JP4260967B2 - ポリイミド前駆体溶液及びその製造方法、それから得られる塗膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド前駆体溶液及びその製造方法、さらにはポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミド塗膜及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドは、エレクトロニクス分野への応用に有用なものであり、半導体デバイス上への絶縁フィルムや保護コーティングとして用いられている。特に全芳香族ポリイミドは、その優れた耐熱性、機械的特性、電気的特性から、フレキシブル回路基板や集積回路等において高密度化、多機能化等に大きく貢献している。このように、微細な回路の層間絶縁膜や保護膜を形成させる場合、ポリイミド前駆体溶液が用いられてきた。このポリイミド前駆体溶液として、下記一般式からなるポリアミド酸の溶液がよく知られている。
【0003】
【化6】
【0004】
これらポリアミド酸溶液は、溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させることにより製造されるもので、例えば特公昭36−10999号公報、特開昭62−275165号公報、特開昭64−5057号公報、特公平2−38149号公報、特公平2−38150号公報、特開平1−299871号公報、特開昭58−122920号公報、特公平1−34454号公報、特開昭58−185624号公報、Journal of Polymer Science ,Macromolecular Reviews Vol.11 P.199 (1976)、米国特許第4238528号明細書、特公平3−4588号公報、特公平7−30247号公報、特開平7−41556号公報、特開平7−62095号公報、特開平7−133349号公報、特開平7−149896号公報、特開平6−207014号公報、特公平7−17870号公報、特公平7−17871号公報、IBM Technical Disclosure Bulletin Vol.20 No.6 P.2041 (1977)等に開示されているような、溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いるものや、特開平6−1915号公報に開示されているような、溶媒として水溶性エーテル系化合物、水溶性アルコール系化合物、水溶性ケトン系化合物及び水から選ばれる混合溶媒を用いるものなど、種々の溶液が提案されている。
【0005】
また、ポリイミド前駆体溶液において、溶質として前記のようなポリアミド酸以外にも種々のポリマーが知られている。例えば、Macromolecules Vol.22 P.4477 (1989) やPolyimides and Other High Temperature Polymers.P.45 (1991)には、下記一般式からなるポリアミド酸エステルが開示されており、
【0006】
【化7】
【0007】
Macromolecules Vol.24 P.3475 (1991) には、下記一般式からなるポリアミド酸トリメチルシリルエステルが開示されており、
【0008】
【化8】
【0009】
Journal of Polymer Science Part B Vol.8 P.29 (1970) 、Journal of Polymer Science Part B Vol.8 P.559 (1970)、日本化学会誌 Vol.1972 P.1992、Journal of Polymer Science Polymer Chemistry Edition Vol.13 P.365 (1975)には、下記式からなるポリアミド酸ビス(ジエチルアミド)が開示されている。
【0010】
【化9】
【0011】
上述したこれらポリイミド前駆体はいずれも高重合度のポリマーの溶液である。
これらポリマー溶液からポリイミド塗膜を得る際は、一般的にはこのポリマー溶液を銅、ガラス等の基材上にコーティングし、加熱することにより溶媒の除去及びイミド化を行いポリイミド塗膜を得る。
【0012】
しかしながら、この高重合度のポリマー溶液をコーティングする場合には、その重合度故に、溶液を塗工可能な粘度とするためには、溶質濃度を低くしなければならないという問題があった。また、生産性を高めるために、溶質濃度を高めると溶液の粘度が高くなり、塗工できなくなってしまうという問題もあり、またたとえ塗工できたとしても、機械的、熱的特性に優れた塗膜やフィルムが得られないという問題あった。さらに、ポリマー溶液は長期の保存に耐え難く、その重合度を維持しつつ長期間保存することは極めて困難であった。
【0013】
【本発明が解決しようとする課題】
上記状況に鑑み、本発明の課題は、高濃度であるにもかかわらず、低粘度であるポリイミド前駆体溶液及びその製造方法、それから得られる良好な物性を有するポリイミド塗膜及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のモノマーを組み合わせれば、重合体でなくともそれらモノマーを含む溶液から、良好な物性を有するポリイミド塗膜が得られることを見い出した。すなわち、後述する一般式(1)に示すジアミンと一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステルとからなるモノマーを含有するポリイミド前駆体溶液は、モノマーを高濃度で溶解しているいるにもかかわらず、低粘度を示し、しかも、この溶液からは高強度のポリイミド塗膜が得られるとの知見を得、これらの知見に基づいて、本発明に到達したものである。かかる知見は、従来、ポリイミド前駆体溶液を構成するポリイミド前駆体が高重合度のものしか知られていなかったことに鑑みれば全く驚くべき知見である。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は、第1に、下記一般式(1)に示すジアミン〔式中、R 1 は、 R 1 ’と R 1 ’’とを、 R 1 ’: R 1 ’’=25:75〜75:25(モル比)の範囲としたものであり、R2 は少なくとも1つの炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示し、mは1〜20の整数を表す。〕と下記一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステル〔式中、R3 は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4つのカルボニル基はこの残基中異なった炭素原子に直接連結しており、4つのうちの2つずつは対をなし、炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合しており、R4 〜R7 は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。〕とを溶質として含有することを特徴とするポリイミド前駆体溶液である。
【0016】
【化10】
【0017】
第2に、溶媒中で、下記一般式(3)に示すジアミン〔式中、R2 は少なくとも1つの炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示す。〕1モルに対して0.4〜0.9モルの下記一般式(4)に示すテトラカルボン酸二無水物〔ただし、式(4)においてR 1 が R 1 ’である化合物と、式(4)においてR 1 が R 1 ’’である化合物とを、 R 1 ’: R 1 ’’=25:75〜75:25(モル比)の範囲とした混合物。〕を得た後、このジアミン1モルに対し、一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステルを0.95〜1.05モル加えることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の製造方法である。
【0018】
【化11】
【0019】
第3に、前記ポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミド塗膜である。
第4に、前記ポリイミド前駆体溶液を基材上に塗工し、加熱してイミド化することを特徴とするポリイミド塗膜の製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
まず、本発明で用いる用語について説明する。
【0021】
(1)ポリイミド
ポリマー鎖の繰り返し単位の80モル%以上がイミド構造を有する有機ポリマーをいう。そして、この有機ポリマーは耐熱性を示す。
【0022】
(2)ポリイミド前駆体
加熱又は化学的作用により閉環してポリイミドとなる有機化合物をいう。ここで、閉環とはイミド環構造が形成されることをいう。
【0023】
(3)ポリイミド前駆体溶液
ポリイミド前駆体が溶媒に溶解しているものである。ここで溶媒とは、25℃で液状の化合物をいう。
【0024】
(4)粘度
(株)トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、20℃における回転粘度を測定したものである。
【0025】
(5)溶質濃度
溶液中に占めるポリイミド前駆体の重量割合を百分率で表した数値である。
【0026】
(6)ポリイミド塗膜
例えば、銅、アルミニウム、ガラス等の基材上に形成されたポリイミドの膜をいう。これらポリイミド塗膜のなかで基材と密着したまま使用されるものをポリイミド被覆物といい、基材から剥離して使用されるものをポリイミドフィルムという。
【0027】
さらに本発明について説明する。
本発明のポリイミド前駆体溶液は、一般式(1)に示すジアミンと一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステルが溶質として溶媒中に溶解している。
一般式(1)に示すジアミンにおいて、R1 は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4つのカルボニル基はこの残基中異なった炭素原子に直接連結しており、4つのうちの2つずつは対をなし、炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合している。R1 の具体例としては次のようなものが挙げられる。
【0028】
【化12】
【0029】
R1 は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸残基と3,3’,4,4’−オキシジフタル酸残基とのモル比が25:75〜75:25の範囲にある混合物である。
【0030】
【化13】
【0031】
R2 は少なくとも1つの炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示す。R2 の具体例としては次のようなものが挙げられる。
【0032】
【化14】
【0033】
特に、R2 としては次のものが好ましい。
【0034】
【化15】
【0035】
一般式(1)に示すジアミンにおいて、mは1〜20の整数を示し、1〜10が好ましい。mが20を超えると溶液の粘度が高くなることがある。
【0036】
一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステルにおいて、R3 は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4つのカルボニル基はこの残基中異なった炭素原子に直接連結しており、4つのうちの2つずつは対をなし、炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合している。R3 の具体例としては前記R1 として示したものが挙げられ、好ましいものも同様のものが挙げられ、一般式(1)に示すジアミンと一般式(2)に示すテトラカルボン酸及びそのエステルおいて、R1 及びR3 として同一のものが用いられていても異なって用いられてもよい。
【0037】
本発明の溶液において、溶媒としては一般式(1)に示すジアミンと一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステルを溶かす溶媒であればいかなる溶媒も用いることができ、例えば、非プロトン性極性溶媒、エーテル系化合物、水溶性アルコール系化合物等が挙げられる。
【0038】
非プロトン性極性溶媒の具体例としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等が挙げられ、エーテル系化合物の具体例としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられ、水溶性アルコール系化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0039】
上記溶媒は、単独又は二種以上を混合して用いることができる。このうち特に好ましい例としては、単独溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミドが、混合溶媒としては、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドンとメタノール、N−メチルピロリドンと2―メトキシエタノール等の組み合わせがあげられる。
【0040】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液のポリイミド前駆体の濃度は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく。15重量%以上が特に好ましい。5重量%未満では所定膜厚を得るためには、塗工を繰り返さなくてはならず、上限については特に限定されないが、濃度が80重量%を超えると粘度が上昇し、塗工が困難になる。
また、ポリイミド前駆体溶液の粘度は、80ポイズ以下が好ましく、60ポイズ以下がより好ましく、40ポイズ以下がさらに好ましい。80ポイズを超えると塗工が困難になることがある。下限については特に限定されないが、0.1ポイズ未満では、塗工後に膜厚が不均一になることがある。
【0041】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液は、一般式(1)に示すジアミン溶液に、一般式(2)に示すテトラカルボン酸を添加することにより製造することができる。ここでは、好ましい例として、非プロトン性極性溶媒中で、ポリイミド前駆体溶液を製造する方法について述べる。
【0042】
まず、R1 を骨格とする一般式(4)に示す芳香族テトラカルボン酸二無水物及び前記R2 を骨格とする一般式(3)に示す芳香族ジアミンとを、非プロトン性極性溶剤中で反応させる。ついで、この溶液を加熱してイミド環を脱水閉環させ、一般式(1)に示すジアミンを生成させる。この時の加熱温度は、100℃〜200℃、好ましくは140〜160℃の範囲である。さらに、加熱の過程で脱水閉環反応を促進させるために、トルエンやキシレンなどの水と共沸する溶剤を添加しておいてもよい。ついで、この反応溶液を室温まで冷却した後に前記R3 を骨格とする一般式(2)に示す芳香族テトラカルボン酸又はそのエステルを添加する。この時の温度は−30〜120℃が好ましく、−20〜80℃がより好ましい。
【0043】
一般式(4)に示す芳香族テトラカルボン酸二無水物と一般式(3)に示す芳香族ジアミンとの反応は、ジアミン1モルに対しテトラカルボン酸二無水物0.4〜0.9モルが好ましく、0.45〜0.75モルがより好ましい。ジアミン1モルに対しテトラカルボン酸二無水物が0.4〜0.9モルの範囲外では一般式(1)に示すジアミンが得にくくなる傾向にある。さらに一般式(2)に示す芳香族テトラカルボン酸又はそのエステルを一般式(1)に示すジアミン1モルに対し、0.95〜1.05モル、好ましくは0.97〜1.03モルを添加する。芳香族テトラカルボン酸又はそのエステルの添加割合が、0.95〜1.05モルの範囲外では塗膜とした場合の物性が低下する傾向がある。
【0044】
一般式(1)に示すジアミン溶液を合成する際には、モノマー及び溶媒の混合順序はどのような順序にしてもよい。溶媒として、混合溶媒を用いる場合は、個々の溶媒に別々のモノマーを溶解又は懸濁させておき、それらを混合し、撹拌下、所定の温度と時間で反応させることにより、一般式(1)に示すジアミン溶液が得られる。また、一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステルを添加する方法は、前記ジアミン溶液に撹拌下、固体のままか、もしくは溶液にして添加する。
【0045】
さらに、本発明のポリイミド前駆体溶液には、必要に応じて例えば、有機シラン、顔料、導電性のカーボンブラック及び金属粒子のような充填剤、摩滅剤、誘電体、潤滑剤等の他公知の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。また、他の重合体や例えば水不溶性のエーテル類、アルコール類、ケトン類、エステル、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等の溶媒を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0046】
また、ポリイミド前駆体溶液からポリイミドフィルムを成形するには、スリット状ノズルから押し出したり、バーコーター等により基材上に塗工し、乾燥して溶媒を除去した後、これをイミド化した後、基材上から剥離することにより製造することができる。
ポリイミド被覆物を得るには、ポリイミド前駆体溶液を従来公知のスピンコート法、スプレイコート法、浸漬法等の方法により基材上に塗工し、乾燥して溶媒を除去した後、イミド化する。
【0047】
このように、本発明のポリイミド前駆体溶液、それから得られるフィルム及び被覆物は、例えば、耐熱絶縁テープ、耐熱粘着テープ、高密度磁気記録ベース、コンデンサー、FPC用のフィルム等の製造に用いられる。また、例えば、フッ素樹脂やグラファイト等を充填した摺動部材、ガラス繊維や炭素繊維で強化した構造部材、小型コイルのボビン、スリーブ、端末絶縁用チューブ等の成形材や成形品の製造に用いられる。また、パワートランジスターの絶縁スペーサ、磁気ヘッドスペーサ、パワーリレーのスペーサ、トランスのスペーサ等の積層材の製造に用いられる。また、電線・ケーブル絶縁被膜用、太陽電池、低温貯蔵タンク、宇宙断熱材、集積回路、スロットライナー等のエナメルコーティング材の製造に用いられる。また、限外ろ過膜、逆浸透膜、ガス分離膜の製造に用いられる。また、耐熱性を有する糸、織物、不織布等の製造にも用いられる。
【0048】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、引張強度はJISK−7127に準拠して測定した。
【0049】
実施例1
Dean−Stark凝縮管つき三つ口フラスコに3,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.76g(13.8mmol)を、N−メチルピロリドン40.9gとキシレン10gからなる混合溶媒に溶解し、8℃に保った。これに3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物1.3g(4.2mmol)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物1.23g(4.2mmol)を30分間にわたり徐々に加えた。添加終了後、内温を165℃まで加熱したところイミド環の形成に伴いキシレンと水の共沸物が留出し、下記式に示すジアミンを得た。加熱を7時間行ったのち室温まで冷却した後に、ジアミンを単離しIRスペクトル解析を行ったところ、カルボン酸の吸収は無くイミド環の吸収のみが観測された。また、プロトンNMR解析からも、下式のジアミンである事を確認できた。
【0050】
【化16】
【0051】
上記のようにして調製した溶液に3,3’,4,4’−オキシジフタル酸1.9g(5.5mmol)を加え、さらに1時間撹拌を続けたところ、均一な琥珀色透明な溶液が得られた(溶質濃度15重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、0.22ポイズであった。この溶液は、室温下12時間攪拌した後も粘度に変化はなかった。
さらにこの溶液をフィルムアプリケーターを用いて、ガラス板上に100μmの厚みで流延し、窒素雰囲気下80℃で5時間乾燥した後、窒素雰囲気下300℃で5時間加熱イミド化を行った後、塗膜をガラス板上から剥離したところ、ポリイミドフィルムが得られた。このポリイミドフィルムの厚みは、9.2μmであり、引張強度は13.5kg/mm2 であった。
【0052】
実施例2
実施例1において、N−メチルピロリドンの量を40.2g、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物の量を1.52g(5.175mmol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の量を1.61g(5.175mmol)として、ジアミンを形成した後に、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸1.19g(3.45mmol)とした以外はすべて実施例1と同様に行い、均一な琥珀色透明な溶液が得られた(溶質濃度15重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、0.43ポイズであった。この溶液は、室温下12時間攪拌した後も粘度に変化はなかった。
さらに、実施例1と同様にフィルムの作成を行ったところポリイミドフィルムの厚みは、14.0μmであり、引張強度は13.8kg/mm2 であった。
【0053】
実施例3
実施例1において、N−メチルピロリドンの量を40.2g、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物の量を1.89g(5.865mmol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の量を1.72g(5.865mmol)として、ジアミンを形成した後に、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸0.716g(2.07mmol)とした以外はすべて実施例1と同様に行い、均一な琥珀色透明な溶液が得られた(溶質濃度15重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、1.60ポイズであった。この溶液は、室温下12時間攪拌した後も粘度に変化はなかった。
さらに、実施例1と同様にフィルムの作成を行ったところポリイミドフィルムの厚みは、10.0μmであり、引張強度は14.1kg/mm2 であった。
【0054】
実施例4
実施例1において、N−メチルピロリドンの量を39.6g、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物の量を1.926g(6.2mmol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の量を1.827g(6.2mmol)として、ジアミンを形成した後に、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸0.477g(1.38mmol)とした以外はすべて実施例1と同様に行い、均一な琥珀色透明な溶液が得られた(溶質濃度15重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、0.43ポイズであった。この溶液は、室温下12時間攪拌した後も粘度に変化はなかった。
さらに、実施例1と同様にフィルムの作成を行ったところポリイミドフィルムの厚みは、14.0μmであり、引張強度は13.8kg/mm2 であった。
【0055】
実施例5
実施例1において、N−メチルピロリドン40.2gとし、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸1.9g(5.5mmol)のかわりに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジメチルエステル1.96g(4.2mmol)を用いた以外はすべて実施例1と同様に行い、均一な琥珀色透明な溶液が得られた。(溶質濃度15重量%)この溶液の粘度を測定したところ0.23ポイズであった。この溶液は、室温下12時間攪拌した後も粘度に変化はなかった。さらに、実施例1と同様にフィルムの作成を行ったところポリイミドフィルムの厚みは、12.0μmであり、引張強度は11.9kg/mm2 であった。
【0056】
実施例6
実施例1において、N−メチルピロリドン35.8gとし、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸1.9g(5.5mmol)のかわりに、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジメチルエステル1.185g(4.2mmol)を用いた以外はすべて実施例1と同様に行い、均一な琥珀色透明な溶液が得られた。(溶質濃度15重量%)この溶液の粘度を測定したところ0.23ポイズであった。この溶液は、室温下12時間攪拌した後も粘度に変化はなかった。
さらに、実施例1と同様にフィルムの作成を行ったところポリイミドフィルムの厚みは、11.0μmであり、引張強度は10.3kg/mm2 であった。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、本発明のポリイミド前駆体溶液は、溶質が重合体ではなくモノマーの混合物から構成されており、高濃度で溶解しているにもかかわらず、その溶液は低粘度であり、さらに、このポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミド塗膜は良好な物性を有する。したがって、大規模集積回路等の層間絶縁膜や、保護膜の形成に用いられるスピンコート法等において、優れた効果を有するものである。また、本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法によれば前記のポリイミド前駆体溶液を容易に製造することができ、ポリイミド塗膜の製造方法によればポリイミド塗膜を容易に製造することができる。
Claims (6)
- 下記一般式(1)に示すジアミン〔式中、R 1 は、 R 1 ’と R 1 ’’とを、 R 1 ’: R 1 ’’=25:75〜75:25(モル比)の範囲としたものであり、R2 は少なくとも1つの炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示し、mは1〜20の整数を表す。〕と下記一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステル〔式中、R3 は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4つのカルボニル基はこの残基中異なった炭素原子に直接連結しており、4つのうちの2つずつは対をなし、炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合しており、R4 〜R7 は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。〕とを溶質として含有することを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
- 一般式(1)におけるR2 が次に示すものであることを特徴とする請求項1記載のポリイミド前駆体溶液。
- 一般式(2)において、R3 が次のものであることを特徴とする請求項1記載のポリイミド前駆体溶液。
- 溶媒中で、下記一般式(3)に示すジアミン〔式中、R2 は少なくとも1つの炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示す。〕1モルに対して0.4〜0.9モルの下記一般式(4)に示すテトラカルボン酸二無水物〔ただし、式(4)においてR 1 が R 1 ’である化合物と、式(4)においてR 1 が R 1 ’’である化合物とを、 R 1 ’: R 1 ’’=25:75〜75:25(モル比)の範囲とした混合物。〕を反応させ、一般式(1)に示すジアミン〔mは1〜20の整数を表す。〕を得た後、このジアミン1モルに対し、一般式(2)に示すテトラカルボン酸又はそのエステルを0.95〜1.05モル加えることを特徴とする請求項1記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
- 請求項1記載のポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミド塗膜。
- 請求項1記載のポリイミド前駆体溶液を基材上に塗工し、加熱してイミド化することを特徴とするポリイミド塗膜の製造方法。
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