JP4260969B2 - 構造体の吊り部構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柱、建物構造体、ユニット建物を構成する建物ユニット等の構造体の吊り部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の構造体の吊り部構造は、下方より内径の小なる掛かり代が設けられた構造体上面の吊り孔に、吊り治具のチャックを挿入し、吊り孔の中で強制的に広げるものではなく、吊り孔の内側に引っ掛ける方式が取られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構造体の吊り部構造では、チャックを吊り孔の中で強制的に広げるものではないので、チャックが外れないように吊り孔の掛かり代を大きくする必要がある。すると、必然的に吊り孔が小さくなり、チャックも小型化しなければならないので、チャック強度が不足するという問題が生じる。
また、吊り上げ荷重がかからないときにはチャックが外れてしまうので、引っ掛かりが不安定であるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであって、吊り孔の掛かり代が小さくてもチャックが外れることなく、チャックの引っ掛りが安定した構造体の吊り部構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、下方より内径の小なる掛かり代が設けられた構造体上面の吊り孔に、ワイヤー等の吊り具が取り付けられる吊り治具が設けられた構造体の吊り部構造であって、上記吊り治具が、治具本体と、治具本体の下方に設けられ前記吊り孔に挿入されて前記掛かり代に着脱自在に係止される一対のチャックと、吊り上げ荷重の負荷有無にかかわらず、掛かり代から外れることなく係止状態でチャックを保持する掛け保持手段とを備えてなり、前記掛け保持手段が、治具本体とそれぞれのチャックの間に回動自在に取り付けられた一組のリンク機構と、構造体上面に設置される架台と、一方のリンク機構の外側に設けられ架台に回動自在に取り付けられたカム付き安全レバーと、他方のリンク機構の外側に設けられ架台に螺設された安全用ネジ軸とからなり、安全レバーを回動すると、カムが一方のリンク機構に非当接状態から当接状態に移行可能になされ、安全用ネジ軸の先端がネジを締めると他方のリンク機構に当接可能になされていることを特徴としている。
【0006】
請求項1記載の発明において、構造体としては、特に限定されるものではないが、建物の場合、柱、壁パネル、屋根パネル、ユニット建物を構成する建物ユニット、屋根ユニット、バルコニーユニット、玄関ポーチ等が挙げられる。
【0008】
請求項記載の発明において、リンク機構とは相接触して相対運動を行う複数個のリンク(接)からなる運動系であって、これらリンクの組み合わせを対偶(ペア)といい、各リンクのそれぞれの接触部分を対偶素といっている。リンク機構としては、二つのリンクからなる2接対偶のリンク機構がより好ましい。
【0011】
(作用)
請求項1記載の本発明によれば、吊り治具が、治具本体下方に設けられ前記吊り孔に挿入されて前記掛かり代に着脱自在に係止される一対のチャックを備えているので、この吊り治具をワイヤー等の吊り具で吊るしながら、チャックを吊り孔に挿入すれば、掛かり代に係止することができ、取付が容易である。
そして、上記吊り治具が、吊り上げ荷重の負荷有無にかかわらず、掛かり代から外れることなく係止状態でチャックを保持する掛け保持手段とを備えているので、吊り孔の掛かり代が小さくてもチャックが外れることなく、チャックの引っ掛りが安定した構造体の吊り部構造となる。
【0012】
請求項記載の本発明によれば、さらに、掛け保持手段が、治具本体とそれぞれのチャックの間に回動自在に取り付けられた一組のリンク機構を備えているので、吊り治具をワイヤー等の吊り具で吊るしながら、チャックを吊り孔に挿入して吊り上げると、上記リンク機構に自重が作用してチャックが開き、チャックを掛かり代に引っ掛けることができる。従って、取付が極めて容易となる。
【0013】
そして、上記掛け保持手段が、一方のリンク機構の外側に設けられ架台に回動自在に取り付けられたカム付き安全レバーと、他方のリンク機構の外側に設けられ架台に螺設された安全用ネジ軸とを備え、安全レバーを回動すると、カムが一方のリンク機構に非当接状態から当接状態に移行可能になされ、安全用ネジ軸の先端がネジを締めると他方のリンク機構に当接可能になされているので、カムでチャックを位置決めし、それに対してネジを締めつけることによってチャックの左右の開きが均等に保たれる。
この結果、チャックが外れることなく、チャックの係止状態が一層安定した構造体の吊り部構造となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例であって、構造体の吊り部構造を示す断面図である。
図において、1は構造体、2は吊り治具である。
【0016】
上記構造体1は、工業化住宅に使用される角鋼管製柱であって、本実施例は、上記構造体1を垂直状態に立てて搬送するときの吊り部構造を示すものである。上記垂直に立てた構造体1の上面には吊り孔12が形成され、この吊り孔12には下方より内径の小なる4.5mmの掛かり代11が設けられている。
そして、この吊り孔12にワイヤー等の吊り具が取り付けられる吊り治具2が設けられている。
【0017】
上記吊り治具2は、上部に吊りボルト4が取り付けられた治具本体3と、治具本体3の下方に設けられた一対の爪付きチャック5、5と、吊り上げ荷重の負荷有無にかかわらず、掛かり代11から外れることなく係止状態でチャック5を保持する後述の掛け保持手段とを備えている。
上記爪付きチャック5、5は、前記吊り孔12に挿入され掛かり代11に着脱自在に係止されるものであって、挿入前はチャック5、5間に取り付けられたバネ6で閉じられている。
【0018】
上記掛け保持手段は、治具本体3とそれぞれのチャック5、5の間に回動自在に取り付けられた一組の2接対偶のリンク機構7、7と、構造体1上面に設置される架台8と、一方のリンク機構7の外側に設けられ架台8に回動自在に取り付けられたカム91付き安全レバー9と、他方のリンク機構7の外側に設けられ架台8に螺設された安全用ネジ軸10とから構成されている。
【0019】
上記リンク機構7は、相接触して相対運動を行う二つのリンク71、72とからなり、各リンク71、72の接触部分である対偶素73は、ピン結合されている。また、リンク71は治具本体3の下部にピン結合され、リンク72はチャック5とピン結合されて回動自在に取り付けられている。
【0020】
上記架台8は円筒形状体であって、対向する一方側に安全レバー9の支持部と、他方側にネジ軸10の支持部が設けられている。
上記安全レバー9の握り手と反対側にはカム91が設けられ、安全レバー9を垂直状態から水平状態に倒して回動すると、カム91が一方のリンク機構7の対偶素73に非当接状態から当接状態に移行されるようになっている。
また、安全用ネジ軸10の一端にはハンドル101が設けられ、このハンドル101が設けられたネジ軸10の他端の先端は、ネジを締めると他方のリンク機構7の対偶素73に当接されるようになっている。
【0021】
上記構成になされた本実施例の構造体1の吊り部構造によると、吊り治具2が、治具本体3下方に設けられ、前記吊り孔12に挿入され、掛かり代11に着脱自在に係止される一対のチャック5、5を備えているので、この吊り治具2に取り付けられた吊りボルト4をワイヤー等の吊り具(不図示)で吊るしながら、チャック5、5を吊り孔12に挿入すれば、掛かり代11に係止することができ、取付が容易である。
【0022】
そして、上記吊り治具2が、吊り上げ荷重の負荷有無にかかわらず、掛かり代11から外れることなく係止状態でチャック5、5を保持する掛け保持手段とを備えているので、吊り孔12の掛かり代11が4.5mmと小さくてもチャック5、5が外れることはない。
従って、チャック5、5の係止状態が安定した構造体1の吊り部構造となる。
【0023】
本実施例によれば、さらに、掛け保持手段が、治具本体3とそれぞれのチャック5、5の間に回動自在に取り付けられた一組の2接対偶のリンク機構7を備えているので、吊り治具2をワイヤー等の吊り具で吊るしながら、チャック5、5を吊り孔12に挿入して吊り上げると、上記リンク機構7に自重が作用してチャック5、5が開き、チャック5、5を掛かり代11に係止することができる。従って、取付が極めて容易となる。
【0024】
そして、上記掛け保持手段が、一方のリンク機構7の外側に設けられ架台8に回動自在に取り付けられたカム91付き安全レバー9と、他方のリンク機構7の外側に設けられ架台8に螺設された安全用ネジ軸10とを備えている。
そこで、上記安全レバー9を回動すると、カム91が一方のリンク機構7の対偶素73に非当接状態から当接状態に移行され、安全用ネジ軸10の先端がネジを締めると他方のリンク機構7の対偶素73に当接される。
すると、カム91で一方のチャック5が位置決めされ、それに対してネジを締めつけることによってチャック5、5の左右の開きが均等に保たれる。
この結果、チャック5、5が外れることなく、チャック5、5の係止状態が一層安定した構造体1の吊り部構造となる。
【0025】
図2は、参考例であって、(イ)図は掛け保持前の吊り部構造を示す断面図、(ロ)図は掛け保持後の吊り部構造を示す断面図である。本参考例は、前記実施例と異なる掛け保持手段を備えた構造体1の吊り部構造であって、前記実施例と同じものには同符合を付け、異なるものには別符合を付けて説明する。
【0026】
本参考例は、前記実施例と同様、構造体1を垂直状態に立てて搬送するときの構造体1の吊り部構造であって、図2(イ)図に示すように、吊り孔12にワイヤー等の吊り具が取り付けられる吊り治具2Aが設けられている。上記吊り治具2Aは、上部に吊りボルト4が取り付けられた治具本体3Aと、治具本体3Aの下方に回動自在に設けられた一対の爪付きチャック5A、5Aと、吊り上げ荷重の負荷有無にかかわらず、掛かり代11から外れることなく引っ掛け状態でチャック5Aを保持する後述の掛け保持手段とを備えている。上記爪付きチャック5A、5Aは、前記吊り孔12に挿入され掛かり代11に着脱自在に引っ掛けられるものであって、挿入前はチャック5A、5A間に取り付けられたバネ6Aで閉じられている。
【0027】
掛け保持手段は、治具本体3Aの上部に設けられたハンドル201付きナット20と、このナット20に螺入されたネジ軸30と、ネジ軸30の下端部に設けられた台形状のクサビ40とから構成されている。
上記ナット20は、治具本体と鉛直方向には結合されているが、円周方向には非結合になされている。上記ネジ軸30の上部に吊りボルトが取り付けられている。
ハンドル201を使用して上記ナット20を廻すと、図2(ロ)図に示すように、ネジ軸30と共にクサビ40が上昇してチャック5Aの内側に当接されるようになっている。
【0028】
上記本参考例の構造体1の吊り部構造によれば、掛け保持手段が、治具本体3Aの上部に設けられたハンドル201付きナット20と、このナット20に螺入されたネジ軸30と、ネジ軸30の下端部に設けられた円錐台形状のクサビ40とから構成され、ナット20を廻すとネジ軸30と共にクサビ40が上昇してチャック5Aの内側に当接されるようになっているので、チャック5Aが閉じることはない。従って、チャック5Aの外れを確実に防止でき、チャック5Aの引っ掛りがさらに一層安定した構造体1の吊り部構造となる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、吊り孔の掛かり代が小さくてもチャックが外れることなく、チャックの引っ掛りが安定した構造体の吊り部構造となるので、構造体の搬送作業を安全にできる。
【0030】
請求項記載の本発明によれば、さらに、リンク機構に自重が作用してチャックが開き、チャックを掛かり代に引っ掛けることができるので、チャックの取付が極めて容易となる。そして、掛け保持手段によってチャックの左右の開きが均等に保たれるので、チャックが外れることなく、チャックの引っ掛りが一層安定した構造体の吊り部構造となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であって、構造体の吊り部構造を示す断面図である。
【図2】 参考例であって、(イ)図は掛け保持前の吊り部構造を示す断面図、(ロ)図は掛け保持後の吊り部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 構造体
11 掛かり代
12 吊り孔
吊り治具
治具本体
チャック
7 リンク機構
71、72 リンク
8 架台
9 安全レバー
91 カム
10 安全用ネジ軸

Claims (1)

  1. 下方より内径の小なる掛かり代が設けられた構造体上面の吊り孔に、ワイヤー等の吊り具が取り付けられる吊り治具が設けられた構造体の吊り部構造であって、
    上記吊り治具が、治具本体と、治具本体の下方に設けられ前記吊り孔に挿入されて前記掛かり代に着脱自在に係止される一対のチャックと、吊り上げ荷重の負荷有無にかかわらず、掛かり代から外れることなく係止状態でチャックを保持する掛け保持手段とを備えてなり、
    前記掛け保持手段が、治具本体とそれぞれのチャックの間に回動自在に取り付けられた一組のリンク機構と、構造体上面に設置される架台と、一方のリンク機構の外側に設けられ架台に回動自在に取り付けられたカム付き安全レバーと、他方のリンク機構の外側に設けられ架台に螺設された安全用ネジ軸とからなり、
    安全レバーを回動すると、カムが一方のリンク機構に非当接状態から当接状態に移行可能になされ、安全用ネジ軸の先端がネジを締めると他方のリンク機構に当接可能になされていることを特徴とする構造体の吊り部構造。
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