JP4262814B2 - 押出ダイス装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば複数のフィン部を有するAl製押出形材などの製造に好適に用いられる押出ダイス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の押出ダイス装置として、図6〜図8に示すように、ダイス(101)と、このダイス(101)の下流側の面(後面)に、上流側の面(前面)が当接・配置されたバッカー(102)とを備えたものが知られている。このダイス装置により、たとえば図4に示すようなフィン部(Ma)を有する押出形材(M)を成形する場合、ダイス(101)には、図6に示すように、正面形状が押出形材(M)と同形状の成形間隙(103)が形成されたダイス(101)が用いられる。上記この成形間隙(103)の形成によって、ダイス(101)には、成形間隙(103)で囲まれた略矩形状に突出するトング部(104)が形成された状態となっている。
【0003】
なお、バッカー(102)には、上記ダイス(101)の成形間隙(103)よりも大きい間隙からなる押出材通過孔(105)が形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなダイス装置により、Alビレットなどの成形材料を押出成形する際、上記トング部(104)に対して成形材料の押出圧力が作用する。
【0005】
しかるに、上記トング部(104)は、ダイス(101)の基部に対して片持ち状態で支持されているので、上記押出圧力を受けると、先端側がぐらつきやすく、このため、トング部(104)が図9の鎖線で示すように、幅方向(押出方向と直交する方向)へ変形したり、トング部(104)の付け根(基端側)付近で亀裂(C)などが発生することがあった。
【0006】
上記トング部(104)が幅方向に変形すると、ダイス(101)の成形間隙(103)の拡大や縮小を招き、押出形材(M)はフィン部(Ma)が変形した不良品となり、歩留りが著しく低下することになる。上記トング部(104)の付け根付近で亀裂(C)が発生すると、成形の繰り返しにより、トング部(104)の破損を招くことになる。
【0007】
この発明は、上記課題を解消するためになされたもので、成形材料の押出圧力でダイスのトング部が変形するのを防止でき、製造歩留りの向上が図れ、さらに、トング部の破損なども未然に防止できる押出ダイス装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、成形間隙で囲まれた突状のトング部を有するダイスと、このダイスの下流側に当接・配置されたバッカーとを備えた押出ダイス装置において、上記トング部の下流側の面と上記バッカーの上流側の面に、トング部の幅方向の変形を阻止する状態に係合する係合凹凸部が形成されていることを特徴とする押出ダイス装置によって解決される。
【0009】
この押出ダイス装置によれば、成形時に、上記トング部に対して成形材料の押出圧力が作用しても、トング部の下流側の面と上記バッカーの上流側の面とが、互いに係合凹凸部によりトング部の幅方向の変形阻止状態に係合しているので、トング部のぐらつきは、少なくとも幅方向で抑制される。このため、トング部の同方向への変形が確実に防止され、所望形状の押出形材を得ることができる。しかも、上記トング部の変形が幅方向で抑制されるので、該トング部の付け根付近にクラックなどが発生するのが防止される。
【0010】
また、上記課題は、成形間隙で囲まれた突状のトング部を有するダイスと、このダイスの下流側に当接・配置されたバッカーとを備えた押出ダイス装置において、上記バッカーの上流側の面に、上記トング部の先端部を上流側へ押圧する突出部が形成されていることを特徴とする押出ダイス装置によっても解決される。
【0011】
この押出ダイス装置によれば、成形時に、上記トング部に対して成形材料の押出力が作用して、該トング部が下流側に変形しようとしても、上記突出部による押出力に抗する反力によって、上記変形が抑制され、該トング部の付け根付近にクラックなどが発生するのが防止される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施態様に係る押出ダイス装置を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、この発明の一実施態様に係る押出ダイス装置を示す平面図、図2は、図1のII−II線に沿った平面断面図、図3は、図1のIII−III線に沿った縦断面図である。
【0014】
図1〜図3に示す押出ダイス装置(A)は、たとえば図4に示すような2本のフィン部(Ma),(Ma)が基部(Mb)に並設された押出形材(M)を製造するためのものである。
【0015】
上記押出ダイス装置(A)は、円形のダイス(1)と同径円形のバッカー(2)とから構成されており、ダイス(1)の下流側の面(1a)に、バッカー(2)の上流側の面(2a)が当接・配置されている。
【0016】
上記ダイス(1)には、図1に示すように、正面形状が押出形材(M)と同形状の成形間隙(3)が押出方向(図3のY方向)において貫通して形成されている。具体的には、この成形間隙(3)は、正面形状において、上記押出形材(M)の両フィン部(Ma),(Ma)に対応するフィン部形成用間隙部(3a),(3a)と,押出形材(M)の基部(Mb)に対応する基部形成用間隙部(3b)とからなる。上記成形間隙(3)の形成によって、ダイス(1)には、3辺を成形間隙で囲まれるとともに片持ち状態で支持された略矩形状のトング部(4)が突出形成されている。
【0017】
さらに、トング部(4)の下流側の面(1a)には、図2に示すように、下流側、つまりバッカー(2)側へ向かって突出する横断面が逆V字形の係合凸部(5)がトング部(4)の長さ方向に形成されている。
【0018】
一方、上記バッカー(2)には、上記ダイス(1)の成形間隙(3)に対応する位置に、該成形間隙(3)よりも大きく、かつ同形状の間隙からなる押出材通過孔(6)が押出方向において貫通して形成されている。上記押出材通過孔(6)の形成によって、バッカー(2)にも、片持ち状態で支持された略矩形状のトング部(7)が形成されている。
【0019】
上記ダイス(1)におけるトング部(4)の係合凸部(5)に対応して、バッカー(2)のトング部(7)の上流側の面(2a)には、図2に示すように、横断面がV字形で上記ダイス(1)側の係合凸部(5)に対して、トング部(4)の幅方向(図1,図2の矢印X方向)で係合する係合凹部(8)がトング部(7)の長さ方向に形成されている。
【0020】
さらに、上記バッカー(2)のトング部(7)の上流側の面(2a)には、ダイス(1)のトング部(4)の先端部位(4a)を上流側へ押圧する突出部(9)が一体形成されている。この突出部(9)の押圧面(9a)は、上記トング部(4)の付け根(4b)側から先端側に至るにつれて上流側への突出高さが漸次増大するテーパ面で構成されている。
【0021】
上記構成の押出形材のダイス装置(A)において、押出成形に際しては、加熱されたAlビレットなどの成形材料(図示せず)は、押出圧力によりダイス(1)の成形間隙(3)に押し込まれ、この成形間隙(3)を通過しながら所定形状に成形されたのち、バッカー(2)の押出材通過孔(6)から押し出される。これにより、図4に示す押出形材(M)が製作される。
【0022】
上記成形材料がダイス(1)の成形間隙(3)に流入する際、ダイス(1)のトング部(4)には成形材料の押出圧力が作用する。この押出圧力によって、トング部(4)がぐらついて幅方向へ偏位しようとしても、上記ダイス(1)側の係合凸部(5)に対してバッカー(2)の係合凹部(8)が上記幅方向で係合して密着し合う。このため、上記ダイス(1)のトング部(4)が幅方向に変形するのが抑制され、したがって、ダイス(1)の成形間隙(3)の形状が適正に保持され、偏肉のない所定形状の押出形材(M)を得ることができる。しかも、トング部(4)の幅方向の変形が抑制されるので、繰り返し使用によって、トング部(4)の付け根に亀裂などが発生することもない。
【0023】
また、上記ダイス(1)のトング部(4)に対して、成形材料の押出圧力が付勢され、この押出圧力でトング部(4)が下流側へ変形しようとしても、バッカー(2)の上流側の面(2a)に形成されている突出部(9)がトング部(4)を介して対して押出圧力を受け、その反力が上記トング部(4)に作用する。このため、上記トング部(4)の下流側への変形が抑制され、トング部(4)の付け根付近にクラックなどが発生するのが一層確実に防止でき、ダイス(1)の耐久性を高めることができる。
【0024】
なお、上記突出部(9)の押圧面(9a)を上述のようにテーパ面で構成してあるので、上記トング部(4)に対する押圧反力が該トング部(4)の長さ方向で均等的になり、トング部(4)に対する変形抑制作用が無理なく行われることになる。
【0025】
上記トング部(4)に対する幅方向の変形防止策および押出方向の変形防止策を講じることにより、図5に示すように、フィン部(Ma)各間の幅寸法に対してフィン部(Ma)の長さ寸法がかなり大きく、かつフィン部(Ma)の数が多数存在する押出形材(M)の成形においても、ダイス(1)のトング部(4)の長さ寸法がかなり大きくなるのにかかわらず、該トング部(4)の異常変形などが起きることなく、適正形状の押出形材(M)を得ることができる。
【0026】
なお、上記実施形態では、トング部(4)の幅方向の変形を阻止する係合凹凸部(5)(6)と、トング部(4)の下流側への変形を阻止するバッカー(2)の突出部(9)とを併せて有する押出ダイス装置を示したが、いずれか一方のみを備えていればよい。
【0027】
また、ダイス(1)側に係合凸部(5)を形成し、バッカー(2)側に係合凹部(8)を形成したもので説明したが、係合凸部(5)と係合凹部(8)とを逆に設けてもよい。
【0028】
さらに、これら係合凸部(5)および係合凹部(8)の形状についても、上記のものに限定されるものではなく、たとえば、孔とピンで構成するなど、トング部(4)の幅方向の変形阻止状態に係合するものであればよい。
【0029】
また、上記バッカー(2)の突出部(9)についても、上記実施形態のものに限らず、形状などを任意に変更可能である。
【0030】
勿論、上述のように、互いに並設されるフィン部(Ma)・・・を有する押出形材(M)の成形に限らず、ダイス(1)にトング部(4)が存在するような形状であれば、他の形状の押出形材(M)の成形にも適用可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、ダイスのトング部の下流側の面と上記バッカーの上流側の面に、トング部の幅方向の変形を阻止する状態に係合する係合凹凸部が形成されているので、成形材料の押出力でトング部が幅方向へ変形しようとするのを、上記係合凹凸部により抑制することができ、この結果、成形間隙の拡縮を防止し得て適正な成形間隙を確保でき、所望形状の押出形材を得ることができるうえ、トング部の付け根にクラックなどが発生するのも防止することができる。
【0032】
また、請求項2の発明によれば、バッカーの上流側の面に、トング部の先端部を上流側へ押圧する突出部が形成されているので、成形材料の押出圧力でトング部が下流側へ変形しようとしても、上記突出部の押圧反力によって上記変形を抑制することができ、トング部の付け根にクラックなどが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る押出ダイス装置を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った平面断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った側面断面図である。
【図4】この発明の一実施形態に係る押出ダイス装置で得られる押出形材を示す正面図である。
【図5】同じく押出形材の別の例を示す正面図である。
【図6】従来の押出ダイス装置を示す正面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った平面断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った側面断面図である。
【図9】従来の押出ダイス装置におけるダイスのトング部の変形状態の説明図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・ダイス
1a・・・・・・ダイスの下流側の面
2・・・・・・・バッカー
2a・・・・・・バッカーの上流側の面
3・・・・・・・成形間隙
4・・・・・・・トング部
4a・・・・・・トング部の先端部位
5・・・・・・・係合凸部
8・・・・・・・係合凹部
9・・・・・・・突出部
X・・・・・・・トング部幅方向
Claims (3)
- 成形間隙で囲まれた突状のトング部を有するダイスと、このダイスの下流側に当接・配置されたバッカーとを備えた押出ダイス装置において、
上記トング部の下流側の面と上記バッカーの上流側の面に、トング部の幅方向の変形を阻止する状態に係合する係合凹凸部が形成されていることを特徴とする押出ダイス装置。 - 成形間隙で囲まれた突状のトング部を有するダイスと、このダイスの下流側に当接・配置されたバッカーとを備えた押出ダイス装置において、
上記バッカーの上流側の面に、上記トング部の先端部を上流側へ押圧する突出部が形成されていることを特徴とする押出ダイス装置。 - バッカーの上流側に当接・配置されるダイスであって、成形間隙で囲まれた突状のトング部を有し、上記トング部の下流側の面に、トング部の幅方向の変形を阻止する状態に、上記バッカーの上流側の面に設けられた凸部または凹部と係合する係合凹部または凸部が形成されていることを特徴するダイス。
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