用いるので、各ローラの偏心位相によってはローラ間の距離が変化する。このようにローラ間の距離が変化すると、それらのローラに巻回されている搬送ベルトに伸縮が発生し、この伸縮によって搬送ベルトの移動量と印刷媒体の移動量との間に周期的なずれが生じ、印刷画像上に視認できるレベルのムラが発生する。ローラの偏心は不可避なものであるが、印刷画像のムラ周期が印刷画像の長さ以上になるようにローラの径を大きくすれば、印刷画像上のムラが目立たなくなる。しかしながら、そのような大径のローラは装置の大型化の原因となり、現実的でない。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、搬送ベルトが巻回されるローラの偏心による印刷画像ムラを抑制防止することが可能なインクジェットプリンタを提供することを目的とするものである。
[発明1]上記課題を解決するために、発明1のインクジェットプリンタは、ローラに搬送ベルトを巻回し、その搬送ベルトで搬送される印刷媒体に対し、インクジェットヘッドからインク滴を吐出するインクジェットプリンタであって、前記ローラの偏心位相を同位相とするためのキャリブレーション手段と、前記ローラの回転数が予め設定された所定のキャリブレーション回転数になったら前記キャリブレーション手段により前記ローラの偏心位相を同位相とするキャリブレーション制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
本発明者等は、搬送ベルトが巻回されるローラの偏心による印刷画像ムラを抑制防止すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て本発明を開発した。即ち、ローラの偏心によって印刷画像にムラが発生するのは、ローラ間の距離が変化し、それに伴って搬送ベルトが伸縮するためである。ローラの偏心そのものは現実的に不可避であるが、ローラの偏心方向を同じ方向にする、つまりローラの偏心位相を同位相とすれば、ローラ間の距離は変化しないし、搬送ベルトも伸縮しない。一方、ローラの偏心位相を同位相としても、ローラが回転すればローラ加工精度に起因するローラ周長差の影響によって、位相差が発生する可能性は高い。これに対して、例えば印刷媒体を一枚印刷するために、ローラの偏心位相を同位相にするのは、例えばラインヘット型インクジェットプリンタのような高速印刷に適さない。そこで、例えば二つのローラ間の距離の最大変動量が設定値以下になるように所定のキャリブレーション回転数を設定し、各ローラの回転数が予め設定された所定のキャリブレーション回転数になったら二つのローラの偏心位相を同位相とすることにより、高速印刷と印刷画像ムラ防止を両立することができる。なお、本発明に言う回転数とは、言い換えれば回転回数のことであり、一般に認識されている回転速度ではない。
この発明1に係るインクジェットプリンタによれば、少なくとも二つのローラに搬送ベルトを巻回し、その搬送ベルトで搬送される印刷媒体に対し、インクジェットヘッドからインク滴を吐出するインクジェットプリンタにおいて、各ローラの回転数が予め設定された所定のキャリブレーション回転数になったらキャリブレーション手段により二つのローラの偏心位相を同位相とする構成としたため、高速印刷と印刷画像ムラ防止を両立することができる。
[発明2]また、発明2のインクジェットプリンタは、前記発明1のインクジェットプリンタにおいて、前記所定のキャリブレーション回転数は、前記ローラ間の距離の最大変動量が設定値以下になるように設定したものであることを特徴とするものである。
この発明2に係るインクジェットプリンタによれば、所定のキャリブレーション回転数を、ローラ間の距離の最大変動量が設定値以下になるように設定したことにより、印刷画像ムラを確実に防止することができる。
[発明3]また、発明3のインクジェットプリンタは、前記発明1又は2のインクジェットプリンタにおいて、前記ローラ夫々の基準となる位相を検出する基準位相検出手段を備え、前記キャリブレーション制御手段は、各ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相とが一致している場合、前記基準位相検出手段で検出された当該ローラの基準となる位相を予め設定された位相にすることで前記ローラの偏心位相を同位相とすることを特徴とするものである。
この発明3に係るインクジェットプリンタによれば、各ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相とが一致している場合、検出された当該ローラの基準となる位相を予め設定された位相にすることでローラの偏心位相を同位相とする構成としたため、ローラの偏心位相を確実に同位相とすることができる。
[発明4]また、発明4のインクジェットプリンタは、前記発明3のインクジェットプリンタにおいて、前記キャリブレーション制御手段は、各ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相とが一致していない場合、当該ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相との位相差を予め記憶し、前記基準位相検出手段で検出された当該ローラの基準となる位相を予め設定された位相にした後、当該ローラを前記位相差分だけ回転することで前記ローラの偏心位相を同位相とすることを特徴とするものである。
この発明4に係るインクジェットプリンタによれば、各ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相とが一致していない場合、当該ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相との位相差を予め記憶し、検出された当該ローラの基準となる位相を予め設定された位相にした後、当該ローラを前記位相差分だけ回転することでローラの偏心位相を同位相とする構成としたため、ローラの偏心位相を確実に同位相とすることができる。
[発明5]また、発明5のインクジェットプリンタは、前記発明4のインクジェットプリンタにおいて、前記ローラの何れかが駆動ローラである場合、前記キャリブレーション制御手段は、当該駆動ローラを回転駆動するステップモータのステップ数で前記位相差分の回転制御を行うことを特徴とするものである。
この発明5に係るインクジェットプリンタによれば、ローラの何れかが駆動ローラである場合、当該駆動ローラを回転駆動するステップモータのステップ数で位相差分の回転制御を行う構成としたため、駆動ローラの位相差分の回転制御を容易且つ確実に行うことができる。
[発明6]また、発明6のインクジェットプリンタは、前記発明4又は5のインクジェットプリンタにおいて、前記ローラの何れかが従動ローラである場合、前記キャリブレーション制御手段は、当該従動ローラに設けられたロータリエンコーダの入力パルス数で前記位相差分の回転制御を行うことを特徴とするものである。
この発明6に係るインクジェットプリンタによれば、ローラの何れかが従動ローラである場合、当該従動ローラに設けられたロータリエンコーダの入力パルス数で前記位相差分の回転制御を行う構成としたため、従動ローラの位相差分の回転制御を容易且つ確実に行うことができる。
[発明7]また、発明7のインクジェットプリンタは、前記発明1乃至6のインクジェットプリンタにおいて、前記ローラの位相を独立して調整するためのベルト張力解放手段を備えたことを特徴とするものである。
この発明7のインクジェットプリンタによれば、ローラの位相を独立して調整するためのベルト張力解放手段を備えたことにより、ローラの偏心位相を容易に同位相にすることができる。
[発明8]また、発明8のインクジェットプリンタは、前記発明1乃至7のインクジェットプリンタにおいて、前記ローラの何れかが従動ローラである場合、当該従動ローラの回転を規制する摩擦手段を備えたことを特徴とするものである。
この発明8のインクジェットプリンタによれば、ローラの何れかが従動ローラである場合、当該従動ローラの回転を規制する摩擦手段を備えたことにより、摩擦手段によって従動ローラの回転を規制している状態で、駆動ローラの位相を制御して、ローラの偏心位相を容易に同位相とすることができる。
次に、本発明のインクジェットプリンタの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成を示す正面図である。図1において、印刷媒体1は、図の右方から左方に向けて図の矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型インクジェットプリンタである。
図中の符号20は、印刷媒体1の搬送方向途中に設けられたインクジェットヘッドであり、インクジェットヘッド20の下方には印刷媒体1を搬送するための搬送部21が設けられている。搬送部21は搬送ベルト22で構成される。この搬送ベルト22は、印刷媒体搬送方向下流側に配設された駆動ローラ23及び印刷媒体搬送方向上流側に配設された従動ローラ24及びインクジェットヘッド20の下方に設けられたテンションローラ25に巻回され、張架されている。駆動ローラ23には、図2に示すように、駆動モータ32が接続されている。また、従動ローラ24には、当該従動ローラ24を固定軸33に固定したり解放したりするためのクラッチ(摩擦要素)11が取付けられている。また、テンションローラ25は、スプリング12によって図示下方に付勢されており、この付勢力で搬送ベルト22に張力(テンション)を付与している。そして、このスプリング12の図示下端部には、当該スプリング12によるテンションローラ25への付勢力、即ち搬送ベルト22への張力を付加・解放するためのソレノイド13が接続されており、このソレノイド13をONするとスプリング12によって搬送ベルト22に張力が付加され、ソレノイド13をOFFするとスプリング12による搬送ベルト22への張力が解放される。なお、印刷媒体搬送方向と交差する方向をノズル列方向ともいう。また、駆動モータ32は、所謂ステップモータであり、本実施形態ではパルス入力によるステップ数が1440で駆動ローラ23が一回転するように設定されている。
また、従動ローラ24の回転軸には、図2に示すように、当該従動ローラ24の回転状態を検出するためのロータリエンコーダディスク30が取付けられており、このロータリエンコーダディスク30の回転状態に合わせてエンコーダパルスを出力するロータリエンコーダセンサ31が、ロータリエンコーダディスク30の図示上方に配設されている。このロータリエンコーダディスク30には、図3に示すように、搬送ベルト22の移動量、即ち印刷媒体1の移動量に換算して、例えば720dpiのプリンタ解像度に相当するピッチ又はその整数分の一のピッチでスリットSが形成されており、例えばロータリエンコーダセンサ31で射出される光がスリットSを通過するたびにエンコーダパルスが出力される。従って、このプリンタ解像度又はその整数分の一に相当する周期のエンコーダパルスに合わせて(周期が解像度の整数分の一の場合は、その整数パルス数毎に)インクジェットヘッド20からインク滴を吐出すれば、所望する解像度で印刷を行うことができる。
また、駆動ローラ23及び従動ローラ24の図1の図示上方には、当該駆動ローラ23及び従動ローラ24自身の基準となる位相を検出するための基準位相検出センサ9,10が夫々配設されている。この基準位相検出センサ9,10は、図4に示すように、駆動ローラ23及び従動ローラ24の外周面の一部に設けられた反射パターンPに光を照射し、その反射光を検出して、当該ローラ23,24の基準位相を検出するものであり、これらのローラ23,24が一定速度で回転している場合には、例えば図5に示すように、反射パターンPからの反射光を検出している間、基準位相パルスを出力する(図では下向き)。従って、この基準位相パルスを検出すれば、駆動ローラ23及び従動ローラ24が基準とする位相、つまり反射パターンPが上方に位置する位相にあることが分かる。
インクジェットヘッド20は、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の各色毎に、印雑媒体1の搬送方向にずらして配設されている。各インクジェットヘッド20には、図示しない各色のインクタンクからインク供給チューブ26を介してインクが供給される。各インクジェットヘッド20には、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向に、複数のノズルが形成されており(即ちノズル列方向)、それらのノズルから同時に必要箇所に必要量のインク滴を吐出することにより、印刷媒体1上に微小なインクドットを形成出力する。これを各色毎に行うことにより、搬送部21で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、所謂ワンパスによる印刷を行うことができる。即ち、これらのインクジェットヘッド20の配設領域が印刷領域に相当する。
インクジェットヘッドの各ノズルからインクを吐出出力する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰インクジェット方式などがある。静電方式は、アクチュエータである静電ギャップに駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。ピエゾ方式は、アクチュエータであるピエゾ素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。膜沸騰インクジェット方式は、キャビティ内に微小ヒータがあり、瞬間的に300℃以上に加熱されてインクが膜沸騰状態となって気泡が生成し、その圧力変化によってインク滴がノズルから吐出出力されるというものである。
駆動ローラ23の上流側には、給紙部15から供給される印刷媒体1の給紙タイミングを調整すると共に当該印刷媒体1のスキューを補正する、二個一対のゲートローラ14が設けられている。スキューとは、搬送方向に対する印刷媒体1の捻れである。また、給紙部15の上方には、印刷媒体1を供給するためのピックアップローラ16が設けられている。また、従動ローラ24の印刷媒体搬送方向下流側には排紙部17が設けられている。
駆動ローラ23の下方にはベルト帯電装置19が配設されている。このベルト帯電装置19は、駆動ローラ23を挟んで搬送ベルト22に当接する帯電ローラ27と、帯電ローラ27を搬送ベルト22に押し付けるスプリング28と、帯電ローラ27に電荷を付与する電源29とで構成されており、帯電ローラ27から搬送ベルト22に電荷を付与してそれを帯電する。一般に、これらのベルト類は、中・高抵抗体又は絶縁体で構成されているので、ベルト帯電装置19によって帯電すると、その表面に印加された電荷が、同じく高抵抗体又は絶縁体で構成される印刷媒体1に誘電分極を生じせしめ、その誘電分極によって発生する電荷とベルト表面の電荷との間に生じる静電気力でベルトに印刷媒体1を吸着することができる。なお、帯電手段としては、所謂電荷を降らせるコロトロンなどでもよい。
従って、このインクジェットプリンタによれば、ベルト帯電装置19で搬送ベルト22の表面を帯電し、その状態でゲートローラ14から印刷媒体1を給紙し、図示しない拍車やローラで構成される紙押えローラで印刷媒体1を搬送ベルト22に押し付けると、前述した誘電分極の作用によって印刷媒体1は搬送ベルト22の表面に吸着される。この状態で、駆動モータ32によって駆動ローラ23を回転駆動すると、その回転駆動力が搬送ベルト22を介して従動ローラ24に伝達される。
このようにして印刷媒体1を吸着した状態で搬送ベルト22を搬送方向下流側に移動して印刷媒体1をインクジェットヘッド20の下方に移動し、当該インクジェットヘッド20に形成されているノズルからインク滴を吐出して印刷を行う。このインクジェットヘッド20による印刷が終了したら、印刷媒体1を搬送方向下流側に移動して排紙部17に排紙する。
前記インクジェットプリンタ内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものであり、例えば前記ロータリエンコーダセンサからのエンコーダパルスに基づいて、この制御装置から印刷基準信号が供給されたとき(厳密には、その後に駆動パルスが印加されたとき)にインクジェットヘッド20のノズルからインク滴が吐出される。なお、この制御装置は、独自のコンピュータシステムによって構成されている。
本実施形態のインクジェットプリンタでは、この制御装置によって、駆動ローラ23及び従動ローラ24の偏心位相を同位相とする。ローラの偏心位相を同位相とすると言うことは、二つのローラの偏心方向を同じ方向にするということである。図6は、駆動ローラ23の偏心位相と従動ローラ24の偏心位相とが180°ずれている場合を示しており、同図から明らかなように、駆動ローラ23と従動ローラ24が回転するにつれて両者の距離LがL’、L”と変化してしまう。ローラ間距離が変化すれば、当然、搬送ベルト22に伸縮が生じ、それがインクジェットヘッド20のノズルから吐出されるインク滴の着弾位置ずれの原因となり、前述したように印刷画像にムラが生じる。図7は、駆動ローラ23の偏心量、従動ローラ24の偏心量、ローラ間距離をエンコーダパルス数でトレースしたものである。本実施形態では、従動ローラ24が一回転する間に、1440のエンコーダパルスが出力される(即ち、駆動モータ32のステップ数と同じ)。
駆動ローラ23の偏心方向、従動ローラ24の偏心方向は、夫々の偏心量を検出することで求められる。図8aは、駆動ローラ23の偏心量をレーザ変位計で検出している状態を示し、図8bは、従動ローラ24の偏心量をレーザ変位計で検出している状態を示す。駆動ローラ23の偏心量は、駆動ローラ23によって搬送ベルト22を引き回す点とし、駆動ローラ用基準位相検出センサ9からの基準位相パルスを基準として、駆動モータ32のモータステップ数とリンクして検出、記憶する。一方、従動ローラ24の偏心量は、搬送ベルト22によって従動ローラ24が引き回される点とし、従動ローラ用基準位相検出センサ10からの基準位相パルスを基準として、ロータリエンコーダセンサ31からのエンコーダパルス数とリンクして検出、記憶する。駆動ローラ23及び従動ローラ24の偏心量の検出、即ち偏心方向の検出は、例えば製品の出荷前に行ったり、或いは定期的に行ったりすればよい。
図9aには、駆動ローラ23の偏心量検出結果の一例を示す。この検出結果は、駆動ローラ用基準位置検出センサ9からの基準位相パルスで駆動モータ32のモータステップ数をリセットし、そこから駆動ローラ23を二回転させ、モータステップ数と偏心量との関係をリンクさせて検出、記憶したものである。また、図9bには、従動ローラ24の偏心量検出結果の一例を示す。この検出結果は、従動ローラ用基準位置検出センサ10からの基準位相パルスでロータリエンコーダセンサ31からものエンコーダパルス数をリセットし、そこから従動ローラ24を二回転させ、エンコーダパルス数と偏心量との関係をリンクさせて検出、記憶したものである。何れにも、基準位相信号後、偏心量がピークとなる位相を偏心方向、即ち偏心位相として縦線で示した。この例は、例えば図10に示すように、偏心位相と基準位置信号、即ち前記反射パターンPとがずれている。当然ではあるが、駆動ローラ23も従動ローラ24も、一回転する毎に、偏心量が復元する。
従って、駆動ローラ23については、駆動ローラ用基準位置信号を検出してから偏心位相までのステップ数分、駆動モータ32によって駆動ローラ23を回転すれば、駆動ローラ23の偏心位相を駆動ローラ用基準位相検出センサ9の位置とすることができ、従動ローラ24については、従動ローラ用基準位置信号を検出してから偏心位相までのエンコーダパルス数分、駆動モータ32、駆動ローラ23、搬送ベルト22によって従動ローラ24を回転すれば、従動ローラ24の偏心位相を従動ローラ用基準位相検出センサ10の位置とすることができ、両者により駆動ローラ23の偏心位相と従動ローラ24の偏心位相とを同位相とすることができる。但し、現実的には、従動ローラ24の偏心位相合わせを先に行い、その従動ローラ24をクラッチ11で固定軸33に固定した後、ソレノイド13をOFFして搬送ベルト22の張力を解放し、然る後、駆動ローラ23の偏心位相合わせを行わなければならない。
駆動ローラ23と従動ローラ24の偏心位相の同位相化は、前述のように、搬送ベルト22の伸縮を防止し、もって印刷画像のムラを防止する方法として有効ではある。一方、一旦、駆動ローラ23と従動ローラ24の偏心位相を同位相化しても、両者の周長が一致していない限り、それらのローラ23,24を回転すればするほど、両者の偏心位相はずれてしまう。しかしながら、例えば印刷媒体1を一枚印刷するたびに、前述のような偏心位相の同位相化を行ったのでは、本実施形態のラインヘッド型インクジェットプリンタに要求される高速印刷に応えることができない。そこで、本実施形態では、駆動ローラ23及び従動ローラ24の回転の度に累積されるローラ間距離の変動量の最大値が設定値以下になる回転数(回転回数)を設定し、両者の回転数が所定回転数になったら偏心位相の同位相化、即ちキャリブレーションを行うこととした。
ここで、駆動ローラ23の偏心量d1は、駆動ローラ23の偏心振幅H1、駆動ローラ23の一回転に相当する駆動モータ32の総ステップ数T1(=1440)、駆動ローラ用基準位相信号からの駆動モータ32のステップ数t1を用いて下記1式で表れる。
1=H1×cos(2π×t1/T1) ……… (1)
同様に、従動ローラ24の偏心量d2は、従動ローラ24の偏心振幅H2、従動ローラ24の一回転に出力される総ロータリエンコーダパルス数T2(=1440)、従動ローラ用基準位相信号からのロータリエンコーダパルス数t2を用いて下記2式で表れる。
2=H2×cos(2π×t2/T2) ……… (2)
前述したローラ間距離dは、この駆動ローラ23の偏心量d1と従動ローラ24の偏心量d2の合成関数であるが、実際には両者の位相差Φを考慮しなければならない。この位相差Φは、駆動ローラ23と従動ローラ24の周長差に相当する回転角度差φの回転数累積値である。これを用いて、前記2式を下記3式のように変換し、1式の駆動ローラ23の偏心量d1との和で表れるローラ間距離dの変動量Δdを求め、その最大値が設定値Δd0以下になるように所定キャリブレーション回転数nについて解く。
Figure 0004265655
駆動ローラ23と従動ローラ24の周長差に相当する回転角度差φは、以下のようにして得られる。本実施形態では、従動ローラ24が一回転する間にロータリエンコーダパルスが1440出力される。例えば、駆動モータ32へのステップ数を制御することにより駆動ローラ23を正確に十回転させたときのロータリエンコーダパルス数が14390であったとすると、本来得られるはずのロータリエンコーダパルス数より10パルス少ない。即ち、駆動ローラ23の一回転に対し、従動ローラ24はロータリエンコーダパルス数にして1パルス分だけ回転数が少ないことになるから、周長差に相当する回転角度差φは、−360°/1440=−0.25° となる。なお、例えばキャリブレーション後の駆動ローラ23及び従動ローラ24のローラ間距離dを連続して測定した結果、例えば両者の位相が60°ずれたときにローラ間距離dが設定値d0を超えることが分かっているような場合には、この位相差Φ=60°を周長差に相当する回転角度差φ=0.25°で除した値、つまり240回転を所定キャリブレーション回転数nとしてもよい。
図11には、以上の原理に基づくローラ偏心位相キャリブレーションのための演算処理のフローチャートを示す。この演算処理は、印刷指令にともなって行われる。この演算処理では、まずステップS1で、ローラ回転数メモリを更新する。
次にステップS2に移行して、更新されたローラ回転数メモリのローラ回転数が所定キャリブレーション回転数に達したか否かを判定し、ローラ回転数が所定キャリブレーション回転数に達した場合にはステップS3に移行し、そうでない場合にはステップS7に移行する。
ステップS3では、印刷動作中であるか否かを判定し、印刷動作中である場合にはステップS4に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
ステップS4では、印刷中の印刷媒体への印刷動作が終了したら印刷動作を中断してからステップS5に移行する。
ステップS5では、ローラ回転数メモリをクリアしてからステップS6に移行する。
ステップS6では、後述する図12の演算処理によりローラ偏心位相キャリブレーションを行ってからステップS7に移行する。
ステップS7では、指令された全印刷枚数の印刷が終了したか否かを判定し、全印刷枚数の印刷が終了した場合にはメインプログラムに復帰し、そうでない場合にはステップS8に移行する。
ステップS8では、図示しない個別の演算処理によって印刷処理を行ってからステップS2に移行する。
次に、図11の演算処理のステップS6で行われる図12の演算処理について説明する。この演算処理では、まずステップS11で、駆動モータ32を回転する。
次にステップS12に移行して、従動ローラ用基準位相信号が検出されたか否かを判定し、従動ローラ用基準位相信号が検出された場合にはステップS13に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS13では、前述した従動ローラ24の偏心位相を調整する分のエンコーダパルス数が検出されるまで駆動モータ32を回転する。
次にステップS14に移行して、駆動モータ32を停止する。
次にステップS15に移行して、クラッチ11を締結することにより従動ローラ24を固定軸33に固定する。
次にステップS16に移行して、張力(図ではテンション)付加用のソレノイド13をOFFして搬送ベルト22の張力を解放する。
次にステップS17に移行して、駆動モータ32を回転する。
次にステップS18に移行して、駆動ローラ用基準位相信号が検出されたか否かを判定し、駆動ローラ用基準位相信号が検出された場合にはステップS19に移行し、そうでない場合にはステップS17に移行する。
ステップS19では、駆動モータ32を停止する。
次にステップS20に移行して、前述した駆動ローラ23の偏心位相を調整する分のステップ数だけ駆動モータ32を回転する。
次にステップS21に移行して、張力(図ではテンション)付加用のソレノイド13をONして搬送ベルト22に張力を付加する。
次にステップS22に移行して、クラッチ11を解放することにより従動ローラ24を固定軸33から解放してからメインプログラムに復帰する。
これらの演算処理によれば、印刷指令の度にローラ回転数メモリを更新し、ローラ回転数メモリが所定キャリブレーション回転数に達したらローラ偏心位相のキャリブレーションを行う。ローラ偏心位相のキャリブレーションでは、まず従動ローラ基準信号を検出し、そこから従動ローラ偏心位相調整分のエンコーダパルス数が検出されるまで駆動モータ32を回転することで、従動ローラ24の偏心位相をキャリブレーションする。この従動ローラ24の偏心位相のキャリブレーションが終了したら、クラッチ11を締結して従動ローラ24を固定軸33に固定すると共に、ソレノイド13をOFFして搬送ベルト22の張力を解放し、従動ローラ24を搬送ベルト22や駆動ローラ23から切り離す。従動ローラ24の切り離しが終了したら、駆動ローラ基準信号を検出し、そこから駆動ローラ偏心位相調整分のステップ数だけ駆動モータ32を回転することで、駆動ローラ23の偏心位相をキャリブレーションする。駆動ローラの23の偏心位相のキャリブレーションが終了したら、ソレノイド13をONして搬送ベルト22に張力を付加し、次いでクラッチ11を解放して従動ローラ24を解放する。
以上は、駆動ローラ23及び従動ローラ24の偏心位相と基準位置信号、即ち前記反射パターンPとがずれている場合の偏心位相キャリブレーションであるが、図13に示すように、駆動ローラ23及び従動ローラ24の偏心位相と基準位置信号、即ち前記反射パターンPとがずれていない場合もある。そのような場合には、図12の演算処理に代えて、図14の演算処理を行う。この図14の演算処理は、図12の演算処理のステップS13及びステップS20を削除したものであり、具体的には従動ローラ用基準位相信号を検出した時点で駆動モータ32を停止し、次いで従動ローラ24を搬送ベルト22や駆動ローラ23から切り離し、その状態で駆動ローラ用基準位相信号を検出し、当該駆動ローラ用基準位相信号が検出された時点で駆動モータ32を停止し、その状態で従動ローラ24を搬送ベルト22や駆動ローラ23に接続する。
このように、本実施形態のインクジェットプリンタによれば、駆動ローラ23及び従動ローラ24に搬送ベルト22を巻回し、その搬送ベルト22で搬送される印刷媒体1に対し、インクジェットヘッド20からインク滴を吐出するインクジェットプリンタにおいて、各ローラ23,24の回転数が予め設定された所定キャリブレーション回転数になったら駆動ローラ23及び従動ローラ24の偏心位相を同位相とすることとしたため、高速印刷と印刷画像ムラ防止を両立することができる。
また、所定キャリブレーション回転数を、駆動ローラ23及び従動ローラ24のローラ間距離dの変動量Δdの最大値が設定値Δd0以下になるように設定したことにより、印刷画像ムラを確実に防止することができる。
また、各ローラ23,24の基準となる位相(基準位相)と当該ローラ23,24の偏心方向に相当する位相(偏心位相)とが一致している場合、検出された当該ローラ23,24の基準となる位相(基準位相)を予め設定された位相にすることで二つのローラ23,24の偏心位相を同位相とすることとしたため、二つのローラ23,24の偏心位相を確実に同位相とすることができる。
また、各ローラ23,24の基準となる位相(基準位相)と当該ローラ23,24の偏心方向に相当する位相(偏心位相)とが一致していない場合、当該ローラ23,24の基準となる位相(基準位相)と当該ローラ23,24の偏心方向に相当する位相(偏心位相)との位相差を予め記憶し、検出された当該ローラ23,24の基準となる位相(基準位相)を予め設定された位相にした後、当該ローラ23,24を前記位相差分だけ回転することで二つのローラ23,24の偏心位相を同位相とすることとしたため、二つのローラの偏心位相を確実に同位相とすることができる。
また、駆動ローラ23を回転駆動するステップモータ(駆動モータ)32のステップ数で位相差分の回転制御を行うこととしたため、駆動ローラ23の位相差分の回転制御を容易且つ確実に行うことができる。
また、従動ローラ24に設けられたロータリエンコーダの入力パルス数で位相差分の回転制御を行うこととしたため、従動ローラ24の位相差分の回転制御を容易且つ確実に行うことができる。
また、二つのローラ23,24の位相を独立して調整するためのソレノイド13(ベルト張力解放手段)を備えたことにより、二つのローラ23,24の偏心位相を容易に同位相にすることができる。
また、従動ローラ24の回転を規制するクラッチ11(摩擦手段)を備えたことにより、クラッチ11(摩擦手段)によって従動ローラ24の回転を規制している状態で、駆動ローラ23の位相を制御して、二つのローラ23,24の偏心位相を容易に同位相とすることができる。
なお、本発明のインクジェットプリンタは、少なくとも二つのロールに搬送ベルトを巻回して印刷媒体を搬送し、その搬送される印刷媒体にインクジェットプリンタからインク滴を吐出するあらゆるタイプのインクジェットプリンタに適用可能である。
本発明のインクジェットプリンタの第1実施形態を示す正面図である。 図1のインクジェットプリンタの平面図である。 図1の従動ローラに取付けられたロータリエンコーダの詳細図である。 図1の駆動ローラ及び従動ローラに設けられた基準位相検出センサの詳細図である。 図4の基準位相検出センサからの基準位相信号の説明図である。 駆動ローラ及び従動ローラの偏心位相の違いによるローラ間距離変動の説明図である。 駆動ローラ偏心量及び従動ローラ偏心量とローラ間距離変動の関係を示す説明図である。 駆動ローラ偏心量及び従動ローラ偏心量検出方法の説明図である。 図8の検出方法により検出された駆動ローラ偏心量及び従動ローラ偏心量の説明図である。 駆動ローラ及び従動ローラの偏心位相と基準位相信号とがずれている場合の説明図である。 駆動ローラ及び従動ローラの偏心位相の同位相化のための演算処理を示すフローチャートである。 図11の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。 駆動ローラ及び従動ローラの偏心位相と基準位相信号とがずれていない場合の説明図である。 図11の演算処理で行われるサブルーチンのフローチャートである。
符号の説明
1は印刷媒体、9は駆動ローラ用基準位相検出センサ、10は従動ローラ用基準位相検出センサ、11はクラッチ(摩擦要素)、12はスプリング、13はソレノイド(ベルト張力解放手段)、20はインクジェットヘッド、21は搬送部、22は搬送ベルト、23は駆動ローラ、24は従動ローラ、30はロータリエンコーダディスク、31はロータリエンコーダセンサ、32は駆動モータ、33は固定軸

Claims (3)

  1. ローラに搬送ベルトを巻回し、その搬送ベルトで搬送される印刷媒体に対し、インクジェットヘッドからインク滴を吐出するインクジェットプリンタであって、前記ローラの偏心位相を同位相とするためのキャリブレーション手段と、前記ローラの回転数が予め設定された所定のキャリブレーション回転数になったら前記キャリブレーション手段により前記ローラの偏心位相を同位相とするキャリブレーション制御手段と、前記ローラ夫々の基準となる位相を検出する基準位相検出手段とを備え、前記キャリブレーション制御手段は、各ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相とが一致している場合、前記基準位相検出手段で検出された当該ローラの基準となる位相を予め設定された位相にすることで前記ローラの偏心位相を同位相とし、各ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相とが一致していない場合、当該ローラの基準となる位相と当該ローラの偏心方向に相当する位相との位相差を予め記憶し、前記基準位相検出手段で検出された当該ローラの基準となる位相を予め設定された位相にした後、当該ローラを前記位相差分だけ回転することで前記ローラの偏心位相を同位相とすることを特徴とするインクジェットプリンタ。
  2. 前記ローラの何れかが駆動ローラである場合、前記キャリブレーション制御手段は、当該駆動ローラを回転駆動するステップモータのステップ数で前記位相差分の回転制御を行うことを特徴とする請求項に記載のインクジェットプリンタ。
  3. 前記ローラの何れかが従動ローラである場合、前記キャリブレーション制御手段は、当該従動ローラに設けられたロータリエンコーダの入力パルス数で前記位相差分の回転制御を行うことを特徴とする請求項又はに記載のインクジェットプリンタ。
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